(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183132
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20231220BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231220BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01B5/14 A
B32B27/00 A
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096592
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】八倉 崇大
(72)【発明者】
【氏名】河野 文彦
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AB24B
4F100AK02A
4F100AK02J
4F100AK25C
4F100AK41A
4F100AK41J
4F100AK49A
4F100AK49J
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA21B
4F100CA21H
4F100DE03B
4F100DE03H
4F100EH462
4F100JG01
4F100JN01
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC10
(57)【要約】
【課題】基材の構成材料によらず、屈曲性に優れる透明導電性フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の透明導電性フィルムは、基材と、該基材の少なくとも片側に配置された導電層と、該導電層の該基材とは反対側に配置された保護層とを備え、該導電層が、金属ナノワイヤを含み、該保護層の23℃におけるせん断強度が、150MPa以下である。1つの実施形態においては、上記金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材の少なくとも片側に配置された導電層と、
該導電層の該基材とは反対側に配置された保護層とを備え、
該導電層が、金属ナノワイヤを含み、
該保護層の23℃におけるせん断強度が、150MPa以下である、
透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記金属ナノワイヤが、銀ナノワイヤである、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
【請求項3】
前記基材が、シクロオレフィン系樹脂から構成される、請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチセンサーの電極等に用いられる透明導電性フィルムとして、樹脂フィルム上にインジウム・スズ複合酸化物層(ITO層)等の金属酸化物層が形成された透明導電性フィルムが多用されている。しかし、金属酸化物層が形成された透明導電性フィルムには、屈曲性が不十分であり、曲げ等の物理的な応力によってクラックが発生しやすいという問題がある。
【0003】
また、透明導電性フィルムとして、銀や銅などから構成される金属ナノワイヤを含む導電層を備える透明導電性フィルムが提案されている。このような透明導電性フィルムは、通常、基材上に当該導電層を形成して構成され、屈曲性に優れる点で有利である。基材を構成する材料としては所定の樹脂が多用される。ポリエチレンテレフタレート等の位相差を発現する材料を用いると、画像表示装置に適用した場合に、不要な着色、虹模様が生じたりして、視認性を低下させることがある。視認性を阻害しない透明導電性フィルムを得るために、基材としてシクロオレフィン系樹脂フィルムを用いることが検討されている。しかしながら、シクロオレフィン系樹脂フィルムは割れやすく、屈曲性に乏しいという特徴を有し、当該フィルムを用いると、金属ナノワイヤを含む透明導電性フィルムのメリットが損なわれるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、基材の構成材料によらず、屈曲性に優れる透明導電性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.本発明の透明導電性フィルムは、基材と、該基材の少なくとも片側に配置された導電層と、該導電層の該基材とは反対側に配置された保護層とを備え、該導電層が、金属ナノワイヤを含み、該保護層の23℃におけるせん断強度が、150MPa以下である。
2.上記1の透明導電性フィルムにおいて、上記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤであってもよい。
3.上記1または2の透明導電性フィルムにおいて、上記基材は、シクロオレフィン系樹脂であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基材の構成材料によらず、屈曲性に優れる透明導電性フィルムを提供することができる。本発明の透明導電性フィルムにおいては、例えば、基材として、シクロオレフィン系樹脂フィルムを用いることも可能となり、このような樹脂フィルムを含む透明導電性フィルムは、光学特性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.透明導電性フィルムの全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。透明導電性フィルム100は、基材10と、基材10の少なくとも片側に配置された導電層20と、導電層20の基材10とは反対側に配置された保護層30とを備える。導電層20は、金属ナノワイヤ21を含む。図示していないが、透明導電性フィルムは、任意の適切なその他の層をさらに含んでいてもよい。
【0010】
保護層30は、金属ナノワイヤ21を保護する層である。本発明の実施形態においては、保護層30を設けることにより、導電層20の耐久性を向上させることができる。より具体的には、金属ナノワイヤから構成される導電層は、耐擦傷性、加湿耐久性等が低いという特徴を有するところ、保護層を設けることにより、これらの問題を解消して、導電層の耐久性(結果的に、透明導電性フィルムの耐久性)を向上させることができる。なお、導電層20には、保護層30を構成する成分(例えば、保護層を構成する樹脂)が含まれていてもよい。
【0011】
上記保護層の23℃におけるせん断強度は、150MPa以下である。このような範囲であれば、屈曲性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。本発明においては、このような保護層を備えることにより、屈曲性に顕著に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。また、基材として、屈曲性に乏しいフィルムを用いたとしても、透明導電性フィルムとしては十分な屈曲性を示す。本発明は、基材を構成する材料について、選択の自由度が高い点でも有利である。例えば、基材として、シクロオレフィン系樹脂から構成される基材を用いたとしても、十分な屈曲性を示し、屈曲させてもクラックが生じ難い透明導電性フィルムを得ることができる。シクロオレフィン系樹脂から構成される基材を用いれば、光学特性に優れ、不要な着色、虹模様の発生等を防止し得る透明導電性フィルムを得ることができる。せん断強度は、精密斜め切削装置による斜め切削を行って得られる水平荷重-変位曲線から算出することができる。斜め切削は、刃幅:1mm、すくい角度:20°、にげ角:10°、水平速度:0.2μm/sec、垂直速度:0.01μm/secの条件で行われ得る。
【0012】
上記透明導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは0.01Ω/□~1000Ω/□であり、より好ましくは0.1Ω/□~500Ω/□であり、特に好ましくは0.1Ω/□~300Ω/□であり、最も好ましくは0.1Ω/□~100Ω/□である。1つの実施形態においては、透明導電性フィルムの表面抵抗値は、100Ω/□以下である。
【0013】
上記透明導電性フィルムのヘイズ値は、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.7%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下である。当該ヘイズ値は、小さいほど好ましいが、その下限値は例えば、0.05%である。
【0014】
上記透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0015】
上記透明導電性フィルムの厚みは、好ましくは10μm~500μmであり、より好ましくは15μm~300μmであり、さらに好ましくは20μm~200μmである。
【0016】
B.基材
上記基材は、代表的には、任意の適切な樹脂から構成される。上記基材を構成する樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等が挙げられる。好ましくは、シクロオレフィン系樹脂が用いられる。シクロオレフィン系樹脂から構成される基材を用いれば、光学特性に優れ、画像表示装置に適用された際に、不要な着色、虹模様の発生を抑制し得る透明導電性フィルムを得ることができる。本発明によれば、上記所定の保護層を備えることにより、屈曲性に乏しいフィルム(例えば、シクロオレフィン系樹脂フィルム)を用いても、透明導電性フィルムとしては十分な屈曲性を発揮させることができる。
【0017】
上記シクロオレフィン系樹脂として、例えば、ポリノルボルネンが好ましく用いられ得る。ポリノルボルネンとは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。上記ポリノルボルネンとしては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0018】
上記基材を構成する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50℃~200℃であり、より好ましくは60℃~180℃であり、さらに好ましくは70℃~160℃である。このような範囲のガラス転移温度を有する基材であれば、透明導電積層体を形成する際の劣化が防止され得る。
【0019】
上記基材の厚みは、好ましくは8μm~500μmであり、より好ましくは10μm~250μmであり、さらに好ましくは10μm~150μmであり、特に好ましくは15μm~100μmである。
【0020】
上記基材の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような範囲であれば、タッチパネル等に備えられる透明導電性フィルムとして好適な透明導電性フィルムを得ることができる。
【0021】
上記基材の23℃における引っ張り破断強度は、好ましくは30MPa~100MPaであり、より好ましくは50MPa~95MPaであり、さらに好ましくは70MPa~90MPaである。本発明によれば、屈曲性に乏しいフィルムを用いても、透明導電性フィルムとしては十分な屈曲性を発揮させることができる。引っ張り破断強度は、常温(23℃)下、JIS K 7161に準じて測定される。
【0022】
上記基材は、必要に応じて任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤の具体例としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。
【0023】
必要に応じて、上記基材に対して各種表面処理を行ってもよい。表面処理は目的に応じて任意の適切な方法が採用される。例えば、低圧プラズマ処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理が挙げられる。1つの実施形態においては、透明基材を表面処理して、透明基材表面を親水化させる。基材を親水化させれば、水系溶媒により調製された導電層形成用組成物を塗工する際の加工性が優れる。また、基材と導電層との密着性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。また、基材は、複層構成であってもよく、例えば、樹脂フィルムと当該樹脂フィルム上に形成された機能層(例えば、ハードコート層、アンチグレア層等)とから構成されていてもよい。
【0024】
C.導電層
上記のとおり、導電層は、金属ナノワイヤを含む。1つの実施形態においては、導電層は、ポリマーマトリックスをさらに含み得、金属ナノワイヤはポリマーマトリックス中に存在し得る。当該ポリマーマトリックスは保護層を構成する樹脂(詳細は後述)であり得る。
【0025】
上記導電層の厚みは、好ましくは50nm~300nmであり、より好ましくは80nm~200nmである。
【0026】
上記導電層の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0027】
1つの実施形態においては、上記導電層はパターン化されている。パターン化の方法としては、導電層の形態に応じて、任意の適切な方法が採用され得る。導電層のパターンの形状は、用途に応じて任意の適切な形状であり得る。例えば、特表2011-511357号公報、特開2010-164938号公報、特開2008-310550号公報、特表2003-511799号公報、特表2010-541109号公報に記載のパターンが挙げられる。導電層は基材上に形成された後、導電層の形態に応じて、任意の適切な方法を用いてパターン化することができる。
【0028】
上記金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となり、それぞれ接合することにより、良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電性フィルムを得ることができる。
【0029】
上記金属ナノワイヤの太さdと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは10~100,000であり、より好ましくは50~100,000であり、特に好ましくは100~10,000である。このようにアスペクト比の大きい金属ナノワイヤを用いれば、金属ナノワイヤが良好に交差して、少量の金属ナノワイヤにより高い導電性を発現させることができる。その結果、光透過率の高い透明導電性フィルムを得ることができる。なお、本明細書において、「金属ナノワイヤの太さ」とは、金属ナノワイヤの断面が円状である場合はその直径を意味し、楕円状である場合はその短径を意味し、多角形である場合は最も長い対角線を意味する。金属ナノワイヤの太さおよび長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
【0030】
上記金属ナノワイヤの太さは、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、特に好ましくは10nm~100nmであり、最も好ましくは10nm~60nmである。このような範囲であれば、光透過率の高い導電層を形成することができる。
【0031】
上記金属ナノワイヤの長さは、好ましくは1μm~1000μmであり、より好ましくは1μm~500μmであり、特に好ましくは1μm~100μmである。このような範囲であれば、導電性の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0032】
上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。金属ナノワイヤは、金、白金、銀および銅からなる群より選ばれた1種以上の金属により構成されることが好ましい。1つの実施形態においては、上記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである。
【0033】
上記金属ナノワイヤの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば溶液中で硝酸銀を還元する方法、前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法等が挙げられる。溶液中で硝酸銀を還元する方法においては、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩を液相還元することにより、銀ナノワイヤが合成され得る。均一サイズの銀ナノワイヤは、例えば、Xia,Y.etal.,Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745 、Xia, Y.etal., Nano letters(2003)3(7)、955-960 に記載される方法に準じて、大量生産が可能である。
【0034】
上記導電層における金属ナノワイヤの含有割合は、導電層の全重量に対して、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは30重量%~75重量%であり、より好ましくは30重量%~65重量%であり、さらに好ましくは45重量%~65重量%である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0035】
導電層の密度は、好ましくは1.3g/cm3~10.5g/cm3であり、より好ましくは1.5g/cm3~3.0g/cm3である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0036】
D.保護層
上記のとおり、保護層の23℃におけるせん断強度は、150MPa以下である。保護層の23℃におけるせん断強度は、好ましくは140MPa以下であり、より好ましくは130MPa以下であり、さらに好ましくは120MPa以下であり、特に好ましくは110MPa以下である。このような範囲であれば、屈曲性向上効果が顕著となる。屈曲性向上効果の観点からは、保護層の23℃におけるせん断強度は小さいほど好ましいが、その下限は、例えば、50MPa(好ましくは70MPa)である。このような範囲であれば、耐久性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。保護層のせん断強度は、例えば、保護層を構成する樹脂の種類、組成、架橋度、分子量等により制御することができる。
【0037】
上記保護層の厚みは、好ましくは10nm~1000nmであり、より好ましくは60nm~800nmである。このような範囲であれば、耐久性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0038】
上記導電層と保護層との合計厚みは、好ましくは60nm~1000nmであり、より好ましくは70nm~800nmである。このような範囲であれば、耐久性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0039】
代表的には、上記保護層は、樹脂から構成される。保護層を構成する樹脂としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な樹脂が用いられ得る。該樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース;シリコン系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリアセテート;ポリノルボルネン;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0040】
1つの実施形態においては、上記保護層を形成する樹脂として、硬化性樹脂(例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂)が用いられる。硬化性樹脂から構成される保護層は、硬化性保護層形成用組成物を硬化させて形成され得る。
【0041】
1つの実施形態においては、上記硬化性樹脂として、(メタ)アクリレートモノマーおよび/または(メタ)アクリレートオリゴマーを含む硬化性保護層形成用組成物の硬化物が用いられる。このような樹脂を用いれば、せん断強度が好ましく調整された保護層を得ることができる。(メタ)アクリレートモノマーおよびアクリレートオリゴマーの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも好ましくは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、または、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。上記モノマーおよびポリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
1つの実施形態においては、上記硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む硬化性保護層形成用組成物の硬化物が用いられる。このような樹脂を用いれば、せん断強度が好ましく調整された保護層を得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させた後に、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られたオリゴマー、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させた後に、ポリオールを反応させて得られたオリゴマー、ポリイソシアネート、ポリオール、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られたオリゴマー等が挙げられる。
【0043】
ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびこれらの共重合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,2’-チオジエタノール等が挙げられる。
【0044】
ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
好ましくは、上記硬化性保護層形成用組成物は、任意の適切な光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2,2-ジメトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-エチレンフェニル)プロパン-1-オン]、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-1-モルフォリノプロパン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン等のα-アミノアルキルフェノン類、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキサイド類、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキサイド類などが挙げられる。
【0046】
E.透明導電性フィルムの製造方法
上記透明導電性フィルムは、任意の適切な方法により製造され得る。1つの実施形態においては、基材に、金属ナノワイヤを含む導電層形成用組成物を塗工し、その後、保護層形成用組成物を塗工して形成することができる。また、保護層形成用組成物に金属ナノワイヤを含有させ、金属ナノワイヤを含有する保護層形成用組成物を基材に塗工して、透明導電性フィルムを得てもよい。
【0047】
上記導電層形成用組成物は、金属ナノワイヤの他、任意の適切な溶媒を含み得る。導電層形成用組成物は、金属ナノワイヤの分散液として準備され得る。上記溶媒としては、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられる。環境負荷低減の観点から、水を用いることが好ましい。上記導電層形成用組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、金属ナノワイヤの腐食を防止する腐食防止材、金属ナノワイヤの凝集を防止する界面活性剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0048】
上記導電層形成用組成物中の金属ナノワイヤの分散濃度は、好ましくは0.1重量%~1重量%である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる導電層を形成することができる。
【0049】
上記導電層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布層の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には50℃~200℃であり、好ましくは80℃~150℃である。乾燥時間は代表的には1~10分である。
【0050】
上記保護層形成用組成物は、保護層を形成する樹脂、または、その前駆体(モノマー、オリゴマー)を含む。保護層形成用組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。例えば、光重合開始剤、カップリング剤等が含有され得る。また、保護層形成用組成物は、希釈のため、任意の適切な溶媒をさらに含んでいてもよい。当該溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸ブチル、イソブタノール、酢酸エチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール等が挙げられる。
【0051】
上記保護層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0052】
硬化性保護層形成用組成物を用いる場合、硬化性保護層形成用組成物を塗布した後、硬化処理が行われる。硬化処理の方法としては、硬化性保護層形成用組成物の組成に応じて、任意の適切な方法が採用される。硬化処理の方法としては、例えば、上記溶媒を加熱乾燥した後、紫外線照射機を用いて500mW/cm2~3000mW/cm2の照射強度で、仕事量が50~400mJ/cm2の紫外線を照射するという方法が挙げられる。
【実施例0053】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0054】
[製造例1]
(金属ナノワイヤの製造)
攪拌装置を備えた反応容器中、160℃下で、無水エチレングリコール5ml、PtCl2の無水エチレングリコール溶液(濃度:1.5×10-4mol/L)0.5mlを加えた。4分経過後、得られた溶液に、AgNO3の無水エチレングリコール溶液(濃度:0.12mol/l)2.5mlと、ポリビニルピロリドン(MW:55000)の無水エチレングリコール溶液(濃度:0.36mol/l)5mlとを同時に、6分かけて滴下した。この滴下後、160℃に加熱して1時間以上かけて、AgNO3が完全に還元されるまで反応を行い、銀ナノワイヤを生成した。次いで、上記のようにして得られた銀ナノワイヤを含む反応混合物に、該反応混合物の体積が5倍になるまでアセトンを加えた後、該反応混合物を遠心分離して(2000rpm、20分)、銀ナノワイヤを得た。純水中に、該銀ナノワイヤ(濃度:0.2重量%)、およびペンタエチレングリコールドデシルエーテル(濃度:0.1重量%)を分散させ、銀ナノワイヤインクを調製した。
【0055】
[実施例1]
基材(シクロオレフィン(COP)フィルム)上に製造例1で得られた銀ナノワイヤインクを、ワイヤーバーを用いて、製膜後の比抵抗値が50Ω/□となるように塗布し、120℃で2分間加熱製膜した。
さらにウレタンアクリレートを主成分とする硬化性保護層形成用組成物(アイカ工業社製、商品名「Z-844-2L」)を、上記銀ナノワイヤインク塗布面にスピンコーターを用いて乾燥膜厚が70nmとなるように塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプで積算露光量200mJ/cm2の紫外線を照射して、基材/導電層/保護層からなる透明導電性フィルムを得た。
【0056】
[比較例1]
硬化性保護層形成用組成物(アイカ工業社製、商品名「Z-844-2L」)に代えて、硬化性保護層形成用組成物(C3nano社製、商品名「C3D01」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。
【0057】
[比較例2]
基材(シクロオレフィンフィルム)に代えて、基材(PETフィルム)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。
【0058】
[比較例3]
基材(シクロオレフィンフィルム(日本ゼオン社製 ゼオノアフィルム ZF16、厚み55μm)の一方の面にスパッタ法により、インジウム・スズ酸化物層からなる透明導電層(厚み:30nm)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
【0059】
[比較例4]
基材(シクロオレフィンフィルム)に代えて、基材(PETフィルム)を用いたこと以外は、比較例3と同様にして、透明導電性フィルムを得た。
【0060】
[比較例5]
基材(シクロオレフィンフィルム)上に製造例1で得られた銀ナノワイヤインクを、ワイヤーバーを用いて、製膜後の比抵抗値が50Ω/□となるように塗布し、120℃で2分間加熱して、透明導電性フィルム(基材/導電層)を得た。
【0061】
<評価>
実施例および比較例で得られた透明導電性フィルムを、以下の評価に供した結果を表1に示す。
【0062】
(1)保護層のせん断強度
透明導電性フィルムを、接着剤を介し、保護層が外側になるようにして、スライドガラス上に張り付けた。その後、保護層に対して、下記条件にて精密斜め切削装置による斜め切削を行った。この時の水平荷重-変位曲線からせん断強度を算出した。
[精密斜め切削条件]
装置 :SAICAS EN型
刃先 :単結晶ダイヤモンド
刃幅 :1.00mm
すくい角度 :20.00°
にげ角度 :10.00°
水平速度 :0.2μm/sec
垂直速度 :0.01μm/sec
(2)屈曲試験後の抵抗値変化
透明導電性フィルム(長さ15cm×幅1cm)の導電層/保護層側長手方向両端にAgペースト(各部、長さ1cm×幅1cm)を塗布して試験片を得た。Agペースト間の導通をテスターにて確認し、表面抵抗値を測定し、これを表面抵抗初期値とした。
上記試験片を、保護層側を外側にして、屈曲径5mmで180°屈曲させるという動作を20万回繰り返すという屈曲試験を行った。
屈曲試験後の表面抵抗値を上記の方法により測定し、(屈曲試験後の抵抗値)/(表面抵抗初期値)の式により、屈曲試験後の抵抗値変化を評価した。
(3)屈曲試験後のクラック
上記(2)の屈曲試験の後、透明導電性フィルムの外観を目視にて、クラックの有無、および、クラックが生じた場合その位置を確認した。
(4)湿熱耐久性
下記条件にて湿熱耐久性試験を行い、投入前抵抗値R0と500h投入後抵抗値Rとが「R/R0<1.1」を満たす場合を合格(表中〇)とした。
装置:恒温恒湿機PL-2J (エスペック社製)
試験条件:65℃、90RH%、500h
測定装置:非接触抵抗測定器 EC-80 (ナプソン社製)
(5)外観評価
偏光板(日東電工社製、商品名「NPF-SEG1425DU」)上に、該偏光板の吸収軸と透明基材の遅相軸とが垂直となるように、透明導電性フィルムを貼り合わせた。得られた積層体をバックライト上に配置し、透明基材の遅相軸方向に対して斜め45°の角度から虹斑の発生有無を観察した。
【0063】
【0064】
表1から明らかなように、本発明の透明導電性フィルムは、屈曲性に乏しいシクロオレフィンフィルムを基材に用いながらも、屈曲性に優れる。シクロオレフィンフィルムを用いることにより、虹斑の発生がなく視認性を阻害しない透明導電性フィルムを得ることができる。