(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183186
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】排水装置及び当該排水装置を備えた自動排水システム
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096678
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】506067109
【氏名又は名称】株式会社farmo
(74)【代理人】
【識別番号】100100402
【弁理士】
【氏名又は名称】名越 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】永井 洋志
(57)【要約】
【課題】貯水エリアの管理者の水位調整の労力を軽減できる排水装置を提供する。
【解決手段】貯水エリアの排水桝に設置され貯水エリアの水位を調整する排水装置W1であって、排水桝の排水孔の前方を塞ぐ位置に設置され且つ上下方向に往復移動可能なゲート機構Gと、ゲート機構Gを上下方向に移動させる昇降機構50とを備え、ゲート機構Gは、複数枚の長板G1、G2、G3が並列に且つ上下方向に配置され、隣接する長板同士が連結部材Cで連結され、一番上の長板G1が昇降機構に保持され、ゲート機構Gは、長板G1の位置に応じて、隣接する長板同士が当接した状態や隙間部が形成された状態になり、或いは、一番下の長板G3の下端部が排水桝の排水孔の下端部と略一致している下板部1bの上面に当接した状態や隙間部が形成された状態になることで、排水桝の排水孔に流入する水の流路の上下方向の位置が変位するようになっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田を含む貯水エリアに設けられた排水桝に設置され、該排水桝からの排水を制御して貯水エリアの水位を調整する排水装置であって、
前記排水桝は、底面部と、該底面部の左右両側から上方に立設する一対の側壁部と、該底面部の後端部から上方に立設する後壁部とを備え、該後壁部の下端側には排水孔が形成され、一対の前記側壁部には、板材を差し込んで取り付けるための溝部が形成されており、
前記排水装置は、
前記排水桝の一対の側壁部の溝部にそれぞれ差し込まれて設置された一対の脚部を備える支持部と、
前記排水桝の排水孔に相対向するとともに該排水孔の前方を塞ぐ位置に設置され且つ前記脚部に沿って上下方向に往復移動可能なゲート機構と、
前記ゲート機構を上下方向に移動させ、該ゲート機構を上下方向の任意の位置に配置した状態で保持する昇降機構と、
前記昇降機構の動作を制御する通信制御装置とを有し、
一対の前記脚部の下端部には、長板状の下板部が架け渡され設置され、該下板部の上面の上下方向の位置が、前記排水桝の排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致しており、
前記通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される制御命令を受信し、該制御命令に応じて前記昇降機構の動作を制御するようになっており、
前記ゲート機構は、複数枚の長板が並列に且つ上下方向に配置されているとともに、一番下に配置されている長板が、前記下板部の上面に載置可能に配置され、隣接する前記長板同士が可撓性連結部材で連結されており、上から一番目に配置された前記長板が前記昇降機構に保持されているとともに、複数の前記長板の両端部が一対の前記脚部に摺動自在に支持されており、
前記ゲート機構は、前記昇降機構が保持している上から一番目に配置された前記長板の位置に応じて、隣接する前記長板同士が当接した状態や隙間部が形成された状態になり、或いは、一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接した状態や前記下板部との間で隙間部が形成された状態になることで、前記排水桝の排水孔に流入可能な水の流路の上下方向の位置が変位するようになっていることを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記ゲート機構は、
前記昇降機構に保持されている一番上に配置されている前記長板が、予め設定された最低位の位置に配置されている場合、全ての、隣接する長板同士が当接した状態になるとともに、一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接し、前記排水桝に流入してきた水のうち上から一番目に配置された前記長板の上端部を超える水だけが前記排水孔に流入して排水されるようになり、
前記一番上に配置された前記長板を、前記最低位の位置から所定寸法・上昇させる毎に、複数の前記長板は、上から順番に、自身と隣接する下方に配置されている前記長板と離間してより下方側に、前記排水孔に流入する流路となる隙間部が形成されていき、
一番上に配置された前記長板が、予め設定された最上位の位置に配置されると、全ての隣接する長板同士が離間して隙間部が形成された状態になるとともに、一番下に配置されている前記長板の下端部と、前記排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致している前記下板部の上面との間に、前記排水孔に流入する流路となる隙間部が形成されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記ゲート機構は、
前記昇降機構に保持されている上から一番目に配置された前記長板が、前記最上位の位置から所定寸法・下降した状態になると、一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接して該下板部との間に形成された隙間部が塞がれた状態になり、その状態から、上から一番目に配置された前記長板を所定寸法・下降した状態になる毎に、複数の前記長板は、下から順番に、自身と隣接する上方に配置されている前記長板の上端部と当接して隙間部が塞がれた状態になることを特徴とする請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記支持部は、一対の前記脚部と、一対の前記脚部の上端部同士を連結するとともに、ハウジングを支持する連結部とを有し、
前記ハウジングは、その内部に前記通信制御装置が収容されているとともに、前記昇降機構を保持しており、
前記脚部は、その上端部に、前記連結部と接続される接続片が突設され、この接続片に横幅方向に延びる長孔が形成され、
前記連結部には、前記接続片の長孔に挿入して締結される締結部が設けられ、一対の脚部の横幅方向の寸法を調節して一対の脚部同士の横幅調方向の間隔を可変できるようになっていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の排水装置。
【請求項5】
水田を含む貯水エリアに設けられた排水桝に設置され、該排水桝からの排水を制御して貯水エリアの水位を調整する排水装置であって、
前記排水桝は、底面部と、該底面部の左右両側から上方に立設する一対の側壁部と、該底面部の後端部から上方に立設する後壁部とを備え、該後壁部の下端側には排水孔が形成され、一対の前記側壁部には、板材を差し込んで取り付けるための溝部が形成されており、
前記排水装置は、
前記排水桝の一対の側壁部の溝部にそれぞれ差し込まれて設置された一対の脚部を備える支持部と、
前記排水桝の排水孔に相対向するとともに該排水孔の前方を塞ぐ位置に設置され且つ前記脚部に沿って上下方向に往復移動可能なゲート機構と、
前記ゲート機構を上下方向に移動させ、該ゲート機構を上下方向の任意の位置に配置した状態で保持する昇降機構と、
前記昇降機構の動作を制御する通信制御装置とを有し、
一対の前記脚部の下端部には、長板状の下板部が架け渡され設置され、該下板部の上面の上下方向の位置が、前記排水桝の排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致しており、
前記通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される制御命令を受信し、該制御命令に応じて前記昇降機構の動作を制御するようになっており、
前記ゲート機構は、3枚の長板が並列に且つ上下方向に配置されているとともに、一番下に配置されている長板が、前記下板部の上面に載置可能に配置され、隣接する前記長板同士が連結部材で連結されており、上から一番目に配置された前記長板が前記昇降機構に保持されているとともに、3枚の前記長板の両端部が一対の前記脚部に摺動自在に支持されており、
前記昇降機構に保持されている一番上に配置されている前記長板が、第1位置に配置されている場合、隣接する長板同士が全て当接し、且つ一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接している状態になり、
前記昇降機構により一番上に配置されている前記長板を、前記第1位置から所定寸法・上昇させた第2位置に配置すると、一番上に配置されている前記長板と、中間に配置された前記長板との間にだけ隙間部が形成され、且つ一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接している状態になり、
前記昇降機構により一番上に配置されている前記長板を、前記第2位置から所定寸法・上昇させた第3位置に配置すると、全ての隣接する長板同士の間に隙間部が形成され、且つ一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接している状態になり、
前記昇降機構により一番上に配置されている前記長板を、前記第3位置から所定寸法・上昇させた第4位置に配置すると、全ての隣接する長板同士の間に隙間部が形成され、且つ一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面と離間して隙間部が形成されている状態になることを特徴とする排水装置。
【請求項6】
水田を含む貯水エリアに設けられた排水桝に設置され、該排水桝からの排水を制御して貯水エリアの水位を調整する排水装置と、ネットワークに接続され且つ前記排水装置と通信可能な中継器と、該中継器を介して前記排水装置に対して、前記排水装置の動作を指示する制御命令を送信し、前記排水置に排水桝からの排水を制御させるサーバ装置とを有している自動排水システムであって、
前記排水桝は、底面部と、該底面部の左右両側から上方に立設する一対の側壁部と、該底面部の後端部から上方に立設する後壁部とを備え、該後壁部の下端側には排水孔が形成され、一対の前記側壁部には、板材を差し込んで取り付けるための溝部が形成されており、
前記排水装置は、
前記排水桝の一対の側壁部の溝部にそれぞれ差し込まれて設置された一対の脚部を備える支持部と、
前記排水桝の排水孔に相対向するとともに該排水孔の前方を塞ぐ位置に設置され且つ前記脚部に沿って上下方向に往復移動可能なゲート機構と、
前記ゲート機構を上下方向に移動させ、該ゲート機構を上下方向の任意の位置に配置した状態で保持する昇降機構と、
前記昇降機構の動作を制御する通信制御装置とを有し、
一対の前記脚部の下端部には、長板状の下板部が架け渡され設置され、該下板部の上面の上下方向の位置が、前記排水桝の排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致しており、
前記通信制御装置は、前記サーバ装置から送信される制御命令を受信し、該制御命令に応じて前記昇降機構の動作を制御するようになっており、
前記ゲート機構は、複数枚の長板が並列に且つ上下方向に配置されているとともに、一番下に配置されている長板が、前記下板部の上面に載置可能に配置され、隣接する前記長板同士が可撓性連結部材で連結されており、上から一番目に配置された前記長板が前記昇降機構に保持されているとともに、複数の前記長板の両端部が一対の前記脚部に摺動自在に支持されており、
前記ゲート機構は、前記昇降機構が保持している上から一番目に配置された前記長板の位置に応じて、隣接する前記長板同士が当接した状態や隙間部が形成された状態になり、或いは、一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接した状態や前記下板部との間で隙間部が形成された状態になることで、前記排水桝の排水孔に流入可能な水の流路の上下方向の位置が変位するようになっていることを特徴とする自動排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水装置及び当該排水装置を備えた自動排水システムに関し、例えば、水田、溜池等の貯水エリアの排水桝に設置されて貯水エリアの排水を制御する排水装置及び当該排水装置を備えた自動排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水田の畔近傍に設置された水田用の排水桝の排水孔の前に設けられた溝部に、矩形状の木板(水位調整板)を差し込んで取り付け、水田の水位(貯水量)を管理することが行われている。
【0003】
水田用の排水桝には、種々の形状のものがある。例えば、
図14に示すように、排水桝500は、矩形状の底面部501と、底面部501の左右両側から上方に立設する一対の側壁部505と、底面部501の後端部から上方に立設する後壁部503とを備えており、前端側が解放された平面視この字状に形成されている。
また、後壁部503の下端側には排水孔510が形成されている。また、一対の側壁部505には、水位調整板の両側部を差し込んで取り付けるための「一対の溝部505a」及び「一対の溝部505b」が設けられている。
溝部505aは、一対の側壁部505の前後方向の中央部に形成されており、溝部505bは、一対の側壁部505の前後方向の前端側に形成されている。
なお、図示する例では、2組の溝部505a、505bが設けられているが、既存の排水桝には1組の溝部だけが設けられているものもある。
【0004】
上記の排水桝500を用いて、水田の水位を管理する方法では、複数枚の水位調整板を準備しておき、水田が所望する水位になるように水調整板の数を決めて、排水桝500の溝部505a(或いは505b)に、決めた数の水位調整板を差し込んで設置する。また、この水位を管理する方法では、水位調整板が取り付けられている排水桝500の溝部505a(或いは505b)に、さらに水位調整板を追加して取り付けたり、或いは、水位調整板を取り外したりすることで、天候や稲の生長状況に応じた水位になるように、水田の水位を段階的に調整している。
【0005】
また、特許文献1には、排水桝を用いて、水田の貯水量を調整する水田用貯水量調整装置が開示されている。
この水田用貯水量調整装置は、水田の畔近傍に設置される排水桝を備え、排水桝の排水孔に、排水管の一方端が取り付けられ、排水管の他方端を排水路に連結されている。
また、排水桝は、水田側に配置する前側が開放され、方形状底版の奥側・下端部に排水孔を設けた垂直壁が立設され、底版の両側に一対の側壁が立設されたコ字状に形成されている。また、排水桝は、一対の側壁の対向位置に、土留板差し戸口を設けると共に、土留板差し戸口と垂直壁のほぼ中間位置に貯水量調整板差し戸口を設け、土留板差し戸口には、土壌面とほぼ同じ高さの土留板を垂直に差し込むとともに、土留板の上に営農水位となる高さの営農水位調整板を垂直に差し込み、貯水量調整板差し戸口には、上端高さを稲の生育状態に合わせた任意の高さである貯水水位とほぼ同じ高さに形成し、下部に排水量調整孔を穿設した貯水量調整板を垂直に差し込むように構成されている。
【0006】
特許文献1に記載の水田用貯水量調整装置の構成によれば、通常雨量の場合は、営農水位調整板を越えて貯水量調整板との間の空間部に入った雨水が、貯水量調整板の排水量調整孔から排水孔に取り付けられた排水管を介して排水路へ排水して水田の営農水位を保持する。また、上記の水田用貯水量調整装置の構成によれば、豪雨の場合は、営農水位調整板を越えて空間部に入った雨水は排水量調整孔からの排出量を上回り、空間部の水位が徐々に上昇し、やがて雨水は貯水量調整板の上端高さに設定した貯水水位を超えて越流させて、貯水量調整高さに越流高さを加えた高さの最高貯水水位まで雨水を貯め、水田の稲の冠水、畔の損壊する事態を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来技術の水田用の排水桝を用いた、水田の水位(貯水量)を調整する方法は、水田の管理者(作業者)が実際に水田まで出向いて行き、排水桝の溝部に水位調整板を差し込んで取り付けたり、取り外したりする作業が発生するため、作業者に大きな負担になるという課題を有している。
また、特許文献1に記載の水田用貯水量調整装置は、水田の水位の高さを段階的に調整することまで考慮されていないが、高さの異なる営農水位調整板を用意すれば、営農水位調整板を差し替えることで、水田の水位の高さを段階的に調整することができる。しかし、この場合も、水田の管理者(作業者)が実際に水田まで出向いて作業をする必要があり、管理者(作業者)に大きな負担がかかることになる。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、水田や溜池等の貯水エリアの水の水位を調整する排水装置であって、貯水エリアの管理者の水位調整の労力を軽減できる排水装置を提供することにある。また、本発明は、上記排水装置を備えた自動排水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明は、水田を含む貯水エリアに設けられた排水桝に設置され、該排水桝からの排水を制御して貯水エリアの水位を調整する排水装置であって、前記排水桝は、底面部と、該底面部の左右両側から上方に立設する一対の側壁部と、該底面部の後端部から上方に立設する後壁部とを備え、該後壁部の下端側には排水孔が形成され、一対の前記側壁部には、板材を差し込んで取り付けるための溝部が形成されており、前記排水装置は、前記排水桝の一対の側壁部の溝部にそれぞれ差し込まれて設置された一対の脚部を備える支持部と、前記排水桝の排水孔に相対向するとともに該排水孔の前方を塞ぐ位置に設置され且つ前記脚部に沿って上下方向に往復移動可能なゲート機構と、前記ゲート機構を上下方向に移動させ、該ゲート機構を上下方向の任意の位置に配置した状態で保持する昇降機構と、前記昇降機構の動作を制御する通信制御装置とを有し、一対の前記脚部の下端部には、長板状の下板部が架け渡され設置され、該下板部の上面の上下方向の位置が、前記排水桝の排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致しており、前記通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される制御命令を受信し、該制御命令に応じて前記昇降機構の動作を制御するようになっており、前記ゲート機構は、複数枚の長板が並列に且つ上下方向に配置されているとともに、一番下に配置されている長板が、前記下板部の上面に載置可能に配置され、隣接する前記長板同士が可撓性連結部材で連結されており、上から一番目に配置された前記長板が前記昇降機構に保持されているとともに、複数の前記長板の両端部が一対の前記脚部に摺動自在に支持されており、前記ゲート機構は、前記昇降機構が保持している上から一番目に配置された前記長板の位置に応じて、隣接する前記長板同士が当接した状態や隙間部が形成された状態になり、或いは、一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接した状態や前記下板部との間で隙間部が形成された状態になることで、前記排水桝の排水孔に流入可能な水の流路の上下方向の位置が変位するようになっていることを特徴とする。
【0011】
このように本発明の排水装置は、水田等の貯水エリアに設けられた排水桝に設置され、外部のサーバ装置から送られる制御命令に応じて動作する昇降機構がゲート機構を移動させて、ゲート機構の上下方向の配置を変位させるようになっている。また、本発明の排水装置は、ゲート機構の配置されている位置に応じて、排水桝の排水孔に流入可能な水の流路の上下方向の位置が変位して、その結果、貯水エリアの水位を調整することができるようになっている。したがって、本発明の排水装置によれば、貯水エリアの管理者が、水位を調整するために、実際に貯水エリアまで出向いて行き、排水桝の溝部の水位調整板を差し込んで取り付けたり、取り外したりする必要がなく、管理者の作業労力が軽減される。
また、本発明の排水装置のゲート機構は、複数枚の長板が並列に且つ上下方向に配置されているとともに、一番下に配置されている長板が、下板部の上面に載置可能に配置され、隣接する長板同士が可撓性連結部材で連結されており、上から一番目に配置された長板が前記昇降機構に保持されている。そして、ゲート機構は、昇降機構が保持している上から一番目に配置された前記長板の位置に応じて、隣接する長板同士が当接した状態や隙間部が形成された状態になり、或いは、一番下に配置されている長板の下端部が下板部の上面に当接した状態や下板部との間で隙間部が形成された状態になることで、排水桝の排水孔に流入可能な水の流路の上下方向の位置が変位するようになっている。この構成によれば、排水桝の排水孔に流入可能な水の流路の上下方向の位置を多段階に変位させることができるので、水田等の貯水エリアの水位を、希望する高さに合わせて段階的に調整することができる。
また、本発明の排水装置は、既存の排水桝の一対の側壁部の溝部に一対の脚部を差し込んで設置する構成になっており、コストや労力がかかる配管工事等を行うことなく、簡単に既設の排水桝に設置できる。
【0012】
また、前記ゲート機構は、前記昇降機構に保持されている一番上に配置されている前記長板が、予め設定された最低位の位置に配置されている場合、全ての、隣接する長板同士が当接した状態になるとともに、一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接し、前記排水桝に流入してきた水のうち上から一番目に配置された前記長板の上端部を超える水だけが前記排水孔に流入して排水されるようになり、前記一番上に配置された前記長板を、前記最低位の位置から所定寸法・上昇させる毎に、複数の前記長板は、上から順番に、自身と隣接する下方に配置されている前記長板と離間してより下方側に、前記排水孔に流入する流路となる隙間部が形成されていき、一番上に配置された前記長板が、予め設定された最上位の位置に配置されると、全ての隣接する長板同士が離間して隙間部が形成された状態になるとともに、一番下に配置されている前記長板の下端部と、前記排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致している前記下板部の上面との間に、前記排水孔に流入する流路となる隙間部が形成されるようになっていることが望ましい。
また、前記ゲート機構は、前記昇降機構に保持されている上から一番目に配置された前記長板が、前記最上位の位置から所定寸法・下降した状態になると、一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接して該下板部との間に形成された隙間部が塞がれた状態になり、その状態から、上から一番目に配置された前記長板を所定寸法・下降した状態になる毎に、複数の前記長板は、下から順番に、自身と隣接する上方に配置されている前記長板の上端部と当接して隙間部が塞がれた状態になることが望ましい。
【0013】
本発明の構成によれば、昇降機構に「ゲート機構の一番上の長板」を保持させて、昇降機構にゲート機構を上下方向に移動させるという簡易な構成により、貯水エリアの水位を、複数の高さ寸法の水位に設定することができる。
なお、上記の構成によれば、ゲート機構を構成する長板の枚数の「数」の高さ寸法の水位に調整することができるとともに、一番下に配置されている長板の下端部を、排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致している前記下板部の上面と離間した状態にすることで、貯水エリアの水を排水することができる。
そのため、例えば、本発明の排水装置を水田の排水桝に取り付けて用いた場合、水田の管理者に労力をかけることなく、天候や稲の生長状況に応じて、水田の水位を細かく調整することができるとともに、水田の水を排水させることができる。
【0014】
また、前記支持部は、一対の前記脚部と、一対の前記脚部の上端部同士を連結するとともに、ハウジングを支持する連結部とを有し、前記ハウジングは、その内部に前記通信制御装置が収容されているとともに、前記昇降機構を保持しており、前記脚部は、その上端部に、前記連結部と接続される接続片が突設され、この接続片に横幅方向に延びる長孔が形成され、前記連結部には、前記接続片の長孔に挿入して締結される締結部が設けられ、一対の脚部の横幅方向の寸法を調節して一対の脚部同士の横幅調方向の間隔を可変できるようになっていることが望ましい。
水田等の排水に利用されている排水桝の横幅は、規格等で統一されておらず、様々である。本発明の排水装置は、一対の脚部の横幅方向の寸法を調節して一対の脚部同士の横幅調方向の間隔を可変できるようになっているため、水田等に既に設置されている様々な横幅寸法の排水桝に設置することができる。
【0015】
また、本発明は、水田を含む貯水エリアに設けられた排水桝に設置され、該排水桝からの排水を制御して貯水エリアの水位を調整する排水装置であって、前記排水桝は、底面部と、該底面部の左右両側から上方に立設する一対の側壁部と、該底面部の後端部から上方に立設する後壁部とを備え、該後壁部の下端側には排水孔が形成され、一対の前記側壁部には、板材を差し込んで取り付けるための溝部が形成されており、前記排水装置は、前記排水桝の一対の側壁部の溝部にそれぞれ差し込まれて設置された一対の脚部を備える支持部と、前記排水桝の排水孔に相対向するとともに該排水孔の前方を塞ぐ位置に設置され且つ前記脚部に沿って上下方向に往復移動可能なゲート機構と、前記ゲート機構を上下方向に移動させ、該ゲート機構を上下方向の任意の位置に配置した状態で保持する昇降機構と、前記昇降機構の動作を制御する通信制御装置とを有し、一対の前記脚部の下端部には、長板状の下板部が架け渡され設置され、該下板部の上面の上下方向の位置が、前記排水桝の排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致しており、前記通信制御装置は、外部のサーバ装置から送信される制御命令を受信し、該制御命令に応じて前記昇降機構の動作を制御するようになっており、前記ゲート機構は、3枚の長板が並列に且つ上下方向に配置されているとともに、一番下に配置されている長板が、前記下板部の上面に載置可能に配置され、隣接する前記長板同士が連結部材で連結されており、上から一番目に配置された前記長板が前記昇降機構に保持されているとともに、3枚の前記長板の両端部が一対の前記脚部に摺動自在に支持されており、前記昇降機構に保持されている一番上に配置されている前記長板が、第1位置に配置されている場合、隣接する長板同士が全て当接し、且つ一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接している状態になり、前記昇降機構により一番上に配置されている前記長板を、前記第1位置から所定寸法・上昇させた第2位置に配置すると、一番上に配置されている前記長板と、中間に配置された前記長板との間にだけ隙間部が形成され、且つ一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接している状態になり、前記昇降機構により一番上に配置されている前記長板を、前記第2位置から所定寸法・上昇させた第3位置に配置すると、全ての隣接する長板同士の間に隙間部が形成され、且つ一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接している状態になり、前記昇降機構により一番上に配置されている前記長板を、前記第3位置から所定寸法・上昇させた第4位置に配置すると、全ての隣接する長板同士の間に隙間部が形成され、且つ一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面と離間して隙間部が形成されている状態になることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、水田を含む貯水エリアに設けられた排水桝に設置され、該排水桝からの排水を制御して貯水エリアの水位を調整する排水装置と、ネットワークに接続され且つ前記排水装置と通信可能な中継器と、該中継器を介して前記排水装置に対して、前記排水装置の動作を指示する制御命令を送信し、前記排水置に排水桝からの排水を制御させるサーバ装置とを有している自動排水システムであって、前記排水桝は、底面部と、該底面部の左右両側から上方に立設する一対の側壁部と、該底面部の後端部から上方に立設する後壁部とを備え、該後壁部の下端側には排水孔が形成され、一対の前記側壁部には、板材を差し込んで取り付けるための溝部が形成されており、前記排水装置は、前記排水桝の一対の側壁部の溝部にそれぞれ差し込まれて設置された一対の脚部を備える支持部と、前記排水桝の排水孔に相対向するとともに該排水孔の前方を塞ぐ位置に設置され且つ前記脚部に沿って上下方向に往復移動可能なゲート機構と、前記ゲート機構を上下方向に移動させ、該ゲート機構を上下方向の任意の位置に配置した状態で保持する昇降機構と、前記昇降機構の動作を制御する通信制御装置とを有し、一対の前記脚部の下端部には、長板状の下板部が架け渡され設置され、該下板部の上面の上下方向の位置が、前記排水桝の排水孔の下端部の上下方向の位置と略一致しており、前記通信制御装置は、前記サーバ装置から送信される制御命令を受信し、該制御命令に応じて前記昇降機構の動作を制御するようになっており、前記ゲート機構は、複数枚の長板が並列に且つ上下方向に配置されているとともに、一番下に配置されている長板が、前記下板部の上面に載置可能に配置され、隣接する前記長板同士が可撓性連結部材で連結されており、上から一番目に配置された前記長板が前記昇降機構に保持されているとともに、複数の前記長板の両端部が一対の前記脚部に摺動自在に支持されており、前記ゲート機構は、前記昇降機構が保持している上から一番目に配置された前記長板の位置に応じて、隣接する前記長板同士が当接した状態や隙間部が形成された状態になり、或いは、一番下に配置されている前記長板の下端部が前記下板部の上面に当接した状態や前記下板部との間で隙間部が形成された状態になることで、前記排水桝の排水孔に流入可能な水の流路の上下方向の位置が変位するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水田や溜池等の貯水エリアの水の水位を調整する排水装置であって、貯水エリアの管理者の水位調整の労力を軽減できる排水装置を提供することができる。また、本発明によれば、上記排水装置を備えた自動排水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態の排水装置を備えた自動排水システムの全体構成を示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態の排水装置を正面から見た模式図である。
【
図3】本発明の実施形態の排水装置を側面から見た模式図である。
【
図4】本発明の実施形態の排水装置の脚部と、脚部に支持されているゲート機構と、ゲート機構を保持する昇降機構を上方から見た模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の排水装置の昇降機構の構成を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の実施形態の排水装置の昇降機構を構成する回転機構及び往復移動機構の構成を説明するための模式図である。
【
図7】本発明の実施形態の排水装置のゲート機構の昇降動作を説明するための模式図であり、(a)が水田の水位を高状態にするために3つの長板をすべて降ろしている状態を示している模式図であり、(b)が水田の水位を中状態にするために3つの長板のうち一番上の長板だけ上昇させている状態を示している模式図である。
【
図8】本発明の実施形態の排水装置のゲート機構の昇降動作を説明するための模式図であり、(a)が水田の水位を低状態にするために3つの長板のうち一番上の長板と中間の長板とを上昇させた状態を示している模式図であり、(b)が水田の水をすべて排水した状態にするために3つの長板を全て上昇させている状態を示している模式図である。
【
図9】本発明の実施形態の排水装置のハウジングに収容されている装置構成を説明するための模式図である。
【
図10】本発明の実施形態の自動排水システムを構成するサーバ装置の機能構成を説明するための模式図である。
【
図11】本発明の実施形態の自動排水システムを構成するサーバ装置に設けられた排水装置データベースのデータ構成を示した模式図である。
【
図12】本発明の実施形態の変形例の排水装置を示した模式図である。
【
図13】本発明の実施形態の変形例の排水装置のゲート機構の昇降動作を説明するための模式図であり、(a)が水田の水位を高状態にするために3つの長板をすべて降ろしている状態を示している模式図であり、(b)が水田の水位を中状態にするために3つの長板のうち一番上の長板だけ上昇させている状態を示している模式図であり、(c)が水田の水位を低状態にするために3つの長板のうち一番上の長板と中間の長板とを上昇させた状態を示している模式図であり、(d)が水田の水をすべて排水した状態にするために3つの長板を全て上昇させている状態を示している模式図である。
【
図14】従来技術の水田用の排水桝を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の排水装置を備えた自動排水システムについて図面を用いて説明する。
【0020】
先ず、本発明の実施形態の排水装置を備えた自動排水システムの全体構成について、
図1、2を用いて説明する。
ここで、
図1は、本実施形態の排水装置を備えた自動排水システムの全体構成を示した模式図である。
図2は、本実施形態の排水装置を正面から見た模式図である。
なお、以下の説明では、本実施形態の排水装置W1が、上述した
図14に示す水田用の排水桝500に設置された場合を例にする。
【0021】
《自動排水システムの概略》
図1に示すように、本実施形態の自動排水システムは、水田(貯水エリア)に設けられた排水桝500に設置され、排水桝500からの排水を制御して水田の水位を調整する排水装置W1と、インターネット等のネットワークNWに接続され且つ排水装置W1と通信可能な中継器40と、中継器40を介して排水装置W1に対して、排水装置W1の動作を制御する制御信号(制御命令)を送信し、排水装置W1に水田に貯水されている水の排水を制御させるサーバ装置(以下、「サーバ」という)100とを有している。
【0022】
また、排水桝500は、水田の畔近傍に設置されている。また、排水桝500は、上述した既存の構成のものであり、底面部501と、底面部501の左右両側から上方に立設する一対の側壁部505と、底面部501の後端部から上方に立設する後壁部503とを備えている。また、後壁部503の下端側には排水孔510が形成され、一対の側壁部505には、板材を差し込んで取り付けるための溝部(「505a、505a」、「505b、505b」)が形成されている。また、水田に貯水されている水は、排水桝500の排水孔510を介して排水されるようになっている。なお、排水孔510には、例えば、排水管(図示せず)が接続されている。
なお、排水桝500は、水田に設置する際に、底面部501の上に土が盛られてグランド面GLが形成され、そのグラント面GLと、排水孔510の下端部の上下方向の位置とが略一致するようにされている(
図2参照)。
【0023】
また、排水装置W1は、
図2に示すように、排水桝500の溝部505a(或いは505b)に差し込まれて設置される一対の脚部1aを備えた支持部1と、排水桝500の排水孔510に相対向するとともに排水孔510の前方を塞ぐ位置に設置され且つ脚部1aに沿って上下方向(図中のY方向)に往復移動可能なゲート機構Gと、支持部1に支持されているハウジング2と、ハウジング2の内部に収容されている通信制御装置20(
図9参照)と、ハウジング2に保持されている昇降機構50とを有している。
また、通信制御装置20は、サーバ100から送信される制御命令を受信し、制御命令に応じて昇降機構50の動作を制御する。
昇降機構50は、通信制御装置20に制御されて、ゲート機構Gを上下方向に移動させて、ゲート機構Gを上下方向の任意の位置に配置した状態で保持する。
また、支持部1を構成する一対の脚部1aは、その下端部に、長板状の下板部1bが架け渡されて設置されている。なお、下板部1bは、脚部1aに対して直角方向に延設されている。
また、下板部1bは、その上面(上面の上下方向の位置)が、排水桝500の底面部501の上に土が盛られて形成されたグランド面GLと略一致するように、土に埋設して設置されている。すなわち、下板部1bは、その上面の上下方向の位置が、排水桝500の排水孔510の下端部の上下方向の位置と略一致している。
【0024】
ゲート機構Gは、3枚の矩形状の長板G1、G2、G3が並列に且つ上下方向に配置され、一番下に配置されている長板G3が、下板部1bの上面に載置可能に配置され、さらに、隣接する長板同士が連結部材C(C1、C2)で連結されている。
また、ゲート機構Gは、上から一番目に配置された長板G1が昇降機構50に保持されている。また、3枚の矩形状の長板G1、G2、G3は、その両端部が、脚部1aに擦動自在に支持されており、昇降機構50の昇降動作に応じて、脚部1aに沿って上下方向に往復移動ができるようになっている。そして、隣接する長板同士が、上下方向に配置される位置に応じて、連結部材C(C1、C2)で連結されている状態で、当接した状態になったり離間した状態になったりできるようになっている。
また、連結部材C(C1、C2)は、例えば、ワイヤー、チェーン、ロープ等の可撓性部材(可撓性連結部材)により構成されている。なお、本実施形態では、連結部材C(C1、C2)にワイヤーを用いている。
【0025】
また、支持部1は、排水桝500に設置する際に、脚部1aの下端部側が、排水桝500の底面部501の上に盛られている土(土面)の下に埋め込まれると共に、下板部1bが底面部501の上に盛られている土面の下に埋め込まれる。
このように、支持部1は、その下端側が、排水桝500の底面部501の上に盛られた土面の下に埋め込んで設置されることで、長板G1、G2、G3と、設置面が平行になるように調節することができる。また、長板G3が載置される下板部1bも排水桝500の底面部501の上に盛られた土面の下に埋め込まれているため、泥がパテの役割を果たし、水漏れを防止できるという効果も得られる。
【0026】
そして、ゲート機構Gは、昇降機構50の動作により上下方向に移動し、上から一番目に配置された長板G1の位置(上下方向の位置)に応じて、隣接する長板同士が当接した状態や隙間部が形成された状態になったり、或いは、一番下に配置されている長板G3の下端部が、排水桝500の排水孔510の下端部の高さ位置に配置されている下板部1bの上面に当接した状態や隙間部が形成された状態になったりすることで、排水桝500の排水孔510に流入可能な水の流路の上下方向の位置が変位するようになっている(
図7、8参照)。
【0027】
また、中継器40は、排水装置W1と無線により通信可能に構成されている共に、ネットワークNWを介してサーバ100と通信可能に構成されている。
そして、中継器40は、サーバ100から送られてくる制御命令を受信すると、排水装置W1に対して、受信した制御命令を送信する。
なお、中継器40は、周知技術のものを用いるため詳細な説明を省略する。
【0028】
また、サーバ100は、ネットワークNW及び中継器40を介して、排水装置W1と通信可能の構成されている。また、サーバ100は、ネットワークNWを介して、水田を管理しているユーザのユーザ端末UTと通信可能に構成されている。
なお、ユーザ端末UTは、例えば、スマートフォンやパソコン等の情報処理装置により構成される。
【0029】
サーバ100は、排水装置W1が取り付けられた排水桝500が設置されている水田を管理しているユーザ(稲作しているユーザ)のユーザ端末UTに対して、水田の水位調整の要求を受け付けるWebサイトを提供する。このWebサイトでは、対応する水田の排水桝500に設置された排水装置W1のゲート機構Gの状態(排水する水の流路の上下方向の位置)を示す「ゲート機構状態」が提示されている。
なお、本実施形態では、「ゲート機構状態」が、水田の水位の高さ寸法を「高状態」に維持するための「高(
図7(a)の状態)」と、水田の水位の高さ寸法を「中状態」に維持するための「中(
図7(b)の状態)」と、水田の水位の高さ寸法を「低状態」に維持するための「低(
図8(a)の状態)」と、水田の水を「排水状態」にするための「排水(
図8(b)の状態)」の4種類である場合を例にしている(
図7、8参照)。
【0030】
そして、ユーザは、ユーザ端末UTを操作して、サーバ100が提供するWebサイトにアクセスして、Webサイト上で対応する排水装置W1のゲート機構Gの状態を確認し、水田の水位調整のためにゲート機構Gの状態を変更する必要がある場合には、サーバ100に、「ゲート機構設定要求」を送信する。
この「ゲート機構設定要求」には、排水装置W1を特定する装置IDと、ユーザが所望する「ゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれかを示す情報)」とが含まれる。
【0031】
また、サーバ100は、ユーザ端末UTから送られてくる、「ゲート機構設定要求」を受け付けると、受け付けた「ゲート機構設定要求」に対応する「制御命令」を生成する。また、サーバ100は、中継器40を介して、排水装置W1に対して、受け付けた「ゲート機構設定要求」に対応する「制御命令」を送信する。
【0032】
排水装置W1は、中継器40を介して、サーバ100が送信した「制御命令」を受信すると、後述する昇降機構50のモータ51を駆動させて、その「制御命令」に応じて、ゲート機構Gを上下方向に移動させて、「制御命令」に対応する位置にゲート機構Gを配置した状態で維持する。
【0033】
このように、本実施形態の自動排水システムは、ユーザが水田まで足を運ばなくても、ユーザ端末UTを操作することで、水田の水を排水する排水装置W1のゲート機構Gの状態(排水する水の流路の上下方向の位置)を調整できるため、ユーザが行う水田の水位調整作業の労力が軽減される。
【0034】
《排水装置W1の構成》
次に、本実施形態の自動排水システムを構成する排水装置W1の具体的な構成について、上述した
図1及び2と、
図3~9を参照しながら説明する。
【0035】
なお、
図3は、本実施形態の排水装置を側面から見た模式図である。
図4は、本実施形態の排水装置の脚部と、脚部に支持されているゲート機構と、ゲート機構を保持する昇降機構を上方から見た模式図である。
図5は、本実施形態の排水装置の昇降機構の構成を説明するための模式図である。
図6は、本実施形態の排水装置の昇降機構を構成する回転機構及び往復移動機構の構成を説明するための模式図である。
図7は、本実施形態の排水装置のゲート機構の昇降動作を説明するための模式図であり、(a)が水田の水位を高状態にするために3つの長板をすべて降ろしている状態を示している模式図であり、(b)が水田の水位を中状態にするために3つの長板のうち一番上の長板だけ上昇させている状態を示している模式図である。
図8は、本実施形態の排水装置のゲート機構の昇降動作を説明するための模式図であり、(a)が水田の水位を低状態にするために3つの長板のうち一番上の長板と中間の長板とを上昇させた状態を示している模式図であり、(b)が水田の水をすべて排水した状態にするために3つの長板を全て上昇させている状態を示している模式図である。
図9は、本実施形態の排水装置のハウジングに収容されている装置構成を説明するための模式図である。
【0036】
図2~4、9に示すように、本実施形態の排水装置W1は、水田に設置されている排水桝500に設置される一対の脚部1aを備えた支持部1と、排水桝500の排水孔510に相対向し且つその前方を塞ぐ位置に設置されたゲート機構Gと、ゲート機構Gを上下方向に移動させ、ゲート機構Gを上下方向の任意の位置に配置した状態で保持する昇降機構50と、昇降機構50の動作を制御する通信制御装置20と、電源部30とを有している。
また、排水装置W1は、支持部1の上方に取り付けられて支持されているハウジング2を備えており、ハウジング2の内部に「通信制御装置20、電源部30、昇降機構50」が収容されている(
図8参照)。なお、電源部30は、通信制御装置20及び昇降機構50に電力を供給している。
また、ハウジング2の上面には、通信制御装置20に電気的に接続されているアンテナATが取り付けられている。
【0037】
《ハウジング2》
上記のハウジング2は、中空箱状の筐体部2aと、筐体部2aの下面から略垂直・下方に延設されている両端が貫通している中空筒状の筒体部2bとを有している。筐体部2aは、下面部に貫通孔(図示せず)が形成され、この貫通孔の外周部の位置に、筒体部2bの上端部が接続・固定され、下面部の貫通孔を介して筐体部2aの内部と、筒体部2bの内部が連通した状態になっている。
【0038】
《支持部1》
支持部1は、
図2に示すように、排水桝500の側壁部505に設けられた溝部505aに差し込まれて設置される一対の脚部1aと、一対の脚部1aの下端部側に、かけ渡されて設置されている長板状の下板部1bと、一対の脚部1aの上端部同士を連結し、且つ、一対の脚部1a同士の横幅方向(
図2に示すX方向)の間隔(x2)を可変自在に保持している連結部1dとを有している。
また、一対の脚部1aの一方面の下端部には、それぞれ、矩形板状のストッパ1eが取り付けられている。このストッパ1eは、下板部1bと同じ高さ寸法になっており、下降してきたゲート機構Gの長板G3に取り付けられた押さえバー3に当接するようになっている(押さえバー3については後述する)。
【0039】
脚部1aは、
図3、4に示すように、相対向して配置された2枚の板材1a1と、2枚の板材1a1の一端部(外側端部)に挟持されたスペーサ(板材)1a2(
図4参照)とを有しており、2枚の板材1a1の間に空隙部が形成されている。この空隙部に、ゲート機構G3を構成する長板G1、G2、G3の端部側が擦動自在に挿入され挟持されており、長板G1、G2、G3が、一対の脚部1aに沿って上下方向に移動できるようになっている。
また、2枚の板材1a1の間に空隙部には、長板状の下板部1bの端部側が挿入され挟持されている。具体的には、下板部1bが、横幅方向(X方向)に擦動自在な状態で、一対の脚部1aの下端部に挟持されている。なお、下板部1bの下端と、脚部1aの下端とが一致している。
【0040】
なお、脚部1aは、排水桝500の溝部505a(溝部505b)に差し込まれて設置できる厚さ寸法に形成されており、その上端部に、連結部1dと接続される接続片1c(
図2参照)が突設されている。この接続片1cには、横幅方向(
図2に示すX方向)に延びる長孔1c1が形成されている。
【0041】
連結部1dは、横方向に延びる水平部1d1と、水平部1d1の両端から略直角・下方に延びる一対の垂直部1d2とを備えた略コの字状に形成されている(
図2参照)。
また、水平部1d1の中心部には貫通孔(図示せず)が形成されており、この貫通孔に、ハウジング2の筒体部2bの下端部側が挿嵌されて固定されている。このように、ハウジング2は、筒体部2bの下端側が、支持部1を構成する連結部1dの水平部1d1の略中央部の貫通孔に挿嵌されることにより、支持部1の上方に取り付けられて保持されている。
【0042】
また、垂直部1d2には、脚部1aの接続片1cの長孔1c1に挿入して固定される締結部(ボルト及びナットで形成された締結部)1d3が設けられている。
そして、一対の脚部1aの上端に設けられている接続片1cの長孔1c1と、連結部1dに設けられ且つ接続片1cの長孔1c1に挿入して固定される締結部(ボルト及びナットで形成された)1d3とが、一対の脚部1aの横幅方向の寸法を調節する横幅調節機構になっている。
このように横幅調節機構を備えた支持部1の構成によれば、排水装置W1の管理者は、締結部1d3を緩めることで、長孔1c1に沿って、一対の脚部1aを横幅方向にスライドさせて一対の脚部1aの間隔(x2)を調節することができる。そして、排水装置W1の管理者は、一対の脚部1aの間隔(x2)を、所望の横幅寸法に調節した後、締結部1d3を締めて固定することで、様々な横幅寸法の排水桝500に取り付けることが可能になる。
【0043】
《昇降機構》
昇降機構50は、
図5に示すように、その下端部でゲート機構Gの上端部を保持しており、通信制御装置20に制御されて、ゲート機構Gを上下方向の任意位置(予め定めたいくつかの位置)に移動させて、ゲート機構Gの状態(排水する水の流路の上下方向の位置)を調整する。
なお、本実施形態では、昇降機構50が、ゲート機構Gを上下方向に移動させて、4つの位置(
図7(a)に示す「高」、
図7(b)に示す「中」、
図8(a)に示す「低」、
図8(b)に示す「排水」)にゲート機構Gを変位させるようになっている。
【0044】
具体的には、昇降機構50は、モータ(回転機構)51と、モータ51の回転動作を直線動作に変換して上下方向に往復移動する往復移動機構52と、往復移動機構52の先端部(下端部)に取り付けられている把持部53とを備えており、把持部53がゲート機構Gの上端部の長板G1を保持している。
【0045】
また、モータ(回転機構)51は、例えば、DCサーボモータにより構成されている。また、モータ51は、ハウジング2の内部に収容設置されており、電源部30から電力が供給されると共に、通信制御装置20に制御されて回転動作を行うようになっている。
また、モータ51は、筐体部2に形成されている開口にモータ51の回転軸51aが位置するように位置決めされて設置されている。
【0046】
また、往復移動機構52は、
図5、6に示すように、モータ51の回転軸51aに取り付けられた略ドーナツ状のカップリング部材52aと、モータ51の回転軸51aにカップリング部材52aを介して接続固定された回転シャフト52bと、回転シャフト52bの下端部の筒内に内嵌・固定されたナット52cと、ナット52cに螺合された昇降シャフト52dとを備えている。なお、回転シャフト52bは、その上端部の筒内に、上記のカップリング部材52aが内嵌・固定されている。
【0047】
上記の回転シャフト52bは、両端が貫通した中空円筒状に形成されている。
また、回転シャフト52bは、ハウジング2の筒体部2bの筒内に回転自在に収容されており、モータ51の回転軸51aの回転にともない回転する。また、回転シャフト52bがモータ51の回転にともない回転すると、回転シャフト52bの下端に固定されているナット52cが回転シャフト52bと共に回転するようになっている。
【0048】
また、昇降シャフト52dは、その上端部側にナット52cに螺合するネジ溝が形成された円柱棒状に形成されている。或いは、昇降シャフト52dは、長手方向の全域にナット52cに螺合するネジ溝が形成された長ネジ(寸切りボルト)で形成されている。
そして、昇降シャフト52dは、その上端部側が回転シャフト52bの下端部の筒内に内嵌・固定されているナット52cに螺合しており、その上端部側が回転シャフト52bの筒内に配置されている。
また、昇降シャフト52dは、その下端部側が、回転シャフト52b及び回転シャフト52bを収容しているハウジング2の筒体部2bの下端部から突出している。また、昇降シャフト52dは、その下端部に、ゲート機構Gの上端部の長板G1を保持している把持部53が取り付けられている。
【0049】
上記のように構成された昇降機構50は、モータ51を駆動させて、モータ51の回転軸51aを第1方向に回転させると、モータ51の回転軸51aと共に、回転シャフト52bが第1の方向に回転する。また、回転シャフト52bが第1方向に回転すると、回転シャフト52bの下端のナット52cも第1方向に回転し、ナット52cに螺合している昇降シャフト52dが上降する(昇降シャフト52dが回転シャフト52bの筒内に引き込まれていく)。これにより、昇降シャフト52dの下端部に取り付けられた把持部53に保持させているゲート機構Gが上昇していく。
【0050】
また、昇降機構50は、モータ51を駆動させて、モータ51の回転軸51aを第2方向(第1方向の反対回転の方向)に回転させると、モータ51の回転軸51aと共に、回転シャフト52bが第2方向に回転する。また、回転シャフト52bが第2方向に回転すると、回転シャフト52bの下端のナット52cも第2方向に回転し、ナット52cに螺合している昇降シャフト52dが下方に向けて移動する(昇降シャフト52dが回転シャフト52bの下端から押し出されていく)。これにより、昇降シャフト52dの下端部に取り付けられたゲート機構Gが下降していく。
【0051】
なお、
図5、6に示す昇降機構50は、あくまでも一例に過ぎない。往復移動機構52は、「ネジとナット」の構成ではなく、ボールネジを用いて構成するようにしても良いし、周知の電動シリンダー(電動アクチュエータ)を用いる構成であってもよい。
【0052】
《ゲート機構》
また、ゲート機構Gは、上述したように、3枚の矩形状の長板G1、G2、G3が並列に且つ上下方向に配置され、一番下に配置されている長板G3が、支持部1の下端に設けられた下板部1bの上に載置可能に配置され、且つ隣接する長板同士がワイヤーにより構成されている連結部材C(C1、C2)で連結されている。
また、ゲート機構Gの上から一番目に配置された長板G1は、その上端部が、昇降機構50を構成する昇降シャフト52dの下端部に設けられた把持部53に保持されている。
また、ゲート機構Gを構成する長板G1、G2、G3は、その両端部が、脚部1aに擦動自在に支持されており、昇降機構50の昇降動作に応じて、脚部1に沿って上下方向に往復移動ができるようになっている。
【0053】
なお、上から一番目に配置された長板G1は、上から二番目に配置された中間の長板G2と、2本の連結部材C1(C)で連結されている。2本の連結部材C1(C)の一方は、上端部が長板G1の左側中央部に固定され、他端部が長板G2の左側中央部に固定されている。また、2本の連結部材C1(C)の他方は、上端部が長板G1の右側中央部に固定され、他端部が長板G2の右側中央部に固定されている。
また、上から二番目に配置された中間の長板G2は、一番下に配置された長板G3と、2本の連結部材C2(C)で連結されている。2本の連結部材C2(C)の一方は、上端部が長板G2の左側中央部に固定され、他端部が長板G3の左側中央部に固定されている。また、2本の連結部材C2(C)の他方は、上端部が長板G2の右側中央部に固定され、他端部が長板G3の右側中央部に固定されている。
【0054】
また、一番下に配置されている長板G3には押さえバー3が取り付けられている。
具体的には、
図4に示すように、押さえバー3は、長板G3の一方面の下端部に当接して配置させた板状のスペーサ3bに重ねられた状態で、ネジ等の固定手段3cにより、スペーサ3bとともに、長板G3の一方面に取り付けられている。
また、押さえバー3は、横方向(X方向)に長尺な長方形をしており、その下端部が、長板G3の下端部と面一になるように取り付けられている。また、押さえバー3は、横幅方向(X方向)の寸法が、1対の脚部1aの内側面同士の間隔(x1)よりも長く、1対の脚部1aの外側面同士の間隔(x2)より短くなるように設計されている(
図2参照)。
【0055】
そして、ゲート機構Gが下降して、ゲート機構Gの一番下に配置されている長板G3が支持部1の下板部1bの上面に当接する位置までくると、長板G3に固定されている押さえバー3が、脚部1aの下端部のストッパ1eと衝突する。このとき、昇降機構50のモータ(回転機構)51に負荷がかかり、モータ51を駆動させている電流値が上昇する。
本実施形態では、長板G3に固定されている押さえバー3が、脚部1aの下端部のストッパ1eと衝突することによる、モータ51を駆動させる電流値の上昇をトリガとして(例えば、電流値が所定値(例えば、「1.2A」)を超えると)、通信制御装置20が昇降機構50の下降動作を止めるように設定されている。
【0056】
《ゲート機構の変位》
次に、ゲート機構Gを上下方向に移動させた際のゲート機構の変位について
図7、8を用いて説明する。
【0057】
図7(a)に示すように、ゲート機構Gは、昇降機構50に保持されている一番上に配置されている長板G1が、予め設定された最低位の位置(第1位置)に配置されている場合、全ての、隣接する長板同士が当接した状態になるとともに、一番下に配置されている長板G3の下端部が支持部1の下端に設けられた下板部1bの上面に当接した状態になるように設計されている。このとき、長板G3に固定されている押さえバー3は、脚部1aの下端部のストッパ1eに当接している状態になっている。
なお、上述したように、支持部1の下端に設けられた下板部1bは、その上面が、排水桝500の排水孔510の下端部と略一致するグランド面GL(排水桝500の底面部501に土が盛られて形成されたグランド面GL)と同じ高さになるように設置されている。
そのため、排水桝500の排水孔510の前方側が、グランド面GLと同じ高さの下板部1bの上面に載置され積み重ねられた「3枚の長板G1、G2、G3」で封鎖された状態になる。
【0058】
したがって、昇降機構50に保持されている一番上に配置されている長板G1が、最低位の位置(第1位置)に配置されている場合、水田から排水桝500に流入してきた水のうち一番上に配置された長板G1の上端部を超える水だけが排水孔510に流入して排水され、一番上に配置された長板G1の上端部よりも低い水は、長板G1、G2、G3により塞がれ、水田の水位が「3枚の長板G1、G2、G3を重ねた高さ寸法」の状態(高の状態)で維持される。すなわち、一番上に配置された長板G1の上端部より上が、排水桝500の排水孔510に流入可能な水の流路となり、3枚の長板G1、G2、G3を重ねた高さ寸法に、水田の水位を制御できる。
【0059】
また、一番上に配置されている長板G1が「第1位置」に配置されている状態(
図7(a)に示す状態において)、昇降機構50によりゲート機構Gを「第1位置」から所定寸法・上昇させると、一番上に配置されている長板G1だけが所定寸法上昇し、長板G1の下端部と、中間に配置された長板G2の上端部とが離間し、
図7(b)に示す「第2位置」に配置される。なお、長板G1と長板G2は、連結部材C1で接続されている。
【0060】
具体的には、
図7(b)に示す状態の場合、一番上に配置されている長板G1と、中間に配置された長板G2との間にだけ隙間部(d1)が形成され、且つ一番下に配置されている長板G3の下端部が支持部1の下端に設けられた下板部1bの上面に当接した状態になる。このとき、長板G3に固定されている押さえバー3は、脚部1aの下端部のストッパ1eに当接している状態になっている。
すなわち、排水桝500の排水孔510の前方側が、グランド面GLと同じ高さの下板部1の上面に載置され積み重ねられた「2枚の長板G2、G3」で封鎖された状態になり、長板G2の上端部と、長板G1の下端部との間に流路となる隙間部(d1)が形成される。
これにより、水田から排水桝500に流入してきた水は、一番上に配置されている長板G1と、中間に配置された長板G2との間の隙間部(d1)から排水孔510に流入して排水され、長板G1と長板G2との間の隙間部(d1)よりも低い水は、長板G2、G3に塞がれる。その結果、水田の水位が「2枚の長板G2、G3を重ねた高さ寸法」の状態(中の状態)で維持される。すなわち、2枚の長板G2、G3を重ねた高さ寸法に、水田の水位を制御できる。
【0061】
また、一番上に配置されている長板G1が「第2位置」に配置されている状態(
図7(b)に示す状態において)、昇降機構50によりゲート機構Gを第2位置から所定寸法・上昇させると、一番上に配置されている長板G1が所定寸法上昇するとともに、長板G1に連結部材C1で接続されている長板G2が、連結部材C1を介して長板G1に引っ張られて、所定寸法上昇して、
図8(a)に示す「第3位置」に配置される。
【0062】
図8(a)に示す状態の場合、全ての隣接する長板同士の間に隙間部(d1、d2)が形成され、且つ一番下に配置されている長板G3の下端部が支持部1の下端に設けられた下板部1bの上面に当接した状態になる。このとき、長板G3に固定されている押さえバー3は、脚部1aの下端部のストッパ1eに当接している状態になっている。
すなわち、排水桝500の排水孔510の前方側が、グランド面GLと同じ高さの下板部1の上面に載置され積み重ねられた「1枚の長板G3」で封鎖された状態になり、長板G3の上端部と、長板G2の下端部との間に流路となる隙間部(d2)が形成される。なお、長板G2の上端部と、長板G1の下端部との間にも流路となる隙間部(d1)が形成されている。
これにより、水田から排水桝500に流入してきた水は、一番下に配置された長板G3を超える水が排水孔510に流入して排水されるようになり、長板G3の上端部よりも低い水は、長板G3により塞がれ、水田の水位が「低」の状態で維持されるようになる。すなわち、1枚の長板G3の高さ寸法に、水田の水位を制御できる。
【0063】
また、一番上に配置されている長板G1が「第3位置」に配置されている状態(
図8(a)に示す状態において)、昇降機構50によりゲート機構Gを第3位置から所定寸法・上昇させると、一番上に配置されている長板G1が所定寸法上昇するとともに、長板G1に連結部材C1で接続されている長板G2が連結部材C1を介して長板G1に引っ張られて所定寸法上昇し、且つ、長板G2に連結部材C2で接続されている長板G3が長板G2に引っ張られて所定寸法上昇して、
図8(b)に示す「第4位置」に配置される。
【0064】
図8(b)に示す状態の場合、全ての隣接する長板同士の間に隙間部(d1、d2)が形成され、且つ一番下に配置されている長板G3の下端部が支持部1の下端に設けられた下板部1bの上面と離間して隙間部(d3)が形成された状態になる。このとき、長板G3に固定されている押さえバー3は、脚部1aの下端部のストッパ1eから離間した状態になっている。
すなわち、排水桝500の排水孔510の前方側に配置されているゲート機構Gの下端部の長板G3が、下板部1bの上面の位置からから上昇して、排水孔510の前方を開放する隙間部(d3)が形成されるため、水田に貯留されている水を排水させることができる。すなわち、一番下に配置された長板G3の下端部と、グランド面GLと同じ高さの下板部1bの上面との間の隙間部(d3)が、排水孔510に流入可能な水の流路となる。
なお、本実施形態においては、「第4位置」が予め設定された最高位の位置になる。
【0065】
なお、本実施形態では、
図7(b)の「第2位置」、
図8(a)の「第3位置」、
図8(b)の「第4位置」の状態から、ゲート機構Gの配置を変位させる場合、通信制御装置20は、ゲート機構Gを下降させて、一度、
図7(a)に示す「第1位置」に戻し、その後、所望の位置にゲート機構Gを配置させるように設計されている。
【0066】
《通信制御装置20》
次に、通信制御装置20の構成について説明する。
図9に示すように、通信制御装置20は、制御処理部21と、通信処理部22と、記憶部23と、ユーザから各種操作を受け付ける操作部(図示せず)とを有している。また、記憶部23には、水田の排水桝500に設置された排水装置W1を識別する装置IDが記憶されている。
なお、上記の装置IDは、製品の出荷時(製造時)、或いは、排水装置W1を設置する際に、製造業者(或いはユーザ)の操作により、記憶部23に記憶される。
【0067】
制御処理部21は、図示しない操作部の操作により、通信制御装置20の設定を受け付ける。
また、制御処理部21は、通信処理部22を介してサーバ100との間で各種情報の授受を行うと共に、昇降機構50の動作を制御し、ゲート機構Gを上下方向に移動させ、水田の排水桝500の排水孔510に流入可能な水の流路の上下方向の位置を変位させることで(
図7、8参照)、水田の水位を制御する。
【0068】
具体的には、制御処理部21は、通信処理部22を介して、サーバ100から送信される「制御命令」を受信する。
この「制御命令」には、現状のゲート機構Gの状態(ゲート機構状態(高(第1位置)、中(第2位置)、低(第3位置)、排水(第4位置))と、変位させるゲート機構Gの状態(ゲート機構状態(高(第1位置)、中(第2位置)、低(第3位置)、排水(第4位置))とが含まれている。
【0069】
そして、サーバ100から送信される「制御命令」に含まれる「現状のゲート機構状態(現在位置)」が「高(第1位置)」の場合には、制御処理部21は、「制御命令」に含まれる「変位させるゲート機構状態(変位後位置)」になるまで、昇降機構50にゲート機構Gを上昇させる。
例えば、サーバ100から送信される「制御命令」が「現状のゲート機構状態が高(第1位置)、変位させるゲート機構状態が低(第3位置)」である場合、昇降機構50に対して、ゲート機構Gを「第1位置から第3位置」に上昇させる上昇指示信号を送信し、モータ51の回転軸を「第1方向」に、変位量(ここでは、第1位置から第3位置までの変位量)に対応する所定回転数だけ回転させて昇降シャフト52dを上昇させることで、昇降シャフト52dが保持しているゲート機構Gを上昇させて、第3位置にゲート機構Gを配置する。
【0070】
また、サーバ100から送信される「制御命令」に含まれる現状のゲート機構状態(現在位置)」が「高(第1位置)」以外のときには、すなわち、現在位置が「中(第2位置)、低(第3位置)、排水(第4位置)」のときには、制御処理部21は、一度、ゲート機構Gを「第1位置」に戻してから、再度、「制御命令」に含まれる「変位させるゲート機構状態」の位置になるまで、昇降機構50にゲート機構Gを上昇させる。
具体的には、昇降機構50に対して、ゲート機構Gを下降させる下降指示信号を送信し、モータ51の回転軸を「第2方向」に回転させてゲート機構Gを下降させる。そして、下降させているゲート機構Gの一番下に配置されている長板G3が下板部1bに当接する位置までくると、長板G3に固定されている押さえバー3が、脚部1aの下端部のストッパ1eと衝突し、それにより、モータ51の負荷が増えて、モータ51を駆動させる電流値が上昇する。この電流値の上昇がトリガとなり(例えば、電流値が所定値(例えば、「1.2A」)を超えると)、制御処理部21が昇降機構20の下降動作を止める(ゲート機構Gが「第1位置」に戻る)。
その後、制御処理部21は、「制御命令」に含まれる「変位させるゲート機構状態」の位置になるまで、昇降機構50にゲート機構Gを上昇させる。なお、「制御命令」に含まれる「変位させるゲート機構状態」が「高(第1位置)」であれば、昇降機構20の下降動作を止めた時点で処理が終了する。
【0071】
また、制御処理部21は、ゲート機構Gの動作が完了すると、記憶部23に記憶されている「装置ID」に、「排水装置W1のゲート機構Gの動作完了後の状態(ゲート機構状態(「高」、「中」、「低」及び「排水」のいずれか))」を対応付けた「操作完了情報」を生成する。また、制御処理部21は、通信処理部22を介して、サーバ100に対して、「操作完了情報」を送信する。
【0072】
通信処理部22は、アンテナAT及び中継器40を介して、サーバ100から送られてくる「制御命令」を受信し、制御処理部21に受信した「制御命令」を送信する。
また、通信処理部22は、アンテナAT及び中継器40を介して、サーバ100に対して、制御処理部21が生成した「操作完了情報」を送信する。
【0073】
なお、本実施形態では、通信処理部22は、1~2km程度離れた位置に設置された中継器40に対して、無線により、「操作完了情報」を送信したり、中継器40が送信した「制御命令」を受信したりできるようになっている。
【0074】
また、通信制御装置20のハードウェア構成について特に限定されるものではない。例えば、通信制御装置20は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、I/Oインターフェイス、通信インターフェイス、無線回路、アンテナ、操作ボタン等の操作部を有する情報処理装置を用いることができる。この場合、補助記憶装置に、制御処理部21及び通信処理部22の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。また、補助記憶装置の所定領域が記憶部23になっている。そして、制御処理部21及び通信処理部22の機能は、CPUが補助記憶装置に記憶されているプログラムを主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
【0075】
《排水装置W1を構成する電源部30》
次に、排水装置Wを構成する電源部30について説明する。
電源部30は、通信制御装置20及びモータ51に電力を供給するものであり、例えば、ソーラパネルを有する太陽光発電部(図示せず)と、太陽光発電部が発電した電力を蓄電する蓄電部(図示せす)とを有する構成のものを用いることができる。また、例えば、電源部30は、電池により構成することもできる。
【0076】
《サーバ100》
次に、本実施形態の自動排水システムを構成するサーバ100について、
図10を参照しながら説明する。
ここで、
図10は、本発明の実施形態の自動排水システムを構成するサーバの機能構成を説明するための模式図である。
【0077】
図示するように、サーバ100は、排水装置制御部110と、記憶部120とを有している。記憶部120には、排水装置データベース210が記憶されている。
【0078】
なお、サーバ100のハードウェア構成について特に限定されるものではない。例えば、サーバ100は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、I/Oインターフェイス、通信インターフェイスを有するコンピュータ(1台或いは複数台のコンピュータ)により構成される。この場合、補助記憶装置には、排水装置制御部110の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。また、補助記憶装置の所定領域が記憶部120になっている。そして、排水装置制御部110の機能は、CPUが補助記憶装置に記憶されているプログラムを主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
【0079】
先ず、サーバ100の構成のうち、記憶部130に記憶されている排水装置データベース210について
図11を用いて説明する。
ここで、
図11は、本実施形態の自動排水システムを構成するサーバに設けられた排水装置データベースのデータ構成を示した模式図である。
【0080】
排水装置データベース210は、水田300を管理しているユーザ毎に、そのユーザの水田の排水桝500に取り付けた排水装置W1の装置IDと、排水装置Wのゲート機構Wの状態を示すゲート機構状態と、水田情報とを対応付けて記憶しているデータベースである。
【0081】
具体的には、
図11に示すように、排水装置データベース210は、水田300を管理しているユーザを識別するユーザIDを登録するためのフィールド210aと、排水装置W1を識別する装置IDを登録するためのフィールド210bと、この装置IDにより特定される排水装置W1のゲート機構Gの状態を示すゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれかを示す情報)を登録するためのフィールド210cと、排水装置W1が取り付けられた排水桝500が設けられた水田の位置情報(水田情報)を登録するためのフィールド210dとを有するレコード(複数のレコード)により構成されている。
【0082】
なお、ユーザIDは、排水装置W1を取り付けた排水桝500が設けられた水田を管理しているユーザを識別するための一意の情報であり、英数字記号等により構成される。
また、装置IDは、排水装置W1を識別するための一意の情報であり、英数字記号等により構成される。
また、位置情報は、対応する水田(或いは排水桝500)の「緯度、経度」などの位置情報である(地図アプリ上に表示できる情報であればよい)。
【0083】
また、排水装置データベース210に登録される情報は、排水桝500に排水装置W1を設置する際に、排水装置W1を設置する業者が、サーバ100にアクセスして、対応するユーザID及び装置IDと、設置時における排水装置W1のゲート機構Gの状態を示すゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれかを示す情報)と、位置情報とを初期登録する。初期登録後は、排水装置データベース210は、フィールド210cのゲート機構状態が、後述する排水装置制御部110により更新されていく。
【0084】
次に、排水装置制御部110の機能について説明する。
【0085】
排水装置制御部110は、排水装置W1を設置した排水桝500が設けられている水田を管理しているユーザのユーザ端末UTからの要求に応じて、ユーザ端末UTに対して、対応する排水装置W1のゲート機構Gの位置を制御するためのWebサイトを提供する。
【0086】
なお、排水装置W1を設置した排水桝500が設けられた水田を管理しているユーザは、当該ユーザを識別するユーザIDが割り当てられている。ユーザは、ユーザ端末UTを操作して、Webサイト上でユーザID(或いは、ユーザID及びユーザが設定したパスワード)を入力すると、ユーザ専用のWebサイトが提供される。
【0087】
このWebサイトは、ユーザIDにより特定されるユーザが管理している水田の排水桝500に設置した排水装置W1のゲート機構Gの状態(排水する水の流路の上下方向の位置)を示すゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれかを示す情報)が提示されている。ユーザは、Webサイト上で、排水装置W1のゲート機構Gの状態を確認し、ゲート機構Gの状態を変更する必要がある場合には、サーバ100に、「ゲート機構設定要求(装置ID、ゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれか)を送信する。
【0088】
そして、排水装置制御部110は、提供しているWebサイト上で、ユーザ端末UTから排水装置W1の「ゲート機構設定要求」受け付けると、排水装置データベース210にアクセスして、ゲート機器設定要求に含まれる装置IDが登録されたレコードを読み出す。また、排水装置制御部110は、受け付けた「ゲート機器設定要求」に含まれるゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれか)が、読み出したレコードのフィールド210cのゲート機構状態と異なっているか否かを判定する。
【0089】
そして、排水装置制御部110は、受け付けた「ゲート機構設定要求」に含まれるゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれか)が、読み出したレコードのゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれか)と異なっていれば、受け付けた「ゲート機構設定要求」に対応する「制御命令」を生成する。
【0090】
具体的には、排水装置制御部110は、読み出したレコードのゲート機構状態を「現状のゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれか)」とし、受け付けた「ゲート機構設定要求」に含まれるゲート機構状態を「変位させるゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれか)」とする制御命令を生成する。排水装置制御部110は、対応する排水装置W1に対して、生成した「制御命令」を送信する。
【0091】
例えば、読み出したレコードのフィールド210cのゲート機構状態が「高」であり、「ゲート機構設定要求」に含まれるゲート機構状態が「中」であったとする。この場合、制御命令は、「現状のゲート機構状:「高」、変位させるゲート機構状態:「中」」となる。
また、例えば、読み出したレコードのフィールド210cのゲート機構状態が「排水」で、「ゲート機構設定要求」に含まれるゲート機構状態が「中」であったとする。この場合、制御命令は、「現状のゲート機構状態:「排水」、変位させるゲート機構状態:「中」」となる。
【0092】
また、排水装置制御部110は、「制御命令」を送信すると、その後、対応する排水装置W1が「制御命令」に応じた処理を完了した後に送る「操作完了情報」を受信する。
そして、排水装置制御部110は、「操作完了情報」を受信すると、排水装置データベース210にアクセスして、受信した「操作完了情報」に含まれる「装置ID」が登録されたレコードのフィールド210cの「ゲート機構状態」を「操作完了情報」に含まれる「ゲート機構状態」に書き換える。
【0093】
一方、排水装置制御部110は、受け付けた「ゲート機構設定要求」に含まれるゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれか)が、読み出したレコードのゲート機構状態(「高」、「中」、「低」、及び「排水」のいずれか)と異なっていなければ(同じであれば)、「ゲート機構設定要求」を送信してきたユーザ端末UTに対して、対応する排水装置W1のゲート機構Gが「ゲート機構設定要求」の状態になっていることを通知して、処理を終了する。
【0094】
以上説明したように、本実施形態の排水装置W1は、水田等の貯水エリアに設けられた排水桝500に設置され、サーバ100から送られる制御命令に応じて動作する昇降機構50がゲート機構Gを移動させることで、水田の水位を調整できるようになっている。
したがって、本実施形態の排水装置W1を備えた自動排水システムによれば、水田の管理者(ユーザ)が、実際に水田まで出向いて行き、排水桝500の溝部の水位調整板を差し込んで取り付けたり、取り外したりする必要がなく、管理者(ユーザ)の作業労力が軽減される。
【0095】
また、本実施形態では、排水桝500の排水孔510の前方を塞ぐ位置に設置されたゲート機構Gが、複数枚の長板G1、G2、G3が並列に且つ上下方向に配置され、隣接する長板同士が連結部材Cで連結された構成になっている。そして、ゲート機構Gは、昇降機構50により上下方向に移動して配置された上下方向の位置に応じて、隣接する長板同士が当接した状態や隙間部が形成された状態になり、或いは、一番下に配置されている長板G3の下端部が、排水桝500の排水孔510の下端部の高さ位置に配置されている下板部1bの上面に当接した状態や下板部1bの上面との間で隙間部が形成された状態になったりすることで、排水桝500の排水孔510に流入する水の流路の上下方向の位置が変位するようになっている。この構成によれば、排水桝500の排水孔510に流入可能な水の流路の上下方向の位置を多段階に変位させることができるので、管理者の労力をかけることなく、水田の水位を、希望する高さに合わせて段階的に調整することができる。
【0096】
また、本実施形態の排水装置W1は、既存の排水桝500の一対の側壁部505の溝部505a(或いは溝部505b)に支持部1を構成する「一対の脚部1a」を差し込んで設置する構成になっており、コストや労力がかかる配管工事等を行うことなく、簡単に既存の設備に設置できる。
さらに、本実施形態の排水装置W1では、排水桝500に取り付けられる支持部1に横幅方向の寸法を調節する横幅調節機構(脚部1aの接続片1cの長孔1c1、連結部1dに設けられ且つ長孔1c1に挿入して固定される締結部1d3)が設けられている。
この横幅調節機構によれば、排水装置W1の管理者は、締結部1d3を緩めることで、長孔1c1に沿って、一対の脚部1aを横幅方向にスライドさせることができ、所望の間隔に調整した後、締結部を締めて固定することで、様々な横幅寸法の排水桝500に対応させて取り付けることが可能になる。
【0097】
また、本実施形態の排水装置W1では、昇降機構50に「ゲート機構Gの一番上の長板G1」を保持させて、昇降機構50にゲート機構Gを上下方向に移動させるという簡易な構成により、水田の水位を、複数種の高さ寸法の水位に設定することができるようになっている。すなわち、本実施形態の排水装置W1は、簡易な構成であるため、装置自体のコストを抑えることができる。
【0098】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において、種々の変更が可能である。
【0099】
上述した実施形態では、ゲート機構Gが、3枚の長板G1、G2、G3が並列に且つ上下方向に配置され、隣接する長板同士が連結部材C(C1、C2)で連結された構成になっているが、長板G1、G2,G3の枚数は、適宜設定されるものである。例えば、ゲート機構Gが、4枚以上の長板により構成されていても良いし、2枚の長板により構成されていても良い。
【0100】
また、上述した実施形態では、水田に設けられている排水桝500に排水装置W1を取り付けて、水田の水位を制御しているが、特にこれに限定されるものではない。本実施形態の自動排水システムは、水田以外の溜池などの貯水エリアに設けられている排水桝500に設置され、貯水エリアに貯水されている水の水位の制御にも用いることができる。
【0101】
《変形例の排水装置》
また、上述した実施形態の排水装置W1では、ゲート機構Gを構成する3枚の長板G1、G2、G3を連結する連結部材C(C1、C2)が、ワイヤー、チェーン、ロープ等の可撓性部材(可撓性連結部材)により構成されているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、
図12、13に示す、上述した実施形態の変形例の排水装置W2のように、ゲート機構Gの隣接する長板同士を連結する連結部材がプレートで構成されていても、上述した実施形態の排水装置W1と同様の作用効果が得られる。
以下、
図12、13を用いて、上述した実施形態の変形例の排水装置W2について説明する。
【0102】
ここで、
図12は、本実施形態の変形例の排水装置を示した模式図である。また、
図13は、本実施形態の変形例の排水装置のゲート機構の昇降動作を説明するための模式図であり、(a)が水田の水位を高状態にするために3つの長板をすべて降ろしている状態を示している模式図であり、(b)が水田の水位を中状態にするために3つの長板のうち一番上の長板だけ上昇させている状態を示している模式図であり、(c)が水田の水位を低状態にするために3つの長板のうち一番上の長板と中間の長板とを上昇させた状態を示している模式図であり、(d)が水田の水をすべて排水した状態にするために3つの長板を全て上昇させている状態を示している模式図である。
なお、以下の変形例では、上述した実施形態の排水装置W1と同じ構成や相当する構成については、同じ符号を付して説明を省略し、上述した実施形態と異なる部分だけを説明する。
【0103】
図12に示すように、本変形例の排水装置W2は、ゲート機構Gを構成する3枚の長板G1、G2、G3がプレートで構成された連結部材300により連結されている。
具体的には、変形例のゲート機構Gは、3枚の矩形状の長板G1、G2、G3が並列に且つ上下方向に配置され、一番下に配置されている長板G3が、支持部1の下端に設けられた下板部1bの上に載置可能に配置され、且つ隣接する長板同士が連結部材300で連結されている。
【0104】
連結部材300は、平面視で略各丸長方形状に形成されており、長手方向が上下方向(図中のY方向)になるように配置され、その一端側(上方側)に長孔状のスリット301aが形成されているとともに、その他端側(下方側)に長孔状のスリット301bが形成されている。
また、連結部材300は、その中央部が、3枚の長板G1、G2、G3のうちの中央の長板G2の一方面に固着されている。
また、連結部材300は、一端側のスリット301aが一番上の長板G1の一方面に配置され、且つスリット301aを挿通したネジ302aが長板G1の下端部側に打ち込まれている。この構成により、長板G1は、連結部材300に対して、スリット301aの長さ寸法の範囲で、上下方向(Y方向)に移動できるようになっている。
また、連結部材300は、他端側のスリット301bが一番下の長板G3の一方面に配置され、且つスリット301bを挿通したネジ302bが長板G3の上端部側に打ち込まれている。この構成により、長板G3は、連結部材300に対して、スリット301bの長さ寸法の範囲で、上下方向に移動できるようになっている。
【0105】
そして、変形例の排水装置W2は、
図13に示すように、上述した実施形態と同様、排水桝500の排水孔510に流入可能な水の流路の上下方向の位置が変位するようになっている。
【0106】
具体的には、
図13(a)に示すように、ゲート機構Gは、昇降機構50に保持されている一番上に配置されている長板G1が、予め設定された最低位の位置(第1位置)に配置されている場合、全ての、隣接する長板同士が当接した状態になるとともに、一番下に配置されている長板G3の下端部が支持部1の下端に設けられた下板部1bの上面に当接した状態になるように設計されている。
そのため、排水桝500の排水孔510の前方側が、グランド面GLと同じ高さの下板部1bの上面に載置され積み重ねられた「3枚の長板G1、G2、G3」で封鎖された状態になる。すなわち、この変形例においても、一番上に配置された長板G1の上端部より上が、排水桝500の排水孔510に流入可能な水の流路となり、3枚の長板G1、G2、G3を重ねた高さ寸法に、水田の水位を制御できる。
【0107】
また、一番上に配置されている長板G1が「第1位置」に配置されている状態(
図13(a)に示す状態において)、昇降機構50によりゲート機構Gを「第1位置」から所定寸法・上昇させると、一番上に配置されている長板G1だけが所定寸法上昇し、長板G1の下端部と、中間に配置された長板G2の上端部とが離間し、
図13(b)に示す「第2位置」に配置される。なお、長板G1と長板G2は、連結部材300で接続されている。
【0108】
具体的には、
図13(b)に示す状態の場合、一番上に配置されている長板G1と、中間に配置された長板G2との間にだけ隙間部(d1)が形成され、且つ一番下に配置されている長板G3の下端部が支持部1の下端に設けられた下板部1bの上面に当接した状態になる。
そのため、排水桝500の排水孔510の前方側が、グランド面GLと同じ高さの下板部1bの上面に載置され積み重ねられた「2枚の長板G2、G3」で封鎖された状態になり、長板G2の上端部と、長板G1の下端部との間に流路となる隙間部(d1)が形成される。
これにより、水田から排水桝500に流入してきた水は、一番上に配置されている長板G1と、中間に配置された長板G2との間の隙間部(d1)から排水孔510に流入して排水され、長板G1と長板G2との間の隙間部(d1)よりも低い水は、長板G2、G3に塞がれる。すなわち、2枚の長板G2、G3を重ねた高さ寸法に、水田の水位を制御できる。
【0109】
また、一番上に配置されている長板G1が「第2位置」に配置されている状態(
図13(b)に示す状態において)、昇降機構50によりゲート機構Gを第2位置から所定寸法・上昇させると、一番上に配置されている長板G1が所定寸法上昇するとともに、長板G1に連結部材300で接続されている長板G2が、連結部材300を介して長板G1に引っ張られて、所定寸法上昇して、
図13(c)に示す「第3位置」に配置される。
【0110】
図13(c)に示す状態の場合、全ての隣接する長板同士の間に隙間部(d1、d2)が形成され、且つ一番下に配置されている長板G3の下端部が支持部1の下端に設けられた下板部1bの上面に当接した状態になる。
すなわち、排水桝500の排水孔510の前方側が、グランド面GLと同じ高さの下板部1bの上面に載置された「1枚の長板G3」で封鎖された状態になり、長板G3の上端部と、長板G2の下端部との間に流路となる隙間部(d2)が形成される。なお、長板G2の上端部と、長板G1の下端部との間にも流路となる隙間部(d1)が形成されている。
これにより、水田から排水桝500に流入してきた水は、一番下に配置された長板G3を超える水が排水孔510に流入して排水されるようになり、長板G3の上端部よりも低い水は、長板G3により塞がれ、水田の水位が「低」の状態で維持されるようになる。
【0111】
また、一番上に配置されている長板G1が「第3位置」に配置されている状態(
図13(c)に示す状態において)、昇降機構50によりゲート機構Gを第3位置から所定寸法・上昇させると、一番上に配置されている長板G1が所定寸法上昇するとともに、長板G1に連結部材300で接続されている長板G2が連結部材300を介して長板G1に引っ張られて所定寸法上昇し、且つ、長板G2に連結部材300で接続されている長板G3が長板G2に引っ張られて所定寸法上昇して、
図13(d)に示す「第4位置」に配置される。
【0112】
図13(d)に示す状態の場合、全ての隣接する長板同士の間に隙間部(d1、d2)が形成され、且つ一番下に配置されている長板G3の下端部が支持部1の下端に設けられた下板部1bの上面と離間して隙間部(d3)が形成された状態になる。
すなわち、排水桝500の排水孔510の前方側に配置されているゲート機構Gの下端部の長板G3が、下板部1bの上面の位置からから上昇して、排水孔510の前方を開放する隙間部(d3)が形成されるため、水田に貯留されている水を排水させることができる。
【0113】
このように、本変形例の排水装置W2においても、上述した実施形態の排水装置W1と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0114】
NW…ネットワーク
W1、W2…排水装置
1…支持部
1a…脚部
1a1…板材
1a2…スペーサ
1b…下板部
1c…接続片
1c1…長孔
1d…連結部
1d1…水平部
1d2…垂直部
1d3…締結部
1e…ストッパ
2…ハウジング
2a…筐体部
2b…筒体部
3…押さえバー
3b…スペーサ
3c…固定手段
G…ゲート機構
G1、G2、G3…長板
C、C1、C2…連結部材
20…通信制御装置
21…制御処理部
22…通信処理部
23…記憶部
30…電源部
50…昇降機構
51…モータ(回転機構)
52…往復移動機構
52a…カップリング部材
52b…回転シャフト
52c…ナット
52d…昇降シャフト
53…把持部
40…中継器
100…サーバ装置
110…排水装置制御部
120…記憶部
210…排水装置データベース
300…連結部材
301a、301b…スリット
302a、302b…ネジ
UT…ユーザ端末
500…排水桝
501…底面部
503…後壁部
505…側壁部
505a、505b…溝部
510…排水孔