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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183204
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ドハティ増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20231220BHJP
   H03F 3/60 20060101ALI20231220BHJP
   H03F 3/189 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/60
H03F3/189
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096711
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】浅見 紘考
【テーマコード(参考)】
5J067
5J500
【Fターム(参考)】
5J067AA04
5J067AA21
5J067AA63
5J067AA64
5J067AA65
5J067CA36
5J067CA92
5J067FA12
5J067FA15
5J067FA16
5J067FA19
5J067HA09
5J067HA29
5J067HA33
5J067KA13
5J067KA16
5J067KA29
5J067KA41
5J067KS03
5J067KS11
5J067KS25
5J067LS12
5J067QA04
5J067QS02
5J067TA01
5J067TA02
5J067TA05
5J500AA04
5J500AA21
5J500AA63
5J500AA64
5J500AA65
5J500AC36
5J500AC92
5J500AF12
5J500AF15
5J500AF16
5J500AF19
5J500AH09
5J500AH29
5J500AH33
5J500AK13
5J500AK16
5J500AK29
5J500AK41
5J500AQ04
5J500AT01
5J500AT02
5J500AT05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特性を向上させたドハティ増幅器を提供する。
【解決手段】ドハティ増幅器100は、入力端子Tinに入力した入力信号を2つの信号に分配する分配器30と、一方の信号を増幅し増幅された信号を第1ノードN1に出力するメインアンプ10と、他方の信号を増幅し増幅された信号を第2ノードN2に出力するピークアンプ20と、メインアンプとピークアンプから出力される信号とを合成し出力端子Toutに出力する第3ノードN3と、第1ノードN1と第3ノードN3に接続され基本波の2倍の周波数の2次高調波においてメインアンプから第1ノードN1をみたインピーダンスに対し第3ノードN3のインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させるインピーダンス変換回路34と、第1ノードN1に接続され2次高調波におけるインピーダンスを基本波におけるインピーダンスより小さくする高調波処理回路40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に入力した入力信号を2つの信号に分配する分配器と、
前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し増幅された信号を第1ノードに出力する第1アンプと、
前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し増幅された信号を第2ノードに出力する第2アンプと、
前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成し合成した信号を出力端子に出力する第3ノードと、
第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続され、動作帯域の中心周波数の信号である基本波の2倍の周波数の信号である2次高調波において、前記第1アンプから前記第1ノードをみたインピーダンスに対し前記第1アンプから前記第3ノードをみたインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させるインピーダンス変換回路と、
第1端が前記第1ノードにおいて前記第1アンプと前記第3ノードとを接続する線路に接続され、前記2次高調波における前記第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を前記基本波における前記第1端の前記基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路と、
を備えるドハティ増幅器。
【請求項2】
入力端子に入力した入力信号を2つの信号に分配する分配器と、
前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し増幅された信号を第1ノードに出力する第1アンプと、
前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し増幅された信号を第2ノードに出力する第2アンプと、
前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成し合成した信号を出力端子に出力する第3ノードと、
第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続され、動作帯域の中心周波数の信号である基本波の2倍の周波数の信号である2次高調波において、前記第1アンプから前記第1ノードをみたインピーダンスに対し前記第1アンプから前記第3ノードをみたインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させるインピーダンス変換回路と、
第1端が、前記第3ノード、前記第1アンプと前記第3ノードとを接続する第1線路、前記第2アンプと前記第3ノードとを接続する第2線路、および前記第3ノードと前記出力端子とを接続する第3線路のいずれかに位置する第4ノードに接続され、前記2次高調波における前記第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を前記基本波における前記第1端の前記基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路と、
を備え、
前記第3ノードと前記第4ノードとの電気長は、前記中心周波数を有する信号の波長の1/16以下であるドハティ増幅器。
【請求項3】
前記高調波処理回路は、前記2次高調波において前記第1端と前記基準電位との間をショートにし、前記基本波において前記第1端と前記基準電位との間をショートにしない請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【請求項4】
前記高調波処理回路は、前記基本波において前記第1端と前記基準電位との間をオープンにする請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【請求項5】
前記高調波処理回路は、電気長が前記基本波の波長の3/16以上かつ5/16以下であり、第2端が基準電位に接続されたスタブである請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【請求項6】
前記高調波処理回路は、電気長が前記基本波の波長の1/16以上かつ3/16以下であり、第2端が開放されたスタブである請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【請求項7】
前記インピーダンス変換回路は、前記基本波において、前記第1アンプから前記第1ノードをみたインピーダンスに対し前記第1アンプから前記第3ノードをみたインピーダンスをスミスチャート上において180°±22.5°の範囲内で回転させる請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【請求項8】
前記インピーダンス変換回路は、電気長が前記基本波の波長の3/16以上かつ5/16以下の伝送線路である請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【請求項9】
第1端が前記第2アンプと前記第3ノードとを接続する線路に接続され、前記2次高調波における前記第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を前記基本波における前記第1端の前記基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路は設けられていない請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【請求項10】
前記第1アンプはメインアンプであり、前記第2アンプはピークアンプである請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【請求項11】
前記第1アンプはピークアンプであり、前記第2アンプはメインアンプである請求項1または請求項2に記載のドハティ増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドハティ増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波等の高周波信号を増幅する増幅器としてドハティ増幅器が知られている。ドハティ増幅器においてはメインアンプとピークアンプとが並列に入力信号を増幅し、増幅された信号は合成ノードにおいて合成される。メインアンプと合成ノードの間の線路およびピークアンプと合成ノードの間の線路のいずれかに高調波成分を処理する高調波処理回路を設けることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-74320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の例えば図8および図9では、1個の高調波処理回路の第1端はメインアンプまたはピークアンプと合成ノードとの間の線路内のノードに接続されている。特許文献1には、高調波処理回路を接続するノードと合成ノードとの間の線路の長さについては記載されていない。高調波処理回路を1個とすることでドハティ増幅器を小型化できる。しかし、1個の高調波処理回路が、メインアンプから出力される高調波とピークアンプから出力される高周波とを適切に処理しなければ、ドハティ増幅器の特性が劣化してしまう。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、入力端子に入力した入力信号を2つの信号に分配する分配器と、前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し増幅された信号を第1ノードに出力する第1アンプと、前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し増幅された信号を第2ノードに出力する第2アンプと、前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成し合成した信号を出力端子に出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続され、動作帯域の中心周波数の信号である基本波の2倍の周波数の信号である2次高調波において、前記第1アンプから前記第1ノードをみたインピーダンスに対し前記第1アンプから前記第3ノードをみたインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させるインピーダンス変換回路と、第1端が前記第1ノードにおいて前記第1アンプと前記第3ノードとを接続する線路に接続され、前記2次高調波における前記第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を前記基本波における前記第1端の前記基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路と、を備えるドハティ増幅器である。
【0007】
本開示の一実施形態は、入力端子に入力した入力信号を2つの信号に分配する分配器と、前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し増幅された信号を第1ノードに出力する第1アンプと、前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し増幅された信号を第2ノードに出力する第2アンプと、前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成し合成した信号を出力端子に出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続され、動作帯域の中心周波数の信号である基本波の2倍の周波数の信号である2次高調波において、前記第1アンプから前記第1ノードをみたインピーダンスに対し前記第1アンプから前記第3ノードをみたインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させるインピーダンス変換回路と、第1端が、前記第3ノード、前記第1アンプと前記第3ノードとを接続する第1線路、前記第2アンプと前記第3ノードとを接続する第2線路、および前記第3ノードと前記出力端子とを接続する第3線路のいずれかに位置する第4ノードに接続され、前記2次高調波における前記第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を前記基本波における前記第1端の前記基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路と、を備え、前記第3ノードと前記第4ノードとの電気長は、前記中心周波数を有する信号の波長の1/16以下であるドハティ増幅器である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図2図2は、実施例1におけるノードN1およびN3におけるインピーダンスのスミスチャートである。
図3図3は、実施例1の変形例1に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図4図4は、実施例1の変形例2に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図5図5は、実施例1の変形例3に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図6図6は、実施例2に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図7図7は、実施例2の変形例1に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図8図8は、実施例2の変形例2に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図9図9は、実施例2の変形例3に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図10図10は、実施例1、2およびその変形例における高調波処理回路の例を示す回路図である。
図11図11は、実施例1、2およびその変形例における高調波処理回路の例を示す回路図である。
図12図12は、実施例1、2およびその変形例における高調波処理回路の例を示す回路図である。
図13図13は、実施例1、2およびその変形例における高調波処理回路の例を示す回路図である。
図14図14は、実施例1、2およびその変形例におけるインピーダンス変換回路の例を示す回路図である。
図15図15は、実施例1、2およびその変形例におけるインピーダンス変換回路の例を示す回路図である。
図16図16は、実施例1、2およびその変形例におけるインピーダンス変換回路の例を示す回路図である。
図17図17は、実施例2およびその変形例におけるノードN3付近の平面図である。
図18図18は、比較例2に係るドハティ増幅器のブロック図である。
図19図19は、比較例1における出力電力Pに対する効率を示す図である。
図20図20は、比較例2における出力電力Pに対する効率を示す図である。
図21図21は、実施例1の変形例2における出力電力Pに対する効率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、入力端子に入力した入力信号を2つの信号に分配する分配器と、前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し増幅された信号を第1ノードに出力する第1アンプと、前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し増幅された信号を第2ノードに出力する第2アンプと、前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成し合成した信号を出力端子に出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続され、動作帯域の中心周波数の信号である基本波の2倍の周波数の信号である2次高調波において、前記第1アンプから前記第1ノードをみたインピーダンスに対し前記第1アンプから前記第3ノードをみたインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させるインピーダンス変換回路と、第1端が前記第1ノードにおいて前記第1アンプと前記第3ノードとを接続する線路に接続され、前記2次高調波における前記第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を前記基本波における前記第1端の前記基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路と、を備えるドハティ増幅器である。
(2)本開示の一実施形態は、入力端子に入力した入力信号を2つの信号に分配する分配器と、前記2つの信号のうち一方の信号を増幅し増幅された信号を第1ノードに出力する第1アンプと、前記2つの信号のうち他方の信号を増幅し増幅された信号を第2ノードに出力する第2アンプと、前記第1アンプから出力される信号と前記第2アンプから出力される信号とを合成し合成した信号を出力端子に出力する第3ノードと、第1端が前記第1ノードに接続され、第2端が前記第3ノードに接続され、動作帯域の中心周波数の信号である基本波の2倍の周波数の信号である2次高調波において、前記第1アンプから前記第1ノードをみたインピーダンスに対し前記第1アンプから前記第3ノードをみたインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させるインピーダンス変換回路と、第1端が、前記第3ノード、前記第1アンプと前記第3ノードとを接続する第1線路、前記第2アンプと前記第3ノードとを接続する第2線路、および前記第3ノードと前記出力端子とを接続する第3線路のいずれかに位置する第4ノードに接続され、前記2次高調波における前記第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を前記基本波における前記第1端の前記基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路と、を備え、前記第3ノードと前記第4ノードとの電気長は、前記中心周波数を有する信号の波長の1/16以下であるドハティ増幅器である。
(3)上記(1)または(2)において、前記高調波処理回路は、前記2次高調波において前記第1端と前記基準電位との間をショートにし、前記基本波において前記第1端と前記基準電位との間をショートにしないことが好ましい。
(4)上記(1)または(2)において、前記高調波処理回路は、前記基本波において前記第1端と前記基準電位との間をオープンにすることが好ましい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記高調波処理回路は、電気長が前記基本波の波長の3/16以上かつ5/16以下であり、第2端が基準電位に接続されたスタブであることが好ましい。
(6)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記高調波処理回路は、電気長が前記基本波の波長の1/16以上かつ3/16以下であり、第2端が開放されたスタブであることが好ましい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記インピーダンス変換回路は、前記基本波において、前記第1アンプから前記第1ノードをみたインピーダンスに対し前記第1アンプから前記第3ノードをみたインピーダンスをスミスチャート上において180°±22.5°の範囲内で回転させることが好ましい。
(8)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記インピーダンス変換回路は、電気長が前記基本波の波長の3/16以上かつ5/16以下の伝送線路であることが好ましい。
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、第1端が前記第2アンプと前記第3ノードとを接続する線路に接続され、前記2次高調波における前記第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を前記基本波における前記第1端の前記基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路は設けられていないことが好ましい。
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記第1アンプはメインアンプであり、前記第2アンプはピークアンプであることが好ましい。
(11)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記第1アンプはピークアンプであり、前記第2アンプはメインアンプであることが好ましい。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかるドハティ増幅器の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
[実施例1]
実施例1およびその変形例1は、メインアンプと合成ノードとの間にインピーダンス変換回路を有する順ドハティ増幅器の例である。図1は、実施例1に係るドハティ増幅器のブロック図である。図1に示すように、実施例1のドハティ増幅器100では、入力端子Tinと出力端子Toutとの間にメインアンプ10とピークアンプ20とが並列に接続されている。入力端子Tinに入力信号として高周波信号が入力する。分配器30は入力端子Tinに入力した入力信号を2つの信号に分配する。分配器30は例えばウイルキソン型分配器である。
【0012】
分配された一方の信号はメインアンプ10に入力する。メインアンプ10は、一方の信号を増幅し増幅された信号をノードN1に出力する。メインアンプ10では、入力した信号は整合回路14および高調波処理回路16を介し増幅素子12に入力する。整合回路14は分配器30から整合回路14をみたインピーダンスを整合回路14から増幅素子12をみたインピーダンスに整合させる。高調波処理回路16は、例えば入力信号に含まれる基本波を通過させ、高調波信号を抑圧するフィルタである。高調波処理回路16は設けられていなくてもよい。増幅素子12は入力した信号を増幅し整合回路18を介しノードN1に出力する。整合回路18は、増幅素子12から整合回路18をみたインピーダンスを整合回路18からノードN1をみたインピーダンスに整合させる。メインアンプ10からノードN1に出力された信号はインピーダンス変換回路34(Z変換回路)を介しノードN3に出力される。
【0013】
分配器30が分配した他方の信号は位相調整回路32を介し、ピークアンプ20に入力する。位相調整回路32は、メインアンプ10とピークアンプ20との位相差を調整する。ピークアンプ20は、他方の信号を増幅し増幅された信号をノードN2に出力する。ピークアンプ20では、入力した信号は整合回路24および高調波処理回路26を介し増幅素子22に入力する。整合回路24は分配器30から整合回路24をみたインピーダンスを整合回路24から増幅素子22をみたインピーダンスに整合させる。高調波処理回路26は、例えば入力信号に含まれる基本波を通過させ、高調波信号を抑圧するフィルタである。高調波処理回路26は設けられていなくてもよい。増幅素子22は入力した信号を増幅し整合回路28を介しノードN2に出力する。整合回路28は、増幅素子22から整合回路28をみたインピーダンスを整合回路28からノードN2をみたインピーダンスに整合させる。ピークアンプ20からノードN2に出力された信号はノードN3に出力される。
【0014】
合成ノードであるノードN3(第3ノード)は、メインアンプ10から出力された信号とピークアンプ20から出力された信号とを合成し、合成された信号を出力端子Toutに出力する。インピーダンス変換回路36(Z変換回路)は、ノードN3からインピーダンス変換回路36をみたインピーダンスをインピーダンス変換回路36から出力端子Toutをみたインピーダンスに変換する。
【0015】
増幅素子12および22は、例えばFET(Field Effect Transistor)であり、ソースは接地され、ゲートに高周波信号が入力し、ドレインから信号が出力される。FETは、例えばGaNFETまたはLDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor)である。増幅素子12および22にはそれぞれ多段のFETが設けられていてもよい。増幅素子12および22にバイアス電圧を供給するバイアス回路の図示は省略している。
【0016】
増幅素子12は、AB級またはB級動作し、増幅素子22はC級動作する。入力電力が小さいときには増幅素子12が主に入力信号を増幅する。入力電力が大きくなると、増幅素子12に加え、増幅素子22が入力信号のピークを増幅する。これにより、増幅素子12と22とが入力信号を増幅する。入力電力が小さく増幅素子22がオフのとき、メインアンプ10からノードN3をみたインピーダンスは出力端子Toutの負荷Rの2倍(例えば100Ω)である。入力電力が大きくなり増幅素子22が動作するとき、メインアンプ10およびピークアンプ20から各々ノードN3をみたインピーダンスは、出力端子Toutの負荷R(例えば50Ω)である。整合回路18は、増幅素子22がオフのとき負荷2Rにおいて増幅素子12が飽和出力電力で最適動作する(例えば効率が最大となる)ように調整されており、増幅素子22が動作するとき負荷Rにおいて増幅素子12が飽和出力電力で最適動作する(例えば効率が最大となる)ように調整されている。整合回路28は、増幅素子22がオフのとき、ノードN3から増幅素子22をみたインピーダンスがオープンとなるように調整されており、一方、増幅素子22が動作するとき、負荷Rにおいて増幅素子22が飽和出力電力で最適動作するように調整されている。
【0017】
基本波は、ドハティ増幅器100の動作帯域(すなわち、ドハティ増幅器が所望の増幅特性を得られる周波数帯域)の中心周波数の信号である。2次高調波は基本波の2倍の周波数を有する信号である。増幅素子12および22は基本波を増幅するが、2次高調波を生成してしまう。出力端子Toutから出力される2次高調波が大きい場合、2次高調波としてエネルギーが出力されるため、基本波における効率が低下してしまう。高調波処理回路40は、2次高調波が出力端子Toutから出力されないように処理し、ドハティ増幅器100の特性を向上させるために設けられている。
【0018】
ノードN1に高調波処理回路40の第1端が接続されている。高調波処理回路40が信号線路に接続されるノードをノードN4とすると、ノードN1とN4とは一致している。高調波処理回路40は、2次高調波ではノードN1およびN4をグランド等の基準電位に対しショートにし、基本波ではノードN1およびN4を基準電位に対しショートさせず、例えばオープンに近い状態とする。ノードN1およびN4と基準電位とがショートのとき、ノードN1およびN4と基準電位とのインピーダンスの絶対値はほぼ0である。ノードN1およびN4と基準電位とがオープンのとき、ノードN1およびN4と基準電位とのインピーダンスの絶対値はほぼ無限大である。
【0019】
図2は、実施例1におけるノードN1およびN3におけるインピーダンスのスミスチャートである。インピーダンスは、メインアンプ10からノードN1またはN3をみたインピーダンスである。高調波処理回路40により、ノードN1における2次高調波のインピーダンスはショートであり、図2のショートの位置60である。これにより、メインアンプ10から出力された2次高調波はノードN1においてほとんど反射される。
【0020】
インピーダンス変換回路34は、整合回路18からノードN1をみたインピーダンスを図2のスミスチャート上において矢印62のように基準インピーダンス66を中心に時計方向に360°回転させインピーダンス変換回路34からノードN3をみたインピーダンスに変換する。これにより、整合回路18からノードN3をみたインピーダンスとインピーダンス変換回路34からノードN1をみたインピーダンスとはスミスチャート上のほぼ同じ位置となる。よって、ノードN3における2次高調波のインピーダンスはショートであり、図2のショートの位置60である。これにより、ピークアンプ20から出力された2次高調波はノードN3においてほとんど反射される。
【0021】
一方、基本波では、増幅素子12から整合回路18をみた負荷インピーダンスは増幅素子12が上述した最適動作するように設定されている。整合回路18は、増幅素子12から整合回路18をみた虚数成分を有する上記負荷インピーダンスを、整合回路18からノードN1をみたインピーダンスを図2のほぼ実軸64上に変換する。高調波処理回路40は、基本波ではノードN1を基準電位に対しほぼオープンとする。このため、高調波処理回路40は、整合回路18からノードN1をみたインピーダンスにほとんど影響しない。よって、メインアンプ10から出力された基本波はノードN1においてほとんど反射されない。インピーダンス変換回路34は、整合回路18からノードN1をみたインピーダンスを図2において基準インピーダンス66を中心に時計回りに180°回転させインピーダンス変換回路34からノードN3をみたインピーダンスに変換する。これにより、インピーダンス変換回路34は、基本波に対してはノードN1における図2のほぼ実軸64上のインピーダンスをノードN3におけるほぼ実軸64上のインピーダンスに変換するインピーダンス変換回路として機能する。ピークアンプ20から出力された基本波はノードN3においてほとんど反射されない。
【0022】
以上のように、メインアンプ10からノードN1に伝送される2次高調波のノードN1における反射係数はメインアンプ10からノードN1に伝送される基本波の反射係数より大きくなり、ピークアンプ20からノードN3に伝送される2次高調波のノードN3における反射係数はピークアンプ20からノードN3に伝送される基本波の反射係数より大きくなる。
【0023】
メインアンプ10およびピークアンプ20により増幅された基本波は、ノードN3において合成され、合成された基本波は出力端子Toutから出力される。一方、メインアンプ10およびピークアンプ20において生成された2次高調波は、それぞれノードN1およびN3において反射され、出力端子Toutからほとんど出力されない。よって、ドハティ増幅器100の効率等の高周波特性を向上できる。なお、位相調整回路32等により、メインアンプ10およびピークアンプ20により増幅された基本波のノードN3における位相は互いに同じになるように調整されている。
【0024】
このように、メインアンプ10とピークアンプ20とに各々高調波処理回路を設けなくてもよいため、ドハティ増幅器を小型化できる。1個の高調波処理回路40を用いても、メインアンプ10とピークアンプ20とにそれぞれ高調波処理回路を設けた場合と同程度に高調波を処理できる。よって、ドハティ増幅器100の効率等の高調波特性を向上させることができる。
【0025】
[実施例1の変形例1]
図3は、実施例1の変形例1に係るドハティ増幅器のブロック図である。図3に示すように、実施例1の変形例1のドハティ増幅器101では、メインアンプ10内に整合回路18が設けられておらず、整合回路18の代わりに高調波位相調整回路17が設けられている。ピークアンプ20内に整合回路28が設けられておらず、整合回路28の代わりに高調波位相調整回路27が設けられている。ノードN3とインピーダンス変換回路36の間に整合回路38が設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0026】
実施例1の変形例1のように、メインアンプ10内の整合回路18およびピークアンプ20内の整合回路28を設けず、ノードN3と出力端子Toutとの間に整合回路38を設けてもよい。出力側の整合回路38が1個の場合、増幅素子12と22の両方の負荷インピーダンスを最適化できない場合がある。このような場合には、増幅素子12の負荷インピーダンスを優先的に最適化する。実施例1では、整合回路18および28はノードN1およびN3において2次高調波が反射されることを見込んで2次高調波の位相を調整する場合がある。このような場合、実施例1の変形例1では、2次高調波の位相を調整する高調波位相調整回路17および27を設ける。高調波位相調整回路17および27は設けられていなくてもよい。
【0027】
[実施例1の変形例2]
実施例1の変形例2および3は、ピークアンプと合成ノードとの間にインピーダンス変換回路を有する逆ドハティ増幅器の例である。図4は、実施例1の変形例2に係るドハティ増幅器のブロック図である。図4に示すように、実施例1の変形例2のドハティ増幅器102では、インピーダンス変換回路34はノードN2とN3との間に設けられている。高調波処理回路40は、ノードN2においてピークアンプ20とノードN3との間の線路に接続されている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0028】
実施例1の変形例2では、ノードN2に高調波処理回路40の第1端が接続されている。高調波処理回路40が信号線路に接続されるノードN4とノードN2とはほぼ一致している。高調波処理回路40は、2次高調波ではノードN2およびN4を基準電位に対しほぼショートにし、基本波ではノードN2およびN4を基準電位に対しショートさせず、例えばオープンに近い状態とする。これにより、ピークアンプ20から出力された信号のうち基本波はノードN2においてほとんど反射されることなくノードN2を通過する。2次高調波はノードN2においてほとんど反射され、ノードN2を通過しない。インピーダンス変換回路34により、ノードN3とグランドとの間は2次高調波ではほぼショートとなる。一方、ノードN3とグランドとの間は基本波ではショートしない。このため、ピークアンプ2から出力された信号のうち基本波はノードN3においてほとんど反射されることなくノードN3を通過する。2次高調波はノードN3においてほとんど反射される。このように、メインアンプ10およびピークアンプ20において増幅された基本波はノードN3において合成され出力端子Toutから出力される。メインアンプ10およびピークアンプ20において生成された2次高調波は、それぞれノードN3およびN2において反射され、出力端子Toutからほとんど出力されない。
【0029】
[実施例1の変形例3]
図5は、実施例1の変形例3に係るドハティ増幅器のブロック図である。図5に示すように、実施例1の変形例3のドハティ増幅器103では、メインアンプ10内に整合回路18が設けられておらず、整合回路18の代わりに高調波位相調整回路17が設けられている。ピークアンプ20内に整合回路28が設けられておらず、整合回路28の代わりに高調波位相調整回路27が設けられている。ノードN3とインピーダンス変換回路36の間に整合回路38が設けられている。その他の構成は実施例1の変形例2と同じであり説明を省略する。
【0030】
[実施例2]
実施例2およびその変形例1は順ドハティの例である。図6は、実施例2に係るドハティ増幅器のブロック図である。図6に示すように、実施例2のドハティ増幅器104では、高調波処理回路40の第1端はノードN3に接続されている。すなわち、高調波処理回路40が信号線路に接続されるノードN4と合成ノードであるノードN3とはほぼ一致している。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0031】
高調波処理回路40は、2次高調波ではノードN3およびN4を基準電位に対しショートにし、基本波ではノードN3およびN4を基準電位に対しショートさせず、例えばオープンに近い状態とする。これにより、ピークアンプ20から出力される信号のうち基本波はノードN3においてほとんど反射されることなくノードN3を通過する。2次高調波はノードN3においてほとんど反射される。インピーダンス変換回路34により、ノードN1と基準電位との間は2次高調波ではショートとなる。このため、メインアンプ10から出力される信号のうち基本波はノードN1を通過し、2次高調波はノードN1においてほとんど反射される。このように、メインアンプ10およびピークアンプ20において生成された2次高調波は、それぞれノードN1およびN3において反射され、出力端子Toutから出力されない。
【0032】
このように、メインアンプ10およびピークアンプ20により増幅された基本波は、ノードN3において合成され、合成された基本波は出力端子Toutから出力される。一方、メインアンプ10およびピークアンプ20において生成された2次高調波は、それぞれノードN1およびN3において反射され、出力端子Toutからほとんど出力されない。
【0033】
[実施例2の変形例1]
図7は、実施例2の変形例1に係るドハティ増幅器のブロック図である。図7に示すように、実施例2の変形例1のドハティ増幅器105では、メインアンプ10内に整合回路18が設けられておらず、整合回路18の代わりに高調波位相調整回路17が設けられている。ピークアンプ20内に整合回路28が設けられておらず、整合回路28の代わりに高調波位相調整回路27が設けられている。ノードN3とインピーダンス変換回路36の間に整合回路38が設けられている。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0034】
[実施例2の変形例2]
実施例2の変形例2および3は、逆ドハティ増幅器の例である。図8は、実施例2の変形例2に係るドハティ増幅器のブロック図である。図8に示すように、実施例2の変形例2のドハティ増幅器106では、インピーダンス変換回路34はノードN2とN3との間に設けられている。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0035】
実施例2の変形例2では、高調波処理回路40により、メインアンプ10から出力された信号のうち基本波はノードN3においてほとんど反射されることなくノードN3を通過する。2次高調波はノードN3においてほとんど反射され、ノードN3を通過しない。インピーダンス変換回路34により、ノードN2とグランドとの間は基本波ではショートせず2次高調波ではショートとなる。このため、ピークアンプ20から出力された信号のうち基本波はノードN2においてほとんど反射されることなくノードN3を通過する。2次高調波はノードN2においてほとんど反射される。このように、メインアンプ10およびピークアンプ20において増幅された基本波はノードN3において合成され出力端子Toutから出力される、メインアンプ10およびピークアンプ20において生成された2次高調波は、それぞれノードN3およびN2において反射され、出力端子Toutからほとんど出力されない。
【0036】
[実施例2の変形例3]
図9は、実施例2の変形例3に係るドハティ増幅器のブロック図である。図9に示すように、実施例2の変形例3のドハティ増幅器107では、メインアンプ10内に整合回路18が設けられておらず、整合回路18の代わりに高調波位相調整回路17が設けられている。ピークアンプ20内に整合回路28が設けられておらず、整合回路28の代わりに高調波位相調整回路27が設けられている。ノードN3とインピーダンス変換回路36の間に整合回路38が設けられている。その他の構成は実施例2の変形例2と同じであり説明を省略する。
【0037】
[高調波処理回路40の例]
図10から図13は、実施例1、2およびその変形例における高調波処理回路の例を示す回路図である。図10に示すように、高調波処理回路40の第1端はノードN4において伝送線路48に接続されている。伝送線路48には、矢印のように左から右に基本波および2次高調波を含む高周波信号が流れる。高調波処理回路40はオープンスタブである。スタブ42の第1端はノードN4において伝送線路48に接続される。スタブ42の第2端は開放されている。スタブ42のノードN4からの電気長D1を基本波の波長λの1/8とすると、2次高調波ではノードN4は基準電位に対しショートとなり、基本波ではノードN4は基準電位に対しショートとならない。これにより、ノードN4において2次高調波が反射される。ノードN4を基準電位に対しほぼショートとする観点から、スタブ42の電気長D1は、1λ/16以上かつ3λ/16以下が好ましく、3λ/32以上かつ5λ/32以下がより好ましく、7λ/64以上かつ9λ/64以下がさらに好ましい。
【0038】
図11に示すように、高調波処理回路40はショートスタブである。スタブ44の第1端はノードN4において伝送線路48に接続され、第2端はグランド等の基準電位に接続されている。スタブ44のノードN4から基準電位までの電気長D2を基本波の波長λの1/4とすると、2次高調波ではノードN4は基準電位に対しショートとなり、基本波ではノードN4は基準電位に対しオープンとなる。これにより、ノードN4において2次高調波が反射される。ノードN4を基準電位に対しほぼショートとする観点から、スタブ44の電気長D2は、3λ/16以上かつ5λ/16以下が好ましく、7λ/32以上かつ9λ/32以下がより好ましく、15λ/64以上かつ17λ/64以下がさらに好ましい。ショートスタブでは、基本波においてノードN4を基準電位に対しオープンとできるため、ノードN4における基本波の反射をより小さくできる。
【0039】
図12に示すように、高調波処理回路40はCRLH(Composite Right/Left Handed)線路である。ノードN4と基準電位との間に伝送線路45、キャパシタC1およびC2が直列接続されている。伝送線路45とキャパシタC1との間のノードと基準電位との間にインダクタL1が接続されている。キャパシタC1とC2との間のノードと基準電位との間にインダクタL2が接続されている。キャパシタC1およびC2のキャパシタンス、インダクタL1およびL2のインダクタンスを適切な値とすることで、2次高調波ではノードN4は基準電位に対しショートとなり、基本波ではノードN4は基準電位に対しショートとならない。
【0040】
図13に示すように、高調波処理回路40はシャントキャパシタである。ノードN4にキャパシタC0がシャント接続されている。キャパシタC0をシャント接続することで、2次高調波におけるノードN4と基準電位との間のインピーダンスの絶対値を基本波におけるノードN4と基準電位との間のインピーダンスの絶対値より小さくできる。これにより、ノードN4における2次高調波の反射係数は基本波の反射係数より大きくなる。キャパシタC0のキャパシタンスを適切に選択することにより、ノードN4における2次高調波の反射係数と基本波の反射係数との差をより大きくできる。
【0041】
図10から図13のように、高調波処理回路40は、2次高調波におけるノードN4の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を基本波におけるノードN4の基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくすればよい。2次高調波におけるノードN4の基準電位に対するインピーダンスの絶対値は、基本波におけるノードN4の基準電位に対するインピーダンスの絶対値の1/5以下が好ましく、1/10以下がより好ましく、1/20以下がさらに好ましい。
【0042】
高調波処理回路40は、2次高調波においてノードN4と基準電位との間をショートにし、基本波においてノードN4と基準電位との間をショートにしないことが好ましい。これにより、ノードN4における2次高調波の反射係数はほぼ1となり、高調波処理回路40はノードN4において2次高調波を反射させる。基本波はノードN4をほとんど通過する。ここで、2次高調波の周波数においてノードN4と基準電位との間がショートするとは、ノードN4と基準電位との間のインピーダンスの絶対値が基準インピーダンスの1/5倍以下であればよい。ノードN4と基準電位との間のインピーダンスの絶対値は基準インピーダンスの1/10倍以下がより好ましい。
【0043】
図11のショートスタブのように、高調波処理回路40は、2次高調波の周波数においてノードN4と基準電位との間をオープンにする。これにより、ノードN4における基本波の反射係数はほぼ0となり、高調波処理回路40はノードN4において基本波を反射させない。ここで、基本波の周波数においてノードN4と基準電位との間がオープンとなるとは、ノードN4と基準電位との間のインピーダンスの絶対値が基準インピーダンスの5倍以上であればよい。ノードN4と基準電位との間のインピーダンスの絶対値は基準インピーダンスの10倍以上がより好ましい。
【0044】
[インピーダンス変換回路34の例]
図14から図16は、実施例1、2およびその変形例におけるインピーダンス変換回路の例を示す回路図である。図14に示すように、インピーダンス変換回路34は、ノードN1またはN2とノードN3との間に接続された伝送線路35である。伝送線路35には、矢印のように左から右に基本波および2次高調波を含む高周波信号が流れる。伝送線路35におけるノードN1またはN2とN3との間の電気長D3は、基本波の波長λの1/4である。これにより、ノードN1またはN2に対しノードN3における基本波の位相は90°変化し、ノードN1またはN2に対しノードN3における2次高調波の位相は180°変化する。図2のスミスチャート上では、基本波におけるノードN3のインピーダンスはノードN1のインピーダンスに対し基準インピーダンス66を中心に180°回転し、2次高調波におけるノードN3のインピーダンスはノードN1のインピーダンスに対し基準インピーダンス66を中心に360°回転する。電気長D3は、電気長が基本波の波長の3/16以上かつ5/16以下が好ましく、7/32以上かつ9/32以下がより好ましく、15/64以上かつ17/64以下がさらに好ましい。なお、伝送線路35の基本波における特性インピーダンスは、基準インピーダンスでもよいが、基準インピーダンスと異なっていてもよい。
【0045】
図15に示すように、インピーダンス変換回路34は、ノードN1またはN2とノードN3との間に直列接続された伝送線路35aおよびキャパシタC3と、伝送線路35aとキャパシタC3とのノードにシャント接続されたインダクタL3である。伝送線路35aの電気長、キャパシタC3のキャパシタンスおよびインダクタL3のインダクタンスを適正に設計することで、図2のスミスチャート上において、基本波におけるノードN3のインピーダンスをノードN1のインピーダンスに対し基準インピーダンス66を中心に180°回転し、2次高調波におけるノードN3のインピーダンスをノードN1のインピーダンスに対し基準インピーダンス66を中心に360°回転させることができる。一例として、基本波の周波数が2GHzのとき、伝送線路35aの電気長を基本波の23°の位相に相当させ、伝送線路35aの特性インピーダンスを50Ωとする。キャパシタC3のキャパシタンスを1.2pFとし、インダクタL3のインダクタンスを3.4nHとする。キャパシタC3とインダクタL3を設けることで、伝送線路35aの電気長をλ/4より小さくできる。これにより、インピーダンス変換回路34を小型化できる。
【0046】
図16に示すように、インピーダンス変換回路34は、ノードN1またはN2とノードN3との間に直列接続されたインダクタL4およびキャパシタC4である。キャパシタC4のキャパシタンスおよびインダクタL4のインダクタンスを適正に設計することで、図2のスミスチャート上において、基本波におけるノードN3のインピーダンスをノードN1のインピーダンスに対し基準インピーダンス66を中心に180°回転し、2次高調波におけるノードN3のインピーダンスをノードN1のインピーダンスに対し基準インピーダンス66を中心に360°回転させることができる。一例として、基本波の周波数が2GHzのとき、キャパシタC4のキャパシタンスを0.1pFとし、インダクタL4のインダクタンスを15.805nHとする。図16では、伝送線路35および35aを設けないため、インピーダンス変換回路34を小型できる。
【0047】
図14から図16のように、インピーダンス変換回路34は、2次高調波において、ノードN1またはN2におけるインピーダンスに対しノードN3におけるインピーダンスをスミスチャート上において360°回転させればよい。2次高調波におけるインピーダンスの回転は、厳密に360°でなくてもよい。インピーダンス変換回路34は、2次高調波におけるインピーダンスを360°±45°の範囲内で回転させればよい。これにより、ノードN1またはN2においてショートの位置60のインピーダンスは、図2において外周上の位置68aと68bとの間の範囲に位置し、ノードN3においてほぼショートとなる。インピーダンス変換回路34は、2次高調波におけるインピーダンスを360°±22.5°の範囲内で変化させることが好ましく、360°±11.25°の範囲内で変化させることがより好ましい。
【0048】
インピーダンス変換回路34は、基本波において、ノードN1またはN2におけるインピーダンスに対しノードN3におけるインピーダンスをスミスチャート上において180°回転させればよい。基本波におけるインピーダンスの回転は、厳密に180°でなくてもよい。インピーダンス変換回路34は、基本波におけるインピーダンスを180°±22.5°の範囲内で回転させればよい。これにより、基本波では、インピーダンス変換回路34はノードN1またはN2におけるほぼ実軸64上のインピーダンスをノードN3におけるほぼ実軸64上のインピーダンスに変換する。インピーダンス変換回路34は、基本波におけるインピーダンスを180°±11.25°の範囲内で変化させることが好ましく、180°±5.625°の範囲内で変化させることがより好ましい。
【0049】
[実施例2およびその変形例におけるノードN4の位置]
実施例2およびその変形例において、高調波処理回路40が接続されるノードN4の位置について説明する。図17は、実施例2およびその変形例におけるノードN3付近の平面図である。図17では、3個の高調波処理回路40が図示されているが、これは、1個の高調波処理回路40がノードN4a~N4cのいずれか1つのノードに接続されていることを示している。図17に示すように、メインアンプ10からノードN1を介しノードN3に至る線路50a、ピークアンプ20からノードN2を介しノードN3に至る線路50b、およびノードN3から出力端子Toutに至る線路50cが設けられている。線路50a~50cは、誘電体層56上に設けられた金属膜であり、誘電体層56下のグランド金属膜とでマイクロストリップ線路を形成する。線路50a~50cはコプレーサ線路の信号線路でもよい。線路50aおよび50bのそれぞれの中心線52aおよび52bが交差する箇所がノードN3である。
【0050】
高調波処理回路40の第1端が接続されるノードN4はノードN3と一致していることが好ましいが、ノードN4はノードN3と一致していなくてもよい。ノードN4は、ノードN4aのように線路50aに設けられていてもよく、ノードN4bのように線路50bに設けられていてもよく、ノードN4cのように線路50cに設けられていてもよい。高調波処理回路40内の線路の中心線54a~54cとそれぞれ中心線52a~52cと交差する箇所がノードN4a~N4cである。ノードN4a~N4cとノードN3との電気長が大きくなると、ノードN1またはN2とノードN4a~N4cとの間の2次高調波の位相差が無視できなくなり、2次高調波がノードN1またはN2において反射されなくなる。この観点から、ノードN4a~N4cとノードN3との電気長D5は、基本波の波長の1/16以下が好ましく、1/32以下がより好ましく、1/64以下がさらに好ましい。
【0051】
電気長D5は、中心線52aと52bが交差する点と、中心線52a~52cと54a~54cが交差する点と、の間の中心線52a~52cの物理的な長さから誘電体層56の比誘電率を考慮して算出できる。実施例1およびその変形例におけるノードN1またはN2とノードN3との電気長も同様に算出できる。
【0052】
[シミュレーション]
実施例1の変形例3の図5のドハティ増幅器103について、出力電力に対する効率をシミュレーションした。比較のため比較例1および比較例2について出力電力に対する効率をシミュレーションした。
【0053】
図18は、比較例2に係るドハティ増幅器のブロック図である。図18に示すように、比較例2のドハティ増幅器110では、増幅素子12と整合回路18との間のノードN4dに高調波処理回路40aの第1端が接続され、増幅素子22と整合回路28との間のノードN4eに高調波処理回路40bの第1端が接続されている。その他の構成は、実施例1の変形例2の図4のドハティ増幅器と同じである。比較例1では、図18において高調波処理回路40aおよび40bが設けられていない。基本波の周波数を3.5GHzとし、インピーダンス変換回路34を基本波の波長の1/4の電気長を有し特性インピーダンスが50Ωの伝送線路とし、高調波処理回路40、40aおよび40bを電気長が基本波の波長の1/4のショートスタブとした。
【0054】
図19は、比較例1における出力電力Pに対する効率を示す図である。図20は、比較例2における出力電力Pに対する効率を示す図である。図21は、実施例1の変形例2における出力電力Pに対する効率を示す図である。図19から図21において、効率はドレイン効率である。マーカm1は、飽和出力電力Psatの箇所を示し、マーカm2は、飽和出力電力Psatから約7dBmバックオフさせた箇所である。
【0055】
図19のように、比較例1では、マーカm1およびm2の効率はそれぞれ56.1%および51.9%である。図20のように、比較例2では、マーカm1およびm2の効率はそれぞれ58.8%および56.1%である。比較例2のように、メインアンプ10およびピークアンプ20に高調波処理回路40aおよび40bを設けることで、2次高調波が出力端子Toutに出力されることを抑制でき、効率を向上できる。図21のように、実施例1の変形例2では、マーカm1およびm2の効率はそれぞれ58.1%および55.8%である。実施例1の変形例2のように、高調波処理回路40を1個とし、ドハティ増幅器を小型化しても、効率は比較例2と同じ程度とすることができる。
【0056】
実施例2の変形例3の図9のドハティ増幅器107においても同様のシミュレーションを行ったところ、実施例1の変形例1と同様の結果が得られた。
【0057】
特許文献1のように、高調波処理回路を1個としても、高調波処理回路が接続されるノードN4の位置を適切に設定しないと、メインアンプ10が出力する2次高調波とピークアンプ20が出力する2次高調波の両方を適切に処理することはできない。このため、高調波処理回路を1個とし、ドハティ増幅器を小型化すると、高調波特性が劣化し、効率等が低下する。
【0058】
実施例1およびその変形例1は、順ドハティ増幅器である。このとき、図1および図3のように、第1ノードN1に増幅した信号を出力する第1アンプはメインアンプ10であり、第2ノードN2の増幅した信号を出力する第2アンプはピークアンプ20である。インピーダンス変換回路34は、第1端が第1ノードN1に接続され、第2端がノードN3に接続されている。高調波処理回路40は、第1端が第1ノードN1においてメインアンプ10と第3ノードN3を接続する線路に接続される。
【0059】
実施例1の変形例2および3は、逆ドハティ増幅器である。このとき、図4および図5のように、第1ノードN2に増幅した信号を出力する第1アンプはピークアンプ20であり、第2ノードN1の増幅した信号を出力する第2アンプはメインアンプ10である。インピーダンス変換回路34は、第1端が第1ノードN2に接続され、第2端がノードN3に接続されている。高調波処理回路40は、第1端が第1ノードN2においてピークアンプ20と第3ノードN3を接続する線路に接続される。
【0060】
このような、順ドハティ増幅器および逆ドハティ増幅器において、インピーダンス変換回路34は、2次高調波において、第1アンプから第1ノードN1またはN2をみたインピーダンスに対し第1アンプからノードN3をみたインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させる。高調波処理回路40は、2次高調波におけるノードN4の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を基本波におけるノードN4の基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする。これにより、第1アンプが出力する2次高調波は第1ノードN1またはN2においてほとんど反射され、第2アンプが出力する2次高調波は第3ノードN3においてほとんど反射される。よって、高調波処理回路40により、第1アンプから出力される2次高調波と第2アンプから出力される2次高調波をともに処理でき、ドハティ増幅器の特性を向上できる。
【0061】
実施例2およびその変形例1は、順ドハティ増幅器である。このとき、図6および図7のように、第1ノードN1に増幅した信号を出力する第1アンプはメインアンプ10であり、第2ノードN2の増幅した信号を出力する第2アンプはピークアンプ20である。インピーダンス変換回路34は、第1端が第1ノードN1に接続され、第2端が第3ノードN3に接続される。高調波処理回路40は、第1端が、第3ノードN3、メインアンプ10と第3ノードN3とを接続する第1線路、ピークアンプ20と第3ノードN3とを接続する第2線路、および第3ノードN3と出力端子Toutとを接続する第3線路のいずれかに位置する第4ノードN4に接続される。第3ノードN3と第4ノードN4との電気長は、基本波の波長の1/16以下である。
【0062】
実施例2の変形例2および3は、逆ドハティ増幅器である。このとき、図8および図9のように、第1ノードN2に増幅した信号を出力する第1アンプはピークアンプ20であり、第2ノードN1の増幅した信号を出力する第2アンプはメインアンプ10である。インピーダンス変換回路34は、第1端が第1ノードN2に接続され、第2端が第3ノードN3に接続される。高調波処理回路40は、第1端が、第3ノードN3、ピークアンプ20と第3ノードN3とを接続する第1線路、メインアンプ10と第3ノードN3とを接続する第2線路、および第3ノードN3と出力端子Toutとを接続する第3線路のいずれかに位置する第4ノードN4に接続される。第3ノードN3と第4ノードN4との電気長は、基本波の波長の1/16以下である。
【0063】
このような、順ドハティ増幅器および逆ドハティ増幅器において、インピーダンス変換回路34は、2次高調波において、第1アンプから第1ノードN1またはN2をみたインピーダンスに対し第1アンプからノードN3をみたインピーダンスをスミスチャート上において360°±45°の範囲内で回転させる。高調波処理回路40は、2次高調波におけるノードN4の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を基本波におけるノードN4の基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする。これにより、第1アンプが出力する2次高調波は第1ノードN1またはN2においてほとんど反射され、第2アンプが出力する2次高調波は第4ノードN4においてほとんど反射される。よって、高調波処理回路40により、第1アンプから出力される2次高調波と第2アンプから出力される2次高調波をともに処理でき、ドハティ増幅器の特性を向上できる。
【0064】
図1図3図9のように、第1端が第2アンプと第3ノードとを接続する線路に接続され、2次高調波における第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値を基本波における第1端の基準電位に対するインピーダンスの絶対値より小さくする高調波処理回路は設けられていない。これにより、高調波処理回路40が1個のため、ドハティ増幅器を小型化できる。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
10 メインアンプ(第1アンプまたは第2アンプ)
12、22 増幅素子
14、18、24、28、38 整合回路
16、26、40、40a、40b 高調波処理回路
17、27 高調波位相調整回路
20 ピークアンプ(第2アンプまたは第1アンプ)
30 分配器
32 位相調整回路
34 インピーダンス変換回路
35、35a、45、48 伝送線路
42、44 スタブ
50a~50c 線路
52a~52c、54a~54c 中心線
56 誘電体層
100~107、110 ドハティ増幅器
N1 ノード(第1ノードまたは第2ノード)
N2 ノード(第2ノードまたは第1ノード)
N3 ノード(第3ノード)
N4、N4a~N4e ノード(第4ノード)
D1~D3、D5 電気長
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
図18
図19
図20
図21