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特開2023-183166電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法
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  • 特開-電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法 図1
  • 特開-電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法 図2
  • 特開-電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183166
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/14 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
G03G5/14 101F
G03G5/14 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096646
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】西 将史
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】関谷 道代
(72)【発明者】
【氏名】中川 七海
【テーマコード(参考)】
2H068
【Fターム(参考)】
2H068AA43
2H068AA44
2H068BA16
2H068BA63
2H068BB03
2H068BB16
2H068BB29
(57)【要約】
【課題】繰り返し使用しても感度が安定した電子写真感光体を提供する。
【解決手段】支持体と、下引き層と、電荷発生層と、電荷輸送層と、をこの順に有する電子写真感光体において、該記下引き層が、2種類の電子輸送物質を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該下引き層が、
下記式(1)で示される化合物と、
下記式(2)で示される化合物と、
ヒドロキシ基又はカルボキシル基と結合可能な基を有する架橋剤と、
を含む組成物の重合物を含有する、
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
【化2】
(式(1)、式(2)中、R、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示され、式(1)、式(2)中、Xは同一であり、下記式(X1)、下記式(X2)及び下記式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれかである。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
式(10)中、Rは-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化3】
式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
式(10)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1であり、
及びRの少なくともいずれかは、ヒドロキシ基又はカルボキシル基を含む。)
【化4】
【化5】
【化6】
(式(X1)、(X2)、(X3)中、R11~R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を示す。)
【請求項2】
支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該下引き層が、
少なくとも下記式(3)で示される化合物と、
下記式(4)で示される化合物と、
を含むことを特徴とする電子写真感光体。
【化7】
【化8】
(式(3)、(4)中、R、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示され、式(3)、式(4)中、Xは同一であり、下記式(X1)、下記式(X2)及び下記式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれかある。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
式(10)中、Rは-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化9】
式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
式(10)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1である。)
【化10】
【化11】
【化12】
(式(X1)、(X2)、(X3)中、R11~R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を示す。)
【請求項3】
前記組成物が、下記式(5)で示される化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化13】
【請求項4】
前記下引き層が、下記式(6)で示される化合物をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の電子写真感光体。
【化14】
【請求項5】
式(1)~(6)中、Xは、式(X1)で示される構造であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
式(1)、(2)、(5)中、R、Rの少なくともいずれか一方は下記式(7)で示される基であることを特徴とする請求項1又は3に記載の電子写真感光体。
【化15】
(式(7)中、R、Rはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数が1以上7以下のアルキル基、ベンジル基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基からなる群より選ばれる基であり、該アルキル基が有することのできる置換基は、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基、フェノール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基からなる群より選ばれる基である。)
【請求項7】
式(3)、(4)、(6)中、R、Rの少なくともいずれか一方は下記式(8)で示される基であることを特徴とする請求項2又は4に記載の電子写真感光体。
【化16】
(式(8)中、R、Rはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数が1以上7以下のアルキル基、ベンジル基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基からなる群より選ばれる基であり、該アルキル基が有することのできる置換基は、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基、フェノール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基からなる群より選ばれる基である。)
【請求項8】
前記組成物中、式(1)で示される化合物と式(2)で示される化合物の質量比率(式(1)の質量/式(2)の質量)が0.25以上4以下であることを特徴とする請求項1又は3に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
前記下引き層中、式(3)で示される化合物と式(4)で示される化合物の質量比率(式(3)の質量/式(4)の質量)が0.25以上4以下であることを特徴とする請求項2又は4に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する電子写真装置。
【請求項12】
支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体の製造方法であって、
少なくとも式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物と、ヒドロキシ基又はカルボキシル基と結合可能な基を有する架橋剤と、を含有する下引き層用塗布液の塗膜を形成する工程、及び
該塗膜を重合させて、該下引き層を形成する工程
を有する電子写真感光体の製造方法。
【化17】
【化18】
(式(1)、式(2)中、R、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示され、式(1)、式(2)中、Xは同一であり、下記式(X1)、下記式(X2)及び下記式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれかである。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
式(10)中、Rは-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化19】
式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
式(10)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1であり、
及びRの少なくともいずれかは、ヒドロキシ基又はカルボキシル基を含む。)
【化20】
【化21】
【化22】
(式(X1)、(X2)、(X3)中、R11~R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、電子写真装置及び電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プロセスカートリッジや電子写真装置に搭載される電子写真感光体としては、有機光導電性物質を含有する電子写真感光体(有機電子写真感光体。以下「感光体」ともいう)が主流である。有機光導電性物質を用いた電子写真感光体は、無公害性、高生産性及び材料設計の容易性などの利点を有する。
【0003】
電子写真感光体は、一般的に、支持体及び支持体上に形成された感光層を有する。また、感光層については、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層してなる積層型のものが一般である。さらに、支持体側から感光層側への電荷注入を抑制し、黒ポチなどの画像欠陥の発生を抑えることを目的として、支持体と感光層との間には中間層が設けられることが多い。また、支持体と中間層の間に、導電層や下引き層を設ける場合もある。
【0004】
近年、電荷発生物質は高感度化しており、それらを用いると電荷の発生量が多くなる。それに伴い、発生した電荷が電荷発生層中に残留しやすいという課題が生じていた。
このような電荷発生層中の電荷の残留を抑制する技術として、中間層に電子輸送物質を含有させて、電荷発生層側から支持体側へ電子の移動をスムーズにする技術が知られている。
【0005】
しかしながら、電子写真プロセスの高速化とカートリッジの長寿命化によって、感光体に求められる性能が高度化しており、このような技術を用いても電子の移動が十分でない場合があるため、中間層を改良する技術開発がおこなわれている。
特許文献1には、中間層に特定構造の電子輸送物質を含有させる技術が開示されている。また、特許文献2には、特定の粒子を含有させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-215477号公報
【特許文献2】特開2017-203821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長期繰り返し使用によっても安定した画像出力ができる感光体が求められている。
本発明者らの検討の結果によると、特許文献1、2に開示された技術に関して、長期繰り返し使用における電気特性においてまだ改良の余地があるものであった。
本発明の目的は、長期繰り返し使用によっても電気特性が安定した電子写真感光体、及び当該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ並びに電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、該下引き層が、少なくとも下記式(1)で示される化合物と、下記式(2)で示される化合物と、ヒドロキシ基又はカルボキシル基と結合可能な基を有する架橋剤と、を含む組成物の重合物、若しくは下記式(3)で示される化合物と下記式(4)の化合物とを含有することを特徴とする。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
(式(1)、(2)中、R、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示される。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
は-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化5】
ただし、式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1であり、
及びRの少なくともいずれかは、ヒドロキシ基又はカルボキシル基を含む。
式(3)、(4)中、R、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示される。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
は-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化6】
ただし、式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
は、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1である。
式(1)(2)(3)及び(4)において、Xは、式(X1)、式(X2)及び式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれかであり、
【化7】
【化8】
【化9】
式(X1)、(X2)、(X3)中、R11~R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を示す。)
【0009】
また、本発明は、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0010】
また、本発明は、上記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する電子写真装置に関する。
【0011】
また、本発明は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体の製造方法であって、該製造方法は少なくとも式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物と、ヒドロキシ基又はカルボキシル基と結合可能な基を有する架橋剤と、を含有する下引き層用塗布液の塗膜を形成する工程、及び該塗膜を重合させて、該下引き層を形成する工程を有する電子写真感光体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長期繰り返し使用においても感度が安定した電子写真感光体、並びに、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の一例における概略構成を示す図である。
図2】電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
図3】電子輸送物質A1-1のH-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、電子写真感光体の下引き層は、少なくとも上記式(1)で示される化合物と上記式(2)で示される化合物と、ヒドロキシ基又はカルボキシル基と結合可能な基を有する架橋剤と、を含む組成物の重合物である。又は、本発明において、下引き層は、少なくとも上記式(3)で示される化合物と上記式(4)の化合物とを含有する。
【0015】
本発明者らは、下引き層が、上述の構成を採ることにより、長期繰り返し使用においても帯電電位が安定する理由を以下のように推測している。
下引き層中、電子は電子輸送物質を介して移動しているので、電子雲の広がり(電子分布状態)が同じである同一分子同士は電子雲の重なりによって電子移動に有利であると考えられる。しかし、長期使用によって繰り返し電子移動を行っていると、電子を受け取った電子輸送物質が他の電子輸送物質と分子複合体を形成することがある。この分子複合体は電子輸送物質単体とは異なるエネルギー準位を有するため、電子移動の阻害要因(トラップサイト)となり、電子が滞留するため感度の悪化を招くと考えられる。
【0016】
そこで、本発明者らは研究を重ねて、下引き層に上記式(1)と上記式(2)の電子輸送物質を含有する組成物の重合物、若しくは上記式(3)と上記式(4)の電子輸送物質を混合して用いることで、帯電電位の上昇を抑制できることを見出した。その理由は、2つの類似構造電子移動物質を含有することで、分子同士が電子雲の重なりをある程度持ちつつ、分子複合体の形成を抑制できているためだと本発明者らは考えている。
【0017】
[電子写真感光体]
電子写真感光体は、支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する。図2は、電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。図2において、支持体101、支持体101上に導電層102、導電層102上に下引き層103、下引き層103上に電荷発生層104、電荷発生層104上に電荷輸送層105が形成される。即ち、電子写真感光体は、支持体101と、導電層102と、下引き層103と、電荷発生層104と、電荷輸送層105と、をこの順に有する。一般的な電子写真感光体として、円筒状のものが広く用いられるが、他にも、ベルト状、シート状などの形状とすることも可能である。
【0018】
<支持体>
支持体は、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましい。例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、金、鉄の金属又は合金製の支持体を用いることができる。また、導電性支持体としては、絶縁性の支持体上に金属、金属酸化物などの導電性材料の薄膜を形成した支持体を用いてもよい。例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ガラスといった絶縁性支持体上にアルミニウム、銀、金といった金属の薄膜を形成した支持体、又は酸化インジウム、酸化スズなどの導電性材料の薄膜を形成した支持体が挙げられる。支持体の表面には、電気的特性の改善や干渉縞の抑制のため、陽極酸化のような電気化学的な処理や、湿式ホーニング処理、ブラスト処理、切削処理を施してもよい。
【0019】
<導電層>
支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。
導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などを更に含有してもよい。
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
導電層は、上述の各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0020】
<下引き層>
本発明の一実施形態に係る電子写真感光体の下引き層は、式(1)と式(2)の電子輸送物質と架橋剤とを含有する組成物の重合物を含有する。架橋剤はヒドロキシ基又はカルボキシル基と結合可能な基を有する。
【0021】
組成物中(1)で示される電子輸送物質と式(2)で示される電子輸送物質の質量比率(式(1)の質量/式(2)の質量)は、好ましくは、0.25以上4以下である。式(1)と式(2)の電子輸送物質と架橋剤とを含有する組成物は、さらに、式(5)で示される電子輸送物質を含有することが好ましい。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係る電子写真感光体の下引き層は、式(3)と式(4)の電子輸送物質を含有する。式(3)で示される電子輸送物質と式(4)で示される電子輸送物質の質量比率(式(3)の質量/式(4)の質量)は、好ましくは0.25以上4以下である。式(3)と式(4)の電子輸送物質を含有する下引き層は、さらに、式(6)で示される電子輸送物質を含有することが好ましい。
【0023】
また、電子写真感光体の下引き層は、樹脂としてカルボン酸誘導体を官能基として有する樹脂を含有することが好ましい。例として、アクリル酸樹脂や、マレイン酸樹脂を挙げられる。
【0024】
下引き層の膜厚は、0.2μm以上5.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以上3.0μm以下であることがより好ましい。
【0025】
式(1)から式(6)は以下のように示される。また、式(1)から式(4)の例示化合物は下記表1-1から表1-4に示される。
【0026】
式(1)、式(2)、式(5)について
【化10】
【化11】
【化12】
、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示され、Xは、後述の式(X1)、式(X2)及び式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれか1つである。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
式(10)中、Rは-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化13】
式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
式(10)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1であり、
及びRの少なくともいずれかは、ヒドロキシ基又はカルボキシル基を含む。
【0027】
なお、式(1)、(2)、(5)中、R、Rの少なくともいずれか一方は、好ましくは、下記式(7)で示される基である。
【化14】
式(7)中、R、Rはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数が1以上7以下のアルキル基、ベンジル基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基からなる群より選ばれる基であり、該アルキル基が有することのできる置換基は、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基、フェノール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基からなる群より選ばれる基である。
【0028】
式(3)、式(4)、式(6)について
【化15】
【化16】
【化17】
、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示され、Xは、後述の式(X1)、式(X2)及び式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれか1つである。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
式(10)中、Rは-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化18】
式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
式(10)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1である。
【0029】
式(3)、(4)、(6)中、R、Rの少なくともいずれか一方は、好ましくは、下記式(8)で示される基である。
【化19】
式(8)中、R、Rはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数が1以上7以下のアルキル基、ベンジル基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基からなる群より選ばれる基であり、該アルキル基が有することのできる置換基は、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基、フェノール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基からなる群より選ばれる基である。
【0030】
式(X1)、式(X2)、式(X3)について
式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)で示されるXは、下記式(X1)、下記式(X2)及び下記式(X3)で示される4価の構造から選択される。
【化20】
【化21】
【化22】
式(X1)、(X2)、(X3)中、R11~R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を示す。
【0031】
電子輸送物質の誘導体は、東京化成工業やシグマアルドリッチジャパンやジョンソン・マッセイ・ジャパン・合同会社から購入可能である。式(X1)の構造を有する誘導体は、東京化成工業やシグマアルドリッチジャパンから購入可能なペリレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成することが可能である。式(X2)の構造を有する誘導体は、東京化成工業、又はジョンソン・マッセイ・ジャパン合同会社から購入可能なナフタレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成可能である。式(X3)の構造を有する誘導体は、東京化成工業又はシグマアルドリッチジャパンから購入可能なベンゼンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成することが可能である。 電子輸送物質としてより好ましくは、式(X1)で示される構造の化合物である。
【0032】
また、成膜性と電気特性の観点から電子輸送物質の含有量は下引き層全体の40質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上70質量%以下である。
【0033】
また、分子複合体形成を抑制と電気特性の観点から式(1)と式(2)の電子輸送物質の比率(式(1)/式(2))及び、式(3)と式(4)の電子輸送物質の比率(式(3)/式(4))は0.13以上4.0以下が好ましく、より好ましくは0.25以上4以下である。式(1)と式(2)の電子輸送物質にさらに式(5)、式(3)と式(4)の電子輸送物質にさらに式(6)の電子輸送物質を含有する場合は、電子輸送物質の比率(式(5)/式(2))及び、式(6)と式(4)の電子輸送物質の比率(式(6)/式(4))は0.13以上4.0以下が好ましく、より好ましくは0.25以上4以下である。
【0034】
架橋剤としては、公知の材料をいずれも用いることができる。具体的には、山下晋三,金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)に記載されている化合物などが挙げられる。
架橋剤はイソシアネート基若しくはブロックイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、又はN-メチロール基若しくはアルキルエーテル化されたN-メチロール基を有するアミン化合物であることが好ましい。イソシアネート基又はブロックイソシアネート基を2~6個有しているイソシアネート化合物が好ましい。
【0035】
イソシアネート化合物は、例えば、以下に示すイソシアネート化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。また、イソシアネート化合物は複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、トリイソシアネートベンゼン、トリイソシアネートメチルベンゼン、トリフェニルメタントリイソシアネート、リジントリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、ノルボルナンジイソシアネートなどのジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、ビウレット型イソシアネート、アロファネート変性体、トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールとのアダクト変性体が挙げられる。ブロックイソシアネート基は、-NHCOX(Xは保護基)という構造を有する基である。Xは、イソシアネート基に導入可能な保護基であればいずれでも良い。
【0036】
購入可能なイソシアネート化合物として、例えば、旭化成社製デュラネートMFK-60B、SBA-70B、17B-60P、SBN-70D、SBB-70P、住化バイエルウレタン社製デスモジュールBL3175、BL3475、といったイソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0037】
アミン化合物は、N-メチロール基又はアルキルエーテル化されたN-メチロール基を有することが好ましい。また、N-メチロール基又はアルキルエーテル化されたN-メチロール基を複数個(2個以上)有しているアミン化合物がより好ましい。例えば、メチロール化されたメラミン、メチロール化されたグアナミン、メチロール化された尿素誘導体、メチロール化されたエチレン尿素誘導体、メチロール化されたグリコールウリル及び、メチロール部位がアルキルエーテル化された化合物、及び、これらの誘導体が挙げられる。
【0038】
購入可能なアミン化合物としては、例えば、スーパーメラミNo.90(日油(旧:日本油脂)社製)、スーパーベッカミン(R)TD-139-60、L-105-60、L127-60、L110-60、J-820-60、G-821-60(DIC社製)、ユーバン2020(三井化学)、スミテックスレジンM-3(住友化学(旧:住友化学工業)社製)、ニカラックMW-30、MW-390、MX-750LM(三和ケミカル社製)、スーパーベッカミン(R)L-148-55、13-535、L-145-60、TD-126(DIC社製)、ニカラックBL-60、BX-4000(三和ケミカル社製)、ニカラックMX-280、ニカラックMX-270、ニカラックMX-290(三和ケミカル社製)、が挙げられる。
【0039】
下引き層用の組成物は電子輸送物質、架橋剤と、さらには、重合性官能基を有した熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。重合性官能基としては、該架橋剤により重合可能な基が好ましく、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、メトキシ基が挙げられる。
【0040】
さらに、熱可塑性樹脂は、-(CH-CH-O)-(nは2以上200以下の整数)、-(CH-CHCH-O)-(nは2以上200以下の整数)又は-(CH-CH-O-CH-CH-S-S)-(nは2以上50以下の整数)から成る繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂が好ましい。
【0041】
重合性官能基を有する熱可塑性樹脂として市販されているものは、例えば、
AQD-457、AQD-473(以上、日本ポリウレタン工業製)、GP-400、GP-700(以上、三洋化成工業製サンニックス製)などのポリエーテルポリオール系樹脂;
フタルキッドW2343(日立化成工業製)、ウォーターゾールS-118、CD-520、ベッコライトM-6402-50、M-6201-40IM(以上、DIC製)、ハリディップWH-1188(ハリマ化成製)、ES3604、ES6538(以上、日本ユピカ製)などのポリエステルポリオール系樹脂;
バーノックWE-300、WE-304(以上、DIC製)などのポリアクリルポリオール系樹脂;
クラレポバールPVA-203(クラレ製)などのポリビニルアルコール系樹脂;
BX-1、BM-1、KS-5(以上、積水化学工業製)などのポリビニルアセタール系樹脂;
トレジンFS-350(ナガセケムテックス製)などのポリアミド系樹脂;
アクアリック(日本触媒製)、ファインレックスSG2000(鉛市製)などのカルボキシル基含有樹脂;
ラッカマイド(DIC製)などのポリアミン樹脂;
QE-340M(東レ製)などのポリチオール樹脂などが挙げられる。これらの中でも重合性官能基を有するポリビニルアセタール系樹脂、重合性官能基を有するポリエステルポリオール系樹脂などが重合性の観点から好ましい。
【0042】
下引き層を形成する方法としては、上述の物質を含有する下引き層用塗布液の塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させることによって形成することができる。下引き層用塗布液の塗膜乾燥時に、これら組成物を重合させる場合、熱や光のエネルギーを印加することで重合反応(硬化反応)が促進される。下引き層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
【0043】
<電荷発生層>
電荷発生層は、電荷発生物質と、結着樹脂を含有することが好ましい。
電荷発生物質としては、例えば、アゾ顔料、ペリレン顔料、アントラキノン誘導体、アントアントロン誘導体、ジベンズピレンキノン誘導体、ピラントロン誘導体、キノン顔料、インジゴイド顔料やフタロシアニン顔料、ペリノン顔料が挙げられる。これらの中でも、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。 結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンといったビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールが好ましい。
【0044】
電荷発生層において、電荷発生物質と結着樹脂との比率(電荷発生物質/結着樹脂)は、10/1~1/10の範囲であることが好ましく、5/1~1/5の範囲であることがより好ましい。
【0045】
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。 電荷発生層の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましい。
【0046】
<電荷輸送層>
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、結着樹脂を含有することが好ましい。該電荷輸送物質は正孔輸送物質であることが好ましい。該電荷輸送層は正孔輸送層であることが好ましい。
電荷輸送物質としては、例えば、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物、エナミン化合物、トリアリールアミン化合物、トリフェニルアミンが挙げられる。また、これらの化合物から誘導される基を主鎖又は側鎖に有するポリマーも挙げられる。 結着樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリスチレンが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート、ポリアリレートが好ましい。また、これらの重量平均分子量(Mw)は、10,000~300,000の範囲であることが好ましい。
【0047】
電荷輸送層において、電荷輸送物質と結着樹脂との比率(電荷輸送物質/結着樹脂)は、10/5~5/10の範囲であることが好ましく、10/8~6/10の範囲であることがより好ましい。 電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましい。 電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
【0048】
<その他の層>
電荷輸送層上には、導電性粒子又は電荷輸送物質と結着樹脂とを含有する保護層を設けてもよい。保護層には、潤滑剤などの添加剤をさらに含有させてもよい。また、保護層の結着樹脂自体に導電性や電荷輸送性を有させてもよく、その場合、保護層には、当該結着樹脂以外の導電性粒子や電荷輸送物質を含有させなくてもよい。また、保護層の結着樹脂は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱、光、放射線(電子線など)などにより硬化させてなる硬化性樹脂であってもよい。
【0049】
[プロセスカートリッジ及び電子写真装置]
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。図1において、円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面(周面)は、帯電手段3(例えば、接触系帯電器、非接触系帯電器など)により、正又は負の所定電位に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光光(画像露光光)4で露光する。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0050】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、次いで現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して給送される。
【0051】
トナー像を転写した後の転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0052】
トナー像を転写した後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(転写残トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0053】
電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に支持し、このプロセスカートリッジを電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
【実施例0054】
以下、実施例により、本発明に係る実施形態をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0055】
<電子輸送物質の合成>
ジメチルアセトアミド20部に、窒素雰囲気下で、ペリレンテトラカルボン酸二無水物(東京化成(株)製)2.0部、L-(+)-ロイシノール(東京化成(株)製)2.2部を加え、10時間還流を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:THF/トルエン)で分離した後、目的物を含有するフラクションを濃縮した。その濃縮物をTHF/n-ヘキサン混合溶液で再結晶を行い、表1-1に示す例示化合物A1-1を2.0部得た。
【0056】
核磁気共鳴装置を用いて測定したNMRスペクトルを図3に示す。
使用測定器:BRUKER製、AVANCEIII 500
溶媒:重クロロホルム(CDCl
積算回数:256
【0057】
<電子写真感光体の製造>
(実施例1)
長さ260.5mm及び直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を切削加工(JIS B 0601:2014、十点平均粗さRzjis:0.8μm)し、それを支持体(導電性支持体)とした。
【0058】
次に、第1の電子輸送物質として表1-1の例示化合物(A1-1)3.00部、第2の電子輸送物質として表1-1の例示化合物(A1-18)3.00部、樹脂としてポリオレフィン樹脂(商品名:UC-3920、東亞合成(株)製)0.10部、ポリビニルアセタール樹脂(商品名:KS-5Z、積水化学工業(株)製)0.10部、架橋剤としてブロックされたイソシアネート化合物(商品名:SBB-70P、旭化成(株)製)8.20部を、THF88部/オルトキシレン12部の混合溶媒に溶解した。その後、ADVANTEC製のテフロン(登録商標)製フィルター(製品名:PF020)を用いて加圧ろ過した。得られた下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を170℃40分間加熱し、硬化(重合)させることによって、膜厚1.5μmの下引き層を形成した。
【0059】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.5°、9.9°、12.5°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)を用意した。このヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶10部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業製)5部及びシクロヘキサノン250部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、2時間分散処理した。次に、これに酢酸エチル250部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、下引き層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を95℃10分間乾燥させることによって、膜厚が0.15μmの電荷発生層を形成した。
【0060】
次に、電荷輸送物質(正孔輸送物質)として、下記式(B-1)で示される化合物5部、下記式(B-2)で示される化合物5部、ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ-400、三菱エンジニアリングプラスチックス製)10部をオルトキシレン25部/安息香酸メチル25部/ジメトキシメタン25部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
このようにして調製した電荷輸送層用塗布液を上述の電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を温度120℃で30分間加熱乾燥することにより、膜厚が25μmの電荷輸送層を形成した。
【化23】
【化24】
このようにして、支持体上に導電層、下引き層、電荷発生層及び電荷輸送層を有する電子写真感光体を製造した。
【0061】
〔感度評価〕
電子写真感光体を、キヤノン(株)製のレーザービームプリンター(商品名:LBP-2510)を改造した装置に装着し、以下のプロセス条件を設定した。そして、表面電位の評価(電位変動)を行った。改造としては、プロセススピードを200mm/sに変更し、暗部電位が-700Vになるようにし、露光光(画像露光光)の光量が可変となるようにした。詳しくは以下のとおりである。
温度23℃、湿度50%RHの環境下にて、評価機から、現像用カートリッジを抜き取り、そこに電位測定装置を挿入し測定を行った。電位測定装置は、現像用カートリッジの現像位置に電位測定プローブを配置することで構成されており、電子写真感光体に対する電位測定プローブの位置は、ドラム軸方向の中央とした。感度の評価は同一光量で照射したときの明部電位によって判定した。明部電位が低ければ感度が良く、高ければ感度が低いと評価できる。
まず、光量を0.3μJ/cmに設定し、初期電位を測定した。次に、20,000枚出力後、40,000枚出力後の明部電位を測定し、電位差(変化分)を算出した。の評価結果を表2に示す。
【0062】
(実施例2~15)
下引き層用塗布液に混合する電子輸送物質の種類及びそれらの量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】
(実施例16)
以下のように下引き層用塗布液を調製して用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。結果を表2に示す。
<下引き層用塗布液>
第1の電子輸送物質として表1-1の例示化合物(A1-1)1.50部、第2の電子輸送物質として表1-1の例示化合物(A1-18)3.00部、第3の電子輸送物質として表1-1の例示化合物(A1-5)1.50部、樹脂としてポリオレフィン樹脂(商品名:UC-3920、東亞合成(株)製)0.10部、ポリビニルアセタール樹脂(商品名:KS-5Z、積水化学工業(株)製)0.10部、架橋剤としてブロックされたイソシアネート化合物(商品名:SBB-70P、旭化成(株)製)8.20部を、THF88部/オルトキシレン12部の混合溶媒に溶解した。その後、ADVANTEC製のテフロン(登録商標)製フィルター(製品名:PF020)を用いて加圧ろ過した。得られた下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を170℃40分間加熱し、硬化(重合)させることによって、膜厚1.5μmの下引き層を形成した。
【0064】
(実施例17~31)
下引き層用塗布液に混合する電子輸送物質の種類及びそれらの量を表2に示すように変更した以外は、実施例16と同様に電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0065】
(実施例32)
直径30mm、長さ260.5mmのアルミニウムシリンダーを支持体として、支持層と下引き層との間に下記の導電層を形成した以外は実施例16と同様に電子写真感光体を製造し、評価を行った。結果を表2に示す。
基体として、一次粒径の平均が200nmのアナターゼ型酸化チタンを使用し、チタンをTiO換算で33.7部、ニオブをNb換算で2.9部含有するチタンニオブ硫酸溶液を調製した。基体100部を純水に分散して1000部の懸濁液とし、60℃に加温した。チタンニオブ硫酸溶液と10mol/L水酸化ナトリウムとを懸濁液のpHが2~3になるよう3時間かけて滴下した。全量滴下後、pHを中性付近に調製し、ポリアクリルアミド系凝集剤を添加して固形分を沈降させた。上澄みを除去し、ろ過及び洗浄し、110℃で乾燥し、凝集剤由来の有機物をC換算で0.1wt%含有する中間体を得た。この中間体を窒素中750℃で1時間焼成を行った後、空気中450℃で焼成して、酸化チタン粒子を作製した。得られた粒子は前述の走査電子顕微鏡を用いた粒径測定方法において、平均粒径(平均一次粒径)220nmであった。
続いて、結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、DIC製、樹脂固形分:60%、硬化後の密度:1.3g/cm)50部を、溶剤としての1-メトキシ-2-プロパノール35部に溶解させて溶液を得た。
この溶液に酸化チタン粒子1を60部加え、これを分散媒体として平均粒径1.0mmのガラスビーズ120部を用いた縦型サンドミルに入れ、分散液温度23±3℃、回転数1500rpm(周速5.5m/s)の条件で4時間分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュでガラスビーズを取り除いた。ガラスビーズを取り除いた後の分散液に、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH28 PAINT ADDITIVE、東レ・ダウコーニング製)0.01部、及び、表面粗さ付与材としてシリコーン樹脂粒子(商品名:KMP-590、信越化学工業製、平均粒径:2μm、密度:1.3g/cm)8部を添加して攪拌し、PTFE濾紙(商品名:PF060、アドバンテック東洋製)を用いて加圧ろ過することによって、導電層用塗布液を調製した。
このようにして調製した導電層用塗布液を上述の支持体上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を150℃で20分間加熱し硬化させることにより、膜厚が25μmの導電層を形成した。
【0066】
(実施例33)
以下のように下引き層用塗布液を調製して用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。結果を表2に示す。
<下引き層用塗布液>
第1の電子輸送物質として表1-1の例示化合物(A1-15)3.00部、第2の電子輸送物質として表1-2の例示化合物(A1-33)3.00部、樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(商品名:KS-5Z、積水化学工業(株)製)4.00部を、THF88部/オルトキシレン12部の混合溶媒に溶解した。その後、ADVANTEC製のテフロン(登録商標)製フィルター(製品名:PF020)を用いて加圧ろ過した。得られた下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を125℃30分間加熱し、硬化(重合)させることによって、膜厚1.5μmの下引き層を形成した。
【0067】
(実施例34~42)
下引き層用塗布液に混合する電子輸送物質の種類及びそれらの量を表2に示すように変更した以外は、実施例33と同様に電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0068】
【表1-1】
【0069】
【表1-2】
【0070】
【表1-3】
【0071】
【表1-4】
【0072】
【表2】
【0073】
(比較例1)
以下のように下引き層用塗布液を調製して用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。結果を表3に示す。
<下引き層用塗布液>
表1-1の例示化合物(A1-1)3.10部、ポリオレフィン樹脂(商品名:UC-3920、東亞合成(株)製)0.36部、ブロックされたイソシアネート化合物(商品名:SBB-70P、旭化成(株)製)6.41部を1-メトキシ-2-プロパノール50部/テトラヒドロフラン50部の混合溶媒に溶解し、下引き層用塗布液を調製した。
【0074】
(比較例2) 実施例32と同様に、支持体と下引き層との間に導電層を形成した以外は比較例1と同様に電子写真感光体を製造し、同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
本発明は以下の構成及び方法を含む。
(構成1)
支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該下引き層が、
下記式(1)で示される化合物と、
下記式(2)で示される化合物と、
ヒドロキシ基又はカルボキシル基と結合可能な基を有する架橋剤と、
を含む組成物の重合物を含有する、
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化25】
【化26】
式(1)、式(2)中、R、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示され、式(1)、式(2)中、Xは同一であり、下記式(X1)、下記式(X2)及び下記式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれかである。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
式(10)中、Rは-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化27】
式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
式(10)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1であり、
及びRの少なくともいずれかは、ヒドロキシ基又はカルボキシル基を含む。
【化28】
【化29】
【化30】
式(X1)、(X2)、(X3)中、R11~R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を示す。
(構成2)
支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、
該下引き層が、
少なくとも下記式(3)で示される化合物と、
下記式(4)で示される化合物と、
を含むことを特徴とする電子写真感光体。
【化31】
【化32】
式(3)、(4)中、R、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示され、式(3)、式(4)中、Xは同一であり、下記式(X1)、下記式(X2)及び下記式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれかある。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
式(10)中、Rは-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化33】
式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
式(10)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1である。
【化34】
【化35】
【化36】
式(X1)、(X2)、(X3)中、R11~R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を示す。
(構成3)
前記組成物が、下記式(5)で示される化合物をさらに含むことを特徴とする構成1に記載の電子写真感光体。
【化37】
(構成4)
前記下引き層が、下記式(6)で示される化合物をさらに含むことを特徴とする構成2に記載の電子写真感光体。
【化38】
(構成5)
式(1)~(6)中、Xは、式(X1)で示される構造であることを特徴とする構成1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
(構成6)
式(1)、(2)、(5)中、R、Rの少なくともいずれか一方は下記式(7)で示される基であることを特徴とする構成1、3又は5に記載の電子写真感光体。
【化39】
式(7)中、R、Rはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数が1以上7以下のアルキル基、ベンジル基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基からなる群より選ばれる基であり、該アルキル基が有することのできる置換基は、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基、フェノール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基からなる群より選ばれる基である。
(構成7)
式(3)、(4)、(6)中、R、Rの少なくともいずれか一方は下記式(8)で示される基であることを特徴とする構成2、4又は5に記載の電子写真感光体。
【化40】
式(8)中、R、Rはそれぞれ独立に、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数が1以上7以下のアルキル基、ベンジル基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基からなる群より選ばれる基であり、該アルキル基が有することのできる置換基は、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、フェニル基、フェノール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、又はカルボキシル基からなる群より選ばれる基である。
(構成8)
前記組成物中、式(1)で示される化合物と式(2)で示される化合物の質量比率(式(1)の質量/式(2)の質量)が0.25以上4以下であることを特徴とする構成1、3、5又は6に記載の電子写真感光体。
(構成9)
前記下引き層中、式(3)で示される化合物と式(4)で示される化合物の質量比率(式(3)の質量/式(4)の質量)が0.25以上4以下であることを特徴とする構成2,4,5又は7に記載の電子写真感光体。
(構成10)
構成1から9のいずれか一つに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
(構成11)
構成1から9のいずれか一つに記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する電子写真装置。
(方法1)
支持体、該支持体上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体の製造方法であって、該製造方法は少なくとも式(1)で示される化合物と、式(2)で示される化合物と、ヒドロキシ基又はカルボキシル基と結合可能な基を有する架橋剤と、を含有する下引き層用塗布液の塗膜を形成する工程、及び該塗膜を重合させて、該下引き層を形成する工程を有する電子写真感光体の製造方法。
【化41】
【化42】
式(1)、式(2)中、R、Rは同一ではなく、それぞれ、下記式(10)で示され、式(1)、式(2)中、Xは同一であり、下記式(X1)、下記式(X2)及び下記式(X3)で示される4価の構造から選択されるいずれかである。
-(R-(R-R (10)
式(10)中、Rは、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキレン基、又は置換基を有してもよいフェニレン基であり、
式(10)中、Rは-O-、-S-又は下記式(11)で示される基であり、
【化43】
式(11)中、Rは水素原子又は分岐又は直鎖の炭素数1以上4以下のアルキル基であり、
式(10)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6以上14以下のアリール基、又は置換基を有してもよい分岐又は直鎖の炭素数7以上18以下のアリールアルキル基であり、
該アルキレン基又は該アルキル基が有することのできる置換基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、又は炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基であり、
該フェニレン基、該アリール基又は該アリールアルキル基が有することのできる置換基は、炭素数1以上3以下のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、炭素数1以上3以下のアルコキシ基、炭素数2以上4以下のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基であり、
mは0又は1、nは0又は1であり、
及びRの少なくともいずれかは、ヒドロキシ基又はカルボキシル基を含む。
【化44】
【化45】
【化46】
式(X1)、(X2)、(X3)中、R11~R32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基を示す。
【符号の説明】
【0077】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材
図1
図2
図3