(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183180
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20231220BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231220BHJP
H01R 4/34 20060101ALI20231220BHJP
H01R 4/58 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610A
H01R4/34
H01R4/58 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096668
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野倉 正人
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 龍
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎二
(72)【発明者】
【氏名】岩野 圭介
【テーマコード(参考)】
5E012
5G361
【Fターム(参考)】
5E012BA14
5G361BA03
5G361BB01
5G361BC01
(57)【要約】
【課題】ハウジングの成形性への影響を低減しながら締結固定に伴うバスバの位置ズレを抑制可能な電気接続箱を提供すること。
【解決手段】電気接続箱1は、ハウジング10と、ハウジング10に取り付けられる第1バスバ30Aと、を備える。第1バスバ30Aは、ハウジング10への取り付けの際に締結部材26が挿通されることになる第1締結孔32と、第1締結孔32への締結部材26の挿通方向に沿って延びる第1突起部33Aと、を有する。ハウジング10は、第1突起部33Aが挿入される第1挿入孔17Aを有する。第1挿入孔17Aは、第1挿入孔17Aの孔内壁と第1突起部33Aとが締結部材26の軸周りの周回方向において互いに隣接する孔形状を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに取り付けられる第1バスバと、を備える電気接続箱であって、
前記第1バスバは、
前記ハウジングへの取り付けの際に締結部材が挿通されることになる第1締結孔と、前記第1締結孔への前記締結部材の挿通方向に沿って延びる第1突起部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記第1突起部が挿入される第1挿入孔を有し、
前記第1挿入孔は、
当該第1挿入孔の孔内壁と前記第1突起部とが前記締結部材の軸周りの周回方向において互いに隣接する孔形状を有する、
電気接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱であって、
前記ハウジングに取り付けられる第2バスバを、更に備え、
前記第2バスバは、
前記ハウジングへの取り付けの際に他の締結部材が挿通されることになる第2締結孔と、前記第2締結孔への前記他の前記締結部材の挿通方向に沿って延びる第2突起部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記第2突起部が挿入される第2挿入孔を有し、
前記第2挿入孔は、
当該第2挿入孔の孔内壁と前記第2突起部とが前記他の前記締結部材の軸周りの周回方向において互いに隣接する孔形状を有し、
前記第1挿入孔は、前記第2突起部を挿入不可である孔形状を有し、
前記第2挿入孔は、前記第1突起部を挿入不可である孔形状を有する、
電気接続箱。
【請求項3】
請求項1に記載の電気接続箱であって、
前記ハウジングに取り付けられる第3バスバを、更に備え、
前記第3バスバは、
前記第1バスバの前記第1突起部が挿通される孔部と、前記第1バスバの前記第1締結孔に挿通される前記締結部材と、を有し、
前記第1バスバは、
前記第1突起部を前記第3バスバの前記孔部に挿通させ且つ前記第1挿入孔に挿入させた状態にて、前記第3バスバの前記締結部材を用いて前記第3バスバに締結固定される、
電気接続箱。
【請求項4】
請求項1に記載の電気接続箱において、
前記第1突起部は、
前記第1バスバの一部を切り起こした形状を有する、
電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、ハウジングに取り付けられるバスバと、を備える電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載されるリレーボックス等の電気接続箱として、一又は複数のバスバを樹脂製のハウジングに取り付けた電気接続箱が知られている。例えば、従来の電気接続箱の一つでは、通電のための複数のバスバがハウジングにボルト及びナットを用いて締結固定されるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、上述したようにボルト等の締結部材を用いてバスバを締結固定する際、締結部材とバスバとの間の摩擦等に起因し、バスバが締結部材と共に締結部材の軸周りに周回するように位置ズレする現象(いわゆる、連れ回り)が生じる場合がある。このような位置ズレを抑制するために、バスバをズレ方向(即ち、軸周りの周回方向)において挟んで保持するような突起構造を、ハウジングに追加することが考えられる。しかし、このような突起構造をハウジングに設けると、突起構造を設けた箇所が厚肉化することで、ハウジングを製造する際に生じ得る樹脂の成形収縮に起因するハウジング形状のバラツキ(いわゆる、ヒケやボイド等)が生じやすくなると考えられる。このような背景から、ハウジングの成形性への影響を抑えながら、締結固定に伴うバスバの位置ズレを抑制することが望まれている。
【0005】
本発明の目的の一つは、ハウジングの成形性への影響を低減しながら、締結固定に伴うバスバの位置ズレを抑制可能な電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、以下を特徴としている。
【0007】
ハウジングと、前記ハウジングに取り付けられる第1バスバと、を備える電気接続箱であって、
前記第1バスバは、
前記ハウジングへの取り付けの際に締結部材が挿通されることになる第1締結孔と、前記第1締結孔への前記締結部材の挿通方向に沿って延びる第1突起部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記第1突起部が挿入される第1挿入孔を有し、
前記第1挿入孔は、
当該第1挿入孔の孔内壁と前記第1突起部とが前記締結部材の軸周りの周回方向において互いに隣接する孔形状を有する、
電気接続箱であること。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電気接続箱によれば、第1バスバが有する第1突起部が、第1バスバに挿通される締結部材の挿通方向に沿って延びる。そして、第1バスバをハウジングに取り付けるとき、ハウジングが有する第1挿入孔に、第1バスバが有する第1突起部が挿入される。この状態で、締結部材を用いた第1バスバの締結固定が行われると、第1挿入孔の孔内壁と第1突起部とが締結部材の軸周りの周回方向(即ち、上述したズレ方向)において互いに隣接しているため、第1バスバが周回方向に変位しようとしても、第1突起部と第1挿入孔の孔内壁との干渉によってそのような変位が抑制される。即ち、第1バスバの位置ズレ(即ち、連れ回り)が抑制される。ハウジングの第1挿入孔は、上述したバスバを挟む突起構造に比べ、ハウジングの厚肉化の懸念が無く、且つ、構造がシンプルであるため成形自体も容易である。このように、本発明の電気接続箱は、ハウジングの成形性への影響を低減しながら、締結固定に伴うバスバの位置ズレを抑制可能である。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電気接続箱の主要部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電気接続箱の主要部の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す電気接続箱の主要部を後側からみたときの当該主要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電気接続箱1について説明する。電気接続箱1は、典型的には、車両に搭載されてリレーやヒューズ等の電子部品を収容する目的で用いられる。
【0012】
以下、説明の便宜上、
図1~
図7に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。電気接続箱1の車両搭載時において、「上下方向」は、車両の上下方向に対応している。また、「上下方向」は、本発明の「締結部材の挿通方向」に対応している。
【0013】
図1~
図3に示すように、電気接続箱1は、ハウジング10と、ハウジング10に取り付けられる一対の前側バスバ20と、ハウジング10に取り付けられる一対の上側バスバ30と、ハウジング10に取り付けられるヒューズ40と、を備える。以下、電気接続箱1を構成する各部材について順に説明する。
【0014】
まず、ハウジング10について説明する。樹脂成形品であるハウジング10は、
図1~
図3に示すように、前後方向、左右方向及び上下方向に延び且つ左右方向に長い略直方体状の形状を有するハウジング本体11を少なくとも一部に有している。ハウジング10における、ハウジング本体11及びハウジング本体11以外の部分の内部には、リレーやヒューズ等の複数種類の電子部品(図示省略)が収容されている。
【0015】
ハウジング本体11の右端部の前面には、
図2に示すように、左右一対のバスバ収容凹部12が、左右方向に並ぶように設けられている。各バスバ収容凹部12は、後方に向けて窪み且つ前方及び上方に開口する上下方向に長い略直方体状の溝部である。左右一対のバスバ収容凹部12には、左右一対の前側バスバ20の一部がそれぞれ収容されることになる(
図1等参照)。以下、左右一対のバスバ収容凹部12を区別する必要があるときは、左側及び右側のバスバ収容凹部12を、それぞれ、「バスバ収容凹部12A」及び「バスバ収容凹部12B」と称呼する。
【0016】
バスバ収容凹部12Aの溝底面(前方を向いた面)には、金属製のナット13が、メネジ部が前方に開口し且つ前後方向に延びる向きで、インサート成形等によって一体化されている。バスバ収容凹部12Bの溝底面(前方を向いた面)には、金属製のスタッドボルト14が、前方に向けて突出する向きで、インサート成形等によって一体化されている。
【0017】
ハウジング本体11の右端部の前面には、
図2に示すように、ヒューズ収容凹部15が、バスバ収容凹部12Aの左側に隣接するように設けられている。ヒューズ収容凹部15は、後方に向けて窪み且つ前方に開口する左右方向に長い略直方体状の溝部である。ヒューズ収容凹部15には、ヒューズ40の後述するヒューズ本体41が収容されることになる(
図1等参照)。バスバ収容凹部12Aとヒューズ収容凹部15とを区画する上下方向に延びる隔壁には、後方へ窪む切欠き部16が形成されている(
図2参照)。切欠き部16には、ヒューズ40の後述する端子部42(
図2参照)が収容されることになる(
図1参照)。
【0018】
ハウジング本体11の右端部の上面11aには、
図2、
図3及び
図5に示すように、バスバ収容凹部12Aの後側の位置に挿入孔17Aが形成され、バスバ収容凹部12Bの後側の位置に挿入孔17Bが形成されている。挿入孔17Aには、後述する上側バスバ30Aの突起部33A(
図4等参照)が挿入されることになる。挿入孔17Aは、突起部33Aに対応して、前後方向を長手方向とする矩形状の穴部である(
図5参照)。挿入孔17Bには、後述する上側バスバ30Bの突起部33B(
図4等参照)が挿入されることになる。挿入孔17Bは、突起部33Bに対応して、左右方向を長手方向とする矩形状の穴部である(
図5参照)。
【0019】
各バスバ収容凹部12の左右両側の内壁面の上下方向の所定位置には、左右一対の係止リブ18が、左右方向内側に向けて突出し且つ前後方向に延びるように形成されている(
図2及び
図5参照)。各バスバ収容凹部12の左右一対の係止リブ18は、対応する前側バスバ20の後述する左右一対の切欠き部25(
図2参照)に挿通されることになる。
【0020】
次いで、左右一対の前側バスバ20について説明する。左右一対の前側バスバ20は、本例では、同形である。前側バスバ20は、1枚の金属板に対してプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成されている。前側バスバ20は、
図2及び
図3に示すように、上下方向に延びる平板状の第1部分21と、第1部分21の上端部から後方へ延びる平板状の第2部分22と、第1部分21の下端部から後方へ延びる平板状の第3部分23とからなる、左右方向からみて後方に開口する略U字状の形状を有している。
【0021】
第1部分21には、バスバ収容凹部12のナット13及びスタッドボルト14に対応して、上下方向の所定位置にて、前後方向(板厚方向)に貫通するボルト孔24が形成されている。更に、第1部分21には、バスバ収容凹部12の左右一対の係止リブ18に対応して、ボルト孔24の上側の左右両側縁部にて、左右一対の切欠き部25が形成されている。
【0022】
第2部分22の上面には、金属製のスタッドボルト26が、上方に向けて突出するように、溶接等によって一体化されている。第2部分22の後端面(延出端面)には、後方へ更に張り出す張出部27が形成されており、張出部27には、上下方向(板厚方向)に貫通する孔部28が形成されている。以下、左右一対の前側バスバ20を区別する必要があるときは、左側及び右側の前側バスバ20を、それぞれ、「前側バスバ20A」及び「前側バスバ20B」と称呼する。
【0023】
次いで、左右一対の上側バスバ30について説明する。左右一対の上側バスバ30は、本例では、後述する突起部33(突起部33A,33B)を除いて、同形である。上側バスバ30は、1枚の金属板に対してプレス加工及び曲げ加工等を施すことで形成されている。以下、左右一対の上側バスバ30を区別する必要があるときは、左側及び右側の上側バスバ30を、それぞれ、「上側バスバ30A」及び「上側バスバ30B」と称呼する。
【0024】
上側バスバ30は、
図2及び
図3に示すように、前後方向に延びる平板状の第1部分31を少なくとも一部に有している。第1部分31の後端部には、前側バスバ20のスタッドボルト26に対応して、上下方向(板厚方向)に貫通するボルト孔32が形成されている。更に、第1部分31の後端部には、ボルト孔32より後側の位置にて、ハウジング10の挿入孔17A,17B及び前側バスバ20の孔部28に対応して、下方に突出する突起部33が形成されている。上側バスバ30は、例えば、電気接続箱1の外部機器(電源や、各種の電装品等。図示省略)に電気的に接続されるようになっている。
【0025】
図2~
図4(特に、
図4)に示すように、上側バスバ30Aの突起部33(以下、「突起部33A」と称呼する)は、上側バスバ30Aの第1部分31の一部を切り起こした切り起こし片であり、根元部が右側に位置し且つ先端部が左側に位置する左右方向に延びる切り起こし片の根元部を、下方に向けて折り曲げることで、形成されている。突起部33Aは、ハウジング10の挿入孔17A(
図5参照)に対応して、前後方向を長手方向とする矩形状の断面形状を有している。上側バスバ30Bの突起部33(以下、「突起部33B」と称呼する)は、上側バスバ30Bの第1部分31の一部を切り起こした切り起こし片であり、根元部が前側に位置し且つ先端部が後側に位置する前後方向に延びる切り起こし片の根元部を、下方に向けて折り曲げることで、形成されている。突起部33Bは、ハウジング10の挿入孔17B(
図5参照)に対応して、左右方向を長手方向とする矩形状の断面形状を有している。
【0026】
ハウジング10の挿入孔17Aは、突起部33Aを挿入可能であり(
図7参照)、且つ、突起部33Bを挿入不能となる孔形状を有している。同様に、ハウジング10の挿入孔17Bは、突起部33Bを挿入可能であり(
図7参照)、且つ、突起部33Aを挿入不能となる孔形状を有している。
図7に示すように、挿入孔17Aは、突起部33Aの挿入時において、挿入孔17Aの孔内壁と突起部33Aとが左右方向において互いに隣接する形状を有し、挿入孔17Bは、突起部33Bの挿入時において、挿入孔17Bの孔内壁と突起部33Bとが左右方向において互いに隣接する形状を有している。
【0027】
次いで、ヒューズ40について説明する。ヒューズ40は、左右方向に延びるヒューズ本体41と、ヒューズ本体41の左右両端に設けられた左右一対の金属製の平板状の端子部42とを有している。各端子部42には、前後方向(板厚方向)に貫通するボルト孔43が形成されている。ヒューズ本体41は、左右一対の端子部42を電気的に接続すると共に、左右一対の端子部42間に定格電流を超える過大な電流が流れるときには左右一対の端子部42間の電気的接続を遮断する、所謂ヒューズ機能を果たす部分である。以上、電気接続箱1を構成する各部材について説明した。
【0028】
次いで、ハウジング10に取り付けられる各部品(一対の前側バスバ20、一対の上側バスバ30、及び、ヒューズ40)の組み付け手順について説明する。まず、左右一対の前側バスバ20がハウジング10に配置される。具体的には、前側バスバ20Aが、前側から、第1部分21及び第3部分23がバスバ収容凹部12Aに収容され、第2部分22がハウジング本体11の上面11aに載置され、且つ、左右一対の切欠き部25に左右一対の係止リブ18が挿通されるように、ハウジング10に配置される(
図1及び
図7等参照)。前側バスバ20Aのハウジング10への配置完了状態では、左右一対の切欠き部25と係合する左右一対の係止リブ18のガイド機能の発揮等により、ハウジング10のナット13とナット13の前側に位置する前側バスバ20Aのボルト孔24とが互いに位置合わせされた状態で配置され、且つ、ハウジング10の挿入孔17Aと挿入孔17Aの上側に位置する前側バスバ20Aの孔部28とが互いに位置合わせされた状態で配置されている。
【0029】
同様に、前側バスバ20Bが、前側から、第1部分21及び第3部分23がバスバ収容凹部12Bに収容され、第2部分22がハウジング本体11の上面11aに載置され、且つ、左右一対の切欠き部25に左右一対の係止リブ18が挿通され、且つ、ボルト孔24にスタッドボルト14が挿入されるように、ハウジング10に配置される(
図1及び
図7等参照)。前側バスバ20Bのハウジング10への配置完了状態では、左右一対の切欠き部25と係合する左右一対の係止リブ18のガイド機能の発揮等により、ハウジング10のスタッドボルト14とスタッドボルト14の前側に位置する前側バスバ20Bのボルト孔24とが互いに位置合わせされた状態で配置され、且つ、ハウジング10の挿入孔17Bと挿入孔17Bの上側に位置する前側バスバ20Bの孔部28とが互いに位置合わせされた状態で配置されている。
【0030】
次いで、ヒューズ40がハウジング10に配置される。具体的には、ヒューズ40が、ヒューズ本体41がヒューズ収容凹部15に収容され、右側の端子部42が切欠き部16に収容され、右側の端子部42のボルト孔43が前側バスバ20Aのボルト孔24の前側に重なるように、ハウジング10に配置される(
図1等参照)。また、ハウジング10のスタッドボルト14には、図示しない電線の端末に接続された図示しない端子(LA端子)が接続される。具体的には、スタッドボルト14に、当該端子(LA端子)の平板状の接続部に設けられた貫通孔が挿入される。
【0031】
次いで、前側バスバ20A及びヒューズ40がボルト53(
図2参照)によってハウジング10に締結固定される。具体的には、ボルト53が、ヒューズ40のボルト孔43及び前側バスバ20Aのボルト孔24にこの順に挿入され、次いで、ボルト53がナット13に捻じ込まれることで、前側バスバ20A及びヒューズ40がハウジング10に共締めされる。このとき、前側バスバ20Aがボルト53の軸周りに周回するように変位(連れ回り)しようとしても、前側バスバ20Aの第1部分21の左右端縁がバスバ収容凹部12Aの左右の内壁に干渉することで、そのような変位(連れ回り)が抑制される。同様に、前側バスバ20B及び上記端子(LA端子)が図示しないナットによってハウジング10に締結固定される。具体的には、図示しないナットがスタッドボルト14に捻じ込まれることで、前側バスバ20B及び上記端子(LA端子)がハウジング10に共締めされる。このとき、前側バスバ20Bがスタッドボルト14の軸周りに周回するように変位(連れ回り)しようとしても、前側バスバ20Bの第1部分21の左右端縁がバスバ収容凹部12Bの左右の内壁に干渉することで、そのような変位(連れ回り)が抑制される。
【0032】
次いで、左右一対の上側バスバ30が、それぞれ、ハウジング10に固定されている左右一対の前側バスバ20に締結固定される。具体的には、上側バスバ30Aの第1部分31が、上側から、突起部33Aが前側バスバ20Aの孔部28及びハウジング10の挿入孔17Aにこの順に挿入され、且つ、ボルト孔32に前側バスバ20Aのスタッドボルト26が挿入されるように、前側バスバ20Aの第2部分22の上面に載置される(
図6及び
図7も参照)。このとき、突起部33Aがハウジング10の挿入孔17Bには挿入不能であることにより、上側バスバ30Aを誤って前側バスバ20Bの第2部分22の上面に載置することが抑制される。次いで、前側バスバ20Aのスタッドボルト26にワッシャ51(
図2参照)が挿入され、ナット52(
図2参照)がスタッドボルト26に捻じ込まれることで、上側バスバ30Aが前側バスバ20Aに締結固定される。このとき、
図6及び
図7に示すように、挿入孔17Aの孔内壁と挿入孔17Aに挿入されている突起部33Aとが左右方向(スタッドボルト26の軸周りの周回方向)において互いに隣接している。このため、上側バスバ30Aがスタッドボルト26の軸周りに周回するように変位(連れ回り)しようとしても、突起部33Aが挿入孔17Aの孔内壁に干渉することで、そのような変位(連れ回り)が抑制される。更に、突起部33Aは、ハウジング10に締結固定されている前側バスバ20Aの孔部28の孔内壁にも干渉し得る。このため、上側バスバ30Aの変位(連れ回り)は、前側バスバ20Aの孔部28によっても補助的に抑制することができる。
【0033】
同様に、上側バスバ30Bの第1部分31が、上側から、突起部33Bが前側バスバ20Bの孔部28及びハウジング10の挿入孔17Bにこの順に挿入され、且つ、ボルト孔32に前側バスバ20Bのスタッドボルト26が挿入されるように、前側バスバ20Bの第2部分22の上面に載置される(
図6及び
図7も参照)。このとき、突起部33Bがハウジング10の挿入孔17Aには挿入不能であることにより、上側バスバ30Bを誤って前側バスバ20Aの第2部分22の上面に載置することが抑制される。次いで、前側バスバ20Bのスタッドボルト26にワッシャ51が挿入され(
図2参照)、ナット52(
図2参照)がスタッドボルト26に捻じ込まれることで、上側バスバ30Bが前側バスバ20Bに締結固定される。このとき、
図6及び
図7に示すように、挿入孔17Bの孔内壁と挿入孔17Bに挿入されている突起部33Bとが左右方向(スタッドボルト26の軸周りの周回方向)において互いに隣接している。このため、上側バスバ30Bがスタッドボルト26の軸周りに周回するように変位(連れ回り)しようとしても、突起部33Bが挿入孔17Bの孔内壁に干渉することで、そのような変位(連れ回り)が抑制される。更に、突起部33Bは、ハウジング10に締結固定されている前側バスバ20Bの孔部28の孔内壁にも干渉し得る。このため、上側バスバ30Bの変位(連れ回り)は、前側バスバ20Bの孔部28によっても補助的に抑制することができる。
【0034】
なお、以上の説明では、左右一対の前側バスバ20をハウジング10に締結固定した後に、左右一対の上側バスバ30を左右一対の前側バスバ20にそれぞれ締結固定している。これに対し、左右一対の上側バスバ30を左右一対の前側バスバ20にそれぞれ締結固定した後に、左右一対の前側バスバ20をハウジング10に締結固定してもよい。この場合、上側バスバ30の締結固定段階において、前側バスバ20はハウジング10に固定されていない。しかし、上側バスバ30の締結時において、ハウジング10に固定されていない前側バスバ20がスタッドボルト26の軸周りに周回するように変位(連れ回り)しようとしても、孔部28の内壁が突起部33に干渉することで、そのような変位(連れ回り)が抑制される。
【0035】
<作用・効果>
以上より、本実施形態に係る電気接続箱1によれば、上側バスバ30をハウジング10に取り付けるとき、ハウジング10が有する挿入孔17に、上側バスバ30が有する突起部33が挿入される。更に、挿入孔17の孔内壁と突起部33とが、前側バスバ20のスタッドボルト26の軸周りの周回方向(左右方向)において互いに隣接する。よって、上側バスバ30のボルト孔32に前側バスバ20のスタッドボルト26を挿入して上側バスバ30の締結固定を行うとき、上側バスバ30がスタッドボルト26の軸周りに周回するように変位しようとしても、突起部33が挿入孔17の孔内壁に干渉することで、そのような変位が抑制される。即ち、上側バスバ30の位置ズレ(即ち、連れ回り)が抑制される。ハウジング10の挿入孔17は、上述したバスバを挟む突起構造に比べ、ハウジング10の厚肉化の懸念が無く、且つ、構造がシンプルであるため成形自体も容易である。このように、本実施形態に係る電気接続箱1は、ハウジング10の成形性への影響を抑えながら、締結に伴う上側バスバ30の位置ズレを抑制可能である。
【0036】
更に、上側バスバ30の位置ズレを抑制する観点では、ハウジング10に設ける挿入孔17の周縁部分が適正な肉厚(例えば、挿入孔17の孔内壁が突起部33の干渉に耐え得る程度の肉厚)を有していればよく、それ以外の箇所が過大な肉厚を有する必要はない。よって、ハウジング10の全体的な薄肉化を図り得る。これにより、ハウジング10の成形性を向上させるとともに、製造コストを低減することができる。
【0037】
更に、ハウジング10に挿入孔17A及び第2挿入孔17Bが設けられる。挿入孔17Aは、突起部33Aを挿入可能であるものの突起部33Bを挿入不可である孔形状を有し、挿入孔17Bは、突起部33Bを挿入可能であるものの突起部33Aを挿入不可である孔形状を有する。よって、上側バスバ30Aを誤って上側バスバ30Bを取り付ける位置に取り付けることが抑制される。上側バスバ30Bについても同様である。これにより、上側バスバ30A及び上側バスバ30Bの誤組付けを容易かつ確実に防止することができ、ハウジング10に上側バスバ30A及び上側バスバ30Bを取り付ける作業の作業性を向上できる。
【0038】
更に、上側バスバ30の突起部33を前側バスバ20の孔部28に挿通させ、且つ、突起部33をハウジング10の挿入孔17に挿入させた状態にて、上側バスバ30が前側バスバ20のスタッドボルト26を用いて前側バスバ20に固定される。これにより、例えば、前側バスバ20をハウジング10にあらかじめ固定しておけば、締結の際、上側バスバ30の位置ズレを、挿入孔17だけでなく、前側バスバ20の孔部28によっても補助的に抑制することができる。
【0039】
更に、突起部33は、上側バスバ30の一部を切り起こした形状を有する。よって、突起部33を、上側バスバ30に容易に形成することができる。
【0040】
<他の態様>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0041】
上記実施形態では、上側バスバ30のボルト孔32に挿通されるスタッドボルト26が、前側バスバ20に設けられている。これに対し、上側バスバ30のボルト孔32に挿通されるスタッドボルトが、ハウジング10のハウジング本体11の上面11aに設けられていてもよい。
【0042】
上記実施形態では、ハウジング10に左右一対の上側バスバ30及び左右一対の前側バスバ20が取り付けられている。これに対し、ハウジング10に単一の上側バスバ30及び単一の前側バスバ20が取り付けられてもよい。
【0043】
上記実施形態では、上側バスバ30Aの突起部33Aは、上側バスバ30Aの後方の縁部から前方に若干離れた位置において、上側バスバ30Aを厚さ方向に貫通する孔の縁から延びるように、切り起こされている(例えば、
図6参照)。これに対し、突起部33Aは、上側バスバ30Aの縁部から延びるように(例えば、縁部の一部を下方に折り曲げるように)切り起こされてもよい。上側バスバ30Bの突起部33Bについても同様である。
【0044】
上記実施形態では、電気接続箱1が、車両に搭載されてリレーやヒューズ等の電子部品を収容する目的で用いられている。しかし、電気接続箱1は、他の機能を目的とした構造体であってもよい。
【0045】
ここで、上述した本発明に係る電気接続箱1の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[4]に簡潔に纏めて列記する。
【0046】
[1]
ハウジング(10)と、前記ハウジング(10)に取り付けられる第1バスバ(30A)と、を備える電気接続箱(1)であって、
前記第1バスバ(30A)は、
前記ハウジング(10)への取り付けの際に締結部材(26)が挿通されることになる第1締結孔(32)と、前記第1締結孔(32)への前記締結部材(26)の挿通方向に沿って延びる第1突起部(33A)と、を有し、
前記ハウジング(10)は、
前記第1突起部(33A)が挿入される第1挿入孔(17A)を有し、
前記第1挿入孔(17A)は、
当該第1挿入孔(17A)の孔内壁と前記第1突起部(33A)とが前記締結部材(26)の軸周りの周回方向において互いに隣接する孔形状を有する、
電気接続箱(1)。
【0047】
上記[1]の構成の電気接続箱によれば、第1バスバが有する第1突起部が、第1バスバに挿通される締結部材の挿通方向に沿って延びる。そして、第1バスバをハウジングに取り付けるとき、ハウジングが有する第1挿入孔に、第1バスバが有する第1突起部が挿入される。この状態で、締結部材を用いた第1バスバの締結固定が行われると、第1挿入孔の孔内壁と第1突起部とが締結部材の軸周りの周回方向(即ち、上述したズレ方向)において互いに隣接しているため、第1バスバが周回方向に変位しようとしても、第1突起部と第1挿入孔の孔内壁との干渉によってそのような変位が抑制される。即ち、第1バスバの位置ズレ(即ち、連れ回り)が抑制される。ハウジングの第1挿入孔は、上述したバスバを挟む突起構造に比べ、ハウジングの厚肉化の懸念が無く、且つ、構造がシンプルであるため成形自体も容易である。このように、本発明の電気接続箱は、ハウジングの成形性への影響を低減しながら、締結固定に伴うバスバの位置ズレを抑制可能である。
【0048】
[2]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)であって、
前記ハウジング(10)に取り付けられる第2バスバ(30B)を、更に備え、
前記第2バスバ(30B)は、
前記ハウジング(10)への取り付けの際に他の締結部材(26)が挿通されることになる第2締結孔(32)と、前記第2締結孔(32)への前記他の前記締結部材(26)の挿通方向に沿って延びる第2突起部(33B)と、を有し、
前記ハウジング(10)は、
前記第2突起部(33B)が挿入される第2挿入孔(17B)を有し、
前記第2挿入孔(17B)は、
当該第2挿入孔(17B)の孔内壁と前記第2突起部(33B)とが前記他の前記締結部材(26)の軸周りの周回方向において互いに隣接する孔形状を有し、
前記第1挿入孔(17A)は、前記第2突起部(33B)を挿入不可である孔形状を有し、
前記第2挿入孔(17B)は、前記第1突起部(33A)を挿入不可である孔形状を有する、
電気接続箱(1)。
【0049】
上記[2]の構成の電気接続箱によれば、ハウジングに第1挿入孔及び第2挿入孔が設けられる。第1挿入孔は、第1突起部を挿入可能であるものの第2突起部を挿入不可である孔形状を有し、第2挿入孔は、第2突起部を挿入可能であるものの第1突起部を挿入不可である孔形状を有する。よって、第1バスバ及び第2バスバの取り付け位置を誤ること(いわゆる、誤組付け)が抑制され、ハウジングに第1バスバ及び第2バスバを取り付ける作業の作業性を向上できる。
【0050】
[3]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)であって、
前記ハウジング(10)に取り付けられる第3バスバ(20A)を、更に備え、
前記第3バスバ(20A)は、
前記第1バスバ(30A)の前記第1突起部(33A)が挿通される孔部(28)と、前記第1バスバ(30A)の前記第1締結孔(32)に挿通される前記締結部材(26)と、を有し、
前記第1バスバ(30A)は、
前記第1突起部(33A)を前記第3バスバ(20A)の前記孔部(28)に挿通させ且つ前記第1挿入孔(17A)に挿入させた状態にて、前記第3バスバ(20A)の前記締結部材(26)を用いて前記第3バスバ(20A)に締結固定される、
電気接続箱(1)。
【0051】
上記[3]の構成の電気接続箱によれば、第1バスバの第1突起部を第3バスバの孔部に挿通させ、且つ、第1突起部をハウジングの第1挿入孔に挿入させた状態にて、第1バスバが第3バスバの締結部材を用いて第3バスバに固定される。これにより、第1バスバの締結固定の際、第1バスバの位置ズレを、第1挿入孔だけでなく、第3バスバの孔部によっても補助的に抑制することができる。
【0052】
[4]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)において、
前記第1突起部(33A)は、
前記第1バスバ(30A)の一部を切り起こした形状を有する、
電気接続箱(1)。
【0053】
上記[4]の構成の電気接続箱によれば、第1突起部は、第1バスバの一部を切り起こした形状を有する。よって、第1突起部を、第1バスバに容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 電気接続箱
10 ハウジング
17A 挿入孔(第1挿入孔)
17B 挿入孔(第2挿入孔)
20A 前側バスバ(第3バスバ)
26 スタッドボルト(締結部材)
28 孔部
30A 上側バスバ(第1バスバ)
30B 上側バスバ(第2バスバ)
32 ボルト孔(第1,第2締結孔)
33A 突起部(第1突起部)
33B 突起部(第2突起部)