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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183122
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/24 20060101AFI20231220BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20231220BHJP
   G01R 15/22 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G01R15/24 B
G01R19/00 V
G01R15/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096571
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519424722
【氏名又は名称】電源開発送変電ネットワーク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】橋場 康人
(72)【発明者】
【氏名】梅本 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松元 大悟
(72)【発明者】
【氏名】瀧根 健志
(72)【発明者】
【氏名】小坂 洋隆
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AA17
2G025AB09
2G025AB10
2G025AB11
2G025AB12
2G025AC06
2G035AA12
2G035AB01
2G035AC01
2G035AD28
2G035AD35
2G035AD36
2G035AD37
2G035AD39
2G035AD43
(57)【要約】
【課題】急峻な電圧が印加された場合でも電圧を精度良く測定可能な電圧測定装置を得ること。
【解決手段】電圧測定装置1は、第1端面と、第1端面とは逆側へ向けられた第2端面とを有し、第1端面と第2端面間を伝搬する光の2つの偏光成分に、第1端面と第2端面間において作用する電界の強さに応じた位相差を生じさせる電気光学結晶を含むセンサ部10と、第1端面と第2端面間を伝搬したことによって偏光状態が変化した光に基づいて、高圧導体11に印加されている電圧を求める信号処理部30と、を備え、センサ部10は、第1端面が高圧導体11に接触するとともに第2端面が接地導体12に接触する接触型電気光学結晶13と、第1端面が高圧導体11に接触するとともに第2端面が接地導体12と非接触の関係、または、第2端面が接地導体12と電気的に接触するとともに第1端面が高圧導体11と非接触の関係である非接触型電気光学結晶14と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象と同電位の高圧導体へ向けられた第1端面と、前記第1端面とは逆側の接地導体へ向けられた第2端面とを各々が有し、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬する光のうち振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、前記第1端面と前記第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を生じさせる複数の電気光学結晶を含むセンサ部と、
前記複数の電気光学結晶の各々について、電気光学結晶から出射された光に含まれる成分であって、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分の光を検出する複数の光検出器を含む投受光部と、
前記複数の電気光学結晶に対応する複数の光検出器の各々によって検出される信号に基づいて、前記高圧導体に印加されている電圧を求める信号処理部と、
を備え、
前記センサ部は、
前記第1端面が前記高圧導体に電気的に接触するとともに前記第2端面が前記接地導体に電気的に接触する接触型電気光学結晶と、
前記第1端面が前記高圧導体に電気的に接触するとともに前記第2端面が前記接地導体と電気的に非接触の関係、または、前記第2端面が前記接地導体と電気的に接触するとともに前記第1端面が前記高圧導体と電気的に非接触の関係である非接触型電気光学結晶と、
を備えることを特徴とする電圧測定装置。
【請求項2】
前記非接触型電気光学結晶の前記第1端面と前記第2端面との間の距離が前記接触型電気光学結晶の前記第1端面と前記第2端面との間の距離よりも短い、
ことを特徴とする請求項1に記載の電圧測定装置。
【請求項3】
前記非接触型電気光学結晶は、前記第1端面の形状と前記第2端面の形状とが異なる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電圧測定装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記高圧導体に急峻な電圧が印加された場合、前記接触型電気光学結晶の電歪効果の影響が収まるまでの間、前記非接触型電気光学結晶に対応する前記光検出器によって検出される信号に基づいて、前記高圧導体に印加されている電圧を求める、 ことを特徴とする請求項1に記載の電圧測定装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記接触型電気光学結晶に対応する光検出器によって検出される信号に基づいて求める前記高圧導体に印加されている電圧と、前記非接触型電気光学結晶に対応する光検出器によって検出される信号に基づいて求める前記高圧導体に印加されている電圧の時間変化の情報とを用いて、前記高圧導体に印加されている電圧を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の電圧測定装置。
【請求項6】
前記センサ部は、
前記接触型電気光学結晶を複数備え、
前記高圧導体に同じ電圧が印加された場合に複数の前記接触型電気光学結晶の各々を伝搬する光に生じる前記位相差が前記接触型電気光学結晶ごとに異なり、
前記信号処理部は、複数の前記接触型電気光学結晶に対応する複数の前記光検出器の各々によって検出される信号の関係に基づいて、前記高圧導体に印加されている電圧を求める、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の電圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気光学効果を利用して電圧を測定する電圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長距離送電を行うシステムの1つとして、送電効率の高さといった観点から、高電圧直流送電(HVDC:High Voltage Direct Current)システムが注目されている。直流電圧は、直流送電系統と交流送電系統とに接続されて交流電力と直流電力との間の交換を行う交直変換装置、および、交流送電系統同士に接続されて電圧の周波数を変換する周波数変換装置などにおいて、常時監視される。監視の対象とされる系統電圧は数百kVといった高電圧であることから、分圧器を用いて系統電圧を扱い易い電圧にまで降圧させて、降圧後の電圧を電圧測定装置が測定する技術が知られている。
【0003】
また、分圧器を使用せずに高電圧を測定する方式として、一次の電気光学効果であるポッケルス効果を利用した電圧測定装置が開発されている。ポッケルス効果とは、電気光学結晶と呼ばれるある種の結晶に電界を作用させた場合に、電界の強さの一乗に比例して結晶の屈折率が変化する現象である。ポッケルス効果による結晶の屈折率変化は、微少であるが、屈折率に異方性が生じる特性を利用することで、透過光の偏光状態の変化として測定することができる。例えば、偏光素子を用いて、電気光学結晶に直線偏光を入射させ、電気光学結晶から出射した光の偏光状態の変化を光の強度変化として測定することで、電気光学結晶に印加された電圧を求めることができる。
【0004】
ポッケルス効果を用いた電圧測定装置は、絶縁性に優れ、装置の小型化および低コスト化を実現できるメリットがある。しかし、電気光学結晶に直流電圧を印加すると、時間が経つにつれて、結晶内の空間電荷が移動し、光が透過する部分の電界分布が変化するため、長時間安定して電圧を測定することが困難であることが知られている。この影響を回避する方法として、電気光学結晶内で光の進行方向と電界が印加される方向を同じにする縦型変調方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。縦型変調方式では、直流電圧の印加により電気光学結晶内の電界分布が不均一になったとしても、光は電界が強められた部分と弱められた部分の両方を通過し、電界方向に沿った積分値は一定となるため、電気光学結晶の端面間に印加された電圧を安定して測定することができる。ただし、測定対象の電圧が印加される電極と電気光学結晶の密着性が不十分な場合、隙間部分の抵抗値が電気光学結晶の抵抗値に対して無視できず、直流電圧を長時間安定して測定することはできない。そのため、直流計測を実現する光電圧測定装置は、電極に電気光学結晶を密着させた構成とする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-11019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポッケルス効果を用いた電圧測定装置において、直流電圧を長時間安定して計測するために、電極に電気光学結晶を密着させた場合、電気光学結晶に変化が急峻な電圧が印加されると、電気光学結晶の電歪効果の影響により、測定信号にノイズ成分が重畳され、正しい電圧を測定できないという課題がある。電歪効果とは、逆圧電効果とも呼ばれ、電気光学結晶に電界をかけた際に分極に伴って機械的にひずみを生じる現象により、結晶が電界方向および電界に垂直方向に固有モードで振動する現象である。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、急峻な電圧が印加された場合でも電圧を精度良く測定することが可能な電圧測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる電圧測定装置は、測定対象と同電位の高圧導体へ向けられた第1端面と、第1端面とは逆側の接地導体へ向けられた第2端面とを各々が有し、第1端面と第2端面との間を伝搬する光のうち振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、第1端面と第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を生じさせる複数の電気光学結晶を含むセンサ部と、複数の電気光学結晶の各々について、電気光学結晶から出射された光に含まれる成分であって、第1端面と第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分の光を検出する複数の光検出器を含む投受光部と、複数の電気光学結晶に対応する複数の光検出器の各々によって検出される信号に基づいて、高圧導体に印加されている電圧を求める信号処理部と、を備える。センサ部は、第1端面が高圧導体に電気的に接触するとともに第2端面が接地導体に電気的に接触する接触型電気光学結晶と、第1端面が高圧導体に電気的に接触するとともに第2端面が接地導体と電気的に非接触の関係、または、第2端面が接地導体と電気的に接触するとともに第1端面が高圧導体と電気的に非接触の関係である非接触型電気光学結晶と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、急峻な電圧が印加された場合でも電圧を精度良く測定することが可能な電圧測定装置を実現できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる電圧測定装置の構成例を示す図
図2】実施の形態1に係る接触型電気光学結晶の第1端面および第2端面に密着される薄膜の第1の例を示す図
図3】実施の形態1に係る接触型電気光学結晶の第1端面および第2端面に密着される薄膜の第2の例を示す図
図4】実施の形態1に係る非接触型電気光学結晶の第1端面および第2端面に密着される薄膜の第1の例を示す図
図5】実施の形態1に係る非接触型電気光学結晶の第1端面および第2端面に密着される薄膜の第2の例を示す図
図6】実施の形態1に係る非接触型電気光学結晶の第1端面および第2端面に密着される薄膜の第3の例を示す図
図7】実施の形態1に係る非接触型電気光学結晶の形状の一例を示す図
図8】実施の形態1に係る非接触型電気光学結晶の上部に設ける電界緩和電極の一例を示す図
図9】実施の形態1に係る電圧測定装置の光源、光検出器、偏光変調器、偏光子および検光子と光の偏光状態との関係の一例を示す図
図10】実施の形態1に係る電圧測定装置を構成する偏光変調器の駆動電圧のモニター信号に対する光検出器の受光信号の関係の一例を示す図
図11】実施の形態1に係る電圧測定装置を構成するファラデーローテータの効果を説明する図
図12】実施の形態1に係る電圧測定装置が非接触型電気光学結晶を用いて直流電圧を測定した場合の測定電圧の時間変化の一例を示す図
図13】実施の形態1に係る電圧測定装置を構成する高圧導体に急峻な電圧が印加された場合の偏光変調器の駆動電圧のモニター信号と光検出器の受光信号との関係の一例を示す図
図14】実施の形態1に係る電圧測定回路が高圧導体に印加された電圧を測定する動作の一例を示すフローチャート
図15】実施の形態1に係る電圧測定装置を構成する接触型電気光学結晶の位相差と非接触型電気光学結晶の位相差との関係の一例を示す図
図16】実施の形態1に係る電圧測定装置を構成する高圧導体に急峻な電圧が印加された場合の電圧測定結果の時間変化の一例を示す図
図17】実施の形態2に係る電圧測定装置の構成例を示す図
図18】実施の形態2に係る電圧測定装置を構成する接触型電気光学結晶の結晶方位の第1の例を示す図
図19】実施の形態2に係る電圧測定装置を構成する接触型電気光学結晶の結晶方位の第2の例を示す図
図20】実施の形態2に係る電圧測定装置を構成する2つの接触型電気光学結晶の位相差の関係の一例を示す図
図21】実施の形態2に係る電圧測定回路が高圧導体に印加された電圧を測定する動作の一例を示すフローチャート
図22】電圧測定回路を実現するハードウェアの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施の形態にかかる電圧測定装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる電圧測定装置1の構成例を示す図である。実施の形態1にかかる電圧測定装置1は、送電系統、交直変換装置、あるいは周波数変換装置といった測定対象の電圧を測定する。実施の形態1に係る電圧測定装置1は、センサ部10と、投受光部20と、信号処理部30と、を備える。センサ部10と投受光部20は、光ファイバ40で接続される。光ファイバ40は、偏波保持ファイバ、すなわち、光弾性効果や構造変化を利用して、コアの直交する2つの軸方向で実効屈折率が異なる複屈折を生じさせて、伝送する光の偏波面保持特性を高めたファイバである。
【0013】
センサ部10は、高圧導体11と、接地導体12と、高圧導体11および接地導体12の双方と電気的に接触した電気光学結晶である接触型電気光学結晶13と、高圧導体11および接地導体12の一方の導体と電気的に接触し、他方の導体とは電気的に接触していない電気光学結晶である非接触型電気光学結晶14と、ファラデーローテータ15と、コリメータレンズ16と、を備える。なお、図1は、非接触型電気光学結晶14は、接地導体12のみと電気的に接触し、高圧導体11とは電気的に接触していない場合の例を示す。また、詳細については後述するが、接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14は、蒸着等により導電性の薄膜が形成された平面を有する電気光学結晶であり、平面に形成された薄膜が導体(高圧導体11、接地導体12)と密着している場合、電気光学結晶と導体とが「電気的に接触した状態」であるものとする。
【0014】
高圧導体11は、測定対象の電圧Vと同電位の導体である。測定対象の電圧は、数百kVといった高電圧である。接地導体12は、基準電位点に接続されている導体である。
【0015】
接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14は、1次の電気光学効果であるポッケルス効果を有する結晶である。ポッケルス効果とは、電気光学結晶に外部から電界が加えられた場合に、分極状態が変化し、屈折率が電界の強度に比例して変化する現象である。電気光学結晶の特定の方向に外部から電界を加えると、電気光学結晶の屈折率に異方性が生じる。光は、一般に、振動方向が互いに直交する2つの偏光成分の合成で表され、屈折率に異方性が生じている電気光学結晶を透過すると、2つの偏光成分に位相差、すなわち、偏光位相差が生じる。ポッケルス効果では、偏光位相差は電気光学結晶に加えられている電界の強度に比例するため、偏光素子を用いて、電気光学結晶を透過した光の偏光状態の変化を測定することによって、電気光学結晶に印加された電圧を求めることができる。接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14として用いることができるポッケルス効果を有する結晶は、例えば、LiNbO、LiTaO、ADP(NHPO)、KDP(HPO)、SiO(水晶)、Bi12SiO20、Bi12GeO20、BiGe12、ZnS、ZnTe、などである。
【0016】
なお、以下の説明では、接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14の端面のうち、高圧導体11へ向けられている端面を第1端面、接地導体12へ向けられている端面を第2端面と称することがある。第2端面は、第1端面とは逆側の端面であって、接地導体12に電気的に接続される。接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14に入射する光の進行方向は、接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14に印加される電界と同じ方向とする(縦型変調方式)。また、接地導体12側から接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14に光を入射させるため、接地導体12に光を透過する穴(以下では透過穴と称する場合がある)を設ける。光は、接地導体12に設けた透過穴から接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14の各々の第2端面に入射し、第1端面側に設けたミラーで反射した後、第2端面および接地導体12の透過穴から出射する。
【0017】
接触型電気光学結晶13は、高圧導体11に急峻な電圧が印加されて電歪効果の影響を受ける場合を除いて、高圧導体11に印加されている電圧Vを測定する役割を果たす。接触型電気光学結晶13と高圧導体11との間、または、接触型電気光学結晶13と接地導体12との間に空間的な隙間がある場合、接触型電気光学結晶13と空間的な隙間とで被測定電圧Vが分圧され、直流電圧を正確に計測することが難しくなる。そのため、図2に示すように、接触型電気光学結晶13の第1端面および第2端面には、導電性の薄膜13a,13bを蒸着又はスパッタにより密着して形成する。接触型電気光学結晶13の第1端面に密着される薄膜13aは、光を反射させるためのミラーの役割を果たす金属膜であり、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などを使用することができる。また、接触型電気光学結晶13の第2端面に密着される薄膜13bは、光を透過する必要があり、透明電極膜を使用することができる。また、図3に示すように、光が接触型電気光学結晶13の第2端面で反射することを避けるために、薄膜13bは第2端面の光が通過する領域(図3に示す例では、第2端面の中心部分)を除いた部分に形成し、光が通過する領域には、光の端面反射を防止する薄膜13cを設けてもよい。薄膜13cは、例えば、接触型電気光学結晶13に入射する光の波長の反射光を抑えるように設計された単層または多層の誘電体膜を使用することができる。
【0018】
非接触型電気光学結晶14は、高圧導体11に急峻な電圧が印加されて接触型電気光学結晶13が電歪効果の影響を受ける場合に、接触型電気光学結晶13の代わりに高圧導体11に印加されている電圧Vを測定する役割を果たす。電気光学結晶に急峻な高電圧が印加されると、電気光学結晶の電歪効果の影響により、測定信号にノイズ成分が重畳され、正しい電圧を測定することが難しくなる。電歪効果の影響は、電気光学結晶に印加される電圧が大きいほど大きくなるため、電気光学結晶に印加される電圧を下げることで電歪の効果の影響を緩和することができる。そのため、非接触型電気光学結晶14は、接触型電気光学結晶13と比較して、電気光学結晶にかかる電圧が十分小さくなるように設計する。例えば、図1に示すように、非接触型電気光学結晶14の電界方向の長さ、すなわち、第1端面から第2端面までの距離を、接触型電気光学結晶13よりも短く設定し、非接触型電気光学結晶14の第1端面を高圧導体11と物理的に距離を離して電気的に非接触にさせる。ここでは、非接触型電気光学結晶14の電界方向の長さは、接触型電気光学結晶13の電界方向の長さの10分の1程度にすることを想定する。この場合、非接触型電気光学結晶14と高圧導体11との間の空間的な隙間で被測定電圧が分圧されるため、非接触型電気光学結晶14の方が接触型電気光学結晶13よりも印加される電圧が十分小さくなり、高圧導体11に急峻な高電圧が印加された場合においても、電歪効果の影響を受けずに正しい電圧を測定することができる。
【0019】
非接触型電気光学結晶14の第1端面および第2端面には、図4に示すように、薄膜14a,14bが蒸着又はスパッタにより密着して形成されている。非接触型電気光学結晶14の第1端面に密着される薄膜14aは、光を反射させるためのミラーの役割を果たす薄膜であり、例えば、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)などの金属膜を使用することができる。また、薄膜14aは、導電性がある必要はなく、誘電体多層膜で構成されるミラーでもよい。また、非接触型電気光学結晶14の第2端面に密着される薄膜14bは、光を透過する必要があり、透明電極膜を使用することができる。また、図5に示すように、光が非接触型電気光学結晶14の第2端面で反射することを避けるために、薄膜14bは第2端面の光が通過する領域(図5に示す例では、第2端面の中心部分)を除いた部分に形成し、光が通過する領域には、光の端面反射を防止する薄膜14cを設けてもよい。薄膜14cは、例えば、非接触型電気光学結晶14に入射する光の波長の反射光を抑えるように設計された単層または多層の誘電体膜を使用することができる。また、第2端面に密着する薄膜は、導電性を有する必要はなく、図6に示すように、薄膜14cのみで構成してもよい。
【0020】
なお、電歪効果の影響は、電気光学結晶の端面形状に依存することが知られている。そこで、非接触型電気光学結晶14は、図7に示すように、第1端面と第2端面の形状を変化させてテーパー形状とすることで、電歪効果の影響を低減させてもよい。また、図8に示すように、非接触型電気光学結晶14の上部すなわち第1端面の側に、第1端面のエッジ部分への電界集中を緩和するための電界緩和電極17を設けてもよい。このように、非接触型電気光学結晶14の上部に電界緩和電極17を設けることで、電界緩和電極17のサイズを変更することで、非接触型電気光学結晶14に印加される電圧を調整することができる。
【0021】
ファラデーローテータ15は、ファラデー効果により、入射した光の偏光面を回転させるローテータ(回転子)である。なお、ファラデー効果とは、光の進行方向と平行に磁界を加えると磁界の強さに応じて偏光面が回転する現象である。一般的に、光ファイバ40内を光の位相状態を保持して伝送することは困難であるが、入射する光の偏光面を45度回転するように設計したファラデーローテータ15を用いて、光ファイバ40内を往復させることで、光の位相状態を保持して光を伝送することができる。
【0022】
コリメータレンズ16は、光ファイバ40から出射した光を平行光にし、さらに、接触型電気光学結晶13および非接触型電気光学結晶14の各々の第1端面で折り返して戻ってきた光を再び光ファイバ40に入射させる役割を果たす。
【0023】
投受光部20は、光源21と、光検出器22a、22bおよび22cと、偏光変調器23と、偏光子24と、検光子25a、25bおよび25cと、ビームスプリッタ26a、26bおよび26cと、コリメータレンズ27と、を備える。
【0024】
光源21としては、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、半導体レーザ、固体レーザ、又は気体レーザなどを使用することができる。光源21から発せられる光としては、内部光電効果を生じない程度に波長の長い光である、波長750nm以上の赤外光を使用することが望ましい。内部光電効果とは、波長の短い光の照射により、絶縁体の電気抵抗が下がり、電流が流れやすくなる現象である。また、光は光ファイバ40内を往復するため、干渉性の小さなLED、SLD(Super Luminescent Diode:スーパールミネッセントダイオード)、ASE(Amplified Spontaneous Emission:自然放射増幅光)光源などを使用することが望ましい。
【0025】
光検出器22a、22bおよび22cは、光-電気変換(O/E変換)により、光強度を電気信号として検出する。光検出器22a、22bおよび22cとしては、例えば、光源21が発する光の波長に高い感度を有するフォトダイオードを使用することができる。光検出器22aは、偏光変調器23から出射した光の偏光状態を測定するために使用する。光検出器22bは、接触型電気光学結晶13内を往復した光の偏光状態を測定するために使用する。光検出器22cは、非接触型電気光学結晶14内を往復した光の偏光状態を測定するために使用する。
【0026】
偏光変調器23は、透過光の偏光状態を変調する光学素子である。偏光変調器23としては、電気光学素子型の変調器、円筒型圧電素子に光ファイバを巻いて構成される圧電素子型の変調器などを用いることができる。偏光変調器23は、外部から電圧を電気光学素子または円筒型圧電素子に印加することで、直交する2つの偏光成分の間に位相差を与える。偏光変調器23への入射光が直線偏光である場合の出射光は、位相差が0となる電圧を印加した時は入射光と同じ直線偏光、位相差がλ/4となる電圧を印加した時は円偏光、位相差がλ/2となる電圧を印加した時は入射光の直線偏光に対して90度回転した直線偏光になる。
【0027】
偏光子24は、光源21と偏光変調器23との間に配置され、光源21から出射した光を直線偏光に変換する光学素子である。また、検光子25a,25b,25cは、それぞれ光検出器22a,22b,22cの前に配置され、透過する光から直線偏光を取り出す光学素子である。
【0028】
ビームスプリッタ26a、26bおよび26cは、偏光無依存のビームスプリッタであり、入射光の偏光状態を変化させずに、透過光および反射光を所定の光量比率で分割する光学素子である。ビームスプリッタ26aは、偏光変調器23の後に配置され、偏光変調器23が出射した光を、光検出器22aに入射させる光と、接触型電気光学結晶13または非接触型電気光学結晶14に入射させる光とに分離する役割を果たす。ビームスプリッタ26bは、光源21の側から見てビームスプリッタ26aの後に配置され、偏光変調器23が出射した光を、接触型電気光学結晶13に入射させる光と、非接触型電気光学結晶14に入射させる光とに分離し、接触型電気光学結晶13から戻ってきた光を光検出器22bに入射させる役割を果たす。ビームスプリッタ26cは、光源21の側から見てビームスプリッタ26bの後に配置され、偏光変調器23が出射した光を非接触型電気光学結晶14に入射させ、非接触型電気光学結晶14から戻ってきた光を光検出器22cに入射させる役割を果たす。
【0029】
コリメータレンズ27は、ビームスプリッタ26b、または、ビームスプリッタ26cで90度の方向へ反射された光を光ファイバ40に入射させ、さらに、センサ部10を経由し、光ファイバ40から出射された光を平行光にして光検出器22b、または、光検出器22cに入射させる役割を果たす。
【0030】
信号処理部30は、変調器駆動回路31と、電圧測定回路32と、を備える。変調器駆動回路31は、偏光変調器23を動作させるための駆動電圧を出力するとともに、駆動電圧のモニター信号を電圧測定回路32に出力する。電圧測定回路32は、光検出器22a、22bおよび22cの受光信号と、偏光変調器23の駆動電圧のモニター信号とに基づいて、高圧導体11に印加された電圧Vを算出する。電圧測定回路32は、算出した電圧Vを予め定められた分圧比により変換し、アナログ値又はデジタル値として出力する。また、電圧測定回路32は、算出した電圧Vを、図1では記載を省略している表示器を用いて、アナログ表示又はデジタル表示してもよい。
【0031】
以下に、実施の形態1に係る電圧測定装置1の動作について説明する。光源21から出射した光は、偏光子24に入射する。偏光子24は、入射した光から直線偏光を取り出す。偏光子24で取り出された直線偏光は、偏光変調器23に入射する。偏光変調器23は、変調器駆動回路31から出力される駆動電圧に応じて、入射する直線偏光を楕円偏光や円偏光に変化させる。偏光変調器23から出射した光は、ビームスプリッタ26aにより、透過する光と90度の方向へ反射する光とに分岐され、90度の方向へ反射した光は検光子25aに入射する。検光子25aは、入射した光から直線偏光を取り出す。検光子25aにより取り出された直線偏光は、光検出器22aに入射する。
【0032】
図9は、光源21、光検出器22a,22b,22c、偏光変調器23、偏光子24、および検光子25a,25b,25cと、光の偏光状態との関係の例を示す図である。偏光変調器23は、電気光学結晶を用いた変調器であり、駆動電圧VEOを印加すると、電圧VEOに比例して電気光学結晶の軸(電界方向)に垂直な方向(ここではX方向)と平行な方向(ここではY方向)に屈折率差、つまり、偏光位相差θが生じると仮定する。偏光子24および検光子25aは、図9に示すように、透過する直線偏光が偏光変調器23の結晶軸(電界方向)に対して45度方向となるように配置する。偏光変調器23に入射する光量をIin、偏光変調器23から出射して検光子25aを介して光検出器22aで検出される光量をIoutとすると、Iout/Iinは、次式(1)で表される。
【0033】
【数1】
【0034】
偏光位相差θは、偏光変調器23の駆動電圧VEOに比例するため、偏光変調器23の駆動電圧VEOのモニター信号に対する光検出器22aの受光信号は、図10の実線のように表せる。
【0035】
偏光変調器23から出射し、ビームスプリッタ26aを透過した光は、ビームスプリッタ26bで透過する光と90度の方向へ反射する光とに分岐され、90度の方向へ反射した光は、コリメータレンズ27で光ファイバ40に集光される。光ファイバ40に集光された光は、センサ部10に伝送され、センサ部10のコリメータレンズ16から出射し、ファラデーローテータ15に入射する。ファラデーローテータ15は、入射した光の偏光面を45度回転させる。ファラデーローテータ15から出た光は、接触型電気光学結晶13に第2端面から入射し、第1端面に設けたミラーの機能をもつ薄膜13aにより反射され、第2端面から出射する。接触型電気光学結晶13の第2端面から出射した光は、再度、ファラデーローテータ15に入射する。ファラデーローテータ15は、入射した光の偏光面を45度回転させることで、往復で光の偏光面を90度回転させる。ファラデーローテータ15から出射した光は、コリメータレンズ16で光ファイバ40に集光される。光ファイバ40に集光された光は、投受光部20に伝送される。
【0036】
ここで、図11を用いて、ファラデーローテータ15による位相ノイズのキャンセル原理を説明する。直線偏光の光を偏波保持ファイバの固有軸に対し、45度の傾きで入射させる場合を想定する。直線偏光をX軸方向およびY軸方向の直交偏光成分に分け、各偏光成分の位相をそれぞれφxおよびφyとする。一般的に、光が光ファイバ内を伝搬する際に、ファイバの曲げや温度変化などの外乱により、各偏光成分に位相ノイズnxおよびnyが付加される。光ファイバから出射した光をミラーでそのまま反射した場合、再度光ファイバを透過した後の位相は、φx+2nxおよびφy+2nyとなる。つまり、光ファイバを往復した直交偏光間の位相差Δは、次式(2)で表され、2nx-2nyが光ファイバによる位相ノイズとなる。
【0037】
【数2】
【0038】
これに対して、図11に示すように、偏光面を45度回転することができるファラデーローテータ15を挿入した場合、光ファイバ40から出射した光は、ファラデーローテータ15を往復することで、偏光面が90度回転し、直交偏光成分が入れ替わる。つまり、光ファイバ40を往復した後は、各偏光成分に位相ノイズnx+nyが付加される。このときの直交偏光の位相差Δは、次式(3)で表され、光ファイバ40による位相ノイズnxおよびnyが除去される。
【0039】
【数3】
【0040】
電圧測定装置1の動作説明に戻る。センサ部10の接触型電気光学結晶13内を往復し、光ファイバ40を介して投受光部20に伝送された光は、コリメータレンズ27で平行光となり、ビームスプリッタ26bおよび検光子25bを透過した後、光検出器22bで検出される。検光子25bは、図9に示すように、透過する直線偏光が偏光変調器23の電気光学結晶の軸(電界方向)に対して45度方向となるように配置する。偏光変調器23の駆動電圧VEOのモニター信号に対する光検出器22bの受光信号は、光検出器22aの受光信号に対する位相差をθ13とすると、図10の太い破線のように表せる。以下では、接触型電気光学結晶13を含めて、光が透過した全ての光学素子に自然複屈折がない、かつ、光路長による光の時間遅延が無視できると仮定する。高圧導体11の電圧Vがゼロの場合、光検出器22bの受光信号の位相は、光検出器22aの受光信号の位相と同じになり、位相差θ13はゼロとなる。
【0041】
高圧導体11に電圧Vが印加されると、高圧導体11と接地導体12は、それぞれ接触型電気光学結晶13の第1端面に密着した薄膜13aと第2端面に密着した薄膜13bと導通しているため、接触型電気光学結晶13に電圧Vが印加される。接触型電気光学結晶13に電圧Vが印加されると、電圧Vに比例して光の偏光面の直交する2方向に屈折率差、つまり、位相差θ13が生じる。信号処理部30の電圧測定回路32は、光検出器22aの受光信号と、光検出器22bの受光信号と、変調器駆動回路31から出力される駆動電圧VEOのモニター信号とに基づいて位相差θ13を算出する。電圧測定回路32は、さらに、次式(4)で表される関係を利用して、予め取得した比例定数Aに基づいて、電圧Vを算出する。比例定数Aは、接触型電気光学結晶13のポッケルス係数に依存する。
【0042】
【数4】
【0043】
偏光変調器23から出射し、ビームスプリッタ26aおよびビームスプリッタ26bを透過した光は、ビームスプリッタ26cにより、90度の方向へ反射され、90度の方向へ反射した光はコリメータレンズ27で光ファイバ40に集光される。光ファイバ40に集光された光は、センサ部10に伝送され、センサ部10のコリメータレンズ16から出射し、ファラデーローテータ15に入射する。ファラデーローテータ15は、入射した光の偏光面を45度回転させる。ファラデーローテータ15から出射した光は、非接触型電気光学結晶14に第2端面から入射し、第1端面に設けたミラーの機能をもつ薄膜14aにより反射され、第2端面から出射する。非接触型電気光学結晶14の第2端面から出射した光は、再度、ファラデーローテータ15に入射する。ファラデーローテータ15は、入射した光の偏光面を45度回転させることで、往復で光の偏光面を90度回転させる。ファラデーローテータ15から出射した光は、コリメータレンズ16で光ファイバ40に集光される。光ファイバ40に集光された光は、投受光部20に伝送される。
【0044】
光ファイバ40を介して投受光部20に伝送された光は、コリメータレンズ27で平行光となり、ビームスプリッタ26cおよび検光子25cを透過した後、光検出器22cで検出される。検光子25cは、図9に示すように、透過する直線偏光が偏光変調器23の電気光学結晶の軸(電界方向)に対して45度方向となるように配置する。偏光変調器23の駆動電圧VEOのモニター信号に対する光検出器22cの受光信号は、光検出器22aの受光信号に対する位相差をθ14とすると、図10の細い破線のように表わせる。以下では、非接触型電気光学結晶14を含めて透過した全ての光学素子に自然複屈折がない、かつ、光路長による光の時間遅延が無視できると仮定する。高圧導体11の電圧Vがゼロの場合、光検出器22cの受光信号の位相は、光検出器22aの受光信号の位相と同じになり、位相差θ14はゼロとなる。
【0045】
高圧導体11に電圧Vが印加されると、非接触型電気光学結晶14と高圧導体11との空間的な隙間で電圧Vが分圧されて、非接触型電気光学結晶14に電圧V’が印加される。非接触型電気光学結晶14に電圧V’が印加されると、電圧V’に比例して光の偏光面の直交する2方向に屈折率差、つまり、位相差θ14が生じる。信号処理部30の電圧測定回路32は、光検出器22aの受光信号と、光検出器22cの受光信号と、変調器駆動回路31から出力される駆動電圧VEOのモニター信号とに基づいて位相差θ14を算出する。電圧測定回路32は、さらに、次式(5)で表される関係を利用して、予め取得した比例定数Bに基づいて、電圧V’を算出する。比例定数Bは、非接触型電気光学結晶14のポッケルス係数に依存する。
【0046】
【数5】
【0047】
高圧導体11に電圧Vが印加された場合、非接触型電気光学結晶14に印加される電圧V’は、次式(6)に示すように、所定の分圧比Cで分圧された値となる。
【0048】
【数6】
【0049】
ただし、高圧導体11に印加された電圧Vが直流の場合、非接触型電気光学結晶14に印加される電圧V’は、時間が経過するにつれて、電圧値が徐々に低下する。そのため、非接触型電気光学結晶14を用いて、上記の式(5)および式(6)から高圧導体11に印加される電圧Vを算出した場合、図12に示すように、時間が経過するにつれて、測定電圧と実際に印加された電圧Vにずれが生じる。測定電圧が正しい電圧Vに対して減衰する時定数は、非接触型電気光学結晶14の電気的特性に主に依存するが、おおむね数秒以上のタイムスケールとなる。そのため、非接触型電気光学結晶14は、高圧導体11に印加される比較的短時間の電圧Vの変化を測定するために利用する。例えば、1秒以内の電圧Vの測定に非接触型電気光学結晶14を利用する。高圧導体11に印加される電圧Vの変化量ΔVは、上記の式(5)により算出される電圧V’の変化量ΔV’を用いて、次式(7)で算出できる。
【0050】
【数7】
【0051】
接触型電気光学結晶13は、例えば、1マイクロ秒以内で100kVを超えるような急峻な電圧が高圧導体11に印加された場合、電歪効果の影響により、図13で太い破線が表すように、光検出器22bの受光信号にノイズ成分が重畳され、正しい電圧を測定することが困難となる。電歪効果の影響は、電気光学結晶に印加される電圧が大きいほど大きくなる。そのため、非接触型電気光学結晶14は、接触型電気光学結晶13に対して電界方向のサイズを小さくして、高圧導体11と電気光学結晶との間に空間的な隙間を設ける。これにより、非接触型電気光学結晶14は、接触型電気光学結晶13と比較して、電気光学結晶に印加される電圧を下げて、電歪効果の影響を抑えることができる。例えば、非接触型電気光学結晶14は、高圧導体11に想定される最大電圧が瞬間的に印加された場合でも、非接触型電気光学結晶14に分圧されて実際に印加される電圧が電歪効果の影響を十分無視できるように、電界方向のサイズを設計する。これにより、非接触型電気光学結晶14は、急峻な高電圧が高圧導体11に印加された場合においても、図13で細い破線が表すように、光検出器22cの受光信号にノイズ成分が重畳されることなく、正しい電圧を測定することができる。
【0052】
図14は、実施の形態1に係る電圧測定回路32が高圧導体11に印加された電圧Vを測定する動作の一例を示すフローチャートである。図14に示す電圧Vの測定動作では、まず、電圧測定回路32は、光検出器22aの受光信号と、光検出器22bの受光信号と、光検出器22cの受光信号と、変調器駆動回路31から出力される偏光変調器23の駆動電圧VEOのモニター信号とに基づいて、接触型電気光学結晶13の位相差θ13および非接触型電気光学結晶14の位相差θ14を測定する(ステップS11)。
【0053】
接触型電気光学結晶13と非接触型電気光学結晶14とが同じ種類の結晶でサイズだけが異なる場合、すなわち、電界方向の長さが異なる場合、位相差がπになる高圧導体11の半波長電圧Vπは、非接触型電気光学結晶14の方が接触型電気光学結晶13よりも大きくなる。例えば、非接触型電気光学結晶14の半波長電圧V14πが300kV、接触型電気光学結晶13の半波長電圧V13πが25kVの場合、接触型電気光学結晶13の位相差θ13と非接触型電気光学結晶14の位相差θ14の関係は、図15のように表せる。接触型電気光学結晶13単独では、位相差θ13が0≦θ13<2πとなる電圧Vが0≦V<50kVの範囲しか電圧を測定することができないが、非接触型電気光学結晶14単独では、位相差θ14が0≦θ14<2πとなる電圧Vが0≦V<600kVの範囲まで電圧を測定することができる。ただし、上述したように、高圧導体11に印加される電圧Vが直流電圧の場合、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14から求められる電圧は、図12に示すように、時間が経過するにつれて正しい電圧からずれが生じるため、非接触型電気光学結晶14は、主に短時間の電圧変化を検出するために利用する。
【0054】
次に、電圧測定回路32は、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14について前回の測定値からの位相変化量Δθ14を算出する(ステップS12)。次に、電圧測定回路32は、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が定められた閾値θT以下であるかを確認する(ステップS13)。閾値θTは、接触型電気光学結晶13が電歪効果の影響を無視できなくなる高圧導体11の電圧変化量ΔVに基づいて決定する。例えば、ΔVが50kVで非接触型電気光学結晶14の半波長電圧V14πが300kVの場合、閾値θTは1/6πとなる。
【0055】
電圧測定回路32は、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が閾値θT以下の場合(ステップS13:Yes)、上記の式(4)を用い、接触型電気光学結晶13の位相差θ13に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する(ステップS14)。
【0056】
ただし、接触型電気光学結晶13の位相差θ13が測定できる範囲は0≦θ13<2πであり、高圧導体11に印加される電圧Vが0≦V<2V13π[V]の範囲外になる場合は、接触型電気光学結晶13の位相差θ13のみを用いて正しい電圧Vを測定することができない。そのため、電圧測定回路32は、高圧導体11に印加される電圧Vが0≦V<2V13π[V]の範囲外になる場合は、前回の測定電圧と非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14の情報とを用いて、接触型電気光学結晶13の位相差θ13を推定する。例えば、前回の測定電圧が25kV(つまり、θ13=π)で、高圧導体11への電圧変化量ΔVが+25kV、つまり、電圧Vが25kVから50kVに変化する場合、接触型電気光学結晶13の位相差θ13は0か2πとなり、電圧Vが0kVか50kVかを判断することができない。その場合、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14は、電圧Vが0kVの時は-1/12π、50kVの時は+1/12πになることを利用することで、電圧Vが50kVであることを推定する。このように前回の測定電圧と非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14の情報とを用いることで、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が-π≦Δθ14<πの範囲内、つまり、高圧導体11への電圧変化量ΔVが-300kV≦ΔV<300kVの範囲内であれば、電圧Vを算出することが可能になる。
【0057】
電圧測定回路32は、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が閾値θT以下ではない場合(ステップS13:No)、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する(ステップS15)。具体的には、電圧測定回路32は、まず、上記の式(5)および式(7)より、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14から高圧導体11の電圧の変化量ΔVを求める。電圧測定回路32は、次に、電圧の変化量ΔVを前回の測定電圧に追加することにより、高圧導体11の電圧Vを算出する。
【0058】
次に、電圧測定回路32は、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が閾値θTを超えてから定められた時間Tが経過しているか判断する(ステップS16)。時間Tは、接触型電気光学結晶13に対する電歪効果の影響が無視できる時間とする。すなわち、この時間Tは、高圧導体11に急峻な高電圧が印加されてから、接触型電気光学結晶13に対する電歪効果の影響が収まり、接触型電気光学結晶13の位相差θ13に基づいて、正しい電圧を測定することができるようになるまでの時間であり、おおむね10ms以内である。
【0059】
電圧測定回路32は、位相変化量Δθ14が閾値θTを超えてから定められた時間Tが経過していない場合(ステップS16:No)、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14を測定する(ステップS17)。次に、電圧測定回路32は、ステップS15に戻り、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する(ステップS15)。以降、位相変化量Δθ14が閾値θTを超えてから定められた時間Tが経過するまでステップS15~S17を繰り返す。一方、電圧測定回路32は、位相変化量Δθ14が閾値θTを超えてから定められた時間Tが経過した場合(ステップS16:Yes)、ステップS11に戻り、上記のステップS11およびこれに続く各工程(各ステップの処理)を繰り返す。
【0060】
図16は、高圧導体11に急峻な電圧Vが印加された際の電圧測定回路32により出力される電圧の時間変化の一例を示す図である。図16において、黒色の丸印が接触型電気光学結晶13の位相差θ13に基づいて測定された電圧Vを示し、白色の丸印が非接触型電気光学結晶14の位相差θ14に基づいて測定された電圧Vを示す。図16に示す例では、急峻な電圧が印加される前は、電圧測定回路32は、接触型電気光学結晶13の位相差θ13に基づいて高圧導体11の電圧Vを計算して出力する(図14のステップS11~S14で示す動作)。一方、急峻な電圧が印加された直後から、接触型電気光学結晶13の電歪効果の影響が無視できる時間Tが経過するまでの間、電圧測定回路32は、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14に基づいて高圧導体11の電圧Vを計算して出力する(図14のステップS15~S17で示す動作)。接触型電気光学結晶13の電歪効果の影響が無視できる時間Tが経過した後は、電圧測定回路32は、再び接触型電気光学結晶13の位相差θ13に基づいて高圧導体11の電圧Vを計算して出力する(図14のステップS11~S14で示す動作)。
【0061】
このように、実施の形態1にかかる電圧測定装置1は、測定対象の電圧と同電位の導体である高圧導体11および基準電位点に接続されている導体である接地導体12の双方と電気的に接触した電気光学結晶である接触型電気光学結晶13と、高圧導体11および接地導体12のいずれか一方と電気的に接触した電気光学結晶である非接触型電気光学結晶14と、を備え、急峻な電圧が高圧導体11に印加されてから定められた時間が経過するまでの間、すなわち、接触型電気光学結晶13の電歪効果の影響を無視できる状態となるまでの間、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する。電圧測定装置1は、定められた時間が経過した後は、接触型電気光学結晶13の位相差θ13に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する。電圧測定装置1によれば、直流計測を実現するだけでなく、急峻な電圧が印加された場合においても、直流電圧を精度良く測定することができる。
【0062】
実施の形態2.
上述した実施の形態1に係る電圧測定装置1は、電圧測定回路32が高圧導体11に印加された電圧Vの測定を開始する前に、高圧導体11に直流、かつ、0≦V<2V13π[V]の範囲外の電圧Vが長時間印加されていた場合、正しい電圧を測定することができない。実施の形態2では、このような課題を解決して正しい電圧を測定することが可能な電圧測定装置を説明する。
【0063】
上記の課題を解決するために、実施の形態2に係る電圧測定装置1aは、実施の形態1に係る電圧測定装置1に対して、接触型電気光学結晶13に加えて、接触型電気光学結晶13と同様の電気光学結晶、すなわち、高圧導体11および接地導体12の双方と電気的に接触した電気光学結晶である他の接触型電気光学結晶をさらに備える。また、他の接触型電気光学結晶の半波長電圧は接触型電気光学結晶13の半波長電圧V13πと異なることとする。接触型電気光学結晶13の半波長電圧と他の接触型電気光学結晶の半波長電圧とが異なるようにする方法としては、例えば、以下の3つがある。
【0064】
(1)接触型電気光学結晶13と他の接触型電気光学結晶とで同じ材質の結晶を使用し、結晶を切り出す方位を変化させる。
(2)接触型電気光学結晶13と他の接触型電気光学結晶とで同じ材質の結晶を使用し、波長の異なる光を入射させる。
(3)接触型電気光学結晶13と他の接触型電気光学結晶とで異なる材質の結晶を使用する。
【0065】
本実施の形態では、一例として、上記の方法(1)を適用した構成の電圧測定装置について説明を行う。
【0066】
図17は、実施の形態2に係る電圧測定装置1aの構成例を示す図である。図17では、図1に示した実施の形態1に係る電圧測定装置1と共通の構成要素に図1と同一の符号を付している。
【0067】
図17に示すように、実施の形態2に係る電圧測定装置1aは、センサ部101、投受光部201および信号処理部301を備える。この電圧測定装置1aは、実施の形態1に係る電圧測定装置1に対して、接触型電気光学結晶131と、ファラデーローテータ15と、コリメータレンズ16と、光検出器22dと、検光子25dと、ビームスプリッタ26dと、コリメータレンズ27と、光ファイバ40とを追加した構成である。
【0068】
電圧測定装置1aにおいて、センサ部101は、実施の形態1に係る電圧測定装置1のセンサ部10に接触型電気光学結晶131、ファラデーローテータ15およびコリメータレンズ16を追加した構成である。投受光部201は、実施の形態1に係る電圧測定装置1の投受光部20に光検出器22d、検光子25d、ビームスプリッタ26dおよびコリメータレンズ27を追加した構成である。また、信号処理部301は、実施の形態1に係る電圧測定装置1の信号処理部30の電圧測定回路32を電圧測定回路321に置き換えた構成である。なお、光検出器22d、検光子25dおよびビームスプリッタ26dは、それぞれ、光検出器22a,22b,22c、検光子25a,25b,25cおよびビームスプリッタ26a,26b,26cと同じ部品である。
【0069】
接触型電気光学結晶131は、接触型電気光学結晶13と同様に、第1端面および第2端面に導電性の薄膜が密着して形成され、接地導体12および高圧導体11の双方と電気的に接触する。接触型電気光学結晶13および131は、同じ材質の結晶であるが、図18および図19に示すように、結晶軸に対する切り出し方を変化させることで、半波長電圧を異なる値に調整することができる。図18は接触型電気光学結晶13を切り出す方法を示し、図19は接触型電気光学結晶131を切り出す方法を示す。
【0070】
以下では、例として、接触型電気光学結晶13および131にBiGe12を使用し、光源の波長を850nmとして説明を行う。図18に示すように、接触型電気光学結晶13を結晶軸[001]方向に沿って切り出すのに対し、図19に示すように、接触型電気光学結晶131については結晶軸[001]に対してφだけ傾けて切り出す。例えばφ=10度とする。この場合、接触型電気光学結晶13の半波長電圧V13πは25kV、接触型電気光学結晶131の半波長電圧V131πは26.5kVとなり、接触型電気光学結晶131の半波長電圧V131πは、接触型電気光学結晶13の半波長電圧V13πの1.06倍になる。この場合、接触型電気光学結晶13単独で測定できる電圧Vの範囲は、0≦V<50kV(=2V13π)、接触型電気光学結晶131単独で測定できる電圧Vの範囲は、0≦V<53kV(=2V131π)である。この場合、図20に示すように、接触型電気光学結晶13の位相差θ13と接触型電気光学結晶131の位相差θ131の関係を利用することで、電圧Vの測定範囲を-400kV≦V≦+400kVを超える範囲に拡大することができる。なお、測定可能になる電圧範囲は、接触型電気光学結晶13の半波長電圧と接触型電気光学結晶131の半波長電圧との比によって決まる。つまり、測定可能になる電圧範囲は、接触型電気光学結晶131の結晶の切り出し角度φを変化させることにより調整することができる。
【0071】
図21は、実施の形態2に係る電圧測定回路321が高圧導体11に印加された電圧Vを測定する動作の一例を示すフローチャートである。電圧測定回路321が高圧導体11に印加された電圧Vを測定する動作は、実施の形態1に係る電圧測定回路32が高圧導体11に印加された電圧Vを測定する動作(図14参照)と一部異なる。図21では、図14に示した実施の形態1に係る電圧測定回路32の動作と共通の処理に図14と同一のステップ番号を付している。図14と同一のステップ番号を付した処理については詳細説明を省略する。
【0072】
図21に示す電圧Vの測定動作では、まず、電圧測定回路321は、光検出器22aの受光信号と、光検出器22bの受光信号と、光検出器22cの受光信号と、光検出器22dの受光信号と、変調器駆動回路31から出力される偏光変調器23の駆動電圧VEOのモニター信号とに基づいて、接触型電気光学結晶13,131それぞれの位相差θ13,θ131および非接触型電気光学結晶14の位相差θ14を測定する(ステップS21)。接触型電気光学結晶131の位相差θ131は、接触型電気光学結晶13の位相差θ13および非接触型電気光学結晶14の位相差θ14と同様の方法で測定する。
【0073】
次に、電圧測定回路321は、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14について前回の測定値からの位相変化量Δθ14を算出する(ステップS12)。次に、電圧測定回路321は、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が定められた閾値θT以下であるかを確認する(ステップS23)。このステップS13で用いる閾値θTは、接触型電気光学結晶13および接触型電気光学結晶131の両方が電歪効果の影響を無視できなくなる高圧導体11の電圧変化量ΔVに基づいて決定する。
【0074】
電圧測定回路321は、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が閾値θT以下の場合(ステップS23:Yes)、接触型電気光学結晶13および131のそれぞれの位相差θ13およびθ131に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する(ステップS24)。すなわち、電圧測定回路321は、図20に示すように、接触型電気光学結晶13の位相差θ13と接触型電気光学結晶131の位相差θ131との関係を利用して、高圧導体11の電圧Vを算出する。
【0075】
電圧測定回路321は、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が閾値θT以下ではない場合(ステップS23:No)、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する(ステップS15)。
【0076】
次に、電圧測定回路321は、非接触型電気光学結晶14の位相変化量Δθ14が閾値θTを超えてから定められた時間Tが経過しているか判断する(ステップS26)。時間Tは、接触型電気光学結晶13および131に対する電歪効果の影響が無視できる時間とする。すなわち、この時間Tは、高圧導体11に急峻な高電圧が印加されてから、接触型電気光学結晶13および131に対する電歪効果の影響が収まり、接触型電気光学結晶13の位相差θ13と接触型電気光学結晶131の位相差θ131との関係を利用して正しい電圧を測定することができるようになるまでの時間であり、おおむね10ms以内である。
【0077】
電圧測定回路321は、位相変化量Δθ14が閾値θTを超えてから定められた時間Tが経過していない場合(ステップS26:No)、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14を測定する(ステップS17)。次に、電圧測定回路321は、ステップS15に戻り、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する(ステップS15)。以降、位相変化量Δθ14が閾値θTを超えてから定められた時間Tが経過するまでステップS15、S26およびS17を繰り返す。一方、電圧測定回路321は、位相変化量Δθ14が閾値θTを超えてから定められた時間Tが経過した場合(ステップS26:Yes)、ステップS21に戻り、上記のステップS21およびこれに続く各工程(各ステップの処理)を繰り返す。
【0078】
このように、実施の形態2にかかる電圧測定装置1aは、測定対象の電圧と同電位の導体である高圧導体11および基準電位点に接続されている導体である接地導体12の双方と電気的に接触した電気光学結晶である接触型電気光学結晶13と、高圧導体11および接地導体12の双方と電気的に接触し、かつ半波長電圧が接触型電気光学結晶13と異なる電気光学結晶である接触型電気光学結晶131と、高圧導体11および接地導体12のいずれか一方と電気的に接触した電気光学結晶である非接触型電気光学結晶14と、を備え、急峻な電圧が高圧導体11に印加されてから定められた時間が経過するまでの間、すなわち、接触型電気光学結晶13および131の電歪効果の影響を無視できる状態となるまでの間、非接触型電気光学結晶14の位相差θ14に基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する。電圧測定装置1aは、定められた時間が経過した後は、接触型電気光学結晶13の位相差θ13と接触型電気光学結晶131の位相差θ131とに基づいて高圧導体11の電圧Vを算出する。電圧測定装置1aによれば、実施の形態1に係る電圧測定装置1と同様の効果を得ることができ、さらに、電圧測定回路321が高圧導体11に印加された電圧Vを測定する前に、高圧導体11に直流、かつ、0≦V<2V13π[V]の範囲外の電圧Vが長時間印加されていた場合でも、正しい電圧を測定することができる。
【0079】
次に、実施の形態1に係る電圧測定装置1の電圧測定回路32および実施の形態2に係る電圧測定装置1aの電圧測定回路321のハードウェア構成について説明する。電圧測定回路32および321は、例えば、図22に示す構成のハードウェア、すなわち、プロセッサ91、メモリ92およびインタフェース93により実現される。図22は、電圧測定回路32および321を実現するハードウェアの一例を示す図である。プロセッサ91は、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう)、システムLSI(Large Scale Integration)などである。メモリ92は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などである。インタフェース93は、電圧測定回路32,321が周辺の回路、例えば、投受光部20,201、変調器駆動回路31との間でデータを受け渡すための回路である。インタフェース93は、電圧の測定結果を外部の機器に出力する場合にも使用される。
【0080】
電圧測定回路32および321は、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせた処理回路で実現してもよい。
【0081】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0082】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0083】
(付記1)
測定対象と同電位の高圧導体へ向けられた第1端面と、前記第1端面とは逆側の接地導体へ向けられた第2端面とを各々が有し、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬する光のうち振動方向が互いに直交する2つの偏光成分に、前記第1端面と前記第2端面との間において作用する電界の強さに応じた位相差を生じさせる複数の電気光学結晶を含むセンサ部と、
前記複数の電気光学結晶の各々について、電気光学結晶から出射された光に含まれる成分であって、前記第1端面と前記第2端面との間を伝搬したことによって偏光状態が変化した成分の光を検出する複数の光検出器を含む投受光部と、
前記複数の電気光学結晶に対応する複数の光検出器の各々によって検出される信号に基づいて、前記高圧導体に印加されている電圧を求める信号処理部と、
を備え、
前記センサ部は、
前記第1端面が前記高圧導体に電気的に接触するとともに前記第2端面が前記接地導体に電気的に接触する接触型電気光学結晶と、
前記第1端面が前記高圧導体に電気的に接触するとともに前記第2端面が前記接地導体と電気的に非接触の関係、または、前記第2端面が前記接地導体と電気的に接触するとともに前記第1端面が前記高圧導体と電気的に非接触の関係である非接触型電気光学結晶と、
を備えることを特徴とする電圧測定装置。
(付記2)
前記非接触型電気光学結晶の前記第1端面と前記第2端面との間の距離が前記接触型電気光学結晶の前記第1端面と前記第2端面との間の距離よりも短い、
ことを特徴とする付記1に記載の電圧測定装置。
(付記3)
前記非接触型電気光学結晶は、前記第1端面の形状と前記第2端面の形状とが異なる、
ことを特徴とする付記1または2に記載の電圧測定装置。
(付記4)
前記信号処理部は、前記高圧導体に急峻な電圧が印加された場合、前記接触型電気光学結晶の電歪効果の影響が収まるまでの間、前記非接触型電気光学結晶に対応する前記光検出器によって検出される信号に基づいて、前記高圧導体に印加されている電圧を求める、 ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の電圧測定装置。
(付記5)
前記信号処理部は、前記接触型電気光学結晶に対応する光検出器によって検出される信号に基づいて求める前記高圧導体に印加されている電圧と、前記非接触型電気光学結晶に対応する光検出器によって検出される信号に基づいて求める前記高圧導体に印加されている電圧の時間変化の情報とを用いて、前記高圧導体に印加されている電圧を求める、
ことを特徴とする付記1から4のいずれか一つに記載の電圧測定装置。
(付記6)
前記センサ部は、
前記接触型電気光学結晶を複数備え、
前記高圧導体に同じ電圧が印加された場合に複数の前記接触型電気光学結晶の各々を伝搬する光に生じる前記位相差が前記接触型電気光学結晶ごとに異なり、
前記信号処理部は、複数の前記接触型電気光学結晶に対応する複数の前記光検出器の各々によって検出される信号の関係に基づいて、前記高圧導体に印加されている電圧を求める、
ことを特徴とする付記1から5のいずれか一つに記載の電圧測定装置。
【符号の説明】
【0084】
1,1a 電圧測定装置、10,101 センサ部、11 高圧導体、12 接地導体、13,131 接触型電気光学結晶、13a,13b,13c,14a,14b,14c 薄膜、14 非接触型電気光学結晶、15 ファラデーローテータ、16,27 コリメータレンズ、17 電界緩和電極、20,201 投受光部、21 光源、22a,22b,22c,22d 光検出器、23 偏光変調器、24 偏光子、25a,25b,25c,25d 検光子、26a,26b,26c,26d ビームスプリッタ、30,301 信号処理部、31 変調器駆動回路、32,321 電圧測定回路、40 光ファイバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22