(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183142
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20231220BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01L23/36 A
H01L25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096612
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄一
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC03
5F136BC06
5F136DA25
5F136DA41
5F136FA01
5F136FA03
5F136FA53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い信頼性を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、配線基板1と、配線基板の上方に設けられ、配線基板に電気的に接続された接続端子31を有する表面3aと、表面3aの反対側の表面3b
と、を有する第1の半導体チップ3と、配線基板の上方に設けられ、第2の半導体チップ20を含むチップ積層体2と、第1の半導体チップ及びチップ積層体を覆い、樹脂を含有する封止絶縁体5と、封止絶縁体と表面3bとの間に設けられ、配線基板の面内方向にある第1方向に沿って延在する下板41及び配線基板の面内方向と第1方向とに垂直な方向を第2方向としたとき、下板41の第1方向側の端部から第2方向に沿って延在する側板42を有し、樹脂の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する熱伝導体と、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
前記配線基板の上方に設けられ、前記配線基板に電気的に接続された接続端子を有する第1の表面と、前記第1の表面の反対側の第2の表面と、を有する第1の半導体チップと、
前記配線基板の上方に設けられ、第2の半導体チップを含むチップ積層体と、
前記第1の半導体チップおよび前記チップ積層体を覆い、樹脂を含有する封止絶縁体と、
前記封止絶縁体と前記第2の表面との間に設けられ、前記配線基板の面内方向にある第1方向に沿って延在する第1の領域と、前記配線基板の前記面内方向と前記第1方向とに垂直な方向を第2方向としたとき、前記第1の領域の前記第1方向側の端部から前記第2方向に沿って延在する第2の領域と、を有し、前記樹脂の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する熱伝導体と、
を具備する、半導体装置。
【請求項2】
前記第1の領域の前記第1方向側に向いた第1端面と、前記第2の領域の前記第1方向側に向いた第2端面とは、前記封止絶縁体から露出している請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記熱伝導体は、前記第2の領域の前記第2方向側の端部に設けられた前記第3の領域をさらに具備する、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3の領域の前記第2方向側に向いた第3端面は、前記封止絶縁体から露出している請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記チップ積層体は、前記第1の半導体チップの上方に設けられ、
前記熱伝導体は、前記チップ積層体から離れて設けられる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記熱伝導体は、前記封止絶縁体に接する酸化物表面または前記封止絶縁体に接する凹凸表面を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1の半導体チップの側面に設けられ、前記樹脂の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する第1の断熱材をさらに具備する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記熱伝導体と前記チップ積層体との間に前記樹脂の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する第2の断熱材をさらに具備する、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項9】
接続端子を有する第1の表面と前記第1の表面と反対側の第2の表面とを有する第1の半導体チップを配線基板の上方に形成し、前記接続端子と前記配線基板とを電気的に接続する工程と、
熱伝導体を前記第1の半導体チップを挟んで前記配線基板の上方に形成する工程と、
第2の半導体チップを有するチップ積層体を前記配線基板の上方に形成する工程と、
前記第1の半導体チップ、前記チップ積層体、および前記熱伝導体を覆い、樹脂を含有する封止絶縁体を形成する工程と、を具備し、
前記熱伝導体は、前記封止絶縁体と前記第2の表面との間に設けられ、前記配線基板の面内方向にある第1方向に沿って延在する第1の領域と、前記配線基板の前記面内方向と前記第1方向とに垂直な方向を第2方向としたとき、前記第1の領域の前記第1方向側の端部から前記第2方向に沿って延在する第2の領域と、を有し、前記樹脂の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1の半導体チップの側面に前記樹脂の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する第1の断熱材を形成する工程をさらに具備し、
前記第1の断熱材は、前記チップ積層体の最下段の前記第2の半導体チップを形成した後に形成される、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記封止絶縁体を加工して前記熱伝導体の一部を前記封止絶縁体から露出させる工程と、
を具備する請求項9または請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NAND型フラッシュメモリ等の半導体装置は、配線基板上に積層された複数の半導体チップを具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態において解決しようとする課題の一つは、高い信頼性を有する半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、配線基板と、配線基板の上方に設けられ、配線基板に電気的に接続された接続端子を有する第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面と、を有する第1の半導体チップと、配線基板の上方に設けられ、第2の半導体チップを含むチップ積層体と、第1の半導体チップおよびチップ積層体を覆い、樹脂を含有する封止絶縁体と、封止絶縁体と第2の表面との間に設けられ、配線基板の面内方向にある第1方向に沿って延在する第1の領域と、配線基板の面内方向と第1方向とに垂直な方向を第2方向としたとき、第1の領域の第1方向側の端部から第2方向に沿って延在する第2の領域と、を有し、樹脂の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する熱伝導体と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】半導体装置の第1の構造例を示す模式図である。
【
図2】半導体装置の第1の構造例を示す模式図である。
【
図3】半導体装置の第1の構造例を示す模式図である。
【
図4】半導体装置の第1の構造例を示す模式図である。
【
図5】半導体装置の第2の構造例を説明するための模式図である。
【
図6】半導体装置の第2の構造例を説明するための模式図である。
【
図7】半導体装置の第2の構造例を説明するための模式図である。
【
図8】半導体装置の第2の構造例を説明するための模式図である。
【
図9】半導体装置の第1の構造例の変形例を示す模式図である。
【
図10】半導体装置の第1の構造例の変形例を示す模式図である。
【
図11】半導体装置の第2の構造例の変形例を説明するための模式図である。
【
図12】半導体装置の第2の構造例の変形例を説明するための模式図である。
【
図13】半導体装置の第1の構造例の別の変形例を示す模式図である。
【
図14】半導体装置の第2の構造例の別の変形例を示す模式図である。
【
図15】半導体装置の第2の構造例の別の変形例を示す模式図である。
【
図16】半導体装置の第2の構造例の別の変形例を示す模式図である。
【
図17】半導体装置の製造方法の例を説明するためのフローチャートである。
【
図18】半導体チップ3形成工程S1を説明するための模式図である。
【
図19】熱伝導体4形成工程S2を説明するための模式図である。
【
図20】熱伝導体4形成工程S2を説明するための模式図である。
【
図21】チップ積層体2形成工程S3を説明するための模式図である。
【
図22】封止絶縁体5形成工程S4を説明するための模式図である。
【
図23】封止絶縁体5形成工程S4を説明するための模式図である。
【
図24】外部接続端子11形成工程S5を説明するための模式図である。
【
図25】研削工程S6を説明するための模式図である。
【
図26】個片化工程S7を説明するための模式図である。
【
図27】半導体装置の製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
【
図28】半導体チップ20形成工程S8を説明するための模式図である。
【
図29】断熱材7形成工程S9を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。図面に記載された各構成要素の厚さと平面寸法との関係、各構成要素の厚さの比率等は現物と異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0008】
本明細書において「接続する」とは、特に指定する場合を除き、物理的に接続することだけでなく、電気的または熱的に接続することも含む。
【0009】
(第1の実施形態)
図1ないし
図4は、半導体装置の第1の構造例を示す模式図である。
図1ないし
図4は、X軸と、X軸に垂直なY軸と、X軸およびY軸に垂直なZ軸と、を示す。なお、X軸は、例えば配線基板1の表面1bに平行な方向であり、Y軸は表面1bに平行であって且つX軸に垂直な方向であり、Z軸は、表面1bに垂直な方向である。
図1は、Z軸方向から見た半導体装置の上面の一例を示す。
図1は、便宜のため、一部の構成要素を図示しないまたは点線で図示する。
図2は、Y軸方向から見た半導体装置の側面の一例を示す。
図3は、
図1の線分A1-A2におけるX-Z断面の一例を示す。
図4は、
図1の線分A3-A4におけるY-Z断面の一例を示す。
【0010】
半導体装置100は、配線基板1と、チップ積層体2と、半導体チップ3と、熱伝導体4と、封止絶縁体5と、を具備する。
【0011】
配線基板1は、表面1aに設けられた複数の外部接続端子11と、表面1aの反対側の表面1bに設けられた複数の導電性パッド12と、複数の導電性パッド13と、を有する。配線基板1の例は、プリント配線板(PWB)を含む。
【0012】
外部接続端子11は、例えば金、銅、はんだ等を用いて形成される。外部接続端子11は、例えば、錫-銀系、錫-銀-銅系の鉛フリーはんだを用いて形成されてもよい。また、複数の金属材料の積層を用いて外部接続端子11を形成してもよい。なお、
図1は、導電性ボールを用いて形成された外部接続端子11を図示している。
【0013】
導電性パッド12および導電性パッド13は、配線基板1の内部配線を介して外部接続端子11に接続される。導電性パッド12および導電性パッド13は、例えば銅、金、パラジウム、またはニッケル等の金属元素を含有する。例えば、電解めっき法または無電解めっき法等により上記材料を含むめっき膜を形成することにより導電性パッド12および導電性パッド13を形成してもよい。
【0014】
チップ積層体2は、配線基板1の表面1bの上方に設けられる。チップ積層体2は、複数の半導体チップ20を含む。半導体チップ20の例は、メモリチップを含む。メモリチップとしては、不揮発性メモリチップまたは揮発性メモリチップを用いることができる。不揮発性メモリチップとしては、NANDメモリチップ、相変化メモリチップ、抵抗変化メモリチップ、強誘電体メモリチップ、磁気メモリチップ等を用いることができる。揮発性メモリチップとしては、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)チップ等を用いることができる。
【0015】
複数の半導体チップ20は、接着層21を介して配線基板1の表面1bの上方に順に積層される。接着層21の例は、ダイアタッチフィルム(DAF)を含む。
図1ないし
図4は、表面1bの上に互いに段々に積層された4つの半導体チップ20を含む第1のチップ積層体と、第1のチップ積層体の上に互いに段々に積層された4つの半導体チップ20を含む第2のチップ積層体と、表面1bの上に互いに段々に積層された4つの半導体チップ20を含む第3のチップ積層体と、第3のチップ積層体の上に互いに段々に積層された4つの半導体チップ20を含む第4のチップ積層体と、を示す。互いに段々に積層された複数の半導体チップ20は、換言すると、互いに部分的に重畳する。なお、半導体チップ20の数および積層構造は、
図1ないし
図4に示す数および積層構造に限定されない。
【0016】
複数の半導体チップ20のそれぞれは、図示しない複数の接続パッドを表面に有する。各接続パッドは、対応するボンディングワイヤ22を介して各導電性パッド12に接続される。ボンディングワイヤ22は、例えば金、銀、銅、パラジウム等の金属元素を含有する。複数の半導体チップ20の一つと他の一つは、例えば接着層21を介して接着される。最下段の半導体チップ20は、例えば接着層21を介して表面1bまたはスペーサに接着されていてもよい。第2のチップ積層体および第4のチップ積層体の最下段の半導体チップ20下の接着層21は、他の接着層21よりも厚く、第1のチップ積層体および第3のチップ積層体の最上段の半導体チップ20に接続するボンディングワイヤ22の一部が上記厚い接着層21に埋め込まれている。なお、
図2は、便宜のため、半導体チップ20、接着層21、およびボンディングワイヤ22を点線で示す。
【0017】
半導体チップ3は、配線基板1の表面1bの上方に設けられる。半導体装置の第1の構造例は、表面1bにおいて複数のチップ積層体2が半導体チップ3の周りに設けられる例を示す。半導体チップ3は、フリップチップボンディングにより配線基板1の導電性パッド13に接合される。半導体チップ3は、接続端子31を有する表面3aと、表面3aの反対側の表面3bと、を有する。接続端子31は、配線基板1の導電性パッド13に電気的に接続されている。
【0018】
接続端子31は、例えば金、銅、はんだ等を用いて形成される。接続端子31は、例えば、錫-銀系、錫-銀-銅系の鉛フリーはんだを用いて形成されてもよい。また、複数の金属材料の積層を用いて接続端子31を形成してもよい。なお、
図1ないし
図4では、導電性ボールを用いて接続端子31を形成しているが、バンプを用いて接続端子31を形成してもよい。
【0019】
半導体チップ3の例は、メモリコントローラチップを含む。半導体チップ3は、配線基板1の表面1bに搭載され、配線基板1の内部配線を介して半導体チップ20に電気的に接続される。半導体チップ3は、アンダーフィル樹脂32を介して表面1bに設けられる。アンダーフィル樹脂32の例は、エポキシ系熱硬化性樹脂である。半導体チップ20がメモリチップであり、半導体チップ3がメモリコントローラチップである場合、半導体チップ3は、例えば半導体チップ20に対するデータの書き込みおよびデータの読み出し等の動作を制御する。
【0020】
熱伝導体4は、下板41(第1の領域)と、側板42(第2の領域)と、を有する。熱伝導体4は、接着層44を介して半導体チップ3の表面3bに接着される。接着層44の例は、DAFを含む。熱伝導体4は、チップ積層体2から離れて設けられる。熱伝導体4とチップ積層体2の間には封止絶縁体5のみが存在することが好ましいが、これに限定されない。Y軸方向からみたとき、熱伝導体4の側板42とチップ積層体2とが一部重なってもよい。
図4は、下板41の領域と側板42の領域との界面を二点鎖線で示す。
【0021】
下板41は、Y軸方向に沿って延在する略平板であり、封止絶縁体5と表面3bとの間に設けられ、下面が接着層44に接する。下板41のY軸方向(配線基板1の面内方向にある一方向に沿う方向)の端面(側面)41aは封止絶縁体5から露出している。側板42は、下板41のY軸方向の両端部において、Z軸方向を向いた端面(上端面)41bからZ軸方向に沿って延在する平板である。すなわち、側板42は、配線基板1の面内方向と下板41のY軸方向に垂直な方向(Z軸方向)に沿って延在する。したがって、側板42は2枚存在する。ここで、下板41のY軸方向の一方の端部の端面41bのみから側板42が延在してもよい。この場合、側板42は1枚のみ存在する。側板42は、Y軸方向を向いた端面(側面)42aとZ軸方向を向いた端面(上面)42bとが封止絶縁体5から露出する。側板42は、Z軸方向の上側の端部において、図示しないヒートシンクに接していてもよい。下板41のY軸方向に向いた端面41aは封止絶縁体5から露出していなくてもよい。側板42のY軸方向の端面42aは封止絶縁体5から露出していなくてもよい。側板42のZ軸方向の端面42bは封止絶縁体5から露出していなくてもよい。ヒートシンクは封止絶縁体5の上に形成されてもよい。封止絶縁体5の上面と側板42の端面42bとは略面一であってもよい。封止絶縁体5の側面と側板42の端面42aとは略面一であってもよい。
【0022】
熱伝導体4は、封止絶縁体5に含まれる樹脂の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する。熱伝導体4は、例えば銅等の金属を含有する材料を用いて形成される。熱伝導体4は、例えば予め所望の形状に加工された上記材料からなる部材を準備し、接着層44を介して当該部材を半導体チップ3の表面3bに接着することにより形成できる。
【0023】
熱伝導体4は、封止絶縁体5に接する酸化物表面または封止絶縁体に接する凹凸表面を有していてもよい。これにより、熱伝導体4と封止絶縁体5との密着性を高めることができる。
【0024】
封止絶縁体5は、チップ積層体2および半導体チップ3を覆うように設けられ、チップ積層体2および半導体チップ3を封止する。封止絶縁体5は、酸化シリコン(SiO
2)等の無機充填材と、エポキシ系熱硬化性樹脂等の樹脂と、を含有し、例えば無機充填材を有機樹脂等と混合した封止樹脂を用いてトランスファモールド法、コンプレッションモールド法、インジェクションモールド法等のモールド法により形成される。なお、
図1は、便宜のため、封止絶縁体5の図示を省略する。
【0025】
半導体装置100は、封止絶縁体5の表面に導電性シールドを有していてもよい。導電性シールドは、例えば配線基板1の側面の少なくとも一部と封止絶縁体5とを覆う。さらに、導電性シールドが熱伝導体4を覆っていてもよい。導電性シールドは例えば、スパッタリング等で成膜することで形成可能である。導電性シールドは、封止絶縁体5内の半導体チップ20や配線基板1の内部配線から放射される不要電磁波の漏洩を防止する上で、電気抵抗率が低い金属層で形成することが好ましく、例えば銅、SUS、ニッケル等からなる金属層が適用される。導電性シールドの厚さは、その電気抵抗率に基づいて設定することが好ましい。なお、配線基板1内のビアの一部を露出させて導電性シールドと接触させることにより、グランド端子等の外部接続端子11に接続された配線に導電性シールドを接続してもよい。
【0026】
本実施形態の半導体装置の構造は、第1の構造例に限定されない。
図5ないし
図8は、半導体装置の第2の構造例を説明するための模式図である。
図5は、Z軸方向から見た半導体装置の上面の一例を示す。
図5は、便宜のため、一部の構成要素を図示しないまたは点線で図示する。
図6は、Y軸方向から見た半導体装置の側面の一例を示す。
図7は、
図5の線分A1-A2におけるX-Z断面の一例を示す。
図8は、
図5の線分A3-A4におけるY-Z断面の一例を示す。
【0027】
半導体装置の第2の構造例は、第1の構造例と比較して、配線基板1とチップ積層体2との間に設けられたスペーサ61と、スペーサ61の上方および半導体チップ3の上方に設けられたスペーサ62をさらに有し、半導体チップ3の上方にチップ積層体2を有する、換言すると配線基板1とチップ積層体2との間に半導体チップ3を有する点が異なる。ここでは、第1の構造例と異なる部分について説明し、その他の部分については、第1の構造例の説明を適宜援用できる。
【0028】
スペーサ61およびスペーサ62は、配線基板1とチップ積層体2との間に半導体チップ3を搭載するための空間を形成するために設けられる。これによりチップ積層体2の下方に半導体チップ3を搭載できるため、半導体装置100のサイズを小さくできる。
【0029】
スペーサ61は、配線基板1と最下段の半導体チップ20との間に設けられる。スペーサ62は、半導体チップ3と最下段の半導体チップ20との間に設けられる。スペーサ61は、接着層21を介して配線基板1と接着される。スペーサ61およびスペーサ62は、例えばシリコンを含有する。
【0030】
図5ないし
図8は、表面1bの上に互いに段々に積層された4つの半導体チップ20を含む第1のチップ積層体と、第1のチップ積層体の上に互いに段々に積層された4つの半導体チップ20を含む第2のチップ積層体と、第3のチップ積層体の上に互いに段々に積層された4つの半導体チップ20を含む第3のチップ積層体と、第3のチップ積層体の上に互いに段々に積層された4つの半導体チップ20を含む第4のチップ積層体と、を示す。互いに段々に積層された複数の半導体チップ20は、換言すると、互いに部分的に重畳する。
図5ないし
図8は、第1ないし第4のチップ積層体のそれぞれの最下段の半導体チップ20が他の段の半導体チップ20よりも厚い例を示すが、これに限定されず、例えば全ての半導体チップ20の厚さが同じであってもよい。
【0031】
第1の構造例および第2の構造例を例として挙げたように、本実施形態の半導体装置の構造例は、熱伝導体4を有する。これにより、半導体チップ3からの熱を熱伝導体4を介して半導体装置100の外部に移動させやすくすることができる。
【0032】
半導体装置100の放熱性を高めるために半導体チップ3を厚くして封止絶縁体5から露出させる方法が考えられる。しかしながら、半導体チップ3を厚くすると、配線基板1の表面1bの中央部を半導体チップ3が占有してしまうため、半導体チップ20のレイアウトの自由度が低下する。
【0033】
これに対し、本実施形態の半導体装置では、熱伝導体4を形成することにより、半導体チップ20のレイアウトの自由度の低下を抑制するとともに、半導体装置100の放熱性を高めることができるため、半導体装置の信頼性を向上できる。
【0034】
(第2の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態の半導体装置100における熱伝導体4の変形例について説明する。ここでは、第1の実施形態と異なる部分について説明し、その他の部分については第1の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0035】
図9および
図10は、半導体装置の第1の構造例の変形例を示す模式図である。
図9は、Z軸方向から見た半導体装置の上面の一例を示す。
図9は、便宜のため、一部の構成要素を図示しないまたは点線で図示する。
図10は、Y軸方向から見た半導体装置の側面面の一例を示す。
【0036】
図11および
図12は、半導体装置の第2の構造例の変形例を説明するための模式図である。
図11は、Z軸方向から見た半導体装置の上面の一例を示す。
図11は、便宜のため、一部の構成要素を図示しないまたは点線で図示する。
図12は、Y軸方向から見た半導体装置の側面の一例を示す。
【0037】
下板41は、封止絶縁体5と表面3bとの間に設けられ、接着層44に接する。側板42は、封止絶縁体5から露出するとともに、Y軸方向から見てチップ積層体2に重なるようにX軸方向およびZ軸方向に延在する。上板43(第3の領域)は、側板42のZ軸方向の端面42bの上に形成され、Z軸方向から見てチップ積層体2に重なるようにX軸方向およびY軸方向に延在する。上板43のZ軸方向を向いた端面43aは封止絶縁体5から露出する。側板42のY軸方向の端面42bと封止絶縁体5の側面とは面一でもよい。上板43のZ軸方向の端面43aと封止絶縁体5の上面とは面一でもよい。
図10および
図12は、側板42の領域と上板43の領域との界面を二点鎖線で示す。
【0038】
側板42のXZ方向の面積、および上板43のXY方向のそれぞれの面積は、下板41のY軸方向の端面41aの面積よりも大きい。このように側板42および上板43の面積を大きくすることにより、半導体装置100の放熱性を高めることができる。
【0039】
熱伝導体4は、例えば下板41および側板42を有する第1の部材を準備し、接着層44を介して当該部材を半導体チップ3の上面に接着し、チップ積層体2を形成した後に、上板43を有する第2の部材を第1の部材に接着することにより形成できる。これに限定されず、例えば下板41を有する第1の部材を準備し、接着層44を介して当該部材を半導体チップ3の上面に接着し、チップ積層体2を形成した後に、側板42および上板43を有する第2の部材を第1の部材に接着することにより形成してもよい。したがって、下板41と側板42との間に接着層が介在してもよい。側板42と上板43との間に接着層が介在してもよい。
【0040】
なお、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態の半導体装置100における半導体チップ3の側面に断熱材を形成する例について説明する。ここでは、第1の実施形態と異なる部分について説明し、その他の部分については第1の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0042】
図13および
図14は、それぞれ半導体装置の第1の構造例、第2の構造例の別の変形例を示す模式図である。
図13および
図14は、X-Z断面の一例を示す。
【0043】
第3の実施形態の半導体装置100は、第1の実施形態の半導体装置100と比較して、断熱材7をさらに有する点が異なる。
【0044】
断熱材7は、アンダーフィル樹脂32の周りに設けられ、半導体チップ3の側面を覆う。断熱材7の材料は、エポキシ系熱硬化性樹脂が挙げられる。断熱材7の熱伝導率は、封止絶縁体5に含まれる樹脂の熱伝導率よりも低い。断熱材7の常温での熱伝導率は、例えば1W/m・K未満である。
【0045】
本実施形態では、断熱材7を形成することにより、半導体チップ3からの熱が半導体チップ3側面方向に移動することを抑制できる。よって、半導体装置100の放熱効率を高めることができる。
【0046】
なお、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0047】
(第4の実施形態)
本実施形態は、半導体装置100の第2の構造例の変形例について説明する。ここでは、第1の実施形態と異なる部分について説明し、その他の部分については第1の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0048】
図15および
図16は、半導体装置の第2の構造例の別の変形例を示す模式図である。
図15は、Z軸方向から見た半導体装置の上面の一例を示す。
図16は、Y-Z断面の一例を示す。
【0049】
図15および
図16に示す半導体装置100は、第1の実施形態の半導体装置100の第2の構造例と比較して、スペーサ62の構造が異なる点と、熱伝導体4の代わりに熱伝導体9を備える点が異なる。
【0050】
熱伝導体9は、封止絶縁体5を覆うように設けられる。熱伝導体9は、導電性シールドとしての機能を有する。熱伝導体9の熱伝導率は、封止絶縁体5に含まれる樹脂の熱伝導率よりも高い。熱伝導体9は、例えば銅、ニッケル、SUS等の材料を用いて形成される。熱伝導体9は、一部が配線基板1と接触していてもよいし、配線基板1の接地配線と接続していてもよい。熱伝導体9は、封止絶縁体5の側面と上面とを覆っていてもよい。
【0051】
スペーサ62は、熱伝導体621と断熱材622とを有する。熱伝導体621および断熱材622は、Y軸方向に延在し、封止絶縁体5から露出して熱伝導体9に接する。
【0052】
熱伝導体621の熱伝導率は、封止絶縁体5に含まれる樹脂の熱伝導率よりも高い。熱伝導体621は、例えばシリコンを用いて形成される。熱伝導体621は、熱伝導体4の側板42や上板43に相当する部材を有していてもよい。断熱材622は、熱伝導体4の側板42や上板43に相当する部材を有していてもよい。
【0053】
断熱材622は、熱伝導体621とチップ積層体2との間に設けられる。断熱材622の熱伝導率は、封止絶縁体5に含まれる樹脂の熱伝導率よりも低いことが好ましい。断熱材622の熱伝導率は、例えば1W/m・K未満である。断熱材622は、例えばポリイミドを用いて形成される。断熱材622により、半導体チップ3からの熱が半導体チップ20に移動することを抑制できる。よって、半導体装置100の放熱効率を高めることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態の半導体装置では、熱伝導体4の代わりに熱伝導体621および熱伝導体9を形成することにより、半導体チップ3からの熱を熱伝導体621および熱伝導体9を介して半導体装置100の外部に移動させやすくすることができる。これにより、半導体装置100の放熱性を高めることができるため、半導体装置の信頼性を向上できる。
【0055】
なお、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0056】
(第5の実施形態)
本実施形態では、半導体装置の製造方法について説明する。ここでは、半導体装置の第1の構造例を例として説明するが、半導体装置の第2の構造例も同様の工程により製造可能である。
【0057】
図17は、半導体装置の製造方法の例を説明するためのフローチャートである。
図17に示すフローチャートは、半導体チップ3形成工程S1と、熱伝導体4形成工程S2と、チップ積層体2形成工程S3と、封止絶縁体5形成工程S4と、外部接続端子11形成工程S5と、研削工程S6と、個片化工程S7と、を有する。
【0058】
図18は、半導体チップ3形成工程S1を説明するための模式図である。
図18はX-Z断面の一例である。半導体チップ3形成工程S1により、
図18に示すように、配線基板1の表面1bの上方に半導体チップ3を形成し、接続端子31と配線基板1とを電気的に接続する。半導体チップ3は、表面3bに接着層44を形成し、接続端子31が表面1bの導電性パッド13に接するように搭載された後、アンダーフィル樹脂32により表面3aと表面1bとの間を封止することにより形成される。
【0059】
図19および
図20は、熱伝導体4形成工程S2を説明するための模式図である。
図19はX-Z断面の一例である。
図20はY-Z断面の一例である。熱伝導体4形成工程S2により、
図19および
図20に示すように、接着層44を介して熱伝導体4と表面3bとを接着することにより、半導体チップ3を挟んで配線基板1の上方に熱伝導体4を形成する。
【0060】
図21は、チップ積層体2形成工程S3を説明するための模式図である。
図21は、X-Z断面の一例である。チップ積層体2形成工程S3により、
図21に示すように、表面1bの上方に接着層21を介して半導体チップ20を積層し、ボンディングワイヤ22を形成することにより、チップ積層体2を形成する。
【0061】
図22および
図23は、封止絶縁体5形成工程S4を説明するための模式図である。
図22は、X-Z断面の一例である。
図23は、Y-Z断面の一例である。封止絶縁体5形成工程S4により、
図22および
図23に示すように、チップ積層体2、半導体チップ3、および熱伝導体4を覆うように封止絶縁体5を形成する。
【0062】
図24は、外部接続端子11形成工程S5を説明するための模式図である。
図24は、Y-Z断面の一例である。外部接続端子11形成工程S5により、
図24に示すように、表面1aに外部接続端子11を形成する。
【0063】
図25は、研削工程S6を説明するための模式図である。
図25は、Y-Z断面の一例である。研削工程S6により、
図25に示すように、封止絶縁体5を厚さ方向(Z軸方向)に部分的に研削する加工を行うことにより、熱伝導体4の一部を露出させる。封止絶縁体5は、例えば化学機械研磨(CMP)により研削可能である。
【0064】
図26は、個片化工程S7を説明するための模式図である。個片化工程S7により、
図26に示すように、半導体装置100毎に配線基板1をダイシングすることにより半導体装置100を個片化するとともに、熱伝導体4の他の一部を露出させる。例えば、熱伝導体4を厚さ方向に切断することにより、側板42を露出させることができる。
【0065】
以上の工程により半導体装置100を形成することができる。
【0066】
なお、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0067】
(第6の実施形態)
本実施形態では、第5の実施形態における半導体装置の製造方法の変形例について説明する。ここでは、半導体装置の第1の構造例を例として説明するが、半導体装置の第2の構造例も同様の工程により製造可能である。
【0068】
図27は、半導体装置の製造方法の変形例を説明するためのフローチャートである。
図27に示すフローチャートは、
図17に示すフローチャートと比較して、半導体チップ3形成工程S1と、チップ積層体2形成工程S3と、の間に半導体チップ20形成工程S8と、断熱材7形成工程S9と、をさらに有する点が異なる。ここでは、第5の実施形態と異なる部分について説明し、その他の部分については第5の実施形態の説明を適宜援用できる。
【0069】
図28は、半導体チップ20形成工程S8を説明するための模式図である。
図28は、X-Z断面の一例である。半導体チップ20形成工程S8により、
図28に示すように、表面1bの上方に、最下段の半導体チップ20のみ形成する。
【0070】
図29は、断熱材7形成工程S9を説明するための模式図である。
図29は、X-Z断面の一例である。断熱材7形成工程S9により、半導体チップ3の側面の少なくとも一部を覆う断熱材7を形成する。
【0071】
本実施形態では、断熱材7を形成する前に最下段の半導体チップ20を形成することにより、最下段の半導体チップ20が隔壁として機能するため、断熱材7を形成するための樹脂が流れて広がることを抑制できる。
【0072】
なお、本実施形態は、他の実施形態と適宜組み合わせることができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1…配線基板、2…チップ積層体、3…半導体チップ、4…熱伝導体、5…封止絶縁体、7…断熱材、9…熱伝導体、11…外部接続端子、12…導電性パッド、13…導電性パッド、20…半導体チップ、21…接着層、22…ボンディングワイヤ、31…接続端子、32…アンダーフィル樹脂、41…下板、41a…端面、41b…上面、42…側板、42a…端面、42a…端面、42b…端面、43…上板、43a…端面、44…接着層、61…スペーサ、62…スペーサ、100…半導体装置、621…熱伝導体、622…断熱材。