(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183202
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】自動車用ドアのベルトラインシール構造
(51)【国際特許分類】
B60J 10/75 20160101AFI20231220BHJP
B60J 10/16 20160101ALI20231220BHJP
B60J 10/33 20160101ALI20231220BHJP
【FI】
B60J10/75
B60J10/16
B60J10/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096702
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱中 雅子
(72)【発明者】
【氏名】荻原 健太
(72)【発明者】
【氏名】池本 峻
(72)【発明者】
【氏名】殿山 詩乃
(72)【発明者】
【氏名】前川 善彦
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA12
3D201BA01
3D201CA20
3D201DA11
3D201DA13
3D201DA31
3D201EA11
(57)【要約】
【課題】ベルトラインのフランジ部にシール材を組み付ける場合に、組付作業性を良好にする。
【解決手段】シール材20の外側壁部22には、ガラスGに接するシールリップ部26a、26bが車室外側へ向けて突出するように設けられている。外側壁部22における車室内側の面には、フランジ部の車室外側の面に接する上側係止突起27A及び下側係止突起27Bが設けられている。上側係止突起27Aと下側係止突起27Bの間には、組付時において、上側係止突起27Aをフランジ部の上端部付近の車室外側面へ案内する案内面22dが形成されている。案内面22dの上端部から車室外側に向けて上方向に傾斜する傾斜面22eが形成されている。上側係止突起27Aは軟質樹脂で構成され、傾斜面22eから車室内側へ向けて上方向に突出するとともに、上端へ行くほど薄くなるリップ形状とされている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアのベルトラインを構成する上方へ突出したフランジ部に、当該フランジ部とガラスとの間をシールするシール材が組み付けられた自動車用ドアのベルトラインシール構造において、
前記シール材は、前記フランジ部の車室内側に位置する内側壁部と、前記フランジ部の車室外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部の上端部と前記外側壁部の上端部とを連結する上壁部とを有し、
前記外側壁部には、前記自動車用ドアが有するガラスの車室内面に接するシールリップ部が車室外側へ向けて突出して車両前後方向に延びるように設けられ、
前記外側壁部における車室内側の面の上側部分及び下側部分には、それぞれ、前記フランジ部の車室外側の面に接する上側係止突起及び下側係止突起が設けられ、
前記外側壁部における車室内側の面の前記上側係止突起と前記下側係止突起との間には、前記上側係止突起の車室内側部から前記下側係止突起の基端方向へ延び、組付時において、前記シール材の前記上側係止突起を前記フランジ部の上端部付近の車室外側面へ案内する案内面が形成され、
前記案内面の上端部から車室外側に向けて延び、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜する傾斜面が形成され、
前記上側係止突起は、前記内側壁部、前記外側壁部及び前記上壁部を構成する材料よりも軟らかい軟質樹脂で構成され、前記傾斜面から車室内側へ向けて上方向に突出するとともに、上端へ行くほど薄くなるリップ形状とされていることを特徴とする自動車用ドアのベルトラインシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用ドアのベルトラインシール構造において、
前記上側係止突起の車室内側面は、前記フランジ部の車室外側面に弾接するように形成されていることを特徴とする自動車用ドアのベルトラインシール構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の自動車用ドアのベルトラインシール構造において、
前記傾斜面は、前記上側係止突起の基端よりも車室外側まで延びており、
前記上側係止突起の車室外側面は、前記外側壁部から離れるように形成されているとともに、前記上側係止突起の上端部は、前記上壁部から離れるように形成されていることを特徴とする自動車用ドアのベルトラインシール構造。
【請求項4】
請求項1に記載の自動車用ドアのベルトラインシール構造において、
前記案内面の上端部と前記上側係止突起の基端の下端部との接続部分に、車室内側に向けて開口する凹部形状が形成されることを特徴とする自動車用ドアのベルトラインシール構造。
【請求項5】
請求項4に記載の自動車用ドアのベルトラインシール構造において、
前記シールリップ部は、前記内側壁部、前記外側壁部及び前記上壁部を構成する材料よりも軟らかい軟質樹脂で構成され、
前記案内面と、前記傾斜面と、前記案内面の中間部から前記傾斜面の上側部分まで延びる境界面とで囲まれる領域も前記軟質樹脂で構成されていることを特徴とする自動車用ドアのベルトラインシール構造。
【請求項6】
請求項1に記載の自動車用ドアのベルトラインシール構造において、
前記内側壁部、前記外側壁部及び前記上壁部は、前記シールリップ部を構成する材料よりも硬い硬質樹脂で構成されていることを特徴とする自動車用ドアのベルトラインシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車用ドアのベルトラインに設けられるベルトラインシール構造に関し、特に、ベルトラインを構成しているフランジ部にシール材を取り付ける構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されている自動車用ドアのベルトラインシール構造は、ウインドガラスの周縁部を支持するウインドフレームに設けられたガラスランと、ベルトラインのフランジ部にガラスランとは別体に設けられたシール材とを備えている。具体的には、
図8に示すように、ドア200のベルトラインのフランジ部210はアウタパネル210aとインナパネル210bとからなり、上方へ突出するとともに車両前後方向に延びている。シール材220は、下方に開放されるとともに前後方向に延びる溝221を有しており、この溝221がフランジ部210に対して上方から挿入されるようになっている。溝221の車室内側の面221a及び車室外側の面221bには、それぞれ、フランジ部210を厚み方向に挟持する係止リップ221cや上側係止突起221d、下側係止突起221e等が形成されている。上側係止突起221d及び下側係止突起221eは、シール材220の本体部分223を構成する材料よりも軟らかい軟質材で構成されている。
【0003】
図8に示すような構成において、フランジ部210に対して溝221が組み付けられる時には、実線で示すようにフランジ部210の上方にシール材220の溝221を配置した後、仮想線で示すようにシール材220とフランジ部210との相対的な位置関係が移行し、その後、図示しないが、フランジ部210に対して溝221が完全に組み付けられてフランジ部210と溝221の車室内側の面221aとが互いに略平行な状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シール材220の本体部分223と上側係止突起221dとの材料が互いに異なることから、本体部分223と上側係止突起221dとの間には材料境界が存在することになる。設計時は、
図8に示すように本体部分223の車室外側の面221bから上側係止突起221dにかけて段差が生じないような形状に設定している。これは、フランジ部210に対して溝221が組み付けられる時に当該フランジ部210の上端が上記材料境界に引っ掛からないようにすることを狙った構成である。
【0006】
しかしながら、実際の押出成形品を見てみると、本体部分223と上側係止突起221dとの材料が互いに異なっていることに起因して、上記材料境界に凹みが生じてしまう場合がある。こうなると、シール材220とフランジ部210とが
図8に仮想線で示すような位置関係になった時に、フランジ部210の上端が上記材料境界の凹みに引っ掛かってしまい、ひいてはシール材220の組付作業性が悪化する。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、ベルトラインのフランジ部にシール材を組み付ける場合に、組付作業性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様では、自動車用ドアのベルトラインを構成する上方へ突出したフランジ部に、当該フランジ部とガラスとの間をシールするシール材が組み付けられた自動車用ドアのベルトラインシール構造を前提とすることができる。前記シール材は、前記フランジ部の車室内側に位置する内側壁部と、前記フランジ部の車室外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部の上端部と前記外側壁部の上端部とを連結する上壁部とを有している。前記外側壁部には、前記自動車用ドアが有するガラスの車室内面に接するシールリップ部が車室外側へ向けて突出して車両前後方向に延びるように設けられている。前記外側壁部における車室内側の面の上側部分及び下側部分には、それぞれ、前記フランジ部の車室外側の面に接する上側係止突起及び下側係止突起が設けられている。前記外側壁部における車室内側の面の前記上側係止突起と前記下側係止突起との間には、前記上側係止突起の車室内側部から前記下側係止突起の基端方向へ延び、組付時において、前記シール材の前記上側係止突起を前記フランジ部の上端部付近の車室外側面へ案内する案内面が形成されている。前記案内面の上端部から車室外側に向けて延び、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜する傾斜面が形成されている。前記上側係止突起は、前記内側壁部、前記外側壁部及び前記上壁部を構成する材料よりも軟らかい軟質樹脂で構成され、前記傾斜面から車室内側へ向けて上方向に突出するとともに、上端へ行くほど薄くなるリップ形状とされている。
【0009】
この構成によれば、シール材を自動車用ドアのベルトラインのフランジ部に組み付ける際には、フランジ部の上端部に対してシール材の外側壁部と内側壁部との間の溝が組み付けられていく。組付の途中段階でシールリップ部がガラスに接触し、その反力によってシール材が正規の組み付け位置に対して車室内側へ傾くことがある。傾いた状態のとき、シール材の上側係止突起が案内面によってフランジ部の上端部付近の車室外側面へ案内されるので組み付け易くなる。
【0010】
また、シール材の押出成形の際、上側係止突起が外側壁部よりも軟らかい軟質樹脂で構成されているので、上側係止突起の基端と外側壁部との境界部分に凹みが形成されることがある。この場合、組付途中の段階でフランジ部の上端部が凹みに引っ掛かり気味になる可能性があるが、そうなったとしても、本構成では上側係止突起がリップ形状であることから、シール材を車室内側へ傾ける等することでフランジ部の上端部によって押されて弾性変形し、フランジ部の上端部の引っ掛かりが解消される。また、上側係止突起のリップ形状は上端へ行くほど薄くなっているので、フランジ部の上端部によって押されたときに弾性変形し易くなるとともに、フランジ部の上端部が上側係止突起の車室内側面によっても案内されることになり、正規の組付位置に達し易くなる。
【0011】
本開示の第2の態様では、前記上側係止突起の車室内側面は、前記フランジ部の車室外側面に弾接するように形成することができる。この構成によれば、上側係止突起をフランジ部に密着させてシール性を高めることができるとともに、シール材とフランジ部の接触部からの異音の発生を抑制することができる。
【0012】
本開示の第3の態様に係る傾斜面は、前記上側係止突起の基端よりも車室外側まで延びるものであってもよい。また、前記上側係止突起の車室外側面は、前記外側壁部から離れるように形成されているとともに、前記上側係止突起の上端部は、前記上壁部から離れるように形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、フランジ部の上端部が上側係止突起の車室内側面に接触した時、上側係止突起を車室外側へ弾性変形させ易くなるので、組付作業性がより一層良好になる。
【0014】
本開示の第4の態様では、前記案内面の上端部と、前記上側係止突起の基端の下端部
との接続部分に、車室内側に向けて開口する凹部形状が形成される。
【0015】
この構成によれば、シール材を押出成形する際に、押出バラツキにより、上側係止突起の基端の下端部が案内面の上端部よりも車室内側にできてしまい、案内面の上端部と、上側係止突起の基端の下端部との接続部分に、下側に向けて開口する凹部形状が形成された場合(図示は省略)には、フランジ部の上端部が引っ掛かり易くなってしまうが、その不具合事象を未然に防止することができ、フランジ部の上端部が湾曲面に引っ掛かり難くなる。
【0016】
本開示の第5の態様では、前記シールリップ部を、前記内側壁部、前記外側壁部及び前記上壁部を構成する材料よりも軟らかい軟質樹脂で構成することができる。前記案内面と、前記傾斜面と、前記案内面の中間部から前記傾斜面の上側部分まで延びる境界面とで囲まれる領域も前記軟質樹脂で構成することができる。
【0017】
この構成によれば、軟質樹脂で構成される領域が広くなるので、上側係止突起をフランジ部の車室外側の面に確実に密着させることができるとともに、シール材とフランジ部の接触部からの異音の発生をより一層抑制することができる。
【0018】
本開示の第6の態様では、前記内側壁部、前記外側壁部及び前記上壁部が前記シールリップ部を構成する材料よりも硬い硬質樹脂で構成することができる。
【0019】
この構成によれば、外側壁部、内側壁部及び上壁部が硬質樹脂で構成されていて、適度な剛性を有しているので、フランジ部への組み付け後に当該フランジ部から外れにくくなる。また、案内面が硬質樹脂で構成されるので、フランジ部の上端部が当接した際に案内面の変形が抑制され、案内面によってシール材の上側係止突起の車室内側面をフランジ部の上端部付近の車室外側面へ案内することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、上側係止突起をフランジ部の上端部付近の車室外側面へ案内する案内面と、案内面の上端部から車室外側に向けて上方向に傾斜する傾斜面とが外側壁部に形成され、上側係止突起が傾斜面から車室内側へ向けて上方向に突出するとともに、上端へ行くほど薄くなるリップ形状とされているので、フランジ部にシール材を組み付ける場合にフランジ部の上端部が上側係止突起の基端やその近傍に引っ掛かり難くなり、組付作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る自動車用ドアを備えた自動車の左側面図である。
【
図2】ベルトラインシール材の前後方向中間部の縦断面図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線に相当する断面であり、ドアトリムを省略した図である。
【
図4】左側のリヤドアを車室内側から見ており、ガラスラン及びベルトラインシール材の組み付け工程を説明する図である。
【
図6】フランジ部の上端部が案内面を通り過ぎた状態を示す
図5相当図である。
【
図8】従来のベルトラインシール材をフランジ部に組み付ける途中の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車100の左側面図である。この自動車100の側部の左右両側には、それぞれフロントドア101とリヤドア102とが配設されている。フロントドア101とリヤドア102は、本発明に係る自動車用ドアであり、各々の前端部が図示しないヒンジを介して回動可能に車体に取り付けられている。この実施形態では、本発明をリヤドア102に適用した場合について説明するが、これに限らず、フロントドア101に適用することも可能である。また、左右いずれのドア101、102にも本発明を適用することができる。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
【0024】
(リヤドアの構成)
リヤドア102は、該リヤドア102の略下半部を構成するドア本体103と、略上半部を構成するウインドフレーム104とを有しており、このリヤドア102には、ウインドガラスGが昇降可能に設けられている。ドア本体103の前端部が上記ヒンジを介して車体に取り付けられる。ドア本体103の内部には、ウインドガラスGを昇降動作させるためのウインドレギュレータ(図示せず)が収容されている。
【0025】
リヤドア102は、該右側リヤドア102の車室内側を構成するプレス成型品からなるインナパネル(ドアパネル)105(
図3~
図6に示す)と、該リヤドア102の車室外側を構成するプレス成型品からなるアウタパネル(ドアパネル)106(
図1に車両左側のものを示す)とを備えている。インナパネル105及びアウタパネル106は、例えば鋼板等からなるものである。
【0026】
図1に示すように、ウインドフレーム104は、ウインドガラスGの周縁部を支持する枠状のものであり、ウインドガラス用開口部108を形成している。ウインドフレーム104は、前側フレーム縦辺部104aと、後側フレーム縦辺部104bと、フレーム上辺部104cとを有している。前側フレーム縦辺部104aは、リヤドア102の前部において上下方向に延びている。後側フレーム縦辺部104bは、リヤドア102の後部において上下方向に延びている。前側フレーム縦辺部104a及び後側フレーム縦辺部104bの下部はドア本体103の内部に達しており、ウインドガラスGを下降させた際にドア本体103の内部まで案内することができるようになっている。また、フレーム上辺部104cは、前側フレーム縦辺部104aの上端部から後側フレーム縦辺部104bの上端部まで延びており、ウインドガラスGの形状に対応して後側へ行くほど下に位置するように傾斜している。
【0027】
リヤドア102のベルトライン107は、ウインドガラス用開口部108の下縁部に沿って延びる部分である。ベルトライン107は、略水平に延びていてもよいし、後側へ行くほど上に位置するように、即ち、前側へ向かって下降傾斜しながら延びていてもよい。
図3に示すように、ベルトライン107は上方へ突出したフランジ部109で構成されている。インナパネル105におけるフランジ部109を構成する部分は、上方へ延出するインナ側延出板部105aである。また、アウタパネル106におけるフランジ部109を構成する部分は、上方へ延出するアウタ側延出板部106aである。インナ側延出板部105a及びアウタ側延出板部106aは、前側フレーム縦辺部104a近傍から後側フレーム縦辺部104b近傍まで前後方向に連続して延びている。インナ側延出板部105aの車室外面にアウタ側延出板部106aの車室内面が重ね合わされた状態で、インナ側延出板部105a及びアウタ側延出板部106aが接合されている。よって、フランジ部109は、インナパネル105とアウタパネル106とを合わせた厚みを有している。尚、フランジ部109は、インナパネル105とアウタパネル106の一方のみで構成されていてもよい。また、フランジ部109は鉛直に突出していてもよいし、鉛直面に対して傾斜するように突出していてもよい。また、フランジ部109について、
図3と
図5および
図6には、インナパネル105とアウタパネル106の上端が同じ高さになるように図示しているが、同じ高さでなくてもよい。
【0028】
ウインドガラスGはウインドレギュレータによって昇降し、最上端位置で全閉状態になり、最下端位置で全開状態となる。最下端位置は、
図1に仮想線で示す位置及び
図4に実線で示す位置であり、ウインドガラスGが完全にはドア本体103内部に収容されない。すなわち、最下端位置にあるウインドガラスGの上端部は、その大部分がベルトライン107の上端部(
図3に示すフランジ部109の上端部と同じ)よりも上に位置しているが、ウインドガラスGの後部については、その上端部がベルトライン107の上端部よりも下に位置している。これは、ウインドフレーム104の形状に起因するものである。
【0029】
また、本発明はウインドフレーム104を備えていないドア(図示せず)に対しても適用することができる。
【0030】
(ガラスラン)
図4の(B)~(D)に示すように、リヤドア102には、ガラスラン10が取り付けられている。尚、
図4は、左側のリヤドア102を車室内側(インナパネル105側)から見た概略図であり、(A)はガラスラン10及び後述するベルトラインシール材20を組み付ける前の状態を示し、(B)はガラスラン10を組み付けた状態を示し、(C)はベルトラインシール材20を組み付ける途中の状態を示し、(D)はベルトラインシール材20を組み付けた状態を示す。
【0031】
ガラスラン10は、ウインドフレーム104とウインドガラスGとの間をシールするシール材であるとともに、ウインドガラスGを上下方向に案内する機能も持っている。ガラスラン10は、前側フレーム縦辺部104aに沿って延びる前側ガラスラン縦辺部10aと、後側フレーム縦辺部104bに沿って延びる後側ガラスラン縦辺部10bと、フレーム上辺部104cに沿って延びるガラスラン上辺部10cとで構成されている。
【0032】
(ベルトラインシール材)
図3に示すように、リヤドア102のフランジ部109には、当該フランジ部109とウインドガラスGとの間をシールするベルトラインシール材20が組み付けられている。このベルトラインシール材20が本発明のシール材に相当するものであり、従って、リヤドア102は、フランジ部109にベルトラインシール材20が組み付けられることによって構成されたベルトラインシール構造を備えている。
【0033】
ベルトラインシール材20は、フランジ部109に沿ってガラスラン10の前側ガラスラン縦辺部10aから後側ガラスラン縦辺部10bまで連続して延びている。ベルトラインシール材20は、フランジ部109の車室内側に位置する内側壁部21と、フランジ部109の車室外側に位置する外側壁部22と、内側壁部21の上端部と外側壁部22の上端部とを連結する上壁部23とを有している。内側壁部21、外側壁部22及び上壁部23は、例えば硬質樹脂等により一体成形されている。硬質樹脂は、例えばタルクやガラス繊維を混合した樹脂とすることができ、内側壁部21、外側壁部22及び上壁部23がベルトラインシール材20の芯材として機能する。これにより、例えば作業者がベルトラインシール材20を長手方向に手で引っ張っても長手方向には寸法変化を起こさない、即ち長手方向に伸縮不能な強度を持つことになる。
【0034】
内側壁部21と外側壁部22との車室内外方向の間隔は、フランジ部109の厚みよりも十分に広く設定されている。内側壁部21の下側部分には、下端に近づくほど車室内側に位置するように形成された傾斜部21aが一体成形されている。これにより、内側壁部21の下端と、外側壁部22の下端との車室内外方向の寸法が拡大するので、後述する組付時にフランジ部109に対して内側壁部21と外側壁部22との間の溝29を組み付け易くなる。傾斜部21aの下端部には、弾性変形部21eが設けられている。この弾性変形部21eは、ベルトラインシール材20のフランジ部109への組み付け後、インナパネル105に接触するように配置されている。
【0035】
内側壁部21の上端部には、湾曲リップ支持部21bが上方へ突出するように一体成形されている。この湾曲リップ支持部21bの上端部に、湾曲リップ部24の基端部(下端部)が接続されている。湾曲リップ部24は、内側壁部21、外側壁部22及び上壁部23を構成する硬質樹脂よりも軟質な弾性材で構成されている。この弾性材としては、例えば軟質樹脂、ゴム等を挙げることができ、具体的には、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマーや、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴムを挙げることができるが、これらに限られるものではない。湾曲リップ部24は、上方へ突出するとともに、上端に近づくほど車室外側に位置するように湾曲形成されている。
【0036】
図2にも示すように、内側壁部21の車室外側の面には、上側係止リップ25aと下側係止リップ25bとが設けられている。すなわち、内側壁部21の車室外側の面には、上側係止リップ支持部21cと下側係止リップ支持部21dとが上下方向に間隔をあけた状態で一体成形されている。上側係止リップ支持部21cの先端部に上側係止リップ25aの基端部が接続され、下側係止リップ支持部21dの先端部に下側係止リップ25bの基端部が接続されている。上側係止リップ25a及び下側係止リップ25bは、外側壁部22に接近する方向に突出しており、フランジ部109に組付けられていない状態では、上側係止リップ25a及び下側係止リップ25bの先端部が外側壁部22の車室内側の面近傍に位置している。一方、
図3に示すように、フランジ部109に組付けられると、上側係止リップ25a及び下側係止リップ25bの先端薄肉部がフランジ部109の車室内側の面に当接して上方へ屈曲した形状に弾性変形する。上側係止リップ25a及び下側係止リップ25bの材料は、湾曲リップ部24と同様な弾性材である。
【0037】
外側壁部22には、ウインドガラスGの車室内面に接触する上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bが車室外側へ向けて突出して前後方向に延びるように設けられている。上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bは互いに上下方向に間隔をあけて配置されており、上側シールリップ部26aは外側壁部22の上端部に、下側シールリップ部26bは外側壁部22の下端部にそれぞれ設けられている。すなわち、外側壁部22の車室外側の面の上側部分には、上側シールリップ支持部22aが車室外側へ向けて突出するように一体成形され、また、外側壁部22の車室外側の面の下側部分には、下側シールリップ支持部22bが車室外側へ向けて突出するように一体成形されている。上側シールリップ支持部22a及び下側シールリップ支持部22bは前後方向に延びている。そして、上側シールリップ支持部22aの先端部に上側シールリップ部26aの基端部が接続され、下側シールリップ支持部22bの先端部に下側シールリップ部26bの基端部が接続されている。上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bの材料は、湾曲リップ部24と同様な弾性材である。また、上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bにおけるウインドガラスGと接触する部位には、ウインドガラスGの昇降をスムーズに行えるようにするために、植毛Fを配置している。
【0038】
上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bは、車室外側へ行くほど上に位置するように形成されている。ウインドガラスGに弾接していないとき(
図2示す)は、ウインドガラスGに弾接しているとき(
図3に示す)に比べて傾斜が緩くなっている。つまり、上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bがウインドガラスGに弾接すると傾斜がきつくなるように弾性変形し、そのときの上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bの反力がベルトラインシール材20の全体に対して作用することになる。
【0039】
この実施形態では、上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bをウインドガラスGに対して強く弾接させるようにしており、これにより、ベルトラインシール材20によるシール性能が高まり、車室外の騒音が車室に侵入し難くなる。さらに、リップ部26a、26bを2枚設定して2重シール構造としているので、このことによってもシール性能を高めることができる。その反面、上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bの反力が大きくなっている。
【0040】
図2に示すように、外側壁部22における車室内側の面の上側部分及び下側部分には、それぞれ、フランジ部109の車室外側の面に弾接する上側係止突起27A及び下側係止突起27Bが設けられている。上側係止突起27Aは、上側係止リップ25aよりも上側に位置している。
【0041】
外側壁部22の車室内側の面には、下側係止突起支持部22cが上側係止突起27Aから下方へ離れて一体成形されている。下側係止突起支持部22cの先端部に下側係止突起27Bの基端部が接続されている。
図3に示すように、フランジ部109に組み付けられた状態で、上側係止突起27A及び下側係止突起27Bの先端部がフランジ部109の車室外側の面に弾接する。上側係止突起27A及び下側係止突起27Bの材料は、湾曲リップ部24と同様な弾性材である。
【0042】
外側壁部22における車室内側の面には、上側係止突起27Aと下側係止突起27Bとの間に案内面22dが形成されている。案内面22dは、上側係止突起27Aの車室内側部から下側係止突起27Bの基端部方向へ延びており、下へ行くほど車室外側に位置するように傾斜した傾斜面で構成されている。案内面22dは、下へ行くほど車室外側に位置するように湾曲した面であってもよい。
【0043】
より具体的には、案内面22dの上端部は、上側係止突起27Aの車室内側面27bよりも車室内側に位置している。案内面22dの下端部は、下側係止突起支持部22cの基端部近傍、または上側シールリップ支持部22aと下側シールリップ支持部22bとの中間部まで延びている。案内面22dは、ベルトラインシール材20をフランジ部109に組付ける時において、ベルトラインシール材20の上側係止突起27Aをフランジ部109の上端部付近の車室外側面へ案内する面として作用する。案内面22dは、硬質樹脂からなる外側壁部22の面の一部であることから、フランジ部109の上端部が当接しても変形しにくい面となっている。
【0044】
外側壁部22における車室外側の面には、上側シールリップ支持部22aの基端部近傍に肉盗み部28が形成されている。この実施形態では、肉盗み部28は、外側壁部22における車室外側の面に形成された凹部で構成されている。肉盗み部28は、上側シールリップ支持部22aの基端部近傍に形成されるとともに、外側壁部22の前端部から後端部に亘って連続している。肉盗み部28は、その上側へ行くほど深くなっている。具体的には、上側シールリップ支持部22aの基端部手前付近が最も深くなっており基端部付近では、逆に浅くなっている。肉盗み部28の車室内側面における案内面22dと同じ高さに位置している部分は、案内面22dと平行に延びるように形成された平行面28aとされている。
【0045】
すなわち、上記案内面22dを形成すると、外側壁部22の肉厚が上側へ行くほど厚くなり、剛性が高くなり過ぎるおそれがあるが、肉盗み部28を形成することにより、外側壁部22の剛性を適度に低下させることができる。特に、平行面28aを設けていることで、外側壁部22の肉厚が上下方向の所定範囲で一定になる。つまり、案内面22dの形成による外側壁部22の厚肉化を回避することができる。
【0046】
また、肉盗み部28の上側面には平行面28aと上側シールリップ支持部22aの基端部近傍とを接続する面取部28bが形成されている。より具体的には、
図2に破線で示す、上側シールリップ支持部22aの下側面の延長線と、
図2に破線で示す、平行面28aの上側延長線に対して、面取部28b(面取R部)を設定している。そうする事により、外側壁部22において、面取部28b(面取R部)が剛性の高い部分となり、それに対して、そこの直下部分である、平行面28aが剛性の低い部分となる。この構成により、剛性が急変する部分が設定できる事となり、ベルトラインシール材20全体が、この剛性が急変する部分を境として、より一層ねじりやすくなり、組付け性を更に向上することが可能となる。
【0047】
外側壁部22における車室内側の面には、案内面22dの上端部から車室外側に向けて延び、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜する傾斜面22eが形成されている。上側係止突起27Aは、上記軟質樹脂で構成され、傾斜面22eから車室内側へ向けて上方向に突出するとともに、上端へ行くほど薄くなるリップ形状とされている。
【0048】
傾斜面22eの上側部分は、上側係止突起27Aの基端よりも車室外側まで延びている。また、傾斜面22eの下側部分は、上側係止突起27Aの基端よりも車室内側まで延びている。つまり、上側係止突起27Aの基端の車幅方向の寸法は、傾斜面22eの下端から上端までの寸法よりも短く設定されている。
【0049】
上側係止突起27Aの車室外側面27a及び車室内側面27bは、上端へ行くほど車室内側に位置するように形成されている。また、上側係止突起27Aの車室外側面27a及び車室内側面27bは、上側係止突起27Aが上述したようにリップ形状とされているため、上端へ行くほど互いに接近するように形成され、上端部27cで連続している。
【0050】
また、
図3に示すように、ベルトラインシール材20がフランジ部109に組み付けられた状態で、上側係止突起27Aの車室内側面27bがフランジ部109の車室外側面に弾接するように、当該車室内側面27bが形成されている。これにより、上側係止突起27Aの車室内側面27bの広い範囲をフランジ部109の車室外側面に密着させることができるので、シール性が高まるとともに、硬質樹脂製の案内面22dや後述する湾曲面22fがフランジ部109に直接当接し難くなるため、異音の発生をより抑制することができる。
【0051】
また、
図2に示すように、上側係止突起27Aの車室外側面27aは、外側壁部22から離れるように形成されている。具体的には、上側係止突起27Aの車室外側面27aが外側壁部22の車室内面から車室内側へ離れるように形成されている。従って、上側係止突起27Aの車室外側面27aと外側壁部22の車室内面とが車室内外方向に離れた状態で互いに対向する位置関係となり、上側係止突起27Aの車室外側面27aと外側壁部22の車室内面との間に空間Sが形成される。これにより、
図3に示すように、上側係止突起27Aが車室外側へ撓み変形する際に、上側係止突起27Aの車室外側面27aが外側壁部22の車室内面に干渉し難くなり、容易に撓み変形可能になる。
【0052】
また、更に
図2に示すように、上側係止突起27Aの上端部27cは、上壁部23の下面から下方に離れている。これにより、
図3に示すように、上側係止突起27Aが車室外側へ撓み変形する際に、上側係止突起27Aの上端部27cが上壁部23の下面に干渉し難くなり、容易に撓み変形可能になる。
【0053】
案内面22dと傾斜面22eとの接続部分には、湾曲面22fからなる面取り形状が設けられている。すなわち、湾曲面22fは、案内面22dの上端部から傾斜面22eの下端部まで延びており、この湾曲面22fの形成によって案内面22dと傾斜面22eとの間がエッジ形状になるのが抑制される。また、上側係止突起27Aの基端の下端部は、湾曲面22fの上端部に位置付けられている。
【0054】
このような狙い形状にしておけば、ベルトラインシール材20を押出成形する際に、押出バラツキにより、上側係止突起27Aの基端の下端部が案内面22dの上端部よりも車室内側にできてしまい、案内面22dの上端部と、上側係止突起27Aの基端の下端部との接続部分に、下側に向けて開口する凹部形状が形成された場合(図示は省略)には、フランジ部109の上端部が引っ掛かり易くなってしまうが、その不具合事象を未然に防止することができ、フランジ部109の上端部が湾曲面22fに引っ掛かり難くなる。
【0055】
(組付方法)
次に、上述のように構成されたベルトラインシール材20の組付方法について説明する。ガラスラン10及びベルトラインシール材20の組付前は、
図4の(A)に示す状態となっており、上述したように最下降位置にあるウインドガラスGの上縁部の大部分がベルトライン107よりも上に位置し、後部のみベルトライン107よりも下に位置している。
【0056】
まず、
図4の(B)に示すように、ガラスラン10をウインドフレーム104に組み付ける。その後、(C)に示すように、ベルトラインシール材20を組み付けていく。このとき、ベルトラインシール材20が長尺状かつ高剛性な部材であることから、車両上下方向に屈曲させることがほとんどできず、前側と後側を同時に組み付けるのは困難であり、(C)に示すように、ベルトラインシール材20の前側を後側よりも先に組み付けるようにする。このため、ベルトラインシール材20を、前側が後側よりも下に位置するように傾斜させてから、ベルトラインシール材20の前側の外側壁部22と内側壁部21の間をフランジ部109に組付けて行く。このとき、ベルトラインシール材20はまだフランジ部109によって殆ど拘束されていないので、ベルトラインシール材20の姿勢の自由度が高く、組み付け易い。また、ベルトラインシール材20の外側壁部22の車室内側の面に案内面22dが形成されているので、組付時において、シール材20の上側係止突起27Aをフランジ部109の上端部付近の車室外側面へ案内する作用効果を発揮し、このことによっても組み付け易くなる。
【0057】
フランジ部109に対してベルトラインシール材20の前側の外側壁部22と内側壁部21の間の溝29が形成された部分を組付けた状態で(C)におけるA-A線断面は、
図1におけるIII-III線断面を示す
図3と殆ど同じになる。
【0058】
一方、
図4の(C)における後側の断面であるV-V線断面は、
図5に示すようになる。すなわち、ベルトラインシール材20の前側がフランジ部109に対して既に組付けられているので、フランジ部109によってベルトラインシール材20の前側が拘束されているとともに、上側シールリップ部26a及び下側シールリップ部26bがウインドガラスGに弾接し、そのときの反力が
図5に矢印300で示す方向に作用する。これはウインドガラスGが完全に下降しないことに起因する。これにより、ベルトラインシール材20の後側が正規の組み付け位置に対して車室内側へ傾くことがある。
【0059】
この状態で、ベルトラインシール材20の外側壁部22における車室外側の面には、肉盗み部28が形成されていて外側壁部22の剛性が低下しているので、作業者は、ベルトラインシール材20の傾きを矢印300で示す方向に対して逆の方向に修正するように当該ベルトラインシール材20を容易にねじり変形させることが可能になる。しかし、ベルトラインシール材20の傾きを完全に修正するのは難しく、
図5に示す程度までしか修正できない場合がある。この場合、
図6に示すように、ベルトラインシール材20の後側を更に下げていくと、フランジ部109の上端部がベルトラインシール材20の案内面22dに当接して案内面22dによってシール材20の上側係止突起27Aがフランジ部109の上端部付近の車室外側面へ案内され、その結果、フランジ部109の上端部が上側係止突起27Aの基端近傍に達する。
【0060】
ベルトラインシール材20の押出成形の際、上側係止突起27Aが外側壁部22よりも軟らかい軟質樹脂で構成されているので、上側係止突起27Aの基端の下端部と外側壁部22の案内面22dの上端部との接続部分に車室内側に向けて開口する凹みが形成されることがある。この場合、組付途中の段階でフランジ部109の上端部が車室内側に向けて開口する凹みに引っ掛かり気味になる可能性があるが、そうなったとしても、本実施形態では上側係止突起27Aがリップ形状であるとともに、上側係止突起27Aと外側壁部22との間に空間Sが形成されていることから、ベルトラインシール材20を車室内側へ傾ける等することでフランジ部109の上端部によって押されて弾性変形する。これにより、フランジ部109の上端部の引っ掛かりが解消される。また、上側係止突起27Aのリップ形状は上端へ行くほど薄くなっているので、上側係止突起27Aがフランジ部109の上端部によって車室外側へ押されたときに弾性変形し易くなるとともに、フランジ部109の上端部が上側係止突起27Aの車室内側面27bによっても案内されることになり、正規の組付位置に達し易くなる。したがって、ベルトラインシール材20の後側についても組み付け易くなる。
【0061】
ベルトラインシール材20の組付け後は、
図3に示すように、上側係止突起27A及び下側係止突起27Bと、上側係止リップ25a及び下側係止リップ25bとの両方がフランジ部109に弾接するので、ベルトラインシール材20の組付位置が安定する。
【0062】
尚、ベルトラインシール材20の組付については、例えばベルトラインシール材20の後側を前側よりも先に組付けるようにしてもよい。また、図示しないが、フロントドア101用のベルトラインシール材の組付も同様に行うことができる。
【0063】
(変形例)
図7は、実施形態の変形例を示している。
図7に示す変形例では、案内面22dの上下方向中間部から傾斜面22eの上側部分まで延びる境界面22gが形成されている。境界面22gは、上下方向に延びている。そして、上側係止突起27Aだけでなく、案内面22dと、傾斜面22eと、境界面22gとで囲まれる領域も軟質樹脂で構成されている。この変形例の場合、上側係止突起27Aだけなく、上側係止突起27Aの基端近傍の広い範囲を軟質樹脂で構成できるので、上側係止突起27Aをフランジ部109の車室外側の面に確実に密着させることができるとともに、シール材20とフランジ部109の接触部からの異音の発生をより抑制することができる。
【0064】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る自動車用ドアのベルトラインシール構造によれば、ベルトラインシール材20の上側係止突起27Aをフランジ部109の上端部付近の車室外側面へ案内する案内面22dを外側壁部22に形成し、さらに案内面22dの上端部から車室外側に向けて上方向に傾斜する傾斜面22eを外側壁部22に形成している。そして、上側係止突起27Aが傾斜面22eから車室内側へ向けて上方向に突出するとともに、上端へ行くほど薄くなるリップ形状としたので、フランジ部109にベルトラインシール材20を組み付ける場合にフランジ部109の上端部が上側係止突起27Aの基端やその近傍に引っ掛かり難くなり、組付作業性を良好にすることができる。
【0065】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明に係る自動車用ドアのベルトラインシール構造は、例えば、自動車の側部に配設されるドアにガラスラン及びベルトラインシール材を別々に組み付ける際に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 ガラスラン
20 ベルトラインシール材
21 内側壁部
22 外側壁部
22d 案内面
22e 傾斜面
22g 境界面
23 上壁部
26a 上側シールリップ部
26b 下側シールリップ部
27A 上側係止突起
27B 下側係止突起
29 溝
107 ベルトライン
109 フランジ部
G ウインドガラス