(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018315
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/00 20060101AFI20230201BHJP
H01H 9/44 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
H01H50/00 D
H01H9/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122351
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】足立 日出央
(72)【発明者】
【氏名】中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
【テーマコード(参考)】
5G027
【Fターム(参考)】
5G027AA03
5G027BA10
5G027BB03
5G027BC02
(57)【要約】
【課題】アークの冷却効率を高めて遮断性能を向上させることができる電磁接触器を提供する。
【解決手段】第1及び第2固定接点11a,12aを有する第1及び第2固定接触子11,12と、第1及び第2固定接点に接離可能な第1及び第2可動接点13a,13bを長手方向の両端に設けた可動接触子13と、第1及び第2固定接触子及び前記可動接触子を収納する絶縁ホルダー40と、第1固定接点及び第1可動接点の間、第2固定接点及び第2可動接点の間に発生したアークを収納ケース6内に設けたアーク消弧空間S1,S2に引き伸ばす、互いに対向配置された複数対のアーク消弧用永久磁石42a~42dと、複数対のアーク消弧用永久磁石に接続して磁気ループを形成する磁性金属部材であり、一部がアーク消弧空間に配置されて引き伸ばされたアークが接触する磁極部材43,44と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流路の開閉を行う接点機構と、接点機構の可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、接点機構及び電磁石ユニットを内部に配置する収納ケースと、を備え、
前記接点機構は、
第1及び第2固定接点を有する第1及び第2固定接触子と、
前記第1及び第2固定接点に接離可能な第1及び第2可動接点を長手方向の両端に設けた可動接触子と、
前記第1及び第2固定接触子及び前記可動接触子を収納する絶縁ホルダーと、
前記第1固定接点及び前記第1可動接点の間、前記第2固定接点及び前記第2可動接点の間に発生したアークを前記収納ケース内に設けたアーク消弧空間に引き伸ばす、互いに対向配置された複数対のアーク消弧用永久磁石と、
前記複数対のアーク消弧用永久磁石に接続して磁気ループを形成する磁性金属部材であり、一部が前記アーク消弧空間に配置されて引き伸ばされた前記アークが接触する磁極部材と、を備えていることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
複数対のアーク消弧用永久磁石は、前記第1固定接点及び第1可動接点の間に発生する第1アークの引き伸ばしに必要な磁束のみが横切るように配置した一対の第1アーク消弧用永久磁石と、前記第2固定接点及び第2可動接点の間に発生する第2アークの引き伸ばしに必要な磁束のみが横切るように配置した一対の第2アーク消弧用永久磁石と、で構成されていることを特徴とする請求項1記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記磁極部材は、
前記一対の第1アーク消弧用永久磁石に接続する一対の第1磁極接続部と、これら一対の第1磁極接続部に連結されて前記第1アークが引き伸ばされる前記可動接触子の長手方向の一方側に設けた第1アーク消弧空間に配置された第1磁極連結部と、を備えた第1磁極部材と、
前記一対の第2アーク消弧用永久磁石に接続する一対の第2磁極接続部と、これら一対の第2磁極接続部に連結されて前記第2アークが引き伸ばされる前記可動接触子の長手方向の他方側に設けた第2アーク消弧空間に配置された第2磁極連結部と、を備えた第2磁極部材と、で構成されていることを特徴とする請求項2記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記第1磁極部材の前記第1磁極連結部に、前記第1アーク消弧空間の前記電磁石ユニット側に引き伸ばされた前記第1アークが接触する第1アーク接触部が設けられ、
前記第2磁極部材の前記第2磁極連結部に、前記第2アーク消弧空間の前記電磁石ユニット側に引き伸ばされた前記第2アークが接触する第2アーク接触部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記第1磁極部材の前記一対の第1磁極接続部は、前記絶縁ホルダーの前記第1アーク消弧空間を向く側に設けた第1挿入部に挿入されることで前記絶縁ホルダーの内部に配置され、前記第1アーク接触部が前記第1アーク消弧空間に露出しており、
前記第2磁極部材の前記一対の第2磁極接続部は、前記絶縁ホルダーの前記第2アーク消弧空間を向く側に設けた第2挿入部に挿入されることで前記絶縁ホルダーの内部に配置され、前記第2アーク接触部が前記第1アーク消弧空間に露出していることを特徴とする請求項4に記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記一対の第1アーク消弧用永久磁石及び前記一対の第2アーク消弧用永久磁石は、前記絶縁ホルダーに保持されていることを特徴とする請求項2から5の何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項7】
前記収納ケースに、アーク消弧用ガスが封入されていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路の開閉を行う電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁接触器として、例えば、特許文献1に示すものが知られている。特許文献1の電磁接触器は、電流路の開閉を行う接点機構と、接点機構の可動接触子を駆動する電磁石装置と、接点機構及び電磁石装置を内部に配置する密閉容器とを備え、密閉容器内に、アーク遮断用のガスが注入されている。接点機構は、固定接点を有する一対の固定接触子と、一対の固定接触子の固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する可動接触子と、一対の固定接触子及び可動接触子を収納している樹脂材料で形成した絶縁ホルダーと、一対の固定接点及び一対の可動接点の間で発生するアークを引き延ばす少なくとも一対のアーク消弧用永久磁石と、を備えている。
【0003】
この特許文献1の電磁接触器は、一対の固定接点及び一対の可動接点の間にアークが発生すると、アーク消弧用永久磁石の磁束がアークを横切ることで、フレミングの左手の法則によりローレンツ力が作用してアークが引き延される。そして、ローレンツ力により引き延ばされたアークが、アーク遮断用のガスや密閉容器内の部品と接触することで冷却されて消弧するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の電磁接触器は、密閉容器内で引き延ばされたアークが絶縁ホルダーに接触するが、絶縁ホルダーは熱伝導率が比較的小さいので、アークの冷却効果を高めることができない。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アークの冷却効率を高めて遮断性能を向上させることができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器は、電流路の開閉を行う接点機構と、接点機構の可動接触子を駆動する電磁石ユニットと、接点機構及び電磁石ユニットを内部に配置する収納ケースと、を備え、接点機構は、第1及び第2固定接点を有する第1及び第2固定接触子と、第1及び第2固定接点に接離可能な第1及び第2可動接点を長手方向の両端に設けた可動接触子と、第1及び第2固定接触子及び可動接触子を収納する絶縁ホルダーと、第1固定接点及び第1可動接点の間、第2固定接点及び第2可動接点の間に発生したアークを収納ケース内に設けたアーク消弧空間に引き伸ばす、互いに対向配置された複数対のアーク消弧用永久磁石と、複数対のアーク消弧用永久磁石に接続して磁気ループを形成する磁性金属部材であり、一部がアーク消弧空間に配置されて引き伸ばされた前記アークが接触する磁極部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る電磁接触器によれば、アークの冷却効率を高めて遮断性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る一実施形態に係る電磁接触器の断面図である。
【
図2】電磁接触器を構成する絶縁ホルダー及び磁極部材を示す斜視図である。
【
図3】絶縁ホルダーがアーク消弧用永久磁石を保持し、絶縁ホルダーに磁極部材が装着されている状態を示す図である。
【
図5】一対の固定接触子の固定接点と、これら固定接点に切離する可動接触子の一対の可動接点との間にアークが発生した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」、「長尺方向」、「短尺方向」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0010】
本発明に係る第1実施形態の電磁接触器について、
図1から
図5を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の電磁接触器1は、接点機構2と、この接点機構2の後述する可動接触子を駆動する電磁石ユニット3とを備えている。
接点機構2及び電磁石ユニット3は、収納ケース6内に密封状態で収納されている。収納ケース6は、樹脂製の上ケース4と、上ケース4に接合されている樹脂製の下ケース5とで構成されている。収納ケース6内には、ガス導入パイプ7からアーク消弧用のガスが封入される。ガス導入パイプ7は、アーク消弧用のガスを収納ケース6内に封入後に途中から切断されて開口が閉塞される。収納ケース6の上ケース4には、他の部材への取付部8が設けられている。
【0011】
接点機構2は、
図1に示すように、上ケース4にインサート成形によって固定された一対の固定接触子11、12(以下、第1固定接触子11、第2固定接触子12と称する)と、これら第1固定接触子11及び第2固定接触子12に接離可能な可動接触子13とを備えている。
第1固定接触子11及び第2固定接触子12は、導電性金属材料で形成されて上ケース4に左右方向に所定間隔を離して固定される。そして、左側の第1固定接触子11の下端面には固定接点11aが形成され、右側の第2固定接触子12の下端面には固定接点12aが形成されている。
【0012】
また、可動接触子13は、導電性金属を材料とした左右方向に長く延びる導電板であり、電磁石ユニット3の後述する可動プランジャ21に連結された接点支え14、接触スプリング15及びスプリング押さえ16に支持されている。可動接触子13の左端側の上面には、左側の第1固定接触子11の固定接点11aに接触する可動接点13aが形成され、可動接触子13の右端側の上面には、右側の第2固定接触子12の固定接点12aに接触する可動接点13bが形成されている。接点支え14は、可動プランジャ21の上端に取付けられた連結ばね23を介して可動プランジャ21に連結され、接点支え14には、頂板部と頂板部の両端から下方に延びる一対の脚部とを備えたスプリング押さえ16の一対の脚部が支持されている。可動接触子13は、スプリング押さえ16の頂板部と接点支え14との間を左右方向に貫通するように配置され、可動接触子13と接点支え14との間に配置された接触スプリング15によって常時上方向に付勢された状態でスプリング押さえ16の頂板部と接触スプリング15との間に挟持され、これによって可動接触子13が支持されている。
【0013】
電磁石ユニット3は、
図1に示すように、可動プランジャ21、アーマチュア22、連結ばね23、スプール24、励磁コイル25、ヨーク31、補助ヨーク32、永久磁石33及び復帰ばね34を備え、収納ケース6内部の接点機構2の下方に配置されている。
可動プランジャ21は、磁性体で構成される上下方向に延びる丸軸状部材である。可動プランジャ21の上端には連結ばね23が取り付けられるとともに、可動プランジャ21の下端に、可動プランジャ21よりも径の大きい円板状の磁性体で構成されるアーマチュア22が固定されている。接点支え14は、連結ばね23を介して可動プランジャ21に連結され、可動プランジャ21の上方移動とともに上方向に移動し、可動プランジャ21の下方移動とともに下方向に移動する。そして、接点支え14の上方向の移動にともなって可動接触子13が上方向に移動し、接点支え14の下方向の移動にともなって可動接触子13が下方向に移動する。なお、可動プランジャ21の外周の下側には円筒形状の摺動カラー26が配置され、上側には円筒形状のプランジャリング27が配置されている。
ヨーク31は、左右対称の形状を有する左側ヨーク半体31a及び右側ヨーク半体31bを備えており、可動プランジャ21の上方向への移動は、アーマチュア22がヨーク31の左側ヨーク半体31aの下面及び右側ヨーク半体31bの下面に当接することで規制され、可動プランジャ21の下方向への移動は、アーマチュア22が補助ヨーク32の上面に当接することで規制される。
【0014】
スプール24は、絶縁性の合成樹脂で一体に形成されており、可動プランジャ21の外周を囲い、上下方向に延びる円筒状の胴部24aと、胴部24aの上端に設けられた上側フランジ部24bと、胴部24aの下端に設けられた下側フランジ部24cとを備えている。また、スプール24の胴部24aの外周には、可動プランジャ21を駆動する励磁コイル25が巻装されている。この励磁コイル25は、端子36に電気的に接続されている。
永久磁石33は、環状部材であり、ヨーク31の左側ヨーク半体31a及び右側ヨーク半体31bの下側であって可動プランジャ21のアーマチュア22の周囲に設置されている。この永久磁石33の下側に、磁性体で構成される円環板状の補助ヨーク32が設置されている。永久磁石33は、左側ヨーク半体31aの下板部31ac及び右側ヨーク半体31bの下板部31bcのそれぞれの下面に吸着され、補助ヨーク32は永久磁石33の下面に吸着された状態で設置される。
復帰ばね34は、摺動カラー26の下端面と、可動プランジャ21に固定されたアーマチュア22との間に可動プランジャ21を囲繞するように設置されており、励磁コイル25の励磁状態を解除したときに可動接触子13を第1固定接触子11及び第2固定接触子12に対して開離させる。
ここで、接点機構2(第1固定接触子11、第2固定接触子12及び可動接触子13)は、
図1に示す絶縁ホルダー40に収納されている。
【0015】
絶縁ホルダー40は、
図2に示すように、略直方体形状の磁石収納部45、46と、これら磁石収納部45,46を平行に離間し、これらの間に接触子収納空間41を設けた状態で、磁石収納部45,46の長手方向の両端部の下側を連結する一対の連結部材47と、を備えた部材である。連結部材47の磁石収納部45,46を向く面は、磁石収納部45,46の形成方向に突出している円弧面形状とされている。なお、
図2では一方の連結部材47のみを示している。
絶縁ホルダー40の磁石収納部45には、長手方向に離間して上部が四角形状に開口した2箇所の収納空間48,49が形成されている。収納空間48を形成している短手壁45aに、長手壁45bとの間に上下方向に所定の隙間を設けて収納空間48に連通するスリット50が形成されている。また、短手壁45aの下部には、長手壁45bとの間に所定の隙間を設けた遮蔽壁51が形成されている。また、収納空間49を形成している短手壁45aにも、長手壁45bとの間に所定の隙間を設けて収納空間49に連通するスリット50が形成されているとともに、図示しないが、短手壁45aの下部に、長手壁45bとの間に所定の隙間を設けた遮蔽壁51が形成されている。
【0016】
また、絶縁ホルダー40の磁石収納部46にも、長手方向に離間して上部が四角形状に開口した2箇所の収納空間52,53が形成されている。収納空間52を形成している短手壁46aに、長手壁46bとの間に上下方向に所定の隙間を設けて収納空間52に連通するスリット54が形成されている。また、短手壁46aの下部には、長手壁46bとの間に所定の隙間を設けた遮蔽壁55が形成されている。また、収納空間53を形成している短手壁46aにも、長手壁46bとの間に所定の隙間を設けて収納空間53に連通するスリット54が形成されているとともに、図示しないが、短手壁46aの下部に、長手壁46bとの間に所定の隙間を設けた遮蔽壁55が形成されている。
【0017】
絶縁ホルダー40には、
図2で示す第1及び第2磁極部材43、44が装着される。第1磁極部材43は、磁性金属板で形成されており、互いに平行に延在する一対の磁極接続部56,57と、一対の磁極接続部56,57の一端部間を連結する磁極連結部58と、を備えている。一対の磁極接続部56,57の端部には、直方体形状のアーク消弧用永久磁石に面接触する四角板形状の接触部56a,57aが形成されている。また、磁極連結部58には、磁極接続部56,57の形成方向に突出している円弧面形状に形成したアーク接触部58aが形成されている。また、第2磁極部材44も、
図2に示すように、第1磁極部材43と同一構成の部材であり、互いに平行に延在する一対の磁極接続部56,57と、磁極連結部58とを備え、一対の磁極接続部56,57の端部に接触部56a,57aが形成され、磁極連結部58にアーク接触部58aが形成されている。
【0018】
第1磁極部材43は、接触部56a,57aをスリット50,54から収納空間48、52に挿入し、磁極接続部56を長手壁46bと遮蔽壁55の間に位置し、磁極接続部57を長手壁45bと遮蔽壁55の間に位置し、アーク接触部58aを連結部材47の上面に当接した状態で、絶縁ホルダー40に装着される。また、第2磁極部材44は、接触部56a,57aをスリット50,54から収納空間49、53に挿入し、磁極接続部56を長手壁45bと遮蔽壁51の間に位置し、磁極接続部57を長手壁46bと遮蔽壁55の間に位置し、アーク接触部58aを連結部材47の上面に当接した状態で、絶縁ホルダー40に装着される。
【0019】
また、
図3に示すように、絶縁ホルダー40の収納空間48,52に、アーク消弧用永久磁石42a,42bが、第1磁極部材43の接触部56a,57aに面接触した状態で収納されている。アーク消弧用永久磁石42aのアーク消弧用永久磁石42b側に対向する着磁面はS極とされ、アーク消弧用永久磁石42bのアーク消弧用永久磁石42a側に対向する着磁面はN極とされている。これにより、アーク消弧用永久磁石42bのN極から出た磁束が、接触子収納空間41を通過してアーク消弧用永久磁石42bに流れ、第1磁極部材43の磁極接続部57(接触部57a)から磁極連結部(アーク接触部58a)及び磁極接続部56(接触部56a)を通過してアーク消弧用永久磁石42bに戻る磁気ループが形成される。ここで、第1磁極部材43の磁極連結部58(アーク接触部58a)を除く部位は、接触子収納空間41に露出せず、絶縁ホルダー40の外側に露出していない。
【0020】
また、
図3に示すように、絶縁ホルダー40の収納空間49,53に、アーク消弧用永久磁石42c,42dが、第2磁極部材44の接触部56a,57aに面接触した状態で収納されている。アーク消弧用永久磁石42cのアーク消弧用永久磁石42d側に対向する着磁面はS極とされ、アーク消弧用永久磁石42dのアーク消弧用永久磁石42c側に対向する着磁面はN極とされている。これにより、アーク消弧用永久磁石42dのN極から出た磁束が、接触子収納空間41を通過してアーク消弧用永久磁石42cに流れ、第2磁極部材44の磁極接続部56(接触部56a)から磁極連結部(アーク接触部58a)及び磁極接続部57(接触部57a)を通過してアーク消弧用永久磁石42dに戻る磁気ループが形成される。ここで、第2磁極部材44の磁極連結部58(アーク接触部58a)を除く部位は、絶縁ホルダー40の外側に露出していない。
【0021】
図4は、第1磁極部材43及び第2磁極部材44を装着し、4個のアーク消弧用永久磁石42a,42b,42c,42dを収納した絶縁ホルダー40を、上ケース4の内部に配置した状態を示すものである。絶縁ホルダー40の接触子収納空間41に接点機構2(第1固定接触子11、第2固定接触子12及び可動接触子13)が配置される。
第2固定接触子12の固定接点12aと、この固定接点に接離する可動接触子13の可動接点13bとを接点部60aと称すると、絶縁ホルダー40に収納されているアーク消弧用永久磁石42bからアーク消弧用永久磁石42aに流れる磁束φ1が接点部60aを横切る。接点部60bに対して右側の領域であって上ケース4の右側の内壁と、絶縁ホルダー40の磁石収納部45,46の間で囲まれた空間が第1アーク消弧空間S1とされている。そして、第1アーク消弧空間S1には、電磁石ユニット3側で前後方向に延在する第1磁極部材43のアーク接触部58aが配置されている。
【0022】
また、第1固定接触子11の固定接点11aと、この固定接点11aに接離する可動接触子13の可動接点13aとを接点部60bと称すると、絶縁ホルダー40に収納されているアーク消弧用永久磁石42dからアーク消弧用永久磁石42cに流れる磁束φ2が接点部60bを横切る。接点部60bに対して左側の領域であって上ケース4の左側の内壁と、絶縁ホルダー40の磁石収納部45,46の間で囲まれた空間が第2アーク消弧空間S2とされている。そして、第2アーク消弧空間S2には、電磁石ユニット3側で前後方向に延在する第2磁極部材44のアーク接触部58aが配置されている。
【0023】
次に、本実施形態の電磁接触器1の動作を、
図1、
図4及び
図5を参照して説明する。
本実施形態の電磁接触器1は、
図1に示すように、第1固定接触子11に負極(-)端子を接続し、第2固定接触子12に正極(+)端子を接続している。
今、電磁石ユニット3の励磁コイル25が無励磁状態にあって、電磁石ユニット3で可動プランジャ21を上方向に移動させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。この釈放状態では、可動プランジャ21が復帰ばね34によって下方向に付勢され、アーマチュア22が補助ヨーク32に永久磁石33の作用によって吸着している。このため、可動プランジャ21連結されている可動接触子13が、第1固定接触子11及び第2固定接触子12に対して下方に所定距離だけ離間している。このため、第1固定接触子11及び第2固定接触子12の間の電流路が遮断状態にあり、接点機構2の接点部60a,60bが開いた状態となっている(接点機構2の開状態)。
【0024】
この接点機構2の開状態から、電磁石ユニット3の励磁コイル25に通電すると、電磁石ユニット3で励磁力が発生し、可動プランジャ21を、永久磁石33による補助ヨーク32に対する吸着力及び復帰ばね34の付勢力に抗して上方に押し上げ、アーマチュア22がヨーク31の左側ヨーク半体31aの下板部ac及び右側ヨーク半体31bの下板部bcのそれぞれの下面に吸着される。
このように、可動プランジャ21が上方向に移動することにより、可動プランジャ21に連結されている可動接触子13も上方向に移動し、可動接触子13の両接点13a,13bが、第1固定接触子11の接点11a及び第2固定接触子12の接点12aに対して接触スプリング15
の接触圧で接触し、接点機構2の接点部60a,60bが閉じた状態となる(接点機構2の閉状態)。
【0025】
そして、接点機構2の閉状態から、電磁石ユニット3の励磁コイル25への通電を停止すると、電磁石ユニット3で可動プランジャ21を上方向に移動させる励磁力がなくなることで、可動プランジャ21が復帰ばね34の付勢力によって下方向に移動し、アーマチュア22が補助ヨーク32に永久磁石33の作用によって吸着する。
可動プランジャ21が下方向に移動すると、可動プランジャ21に連結している可動接触子13が第1固定接触子11及び第2固定接触子12から下方に離間する開極開始状態となる。
このような接点機構2の開極開始状態となると、
図5に示すように、接点機構2の接点部60aの間に第1アークが発生し、接点機構2の接点部60bの間に第2アークが発生し、これら第1及び第2アークによって電流の通電状態が継続されることになる。第1アークの電流方向は、固定接点12aから可動接点13bに向う方向であり、第2アークの電流方向は、可動接点13aから固定接点11aに向う方向である。
【0026】
このとき、
図4に示すように、接点部60aを挟んで前後方向からアーク消弧用永久磁石42a,42bが対向配置されており、アーク消弧用永久磁石42bのN極から出てアーク消弧用永久磁石42aのS極に流れる磁束φ1(
図4参照)が第1アークを横切る。また、接点部60bを挟んで前後方向からアーク消弧用永久磁石42c,42dが対向配置されており、アーク消弧用永久磁石42dのN極から出てアーク消弧用永久磁石42cのS極に流れる磁束φ2(
図4参照)が第2アークを横切る。ここで、本実施形態は、アーク消弧用永久磁石42a,42bの間に磁気ループを形成する第1磁極部材43が配置されているので、アーク消弧用永久磁石42a,42bの間に高密度の磁束φ1が流れる。また、アーク消弧用永久磁石42c,42dの間にも磁気ループを形成する第2磁極部材44が配置されているので、アーク消弧用永久磁石42c,42dの間に高密度の磁束φ2が流れる。
【0027】
そして、
図5に示すように、第1アークの電流の流れと、高密度の磁束φ1との関係から、フレミング左手の法則により第1アーク消弧空間S1に向かう側に大きなローレンツ力F1が発生する。また、第2アークの電流の流れと、高密度の磁束φ2との関係から、フレミング左手の法則により第2アーク消弧空間S2に向かう側に大きなローレンツ力F1が発生する。
第1アークは、大きなローレンツ力F1の発生により第1アーク消弧空間S1に大きく引き延ばされていき、収納ケース6に封入されているアーク消弧用のガスとの接触により冷却されていくとともに、第1アーク消弧空間S1を跨るように配置された第1磁極部材43のアーク接触部58aに接触することで冷却されていく。また、第2アークも、大きなローレンツ力F2の発生により第2アーク消弧空間S2に大きく引き延ばされていき、収納ケース6内のアーク消弧用のガスとの接触により冷却されていくとともに、第2アーク消弧空間S2を跨るように配置された第2磁極部材44のアーク接触部58aに接触することで冷却されていく。このように、接点機構2の開極開始状態で発生する第1及び第2アークは、第1及び第2アーク消弧空間S1、S2に大きく引き延ばされてアーク消弧用のガスに接触するとともに、第1磁極部材43及び第2磁極部材44のアーク接触部58aに接触することで、効率よく冷却されて消弧される。
【0028】
次に、本実施形態の電磁接触器1の作用効果について説明する。
接点機構2の開極開始状態により接点機構2の接点部60a,60bに第1アーク及び第2アークが発生すると、接点部60aを挟んで対向配置したアーク消弧用永久磁石42a,42b間を流れる磁束φ1が第1アークに集中的に横切り、接点部60bを挟んで対向配置したアーク消弧用永久磁石42c,42d間を流れる磁束φ2が第2アークに集中的に横切るので、第1アーク及び第2アークの遮断に必要な磁束密度を効率的に確保することができる。
また、第1アークは、第1アーク消弧空間S1を跨るように配置した第1磁極部材43のアーク接触部58aに接触することで効率よく冷却され、第2アークも、第2アーク消弧空間S2を跨るように配置した第2磁極部材44のアーク接触部58aに接触することで効率よく冷却されるので、遮断性能を向上させることができる。
【0029】
また、アーク消弧用永久磁石42a,42bには磁気ループを形成する第1磁極部材43が接続され、アーク消弧用永久磁石42a,42bの間に高密度の磁束φ1が流れるので、第1アークが発生したときに第1アーク消弧空間S1に向かう側に大きなローレンツ力F1が発生して第1アークの引き伸ばしが増大する。また、アーク消弧用永久磁石42c,42dにも磁気ループを形成する第2磁極部材44が接続され、アーク消弧用永久磁石42c,42dの間に高密度の磁束φ2が流れるので、第2アークが発生したときに第2アーク消弧空間S2に向かう側に大きなローレンツ力F2が発生して第2アークの引き伸ばしが増大する。このように、第1及び第2アークの引き伸ばしが増大することで、さらに遮断性能を向上させることができる。
【0030】
さらに、第1磁極部材43は、磁極接続部56,57が絶縁ホルダー40の内部に配置され、アーク接触部58aが電磁石ユニット3側の第1アーク消弧空間S1に露出しており、第2磁極部材44も、磁極接続部56,57が絶縁ホルダー40の内部に配置され、アーク接触部58aのみが電磁石ユニット3側の第2アーク消弧空間S2に露出しており、接点部60a,60bとの絶縁間距離が十分に確保されているので、金属部品間の短絡を確実に防止することができる。
さらにまた、第1及び第2磁極部材43,44は、絶縁ホルダー40のスリット50,54及び遮蔽壁51,55の内側に磁極接続部56,57を挿入するだけで、アーク接触部58aを露出させることができるので、絶縁ホルダー40への第1及び第2磁極部材43,44の装着作業を簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 電磁接触器
2 接点機構
3 電磁石ユニット
4 上ケース
5 下ケース
6 収納ケース
7 ガス導入パイプ
8 取付部
11 第1固定接触子
11a 固定接点(第1固定接点)
12 第2固定接触子
12a 固定接点(第2固定接点)
13 可動接触子
13a 可動接点(第1可動接点)
13b 可動接点(第2可動接点)
14 接点支え
15 接触スプリング
16 スプリング押さえ
21 可動プランジャ
22 アーマチュア
23 復帰ばね
24 スプール
24a 胴部
24b 上側フランジ部
24c 下側フランジ部
25 励磁コイル
26 摺動カラー
27 プランジャリング
31 ヨーク
31a 左側ヨーク半体
31b 右側ヨーク半体
32 補助ヨーク
33 永久磁石
34 復帰ばね
36 端子
40 絶縁ホルダー
41 接触子収納空間
42a,42b アーク消弧用永久磁石(第1アーク消弧用永久磁石)
42c,42d アーク消弧用永久磁石(第2アーク消弧用永久磁石)
43 第1磁極部材
44 第2磁極部材
45 磁石収納部
45a 短手壁
45b 長手壁
46 磁石収納部
46a 短手壁
46b 長手壁
47 連結部材
48,49 収納空間
50 スリット
51 遮蔽壁
52,53 収納空間
54 スリット
55遮蔽壁
56,57 磁極接続部(第1磁極接続部、第2磁極接続部)
56a,57a 接触部
58 磁極連結部
58a アーク接触部(第1アーク接触部、第2アーク接触部)
60a,60b 接点部
S1 第1アーク消弧空間
S2 第2アーク消弧空間