IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特開2023-183179シート搬送装置及び画像形成システム
<>
  • 特開-シート搬送装置及び画像形成システム 図1
  • 特開-シート搬送装置及び画像形成システム 図2
  • 特開-シート搬送装置及び画像形成システム 図3
  • 特開-シート搬送装置及び画像形成システム 図4
  • 特開-シート搬送装置及び画像形成システム 図5
  • 特開-シート搬送装置及び画像形成システム 図6
  • 特開-シート搬送装置及び画像形成システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183179
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/00 20060101AFI20231220BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20231220BHJP
   G03G 21/16 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B65H31/00 Z
G03G15/00 550
G03G21/16 104
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096667
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 直之
【テーマコード(参考)】
2H171
3F054
【Fターム(参考)】
2H171FA01
2H171FA03
2H171FA22
2H171FA30
2H171GA11
2H171GA13
2H171HA32
2H171HA39
2H171KA02
2H171KA24
2H171KA26
2H171KA28
2H171QA02
2H171QA08
2H171QB15
2H171QC03
2H171SA11
2H171SA15
2H171SA19
2H171SA29
2H171WA18
2H171XA01
2H171XA16
3F054AC01
3F054BC14
3F054DA01
(57)【要約】
【課題】キャスタを高さ調整する際の作業性を向上すると共に、キャスタの、装置本体に対する位置を良好に維持することが可能なシート搬送装置及びこれを備えた画像形成システムを提供する。
【解決手段】第1ネジ部を有する装置本体と、前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間に挟まれるように設けられ、弾性変形することで前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間の摩擦力を増大させる弾性部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送するシート搬送装置において、
フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、を有する装置本体と、
前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、
前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間に挟まれるように設けられ、弾性変形することで前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間の摩擦力を増大させる弾性部と、を備える、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記第2ネジ部は、雄ネジを有し、
前記第1ネジ部は、前記雄ネジに螺合する雌ネジを有し、
前記弾性部は、前記雄ネジの前記高さ方向における所定範囲に付着され、
前記所定範囲は、前記雌ネジと前記雄ネジとが螺合している範囲よりも前記高さ方向において大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記弾性部は、前記雄ネジの回転方向において、前記雄ネジの全周の内の一部に付着される、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記弾性部は、弾性変形可能な樹脂である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記樹脂は、ナイロンである、
ことを特徴とする請求項4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記操作部は、前記高さ方向に延びる回転軸を中心に前記第2ネジ部と一体に回転可能であり、
前記操作部の外周面は、前記高さ方向に直交する径方向において、前記第2ネジ部の外周面よりも前記回転軸から遠い位置に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記車輪部が前記第2ネジ部に対して回転する際の、前記車輪部と前記第2ネジ部との間の摩擦力は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間の摩擦力よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
シートに画像を形成する画像形成装置に接続されるシート搬送装置であって、
前記画像形成装置によって画像が形成されたシートに処理を施す処理部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
シートを搬送するシート搬送装置において、
フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、第1係合部と、を有する装置本体と、
前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、前記第2ネジ部に対して前記高さ方向に移動可能に支持される移動部材と、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、を備え、
前記移動部材は、前記第1係合部に係合可能な第2係合部を有し、
前記キャスタは、前記第2係合部が前記第1係合部に係合するように前記移動部材を付勢する付勢部を有する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項10】
前記移動部材は、前記高さ方向に延びる回転軸を中心に前記第2ネジ部と一体に回転可能かつ前記高さ方向において前記第2ネジ部に対して相対移動可能であり、
前記第2係合部は、前記第1係合部に対して、前記回転軸を中心とする周方向に係合する、
ことを特徴とする請求項9に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記第1係合部及び前記第2係合部の少なくともいずれか一方は、前記周方向及び前記高さ方向に対して傾斜する傾斜面を有する、
ことを特徴とする請求項10に記載のシート搬送装置。
【請求項12】
前記第1係合部及び前記第2係合部は、互いに係合し、前記高さ方向に延びる複数の歯をそれぞれ有する、
ことを特徴とする請求項10に記載のシート搬送装置。
【請求項13】
前記付勢部は、前記高さ方向に関して、前記移動部材を第1方向に付勢し、
前記第1係合部と前記第2係合部とが係合した状態で前記操作部が回転操作されると、前記移動部材は、前記第1係合部と前記第2係合部との前記周方向における係合を解除するように、前記付勢部の付勢力に抗して前記第1方向とは反対の第2方向に移動する、
ことを特徴とする請求項10に記載のシート搬送装置。
【請求項14】
前記キャスタは、前記第2ネジ部に固定される保持部材を備え、
前記保持部材は、前記移動部材を、前記回転軸を中心に一体に回転可能かつ前記高さ方向において相対移動可能に支持し、
前記付勢部は、前記保持部材と前記移動部材との間に配置される、
ことを特徴とする請求項10に記載のシート搬送装置。
【請求項15】
前記操作部は、前記高さ方向に延びる回転軸を中心に前記第2ネジ部と一体に回転可能であり、
前記操作部の外周面は、前記高さ方向に直交する径方向において、前記第2ネジ部の外周面よりも前記回転軸から遠い位置に配置される、
ことを特徴とする請求項9に記載のシート搬送装置。
【請求項16】
前記車輪部が前記第2ネジ部に対して回転する際の、前記車輪部と前記第2ネジ部との間の摩擦力は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間の摩擦力及び前記第1係合部と前記第2係合部との間の摩擦力の合計よりも小さい、
ことを特徴とする請求項9に記載のシート搬送装置。
【請求項17】
シートに画像を形成する画像形成装置に接続されるシート搬送装置であって、
前記画像形成装置によって画像が形成されたシートに処理を施す処理部を備える、
ことを特徴とする請求項9に記載のシート搬送装置。
【請求項18】
シートを搬送するシート搬送装置において、
フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、第1係合部と、を有する装置本体と、
前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、前記フレームに当接することで摩擦力を発生させるバネと、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、を備える、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項19】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置に接続される、請求項1乃至18のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、を備える、
ことを特徴する画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置及びこれを備える画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置に接続されると共に、画像形成装置において画像が形成されたシートに対してステープルやパンチ等の後処理を行う後処理装置が提案されている(特許文献1参照)。この後処理装置の筐体の底面には、軸受部材を介して複数の車輪が設けられ、筐体は、複数の車輪によって支持されるように構成されている。これらの車輪は、軸受部材に設けられた回動規制部材に螺合する高さ調整雄ネジによって、筐体の底面に対する高さが調整される。そして、高さ調整雄ネジは、回動規制部材に螺合する高さ固定雄ネジを締め付けることによって、筐体に対して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-217182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の高さ調整雄ネジは、高さ固定雄ネジを緩めた後にのみ操作することができ、作業性に問題があった。また、例えば高さ固定雄ネジを取り外した状態で使用すると、高さ調整雄ネジが緩んでしまい、車輪の、後処理装置の筐体に対する位置を維持することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、キャスタを高さ調整する際の作業性を向上すると共に、キャスタの、装置本体に対する位置を良好に維持することが可能なシート搬送装置及びこれを備えた画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置において、フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、を有する装置本体と、前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間に挟まれるように設けられ、弾性変形することで前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間の摩擦力を増大させる弾性部と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、シートを搬送するシート搬送装置において、フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、第1係合部と、を有する装置本体と、前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、前記第2ネジ部に対して前記高さ方向に移動可能に支持される移動部材と、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、を備え、前記移動部材は、前記第1係合部に係合可能な第2係合部を有し、前記キャスタは、前記第2係合部が前記第1係合部に係合するように前記移動部材を付勢する付勢部を有する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、シートを搬送するシート搬送装置において、フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、第1係合部と、を有する装置本体と、前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、前記フレームに当接することで摩擦力を発生させるバネと、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、キャスタを高さ調整する際の作業性を向上すると共に、キャスタの、装置本体に対する位置を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係る画像形成システムを示す全体概略図。
図2】後処理装置の底板及びキャスタを示す斜視図。
図3】キャスタを示す拡大斜視図。
図4図2のA-A断面を示す断面図。
図5】第2の実施の形態に係るキャスタを示す斜視図。
図6図5のB-B断面を示す断面図。
図7】(a)は待機状態のキャスタを示す正面図、(b)は高さ調整されている状態のキャスタを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施の形態>
[全体構成]
第1の実施の形態に係る画像形成システム1Sは、図1に示すように、画像形成装置1、画像読取装置2、原稿送り装置3及び後処理装置4によって構成される。画像形成システム1Sは、記録材であるシートに画像を形成し、必要に応じて後処理装置4によってシートに処理を施して出力する。以下、各装置の簡単な動作を説明した後、後処理装置4について詳細な説明を行う。
【0012】
原稿送り装置3は、原稿トレイ18に載置された原稿を画像読取部16,19に搬送する。画像読取部16,19はそれぞれ原稿面から画像情報を読み取るイメージセンサであり、1度の原稿搬送で原稿の両面の読み取りが行われる。画像情報を読み取られた原稿は原稿排出部20に排出される。また、画像読取装置2は駆動装置17により画像読取部16を往復移動させることで、原稿台ガラスにセットされた静止原稿(ブックレット原稿などの原稿送り装置3が使用できない原稿を含む)から画像情報を読み取ることができる。
【0013】
画像形成装置1は、直接転写方式の画像形成部1Bを備えた電子写真装置である。画像形成部1Bは、感光ドラム9を備えたカートリッジ8と、カートリッジ8の上方に配置されたレーザスキャナユニット15と、を備えている。画像形成動作を行う場合、回転する感光ドラム9の表面が帯電させられ、レーザスキャナユニット15が画像情報に基づいて感光ドラム9を露光することでドラム表面に静電潜像を書き込む。感光ドラム9に担持された静電潜像は帯電したトナー粒子によってトナー像に現像され、感光ドラム9と転写ローラ10とが対向する転写部にトナー像が搬送される。画像形成装置1の制御部は、画像読取部16,19によって読み取られた画像情報又は外部のコンピュータからネットワークを介して受信した画像情報に基づいて画像形成部1Bによる画像形成動作を実施する。
【0014】
画像形成装置1は、記録材としてのシートを1枚ずつ所定の間隔で給送する給送装置6を複数備えている。給送装置6から給送されたシートはレジストレーションローラ7にて斜行を補正された後に転写部に搬送され、転写部において、感光ドラム9に担持されたトナー像を転写される。シート搬送方向における転写部の下流には定着ユニット11が配置されている。定着ユニット11は、シートを挟持して搬送する回転体対と、トナー像を加熱するためのハロゲンランプ等の発熱体とを有し、シート上のトナー像を加熱及び加圧することで画像の定着処理を行う。
【0015】
画像形成されたシートを画像形成装置1の外部に排出する場合、定着ユニット11を通過したシートは水平搬送路14を介して後処理装置4に搬送される。両面印刷において第1面の画像形成が終了したシートの場合、定着ユニット11を通過したシートは反転ローラ12に受け渡され、反転ローラ12によってスイッチバック搬送され、再搬送部13を介して再びレジストレーションローラ7に搬送される。そして、シートは、再び転写部及び定着ユニット11を通過することで第2面に画像を形成された後、水平搬送路14を介して後処理装置4に搬送される。
【0016】
上記の画像形成部1Bはシートに画像を形成する画像形成手段の一例であり、感光体に形成したトナー像を中間転写体を介してシートに転写する中間転写方式の電子写真ユニットを用いてもよい。また、インクジェット方式やオフセット印刷方式の印刷ユニットを画像形成手段として用いてもよい。
【0017】
[後処理装置]
後処理装置4には、シートを搬送する搬送路として受入パスCP11、内排出パスCP12、第1排出パスCP13及び第2排出パスCP14が設けられており、シートを排出する排出先として上排出トレイ25及び下排出トレイ37が設けられている。下排出トレイ37は、上排出トレイ25の下方に配置されている。第1搬送路としての受入パスCP11は、水平搬送路14からシートを受け取って案内する搬送路である。第2搬送路としての内排出パスCP12は、受入パスCP11の下方に配置され、受入パスCP11からシートを受け取り、整合部4Aへ向けてシートを案内する搬送路である。第1排出パスCP13は、シートを上排出トレイ25に排出する搬送路であり、第3搬送路としての第2排出パスCP14は、中間積載部39から束排出ローラ対36に向けて延び、シートを束排出ローラ対36に案内する搬送路である。
【0018】
水平搬送路14から排出されるシートは、受入パスCP11に配置された搬送部としての入口ローラ対21によって受け取られ、受入パスCP11を通って反転前ローラ対22へ向けて搬送される。受入パスCP11には、入口ローラ対21と反転前ローラ対22との間の検知位置でのシートの有無に基づいて出力値(例えば電圧値や出力信号)を変化させる入口センサ27が設けられている。反転前ローラ対22は、入口ローラ対21から受け取ったシートを第1排出パスCP13へ向けて搬送する。
【0019】
なお、入口ローラ対21によるシートの搬送速度を水平搬送路14を通過中のシートの搬送速度よりも大きく設定し、入口ローラ対21がシートを受け取った後にシートの搬送速度を加速してもよい。この場合、水平搬送路14上のシートを搬送する第1ローラ対61及び第2ローラ対62とこれを駆動するモータとの間にワンウェイクラッチを設置してもよい。そして、入口ローラ対21によってシートが引っ張られたとしてもワンウェイクラッチの作用により、第1ローラ対61及び第2ローラ対62が空転するように構成すると好適である。
【0020】
シートの排出先が第1積載部としての上排出トレイ25の場合、受入パスCP11及び内排出パスCP12の分岐部に設けられた案内部材23によって、シートは第1排出パスCP13に案内される。第1排出パスCP13には、第1排出部としての反転ローラ対24が設けられており、反転ローラ対24は反転前ローラ対22から受け取ったシートを上排出トレイ25に排出する。
【0021】
シートの排出先が第2積載部としての下排出トレイ37の場合、反転部としての反転ローラ対24は反転前ローラ対22から受け取ったシートを反転させるスイッチバック搬送を行って、シートを内排出パスCP12に搬送する。具体的には、案内部材23は、シートを第1排出パスCP13に案内した後に回動する。これにより、シートは、案内部材23によって内排出パスCP12に案内される。
【0022】
内排出パスCP12に配置された回転体対としての内排出ローラ対26、中間搬送ローラ対28及び蹴り出しローラ対29は、反転ローラ対24から受け取ったシートを順に受け渡しながら整合部4Aへ向けて搬送する。なお、シートのバッファを行う場合には、内排出ローラ対26は、先行シートを挟持した状態で一時停止する。そして、内排出ローラ対26は、反転ローラ対24に向かう後続シートに同期して逆転し、第1排出パスで先行シートを後続シートに重ね合わせることでバッファを行う。シートのバッファは、内排出ローラ対26のスイッチバックを繰り返すことで、シートの長さによらず複数枚のシートのバッファを可能とする。
【0023】
中間積載前センサ38は、中間搬送ローラ対28と蹴り出しローラ対29との間でシートを検知する。入口センサ27及び中間積載前センサ38としては、例えば光を用いて検知位置におけるシートの有無を検出する光学センサや、シートに押圧されるフラグを用いたフラグセンサが用いられる。
【0024】
処理部としての整合部4Aは、束押さえフラグ30と、第3積載部としての中間積載部39と、束排出ガイド34と、駆動ベルト35と、を有し、シートに整合処理を施す。中間積載部39は、中間上ガイド31及び中間下ガイド32から構成され、複数枚のシートがシート束として積載される。ローラ対からなる蹴り出しローラ対29によって中間積載部39に向けて排出されたシート束は、束押さえフラグ30によって中間下ガイド32に押し付けられる。
【0025】
そして、中間積載部39に排出されたシート束は、中間下ガイド32に沿って下方に案内され、半月ローラ33によって中間積載部39のシート搬送方向における下流端部に設けられる縦整合板に突き当てられる。また、縦整合板によってシート搬送方向に整合されたシート束は、不図示の横整合板によってシート搬送方向に直交する幅方向に整合される。なお、半月ローラ33は、中間積載部39に整合されたシート束に対しては、シート束上をスリップするような搬送圧に設定されている。
【0026】
このような整合処理が行われた後、シート束は、例えば不図示のステープラにより閉じ動作が行われる。そして、シート束は、駆動ベルト35に固定された束排出ガイド34によって押し出され、第2排出パスCP14を介して束排出ローラ対36に受け渡される。シート束は、第2排出部としての束排出ローラ対36によって機外へ排出されて下排出トレイ37に積載される。
【0027】
上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、いずれも後処理装置4の筐体に対して上下に移動可能である。シート搬送装置としての後処理装置4は、上排出トレイ25及び下排出トレイ37におけるシートの上面位置(シートの積載高さ)を検知するシート面検知センサを備えており、いずれかのセンサがシートを検知すると、対応するトレイを下降させる。また、上排出トレイ25又は下排出トレイ37のシートが取り除かれると、そのトレイを上昇させる。従って、上排出トレイ25及び下排出トレイ37は、シートが排出される排出口に対して、積載されたシートの上面を一定に保つように昇降制御される。
【0028】
[キャスタの構成]
次に、図2乃至図4を用いて、後処理装置4のフレーム140に設けられるキャスタ100の構成について説明する。後処理装置4の装置本体130(図1参照)は、図2に示すように、フレーム140を有しており、フレーム140は、底板99を有している。
【0029】
底板99は、矩形状の板金部材から構成され、その四隅には、キャスタ100がそれぞれ取り付けられている。底板99に取り付けられる4つのキャスタ100は、同様の構成を有している。4つのキャスタ100は、後処理装置4が載置される載置面に支持され、キャスタ100は、後処理装置4の装置本体130を支持している。底板99には、キャスタ100が取り付けられる第1ネジ部としてのネジ孔105が設けられている。本実施の形態では、底板99には、キャスタ100の数に対応してネジ孔105が4つ設けられている。
【0030】
図3は、キャスタ100を示す斜視図であり、図4は、図2のA-A断面を示す断面図である。キャスタ100は、図3及び図4に示すように、第2ネジ部としての軸部材101と、車輪部102と、操作部としての操作ダイヤル103と、を有している。軸部材101は、外周面101bにネジ溝が形成される雄ネジを有し、回転軸AX1を中心に回転することで、雌ネジ有するネジ孔105に高さ方向HDに螺合する。
【0031】
車輪部102は、軸部材101の車輪支持部101cに対して相対回転可能に支持される。高さ方向HDは、後処理装置4の高さ方向、すなわち鉛直方向に平行である。また、高さ方向HDは、キャスタ100が後処理装置4の装置本体130に取り付けられた状態では、軸部材101の軸方向に平行である。
【0032】
軸部材101は、図4に示すように、軸部材101の軸方向に直交する径方向に延びるフランジ部111を有し、フランジ部111には、操作ダイヤル103が固定されている。すなわち、操作ダイヤル103をユーザやサービスマン(以下、単にユーザとする)が回転させると、操作ダイヤル103と一体に軸部材101が回転する。そして、操作ダイヤル103がユーザによって回転操作されることで、軸部材101が底板99のネジ孔105に対して高さ方向HDに進退し、キャスタ100は、装置本体130に対する高さ方向HDの位置が変更される。操作ダイヤル103は、底板99の下方に配置され、後処理装置4の外方で露出している。
【0033】
操作ダイヤル103の外周面103aは、高さ方向HDに直交する径方向において、軸部材101の外周面101bよりも回転軸AX1から遠い位置に配置されている。このため、ユーザは、外周面103aを回転操作することで、軽い力で軸部材101を回転させることができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、軸部材101の外周面101bの、フランジ部111よりも上方の全域に雄ネジが形成され、ネジ孔105の内周面の、高さ方向HDにおける全域に雌ネジが形成されている。しかし、軸部材101に形成される雄ネジの範囲とネジ孔105に形成される雌ネジの範囲は、これに限らず、キャスタ100を、底板99に対して所定の調整範囲で高さ調整できるのであれば、任意に設定してよい。
【0035】
ところで、本実施の形態では、図4に示すように、ボルト形状の軸部材101の外周面上には、緩み止め加工104が実施されている。緩み止め加工104は、軸部材101の雄ネジの高さ方向HDにおける所定範囲PA1に実施されており、該所定範囲PA1は、軸部材101の雄ネジとネジ孔105の雌ネジとが螺合している範囲PA2よりも高さ方向HDにおいて大きい。また、所定範囲PA1の高さは、高さ方向HDにおいて、キャスタ100を底板99に対して高さ調整可能な量に、範囲PA2の高さを足した長さよりも長い。
【0036】
緩み止め加工104の代表例としては、ナイロック(登録商標)などの特殊ナイロンの弾性反発力により発生する摩擦力で軸部材101とネジ孔105との緩み止めを行うものが挙げられる。具体的には、軸部材101の雄ネジの所定範囲PA1に、ナイロン(104)が融着(付着)される。該ナイロン(104)は、軸部材101の雄ネジの回転方向において、雄ネジの全周の内の一部に融着される。すなわち、弾性部としてのナイロン(104)は、軸部材101とネジ孔105との間に挟まれるように設けられる。
【0037】
軸部材101がネジ孔105に対して螺合されると、軸部材101とネジ孔105の間のナイロン(104)が弾性変形することで、軸部材101のナイロン(104)が融着されていない側がネジ孔105に対して押し付けられる。これにより、軸部材101とネジ孔105との間のクリアランスが小さくなり、軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力が増大し、軸部材101がネジ孔105に対して緩み止めされる。
【0038】
以上のように、本実施の形態では、キャスタ100の操作ダイヤル103を回転操作することで、軸部材101をネジ孔105に対して回転させ、後処理装置4の装置本体130に対するキャスタ100の高さ方向HDにおける位置を調整することができる。これにより、後処理装置4を載置する載置面の状態、例えば載置面に絨毯が敷かれている場合や載置面がタイルである場合等に合わせて、後処理装置4の高さを調整することができる。よって、後処理装置4は、画像形成装置1から適切にシートを受け取ることができ、シートのジャムや斜行等の搬送不良を低減できる。
【0039】
また、キャスタ100の操作ダイヤル103を回転操作するだけで後処理装置4の高さを調整することができるので、工具等が不要で、作業性を向上できる。また、操作ダイヤル103の外周面103aが軸部材101の外周面101bよりも回転軸AX1から遠い位置に配置されている。このため、ユーザは操作ダイヤル103の外周面103aを回転操作することで、軸部材101を軽い力で回転させることができ、作業性を向上できる。また、操作ダイヤル103は、後処理装置4の下方において露出しているため、後処理装置4の外装を外すことなく操作することができ、作業性を向上できる。
【0040】
更に、本実施の形態では、車輪部102は、軸部材101に対して相対回転可能に支持されていたが、車輪部102と軸部材101との間の摩擦力と、軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力と、操作ダイヤル103の操作力と、は、以下の関係となる。
(車輪部102と軸部材101との間の摩擦力)<(軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力)<(操作ダイヤル103の操作力) ・・・(式1)
【0041】
上記式1から明らかなように、車輪部102が軸部材101に対して回転する際の車輪部102と軸部材101との間の摩擦力が、軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力よりも小さいので、軸部材101は、車輪部102に連れ回りしない。このため、車輪部102を転がして後処理装置4を移動しても、車輪部102の回転軸AX1を中心とする回転に軸部材101が連れ回らず、キャスタ100の、装置本体130に対する位置を適正に維持することができる。これは、緩み止め加工104によって、軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力が増大し、軸部材101のネジ孔105に対する緩みが低減されているからである。
【0042】
また、ユーザによる操作ダイヤル103の操作力は、軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力よりも大きいため、ユーザは、操作ダイヤル103を回転操作することができ、軸部材101をネジ孔105に対して容易に進退させることができる。緩み止め加工104による軸部材101の戻り止めのトルクは、ユーザによる操作ダイヤル103の回転に必要な操作力が過大にならないように適宜設定される。
【0043】
また、緩み止め加工104を、ナイロンの弾性反発力により発生する摩擦力を用いて行う場合、キャスタ100の高さ調整を繰り返し行うことができ、ユーザビリティを向上できる。
【0044】
<第2の実施の形態>
次いで、本発明の第2の実施の形態について説明するが、第2の実施の形態は、第1の実施の形態のキャスタの構成及びキャスタの取付け部を変更したものである。このため、第1の実施の形態と同様の構成については、図示を省略、又は図に同一符号を付して説明する。
【0045】
[キャスタの構成]
図5は、第2の実施の形態係るキャスタ200を示す斜視図である。図6は、図5のB-B断面を示す断面図である。後処理装置4の装置本体130(図1参照)は、図5及び図6に示すように、フレーム140Bを有しており、フレーム140Bは、底板99Bと、固定ラッチ部材109と、を有している。底板99Bは、矩形状の板金部材から構成され、その四隅には、キャスタ200がそれぞれ取り付けられている。底板99Bに取り付けられる4つのキャスタ200は、同様の構成を有している。4つのキャスタ200は、後処理装置4が載置される載置面に支持され、キャスタ200は、後処理装置4の装置本体130を支持している。
【0046】
底板99Bには、キャスタ200が取り付けられるネジ孔105と、2つの係合孔が設けられている。これら係合孔には、後述する固定ラッチ部材109の係合部209a,209bがそれぞれ係合する。これにより、固定ラッチ部材109は、ネジ孔105の近傍において底板99Bに位置決めされている。固定ラッチ部材109は、回転軸AX1を中心とする周方向に並ぶと共に高さ方向HDに延びる複数の歯109aと、軸部材101が挿入される孔109bと、を有している。第1係合部としての複数の歯109aは、固定ラッチ部材109の上端部に形成されている。
【0047】
キャスタ200は、軸部材101と、車輪部102と、操作ダイヤル103と、キャップ部材107と、移動部材としての移動ラッチ部材106と、付勢部としてのバネ108と、を有している。軸部材101は、第1の実施の形態と同様に、外周面101bにネジ溝が形成される雄ネジを有し、回転軸AX1を中心に回転することで、雌ネジ有するネジ孔105に高さ方向HDに螺合する。
【0048】
軸部材101の上端部には、一面が面取りされた平面部101aが形成されており、保持部材としてのキャップ部材107は、平面部101aに固定されている。キャップ部材107は、略円筒形状を有しており、軸部材101の上部に被さるように配置されている。また、キャップ部材107の外周面には、レール部107a,107aが形成されており、レール部107a,107aは、回転軸AX1を挟んで、互いに反対側に配置されている。
【0049】
移動ラッチ部材106は、キャップ部材107のレール部107a,107aに対して高さ方向HDにスライド可能に支持される平面部106a,106aと、固定ラッチ部材109の複数の歯109aに係合可能な複数の歯106bと、を有している。平面部106a,106aは、移動ラッチ部材106の内周面の二面が面取りされることで形成される。移動ラッチ部材106は、平面部106a,106aがキャップ部材107のレール部107a,107aに係合することで、キャップ部材107に対して高さ方向HDに相対移動可能、かつ回転軸AX1を中心に相対回転不能に支持されている。
【0050】
移動ラッチ部材106の下端部に形成される第2係合部としての複数の歯106bは、回転軸AX1を中心とする周方向に並ぶと共に高さ方向HDに延びている。バネ108は、キャップ部材107と移動ラッチ部材106の間に配置され、移動ラッチ部材106の歯106bが固定ラッチ部材109の歯109aに係合するように、移動ラッチ部材106を固定ラッチ部材109に向けて付勢している。すなわち、バネ108は、移動ラッチ部材106を高さ方向HDに平行な第1方向D1に付勢し、例えばコイルスプリングから構成される。
【0051】
図7(a)は待機状態のキャスタ200を示す正面図であり、図7(b)は高さ調整されている状態のキャスタ200を示す正面図である。図7(a)に示すように、ユーザによって操作ダイヤル103が回転操作されず、キャスタ200に外力が作用していない待機状態では、移動ラッチ部材106の歯106bは、固定ラッチ部材109の歯109aに噛合っている。言い換えれば、歯106bは、歯109aに対して、周方向に係合している。更に言い換えれば、回転軸AX1の軸方向(高さ方向HD)に直交する方向に見て、移動ラッチ部材106の歯106bは、固定ラッチ部材109の歯109aに回転軸AX1の軸方向(高さ方向HD)においてオーバーラップしている。
【0052】
これにより、移動ラッチ部材106は、固定ラッチ部材109が取り付けられる底板99Bに対して、所定トルク未満の回転が規制される。キャップ部材107及び軸部材101は、移動ラッチ部材106と一体に回転軸AX1を中心に回転するような構成のため、キャップ部材107及び軸部材101も、底板99Bに対して所定トルク未満の回転が規制される。
【0053】
このように、キャスタ200が待機状態では、バネ108の付勢力により移動ラッチ部材106の歯106bと固定ラッチ部材109の歯109aとの係合が保持され、軸部材101の回転軸AX1を中心とする所定トルク未満の回転が規制される。
【0054】
この時、車輪部102と軸部材101との間の摩擦力と、軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力及び歯106bと歯109aとの間の摩擦力の合計と、操作ダイヤル103の操作力と、は、以下の関係となる。
(車輪部102と軸部材101との間の摩擦力)<(軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力及び歯106bと歯109aとの間の摩擦力の合計)<(操作ダイヤル103の操作力) ・・・(式2)
【0055】
上記式2から明らかなように、車輪部102が軸部材101に対して回転する際の車輪部102と軸部材101との間の摩擦力は、軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力及び歯106bと歯109aとの間の摩擦力の合計よりも小さい。このため、軸部材101は、車輪部102に連れ回りしない。よって、車輪部102を転がして後処理装置4を移動しても、車輪部102の回転軸AX1を中心とする回転に軸部材101が連れ回らず、キャスタ200の、後処理装置4の装置本体130に対する位置を適正に維持することができる。これは、歯106b,109aが係合するようにバネ108が移動ラッチ部材106を付勢することによって、歯106b,109aの間の摩擦力が増大し、移動ラッチ部材106及び軸部材101の所定トルク未満の回転が規制されるためである。
【0056】
後処理装置4の高さを調整する際には、ユーザは、操作ダイヤル103を回転させ、操作ダイヤル103と一体に軸部材101が回転する。そして、軸部材101が底板99Bのネジ孔105に対して高さ方向HDに進退し、キャスタ200は、後処理装置4の装置本体130に対する高さ方向HDの位置が変更される。このように操作ダイヤル103がユーザによって回転操作される際には、図7(b)に示すように、移動ラッチ部材106は、バネ108の付勢力に抗して第1方向D1(図6参照)とは反対の第2方向D2に移動する。これは、歯106b,109aに、それぞれ傾斜面106c,109cが設けられているからである。傾斜面106c,109cは、回転軸AX1を中心とする周方向及び高さ方向HDに対して傾斜しており、キャスタ200が待機状態の際に、互いに係合している。傾斜面106c,109cは、歯106b,109aの周方向における両側面に設けられている。
【0057】
すなわち、ユーザによって操作ダイヤル103が回転操作されると、操作ダイヤル103と一体に移動ラッチ部材106も回転軸AX1を中心に回転する。そして、移動ラッチ部材106の傾斜面106cが、固定ラッチ部材109の傾斜面109cから第2方向D2の力を受ける。これにより、移動ラッチ部材106は、歯106b,109aの周方向における係合を解除するように、バネ108の付勢力に抗して第2方向D2に移動する。
【0058】
傾斜面106c,109cの係合が解除されてから移動ラッチ部材106が更に所定角度、回転軸AX1を中心に回転されると、バネ108の付勢力によって移動ラッチ部材106は第1方向D1に移動し、再び歯106b,109aは周方向に係合する。
【0059】
このように、ユーザによる操作ダイヤル103の回転操作が可能なのは、上述した式2に示すように、操作ダイヤル103の操作力が、軸部材101とネジ孔105との間の摩擦力及び歯106bと歯109aとの間の摩擦力の合計よりも大きいためである。また、第1の実施の形態で説明したように、操作ダイヤル103の外周面103aが軸部材101の外周面101bよりも回転軸AX1から遠い位置に配置されている。このため、ユーザは操作ダイヤル103の外周面103aを回転操作することで、軸部材101を軽い力で回転させることができ、作業性を向上できる。バネ108の付勢力は、ユーザによる操作ダイヤル103の回転に必要な操作力が過大にならないように適宜設定される。
【0060】
以上のように、本実施の形態では、キャスタ200の操作ダイヤル103を回転操作することで、軸部材101をネジ孔105に対して回転させ、後処理装置4の装置本体130に対するキャスタ200の高さ方向HDにおける位置を調整することができる。これにより、後処理装置4を載置する載置面の状態、例えば載置面に絨毯が敷かれている場合や載置面がタイルである場合等に合わせて、後処理装置4の高さを調整することができる。よって、後処理装置4は、画像形成装置1から適切にシートを受け取ることができ、シートのジャムや斜行等の搬送不良を低減できる。
【0061】
また、キャスタ200の操作ダイヤル103を回転操作するだけで後処理装置4の高さを調整することができるので、工具等が不要で、作業性を向上できる。また、操作ダイヤル103は、後処理装置4の下方において露出しているため、後処理装置4の外装を外すことなく操作することができ、作業性を向上できる。
【0062】
またバネ108によって付勢された移動ラッチ部材106の歯106bが固定ラッチ部材109の歯109aに係合するため、車輪部102を転がして後処理装置4を移動しても、車輪部102の回転軸AX1を中心とする回転に軸部材101が連れ回らない。このため、キャスタ200の、後処理装置4の装置本体130に対する位置(高さ)を適正に維持することができる。
【0063】
また、移動ラッチ部材106の歯106bは、固定ラッチ部材109の歯109aに対して移動可能なため、キャスタ200の高さ調整を繰り返し行うことができ、ユーザビリティを向上できる。すなわち、移動ラッチ部材106の歯106b、固定ラッチ部材109の歯109a及びバネ108は、いわゆるラチェット機構を構成している。
【0064】
<その他の実施形態>
なお、第1の実施の形態では、緩み止め加工104の一例として、弾性変形するナイロンを挙げたが、これに限定されない。例えば、ナイロンではなく、他の樹脂を用いて緩み止め加工104を実施してもよく、緩み止め加工104は、軸部材101ではなく、ネジ孔105に実施されてもよい。ナイロンの代わりに用いられる樹脂は、耐摩耗性が高く、弾性変形可能なものが好適である。
【0065】
また、第1の実施の形態では、ネジ孔105は底板99に形成されていたが、これに限定されない。例えば、底板99にナット部材を溶接し、該ナット部材のネジ孔に軸部材101を螺合してもよい。すなわち、ネジ孔105は、後処理装置4のフレーム(99)に一体に設けられても、別体に設けられてもよい。
【0066】
また、第2の実施の形態では、移動ラッチ部材106と固定ラッチ部材109とが周方向に係合することで、軸部材101が車輪部102に対して連れ回りしないように構成されていたが、これに限定されない。例えば、バネ108を、底板99Bとキャップ部材107との間に、かつ底板99Bに当接するように配置してもよい。これにより、バネ108と底板99Bとの間に摩擦力が発生し、軸部材101が車輪部102に対して連れ回りしないように構成されてもよい。また、移動ラッチ部材106がバネ108によって底板99Bに押し当てられ、移動ラッチ部材106と底板99Bとの間に摩擦力が発生するように構成してもよい。この場合、移動ラッチ部材106には、複数の歯106bが形成されていなくてもよく、移動ラッチ部材106とバネ108との当接面の形状は限定されない。
【0067】
また、第2の実施の形態では、移動ラッチ部材106の歯106bと係合する歯109aを有する固定ラッチ部材109が、底板99Bに取り付けられていたが、これに限定されない。例えば、固定ラッチ部材109を省き、歯109aを底板99Bの上面に設けてもよい。
【0068】
また、第2の実施の形態では、バネ108は、コイルスプリングから構成されていたが、これに限定されない。例えば、バネ108は、板バネ等の他のバネでもよく、バネ108の代わりにゴムやスポンジ等の他の弾性部材を適用してもよい。
【0069】
また、第2の実施の形態では、歯106b,109aに、それぞれ傾斜面106c,109cが設けられていたが、これに限定されない。すなわち、傾斜面は、歯106b,109aの少なくともいずれか一方に設けられていればよい。
【0070】
また、既述のいずれの形態においても、後処理装置4に設けられるキャスタ100,200を例に説明したが、これに限定されない。例えば、キャスタ100,200は、後処理装置4に限らず、画像形成装置や大容量給送デッキ、オプションフィーダ等の他のシート搬送装置に取り付けられてもよい。
【0071】
また、本実施の形態の開示は、以下の構成例及び方法例を含む。
(構成1)
シートを搬送するシート搬送装置において、
フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、を有する装置本体と、
前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、
前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間に挟まれるように設けられ、弾性変形することで前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間の摩擦力を増大させる弾性部と、を備える、
ことを特徴とするシート搬送装置。
(構成2)
前記第2ネジ部は、雄ネジを有し、
前記第1ネジ部は、前記雄ネジに螺合する雌ネジを有し、
前記弾性部は、前記雄ネジの前記高さ方向における所定範囲に付着され、
前記所定範囲は、前記雌ネジと前記雄ネジとが螺合している範囲よりも前記高さ方向において大きい、
ことを特徴とする構成1に記載のシート搬送装置。
(構成3)
前記弾性部は、前記雄ネジの回転方向において、前記雄ネジの全周の内の一部に付着される、
ことを特徴とする構成2に記載のシート搬送装置。
(構成4)
前記弾性部は、弾性変形可能な樹脂である、
ことを特徴とする構成1乃至3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成5)
前記樹脂は、ナイロンである、
ことを特徴とする構成4に記載のシート搬送装置。
(構成6)
前記操作部は、前記高さ方向に延びる回転軸を中心に前記第2ネジ部と一体に回転可能であり、
前記操作部の外周面は、前記高さ方向に直交する径方向において、前記第2ネジ部の外周面よりも前記回転軸から遠い位置に配置される、
ことを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成7)
前記車輪部が前記第2ネジ部に対して回転する際の、前記車輪部と前記第2ネジ部との間の摩擦力は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間の摩擦力よりも小さい、
ことを特徴とする構成1乃至6のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成8)
シートに画像を形成する画像形成装置に接続されるシート搬送装置であって、
前記画像形成装置によって画像が形成されたシートに処理を施す処理部を備える、
ことを特徴とする構成1乃至7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成9)
シートを搬送するシート搬送装置において、
フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、第1係合部と、を有する装置本体と、
前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、前記第2ネジ部に対して前記高さ方向に移動可能に支持される移動部材と、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、を備え、
前記移動部材は、前記第1係合部に係合可能な第2係合部を有し、
前記キャスタは、前記第2係合部が前記第1係合部に係合するように前記移動部材を付勢する付勢部を有する、
ことを特徴とするシート搬送装置。
(構成10)
前記移動部材は、前記高さ方向に延びる回転軸を中心に前記第2ネジ部と一体に回転可能かつ前記高さ方向において前記第2ネジ部に対して相対移動可能であり、
前記第2係合部は、前記第1係合部に対して、前記回転軸を中心とする周方向に係合する、
ことを特徴とする構成9に記載のシート搬送装置。
(構成11)
前記第1係合部及び前記第2係合部の少なくともいずれか一方は、前記周方向及び前記高さ方向に対して傾斜する傾斜面を有する、
ことを特徴とする構成10に記載のシート搬送装置。
(構成12)
前記第1係合部及び前記第2係合部は、互いに係合し、前記高さ方向に延びる複数の歯をそれぞれ有する、
ことを特徴とする構成10又は11に記載のシート搬送装置。
(構成13)
前記付勢部は、前記高さ方向に関して、前記移動部材を第1方向に付勢し、
前記第1係合部と前記第2係合部とが係合した状態で前記操作部が回転操作されると、前記移動部材は、前記第1係合部と前記第2係合部との前記周方向における係合を解除するように、前記付勢部の付勢力に抗して前記第1方向とは反対の第2方向に移動する、
ことを特徴とする構成10乃至12のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成14)
前記キャスタは、前記第2ネジ部に固定される保持部材を備え、
前記保持部材は、前記移動部材を、前記回転軸を中心に一体に回転可能かつ前記高さ方向において相対移動可能に支持し、
前記付勢部は、前記保持部材と前記移動部材との間に配置される、
ことを特徴とする構成10乃至13のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成15)
前記操作部は、前記高さ方向に延びる回転軸を中心に前記第2ネジ部と一体に回転可能であり、
前記操作部の外周面は、前記高さ方向に直交する径方向において、前記第2ネジ部の外周面よりも前記回転軸から遠い位置に配置される、
ことを特徴とする構成9乃至14のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成16)
前記車輪部が前記第2ネジ部に対して回転する際の、前記車輪部と前記第2ネジ部との間の摩擦力は、前記第1ネジ部と前記第2ネジ部との間の摩擦力及び前記第1係合部と前記第2係合部との間の摩擦力の合計よりも小さい、
ことを特徴とする構成9乃至15のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成17)
シートに画像を形成する画像形成装置に接続されるシート搬送装置であって、
前記画像形成装置によって画像が形成されたシートに処理を施す処理部を備える、
ことを特徴とする構成9乃至16のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
(構成18)
シートを搬送するシート搬送装置において、
フレームと、前記フレームに設けられる第1ネジ部と、第1係合部と、を有する装置本体と、
前記第1ネジ部に対して高さ方向に螺合する第2ネジ部と、前記第2ネジ部に対して相対回転可能に支持される車輪部と、前記第2ネジ部と一体に回転する操作部と、前記フレームに当接することで摩擦力を発生させるバネと、を有するキャスタであって、前記操作部を回転操作されることで前記第2ネジ部が前記第1ネジ部に対して前記高さ方向において進退し、前記装置本体に対する前記高さ方向の位置が変更されるキャスタと、を備える、
ことを特徴とするシート搬送装置。
(構成19)
シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置に接続される、構成1乃至18のいずれか1項に記載のシート搬送装置と、を備える、
ことを特徴する画像形成システム。
【符号の説明】
【0072】
1:画像形成装置/1S:画像形成システム/4:シート搬送装置(後処理装置)/4A:処理部(整合部)/100,200:キャスタ/101:第2ネジ部(軸部材)/101b:外周面/102:車輪部/103:操作部(操作ダイヤル)/103a:外周面/104:弾性部(緩み止め加工、ナイロン)/105:第1ネジ部(ネジ孔)/106:移動部材(移動ラッチ部材)/106b:第2係合部(複数の歯)/107:保持部材(キャップ部材)/108:付勢部、バネ/109a:第1係合部(複数の歯)/130:装置本体/140,140B:フレーム/AX1:回転軸/D1:第1方向/D2:第2方向/PA1:所定範囲/PA2:範囲/HD:高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7