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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183197
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】空気分離システム
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20231220BHJP
   C01B 23/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F25J3/04 104
F25J3/04 102
C01B23/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096693
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA08
4D047AB01
4D047AB04
4D047BA07
4D047CA03
4D047CA04
4D047CA17
4D047DA05
(57)【要約】
【課題】複数の空気分離装置を備える空気分離システムにおいて、低圧塔などの他の精留塔よりも比較的小さい機器を共通モジュールとして構成された空気分離システムを提供する。
【解決手段】空気分離システムB1は、複数の空気分離装置1、2と、前記複数の空気分離装置から導出されるアルゴン富化物を用いて製品アルゴンを製造する純アルゴン製造部C1を備える。また、空気分離システムB1は、前記複数の空気分離装置から導出されるから導出される液化酸素を用いて製品酸素ガスを製造する製品酸素ガス製造部C2をさらに備える。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空気分離装置と、
前記複数の空気分離装置から導出されるアルゴン富化物を用いて製品アルゴンを製造する純アルゴン製造部を備える、
空気分離システム。
【請求項2】
前記複数の空気分離装置から導出されるから導出される液化酸素を用いて製品酸素ガスを製造する製品酸素ガス製造部を備える、
請求項1に記載の空気分離システム。
【請求項3】
前記純アルゴン製造部は、
前記アルゴン富化物が導入される第一熱交換器と、
前記第一熱交換器を通過した前記アルゴン富化物が導入される純アルゴン精留塔と、を備える、
請求項1に記載の空気分離システム。
【請求項4】
前記製品酸素ガス製造部は、
前記液化酸素が導入される第二熱交換器を備える、
請求項2に記載の空気分離システム。
【請求項5】
複数の空気分離装置と、
前記複数の空気分離装置から導出されるアルゴン富化物を用いて製品アルゴンを製造する純アルゴン製造部と、
前記複数の空気分離装置から導出されるから導出される液化酸素を用いて製品酸素ガスを製造する製品酸素ガス製造部を備え、
前記純アルゴン製造部が備える、前記アルゴン富化物が導入される熱交換器と、前記製品酸素ガス製造部が備える、前記液化酸素が導入される熱交換器とが単一の熱交換器で構成されている、
空気分離システム。
【請求項6】
前記製品酸素ガス製造部は、
複数の空気分離装置から導出される高純度窒素ガスを圧縮する圧縮機と、
圧縮された高純度窒素ガスが前記熱交換器に導入され、その一部が分岐されて導入される膨張タービンと、
前記高純度窒素ガスが前記第二熱交換器で冷却されてから導入される気液分離部と、を備える、
請求項4または5に記載の空気分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の空気分離装置を備える空気分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気を深冷分離することによって空気分離ガス(酸素、窒素、アルゴン等)を獲得することは、産業上の需要がある。需要が大規模化すると、空気分離装置を需要家の直近に設置し、パイプラインによって供給することがあり得る。
特許文献1によると、空気分離装置はモジュール式に建造することが望ましい。モジュールは建造箇所から目的地まで長距離輸送されることがある。したがって、モジュールは輸送可能な大きさでならないといけない。
特許文献2によると、空気分離装置は、アルゴンの製造に関して複数台の空気分離装置を配置されるモジュールと、これら複数のモジュールによって共用される共通モジュールによって構成されることがあり得る。
特許文献3によると、空気分離装置において酸素ガスを得るために、酸素富化液を精留して酸素液を得て、熱交換器内にて高圧空気や窒素との熱交換によって蒸発、加温し、酸素ガスとして供給することがあり得る。この酸素ガス供給方法は、酸素供給用のモジュールとして、空気分離装置の主熱交換機と組み込むことなく、配管で接続することで(プラグイン式で)配置し、運用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6257656号公報
【特許文献2】米国特許公開2004/0261453号公報
【特許文献3】特許第4698989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気分離ガス(窒素、酸素、アルゴンなど)の需要の高まりにより、空気分離装置も大型化の一途をたどっている。大需要家にはオンサイトで設置される空気分離装置によって空気分離ガスを供給するため、需要家工場まで空気分離装置を輸送する必要がある。この時、輸送可能な大きさに空気分離装置モジュールを建造する必要がある。結果的に、需要に対して複数台の空気分離装置を設置することになるが、コスト低減要求や設置面積の狭小化(制約)がある。
【0005】
本開示は、複数の空気分離装置を備える空気分離システムにおいて、低圧塔などの他の精留塔よりも比較的小さい機器(例えば、純アルゴン精留塔や高圧酸素製造モジュール等)を共通モジュールとして構成された空気分離システムを提供する。
また、本開示は、熱効率を向上できる上記共通モジュールを備える空気分離システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気分離システムは、複数の空気分離装置と、前記複数の空気分離装置から導出されるアルゴン富化物を用いて製品アルゴンを製造する純アルゴン製造部を備える。
前記空気分離システムは、前記複数の空気分離装置から導出されるから導出される液化酸素を用いて製品酸素ガスを製造する製品酸素ガス製造部をさらに備えていてもよい。
製品アルゴンは、液体状、気体状、気液混合状であってもよい(以下において特に断らない限り同様の定義である)。
【0007】
第一の空気分離システム(A1)は、
原料空気が導入される主熱交換器(11、21)と、前記主熱交換器(11、21)を通過した原料空気が導入される第一精留塔(12、22)と、窒素ガスを凝縮する第一凝縮器(13、23)と、第一精留塔(12、22)から導出される窒素含有液が導入される第二精留塔(14、24)と、第二精留塔(14、24)から導出されるアルゴン含有酸素富化物が導入される第三精留塔(15、25)と、第三精留塔(15、25)から導出されるガスを凝縮する第二凝縮部(16、26)とを備える、複数の空気分離装置(1、2、・・・、n)と、
前記複数の空気分離装置(1、2、・・・、n)のそれぞれの第三精留塔(15、25)から導出されるアルゴン富化物(ガス状、液体状、気液混合ガスであってもよい)を用いて製品アルゴンを製造する純アルゴン製造部(C1)と、を備える。
nの値は、3以上であり、共通モジュールの設計に対応して多い数を設定できる。nの値の上限は、例えば10以下であってもよく、30以下であってもよく、50以下であってもよいが、特に限定されない。
前記純アルゴン製造部(C1)は、
前記主熱交換器(11、21)を通過した前記アルゴン富化物が導入される第一熱交換器(E1)と、
前記第一熱交換器(E1)を通過した前記アルゴン富化物が導入される純アルゴン精留塔(C11)と、を備えていてもよい。
【0008】
第二の空気分離システム(B1、B2、B3、B4)は、
原料空気が導入される主熱交換器(11、21)と、前記主熱交換器(11、21)を通過した原料空気が導入される第一精留塔(12、22)と、窒素ガスを凝縮する第一凝縮器(13、23)と、第一精留塔(12、22)から導出される窒素含有液が導入される第二精留塔(14、24)と、第二精留塔(14、24)から導出されるアルゴン含有酸素富化物が導入される第三精留塔(15、25)と、第三精留塔(15、25)から導出されるガスを凝縮する第二凝縮部(16、26)とを備える複数の空気分離装置(1、2、・・・、n)と、
前記複数の空気分離装置(1、2、・・・、n)のそれぞれの第三精留塔(15、25)から導出されるアルゴン富化物(ガス状、液体状、気液混合ガスであってもよい)を用いて製品アルゴンを製造する純アルゴン製造部(C1)と、
前記複数の空気分離装置(1、2、・・・、n)のそれぞれの前記第二精留塔(14、24)から導出される液化酸素(LOX、気液混合状態でもよい)を用いて製品酸素ガス(GOX)を製造する製品酸素ガス製造部(C2)と、を備える。
前記純アルゴン製造部(C1)は、前記主熱交換器(11、21)を通過した前記アルゴン富化物が導入される第一熱交換器(E1)と、前記第一熱交換器(E1)を通過した前記アルゴン富化物が導入される純アルゴン精留塔(C11)と、を備えていてもよい。
前記製品酸素ガス製造部(C2)は、前記純アルゴン精留塔(C11)の塔頂部から導出されガス(窒素含有ガス)が導入され、かつ、前記第一凝縮器(13、23)あるいは前記第二精留塔(14、24)から導出される液化酸素(LOX、気液混合状態でもよい)が導入される第二熱交換器(E2)を備えていてもよい。
前記製品酸素ガス製造部(C2)は、前記第一熱交換器(E1)と前記第二熱交換器(E2)は単一の熱交換器で構成されていてもよい。第一熱交換器が第二熱交換器の機能を兼用していてもよい。
前記製品酸素ガス製造部(C2)は、前記複数の空気分離装置(1、2)から導出される高純度窒素ガス(GAN)を圧縮する圧縮機(C22)と、圧縮された高純度窒素ガス(GAN)が前記熱交換器(E2、E11)に導入され、その一部が分岐されて導入される膨張タービン(C23)と、前記高純度窒素ガス(GAN)が前記第二熱交換器(E2)で冷却されてから導入される気液分離部(C24)と、を備えていてもよい。
【0009】
第一、第二の空気分離システム(A1、B1、B2、B3、B4)の第一精留塔(12、22)は、第二精留塔(14、24)よりも高圧下で精留する高圧精留塔であり、第二精留塔(14、24)は低圧精留塔であってもよい。第二精留塔は、2つ以上に分離されていてもよく、単一の塔で構成されていてもよい。
第一、第二の空気分離システム(A1、B1、B2、B3、B4)の第三精留塔(15、25)は、粗アルゴン精留塔であってもよい。第三精留塔は、2つ以上に分離されていてもよく、単一の塔で構成されていてもよい。
第一、第二の空気分離システム(A1、B1、B2、B3、B4)の純アルゴン製造部(C1)は、製品アルゴンを製造する。製品アルゴンとは、アルゴンガスおよび/または液体アルゴンである。
第一、第二の空気分離システム(A1、B1、B2、B3、B4)の複数の空気分離装置(1、2、・・・、n)を構成する、例えば、精留塔、熱交換器(サブクーラを含む)、凝縮器、リボイラー、圧縮機、膨張タービン、空気精製部、配管、各種弁、各種センサー、制御部、機器レイアウトなどの各機能要素は、同じであってもよく、異なっていてもよく、特に制限されずに各要素の選択、組み合わせなども自由に設定できる。
【0010】
(効果)
(1)純アルゴン製造部、または純アルゴン製造部および製品酸素ガス製造部を共通モジュールとしたことで、空気分離装置の小型化が可能となり、製造コスト、輸送(つまり、可搬性)、設置における柔軟な対応が可能となる。
(2)純アルゴン製造部と製品酸素ガス製造部で用いられる熱交換器を兼用とすることで、熱交率を高めることができる。
(3)純アルゴン製造部と製品酸素ガス製造部で用いられる熱交換器を兼用とすることで、消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A図1Aは、実施形態1の空気分離システムを示す。
図1B図1Bは、実施形態2の空気分離システムを示す。
図1C図1Cは、実施形態3の空気分離システムを示す。
図1D図1Dは、実施形態4の空気分離システムを示す。
図2図2は、実施形態5の空気分離システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0013】
(実施形態1)
実施形態1の空気分離システムB1について、図1Aを用いて説明する。
空気分離システムB1は、第一、第二空気分離装置1、2、共通モジュールの純アルゴン製造部C1、製品酸素ガス製造部C2を備える。空気分離システムB1は、それぞれの空気分離装置1、2から導出された粗アルゴン富化物(Crude Argon)と、高純度窒素ガス(GAN)とを共通モジュールの純アルゴン製造部C1と製品酸素ガス製造部C2へ供給し、製品アルゴン(LAr)と製品酸素ガス(GOX)を製造する。
【0014】
本実施形態において、第一、第二空気分離装置1、2は、同じ構成要素を備える。第一空気分離装置1は、主熱交換器11と、第一精留塔(高圧精留塔)12、第二精留塔(低圧精留塔)14、第三精留塔(粗アルゴン精留塔)15、第一凝縮部13、第二凝縮部16、サブクーラ17、膨張タービン18を備える。
第二空気分離装置2は、主熱交換器21と、第一精留塔(高圧精留塔)22、第二精留塔(低圧精留塔)24、第三精留塔(粗アルゴン精留塔)25、第一凝縮部23、第二凝縮部26、サブクーラ27、膨張タービン28を備える。以下では第一空気分離装置1の中心に説明するが、第二空気分離装置2は同じ機能を備えるため説明を省略する。
【0015】
(高圧精留塔)
原料空気は、主熱交換器11を通過し、配管L1を介して第一精留塔12の塔底部121または精留部123の下段へ導入される。原料空気は、第一精留塔12で酸素富化液と窒素含有液(LIN、液化窒素)に分離される。
第一凝縮部(窒素凝縮器)13は、第一精留塔12の塔頂部125から配管L25cを介して導出される窒素ガスを凝縮(液化)し、第一精留塔12へ戻す。第一凝縮部(窒素凝縮器)13の塔頂部から導出される一部の酸素ガスは、第二精留塔14の塔底部141または下段精留部142へ送られる。第一凝縮部13の塔頂部から導出される他の一部は、配管L32を介して、主熱交換器11へ導入され熱交換された後で、膨張タービン18で使用され、再び主熱交換器11を通過し、廃ガス(WG)として排出される。
第一凝縮部13の塔底部あるいは塔下部から導出された液化酸素(LOX)は、配管L31を介しポンプP1で、製品酸素ガス製造部C2の配管L91へ液送される。第二空気分離装置2の第一凝縮部23から導出された液化酸素(LOX)も製品酸素ガス製造部C2の配管L91へ液送される。
【0016】
酸素富化液は、第一精留塔12の塔底部121から配管L21を介して導出され、サブクーラ17で熱交換された後で、その一部は、分岐配管L21aを介して第二精留塔14の中段精留部143へ導入され、その他の一部は、分岐配管L21bを介して第二凝縮器16へ導入される。配管L21、分岐配管L21a、L21bに弁が設けられ、流量制御弁または開閉の仕切り弁として機能してもよい。
原料空気は、主熱交換器11に導入される前に、不純物などを除去する空気精製部で処理されてもよい。
【0017】
(低圧精留塔)
第二精留塔14の上段精留部144に導入された窒素含有液(LIN)は、第二精留塔14で精留される。窒素含有液(LIN)は、製品酸素ガス製造部C2の配管L93から分岐した分岐配管L93bを介して送られる。
第二精留塔14の塔底部141から導出される高純度酸素液は、第一凝縮部13へ送られる。
アルゴン含有酸素富化物(ガス状、液体状もしくは気液混合であってもよい)は、第二精留塔14の下段精留部142または中間精留部143から配管L42を介して導出され、第三精留塔15(粗アルゴン精留塔)の塔底部151または精留部153の下段へ導入される。
【0018】
高純度窒素ガス(GAN)は、第二精留塔14の塔頂部145から配管L45を介して導出され、サブクーラ17で熱交換し、次いで主熱交換器11で熱交換された後で、純アルゴン製造部C1の配管L82と製品酸素ガス製造部C2の配管L92へ送られる。第二空気分離装置2の第二精留塔24から導出された高純度窒素ガス(GAN)も純アルゴン製造部C1の配管L82と製品酸素ガス製造部C2の配管L92へ送られる。
【0019】
第二精留塔14の上段精留部144または中間精留部143から配管L43を介して導出されたガスは、配管L32と合流し、主熱交換器E1を通過し、膨張タービン18に送られてタービン駆動に使用された後、再び主熱交換器11に戻されて廃ガス(WG)として排出される。
【0020】
(粗アルゴン精留塔)
第三精留塔15は、アルゴン含有酸素富化物を精留し、アルゴン富化物(Crude Argon)を得る。アルゴン含有酸素富化物の精留ガス(アルゴン富化ガス)は、第三精留塔15の塔頂部155から配管L52を介して導出され、第二凝縮部16へ送られ、凝縮(液化)された後で塔頂部155へ戻される。
第二凝縮部16の塔頂部から導出される酸素富化液のガスは、配管L62を介して第二精留塔14の中間精留部143へ導入される。
アルゴン富化物(ガス状、液体状もしくは気液混合であってもよい)は、第三精留塔15の精留部153の上段または塔頂部155から配管L55を介して導出され、主熱交換器11を通過した後で、純アルゴン製造部C1の配管L81へ送られる。第二空気分離装置2の第三精留塔15導出されたアルゴン富化物も純アルゴン製造部C1の配管L81へ送られる。
アルゴン含有酸素富化物の精留液は、第三精留塔15の塔底部151から配管L51を介して導出され、第二精留塔14の下段精留部142または中間精留部143へ戻される。
【0021】
(純アルゴン製造部)
純アルゴン製造部C1は、第一熱交換器E1、純アルゴン精留塔C11、第三凝縮器C12、第三熱交換器C13(あるいはリボイラー)を備える。
純アルゴン精留塔C11は、第一、第二空気分離装置1、2から導出されたアルゴン富化物を精留する。第一、第二空気分離装置1、2から導出されたアルゴン富化物は、配管L81にそれぞれ配置されている圧縮機61で所定圧に圧縮される。圧縮されたアルゴン富化物(ガス状)は、配管L81を介して、第一熱交換器E1に送られて冷却され、次いで第三熱交換器C13で液化され、純アルゴン精留塔C11の精留部C112の中間段へ導入される。純アルゴン精留塔C11の塔底部C111から導出された液体アルゴンは、第三熱交換器C13へ送られ寒冷として使用された後、再び塔底部C111へ戻される。塔底部C111から導出された液体アルゴン(LAr)は、配管L83を介して製品として取り出される。窒素などの低沸点成分ガスGは、塔頂部C113から配管L84を介して取り出される。
【0022】
第三凝縮部C12は、純アルゴン精留塔C11の塔頂部C113から導出されるアルゴンガスが導入され、第三凝縮部C12で凝縮されたアルゴン液は純アルゴン精留塔C11へ戻される。
第一、第二空気分離装置1、2から導出された高純度窒素ガス(GAN)は、配管L81にそれぞれ配置されている圧縮機62で所定圧に圧縮される。圧縮された高純度窒素ガス(GAN)は、配管L82を介して、第一熱交換器E1に送られて冷却され、次いで第三熱交換器C13で液化され、第三凝縮部C12へ寒冷として導入される。また、製品酸素ガス製造部C2から導出された窒素含有液(LIN)は、配管L93aを介して第三凝縮部C12へ寒冷として導入される。
第三凝縮部C12の塔頂から導出されたガス(窒素含有ガス)の一部は、配管L85と分岐配管L85aを介して第一熱交換器E1へ送られ冷熱として利用された後、窒素ガスGAN1として導出される。その他のガス(窒素含有ガス)は、分岐配管L85bを介して製品酸素ガス製造部C2の第二熱交換器E2へ送られ冷熱として利用された後、窒素ガスGAN1として導出される。これらの窒素ガスGAN1は製品として供給されること、また別のシステムへ導入するガスとして回収されることがあり得る。
【0023】
(製品酸素ガス製造部)
製品酸素ガス製造部C2は、第二熱交換器E2、圧縮機C22、膨張タービンC23、気液分離部C24を備える。
第一、第二空気分離装置1、2から導出された高純度窒素ガス(GAN)は、配管L92を介して圧縮機C22で圧縮され、次いで、第二熱交換器E2に送られて冷却される。第二熱交換器E2に導入された高純度窒素ガス(GAN)の一部は、分岐配管L92bを介して導出されて膨張タービンC23へ送られて利用された後、再び第二熱交換器E2へ戻り、配管L94と合流する。第二熱交換器E2に導入されて冷却された高純度窒素ガス(GAN)は、気液状態となり、気液分離部C24に送られる。気液分離部C24で分離された窒素含有液(LIN)は、配管L93を介して取り出され、分岐配管L93bを介して第一空気分離装置1の第二精留塔14の上部精留部144へ導入され、また、分岐配管L93cを介して第二空気分離装置2の第二精留塔24の上部精留部へ導入される。また、窒素含有液(LIN)の一部は、分岐配管L93aを介して、配管L85へ合流し、第三凝縮部C12へ送られる。
気液分離部C24で分離された高純度窒素ガス(GAN)は、配管L94を介して再び第二熱交換器E2に送られて冷却され、圧縮機C22よりも上流側の配管L92へ合流する。
第一、第二空気分離装置1、2から導出された液化酸素(LOX)は、配管L91に合流し、第二熱交換器E2に導入され、冷熱を放出し製品酸素ガス(GOX)として取り出される。
なお、運転条件に対応し、圧縮機C22、膨張タービンC23の駆動は停止されていてもよい。圧縮機C22を介さないバイパス配管が設けられていてもよい。
本実施形態においては、第一、第二空気分離装置1、2は同じ構成要素として説明したが、空気分離装置として機能する限り、構成要素が異なっていてもよい。
【0024】
(実施形態2)
実施形態2の空気分離システムB2について、図1Bを用いて説明する。
空気分離システムB2は、第一、第二空気分離装置1、2、共通モジュールの純アルゴンおよび酸素ガス製造部C3を備える。空気分離システムB2は、それぞれの空気分離装置1、2から導出された粗アルゴン富化物(Crude Argon)と、高純度窒素ガス(GAN)とを共通モジュールの純アルゴンおよび酸素ガス製造部C3へ供給し、液体アルゴン(LAr)と製品酸素ガス(GOX)を製造する。実施形態1とおなじ符号は同じ機能を有するので説明は省略する。
純アルゴンおよび酸素ガス製造部C3は、実施形態1の第一、第二熱交換部E1、E2の機能を兼ねた第四熱交換部E11を備える。
第四熱交換部E11には、実施形態1と同様に、配管L81、配管L82、配管L92、配管L94、配管L92bが通過される。
第三凝縮部C12の塔頂から導出されたガス(窒素含有ガス)は、配管L86を介して第四熱交換器E11へ送られ冷熱として利用された後、圧縮機C22よりも上流側の配管L92へ合流する。
【0025】
(実施形態3)
実施形態3の空気分離システムB3について、図1Cを用いて説明する。実施形態3は、実施形態2(図1B)と比較して、配管L82が、圧縮機C22と第四熱交換器E11との間の配管から分岐しており、圧縮器62が省略された構成である。
【0026】
(実施形態4)
実施形態4の空気分離システムB4について、図1Dを用いて説明する。実施形態4は、実施形態1(図1A)と比較して、第三精留塔15の精留部153の上段または塔頂部155から配管L55を介して導出されたアルゴン富化物が、主熱交換器11、圧縮機61、第一熱交換器E1、第三熱交換器C13を通過せずに、純アルゴン精留塔C11の精留部C112の中間段へ導入される構成である。第二空気分離装置2から送られるアルゴン富化物も同様に主熱交換器11、圧縮機61、第一熱交換器E1、第三熱交換器C13を通過せず純アルゴン精留塔C11の精留部C112の中間段へ導入される構成である。
【0027】
(実施形態5)
実施形態5の空気分離システムA1について、図2を用いて説明する。
空気分離システムA1は、第一、第二空気分離装置1、2、共通モジュールの純アルゴン製造部C1を備える。空気分離システムA1は、それぞれの空気分離装置1、2から導出された粗アルゴン富化物(Crude Argon)と、高純度窒素ガス(GAN)とを共通モジュールの純アルゴン製造部C1へ供給し、製品液体アルゴンを製造する。実施形態1と同じ符号は同じ機能を有するので説明は省略する。
【0028】
本実施形態では、液化酸素(LOX)の状態で取り出しが可能であり、さらに製品酸素ガスとしての取り出しも可能な構成(熱交換手段、膨張弁など)が追加されてもよい。
窒素含有液(LIN)は、配管L101を介して第三凝縮部C12へ寒冷として導入される。また、窒素含有液(LIN)は、配管L100aおよび分岐配管L100bを介して第一空気分離装置1の第二精留塔14の上部精留部144へ導入され、また、分岐配管L100cを介して第二空気分離装置2の第二精留塔24の上部精留部へ導入される。
【0029】
第三凝縮部C12の塔頂から導出されたガス(窒素含有ガス)の一部は、配管L85と分岐配管L85aを介して第一熱交換器E1へ送られ冷熱として利用された後、窒ガスGAN1として導出される。この窒素ガスGAN1は製品として供給されること、また別のシステムへ導入するガスとして回収されることがあり得る。その他のガス(窒素含有ガス)は、分岐配管L85cを介して第一、第二空気分離装置1、2の各配管L45の高純度窒素ガス(GAN)と合流する。
【0030】
(別実施形態)
(1)第一、第二空気分離装置1、2から導出された液化酸素(LOX)は、配管L91で合流せず、それぞれの配管を介して第二熱交換器E2あるいは第四熱交換器E11へ導入されてもよい。
(2)主熱交換器E1より上流側に原料空気を清浄化する清浄装置が設けられていてもよい。
(4)各精留塔には、温度計、圧力計、液面レベル計などが設けられていてもよい。
(5)各配管には、温度計、圧力計、流量計、各種弁(例えば、圧力調整弁、流量調整弁、仕切弁)などが設けられていてもよい。
(6)膨張タービン18、圧縮機C22、膨張タービンC23が設けられていなくてもよい。
(7)実施形態1から5においては、第一、第二空気分離装置1、2は同じ構成要素として説明したが、空気分離装置として機能する限り、構成要素が異なっていてもよい。
【0031】
(実施例)
図1Aの構成において、還流配管L81による還流を行わず、配管L81から廃ガスとして排出した比較例に比べ、還流配管L81を設けて還流をした実施例では、製品酸素ガス製造部C2(または配管L93)において製造される液化窒素の量が約5.7モル%増加したことをシミュレーションにより確認した。このシミュレーションにより、本発明に係る装置の熱効率が改善されたことが明らかになった。
【符号の説明】
【0032】
A1、B1、B2、B3、B4 空気分離システム
C1 純アルゴンン製造部
C2 製品酸素ガス製造部
C3 アルゴンおよび酸素ガス製造部
C11 純アルゴン精留塔
C12 第三凝縮部
C22 圧縮機
C23 膨張タービン
C24 気液分離部
E1 第一熱交換部
E2 第二熱交換部
E11 第四熱交換部
1 第一空気分離装置
2 第二空気分離装置
11 主熱交換器
12 第一精留塔(高圧精留塔)
13 第一凝縮部
14 第二精留塔(低圧精留塔)
15 第三精留塔(粗アルゴン精留塔)
16 第二凝縮部
17 サブクーラ
18 膨張タービン
図1A
図1B
図1C
図1D
図2