(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183152
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 2/10 20060101AFI20231220BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01G2/10 600
H01G4/228 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096631
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】増田 朗丈
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信弥
(72)【発明者】
【氏名】安藤 ▲徳▼久
(72)【発明者】
【氏名】金子 英樹
(72)【発明者】
【氏名】油川 健
(72)【発明者】
【氏名】玉木 賢也
(72)【発明者】
【氏名】吉井 彰敏
(57)【要約】
【課題】内部のセラミック素子のサイズ変更などに対して柔軟に対応可能であり、かつ、生産性の良好な電子部品。
【解決手段】凹部と、前記凹部の開口縁部とを有するケースと、前記凹部に配置され、互いに対向する第1主面と第2主面とを有し、前記第1主面に形成される第1電極部と、前記第2主面に形成される第2電極部と、を有するセラミック素子と、前記開口縁部に配置されており前記第1主面および前記第2主面に略水平である第1実装部と、前記第1電極部に接続する第1電極接続部と、を有する第1金属端子と、前記開口縁部に配置されており前記第1主面および前記第2主面に略水平である第2実装部と、前記第2電極部に接続する第2電極接続部と、を有する第2金属端子と、を有する電子部品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部と、前記凹部の開口縁部とを有するケースと、
前記凹部に配置され、互いに対向する第1主面と第2主面とを有し、前記第1主面に形成される第1電極部と、前記第2主面に形成される第2電極部と、を有するセラミック素子と、
前記開口縁部に配置されており前記第1主面および前記第2主面に略水平である第1実装部と、前記第1電極部に接続する第1電極接続部と、を有する第1金属端子と、
前記開口縁部に配置されており前記第1主面および前記第2主面に略水平である第2実装部と、前記第2電極部に接続する第2電極接続部と、を有する第2金属端子と、を有する電子部品。
【請求項2】
前記ケースの開口から前記凹部の底面までの距離である凹部深さは、前記第1主面と前記第2主面との距離である素子厚みより深いことを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記セラミック素子は、前記第1主面および前記第1電極部と、第1誘電体部とを有する第1部分と、前記第2主面および前記第2電極部と、第2誘電体部とを有する第2部分と、を有し、前記第1部分と前記第2部分とは、中間電極部を介して接続されている請求項1に記載の電子部品。
【請求項4】
前記セラミック素子は、前記第1主面および前記第2主面をそれぞれ有する第1素子部と第2素子部とを有し、
前記第1素子部と前記第2素子部とは、互いの前記第2主面が向き合うように配置されており、
前記第2電極接続部は、前記第1素子部および前記第2素子部の双方の第2電極部に接するように、前記第1素子部と前記第2素子部の前記第2主面に挟まれており、
前記第1電極接続部は、前記第1素子部の前記第1電極部に接続する第1素子接続部と、前記第2素子部の前記第1電極部に接続する第2素子接続部と、を有する請求項1に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1金属端子は、前記第1電極接続部と前記第1実装部とを接続する第1端子腕部を有し、
前記凹部において、前記第2電極部と前記第1端子腕部との間に配置される絶縁部材を有する請求項1に記載の電子部品。
【請求項6】
前記ケースには、前記開口縁部および前記凹部へ開口する溝部が形成されており、
前記絶縁部材の少なくとも一方の端部は、前記溝部に入っている請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記ケースにおける前記開口縁部の少なくとも一部が下方から見えることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項8】
前記第1金属端子は、前記第1実装部の先端から、前記ケースの外側面に沿って上方に延びる第1折り返し部を有し、
前記第2金属端子は、前記第2実装部の先端から、前記ケースの外側面に沿って上方に延びる第2折り返し部を有する請求項1に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ等として用いられる電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、単板状の誘電体ディスクに対して、金属端子を接続して構成されるコンデンサ等が提案されている。また、このような誘電体ディスクの周辺を外装材でモールドし、面実装に適した形態とした電子部品も提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の面実装用電子部品では、樹脂成形のためのキャビティ内に誘電体ディスクや金属端子を固定したのち、外装材によりモールドする工程を必要とするため、組み立て工程が複雑であるという問題を有する。また、誘電体ディスクのサイズ変更に伴い成形金型を変更する必要があるため、誘電体ディスクのサイズ変更などに対して柔軟に対応することが難しいという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、内部のセラミック素子のサイズ変更などに対して柔軟に対応可能であり、かつ、生産性の良好な電子部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る電子部品は、
凹部と、前記凹部の開口縁部とを有するケースと、
前記凹部に配置され、互いに対向する第1主面と第2主面とを有し、前記第1主面に形成される第1電極部と、前記第2主面に形成される第2電極部と、を有するセラミック素子と、
前記開口縁部に配置されており前記第1主面および前記第2主面に略水平である第1実装部と、前記第1電極部に接続する第1電極接続部と、を有する第1金属端子と、
前記開口縁部に配置されており前記第1主面および前記第2主面に略水平である第2実装部と、前記第2電極部に接続する第2電極接続部と、を有する第2金属端子と、を有する。
【0007】
本発明に係る電子部品は、ケース内の凹部にセラミック素子を収容するため、樹脂成形のためのキャビティ内にセラミック素子などを配置して外装材によるモールドを行う工程が必要なく、生産性が良好である。また、実装部に対してセラミック素子の主面が水平であるため、部品の低背化の観点で有利である。また、開口縁部に第1実装部および第2実装部が配置されるため、第1電極接続部および第2電極接続部から第1実装部および第2実装部までの長さを短くして、金属端子での抵抗値を小さくすることができる。
【0008】
また、たとえば、前記ケースの開口から前記凹部の底面までの距離である凹部深さは、前記第1主面と前記第2主面との距離である素子厚みより深くてもよい。
【0009】
このような電子部品は、凹部の開口から露出することなく、セラミック素子の全体を凹部に収容することができる。また、凹部にモールド樹脂を充填する場合は、モールド樹脂でセラミック素子全体を覆うことができる。
【0010】
また、たとえば、前記セラミック素子は、前記第1主面および前記第1電極部と、第1誘電体部とを有する第1部分と、前記第2主面および前記第2電極部と、第2誘電体部とを有する第2部分と、を有してもよく、前記第1部分と前記第2部分とは、中間電極部を介して接続されていてもよい。
【0011】
凹部に配置されるセラミック素子は、1つの単板のセラミック素子であってもよいが、第1部分と第2部分のように、複数の板状部分を組み合わせたものであってもよく、このような電子部品は、第1誘電体部と第2誘電体部とを直列接続した電子部品を構成する。
【0012】
また、たとえば、前記セラミック素子は、前記第1主面および前記第2主面をそれぞれ有する第1素子部と第2素子部とを有してもよく、
前記第1素子部と前記第2素子部とは、互いの前記第2主面が向き合うように配置されていてもよく、
前記第2電極接続部は、前記第1素子部および前記第2素子部の双方の第2電極部に接するように、前記第1素子部と前記第2素子部の前記第2主面に挟まれていてもよく、
前記第1電極接続部は、前記第1素子部の前記第1電極部に接続する第1素子接続部と、前記第2素子部の前記第1電極部に接続する第2素子接続部と、を有してもよい。
【0013】
凹部に配置されるセラミック素子は、1つの単板の誘電体であってもよいが、第1素子部と第2素子部のように、複数の板状の誘電体を組み合わせたものであってもよく、このような電子部品は、第1素子部と第2素子部とを並列接続した電子部品を構成する。
【0014】
また、たとえば、前記第1金属端子は、前記第1電極接続部と前記第1実装部とを接続する第1端子腕部を有してもよく、
前記凹部において、前記第2電極部と前記第1端子腕部との間に配置される絶縁部材を有してもよい。
【0015】
電子部品では、第1および第2金属端子の一部を凹部の開口から露出させる都合上、一方の電極部に接続する金属端子の端子腕部が、他方の電極部の近くを通過する問題が生じ得るが、第2電極部と第1端子腕部との間に絶縁部材が配置されていることにより、このような電子部品は、好適な絶縁特性を確保し得る。
【0016】
また、たとえば、前記ケースには、前記開口縁部および前記凹部へ開口する溝部が形成されていてもよく、
前記絶縁部材の少なくとも一方の端部は、前記溝部に入っていてもよい。
【0017】
このような電子部品は、絶縁部材を容易かつ精度よく位置決めすることができるため、絶縁特性および生産性が良好である。
【0018】
また、たとえば、電子部品では、前記ケースにおける前記開口縁部の少なくとも一部が下方から見えてもよい。
【0019】
このような電子部品は、凹部の開口縁部の少なくとも一部が露出する単純な構造を有しており、生産性が良好である。
【0020】
また、たとえば、前記第1金属端子は、前記第1実装部の先端から、前記ケースの外側面に沿って上方に延びる第1折り返し部を有してもよく、
前記第2金属端子は、前記第2実装部の先端から、前記ケースの外側面に沿って上方に延びる第2折り返し部を有してもよい。
【0021】
このような金属端子を有する電子部品は、実装時にはんだフィレットが形成されやすくなり、良好な実装性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電子部品を斜め上方から見た概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子部品を斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る電子部品の底面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す電子部品を斜め下方から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態に係る電子部品を斜め上方から見た概略斜視図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係る電子部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0024】
第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る電子部品10の斜め上方からの概略斜視図であり、
図2は、電子部品10の斜め下方からの概略斜視図である。
図1および
図2に示すように、電子部品10は、ケース20と、ケース20の凹部21に配置されるセラミック素子30とを有する。また、
図2から理解できるように、電子部品10は、凹部21に配置されるセラミック素子30にそれぞれ接続する第1金属端子40と第2金属端子50とを有する。
【0025】
図1および
図2に示すように、電子部品10は略矩形平板形状または3方向の長さのうち2方向の長さが略等しく1方向の長さが他の2方向の長さより短い直方体形状を有する。ただし、電子部品10としてはこれに限定されず、矩形以外の他の多角形平板状の形状であってもよく、円盤状、楕円盤状、角柱状その他の形状であってもよい。
図1および
図2から理解できるように、電子部品10において、ケース20に形成される凹部21の開口21aが形成されている側が、電子部品10を実装する際に、実装対象となる基板などに対向する実装面側となる。
【0026】
図2に示すように、ケース20は、凹部21と、凹部21の開口21aを取り囲む開口縁部22とを有する。
図2に示すように、凹部21の開口21aは、ケース20が有する面のうち、4つの面積の狭い面ではなく、2つの面積の狭い面のいずれかに形成されている。これにより、電子部品10を低背化することができる。
【0027】
図2に示すように、ケース20は、凹部21の内部にセラミック素子30等を収容する。凹部21の開口21aは、ケース20の外形状より小さい矩形形状を有している。また、
図2に示すように、凹部21は、ケース20の内部に、略直方体状の空間を形成している。
図1および
図2に示すように、凹部21の開口21aとは反対方向である電子部品10の上方には、ケース20の上底23が形成されている。
【0028】
図2に示すように、開口縁部22は、開口21aを取り囲む額縁状の平面で構成される。開口縁部22は、後述するセラミック素子30の第1主面31aおよび第2主面31bに対して略平行である。なお、開口縁部22の形状は、開口21aの形状や、ケース20の外周形状等に応じて、
図2に示す開口縁部22とは異なる形状となる場合がある。
【0029】
図3は、電子部品10の側面図である。
図2および
図3に示すように、開口縁部22には、第1金属端子40の第1実装部42と、第2金属端子50の第2実装部52とが配置される。
【0030】
図4は、電子部品10の略中心を通り、第1および第2外側面24、25に直交する断面による断面図である。
図2および
図4に示すように、セラミック素子30は、ケース20の凹部21に配置される。
図3に示すように、セラミック素子30は、互いに対向する第1主面31aと第2主面31bとを有し、略円盤状の外形状を有する。ただし、セラミック素子30は、楕円盤状、矩形平板状など、円盤状以外の形状であってもかまわない。なお、第1主面31aおよび第2主面31bは、セラミック素子30において最も面積の広い1対の面である。また、
図4に示すように、セラミック素子30の説明では、2つの主面のうちケース20の上底23がある上を向く一方を第1主面31aとし、実装面側である下を向く他方を第2主面31bとするが、第1主面31aと第2主面31bとは、図面に示される状態に対して互いに入れ代わっていてもよい。
【0031】
電子部品10の断面図である
図4に示すように、セラミック素子30は、第1主面31aに形成される第1電極部33と、第2主面31bに形成される第2電極部34と、第1電極部33と第2電極部34との間に挟まれる誘電体部35とを有する。誘電体部35の材質は、特に限定されず、たとえばチタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムまたはこれらの混合物などの誘電体材料で構成される。なお、セラミック素子30は、第1電極部33と第2電極部34との間に誘電体部35を挟むコンデンサ等のみには限定されない。たとえば、セラミック素子は、第1電極部と第2電極部との間に半導体セラミックスを挟むバリスタやサーミスタであってもよい。
【0032】
第1電極部33および第2電極部34の材質も特に限定されず、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられるが、銀や銀とパラジウムの合金なども使用することができる。第1電極部33および第2電極部34の厚みは、特に限定されないが、通常10~50μm程度である。なお、第1および第2電極部33、34の表面には、Ni、Cu、Sn等から選ばれる少なくとも1種の金属被膜が形成されていてもよい。
【0033】
図4に示すように、セラミック素子30は、第2主面31bが開口21aの開口方向と同じ方向を向き、第1主面31aが開口21aの開口方向とは反対方向を向くように、凹部21内に配置される。したがって、ケース20の開口21aから凹部21の上底23までの距離である凹部深さW2は、セラミック素子30の第1主面31aと第2主面31bとの距離である素子厚みW1より深い。これにより、電子部品10は、凹部21の開口21aからセラミック素子30の一部が露出することなく、セラミック素子30の全体を凹部21に収容することができる。また、電子部品10では、凹部21にモールド樹脂を充填してもよく、このような場合、モールド樹脂でセラミック素子30全体を覆うことができる。
【0034】
図4に示すように、ケース20は、開口21aを塞ぐ蓋部を有していない。したがって、
図2に示すように、電子部品10では、ケース20における開口縁部22の少なくとも一部、すなわち、開口縁部22のうち第1実装部42および第2実装部52が配置されている部分を除く残部が、下方から見える。このように、ケース20が、蓋を取り付けないシンプルな形状であるため、電子部品10は生産性が良好である。
【0035】
図2に示すように、電子部品10は、第1金属端子40と第2金属端子50からなる一対の金属端子を有する。
図2および
図4に示すように、第1金属端子40と第2金属端子50とは、電子部品10において互いに間隔を空けて配置されており、電気的に絶縁されている。第1金属端子40および第2金属端子50は、たとえば導電性の金属板材を機械加工して形成されるが、金属端子40、50の形成方法は、特に限定されない。
【0036】
図4に示すように、第1金属端子40は、開口縁部22に配置される第1実装部42と、セラミック素子30の第1電極部33に接続する第1電極接続部44と、第1実装部42と第1電極接続部44とをつなぐ第1端子腕部46と、第1実装部42の先端42aから上方へ延びる第1折り返し部47とを有する。
図4に示すように、第1電極接続部44と第1端子腕部46とは、セラミック素子30と同様に、ケース20の凹部21に収容される。
【0037】
図2および
図4に示すように、第1電極接続部44は、セラミック素子30の第1主面31aに対して略平行に延在し、第1主面31aに形成される第1電極部33に対して、はんだや導電性接着剤など介して接続される。これに対して、第1実装部42は、開口縁部22の一方側(ケース20の第1外側面24側)に配置される。
【0038】
図4に示すように、第1金属端子40の第1端子腕部46は、凹部21内の第1電極接続部44と、凹部21の外の第1実装部42とを接続する。また、
図2および
図4に示すように、第1実装部42は、セラミック素子30の第1主面31aおよび第2主面31bに略平行である。
【0039】
図2~
図4に示すように、ケース20は、セラミック素子30の第1主面31aおよび第2主面31b並びに金属端子40、50の第1実装部42および第2実装部52に垂直である第1外側面24および第2外側面25を有する。すなわち、第1外側面24と第2外側面25とは、ケース20の4つの外側面のうち、互いに対向する一対の外側面である。なお、ケース20の外面のうち、開口縁部22に垂直な面が、外側面である。
【0040】
図4に示すように、第1実装部42の先端42aは、第1実装部42において第1端子腕部46に接続する側とは反対側の端部であり、第1折り返し部47に接続する。第1実装部42の先端42aから第1外側面24までの距離D1は、第1実装部42の先端42aから凹部21までの距離D2より短い。このような第1実装部42は、開口縁部22に沿って一定以上の面積を確保することができ、良好な実装性を奏する。
【0041】
図4に示すように、第1金属端子40の第1折り返し部47は、実装部42の先端42aから、ケース20の第1外側面24に沿って上方に延びている。第1金属端子40が、第1折り返し部47を有することにより、実装時にはんだフィレットが形成されやすくなり、このような第1折り返し部47を有する電子部品10は、良好な実装性を奏する。また、
図4に示すように、第1端子腕部46、第1実装部42および第1折り返し部47を有することにより、第1金属端子40の先端がJ字状になる。そのため、電子部品10では、第1端子腕部46と第1折り返し部47の間にケース20の一部が挟まれることにより、第1金属端子40を、ケース20に対して、より強く係合または固定させることが可能である。また、第1折り返し部47に形成されるはんだフィレットは、画像検査などで検出しやすく、実装工程の自動化の観点からも、第1折り返し部47を有する第1金属端子40は有利である。
【0042】
図2~
図4に示すように、第2金属端子50は、開口縁部22に配置される第2実装部52と、セラミック素子30の第2電極部34に接続する第2電極接続部54と、第2実装部52と第2電極接続部54とをつなぐ第2端子腕部56と、第2実装部52の先端52aから上方へ延びる第2折り返し部57とを有する。第2電極接続部54は、第1電極接続部44と同様に、ケース20の凹部21に収容される。
【0043】
図2および
図4に示すように、第2電極接続部54は、セラミック素子30の第2主面31bに対して略平行に延在し、第2主面31bに形成される第2電極部34に対して、はんだや導電性接着剤などを介して接続される。これに対して、第2実装部52は、開口縁部22の他方側(ケース20の第2外側面25側)に配置される。
【0044】
図4に示すように、第2金属端子50の第2端子腕部56は、凹部21内の第2電極接続部54と、凹部21の外の第2実装部52とを接続する。また、
図2および
図4に示すように、第2実装部52は、セラミック素子30の第1主面31aおよび第2主面31bに略平行である。
【0045】
図4に示すように、第2実装部52の先端52aは、第2実装部52において第2端子腕部56に接続する側とは反対側の端部であり、第2折り返し部57に接続する。第2実装部52の先端52aから第2外側面25までの距離D3は、第2実装部52の先端52aから凹部21までの距離D4より短い。このような第2実装部52は、開口縁部22に沿って一定以上の面積を確保することができ、良好な実装性を奏する。
【0046】
図2および
図4に示すように、第2金属端子50の第2折り返し部57は、第2実装部52の先端52aから、ケース20の第2外側面25に沿って上方に延びている。第2折り返し部57を有する第2金属端子50は、第1折り返し部47を有する第1金属端子40と同様の効果を奏する。
【0047】
なお、
図3に示すように、第1折り返し部47と第1外側面24との間および第2折り返し部57と第2外側面25との間には、所定の隙間が形成されていてもよい。このような隙間を形成しておくことにより、第1金属端子40および第2金属端子50をケース20に対して組み立てる際、適切な寸法ばらつきを許容して円滑な組み立てを実現する。ただし、変形例である電子部品410の側面図である
図12に示されるように、第1金属端子440における第1折り返し部447および第2金属端子450における第2折り返し部457は、それそれ第1外側面24または第2外側面25に接触していてもよい。
【0048】
また、
図2に示すように、開口縁部22における凹部21側の端部には、面取り部22aが形成してあり、開口縁部22における第1および第2外側面24、25側の端部には面取り部22bが形成してある。開口縁部22に面取り部22a、22bが形成してあることにより、第1金属端子40および第2金属端子50のケース20への円滑な組み立てに資する。なお、面取り部22a、22bはR加工であってもよく、また、開口縁部22には、面取り部22a、22bが形成されていなくてもかまわない。
【0049】
図2および
図4等に示す第1金属端子40および第2金属端子50の材質は、導電性を有する金属材料であれば特に限定されず、たとえば鉄、ニッケル、銅、銀等若しくはこれらを含む合金を用いることができる。また、第1金属端子40および第2金属端子50の表面には、Ni、Sn、Cu等の金属被膜が形成されていてもよい。
【0050】
図2および
図4に示すケース20の凹部21には、凹部21の内壁とセラミック素子30および金属端子40、50との隙間を埋めるモールド樹脂が充填されていてもよい。これにより、電子部品10の強度および絶縁性などを向上させることができる。ただし、凹部21内には、樹脂が充填されていなくてもよく、
図2に示すように、凹部21の内壁とセラミック素子30および金属端子40、50との間には、空隙が形成されていてもよい。
【0051】
ケース20は、たとえば、樹脂による射出成形などにより製造することができる。ただし、ケース20の材質は、樹脂のみには限定されない。
【0052】
図1~
図4に示す電子部品10は、例えば以下のような工程により製造することができる。まず、セラミック素子30と、第1金属端子40および第2金属端子50を準備し、セラミック素子30に対して第1金属端子40と第2金属端子50とを接続する。セラミック素子30と第1金属端子40および第2金属端子50との接続は、はんだや導電性接着剤などを用いて行うことができる。
【0053】
次に、第1金属端子40、第2金属端子50およびセラミック素子30が一体となった中間製造品を、ケース20の凹部21に配置する。この後、必要に応じて、凹部21にモールド樹脂を注入し、
図1に示す電子部品10を得る。このように、
図1~
図4に示す電子部品10は、ケース20内の凹部21にセラミック素子30を収容するため、樹脂成形のためのキャビティ内にセラミック素子30などを配置して外装材によるモールドを行う工程が必要なく、生産性が良好である。
【0054】
電子部品10は、ケース20内にセラミック素子30等を収容できるので、ケース20内に収まる範囲であれば、セラミック素子30のサイズ変更にも柔軟に対応できる。また、第1実装部42および第2実装部52が、セラミック素子30の第1主面31aおよび第2主面31bに平行であるため、電子部品10は、低背化の観点で有利である。
【0055】
第2実施形態
図5は、本発明の第2実施形態に係る電子部品110の底面図であり、
図6は電子部品110の斜め下方からの斜視図である。また、
図7は、電子部品110の略中心を通り、第1および第2外側面24、25に直交する断面による断面図である。
図5~
図7に示すように、電子部品110は、凹部21に絶縁部材170が配置されていることや、第1および第2金属端子140、150における第1および第2実装部142、152の形状が、
図1~
図4に示す電子部品10とは異なるが、その他の点では、電子部品10と同様である。電子部品110の説明では、電子部品10との相違点のみを説明し、電子部品10との共通点については、説明を省略する。
【0056】
図5および
図6に示すように、電子部品110のケース120は、直方体形状を有しており、
図2に示すケース20と同様に、凹部21と、凹部21の開口を取り囲む開口縁部122とを有する。
図5~
図7に示すように、凹部21には、
図2に示す電子部品10と同様に、セラミック素子30と、第1金属端子140の第1電極接続部44および第1端子腕部46と、第2金属端子150の第2電極接続部54および第2端子腕部56とが収容されている。
【0057】
図7に示すように、絶縁部材170は、凹部21において、第2電極部34と第1端子腕部46との間に配置される。
図5および
図6に示すように、絶縁部材170は、細長い直方体状の形状を有しており、長手方向がケース120の第1外側面24と略平行になるように配置されている。
図5に示すように、電子部品110を実装面側である下方から見た場合、絶縁部材170は、セラミック素子30と第1実装部142との間に、凹部21を横断する形で配置される。
【0058】
また、
図7に示すように、絶縁部材170は、セラミック素子30の第2主面31bの延長面31baに交差するように、凹部21に配置されることが好ましい。さらに、第2主面31bの延長面31baに沿って第2電極部34と第1端子腕部46とを最短距離で結ぶ仮想線(
図7では延長面31baに一致)を、絶縁部材170が遮ることも好ましい。このような配置とすることにより、第1電極部33に電気的に接続する第1端子腕部46と、第2電極部34との絶縁性を、効果的に向上させることができる。
【0059】
図7に示すように、上底23側を向く第1電極部33に電気的に接続する第1金属端子140の一部は、開口21aを介して凹部21から露出する。そのため、電子部品110では、第1端子腕部46が、セラミック素子30において開口21a側を向く第2電極部34の近くを通過することになる。しかしながら、電子部品110では、絶縁部材170が第2電極部34と第1端子腕部46の間に配置されることにより、第2電極部34と第1端子腕部46との絶縁距離を、狭い凹部21内においても、適切に確保できる。また、電子部品110では、第1金属端子140の一部を凹部21の外に出すための貫通孔などを、ケース120の上底23や側壁に形成しなくてもよいため、電子部品110は、樹脂モールドした場合などにおいて、樹脂が凹部21から外部に漏れる問題を防止できる。
【0060】
図5および
図6に示すように、電子部品110のケース120には、開口縁部122および凹部21へ開口する一対の溝部128a、128bが形成されている。溝部128a、128bは、凹部21を挟んで互いに対向するように配置されている。
図5および
図6に示すように、絶縁部材170の一方の端部170aは溝部128aに入っており、絶縁部材170の他方の端部170bは溝部128bに入っている。
【0061】
電子部品110の製造では、電子部品10の製造と同様に、セラミック素子30に第1および第2金属端子140、150を固定したのち、これらをケース120の凹部21および開口縁部122に配置する。さらに、絶縁部材170を、一方の端部170aおよび他方の端部170bをそれぞれ溝部128a、128bに挿入および固定することにより、電子部品110を得る。なお、電子部品110の製造では、電子部品10と同様に、凹部21内に樹脂を充填する工程を追加してもよい。
【0062】
ケース120に溝部128a、128bが形成してあることにより、製造時において絶縁部材170を容易かつ精度よく位置決めすることができる。なお、
図5および
図6に示す絶縁部材170は、両方の端部170a、170bが溝部128a、128bに入っているが、絶縁部材170の一方の端部170a(または他方の端部170b)のみが、溝部128a(または溝部128b)に入っていてもよく、このような変形例でも、位置決めを容易にする等の効果を得られる。絶縁部材170の材質は、特に限定されないが、たとえばケース20と同じか、またはケース20とは異なる樹脂材料を用いることができる。
【0063】
図5~
図7に示すように、電子部品110の第1および第2金属端子140、150は、
図2に示す第1および第2金属端子40、50が有する第1および第2折り返し部47、57を有しない。
図6に示すように、第1および第2金属端子140、150の第1および第2実装部142、152は、たとえば開口縁部122の幅が狭いような場合であっても、実装部142、152において実装面側を向く面の面積を、より広く確保することができる。なお、第1および第2金属端子140、150の形状としては、
図2に示すよう第1および第2金属端子40、50と同様の形状としてもよく、また、
図2に示す電子部品10が、
図6に示す第1および第2金属端子140、150の形状を採用してもよい。
【0064】
その他、第2実施形態に係る電子部品110は、第1実施形態に係る電子部品10との共通点については、電子部品10と同様の効果を奏する。
【0065】
第3実施形態
図8は、本発明の第3実施形態に係る電子部品210の斜め上方からの概略斜視図である。また、
図9は、電子部品210の断面図である。
図8に示すように、電子部品210は、
図1に示す電子部品10に比べて高さ方向の寸法が大きいが、平面視形状については、電子部品10と同様である。
【0066】
図9に示すように、電子部品210は、凹部221に配置されるセラミック素子230が、第1部分230aと第2部分230bの2つの単板状の誘電体素子を組み合わせて構成される点で、
図1~
図4に示す電子部品10とは異なる。しかし、電子部品210は、セラミック素子230以外のケース220、ケースカバー260、第1金属端子240および第2金属端子250については、ケース220の開口から凹部221の底面(上底23)に向かう方向である深さ方向の寸法が異なることを除き、第1実施形態の電子部品10と同様である。電子部品210の説明では、電子部品10との相違点のみを説明し、電子部品10との共通点については、説明を省略する。
【0067】
図9に示すように、電子部品210のセラミック素子230は、第1部分230aと第2部分230bとを有する。第1部分230aは、凹部221の上底23の近くに配置されており、第2部分230bは、凹部221の開口21aの近くに配置されている。
【0068】
第1部分230aは、第1主面231aおよび第1電極部233と、第1誘電体部235aを有する。第1誘電体部235aは、セラミック素子230の誘電体部235の一部を構成する。第1電極部233には、
図4に示す第1電極部33と同様に、第1金属端子240の第1電極接続部244が接続している。
【0069】
第2部分230bは、第2主面231bおよび第2電極部234と、第2誘電体部235bを有する。第2誘電体部235bは、セラミック素子230の誘電体部235の他の一部を構成する。第2電極部234には、
図4に示す第2電極部34と同様に、第2金属端子250の第2電極接続部254が接続している。
【0070】
図9に示すように、第1部分230aと第2部分230bとは、互いの対向する面に形成される中間電極部236を介して接触しており、電気的に直列接続されている。中間電極部236の材質としては、第1電極部233および第2電極部234と同様に、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金、銀や銀とパラジウムの合金などが使用される。
【0071】
図8および
図9に示す電子部品210は、凹部221に配置されるセラミック素子230が、電子部品10のような1つの単板ではなく、複数の板状の誘電体である第1部分230aおよび第2部分230bを組み合わせたもので構成されている。このような電子部品210は、第1誘電体部235aと第2誘電体部235bとを直列接続したコンデンサ等として機能する。その他、電子部品210は、電子部品10との共通点については、電子部品10と同様の効果を奏する。
【0072】
第4実施形態
図10は、本発明の第4実施形態に係る電子部品310の断面図である。また、
図11は、電子部品310におけるケース320以外の部分を示す概略斜視図である。なお、電子部品310を斜め上方からみた形状は、
図8に示す電子部品210と同様である。
【0073】
図10に示すように、電子部品310では、セラミック素子330が、第1素子部330aと第2素子部370aの2つの単板状の誘電体素子を組み合わせて構成される点と、第1金属端子340および第2金属端子350の形状が、
図1~
図4に示す電子部品10とは異なる。しかし、電子部品310は、ケース320については、ケース320の開口から凹部321の上底23に向かう方向である深さ方向の寸法が異なることを除き、第1実施形態の電子部品10のケース20と同様である。電子部品310の説明は、電子部品10との相違点を中心に行い、電子部品10との共通点については、説明を省略する。
【0074】
図10に示すように、電子部品310の第1素子部330aは、凹部321の上底23の近くに配置されている。第1素子部330aは、互いに対向する第1主面331a、第2主面331bと、誘電体部335を有し、
図2に示す電子部品10のセラミック素子30と同様である。また、電子部品310の第1素子部330aは、セラミック素子30と同様に、第1主面331aに形成される第1電極部と、第2主面331bに形成される第2電極部とを有する。
【0075】
電子部品310の第2素子部370aは、凹部321の開口21aの近くに配置されている。第2素子部370aは、第1素子部330aと同様に、第1主面371a、第2主面371bと、誘電体部375を有するが、第1素子部330aとは逆に、第2主面371bが上方(凹部321の上底23側)を向く姿勢で配置されている。
【0076】
したがって、第1素子部330aと第2素子部370aとは、互いの第2主面331b、371bが向き合うように配置されている。なお、電子部品310の第2素子部370aも、セラミック素子30と同様に、第1主面371aに形成される第1電極部と、第2主面371bに形成される第2電極部とを有する。
【0077】
電子部品310の第2金属端子350は、第1素子部330aおよび第2素子部370aの双方の第2電極部に接するように、第1素子部330aと第2素子部370aの第2主面331b、371bに挟まれる第2電極接続部354を有する。すなわち、第2電極接続部354は、第1素子部330aと第2素子部370aの間に挿入されている。第2電極接続部354は、第2端子腕部356を介して、第2実装部52に接続される。
図11に示すように、第2金属端子350の概略形状については、第2金属端子50(
図4参照)または第2金属端子250(
図7参照)と同様である。
【0078】
図10に示すように、電子部品310の第1金属端子340は、第1金属端子340の第1端子腕部346から2つに分岐する第1素子接続部344aと第2素子接続部344bを有する第1電極接続部344を有する。第1素子接続部344aは、第1素子部330aの第1主面331aに形成される第1電極部に接続する。また、第2素子接続部344bは、第2素子部370aの第1主面371aに形成される第1電極部に接続する。したがって、
図11に示すように、電子部品310では、第1金属端子340における第1素子接続部344aと第2素子接続部344bとの間に、セラミック素子330全体を挟む形態となっている。また、第1端子腕部346は、第1素子接続部344aおよび第2素子接続部344bと、第2実装部52とを、電気的に接続する。
【0079】
図10に示す電子部品310は、凹部321に配置されるセラミック素子330が、電子部品10のような1つの単板ではなく、複数の板状の素子部330a、370aを組み合わせたもので構成されている。このような電子部品310は、第1素子部330aの誘電体部335と第2素子部370aの誘電体部375とを並列接続したコンデンサ等として機能する。その他、電子部品310は、電子部品10との共通点については、電子部品10と同様の効果を奏する。
【0080】
また、第3および第4実施形態の第1部分230a、第2部分230b、第1素子部330a、第2素子部370aとしては、第1実施形態のセラミック素子30と同様の単板の誘電体素子を用いることが可能となる。したがって、異なる形状のケース20、220、320や、金属端子30、40、230、240、330、340を準備することにより、同じ単板のセラミック素子30を用いて、異なる特性の電子部品10、210、310を作製することができる。
【符号の説明】
【0081】
10、110、210、310…電子部品
20、120、220、320…ケース
21、221、321…凹部
21a…開口
22、122…開口縁部
22a、22b…面取り部
23…上底
24…第1外側面
25…第2外側面
128a、128b…溝部
30、230、330…セラミック素子
230a…第1部分
230b…第2部分
330a…第1素子部
370a…第2素子部
31a、231a、331a、371a…第1主面
33、233…第1電極部
31b、231b、331b、371b…第2主面
34、234…第2電極部
35、235、335、375…誘電体部
235a…第1誘電体部
235b…第2誘電体部
236…中間電極部
W1…素子厚み
W2…凹部深さ
40、140、240、340…第1金属端子
42、142…第1実装部
42a、52a…先端
44、244、344…第1電極接続部
344a…第1素子接続部
344b…第2素子接続部
47…第1折り返し部
46、346…第1端子腕部
50、150、250、350…第2金属端子
52、152、…第2実装部
54、254、354…第2電極接続部
56、356…第2端子腕部
57…第2折り返し部
D1、D2…距離
170…絶縁部材
170a…一方の端部
170b…他方の端部