(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183176
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】工作機械およびワークの加工方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20231220BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20231220BHJP
B23B 13/00 20060101ALI20231220BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20231220BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G05B19/18 X
G05B19/4155 Z
B23B13/00 A
B23Q17/22 A
B23Q17/09 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096663
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000107642
【氏名又は名称】スター精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】内山 拓治
【テーマコード(参考)】
3C029
3C045
3C269
【Fターム(参考)】
3C029AA01
3C029DD06
3C045FC31
3C269AB02
3C269BB03
3C269CC02
3C269JJ19
3C269MN09
3C269MN26
3C269MN32
3C269MN34
3C269PP02
3C269PP03
(57)【要約】
【課題】トップカット加工が適切になされていないワークの加工がなされる事態が生じることを抑制できるようにした工作機械を提供する。
【解決手段】PU52は、トップカット加工に先立って、突っ切りバイトの破損検出装置によって、所定領域AにワークWが存在するか否かを判定する。PU52は、所定領域AにワークWが存在する場合、トップカット加工を実行する。PU52は、所定領域AにワークWが存在しない場合、ワークWの配給異常であると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸、切断ユニット、センサ、および制御装置を備え、
前記主軸は、棒状のワークを前記ワークの軸を回転中心として回転させる装置であり、
前記切断ユニットは、前記ワークを、前記軸に直交する平面を切断面として切断するものであり、
前記センサは、前記切断ユニットが前記ワークを切断するときにおける切断箇所に位置する領域に存在する物体を感知するセンサであり、
前記制御装置は、前記ワークのトップカット工程以前に異常検出処理を実行可能に構成されており、
前記異常検出処理は、前記センサの検出値に基づき、前記位置する領域に前記物体が存在しないと判定する場合、前記トップカット工程を行う段取りが整っていない異常である旨判定する処理を含む工作機械。
【請求項2】
前記制御装置は、リトライ処理を実行可能に構成され、
前記リトライ処理は、前記異常検出処理により前記異常である旨判定される場合、前記ワークを所定方向に所定量だけ変位させる処理であり、
前記所定方向は、前記ワークが前記切断ユニットにより切断されるのに先立って前記位置する領域に近づくように変位する方向であり、
前記異常検出処理は、前記リトライ処理の後、前記センサの検出値に基づき、前記物体が存在するか否かを再度判定する処理を含む請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記制御装置は、リトライ回数受付処理を実行するように構成され、
前記リトライ回数受付処理は、インターフェースを介してユーザからリトライ回数を受け付ける処理であり、
前記リトライ回数は、前記異常検出処理および前記リトライ処理の繰り返しの上限回数であり、
前記制御装置は、前記リトライ処理を、前記リトライ回数を上限として、前記異常検出処理によって前記異常でない旨判定されるまで繰り返し可能に構成されている請求項2記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御装置は、変位量受付処理を実行可能に構成され、
前記変位量受付処理は、インターフェースを介してユーザから前記リトライ処理によって前記ワークを変位させる前記所定量を受け付ける処理であり、
前記リトライ処理は、前記変位量受付処理によって受け付けられた前記所定量だけ前記ワークを変位させる処理を含む請求項2記載の工作機械。
【請求項5】
前記制御装置は、異常時処理を実行可能に構成され、
前記異常時処理は、前記リトライ処理の完了後に前記異常検出処理によって前記異常である旨判定される場合、警告を発して前記切断ユニットおよび前記主軸を備える加工機を停止状態とする処理を含む請求項2記載の工作機械。
【請求項6】
前記切断ユニットは、突っ切りバイトを備え、
前記センサは、前記突っ切りバイトが前記ワークを切断するときに位置する領域に存在する物体を感知するセンサであり、
前記制御装置は、突っ切りバイト破損検出処理を実行可能に構成され、
前記突っ切りバイト破損検出処理は、前記ワークの突っ切り工程の完了後に、前記センサによって前記位置する領域に前記物体が存在することが検知される場合、前記突っ切りバイトが破損した旨判定する処理を含む請求項1記載の工作機械。
【請求項7】
前記制御装置は、インターフェースを介してユーザから加工プログラムが入力可能に構成されて且つ、実行装置および記憶装置を備え、
前記記憶装置には、複数のコードデータが記憶されており、
前記加工プログラムは、前記ワークを加工すべく前記切断ユニットおよび前記主軸を備える加工機を制御するために前記実行装置に実行させる指令であって且つ、前記複数のコードデータのいくつかを選択的に組み合わせることによって構成され、
前記複数のコードデータには、前記実行装置に前記異常検出処理を実行させるためのコードが含まれる請求項1記載の工作機械。
【請求項8】
前記センサは、検出体を備え、前記検出体の所定領域への変位に伴う前記所定領域における前記物体の有無に応じた信号を出力するセンサであり、
前記所定領域は、前記位置する領域を含んだ領域である請求項1記載の工作機械。
【請求項9】
前記センサは、所定領域に存在する物体を非接触で感知するセンサであり、
前記所定領域は、前記位置する領域を含んだ領域である請求項1記載の工作機械。
【請求項10】
請求項2記載の工作機械における前記各処理を実行する工程を有するワークの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械およびワークの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、NC旋盤の主軸に棒状のワークを供給する装置が記載されている。ここで、主軸に供給されたワークの先端面を高精度に加工するためには、その先端の位置決めを高精度に行う必要がある。
【0003】
そこで従来、新たにワークが主軸に供給される都度、トップカット処理を実行することとしている。トップカット処理は、突っ切りバイトによってワークの先端を削除する処理である。これにより、削除されたワークの先端の位置を、高精度に把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記ワークを供給する際に大きな誤差が生じると、トップカット処理において、ワークの先頭が突っ切りバイトによって削除されないおそれがある。そしてその場合、ワークの先端面の位置決め精度が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.主軸、切断ユニット、センサ、および制御装置を備え、前記主軸は、棒状のワークを前記ワークの軸を回転中心として回転させる装置であり、前記切断ユニットは、前記ワークを、前記軸に直交する平面を切断面として切断するものであり、前記センサは、前記切断ユニットが前記ワークを切断するときにおける切断箇所に位置する領域に存在する物体を感知するセンサであり、前記制御装置は、前記ワークのトップカット工程以前に異常検出処理を実行可能に構成されており、前記異常検出処理は、前記センサの検出値に基づき、前記位置する領域に前記物体が存在しないと判定する場合、前記トップカット工程を行う段取りが整っていない異常である旨判定する処理を含む工作機械である。
【0007】
トップカット加工は、上記位置する領域にワークが存在するように配置した状態で実行される。そのため、トップカット工程以前に異常検出処理によって上記位置する領域に物体が存在するか否かをセンサに基づき検出することにより、トップカット加工を行う段取りが整っていない異常の有無を判定できる。そのため、トップカット加工が適切になされていないワークの加工がなされる事態が生じることを抑制できる。
【0008】
なお、「トップカット工程以前」には、「トップカット工程中」も含まれる。
2.前記制御装置は、リトライ処理を実行可能に構成され、前記リトライ処理は、前記異常検出処理により前記異常である旨判定される場合、前記ワークを所定方向に所定量だけ変位させる処理であり、前記所定方向は、前記ワークが前記切断ユニットにより切断されるのに先立って前記位置する領域に近づくように変位する方向であり、前記異常検出処理は、前記リトライ処理の後、前記センサの検出値に基づき、前記物体が存在するか否かを再度判定する処理を含む上記1記載の工作機械である。
【0009】
上記構成では、リトライ処理を実行することにより、ワークの位置がトップカット工程にとって不適切な場合、ワークの位置を改めることができる。
なお、制御装置が、異常が生じる場合に、切断ユニットおよび主軸を備える加工機を停止状態とする処理を実行する場合と比較して、リトライ処理を実行することで、次の効果を奏する。すなわち、夜間においても無人でワークの連続加工をしている場合、生産工程全体の停止につながることを抑制できる。
【0010】
3.前記制御装置は、リトライ回数受付処理を実行するように構成され、前記リトライ回数受付処理は、インターフェースを介してユーザからリトライ回数を受け付ける処理であり、前記リトライ回数は、前記異常検出処理および前記リトライ処理の繰り返しの上限回数であり、前記制御装置は、前記リトライ処理を、前記リトライ回数を上限として、前記異常検出処理によって前記異常でない旨判定されるまで繰り返し可能に構成されている上記2記載の工作機械である。
【0011】
上記構成では、リトライ回数受付処理によって、リトライ回数をユーザの希望に沿った値とすることができる。
4.前記制御装置は、変位量受付処理を実行可能に構成され、前記変位量受付処理は、インターフェースを介してユーザから前記リトライ処理によって前記ワークを変位させる前記所定量を受け付ける処理であり、前記リトライ処理は、前記変位量受付処理によって受け付けられた前記所定量だけ前記ワークを変位させる処理を含む上記2または3記載の工作機械である。
【0012】
上記構成では、変位量受付処理によって、リトライ処理時にワークを変位させる所定量をユーザの希望に沿った値とすることができる。
5.前記制御装置は、異常時処理を実行可能に構成され、前記異常時処理は、前記リトライ処理の完了後に前記異常検出処理によって前記異常である旨判定される場合、警告を発して前記切断ユニットおよび前記主軸を備える加工機を停止状態とする処理を含む上記2~4のいずれか1つに記載の工作機械である。
【0013】
上記構成では、リトライ処理の後にも異常がある旨判定される場合、警告を発することでユーザに状況を把握させることができる。また、加工機を停止状態とすることで不適切な加工処理が実行されることを抑制できる。
【0014】
6.前記切断ユニットは、突っ切りバイトを備え、前記センサは、前記突っ切りバイトが前記ワークを切断するときに位置する領域に存在する物体を感知するセンサであり、前記制御装置は、突っ切りバイト破損検出処理を実行可能に構成され、前記突っ切りバイト破損検出処理は、前記ワークの突っ切り工程の完了後に、前記センサによって前記位置する領域に前記物体が存在することが検知される場合、前記突っ切りバイトが破損した旨判定する処理を含む上記1~5のいずれか1つに記載の工作機械である。
【0015】
上記構成では、突っ切りバイト破損検出処理に用いるセンサを流用して異常検出処理を実行できることから、異常検出処理のために新たにセンサを設けることを回避できる。
7.前記制御装置は、インターフェースを介してユーザから加工プログラムが入力可能に構成されて且つ、実行装置および記憶装置を備え、前記記憶装置には、複数のコードデータが記憶されており、前記加工プログラムは、前記ワークを加工すべく前記切断ユニットおよび前記主軸を備える加工機を制御するために前記実行装置に実行させる指令であって且つ、前記複数のコードデータのいくつかを選択的に組み合わせることによって構成され、前記複数のコードデータには、前記実行装置に前記異常検出処理を実行させるためのコードが含まれる上記1~6のいずれか1つに記載の工作機械である。
【0016】
上記構成では、コードデータに異常検出処理を実行させるためのコードを含めることにより、加工プログラムを異常検出処理の実行指令を含んだプログラムとすることができる。
【0017】
なお、複数のコードデータに、実行装置にリトライ処理を実行させるためのコードを含めてもよい。また、複数のコードデータに、実行装置に突っ切りバイト破損検出処理を実行させるためのコードを含めてもよい。
【0018】
8.前記センサは、検出体を備え、前記検出体の所定領域への変位に伴う前記所定領域における前記物体の有無に応じた信号を出力するセンサであり、前記所定領域は、前記位置する領域を含んだ領域である上記1~7のいずれか1つに記載の工作機械である。
【0019】
上記センサによれば、所定領域に物体が存在するか否かを判定できる。そして、所定領域に物体が存在すると判定できる場合、切断ユニットがワークを切断するときに位置する領域に物体が存在すると判定できる。
【0020】
また、上記構成では、所定領域に向けて検出体を変位させることによって所定領域内における物体の有無を感知するセンサを用いることにより、センサの出力信号に応じて物体の有無を簡易に判定できる。
【0021】
なお、同センサを用いる場合の異常検出処理は、トップカット加工に先立って行われる。
ちなみに、切断ユニットが、突っ切りバイトを備える場合、前記センサは、検出体を備え、前記検出体の所定領域への変位に伴う前記所定領域における前記物体の有無に応じた信号を出力するセンサであり、前記所定領域は、第1座標軸の成分の値が前記突っ切りバイトが前記ワークを切断するときに位置する領域の値以上となる領域であって且つ第2座標軸の成分の値が前記ワークの前記第2座標軸の成分の値を含むとともに第3座標軸の成分の値が前記ワークの前記第3座標軸の成分の値を含む領域であり、前記第1座標軸は、前記ワークの軸を包含する軸であり、前記第1座標軸の成分は、前記ワークが前記突っ切りバイトにより加工されるのに先立って前記突っ切りバイトに近づくように変位する方向を正とする成分であり、前記第2座標軸および前記第3座標軸は、互いに直交するとともに前記第1座標軸に直交する座標軸であってよい。
【0022】
9.前記センサは、所定領域に存在する物体を非接触で感知するセンサであり、前記所定領域は、前記位置する領域を含んだ領域である上記1~7のいずれか1つに記載の工作機械である。
【0023】
10.上記1~9のいずれか1つに記載の工作機械における前記各処理を実行する工程を有するワークの加工方法である。
なお、上記2または6に記載の事項を含まない場合、「前記各処理」を「前記異常検出処理」に読み替えるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一実施形態にかかる加工システムの構成を示す図である。
【
図2】同実施形態にかかる刃物台の構成を示す図である。
【
図3】(a)および(b)は、突っ切りバイトの破損検出装置の動作を示す図である。
【
図4】同実施形態にかかる突っ切りバイト破損検知コードの処理手順を示す流れ図である。
【
図5】(a)~(c)は、トップカット処理に先立つ処理を例示する側面図である。
【
図6】(a),(b)は、トップカット処理を例示する側面図である。
【
図7】同実施形態にかかるワーク位置異常検出コードの処理手順を示す流れ図である。
【
図8】同実施形態にかかるワーク位置異常検出コードのパラメータ設定処理の手順を示す流れ図である。
【
図9】同実施形態にかかる加工プログラムを用いた処理手順の一例を示す流れ図である。
【
図10】比較例における加工プログラムを用いた処理手順の一例を示す流れ図である。
【
図11】(a)および(b)は、上記実施形態の変形例にかかるセンサを示す図である。
【
図12】上記実施形態の変形例にかかるセンサを示す図である。
【
図13】上記実施形態の変形例にかかる加工機を示す図である。
【
図14】上記実施形態の変形例にかかる加工機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
「加工システムの構成」
図1に、本実施形態にかかる加工システムの構成を示す。
【0026】
図1に示す旋盤1は、加工機10および加工制御装置50を備える。加工機10は、棒状のワークWを切削加工する装置である。加工機10は、ベッド12の上に、主軸14を備えている。主軸14は、ワークWを、その軸を回転軸として回転させる装置である。主軸14には、ワークWをつかむチャック16が設けられている。主軸14は、
図1に示すZ軸の正方向および負方向に変位可能となっている。Z軸は、主軸14に挿入されたワークWの軸を包含する軸である。Z軸は、水平に延びる。
【0027】
加工機10は、主軸14よりもZ軸の正方向側に、ワークWを支持するガイドブッシュ18を備えている。また、加工機10は、刃物台20を備えている。刃物台20は、ガイドブッシュ18から突出したワークWを切削加工するバイトを備える。刃物台20は、図中、Y軸の方向およびX軸の方向に変位可能である。ここで、Y軸の方向は、水平方向であって且つZ軸の方向と直交する。X軸の方向は、Z軸の方向およびY軸の方向と直交する。
【0028】
給材機40は、ワークWを加工機10に供給する装置である。詳しくは、給材機40は、ワークWをZ軸の正方向に変位させることによって、ワークWを主軸14に挿入する装置である。給材機40は、ワークWをZ軸の正方向に押すアクチュエータ40aとワークWの変位量を検出するための先端検出センサ40bとを備えている。
【0029】
フィーダ制御装置42は給材機40を操作することによって、ワークWを加工機10に供給する制御を実行する制御装置である。この際、フィーダ制御装置42は、先端検出センサ40bによる変位量の検出結果を参照する。
【0030】
加工制御装置50は、加工機10を制御対象とする。加工制御装置50は、主軸14のZ軸座標の成分の値と、刃物台20のX軸座標の成分の値およびY軸座標の成分の値とを制御する。加工制御装置50は、PU52、ROM54およびRAM56を備えている。PU52は、CPU、GPU、およびTPU等のソフトウェア処理装置である。ROM54は、電気的に書き換え不可能なメモリであってよい。またROM54は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、およびディスク媒体等の記憶媒体であってもよい。
【0031】
ROM54には、制御プログラム54a、およびコードデータ群54bが記憶されている。RAM56には、加工プログラム56aが記憶されている。
コードデータ群54bは、複数のコードデータを含む。コードデータは、加工機10を用いたワークWの様々な加工工程を細分化したそれぞれの工程をPU52に実行させる指令を含むデータである。加工プログラム56aは、コードデータ群54bに含まれる複数のコードデータの組み合わせによって表現されるプログラムである。加工プログラム56aは、ユーザがワークWを希望通りに加工するうえでPU52によって実行されるべき処理を規定する。加工プログラム56aは、入力デバイス60の操作によって、ユーザによって入力される。この際、PU52は、表示装置62に加工プログラム56aを表示する。制御プログラム54aは、加工プログラム56aをPU52に実行させるための指令、および表示装置62を制御する指令等を含む。
【0032】
「旋盤の詳細な機能」
図2に、刃物台20の構成を示す。
刃物台20には、複数のバイト22(1)~22(6)が取り付けられている。なお、以下では、バイト22(1)~22(6)を総括する場合、バイト22と記載する。バイト22(1)は、突っ切りバイトである。すなわち、バイト22(1)は、ワークWを2つに切断するためのバイトである。バイト22(1)は、切断面がZ軸に直交するように、ワークWを切断するためのバイトである。
【0033】
刃物台20には、バイト22(1)の破損検出装置30が設けられている。破損検出装置30は、検出棒32と、被検出体34と、接触センサ36と、弾性体38とを備えている。検出棒32と被検出体34とは連結されている。弾性体38は、被検出体34を接触センサ36に押し付ける部材である。接触センサ36は、被検出体34が接触しているか否かに応じた信号を出力するセンサである。接触センサ36は、たとえば、作動トランス式センサ、光学スケール式センサ、マグネットスケール式センサ等としてもよい。
【0034】
「突っ切りバイトの破損検出」
図3(a)および
図3(b)は、バイト22(1)の破損検出の原理を示す。
図3(a)は、突っ切り加工が完了した状態を示す。
図3(a)に示すように、突っ切り工程が正常に行われる場合、ワークWの先端は、バイト22(1)よりもZ軸座標の成分が小さい値となっている。この状態で、刃物台20をY軸の正方向に変位させる場合、検出棒32は、ワークWに接触することはない。
【0035】
これに対し、
図3(b)に、バイト22(1)が破損しているために、突っ切り加工に異常が生じている状態で、刃物台20をY軸の正方向に変位させる場合を示す。その場合、ワークWが検出棒32に接触することから、刃物台20がY軸の正方向に変位するにつれて、検出棒32は、Y軸の負の方向に力を及ぼされる。これにより、被検出体34は、弾性体38の弾性力に打ち勝って、接触センサ36から乖離する。
【0036】
以上により、バイト22(1)が破損しているか否かに応じて、接触センサ36は、被検出体34との非接触または接触を感知する。
図4に、コードデータのうちの「突っ切りバイト破損検出コード」によって規定される処理の手順を示す。「突っ切りバイト破損検出コード」は、突っ切り加工が実行された後に実行する処理を示すコードを示す。
図4に示す処理は、PU52が制御プログラム54aに従って加工プログラム56aに記載された「突っ切りバイト破損検出コード」を実行することによって実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各処理のステップ番号を表現する。
【0037】
図4に示す一連の処理において、PU52は、まず、刃物台20をY軸の正方向に規定量ΔYだけ変位させる(S10)。この処理は、破損検出装置30の検出棒32を
図1に示す所定領域Aに侵入させるための処理である。所定領域AのZ軸座標の成分は、所定値以上の値を有する。ここで、所定値は、バイト22(1)のZ軸座標の成分の最小値である。所定領域AのZ軸座標の成分の幅は、たとえば、バイト22(1)のZ軸座標の成分の最小値と最大値との差の2~5倍以下としてもよい。またたとえば、バイト22(1)のZ軸座標の成分の最小値と最大値との差の20倍以下としてもよい。所定領域AのY軸座標の成分は、ワークWの軸のY軸座標の成分の値を含む。特に、
図1には、所定領域AのY軸座標の成分が、ワークWのY軸座標の成分の全ての値を包含する例を示した。また、所定領域AのX軸座標の成分は、ワークWの軸のX軸座標の成分の値を含む。特に、
図1には、所定領域AのX軸座標の成分が、ワークWのX軸座標の成分の全ての値を包含する例を示した。
【0038】
次にPU52は、接触センサ36の検出値を入力として、所定領域Aに物体があるか否かを判定する(S12)。
図3(a)に示す状態が物体が存在しない状態である。
図3(b)に示す状態が物体が存在する状態である。なお、厳密には、S12の処理では、所定領域Aのうち特に検出棒32が侵入可能な領域に物体が存在するか否かを判定する処理である。検出棒32のうちの所定領域Aに侵入する部分のZ軸座標の成分は、所定領域AのZ軸の座標成分の一部の値のみを取り得るとしてもよい。PU52は、所定領域Aに物体が存在すると判定する場合(S12:YES)、バイト22(1)が破損している旨判定する(S14)。そして、PU52は、
図1に示すスピーカ64を操作することによって、警告音を発することにより、ユーザにバイト22(1)が破損している旨通知する(S16)。次に、PU52は、加工機10を停止させる(S18)。これにより、主軸14を回転駆動するモータへの電力供給、ならびに主軸14および刃物台20を変位させるアクチュエータへの電力供給などが遮断される。
【0039】
なお、PU52は、S18の処理を完了する場合と、S12の処理において否定判定する場合と、には、
図4に示した一連の処理を一旦終了する。
「トップカット加工」
バイト22(1)は、トップカット加工にも利用される。トップカット加工は、給材機40から新たなワークWが加工機10に供給される場合に、その先端を切断する加工である。これは、ワークWの位置決めをするための処理である。すなわち、ワークWをチャック16によってつかみ、主軸14を変位させることによって、ワークWの変位量は、主軸14の変位量となる。そのため、ワークWの変位量については、主軸14の変位量によって高精度に把握できる。しかし、給材機40によるワークWの先端の検出精度が低いことなどに起因して、ワークWの先端の位置を最初に高精度に把握することは困難である。そのため、トップカット加工を施すことにより、ワークWの先端の位置を高精度に定める。すなわち、トップカット加工の完了時におけるワークWの先端のZ軸座標の成分の値は、バイト22(1)による切断面のZ軸座標の成分の値となる。
【0040】
図5にトップカット加工のための給材機40によるワークWの配給制御を示す。
図5(a)は、給材機40によるワークWの配給制御に先立つ、主軸14等の位置関係を示す。
図5(a)に示すように、この状態では、主軸14のZ軸座標の成分は、小さい値となっている。そして、この状態におけるチャック16からガイドブッシュ18までの距離L2と、先端検出センサ40bからガイドブッシュ18までの距離L1とは、予め定められている。したがって、距離L1から距離L2を引いた値は、フィーダ制御装置42によって把握されている。
【0041】
図5(b)に示すように、給材機40は、先端検出センサ40bに対して、ワークWを規定量LLだけZ軸の正方向に変位させる。この状態は、ワークWの先端を、チャック16よりもZ軸の正方向に突き出させた状態である。この状態でワークWがチャック16によってつかまれる。
【0042】
図5(c)は、ワークWがチャック16によってつかまれた後、主軸14をZ軸の正方向に変位させた状態である。この状態は、ワークWの先端がガイドブッシュ18に対してZ軸の正方向に突き出た状態である。特に
図5(c)には、ワークWの先端が、所定領域Aに入っている状態を例示している。この状態において、トップカット加工がなされる。
【0043】
図6に、トップカット加工を例示する。
図6(a)は、主軸14の変位によって、ワークWの先端がガイドブッシュ18に対して突き出た状態を示す。
図6(a)は、
図5(c)の一部の拡大図である。
【0044】
図6(b)は、突っ切り工程の完了時を示す。突っ切り工程では、刃物台20がX軸の負の方向に変位することによって、バイト22(1)がワークWを切断する。
図6(b)には、切断された破片Waを記載している。この時点において、ワークWの先端の位置のZ軸座標の成分の値は、バイト22(1)のZ軸座標の成分の最小値となる。
【0045】
上記トップカット加工は、
図6(a)に示す状態において、ワークWの先端のZ軸座標の成分の値が、バイト22(1)のZ軸座標の成分の値の最小値以下であると正常に実行できない。本実施形態では、トップカット加工のための突っ切り工程に先立って、トップカット加工を正常に実行できるか否かを判定するコードを有する。
【0046】
「トップカット加工用の異常検出のコード」
図7に、コードデータ群54bに含まれる「ワーク位置異常検出コード」によって規定される処理の手順を示す。ワーク位置異常検出コードは、トップカット工程に先立って、トップカット加工を正常に実行できるか否かを検出するコードである。
図7に示す処理は、PU52が制御プログラム54aに従って加工プログラム56aに記載された「ワーク位置異常検出コード」を実行することによって実現される。
【0047】
図7に示す一連の処理において、PU52は、まず、刃物台20をY軸の正方向に規定量ΔYだけ変位させる(S20)。この処理は、トップカット加工を正常に実行できるようにワークWが配置されているか否かを判定する処理である。次にPU52は、破損検出装置30が備える接触センサ36の出力信号を入力として、所定領域Aに物体が存在するか否かを判定する(S22)。PU52は、所定領域Aに物体が存在しないと判定する場合(S22:YES)、ワークWの位置に異常がある旨判定する(S24)。換言すれば、PU52は、トップカット加工を正常に実行できないと判定する。
【0048】
次にPU52は、リトライカウンタCを「1」だけインクリメントする(S26)。リトライカウンタCの初期値は、ゼロである。そしてPU52は、リトライカウンタCがリトライ回数Cth以上であるか否かを判定する(S28)。PU52は、リトライ回数Cth未満であると判定する場合(S28:NO)、刃物台20をY軸の負の方向に規定量ΔYだけ変位させる(S30)。この処理は、検出棒32を所定領域Aの外に出す処理である。
【0049】
そして、PU52は、ワークWをZ軸の正方向に所定量ΔZだけ変位させる(S32)。そして、PU52は、S20の処理に戻る。
一方、PU52は、リトライカウンタCがリトライ回数Cth以上であると判定する場合(S28:YES)、スピーカ64を操作して、警告音を発する(S34)。この処理は、ユーザに、トップカット加工を正常に実行できない異常時である旨を通知する処理である。そしてPU52は、加工機10を停止させる(S36)。これにより、主軸14を回転駆動するモータへの電力供給、ならびに主軸14および刃物台20を変位させるアクチュエータへの電力供給などが遮断される。
【0050】
なお、PU52は、S36の処理を完了する場合と、S22の処理において否定判定する場合と、には、
図7に示す一連の処理を一旦終了する。
上記リトライ回数Cthおよび所定量ΔZは、ユーザが指示可能となっている。
【0051】
図8に、リトライ回数Cthおよび所定量ΔZのユーザによる指示を可能とする処理の手順を示す。
図8に示す処理は、制御プログラム54aを、PU52がたとえば所定の条件が成立する都度実行することにより実現される。
【0052】
図8に示す一連の処理において、PU52は、まず、入力デバイス60の操作によって、ユーザによってリトライ回数の値を指示する入力がなされたか否かを判定する(S40)。PU52は、入力されたと判定する場合(S40:YES)、リトライ回数Cthに、指示された回数を入力する(S42)。一方、PU52は、指示する入力がないと判定する場合(S40:NO)、リトライ回数Cthに、デフォルト値Cth0を代入する(S44)。
【0053】
PU52は、S42,S44の処理を完了する場合、リトライ処理においてワークWを変位させる量についての指示入力があるか否かを判定する(S46)。PU52は、指示入力があると判定する場合(S46:YES)、所定量ΔZに指示された変位量を入力する(S48)。一方、PU52は、指示入力がないと判定する場合(S46:NO)、所定量ΔZにデフォルト値ΔZ0を代入する(S50)。
【0054】
なお、PU52は、S48,S50の処理を完了する場合、
図8に示す一連の処理を一旦終了する。
「本実施形態にかかる加工プログラムに従った加工処理の一例」
図9に、上記コードを利用して記述された加工プログラム56aによるワークWの加工処理の一例の手順を示す。
図9に示す一連の処理は、PU52が制御プログラム54aに従って加工プログラム56aによって規定された指令を実行することによって実現される。
【0055】
図9に示す一連の処理において、PU52は、まず、フィーダ制御装置42に、給材機40を操作することによって加工機10にワークWを供給する制御を実行するように指令する(S60)。次にPU52は、ワークWをチャック16によってつかむ(S62)。これにより、
図5(b)に示した状態となることが想定されている。次にPU52は、主軸14をZ軸の正方向に予め定められた量だけ変位させる(S64)。これにより、
図5(c)に示した状態となることが想定されている。
【0056】
そして、PU52は、
図7に示した処理を実行する。PU52は、S22の処理において否定判定する場合には、トップカット処理を実行する(S66)。そして、PU52は、トップカット加工が完了した1つのワークWから複数の加工品を生成するために加工機10を加工プログラム56aに従って連続的に運転する(S68)。ここでは、たとえばワークWの先端の加工が完了することにより、ワークWを先端から所定の長さのところで切断する突っ切り加工を実行する。そして、突っ切り加工後に、ワークWの先端となった箇所に加工を施した後、突っ切り加工をするという一連の工程を繰り返す。なお、突っ切り加工がなされた後には、
図4に規定されたコードに従った突っ切りバイトの破損検出処理が実行されることが望ましい。
【0057】
PU52は、S68の処理を完了する場合と、S36の処理を完了する場合と、には、
図9に示す一連の処理を一旦終了する。
「本実施形態にかかる加工プログラムに従った加工処理の一例」
図10に、
図7に示したコードを有しない場合の加工プログラムによるワークWの加工処理の一例の手順を示す。
図10に示す一連の処理は、PU52が制御プログラム54aに従って加工プログラム56aによって規定された指令を実行することによって実現される。なお、
図10において、
図9に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一のステップ番号を付与している。
【0058】
図10に示す一連の処理において、PU52は、S60~S64の処理を完了すると、S66,S68の処理を実行して
図10に示す一連の処理を一旦終了する。
この場合、S64の処理の完了時に、ワークWの先端のZ軸座標の成分の値がバイト22(1)のZ軸座標の成分の値よりも小さい場合、実際には、バイト22(1)によってワークWが切断されない。そのため、S68の処理によって生成される加工品の1つ目については、その軸方向の長さが狙いとするものよりも短くなる。
【0059】
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
加工制御装置50のROM54に記憶されたコードデータ群54bに、
図7に示す手順を規定するコードを含めた。これにより、加工機10および加工制御装置50のユーザは、加工プログラム56aを、
図9に例示したように記述できる。すなわち、トップカット加工に先立って、ワークWの先端が所定領域Aに入っているか否かを検知する処理を実行する指令を含んだ加工プログラム56aを記述できる。したがって、1つのワークWから複数の加工品を生成する場合において、給材機40によるワークWの配給精度が低い場合であっても、1つ目の加工品の寸法が短くなることを抑制できる。
【0060】
<対応関係>
上記実施形態等における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1,9]工作機械は、旋盤1に対応する。切断ユニットは、バイト22に対応する。センサは、破損検出装置30に対応する。異常検出処理は、S20~S24の処理に対応する。[2]リトライ処理は、S30,S32の処理に対応する。所定方向は、Z軸の正方向に対応する。[3]リトライ回数受付処理は、S40,S42の処理に対応する。[4]変位量受付処理は、S46,S48の処理に対応する。[5]異常時処理は、S34,S36の処理に対応する。[6]突っ切りバイト破損検出処理は、S10~S14の処理に対応する。[7]実行装置は、PU52に対応する。記憶装置は、ROM54に対応する。[8]検出体は、検出棒32に対応する。[9]非接触センサ80に対応する。
【0061】
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
「リトライ処理について」
・上記実施形態では、リトライ処理を実行する上限回数であるリトライ回数Cthを、ユーザが設定可能としたが、これに限らない。換言すれば、リトライ回数受付処理を含むことは必須ではない。
【0063】
・上記実施形態では、リトライ処理におけるワークWの変位量「+ΔZ」をユーザが設定可能としたが、これに限らない。換言すれば、変位量受付処理を含むことは必須ではない。
【0064】
・リトライ処理を実行すること自体、必須ではない。
「リトライ回数受付処理について」
・
図8には、リトライ回数についてユーザが指示しない場合、PU52がリトライ回数Cthにデフォルト値Cth0を代入する例を示したが、これに限らない。たとえば、リトライ回数についてユーザが指示しない限り、リトライ処理を実行できない設定であってもよい。
【0065】
「変位量受付処理について」
・
図8には、リトライ処理によるワークWの変位量についてユーザが指示しない場合、PU52が所定量ΔZに、デフォルト値ΔZ0を代入する例を示したが、これに限らない。たとえば、変位量についてユーザが指示しない限り、リトライ処理を実行できない設定であってもよい。
【0066】
「異常判定時の処理について」
・ワーク位置異常の判定がなされる場合に、S34の処理とS36の処理との双方が実行されることは必須ではない。たとえば、S34の処理を実行するものの、S36の処理を実行しなくてもよい。またたとえば、S36の処理を実行するもののS34の処理を実行しなくてもよい。
【0067】
「ワーク位置異常検出コードについて」
・ワーク位置の異常検出コードとしては、S20~S24の処理と、S26~S32の処理と、S34,S36の処理と、をセットで実行する指令を示すコードに限らない。たとえば、S20~S24の処理を実行する指令を示すコードと、S26~S32の処理を実行する指令を示すコードと、S34,S36の処理を実行する指令を示すコードと、を各別のコードとしてもよい。すなわち、ワーク位置の異常検出処理を実行する指令を示すコードと、リトライ処理を実行する指令を示すコードと、異常時の処理を実行する指令を示すコードとをユーザが各別に選択可能なコードとしてもよい。なお、この際、異常時の処理を実行する指令を示すコードは、ワーク位置の異常が検出される場合に専用に設けられたコードでなくてもよい。すなわち、たとえば「突っ切りバイト破損検出コードについて」の欄に記載したように突っ切りバイトの破損が検出された場合の処理を実行する指令を示すコードを有する場合、そのコードと共有されていてもよい。
【0068】
・たとえば、ワーク位置の異常検出処理を実行する指令を示すコードを、トップカット処理を実行する指令を示すコードに含めてもよい。
「突っ切りバイト破損検出コードについて」
・突っ切りバイト破損検出コードとしては、S10~S14の処理と、S16~S18の処理とをセットで実行する指令を示すコードに限らない。たとえば、S10~S14の処理を実行する指令を示すコードと、S16~S18の処理を実行する指令を示すコードと、を各別のコードとしてもよい。すなわち、突っ切りバイトの破損検出処理を実行するコードと、突っ切りバイトの破損が検出された場合の処理を実行する指令を示すコードとをユーザが各別に選択可能なコードとしてもよい。
【0069】
・たとえば、突っ切りバイトの破損検出処理を実行するコードを、突っ切りバイトによる処理を実行するコードに含めてもよい。
「コードデータについて」
・コードデータが、突っ切りバイト破損検出コードまたは同コードを構成する複数のコードと、ワーク位置異常検出コードまたは同コードを構成する複数のコードと、の双方を含むことは必須ではない。たとえば、下記「センサについて」の欄に記載したように、ワーク位置異常に専用のセンサを用いる場合などには、突っ切りバイト破損検出コードを備えなくてもよい。
【0070】
・制御装置がコードデータの組み合わせによって生成された加工プログラムを実行することは必須ではない。たとえば、予め定められた工程に従ってワークWを加工する一連の処理を実行する専用の制御装置としてもよい。その場合であっても、トップカット処理に先立って、ワーク位置異常検出処理を実行することは有効である。
【0071】
「検出体について」
・検出体としては、
図2等に示した検出棒32に限らない。たとえば、
図11に示すシリンダ70であってもよい。
図11(a)は、ワークWが所定領域Aに存在する場合を示す。
図11(b)は、ワークWが所定領域Aに存在しない場合を示す。なお、シリンダ70を用いたセンサは、たとえばリードスイッチであってもよい。換言すれば、マグネット式シリンダ位置検出センサであってもよい。
【0072】
「センサについて」
・所定領域Aに存在する物体を感知するセンサとしては、破損検出装置30に限らない。たとえば、
図2に示した破損検出装置30と同一構造の装置を、トップカット処理に先立つワークWの位置異常検出にのみ用いる装置として設けてもよい。
【0073】
・切断ユニットがワークWを切断するときにおける切断箇所に位置する領域に存在する物体を感知するセンサとしては、所定領域Aに向けて検出体を変位させることによって、検出体が物体に接触するか否かを感知するセンサに限らない。たとえば、
図12に示すように、所定領域Aに物体が存在するか否かを非接触にて検出する非接触センサ80であってもよい。非接触センサ80は、所定領域Aの外に配置すればよい。
図12に示すように、非接触センサ80は、非接触センサ80およびワークW間に間隔δの隔たりがある状態でワークWの存在を感知する。
【0074】
ワークWが金属である場合、非接触センサ80は、たとえば、センサコイルを備えてもよい。その場合、センサコイルに高周波磁束を発生させることによって、ワークWに渦電流が生じる。渦電流の大きさは、センサコイルとワークWとの距離に依存する。そして、渦電流の大きさに応じてセンサコイルのインピーダンスが変化することから、同インピーダンスを検出することによって、ワークWとの位置を検出できる。したがって、ワークが所定領域Aに存在するか否かを判定できる。なお、非接触センサ80としては、これに限らない。たとえば、非接触センサ80は、レーザ変位計であってもよい。またたとえば、非接触センサ80は、近接センサであってもよい。
【0075】
なお、上記実施形態およびその上記変更例では、いずれもセンサが刃物台20に取り付けられる例を示したが、これに限らない。
・切断ユニットがワークWを切断するときにおける切断箇所に位置する領域に存在する物体を感知するセンサとしては、上記実施形態および上記変更例に例示したセンサに限らない。たとえば、トップカット処理に伴ってバイト22(1)に加わる負荷を検出するセンサであってもよい。このセンサは、たとえば、刃物台20を変位させる際に刃物台20に加わる負荷を検出することによって構成できる。ここで、刃物台20の変位速度をモータによって所定速度に制御する場合には、モータの電流が負荷を示す。また、モータに所定の電圧を印加することによって刃物台20を変位させる場合、変位速度または電流が負荷を示す。またたとえば、ワークWの先端に接触する背面主軸を備え、主軸14と背面主軸との間のトルク伝達の有無を検出するセンサであってもよい。この場合、トルク伝達がある場合にワークWの位置が正常とする。
【0076】
「切断ユニットについて」
・切断ユニットが、バイト22であることは必須ではない。たとえば、
図13に示すように、レーザ加工機90であってもよい。
図13において、レーザ加工機90は、レーザノズル92、集光系94、および発振器96を備える。発振器96から出力される所定の周波数の電磁波が集光系94を介してレーザノズル92からレーザ光Leとして出力される。またたとえば、
図14に示すように、ウォータジェット加工機100であってもよい。ウォータジェット加工機100は、ウォータジェットノズル102、ウォータジェットヘッド104、および高圧ポンプ106を備える。高圧ポンプ106から出力される高圧の液体は、ウォータジェットヘッド104を介してウォータジェットノズル102からワークWへと出力される。
【0077】
「実行装置について」
実行装置としては、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態において実行される処理の少なくとも一部を実行するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、実行装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成を備える処理回路を含んでいればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶する記憶装置等のプログラム格納装置とを備える処理回路。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える処理回路。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える処理回路。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置は、複数であってもよい。また、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
【0078】
「制御装置について」
・フィーダ制御装置42と加工制御装置50とが別体であることは必須ではない。それらを一体化してもよい。
【0079】
「そのほか」
・たとえば、制御プログラム54aを記憶する装置と、コードデータ群54bを記憶する装置とが同一であることは必須ではない。またたとえば、制御プログラム54aおよびコードデータ群54bを記憶する装置と、加工プログラム56aを記憶する装置とが別の装置であることは必須ではない。
【符号の説明】
【0080】
1 …旋盤
10…加工機
12…ベッド
14…主軸
16…チャック
18…ガイドブッシュ
20…刃物台
22…バイト
30…破損検出装置
32…検出棒
34…被検出体
36…接触センサ
38…弾性体
40…給材機
40a…アクチュエータ
40b…先端検出センサ
42…フィーダ制御装置
50…加工制御装置