(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183138
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】透明導電性フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20231220BHJP
H01B 5/14 20060101ALI20231220BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20231220BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01B13/00 501Z
H01B5/14 A
B32B9/00 A
B32B27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096607
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】八倉 崇大
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 純一
【テーマコード(参考)】
4F100
5G307
【Fターム(参考)】
4F100AB24B
4F100AB24D
4F100AB24H
4F100AK25A
4F100AK25E
4F100CA02A
4F100CA02E
4F100CA02H
4F100CA21B
4F100CA21D
4F100CA21H
4F100CC102
4F100CC10B
4F100CC10D
4F100DE03B
4F100DE03D
4F100DE03H
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100EH46D
4F100EH46E
4F100GB41
4F100JD01
4F100JG01
4F100JN01
5G307FA02
5G307FB02
5G307FC10
(57)【要約】
【課題】低コストかつ短時間で、透明導電性フィルムを製造することを可能とする方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の透明導電性フィルムの製造方法は、基材の表面に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する工程Aと、基材の裏面に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する工程Bと、工程Aおよび工程Bの後、基材の表面に保護層形成用組成物を塗工する工程Cと、基材の裏面に保護層形成用組成物を塗工する工程Dとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する工程Aと、
基材の裏面に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する工程Bと、
工程Aおよび工程Bの後、基材の表面に保護層形成用組成物を塗工する工程Cと、
基材の裏面に保護層形成用組成物を塗工する工程Dとを含む、
透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記工程Aにおける金属ナノワイヤ塗工の後、当該塗工により形成された塗工層上に保護フィルムを配置することを含む、請求項1に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記工程Bにおける金属ナノワイヤ塗工の後、当該塗工により形成された塗工層上に保護フィルムを配置することを含む、請求項1に記載の透明導電性フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電性フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチセンサーの電極等に用いられる透明導電性フィルムであって、屈曲性の向上が図られた透明導電性フィルムとして、金属ナノワイヤを含む導電層を備える透明導電性フィルムが提案されている。このような透明導電性フィルムの製造においては、製造時に用いる金属ナノワイヤ塗工液が高価であるという事情もあり、製造コストの低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、低コストかつ短時間で、透明導電性フィルムを製造することを可能とする方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の透明導電性フィルムの製造方法は、基材の表面に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する工程Aと、基材の裏面に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する工程Bと、工程Aおよび工程Bの後、基材の表面に保護層形成用組成物を塗工する工程Cと、基材の裏面に保護層形成用組成物を塗工する工程Dとを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記工程Aにおける前記金属ナノワイヤ塗工の後、当該塗工により形成された塗工層上に保護フィルムを配置することを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記工程Bにおける前記金属ナノワイヤ塗工の後、当該塗工により形成された塗工層上に保護フィルムを配置することを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低コストかつ短時間で、透明導電性フィルムを製造することを可能とする方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの製造方法を説明する図である。
【
図2】本発明に1つの実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.透明導電性フィルムの製造方法
図1は、本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの製造方法を説明する図である。本発明の透明導電性フィルムの製造方法は、
基材10の表面11に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する工程Aと、
基材10の裏面12に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する工程Bと、
工程Aおよび工程Bの後、基材10の表面11に保護層形成用組成物を塗工する工程Cと、
基材10の裏面12に保護層形成用組成物を塗工する工程Dとを含む。
このような製造方法により、基材10の両面において、金属ナノワイヤ層21と保護層22とを含む導電層が形成された透明導電性フィルム100を得ることができる。代表的には、上記製造方法は単一の塗工機を用いて行われる。例えば、所定の塗工機にて行った工程Aで得られた中間品を、再度、当該塗工機に通して、工程Bを行う。さらに、工程Bで得られた中間体を、当該塗工機に通して、工程Cを行う。さらに、工程Cで得られた中間体を、当該塗工機に通して、工程Dを行う。
【0009】
工程Aと工程Bとは、この順に行ってもよく、工程Bの後に工程Aを行ってもよい。また、工程Cと工程Dとは、この順に行ってもよく、工程Dの後に工程Cを行ってもよい。なお、本明細書において、「表面」および「裏面」は、もっぱら説明を明瞭にするために、便宜上、用いられる用語であり、これらの用語により、工程内での基材の配置、透明導電性フィルムの使用方法等は規定されないことに留意されたい。
【0010】
本発明においては、基材の両面に金属ナノワイヤ塗工液を塗工し、その後、基材の両面に保護層形成用組成物を塗工することにより、塗工機の組み替え(塗工液の変更)の回数を1回のみ(工程Bと工程Cの間)として、両面に導電層を備える透明導電性フィルムを得ることができる。このような本発明においては、塗工液のロスを低減することができ、また、塗工機の組み換え(塗工液の変更)に要する時間を低減することができる。その結果、従来の方法、すなわち、基材の一方の面に、金属ナノワイヤ塗工液と保護層形成用組成物とを塗工して第1の導電層を形成した後に、基材の他方の面に、金属ナノワイヤ塗工液と保護層形成用組成物とを塗工し、第2の導電層を形成して、透明導電性フィルムを得る方法(塗工液の変更、3回)と比較して、製造コストを低減することができ、また、製造にかかる時間を低減することができる。
【0011】
A-1.工程A
工程Aにおいては、上記のとおり、基材10の表面11に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する。これにより、金属ナノワイヤ層21が形成される。好ましくは、上記基材は長尺状であり、工程Aはいわゆるロール・トゥ・ロールプロセスで行われる。上記基材は、代表的には、任意の適切な樹脂から構成される。上記基材を構成する樹脂としては、例えば、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等が挙げられる。好ましくは、シクロオレフィン系樹脂が用いられる。シクロオレフィン系樹脂から構成される基材を用いれば、屈曲性に優れる透明導電性フィルムを得ることができる。
【0012】
上記シクロオレフィン系樹脂として、例えば、ポリノルボルネンが好ましく用いられ得る。ポリノルボルネンとは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。上記ポリノルボルネンとしては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0013】
上記基材を構成する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50℃~200℃であり、より好ましくは60℃~180℃であり、さらに好ましくは70℃~160℃である。このような範囲のガラス転移温度を有する基材であれば、導電層を形成する際の劣化が防止され得る。
【0014】
上記基材の厚みは、好ましくは8μm~500μmであり、より好ましくは10μm~250μmであり、さらに好ましくは10μm~150μmであり、特に好ましくは15μm~100μmである。
【0015】
上記基材の全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような範囲であれば、タッチパネル等に備えられる透明導電性フィルムとして好適な透明導電性フィルムを得ることができる。
【0016】
上記基材は、必要に応じて任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤の具体例としては、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類および量は、目的に応じて適宜設定され得る。
【0017】
上記金属ナノワイヤ塗工液は、金属ナノワイヤを含む。上記金属ナノワイヤとは、材質が金属であり、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。金属ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。金属ナノワイヤで構成された導電層を用いれば、金属ナノワイヤが網の目状となり、それぞれ接合することにより、良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電性フィルムを得ることができる。
【0018】
上記金属ナノワイヤの太さdと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは10~100,000であり、より好ましくは50~100,000であり、特に好ましくは100~10,000である。このようにアスペクト比の大きい金属ナノワイヤを用いれば、金属ナノワイヤが良好に交差して、少量の金属ナノワイヤにより高い導電性を発現させることができる。その結果、光透過率の高い透明導電性フィルムを得ることができる。なお、本明細書において、「金属ナノワイヤの太さ」とは、金属ナノワイヤの断面が円状である場合はその直径を意味し、楕円状である場合はその短径を意味し、多角形である場合は最も長い対角線を意味する。金属ナノワイヤの太さおよび長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
【0019】
上記金属ナノワイヤの太さは、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、特に好ましくは10nm~100nmであり、最も好ましくは10nm~60nmである。このような範囲であれば、光透過率の高い導電層を形成することができる。
【0020】
上記金属ナノワイヤの長さは、好ましくは1μm~1000μmであり、より好ましくは1μm~500μmであり、特に好ましくは1μm~100μmである。このような範囲であれば、導電性の高い透明導電性フィルムを得ることができる。
【0021】
上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、導電性の高い金属である限り、任意の適切な金属が用いられ得る。上記金属ナノワイヤを構成する金属としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル等が挙げられる。また、これらの金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。金属ナノワイヤは、金、白金、銀および銅からなる群より選ばれた1種以上の金属により構成されることが好ましい。1つの実施形態においては、上記金属ナノワイヤは、銀ナノワイヤである。
【0022】
上記金属ナノワイヤの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば溶液中で硝酸銀を還元する方法、前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法等が挙げられる。溶液中で硝酸銀を還元する方法においては、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩の液相還元することにより、銀ナノワイヤが合成され得る。均一サイズの銀ナノワイヤは、例えば、Xia,Y.etal.,Chem.Mater.(2002)、14、4736-4745 、Xia, Y.etal., Nano letters(2003)3(7)、955-960 に記載される方法に準じて、大量生産が可能である。
【0023】
上記金属ナノワイヤ塗工液は、金属ナノワイヤの他、任意の適切な溶媒を含み得る。金属ナノワイヤ塗工液物は、金属ナノワイヤの分散液として準備され得る。上記溶媒としては、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられる。環境負荷低減の観点から、水を用いることが好ましい。上記金属ナノワイヤ塗工液は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、金属ナノワイヤの腐食を防止する腐食防止材、金属ナノワイヤの凝集を防止する界面活性剤等が挙げられる。使用される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0024】
上記金属ナノワイヤ塗工液中の金属ナノワイヤの分散濃度は、好ましくは0.1重量%~1重量%である。このような範囲であれば、導電性および光透過性に優れる導電層を形成することができる。
【0025】
上記金属ナノワイヤ塗工液の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布層の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には50℃~200℃であり、好ましくは80℃~150℃である。乾燥時間は代表的には1~10分である。
【0026】
工程Aにおける金属ナノワイヤ塗工の後、当該塗工により形成された塗工層上に保護フィルムを配置してもよい。保護フィルムを配置することにより当該塗工層の損傷(例えば、キズの発生)等を防止することができる。保護フィルムとしては、任意の適切なフィルムが用いられる。代表的には、樹脂フィルムが用いられる。1つの実施形態においては、保護フィルムの配置は、ロール・トゥ・ロールプロセスで行われる。
【0027】
A-2.工程B
工程Bにおいては、上記のとおり、基材10の裏面12に金属ナノワイヤ塗工液を塗工する。これにより、金属ナノワイヤ層21が形成される。基材、金属ナノワイヤ塗工液および金属ナノワイヤ塗工液の塗工方法の例は、上記A-1項で説明したとおりである。工程Bにおいても、金属ナノワイヤ塗工の後、当該塗工により形成された塗工層上に保護フィルムを配置してもよい。工程Bもまた、ロール・トゥ・ロールプロセスで行われることが好ましい。また、保護フィルムの配置も、ロール・トゥ・ロールプロセスで行われることが好ましい。
【0028】
A-3.工程C
工程Cにおいては、上記のとおり、基材10の表面11に保護層形成用組成物を塗工する。これにより、保護層22が形成される。工程Cは、工程Aおよび工程Bを行った後に行われる。基材の表面に設けられた金属ナノワイヤ層上に保護フィルムが配置される場合には、当該保護フィルムを剥離した後、工程Cが行われる。工程Cもまた、ロール・トゥ・ロールプロセスで行われることが好ましい。
【0029】
代表的には、上記保護層形成用組成物は、保護層を形成する樹脂、または、その前駆体(モノマー、オリゴマー)を含む。上記樹脂としては、本発明の効果が得られる限り、任意の適切な樹脂が用いられ得る。該樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の芳香族系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS);セルロース;シリコン系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリアセテート;ポリノルボルネン;合成ゴム;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0030】
上記保護層形成用組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。例えば、光重合開始剤、カップリング剤等が含有され得る。また、保護層形成用組成物は、希釈のため、任意の適切な溶媒をさらに含んでいてもよい。当該溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸ブチル、イソブタノール、酢酸エチル、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール等が挙げられる。
【0031】
1つの実施形態においては、上記保護層を形成する樹脂として、硬化性樹脂(例えば、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂)が用いられる。硬化性樹脂から構成される保護層は、硬化性保護層形成用組成物を硬化させて形成され得る。
【0032】
1つの実施形態においては、上記硬化性樹脂として、(メタ)アクリレートモノマーおよび/または(メタ)アクリレートオリゴマーを含む硬化性保護層形成用組成物の硬化物が用いられる。(メタ)アクリレートモノマーおよびアクリレートオリゴマーの具体例としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも好ましくは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、または、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートである。上記モノマーおよびポリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
1つの実施形態においては、上記硬化性樹脂として、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む硬化性保護層形成用組成物の硬化物が用いられる。このような樹脂を用いれば、せん断強度が好ましく調整された保護層を得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させた後に、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られたオリゴマー、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させた後に、ポリオールを反応させて得られたオリゴマー、ポリイソシアネート、ポリオール、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られたオリゴマー等が挙げられる。
【0034】
ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールおよびこれらの共重合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,2’-チオジエタノール等が挙げられる。
【0035】
ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
好ましくは、上記硬化性保護層形成用組成物は、任意の適切な光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2,2-ジメトキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-エチレンフェニル)プロパン-1-オン]、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-1-モルフォリノプロパン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン等のα-アミノアルキルフェノン類、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキサイド類、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキサイド類などが挙げられる。
【0037】
上記導電層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布層の乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的には50℃~200℃であり、好ましくは80℃~150℃である。乾燥時間は代表的には1~10分である。
【0038】
上記保護層形成用組成物の塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。塗布方法としては、例えば、スプレーコート、バーコート、ロールコート、ダイコート、インクジェットコート、スクリーンコート、ディップコート、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0039】
硬化性保護層形成用組成物を用いる場合、硬化性保護層形成用組成物を塗布した後、硬化処理が行われる。硬化処理の方法としては、硬化性保護層形成用組成物の組成に応じて、任意の適切な方法が採用される。硬化処理の方法としては、例えば、上記溶媒を加熱乾燥した後、紫外線照射機を用いて500mW/cm2~3000mW/cm2の照射強度で、仕事量が50~400mJ/cm2の紫外線を照射するという方法が挙げられる。
【0040】
A-4.工程D
工程Dにおいては、上記のとおり、基材10の裏面12に保護層形成用組成物を塗工する。これにより、保護層22が形成される。工程Dは、工程Aおよび工程Bを行った後に行われる。保護層形成用組成物および塗工方法の例は、上記A-3項で説明したとおりである。基材の裏面に設けられた金属ナノワイヤ層上に保護フィルムが配置される場合には、当該保護フィルムを剥離した後、工程Dが行われる。工程Dもまた、ロール・トゥ・ロールプロセスで行われることが好ましい。
【0041】
B.透明導電性フィルム
図2は、本発明の1つの実施形態による透明導電性フィルムの概略断面図である。透明導電性フィルム100は、基材10と、基材10の両側に配置された導電層20とを含む。導電層20は金属ナノワイヤ21と、金属ナノワイヤ21を保護する保護層22とを含む。
【0042】
上記透明導電性フィルムの表面抵抗値は、好ましくは0.01Ω/□~1000Ω/□であり、より好ましくは0.1Ω/□~500Ω/□であり、特に好ましくは0.1Ω/□~300Ω/□であり、最も好ましくは0.1Ω/□~100Ω/□である。
【0043】
上記透明導電性フィルムのヘイズ値は、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.7%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下である。当該ヘイズ値は、小さいほど好ましいが、その下限値は例えば、0.05%である。
【0044】
上記透明導電性フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0045】
上記透明導電性フィルムの厚みは、好ましくは10μm~500μmであり、より好ましくは15μm~300μmであり、さらに好ましくは20μm~200μmである。
【実施例0046】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0047】
[実施例1]
(工程A)
基材(シクロオレフィンフィルム)の表面に、導電層形成用組成物(銀ナノワイヤインク)を塗布し、120℃で2分間加熱製膜し、金属ナノワイヤ層を形成した。次いで、金属ナノワイヤ層上に保護フィルム(E-Mask RP007(日東電工社製))をロール・トゥ・ロールで貼付した。上記導電層形成用組成物(銀ナノワイヤインク)は以下のとおりとした。
銀ナノワイヤインクの調製:
攪拌装置を備えた反応容器中、160℃下で、無水エチレングリコール5ml、PtCl2の無水エチレングリコール溶液(濃度:1.5×10-4mol/L)0.5mlを加えた。4分経過後、得られた溶液に、AgNO3の無水エチレングリコール溶液(濃度:0.12mol/l)2.5mlと、ポリビニルピロリドン(MW:55000)の無水エチレングリコール溶液(濃度:0.36mol/l)5mlとを同時に、6分かけて滴下した。この滴下後、160℃に加熱して1時間以上かけて、AgNO3が完全に還元されるまで反応を行い、銀ナノワイヤを生成した。次いで、上記のようにして得られた銀ナノワイヤを含む反応混合物に、該反応混合物の体積が5倍になるまでアセトンを加えた後、該反応混合物を遠心分離して(2000rpm、20分)、銀ナノワイヤを得た。純水中に、該銀ナノワイヤ(濃度:0.2重量%)、およびペンタエチレングリコールドデシルエーテル(濃度:0.1重量%)を分散させ、銀ナノワイヤインクを調製した。
(工程B、C)
次いで、上記基材の裏面に、上記導電層形成用組成物(銀ナノワイヤインク)を塗布し、120℃で2分間加熱製膜し、金属ナノワイヤ層を形成した。次いで、金属ナノワイヤ層上に保護フィルム(E-Mask RP007(日東電工社製))をロール・トゥ・ロールで貼付した(工程C)。
次いで、金属ナノワイヤ層上の保護フィルムを剥離し、上記基材の表面、すなわち、金属ナノワイヤ層上に、ウレタンアクリレートを主成分とする硬化性保護層形成用組成物(アイカ工業社製、商品名「Z-844-2L」)を、上記銀ナノワイヤインク塗布面に塗工機を用いて乾燥膜厚が70nmとなるように塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプで積算露光量200mJ/cm2の紫外線を照射して、導電層(金属ナノワイヤ/保護層)を形成した。
(工程D)
次いで、金属ナノワイヤ層上の保護フィルムを剥離し、上記基材の裏面、すなわち、金属ナノワイヤ層上に、ウレタンアクリレートを主成分とする硬化性保護層形成用組成物(アイカ工業社製、商品名「Z-844-2L」)を、上記銀ナノワイヤインク塗布面に塗工機を用いて乾燥膜厚が70nmとなるように塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプで積算露光量200mJ/cm2の紫外線を照射して、導電層(金属ナノワイヤ/保護層)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
(評価)
透明導電性フィルム表面において無作為に抽出した領域(10mm×10mm)を対物レンズ(×20)で観察して、キズの数を計測した。3箇所において、同様の計測を行いキズ個数の平均値を求めた。結果、確認されたキズの平均は10個未満であった。
【0048】
[実施例2]
工程AおよびBにおいて、保護フィルムを設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、透明導電性フィルムを得た。
得られた透明導電性フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果、確認されたキズの平均は50個未満(10個以上)であった。
【0049】
[比較例1]
(工程I)
基材(シクロオレフィンフィルム)の表面に、導電層形成用組成物(銀ナノワイヤインク)を塗布し、120℃で2分間加熱製膜し、金属ナノワイヤ層を形成した。
(工程II)
次いで、上記基材の表面、すなわち、金属ナノワイヤ層上に、ウレタンアクリレートを主成分とする硬化性保護層形成用組成物(アイカ工業社製、商品名「Z-844-2L」)を、上記銀ナノワイヤインク塗布面にスピンコーターを用いて乾燥膜厚が70nmとなるように塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプで積算露光量200mJ/cm2の紫外線を照射して、導電層(金属ナノワイヤ/保護層)を形成した。
(工程III)
次いで、上記基材の裏面に、上記導電層形成用組成物(銀ナノワイヤインク)を塗布し、120℃で2分間加熱製膜し、金属ナノワイヤ層を形成した。次いで、金属ナノワイヤ層上に保護フィルム(E-Mask RP007 (日東電工社製)ロール・トゥ・ロールで貼付した。
(工程IV)
次いで、上記基材の裏面、すなわち、金属ナノワイヤ層上に、ウレタンアクリレートを主成分とする硬化性保護層形成用組成物(アイカ工業社製、商品名「Z-844-2L」)を、上記銀ナノワイヤインク塗布面に塗工機を用いて乾燥膜厚が70nmとなるように塗布し、80℃で1分間加熱した後、高圧水銀ランプで積算露光量200mJ/cm2の紫外線を照射して、導電層(金属ナノワイヤ/保護層)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
【0050】
実施例1および実施例2においては、塗工液の変更なく金属ナノワイヤ層を形成することができ、塗工液の変更は、工程Bと工程Cの間のみである。一方、比較例1においては、各工程間で塗工液を変更する必要がある。本発明においては、塗工液の変更の回数が少なく、製造コストおよび所用時間の低減が可能となる。