IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

<>
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図1
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図2
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図3
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図4
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図5
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図6
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図7
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図8
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図9
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図10
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図11
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図12
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図13
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図14
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図15
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図16
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図17
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図18
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図19
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図20
  • 特開-環境監視システムおよびサーバ 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183226
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】環境監視システムおよびサーバ
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20231220BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20231220BHJP
   G01D 3/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G06Q10/04
G08C19/00 G
G01D3/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096737
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 孝弘
【テーマコード(参考)】
2F073
2F075
5L049
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AB01
2F073BB01
2F073BB04
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DD07
2F073DE02
2F073DE08
2F073EE11
2F073EF05
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073GG01
2F073GG07
2F073GG08
2F075AA01
2F075EE16
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】センサが計測した計測値の高精度な補正を可能とする。
【解決手段】環境監視システムは、領域に設置された複数のセンサ端末、および、センサ端末とネットワークで接続されたサーバ100を備える。サーバ100は、センサ端末が環境値を計測した計測値を受信するサーバ通信部(入出力部180)と、センサ端末の状態に基づいて計測値を補正して環境値の推定値を算出する補正部112とを備える。センサ端末は繰り返し環境値を計測し、センサ端末の状態とは、当該センサ端末間の相対位置関係で示される状態であってもよい。この場合に補正部112は、今回の計測値と、前回の推定値と、センサ端末の状態とに基づいて今回の推定値を算出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
領域に設置された複数のセンサ端末、および、前記センサ端末とネットワークで接続されたサーバを備え、
前記センサ端末は、
物理量である前記領域の環境値を計測するセンサと、
前記センサが計測した環境値の計測値を前記サーバに送信するセンサ端末通信部とを備え、
前記サーバは、
前記計測値を受信するサーバ通信部と、
前記センサ端末の状態に基づいて前記計測値を補正して前記環境値の推定値を算出する補正部とを備える
環境監視システム。
【請求項2】
前記センサ端末は、繰り返し前記環境値を計測し、
前記センサ端末の状態は、当該センサ端末間の相対位置関係で示される状態であり、
前記補正部は、今回の前記計測値と、前回の前記推定値と、前記センサ端末の状態とに基づいて今回の前記推定値を算出する
請求項1に記載の環境監視システム。
【請求項3】
前記センサ端末は、繰り返し前記環境値を計測し、
前記補正部は、状態方程式が前記センサ端末の状態に基づく、カルマンフィルタを用いて前記推定値を算出する
請求項1に記載の環境監視システム。
【請求項4】
前記状態方程式は、前記センサ端末間の相対位置関係に基づく
請求項3に記載の環境監視システム。
【請求項5】
前記センサ端末が計測する環境値とは異なる、前記領域の環境値を計測する周囲センサをさらに備え、
前記補正部は、
前記周囲センサの計測値に基づいて前記状態方程式を変更して、前記環境値の推定値を算出する
請求項4に記載の環境監視システム。
【請求項6】
前記センサ端末は、構成要素への電源供給を選択的に停止する間欠制御部を備え、
前記センサ端末の状態は、前記電源供給の状態であり、
前記補正部は、今回の前記計測値と、前回の前記推定値と、前記センサ端末の状態とに基づいて今回の前記推定値を算出する
請求項1に記載の環境監視システム。
【請求項7】
前記センサ端末は、構成要素への電源供給を選択的に停止する間欠制御部を備え、
前記補正部は、観測方程式が前記電源供給の状態に基づく、カルマンフィルタを用いて前記推定値を算出する
請求項1に記載の環境監視システム。
【請求項8】
前記センサ端末は、構成要素への電源供給を選択的に停止する間欠制御部を備え、
前記サーバは、前記センサ端末の計測値、またはその推定値に基づいて前記センサ端末の間欠動作を制御する間欠動作指示部を備える
請求項1に記載の環境監視システム。
【請求項9】
前記間欠動作の動作様式は、
前記電源供給の停止/削減を行わない第1様式と、
前記電源供給の停止/削減を行う第2様式とを含み、
前記間欠動作指示部は、
前記第2様式で動作するセンサ端末の推定値が、第1閾値以上である場合に、当該センサ端末が前記第1様式に遷移するように制御し、
前記第1様式で動作するセンサ端末の推定値が、第2閾値以上である場合に、当該センサ端末の近隣のセンサ端末が前記第1様式に遷移するように制御する
請求項8に記載の環境監視システム。
【請求項10】
前記間欠動作指示部は、
前記第1様式で動作するセンサ端末の推定値が、所定時間の間第3閾値以下である場合に、当該センサ端末が前記第2様式に遷移するように制御する
請求項9に記載の環境監視システム。
【請求項11】
領域に設置された複数のセンサ端末から、物理量である前記領域の環境値の計測値を受信するサーバ通信部と、
前記センサ端末の状態に基づいて前記計測値を補正して前記環境値の推定値を算出する補正部とを備える
サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象の領域に配置されたセンサを用いて当該領域の環境を監視する環境監視システムおよびサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
温度やガス濃度などをセンサで計測して監視する技術として、特許文献1に記載の環境情報収集システムがある。この環境情報収集システムは、複数のセンサノードとサーバとを備える。各センサノードは、自身が計測した環境情報および他のセンサノードが計測した環境情報に基づいて、計測した環境情報を校正するための校正パラメータを算出するパラメータ算出手段と、当該校正パラメータを用いて自身が計測した環境情報を校正する補正演算手段とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-321620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の環境情報収集システムのような近傍のセンサの計測値による計測値の校正/補正では、センサ設置台数が少ない場合に十分な精度が得られないことがある。また、温度の伝達と比較してガスの拡散は風や空気の流れの影響を受けるため、一様に広がらない場合があり、補正が難しくなる。また省電力運転のためにガスセンサが間欠動作する場合には、セットアップ時間(起動してから安定した計測が可能になるまでの時間)を考慮して計測周期が長くなる懸念があり、補正を難しくする要因となる。
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、センサが計測した計測値の高精度な補正を可能とする環境監視システムおよびサーバを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、本発明に係る環境監視システムは、領域に設置された複数のセンサ端末、および、前記センサ端末とネットワークで接続されたサーバを備え、前記センサ端末は、物理量である前記領域の環境値を計測するセンサと、前記センサが計測した環境値の計測値を前記サーバに送信するセンサ端末通信部とを備え、前記サーバは、前記計測値を受信するサーバ通信部と、前記センサ端末の状態に基づいて前記計測値を補正して前記環境値の推定値を算出する補正部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、センサが計測した計測値の高精度な補正を可能とする環境監視システムおよびサーバを提供することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る環境監視システムの全体構成図である。
図2】第1実施形態に係るセンサ端末の機能ブロック図である。
図3】第1実施形態に係るサーバの機能ブロック図である。
図4】第1実施形態に係るガス(ガス濃度)の分布図である。
図5】第1実施形態に係る監視対象領域に配置されたセンサ端末の位置関係を示す図である。
図6】第1実施形態に係る分布図作成処理のフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る監視対象領域に設定された格子を説明するための図である。
図8】第1実施形態に係る発生源推測処理のフローチャートである。
図9】第1の実施形態に係る発生源推測処理で最初に算出された所定値以上のガス濃度の領域を示す図である。
図10】第1の実施形態に係る発生源推測処理における繰り返し処理の途中の回に算出された所定値以上のガス濃度の領域を示す図である。
図11】第1の実施形態に係る発生源推測処理で最後の1つ前に算出された所定値以上のガス濃度の領域を示す図である。
図12】第1の実施形態に係る発生源推測処理で最後に算出された所定値以上のガス濃度の領域を示す図である。
図13】第1実施形態の変形例に係る環境監視システムの全体構成図である。
図14】第2実施形態に係るセンサ端末の機能ブロック図である。
図15】第2実施形態に係る第1動作様式のタイミングチャートである。
図16】第2実施形態に係る第2動作様式のタイミングチャートである。
図17】第2実施形態にガスセンサの一例を示す図である。
図18】第2実施形態に係る電源供給開始からの時間経過にともなうセンサ抵抗の変化を示すグラフである。
図19】第2実施形態に係るサーバの機能ブロック図である。
図20】第2実施形態に係る間欠動作制御処理のフローチャートである。
図21】第2実施形態に係る間欠動作制御処理を補足説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪環境監視システムの概要≫
以下に本発明を実施するための形態(実施形態)における環境監視システムを説明する。環境監視システムは、複数のセンサ端末とサーバとを含んで構成される。センサ端末は、周期的にセンサで計測した温度やガス濃度などの計測値をサーバに送信する。サーバは、状態方程式がセンサ端末間の距離を反映するカルマンフィルタを用いて計測値を補正する(真の温度/ガス濃度を推定する)。
【0009】
このような環境監視システムを用いて監視することで、センサの校正(キャリブレーション)を行うことなく精度の高い温度やガス濃度などの環境値を得ることができるようになる。またセンサ端末間の距離が分かれば補正可能であるので、センサ端末の配置の自由度が高くなり、簡便にセンサ端末が設置可能となる。さらにセンサ端末を離散的に配置して空間全体の濃度の分布を可視化するためにはセンサ端末から離れた位置のガス濃度の推定が必要となるが、ガスは空気の流れによって局所的に偏ることがある。一時的な偏在の影響を本件の環境監視システムにより補正することで、全体的な分布を把握することができる。
【0010】
≪環境監視システムの全体構成≫
図1は、第1実施形態に係る環境監視システム10の全体構成図である。環境監視システム10は、監視対象領域に設置された複数のセンサ端末200と、サーバ100とを含んで構成される。センサ端末200とサーバ100とは、有線ないしは無線のネットワークで接続され、データ通信可能である。センサ端末200は、監視対象となるガス濃度(環境値)を定期的に計測して、サーバ100に計測値を送信する。サーバ100は、最新(今回)の計測値や前回の補正後の計測値(補正値)、センサ端末200の位置関係に基づいて、今回の補正値を算出する。さらにサーバ100は、補正値(ガス濃度)に基づいてガスの分布図を作成したり、ガスの発生源(ガス漏れ地点)を推測したりする。
【0011】
以上に説明したように環境監視システム10は、領域(監視対象領域)に設置された複数のセンサ端末200、および、センサ端末200とネットワークで接続されたサーバ100を備える。
【0012】
≪センサ端末の構成≫
図2は、第1実施形態に係るセンサ端末200の機能ブロック図である。センサ端末200は、制御部210、通信部251、計時部252、およびガスセンサ253を備える。通信部251はサーバ100とのデータ通信を行うデバイスである。計時部252はクロックを備えて時間を計測する。ガスセンサ253はガス濃度を計測する。
【0013】
制御部210はマイクロプロセッサを含んで構成され、計測値送信部211を備える。計測値送信部211は所定のタイミングで、計測時刻とガスセンサ253が計測したガス濃度(環境値)とをサーバ100に送信する。以下の説明では所定のタイミングは、例えば1秒おき、1分おきなど周期的であるタイミングであるとして説明する。
【0014】
以上に説明したようにセンサ端末200は、物理量である領域(監視対象領域)の環境値を計測するセンサ(ガスセンサ253)と、センサが計測した環境値の計測値をサーバ100に送信するセンサ端末通信部(通信部251)とを備える。
またセンサ端末200は、繰り返し環境値を計測する。
【0015】
≪サーバの構成≫
図3は、第1実施形態に係るサーバ100の機能ブロック図である。サーバ100はコンピュータであり、制御部110、記憶部130、および入出力部180を備える。入出力部180には、ディスプレイやキーボード、マウスなどのユーザインターフェイス機器が接続される。入出力部180は、さらに通信デバイスを備え、センサ端末200とのデータ(計測値)の通信が可能である。
【0016】
以上に説明したようにサーバ100は、計測値を受信するサーバ通信部(入出力部180)を備える。
【0017】
≪サーバ:記憶部≫
記憶部130は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびSSD(Solid State Drive)などの記憶機器を含んで構成される。記憶部130には、環境値データベース140、センサ端末データベース150、およびプログラム138が記憶される。
【0018】
環境値データベース140には、センサ端末200の識別情報と、計測時刻と、当該センサ端末200が送信したガス濃度の計測値と、補正後の計測値(真のガス濃度の推定値)とが関連付けられて記憶される。以下では、補正後の計測値を補正値または推定値とも記す。
センサ端末データベース150には、センサ端末200の識別情報と位置とが関連付けられて記憶される。
プログラム138は、補正処理や分布図作成処理(後記する図6参照)、発生源推測処理(後記する図8参照)の手順の記述を含む。
【0019】
≪サーバ:制御部≫
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。制御部110には、計測値格納部111、補正部112、分布図作成部113、発生源推測部114、および表示制御部115が備わる。
計測値格納部111は、センサ端末200から受信したデータについて、当該センサ端末200の識別情報と、計測時刻と、ガス濃度の計測値とを関連付けて環境値データベース140に格納する。以下では説明を簡単にするため、センサ端末200の計測は概ね同期しており、計測値格納部111は概ね同時刻に計測されたガス濃度を概ね同時刻に受信格納しているものとする。最新の概ね同時刻に受信した計測値を今回の計測値、1つ前の周期で概ね同時刻に受信した計測値を前回の計測値などと記す。
【0020】
補正部112は、センサ端末200の状態に基づいて、計測値を補正して真のガス濃度を推定し、補正後の計測値(真のガス濃度の推定値)を環境値データベース140に格納する。センサ端末200の状態の例として、センサ端末200の相対位置関係がある。
補正部112は例えば、センサ端末200の状態、今回の計測値、および前回の推定値に基づいて、今回の推定値を算出する。補正部112の処理の詳細は、式(1)、式(2)を参照して後記する。
【0021】
以上に説明したようにサーバ100は、センサ端末200の状態に基づいて計測値を補正して環境値の推定値を算出する補正部112を備える。
センサ端末200の状態は、当該センサ端末間の相対位置関係で示される状態である。
補正部112は、今回の計測値と、前回の推定値と、センサ端末200の状態とに基づいて今回の推定値を算出する。
【0022】
分布図作成部113は、環境値データベース140から推定値を取得して等値線図(分布図)を作成する。図4は、第1実施形態に係るガス(ガス濃度)の分布図310である。分布図310に示される円はセンサ端末200の位置を示す。等値線311~313は、同じガス濃度の地点を通る線である。センサ端末200の間にある地点おけるガス濃度の推定値については、分布図作成部113は所定の距離内にあるセンサ端末200でのガス濃度の推定値に基づいて推測する。分布図310を作成する分布図作成処理は、図6を参照して後記する。
【0023】
発生源推測部114は、ガスの発生源(ガスが漏れている地点)を推測する。所定値を超えるガス濃度の推定値が検出されると発生源推測部114は、過去に遡りながら分布図を参照してガスの重心を追跡して発生源を推測する。発生源を推測する発生源推測処理は、図8を参照して後記する。
表示制御部115は、分布図作成部113が作成した分布図や、発生源推測部114が推測した発生源を示す地図を入出力部180(図3参照)に接続されるディスプレイに出力する。
【0024】
≪補正処理≫
以下に補正部112が実行する補正処理を説明する。図5は、第1実施形態に係る監視対象領域320に配置されたセンサ端末271~275の位置関係を示す図である。以下では図5に示されるように配置された5つのセンサ端末271~275を例に説明する。
【0025】
補正部112は、センサ端末271~275から計測結果を受信するたびに周期的に補正処理を行う。補正部112は、センサ端末271~275の位置における現時点のガス濃度の補正値(推定値)x(t)を、前回の補正値x(t-1)と今回の計測値y(t)とを基に算出する。現時点(今回)とは、計測する周期における最新の時点であり、以下の式ではタイムステップtで示される時点である。前回とは、1つ前の周期における最新の時点でありタイムステップt-1で示される時点である。
【0026】
以下では補正部112がカルマンフィルタの手法を用いて補正値を算出する例を説明する。添え字のi(i=1~5)は、センサ端末271~275を示す。例えばx(t-1)はセンサ端末271の位置における前回のガス濃度の推定値を示し、y(t)はセンサ端末272の今回の計測値を示す。
カルマンフィルタにおける状態方程式(状態遷移方程式)を式(1)に示す。aij(i,j=1~5)は、センサ端末271~275の位置関係で決まる数である。例えばa12は、センサ端末271,272の距離で決まる定数である。定数でないaijについては、後記する。W(t)は、ノイズである。式(1)の右辺は、定数項を含んでもよい。
【0027】
【数1】
【0028】
カルマンフィルタにおける観測方程式(計測方程式)を式(2)に示す。c(i=1~5)は、センサ端末271~275の位置におけるガス濃度と計測値の関係を示す係数であり、検出感度や計測方法により決定される値である。V(t)は、ノイズである。式(2)の右辺は、定数項を含んでもよい。
【0029】
【数2】
【0030】
以上に説明したように補正部112は、状態方程式(式(1)参照)がセンサ端末200の状態に基づく、カルマンフィルタを用いて推定値を算出する。
状態方程式は、センサ端末200間の相対位置関係(aij参照)に基づく。
【0031】
≪分布図作成処理≫
図6は、第1実施形態に係る分布図作成処理のフローチャートである。図6を参照しながら分布図310(等値線図、図4参照)の作成処理を説明する。分布図作成処理は所定のタイミング、例えばセンサ端末200からガス濃度を受信して補正処理が終わったタイミングで(周期的に)実行される。
【0032】
ステップS11において分布図作成部113は、監視対象領域に格子を設定する。図7は、第1実施形態に係る監視対象領域に設定された格子330を説明するための図である。点線で示された線が格子330を形成する。格子の間隔は、丸で示されるセンサ端末200の間隔より狭くする。
【0033】
図6に戻って分布図作成処理の説明を続ける。ステップS12において分布図作成部113は、それぞれの格子点(格子330(縦横の線)の交点)でのガス濃度を推測する。分布図作成部113は、例えば格子点から所定の距離内にあるセンサ端末200までの距離をrとして、r-2またはexp(-r)を重みとした当該センサ端末におけるガス濃度の補正値(推定値)の加重平均を当該格子点のガス濃度と算出して推測する。なお格子点にセンサ端末200があれば、当該センサ端末200でのガス濃度の補正値を当該格子点のガス濃度とする。
【0034】
ステップS13において分布図作成部113は、分布図に含まれる等値線の値となるガス濃度ごとにステップS14~S15を繰り返す処理を開始する。
ステップS14において分布図作成部113は、当該ガス濃度となる点を探索する。詳しく説明すると分布図作成部113は、ステップS12で算出されたガス濃度が当該ガス濃度となる格子点を探す。また分布図作成部113は、隣接する格子点の結ぶ線上の点であって、当該ガス濃度となる点を探す。隣接する格子点の結ぶ線上の点におけるガス濃度は、ステップS12で推測された当該2つの格子点におけるガス濃度の線形補間で算出される値である。
【0035】
ステップS15において分布図作成部113は、ステップS14で見つかった点を結んで等値線を生成する。
ステップS16において表示制御部115は、ステップS15で生成された等値線を含む分布図310図4参照)を入出力部180に接続されるディスプレイに出力する。
【0036】
≪発生源推測処理≫
図8は、第1実施形態に係る発生源推測処理のフローチャートである。
ステップS21において発生源推測部114は、環境値データベース140から最新のガス濃度の補正値(推定値)を取得する。以下ではガス濃度の補正値を単にガス濃度と記す。
ステップS22において発生源推測部114は、ガス濃度のなかで閾値(第1の所定値)を超過するガス濃度があれば(ステップS22→YES)ステップS24に進み、なければ(ステップS22→NO)ステップS23に進む。
【0037】
ステップS23において発生源推測部114は、所定時間待機してステップS21に戻る。発生源推測部114は、次にセンサ端末200から計測値を受信してガス濃度(ガス濃度の補正値)が算出されるまで待機する。
ステップS24において分布図作成部113は、ステップS21で取得したガス濃度を基に所定値(第2の所定値)以上のガス濃度の領域を算出する。第2の所定値は第1の所定値より低い値である。分布図作成処理(図6参照)において分布図作成部113は、等値線を生成している。ステップS24において分布図作成部113は、所定値の等値線を生成することで、当該所定値以上のガス濃度の領域を算出する。
【0038】
ステップS25において発生源推測部114は、ステップS25で算出された領域の重心(図心)を算出する。重心は、第2の所定値以上となるガス濃度の領域の重心であってもよいし、ガス濃度で重みを付けた重心であってもよい。ガス濃度で重みを付けた重心を求める場合には、分布図作成部113は所定値以上の複数の濃度以上となる領域の等値線を生成する。
【0039】
ステップS26~S30は繰り返し処理となる。
ステップS26において発生源推測部114は、前回の繰り返し処理の対象となったガス濃度の1つ前に算出されたガス濃度を取得する。繰り返し処理の初めての回であるならば発生源推測部114は、ステップS24で作成された分布図の基になるガス濃度を1つ前に算出されたガス濃度とする。
【0040】
ステップS27において分布図作成部113は、ステップS26で取得したガス濃度を基に所定値以上のガス濃度の領域を算出する。
ステップS28において発生源推測部114は、ステップS27で算出された領域の重心を算出する。
ステップS29において発生源推測部114は、前回算出した重心と今回算出した重心との距離を算出する。繰り返し処理の初めての回であるならば前回算出した重心とは、ステップS25で算出された重心である。
【0041】
ステップS30において発生源推測部114は、ステップS29で算出した距離が所定距離以上ならば(ステップS30→YES)ステップS31に進み、所定距離未満ならば(ステップS30→NO)ステップS26に戻る。
ステップS31において表示制御部115は、今回の重心(ステップS28で最後に算出された重心)をガスの発生源として入出力部180に接続されたディスプレイに表示する。
【0042】
図9は、第1の実施形態に係る発生源推測処理で最初に算出された所定値以上のガス濃度の領域351を示す図である。換言すれば領域351は、ステップS24で算出された所定値以上のガス濃度の領域である。なお領域340は監視対象領域である。図10は、第1の実施形態に係る発生源推測処理における繰り返し処理の途中の回に算出された所定値以上のガス濃度の領域361を示す図である。図11は、第1の実施形態に係る発生源推測処理で最後の1つ前に算出された所定値以上のガス濃度の領域371を示す図である。図12は、第1の実施形態に係る発生源推測処理で最後に算出された所定値以上のガス濃度の領域381を示す図である。領域361,371,381はステップS27で算出され、領域381は最後に、領域371は領域381の1回前に、領域361は領域351,371の間で算出された領域である。
【0043】
領域351,361,371,381は、ガス濃度が所定値(第2の所定値)以上の領域である。領域351,361,371,381の境界は、所定値の等値線である。重心352,362,372,382は、領域351,361,371,381それぞれの重心である。重心352,362の距離、および重心362,372の距離は、所定距離(図7のステップS30参照)未満である。重心372,382の距離は所定距離以上であり、重心382が最後の算出された重心であって、ガスの発生源である。
【0044】
≪環境監視システムの特徴≫
環境監視システム10のサーバ100は、センサ端末200のガス濃度の計測結果に基づいて、センサ端末200の位置におけるガス濃度の推定値(補正値)を算出する。サーバ100は、この推定値を基に分布図を作成したり、ガスの発生源を推定したりする。サーバ100は、今回(現時点)の計測値と前回の推定値とに基づいて、今回の推定値を算出する。算出手法としては、式(1)を状態方程式、式(2)を観測方程式とするカルマンフィルタがあるが、粒子フィルタなど他の状態空間モデルの手法を用いてもよい。
【0045】
このような環境監視システム10を用いて監視することで、精度の高いガス濃度の推定値を得ることができるようになる。またセンサ端末200間の距離が分かれば推定可能であるので、センサ端末200の配置の自由度が高くなり、簡便にセンサ端末200が設置可能となる。なお第1実施形態ではガス濃度を監視しているが、温度などの他の環境値を計測して推定してもよい。
【0046】
≪変形例:状態方程式≫
上記した実施形態における状態方程式の係数(aij)は、センサ端末200間の位置関係に基づき、例えば距離によって決まる定数である。時刻と距離とを基に決まる係数であってもよい。以下に拡散方程式に基づく係数の例を示す。
式(3)は拡散方程式である。匂い物質がr=0の位置にあるとき、左辺は距離r、時間t後の匂い物質の濃度値である。右辺のαは匂い物質の総量、Dは拡散係数で定数である。
【0047】
【数3】
【0048】
式(3)に基づく係数aij を式(4)に示す。右辺のAは拡散係数Dなどから決まる係数、rijはセンサ端末271~275(図5参照)の間の距離を示す。式(4)の係数aij による状態方程式の式(1)によれば、前回の補正値x(t-1)が匂い物質の総量に比例するとして、距離rijだけ離れたセンサ端末271~275の位置におけるガス濃度x(t)を予測することになる。また時刻を略して(t=1として)aij =Aexp(-rij )としてもよい。これは、aijがセンサ端末間の距離によって決まる定数の例である。
【0049】
【数4】
【0050】
≪変形例:周囲検出による補正処理≫
上記した実施形態における状態方程式の係数(式(1)のaij参照)は、センサ端末200間の位置関係に基づき、例えば距離によって決まる定数である。監視対象領域の空気の流れなど、ガス濃度に影響を与える状況を検出して、係数に反映するようにしてもよい。
【0051】
図13は、第1実施形態の変形例に係る環境監視システム10Aの全体構成図である。環境監視システム10Aには、センサ端末200とは異なる環境値を計測する周囲センサ800が備わる。周囲センサ800は、例えば風速、風向を計測する風力センサである。例えば、センサ端末272(図5参照)からセンサ端末271への向きの風(空気の移動)が計測された場合には、センサ端末271におけるガス濃度であるx(t)に対するセンサ端末272におけるガス濃度であるx(t-1)の影響が大きくなるので、a12の値を大きくする。逆にx(t)に対するx(t-1)の影響が小さくなるので、a21の値を小さくする。
【0052】
センサ端末200が屋内などの閉空間に設置される場合には、周囲センサ800は当該閉空間の窓や扉の開閉を検知する開閉センサであってもよい。また周囲センサ800は、空間内で人や車両などの移動物が移動したことを検知するセンサや、カメラの映像から物体を検知して移動物を検出するシステムであってもよい。センサ端末200が車両などの移動体の内部に配置される場合には、周囲センサ800は移動体の加速度や速度を検出するセンサであってもよい。また、直接に監視対象領域をセンシングする周囲センサ800ではなく、気象情報などをインターネット経由で取得する構成であってもよい。
補正部112は、周囲センサ800の計測結果に応じて状態方程式の係数(式(1)のaij参照)を変更したり、状態への入力(制御入力)の項を加えたりして、ガス濃度の補正値を算出する。
【0053】
以上に説明したように環境監視システム10Aは、センサ端末200が計測する環境値とは異なる、領域(監視対象領域)の環境値を計測する周囲センサ800をさらに備える。補正部112は、周囲センサ800の計測値に基づいて状態方程式(式(1)参照)を変更して、環境値の推定値を算出する。
【0054】
≪第2実施形態≫
第1実施形態に係る補正処理では、センサ端末200の位置関係に基づく状態方程式(式(1)参照)および観測方程式(式(2)参照)を用いている。第2実施形態における環境監視システム10B(不図示)に含まれるセンサ端末200B(後記する図14参照)は間欠動作を行い、動作状態に基づく観測方程式(後記する式(6)参照)を用いてガス濃度を補正する。
【0055】
≪第2実施形態:センサ端末の構成≫
図14は、第2実施形態に係るセンサ端末200Bの機能ブロック図である。第1実施形態に係るセンサ端末200と比較して、間欠制御部254がさらに備わる。間欠制御部254はセンサ端末200の動作様式(動作モード)と電源供給を制御し、センサ端末200Bの消費電力を低減する。
【0056】
以上に説明したようにセンサ端末200Bは、構成要素への電源供給を選択的に停止する間欠制御部254を備える。
【0057】
一定間隔で計測結果を送信する場合には、制御部210や通信部251は、計測を行う時間だけ電源が供給されていればよい。間欠制御部254は計時部252による時間計測を行い、設定された計測周期に従って制御部210、通信部251、ガスセンサ253への電源供給と動作制御を行う。
【0058】
≪第2実施形態:センサ端末の動作様式≫
図15は、第2実施形態に係る第1動作様式のタイミングチャートである。センサ端末200Bは、ガス濃度の計測(図15では「計測」と記載)と、計測結果の送信(図15では「通信」と記載)と、休止とを繰り返す。
第1動作様式では、ガス濃度の計測と計測結果の送信とが終了すると、制御部210と通信部251への電源供給を制限する。この動作様式を第1間欠動作様式、または単に第1様式とする。
【0059】
計測周期が長い場合には、ガスセンサ253への電源供給も停止する。この動作様式を第2間欠動作様式、または単に第2様式とする。図16は、第2実施形態に係る第2動作様式のタイミングチャートである。ヒータを含むガスセンサ253には、計測時のみ電源が供給される。
第1様式と第2様式とでは、計測周期が異なってもよい。例えば第1様式の計測周期は1分であり、第2様式は10分としてもよい。また制御部210、通信部251、ガスセンサ253への電源供給については、完全に停止ではなく、動作周波数を下げる、一部モジュールの停止など消費電力を削減する手法を用いてもよい。
【0060】
以上に説明したように間欠動作の動作様式は、電源供給の停止/削減を行わない第1様式と、電源供給の停止/削減を行う第2様式とを含む。
【0061】
ガスセンサ253への電源供給が停止された後に再起動して、電源の供給が再開された直後には、計測値が不安定になる場合がある。例えばガスセンサ253がヒータを内蔵する半導体式のガスセンサである場合には、通電直後から約10分程度はガスの検出がなくても内部抵抗の変動が発生するため、計測結果が変動しているように見える。
【0062】
図17は、第2実施形態にガスセンサ253の一例を示す図である。Rはセンサ抵抗であり、ガスの濃度に応じて抵抗値が変化する。Rはリファレンス抵抗であり定数である。RとRとを直列に接続し、電源電圧Vを印加する。このときRの両端にかかる電圧VOUTを計測して式(5)を用いることでRの抵抗値を知ることができる。
【0063】
【数5】
【0064】
なお図17においてRはヒータ抵抗であり、Vはヒータ電圧である。RとVとは、それぞれ低数値である。
このようなガスセンサ253において第1様式では、電源供給を停止しない、または休止の間は電圧Vのみを停止する。第2様式では、休止の間ヒータ電源Vおよび電圧Vを停止する。
【0065】
図17に示すガスセンサ253では、ヒータ抵抗への電源供給の停止状態から電源供給が再開されると、後記する図18に示すようにセンサ抵抗Rが供給開始からの時間経過に従って変化する。図18は、第2実施形態に係る電源供給開始からの時間経過にともなうセンサ抵抗Rの変化を示すグラフである。
第2様式では、ヒータ電圧Vの操作を行うため、センサ抵抗Rの時間変動が観測される虞があり、検出結果の精度が落ちる懸念がある。第2実施形態の補正処理では、このセンサ抵抗Rの時間変動を補正する。
【0066】
≪第2実施形態:サーバの構成≫
図19は、第2実施形態に係るサーバ100Bの機能ブロック図である。第1実施形態に係るサーバ100と比較して、補正部112Bの補正処理が変わり、間欠動作指示部116がさらに備わる。
補正部112Bは、センサ端末200Bの電源供給の状態、今回の計測値、および前回の推定値に基づいて補正処理を行う。補正部112Bの処理の詳細は、式(6)を参照して後記する。
【0067】
間欠動作指示部116は、補正値または計測値を基にセンサ端末200Bに動作様式の変更を指示する。
センサ端末データベース150Bは、センサ端末200Bそれぞれの動作様式(第1様式または第2様式)とカウンタを含む。カウンタについては、図20を参照して後記する。
【0068】
以上に説明したようにセンサ端末200Bの状態は、電源供給の状態である。補正部112Bは、今回の計測値と、前回の推定値と、センサ端末200Bの状態とに基づいて今回の推定値を算出する。
サーバ100Bは、センサ端末200Bの計測値、またはその推定値に基づいてセンサ端末200Bの間欠動作を制御する間欠動作指示部116を備える。
【0069】
≪第2実施形態:補正処理≫
以下に補正部112Bが、カルマンフィルタの手法を用いて補正値を算出する例を説明する。第1実施形態と同様に、センサ端末200Bは5つであるとする(図5参照)。
状態方程式は第1実施形態と同様である(式(1)参照)。式(2)に替わる第2実施形態における観測方程式を式(6)に示す。
【0070】
【数6】
【0071】
右辺のf(t)は、ガスセンサ253の内部抵抗を示す項であって、ガスセンサ253の電源がオフからオンに変化したタイミングを0とした時間の関数である。この内部抵抗変動値はセンサ端末200Bごとにあらかじめ計測され、サーバ100Bのセンサ端末データベース150Bに保存される。内部抵抗変動が図18のような変化を示す場合、f(t)(i=1~5)の例を式(7)に示す。
【0072】
【数7】
【0073】
0i、c0i、τ(i=1~5)は、ガスセンサ253ごとに異なる定数である。添え字のiは、センサ端末200Bに対応し、センサ端末200B(ガスセンサ253)ごとに異なることを示す。R0iはガスがない状態で通電後十分に時間経過したときのガスセンサ253の抵抗値である。τは時定数であり、ガスがない状態で通電後に抵抗値がほぼ一定の値に収束するまでの時間に関連する。
【0074】
0i、c0i、τを取得するためには、先ずガスのない空間に各センサ端末200Bを設置して、通電した状態で内部抵抗Rの値を計測する。次に図18に示されるような抵抗値の経過時間による変化を得たのちに近似処理を行うことで、R0i、c0i、τを得ることができる。
センサ端末200Bがガスセンサ253への電源供給を連続的に行っている場合、つまりは十分な時間第1様式で動作している場合には、内部抵抗変動が発生していないとみなせるため、f(t)は0としてもよい。
【0075】
以上に説明したように補正部112Bは、観測方程式(式(6)、式(7)参照)が電源供給の状態(センサ端末200Bの電源供給の状態)に基づく、カルマンフィルタを用いて推定値を算出する。
【0076】
≪第2実施形態:間欠動作制御処理≫
図20は、第2実施形態に係る間欠動作制御処理のフローチャートである。間欠動作制御処理は、ガス濃度を基に間欠動作指示部116がセンサ端末200Bに動作様式を指示する処理であって、センサ端末200Bのガス濃度の補正値(以下では単にガス濃度と記載)が算出されるたびに実行される。なおセンサ端末200Bの初期の動作様式は、第2様式であって、消費電力を抑えた動作様式である。
【0077】
ステップS41において間欠動作指示部116は、センサ端末200Bのガス濃度を取得する。以下では、このセンサ端末200Bを当該センサ端末と記す。
ステップS42において間欠動作指示部116は、当該センサ端末の動作様式が第1様式であれば(ステップS42→YES)ステップS45に進み、第2様式であれば(ステップS42→NO)ステップS43に進む。
【0078】
ステップS43において間欠動作指示部116は、ガス濃度が閾値A以上であれば(ステップS43→YES)ステップS44に進み、閾値A未満であれば(ステップS43→NO)当該センサ端末に係る間欠動作制御処理を終える。
ステップS44において間欠動作指示部116は、動作様式を第1様式とするように当該センサ端末に指示する。なお閾値Aは、ガス濃度が通常より高い(安全レベルと見なせるガス濃度より少し上)と見なす閾値である。間欠動作制御処理の開始時における当該センサ端末の動作様式は、低消費電力で計測精度の低い第2様式である。ガス濃度が閾値A以上となったので、間欠動作指示部116は、計測精度を上げるために第1様式に切り替えるように指示する。
【0079】
ステップS45において間欠動作指示部116は、ガス濃度が閾値B以上であれば(ステップS45→YES)ステップS46に進み、閾値B未満であれば(ステップS45→NO)ステップS48に進む。
ステップS46において間欠動作指示部116は、動作様式を第1様式とするように、当該センサ端末の周辺(近隣)のセンサ端末200Bに指示する。周辺のセンサ端末200Bとは、例えば当該センサ端末の隣に位置するセンサ端末200Bである。図5において当該センサ端末がセンサ端末272だとすると、間欠動作指示部116はセンサ端末271,273に動作様式を第1様式とするように指示する。間欠動作指示部116は、さらにセンサ端末274に動作様式を第1様式とするように指示してもよい。
【0080】
閾値Bは、ガス濃度が高く、周囲にも充満していると見なす閾値である。間欠動作指示部116は、周辺のセンサ端末200Bの計測精度を上げるために第1様式に切り替えるように指示する。
ステップS47において間欠動作指示部116は、当該センサ端末のカウンタをリセットする。このカウンタは、第1様式から第2様式に切り替えるときに参照されるカウンタである(後記するステップS50参照)。
【0081】
ステップS48において間欠動作指示部116は、ガス濃度が閾値C以上であれば(ステップS48→YES)ステップS47に進み、閾値C未満であれば(ステップS48→NO)ステップS49に進む。
ステップS49において間欠動作指示部116は、当該センサ端末のカウンタの値をインクリメントする。
【0082】
ステップS50において間欠動作指示部116は、当該センサ端末のカウンタが所定値であるN以上であれば(ステップS50→YES)ステップS51に進み、N未満であれば(ステップS50→NO)当該センサ端末に係る間欠動作制御処理を終える。
ステップS51において間欠動作指示部116は、動作様式を第2様式とするように当該センサ端末に指示する。なお閾値Cは、ガス濃度が十分に低く安全と見なす閾値であって、閾値Bよりも低い値である。当該センサ端末は、ガス濃度が閾値C未満の状態が、カウンタがNになるまで継続しているので、安全と考えられる。このため間欠動作指示部116は、電力消費を抑えるために第2様式に切り替えるように指示する。
【0083】
ステップS52において間欠動作指示部116は、当該センサ端末のカウンタをリセットする。なお間欠動作指示部116は、動作様式の変更を指示した(ステップS44,S46参照)センサ端末200Bのカウンタについても、指示したタイミングでリセットする。
【0084】
図21は、第2実施形態に係る間欠動作制御処理を補足説明するための図である。閉空間350は、扉358を介して外部とつながっている。閉空間350には、センサ端末200Bであるセンサ端末281~289が設置されている。センサ端末281~289が動作開始したときにはガス濃度は充分低いとする。十分に時間が経過するとセンサ端末281~289の動作様式は、第2様式となる(図20のステップS48~S51参照)。
【0085】
扉358を通してのガスの侵入を想定する。すると、始めにセンサ端末283で高い濃度のガス検出が行われる。センサ端末283のガス濃度が閾値Aを超える(ステップS43→YES参照)と、動作様式が第1様式に変更される(ステップS44参照)。
さらにガスの侵入が継続して、センサ端末283のガス濃度が閾値Bを超える(ステップS45→YES参照)と、センサ端末283の周辺にあるセンサ端末282,286の動作様式が第1様式に変更される(ステップS46参照)。
【0086】
このように間欠動作指示部116は、ガスの広がりを予測して隣接するセンサ端末200Bの動作様式を低消費電力の第2様式から、高精度計測の第1様式に変更していく。
なおガスの侵入経路が予測できる場合には、この侵入経路に最も近い位置にあるセンサ端末200Bの動作様式を常に第1様式にするようにしてもよい。図21の場合には、センサ端末283の動作様式を第1様式に固定するようにしてもよい。
【0087】
以上に説明したように間欠動作指示部116は、第2様式で動作するセンサ端末200Bの推定値が、第1閾値(閾値A)以上である場合に、当該センサ端末200Bが第1様式に遷移するように制御する。間欠動作指示部116は、第1様式で動作するセンサ端末200Bの推定値が、第2閾値(閾値B)以上である場合に、当該センサ端末200Bの近隣のセンサ端末200Bが第1様式に遷移するように制御する。
間欠動作指示部116は、第1様式で動作するセンサ端末200Bの推定値が、所定時間の間第3閾値(閾値C)以下である場合に、当該センサ端末200Bが第2様式に遷移するように制御する。
【0088】
≪第2実施形態の特徴≫
第2実施形態における補正部112Bは、センサ端末200Bの状態であるガスセンサ253の内部抵抗に基づいて、計測値を補正する(式(6)参照)。また、センサ端末200Bは低消費電力の第2様式で動作するのが基本であるが、ガス濃度が上昇した場合には高精度の計測が可能な第1様式に(ステップS44参照)さらに周辺のセンサ端末200Bも第1様式に切り替えるように(ステップS46参照)間欠動作指示部116は指示する。このように動作様式を制御することにより、ガス濃度が低いときには低消費電力の第2様式で、ガス濃度の上昇を検知したときには、あらかじめ高精度計測の第1様式に変更することで、より正確な計測を早いタイミングで行うことができる。
【0089】
≪変形例≫
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。例えば補正部112,112Bはガス濃度の計測値を補正しているが、ガス濃度に限らず温度、風向・風速、各種物質の濃度/量などの計測値を補正してもよい。また監視対象領域は、空気/大気中に限らず水中や物体の表面/中であってもよい。
分布図作成部113および発生源推測部114は、推定値に基づいて処理(図6図8参照)しているが、計測に基づいて処理してもよい。
【0090】
本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10,10A 環境監視システム
100,100B サーバ
111 計測値格納部
112,112B 補正部
113 分布図作成部
114 発生源推測部
115 表示制御部
116 間欠動作指示部
138 プログラム
140 環境値データベース
150,150B センサ端末データベース
180 入出力部(サーバ通信部)
200,200B センサ端末
251 通信部(センサ端末通信部)
253 ガスセンサ(センサ)
254 間欠制御部
320 監視対象領域(領域)
800 周囲センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21