(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183233
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ヘッド基板、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231220BHJP
B41J 2/125 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/125
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096750
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 康雄
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF99
2C057AG14
2C057AG46
2C057AG90
2C057AG91
2C057AG92
2C057AL25
2C057BA13
2C057DD06
(57)【要約】
【課題】ヘッド基板の消費電流の低減を比較的簡素な構成で実現するのに有利な技術を提供する。
【解決手段】本発明に係るヘッド基板は、液体を吐出させるための液体吐出素子を備えるヘッド基板であって、所定の機能を実現する機能部と、通信データが入力される通信入力部とを備え、前記通信データは、前記機能部の機能を設定する第1部分と、前記機能部への電流供給を制御する第2部分とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出させるための液体吐出素子を備えるヘッド基板であって、
所定の機能を実現する機能部と、通信データが入力される通信入力部とを備え、
前記通信データは、前記機能部の機能を設定する第1部分と、前記機能部への電流供給を制御する第2部分とを含む
ことを特徴とするヘッド基板。
【請求項2】
前記所定の機能は、前記液体が吐出されたことを検知する吐出検知の機能と、前記ヘッド基板の温度を検出するデジタル温度検出の機能とを含む
ことを特徴とする請求項1記載のヘッド基板。
【請求項3】
前記機能部は、前記吐出検知の機能を実現するためのセンサを含む
ことを特徴とする請求項2記載のヘッド基板。
【請求項4】
前記センサは複数のセンサの1つであり、前記第1部分は、該複数のセンサから選択されるべきものを設定するデータである
ことを特徴とする請求項3記載のヘッド基板。
【請求項5】
前記機能部は、前記デジタル温度検出の機能を実現するためのダイオードを含む
ことを特徴とする請求項2記載のヘッド基板。
【請求項6】
前記ダイオードは複数のダイオードの1つであり、前記第1部分は、該複数のダイオードから選択されるべきものを設定するデータである
ことを特徴とする請求項5記載のヘッド基板。
【請求項7】
前記機能部は、イネーブル信号を受取り可能に構成され、前記イネーブル信号が一方の信号レベルの場合に前記機能部への電流供給が行われ、前記イネーブル信号が他方の信号レベルの場合に前記機能部への電流供給が抑制される
ことを特徴とする請求項1記載のヘッド基板。
【請求項8】
前記通信データを受信するための電極を含む複数の電極を更に備え、
前記液体吐出素子は複数の液体吐出素子の1つであり、
前記複数の電極および前記複数の液体吐出素子は前記ヘッド基板の辺方向に配列されており、前記機能部は、前記複数の電極および前記複数の液体吐出素子の間に配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のヘッド基板。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載のヘッド基板と、前記ヘッド基板の液体吐出素子に対応するノズルとを備える
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項9記載の液体吐出ヘッドと、記録媒体を搬送する搬送機構とを備える
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にヘッド基板に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置が備える記録ヘッドに設けられるヘッド基板は、例えばバイアス回路、オペアンプ等、電源電圧の供給の下にて電流が継続的に供給されるアナログ回路を備えうる。そのため、近年のヘッド基板の多機能化に伴い、消費電流が大きくなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、アナログ回路を停止状態にして消費電流を低減する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1の構成においては、ヘッド基板に、信号の入出力用の電極に加えて、アナログ回路を停止状態にするための制御用の専用電極を設置する必要があり、ヘッド基板の構成の簡素化の観点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、発明者による上記課題の認識を契機として為されたものであり、ヘッド基板の消費電流の低減を比較的簡素な構成で実現するのに有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面はヘッド基板にかかり、前記ヘッド基板は、
液体を吐出させるための液体吐出素子を備えるヘッド基板であって、
所定の機能を実現する機能部と、通信データが入力される通信入力部とを備え、
前記通信データは、前記機能部の機能を設定する第1部分と、前記機能部への電流供給を制御する第2部分とを含む
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヘッド基板の消費電流の低減を比較的簡素な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2A】ヘッド基板100の通信データ147のフォーマットの一例。
【
図2B】フラグ137のデータフォーマットの一例。
【
図3】ヘッド基板100の構成例を示すブロック図。
【
図4】ヘッド基板100における駆動制御の内容の一例を示すタイミングチャート。
【
図5】デジタル温度検出回路部180における動作内容の一例を示すタイミングチャート。
【
図6A】ボルテージフォロア回路171の構成の一例。
【
図6B】オペアンプ201およびバイアス回路202の構成の一例。
【
図7】バンドパスフィルタ回路172の構成の一例。
【
図11】アナログデジタルコンバータ189の構成の一例。
【
図12】フラグ137のデータフォーマットの他の例。
【
図13】ヘッド基板100の構成の他の例を示すブロック図。
【
図14A】フラグ137のデータフォーマットの他の例。
【
図14B】ヘッド基板100の通信データ147のフォーマットの他の例。
【
図15】オペアンプ201およびバイアス回路202の構成の一例。
【
図16】吐出検知動作の一例を説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るインクジェット記録ヘッドにおけるヘッド基板100の構成例を示す模式図である。ヘッド基板100は、第1列ヒータ101、第1列ヒータ選択駆動部102、第1列吐出検知センサ103、及び、第1列吐出検知センサ選択部104を備える。
【0011】
第1列ヒータ101は、複数のヒータ(電気熱変換素子)がヘッド基板100の辺方向に配列されることにより形成されうる。第1列ヒータ101における所望のヒータは、第1列ヒータ選択駆動部102により選択され、不図示のドライバの駆動制御を介して過熱され、それにより、吐出口からインクを吐出させる。第1列吐出検知センサ103は、第1列ヒータ101近傍に配列され、第1列吐出検知センサ選択部104により対応の1つが選択されることにより該インクの吐出を検知する。
【0012】
要素102~104は、第1列ヒータ101の列方向(複数のヒータの配列方向)に沿って配置されうる。
【0013】
同様に、ヘッド基板100は、第2列ヒータ106、第2列ヒータ選択駆動部107、第2列吐出検知センサ108、及び、第2列吐出検知センサ選択部109を備え、要素106~109の機能は要素101~104の機能にそれぞれ対応する。
【0014】
ヘッド基板100は、インクの上記吐出が適切な温度範囲内で実現されることを目的の一つとして、ダイオード群105を更に備える。ダイオード群105は、複数のダイオード(図中にて#0~13と示される。)を含み、個々のダイオードにおいて所定のバイアスが加わった状態で発生する暗電流の量に基づいて温度を検出可能とする。個々のダイオードは温度検出素子と表現されてもよいし、また、ダイオード群105は温度検出素子群、温度センサ群などと表現されてもよい。ダイオード群105は、第1列ヒータ101の列方向(複数のヒータの配列方向)に沿って配置されうる。
【0015】
ヘッド基板100は、電極群126を更に備える。電極群126は、電源電圧または接地電圧を受け取り、或いは、制御信号ないし駆動信号の入出力を行うための複数の電極(パッド)を含む。電極群126は、第1列ヒータ101の列方向(複数のヒータの配列方向)に沿って配置されうる。
【0016】
ヘッド基板100は、通信入力部127、通信出力部128、制御部129、ヒートパルス生成部130、サブヒータ選択駆動部131、アナログ出力選択部132、デジタル出力選択部133、吐出検知部134およびデジタル温度検知部135を更に備える。要素127~135は、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタ等のスイッチ素子を含む能動素子、及び、抵抗素子、容量素子等を含む受動素子により形成されうる回路部である。
【0017】
通信入力部127は電極群126を介してヘッド基板100への入力信号を受け取る。通信出力部128は電極群126を介してヘッド基板100からの出力信号を出力する。制御部129は、通信入力部127に入力された信号に基づいてヘッド基板100の各要素の駆動制御を行う。
【0018】
ヒートパルス生成部130は、制御部129の指示信号に基づいて第1列ヒータ選択駆動部102における不図示のドライバに供給されるべき駆動パルス(ヒートパルス)を生成する。
【0019】
サブヒータ選択駆動部131は、制御部129の指示信号に基づいて不図示のサブヒータを選択的に駆動し、ヘッド基板100を適切な温度範囲内となるようにする。
【0020】
アナログ出力選択部132は、制御部129の指示信号に基づいて不図示のアナログ回路のモニタ出力を選択し、例えば、ダイオード群105から任意の一つのダイオードを選択する。同様に、デジタル出力選択部133は、制御部129の指示信号に基づいて不図示のデジタル回路のモニタ出力を選択する。
【0021】
吐出検知部134は、制御部129の指示信号に基づいて第1列吐出検知センサ103および第2列吐出検知センサ108のうち、選択された1つのセンサ出力に基づいて吐出の有無を判断する。その判断結果を示す信号は通信出力部128により電極群126から出力される。
【0022】
デジタル温度検知部135は、制御部129の指示信号に基づいてダイオード群105から選択された1つのダイオードで発生した電流値をアナログデジタル変換し、それにより得られる信号は通信出力部128により電極群126から出力される。
【0023】
図2Aは、本実施形態に係るヘッド基板100の通信データ147のフォーマットの一例を示す。通信データ147は、複数種のデータ136~146を含む。データ136は、トレーニング&スタートの開始を示す(トレーニング&スタート136と図示される。)。データ137は、一部の機能の実行や一部の通信データの未送信を設定する(フラグ137と図示される。)。データ138は、第1列ヒータ選択駆動部102および第2列ヒータ選択駆動部107にて選択されるヒータを指定する(ヒータ選択138と図示される。)。データ139は、第1列ヒータ選択駆動部102および第2列ヒータ選択駆動部107における不図示のドライバの駆動パルスを指定する(ヒートパルス設定139と図示される。)。データ140は、不図示のサブヒータの中から選択するものを指定する(サブヒータ選択140と図示される。)。
【0024】
データ141は、ダイオード群105から選択するものや、不図示のアナログ回路のモニタ出力を選択するものを指定する(アナログ出力選択141と図示される。)。データ142は、不図示のデジタル回路のモニタ出力を選択するものを指定する(デジタル出力選択142と図示される。)。データ143は、第1列吐出検知センサ選択部104および第2列吐出検知センサ選択部109によりそれぞれ選択する第1列吐出検知センサ103および第2列吐出検知センサ108を指定する(吐出検知センサ選択143と図示される。)。データ144は、吐出検知部134の回路補正などを指定する(吐出検知各種設定144と図示される。)。データ145は、デジタル温度検知部135の回路補正などを指定する(デジタル温度検出各種設定145と図示される。)。
【0025】
データ146は、フラグ137からデジタル温度検出各種設定145までのCRC(Cyclic Redundancy Check(巡回冗長検査))演算値を指定する(CRC検出コード146と図示される。)。制御部129で演算されたCRC演算値とCRC検出コード146とが一致した場合には通信データ147は正常に受信されたと判断されうる。
【0026】
図2Bは、フラグ137のデータフォーマットの一例を示す。フラグ137はビット#0~7で構成され、例えば、ビット#7のflag7に1が設定されるとデジタル温度検出が実行され、ビット#6のflag6に1が設定されると吐出検知が実行されうる。ビット#4のflag4に1が設定されるとデジタル温度検出各種設定145の通信データを未送信とする。ビット#3のflag3に1が設定されると吐出検知各種設定144の通信データを未送信とする。ビット#2のflag2に1が設定されるとデジタル出力選択142の通信データを未送信とする。ビット#1のflag1に1が設定されるとアナログ出力選択141の通信データを未送信とする。ビット#0のflag0に1が設定されるとサブヒータ選択140の通信データを未送信とする。
【0027】
図3は、本実施形態に係るヘッド基板100の構成例の詳細を示すブロック図である。電極群126は、通信入力部127が受け取る入力信号として、信号(data+)の電極152、信号(data-)の電極153、信号(clk+)の電極154、信号(clk-)の電極155、信号(lt)の電極156、信号(reset)の電極157、及び、信号(ad_lt)の電極158を含む。また、詳細については後述とするが、電極群126は、通信出力部128が出力する出力信号として、信号(tk_оut)の電極150、及び、信号(ad_оut)の電極151を更に含む。
【0028】
信号(data+)および信号(data-)はLVDS(Low Voltage Differential Signaling)差動信号であり、LVDSレシーバ159に入力される。同様に、信号(clk+)および信号(clk-)はLVDSレシーバ160に入力される。
【0029】
信号(lt)は、通信データ147のラッチ信号である。信号(reset)は、ヘッド基板100の初期化信号である。信号(ad_lt)は、デジタル温度検知部135のアナログデジタルコンバータ(ADC)189のラッチ信号である。信号(lt)、信号(reset)および信号(ad_lt)は、それぞれ、入力バッファ161、入力バッファ162および入力バッファ163に入力される。
【0030】
制御部129のフラグ解析部164は、LVDSレシーバ159及び160、並びに、入力バッファ161及び162からの信号に基づいて、通信データ147のフラグ137の各ビットを解析する。該解析では、例えば、デジタル温度検出と吐出検知の実行の有無の他、デジタル温度検出各種設定145、吐出検知各種設定144、デジタル出力選択142、アナログ出力選択141およびサブヒータ選択140の通信データの通信の有無が判断される。また、CRC判定部165は、通信データ147のCRC演算値とCRC検出コード146とが一致しているかを判定する。
【0031】
図中の吐出検知回路部170は、吐出検知部134、第1列吐出検知センサ選択部104、第1列吐出検知センサ103、第2列吐出検知センサ選択部109および第2列吐出検知センサ108により形成されうる。flag6は、イネーブル信号(en_tk)として吐出検知回路部170に入力されうる。
【0032】
図中のデジタル温度検出回路部180は、デジタル温度検知部135およびダイオード群105により形成されうる。flag7は、イネーブル信号(en_ad)としてデジタル温度検出回路部180に入力されうる。
【0033】
吐出検知部134は、ボルテージフォロア回路(VF)171、バンドパスフィルタ回路(BPF)172、コンパレータ回路(CMP)173、定電流回路174、及び、ラッチ回路(LT)175を含む。これらアナログ回路は、5V電源vhtaの電源電圧の下、イネーブル信号(en_tk)に基づいて機能しうる。例えば、イネーブル信号(en_tk)がH(High)レベルになると、アナログ回路のバイアス回路は、電源vhtaから電流が供給されてアクティブになる。
【0034】
定電流回路174の出力電流は、第1列吐出検知センサ選択部104および第2列吐出検知センサ選択部109により選択された第1列吐出検知センサ103および第2列吐出検知センサ108に供給される。第1列吐出検知センサ103および第2列吐出検知センサ108の出力は、VF171に入力され、インピーダンス変換される。VF171の出力は、BPF172に入力され、所定の周波数帯域についてフィルタリング(インク吐出時の特異的波形を検出)された信号がCMP173に入力される。これに応答して、CMP173は、吐出検知の閾値電圧との比較結果をLT175に出力する。LT175は、制御部129からの指示に基づいてCMP173の比較結果をラッチする。このようにして、吐出検知回路部170にて得られた吐出検知の判定結果は、出力バッファ177から信号(tk_out)として出力される。
【0035】
ダイオード群105は、ダイオード182~185(それぞれ
図1の#0~#13に対応する。)を含み、アナログ出力選択部132のダイオード選択回路部186は、それらから任意の1つを選択する。デジタル温度検知部135は、バッファ回路(BUF)188、ADC189および定電流回路187を含み、5V電源vhtbの電源電圧の下、イネーブル信号(en_ad)に基づいて機能しうる。例えば、イネーブル信号(en_ad)がHレベルになると、アナログ回路のバイアス回路は、電源vhtbから電流が供給されてアクティブになる。
【0036】
定電流回路184の出力電流は、ダイオード選択回路部186によりダイオード群105から選択されたダイオードに供給される。該ダイオードの出力電圧(モニタ電圧)は、BUF188により増幅され、ADC189によりアナログデジタル変換される。ADC189は、アナログ信号をビット#0~8の9ビットのデジタル信号に変換する逐次変換型とする。このようにして、デジタル温度検出回路部180にて得られたダイオードのモニタ電圧のアナログデジタル変換値は、出力バッファ191から信号(ad_out)として出力される。
【0037】
図4は、ヘッド基板100における駆動制御の内容の一例を示すタイミングチャートである。s1101では、信号(reset)がHレベルになったことにより、ヘッド基板100が初期化される。s1102では、通信データ147のflag6が1に設定され、吐出検知各種設定144に所望の値が設定される。その後、信号(lt)のライズエッジに応答して、信号(en_tk)がHレベルになり、電源vhtaからの電流供給が開始される。
【0038】
s1103では、通信データ147のflag6に1が設定され、s1104にて駆動されるヒータおよびヒートパルスがヒータ選択138及びヒートパルス設定139にそれぞれ設定される。加えて、対応の吐出検知センサが吐出検知センサ選択143に設定される。尚、吐出検知各種設定144は変更されないので、データ未送信とするため、flag3には1が設定される。
【0039】
s1104では、s1103にて設定されたヒータにヒータ電流が供給され、ヒータ近傍に温度変化が発生し、設定された吐出検知センサから該温度変化に基づく波形の信号が吐出検知センサ出力部203に出力される。この波形に基づいてインク吐出時の特異的波形を検出可能にBPF172によりフィルタリングされた信号がBPF出力部305に出力される。特異点が検出された場合、CMP305は、該信号の値が閾値電圧を超えている期間に亘って、吐出検知があったことを示すHレベルがCMP出力部404に出力される。その後、信号(lt)のライズエッジに応答してHレベルの信号(tk_out)が出力される。
【0040】
また、s1104では、通信データ147のflag6に1が設定され、s1105にて駆動されるヒータおよびヒートパルスがヒータ選択138及びヒートパルス設定139にそれぞれ設定される。加えて、対応の吐出検知センサが吐出検知センサ選択143に設定される。尚、吐出検知各種設定144は未送信とするため、flag3には1が設定される。
【0041】
s1105では、s1104にて設定されたヒータにヒータ電流が供給され、ヒータ近傍に温度変化が発生し、設定された吐出検知センサから該温度変化に基づく波形の信号が、吐出検知センサ出力部203に出力される。この波形においては、BPF172でのフィルタリングによってインク吐出時の特異的波形の特異点が検出されず、吐出検知がなかったことを示すL(Low)レベルがCMP出力部404に出力される。その後、信号(lt)のライズエッジに応答してLレベルの信号(en_tk)が出力され、電源vhtaの電流出力の抑制が開始される。
【0042】
s1106では、一連の吐出検知動作が終了するものとする。尚、ここでは説明の容易化のため2つのヒータに対して吐出検知動作を行う態様を述べたが、このことは、全てのヒータに対して行われてもよいし、印刷動作に実質的に使用されるヒータのみに対して行われてもよい。
【0043】
図16は、
図4を参照しながら述べた吐出検知動作を、横軸を時間軸として説明するための模式図である。ここでは印刷物1310、1311及び1312を用いて述べる。
【0044】
s1300の待機状態にて印刷指示を入力された場合、s1301では、吐出検知動作が実行され、吐出未検知のヒータが検出されうる。
【0045】
s1302では、吐出未検知の代替ヒータが駆動され、それにより印刷物1310が生成される。電流が供給されたヒータ周辺の昇温に伴い、吐出影響が発生しないようにするため、吐出検知動作の実行は抑制される。
【0046】
s1303~s1306では、印刷物1311及び1312がそれぞれ生成されるように、s1301~s1302同様の処理が行われる。s1307では、一連の印刷動作が終了し、次の印刷指示に備えて吐出検知動作が実行される。
【0047】
本例では、s1301、s1303、s1305及びs1307にて吐出検知動作が実行されるものとしたが、他の例として、吐出検知動作はs1301のみ(一連の印刷動作の開始前のみ)実行されてもよい。更に、吐出検知動作は、インクジェット記録ヘッドのノズルからインクが適切に吐出されているか否かを判定するためのノズルチェックパターンを印刷する際に実行されてもよい。
【0048】
図5は、
図3のデジタル温度検出回路部180における動作内容の一例を示すタイミングチャートである。
【0049】
s1201では、信号(reset)がHレベルになったことにより、ヘッド基板100が初期化される。s1202では、通信データ147のflag7が1に設定され、アナログ出力選択141にダイオード群105からデジタル温度検出を行う1つ、ここではダイオード182(#0)が設定され、デジタル温度検出各種設定145に所望の値が設定される。その後、信号(lt)のライズエッジに応答して、信号(en_ad)がHレベルになり、電源vhtbからの電流供給が開始される。
【0050】
s1203では、通信データ147のflag7に1が設定される。また、アナログ出力選択141およびデジタル温度検出各種設定144については設定値を変更しないので、データ未送信とするため、flag4およびflag1には1が設定される。それ以降s1213まで、通信データ147は維持される。また、s1203では、s1202にて設定されたダイオード182(#0)に定電流回路187から電流が供給され、その際の出力電圧(モニタ電圧)がBUF188を介してADC189に入力される。
【0051】
s1204では、s1202にて通信されたflag7は、信号(lt)の2回目のライズエッジに応答して、信号(ad_out)をHi-Z状態からHレベルまたはLレベルに遷移させる。信号(ad_lt)のフォールエッジに応答して、s1205にて、ADC189の演算結果(図中にて「ad8」と図示。)が信号(ad_out)として出力される。同様の手順で、s1206からs1213に亘って、ADC189による逐次変換結果として、信号(ad_lt)のフォールエッジに応答して、残りのビット(図中にて「ad7」から「ad0」と図示。)が出力される。
【0052】
s1213では、通信データ147のflag7に0を設定することにより、信号(lt)のライズエッジに応答して信号(en_ad)がLレベルになり、電源vhtbの電流の供給が抑制され、信号(ad_out)がHi-Z状態となる。
【0053】
ここで、デジタル温度検出回路部180の動作シーケンスは、吐出検知回路部170の動作シーケンスと異なり、デジタル温度検出回路部180の電流によるヒータ周辺の昇温がないため、印刷物を生成している間においても実行可能である。
【0054】
図6Aは、
図3のVF171の構成の一例を示す。VF171は、オペアンプ201およびバイアス回路202を含む。
【0055】
オペアンプ201およびバイアス回路202には電源vhtaの電源電圧が供給される。オペアンプ201およびバイアス回路202は、イネーブル信号(en_tk)に基づいて動作する。オペアンプ201の出力端子は一方の入力端子(-)に接続され、他方の入力端子(+)には第1列吐出検知センサ103および第2列吐出検知センサ108からの信号が入力される。バイアス回路202により生成されたバイアス電圧Vbはオペアンプ201に供給される。オペアンプ201は、このバイアス電圧Vbが供給されていない間、たとえ電源vhtaの電源電圧の供給があったとしても非動作状態となり、消費電流が抑制されうる。
【0056】
図6Bは、オペアンプ201およびバイアス回路202のそれぞれの詳細な構成の一例を示す。図中におけるMNx(xは数字)はNMOSトランジスタを示し、MPx(xは数字)はPMOSトランジスタを示す。また、R1は抵抗素子を示し、C1は容量素子を示す。
【0057】
トランジスタMP1及びMP2のゲートにはトランジスタMP9のドレインが接続され、トランジスタMP9のソースは電源vhtaが接続される。トランジスタMP3、MP4及びMP5のゲートにはトランジスタMP9のドレインが接続され、トランジスタMP11のソースは電源vhtaが接続される。トランジスタMN1及びNM2のゲートには、トランジスタMN7のドレインが接続され、トランジスタMN7のソースは接地される。トランジスタMN5のゲートは、トランジスタMN9のドレインに接続され、トランジスタMN9のソースは接地される。
【0058】
トランジスタMP9及びMN7は、バイアス回路202の動作状態と停止状態とを切り替える。トランジスタMP11及びMN9は、オペアンプ201の動作状態と停止状態とを切り替える。トランジスタMP9及びMP11のゲートには、信号(en_tk)が入力される。トランジスタMN7のゲートには、トランジスタMP8及びMN6により形成されるインバータの出力が接続される。このインバータのゲートには、信号(en_tk)が入力される。同様に、トランジスタMN9のゲートは、トランジスタMP10及びMN8により形成されるインバータの出力が接続される。このインバータのゲートには、信号(en_tk)が入力される。
【0059】
Lレベルの信号(en_tk)が入力されると、トランジスタMP9及びMP11がオン状態になる。これにより、トランジスタMP1~MP5は、Hレベル(電源vhtaの電源電圧)がゲートに入力されてオフ状態になる。更に、トランジスタMN7及びMN9がオン状態になる。これにより、トランジスタMN1、MN2及びMN5は、Lレベル(接地電圧)がゲートに入力されてオフ状態になる。従って、オペアンプ201及びバイアス回路202は非動作状態となり、電源vhtaの電流供給は抑制される。
【0060】
このような構成により、信号(en_tk)は、オペアンプ201及びバイアス回路202を、Lレベルのときにディセーブル状態/停止状態にし、Hレベルのときにイネーブル状態/動作状態にすることができる。また、電源vhtaの電源電圧がオペアンプ201及びバイアス回路202に供給されている際の信号(en_tk)の信号レベルの切替えによる其れらの起動時間は、電源vhtaの電源電圧を其れらに供給することによる其れらの起動時間より短くなりうる。
【0061】
図7は、
図3のBPF172の構成の一例を示す。BPF172は、バイアス回路301及び302、ローパスフィルタ306、並びに、ハイパスフィルタ307を含む。ローパスフィルタ306は、オペアンプ303、抵抗素子R311及びR312、並びに、容量素子C321を含む。ハイパスフィルタ307は、オペアンプ304、抵抗素子R313及び抵抗R314、並びに、容量素子C322を含む。
【0062】
バイアス回路301により生成されたバイアス電圧Vbはオペアンプ304に供給される。バイアス回路302により生成されたバイアス電圧Vbはオペアンプ303に供給される。また、バイアス回路301及び302、並びに、オペアンプ303及び304にはイネーブル信号(en_tk)が入力される。尚、バイアス回路301及び302の回路構成は
図6Bのバイアス回路202同様とし、また、オペアンプ303及び304の回路構成は
図6Bのオペアンプ201同様とする。
【0063】
このような構成によれば、BPF172においても、電源vhtaの電源電圧の下、イネーブル信号(en_tk)のLレベル/Hレベルにより、その停止状態/動作状態を制御することが可能となる。
【0064】
図8Aは、
図3のCMP173の構成の一例を示す。CMP173は、バイアス回路401、コンパレータ403および定電圧回路403を含む。バイアス回路401、コンパレータ402および定電圧回路403にはイネーブル信号(en_tk)が入力される。バイアス回路401により生成されたバイアス電圧Vbはコンパレータ402に供給される。コンパレータ402は、定電圧回路403により生成される電圧と、BPF172から受け取った電圧とを比較し、その結果を出力する。尚、バイアス回路401の回路構成は
図6Bのバイアス回路202同様とし、また、コンパレータ402の回路構成はオペアンプ201同様とする。
【0065】
図8Bは、
図8Aの定電圧回路403の構成の一例を示す。図中におけるD421及びD422はダイオードを示す。トランジスタMP406、MP407及びMP408のゲートはトランジスタMP409のドレインが接続され、トランジスタMP409のソースは電源vhtaに接続される。Lレベルのイネーブル信号(en_tk)が入力されると、トランジスタMP409がオン状態になる。これにより、トランジスタMP406~MP408は、ゲートにHレベル(電源vhtaの電源電圧)が入力されるためオフ状態になる。これにより、定電圧回路403は非動作状態となり、電源vhtaの電流供給は抑制される。
【0066】
このような構成により、CMP173においても、電源vhtaの電源電圧の下、イネーブル信号(en_tk)のLレベル/Hレベルにより、その停止状態/動作状態を制御することが可能となる。
【0067】
図9は、
図3の定電流回路174の構成の一例を示す。定電流回路174は、バイアス回路501、オペアンプ502、定電圧回路503、抵抗素子R511、並びに、トランジスタMN506、MP506、MP507及びMP508を含む。尚、デジタル温度検出回路部180の定電流回路187も定電流回路174同様の構成を備えるものとする。
【0068】
バイアス回路501により生成されたバイアス電圧Vbはオペアンプ502に供給される。オペアンプ502は、定電圧回路503により生成された電圧を一方の入力端子(-)で受け、他方の入力端子(+)は抵抗素子R511に接続され、出力端子はトランジスタMN506のゲートに接続される。抵抗素子R511は、トランジスタMN506と電流経路を形成するように接続される。抵抗素子R511に流れる電流は、トランジスタMP506及びMP507により形成されるカレントミラー回路により、第1列吐出検知センサ103および第2列吐出検知センサ108に供給される。バイアス回路501、オペアンプ502および定電圧回路503にはイネーブル信号(en_tk)が入力される。また、トランジスタMP508のゲートにはイネーブル信号(en_tk)が入力される。尚、バイアス回路501の回路構成は
図6Bのバイアス回路202同様とし、オペアンプ502の回路構成は
図6Bのオペアンプ201同様とし、また、定電圧回路503は、
図8Bの定電圧回路403同様とする。
【0069】
このような構成により、定電流回路174においても、電源vhtaの電源電圧の下、イネーブル信号(en_tk)のLレベル/Hレベルにより、その停止状態/動作状態を制御することが可能となる。
【0070】
図10は、
図3のBUF188の構成の一例を示す。BUF188は、バイアス回路601、オペアンプ602、並びに、抵抗素子R611及びR612を含む。バイアス回路601により生成されたバイアス電圧Vbはオペアンプ602に供給される。ダイオード群105から入力された電圧(モニタ電圧)は、抵抗素子R611及びR612の抵抗比に基づいてオペアンプ602により増幅され、ADC189に出力される。バイアス回路601およびオペアンプ602には、電源vhtbの電源電圧が供給され、イネーブル信号(en_аd)が入力される。尚、バイアス回路601の回路構成は
図6Bのバイアス回路202同様とし、また、オペアンプ602の回路構成は
図6Bのオペアンプ201同様とする。
【0071】
このような構成により、BUF188においても、電源vhtbの電源電圧の下、イネーブル信号(en_аd)のLレベル/Hレベルにより、その停止状態/動作状態を制御することが可能となる。
【0072】
図11は、
図3のADC189の構成の一例を示す。ADC189は、デジタルアナログコンバータ(DAC)801、バイアス回路804、コンパレータ805およびロジック部806を含む。DAC801は、オペアンプ802、バイアス回路803、トランジスタMP811、抵抗素子アレイ807および選択回路808を含む。
【0073】
抵抗素子アレイ807は、トランジスタMP811と直列に接続されると共に、直列に接続された複数の抵抗素子を含む。選択回路808は、抵抗素子アレイ807の複数の抵抗素子に対応する複数のスイッチ素子を含み、それらのオン状態/オフ状態がロジック部806により制御されることにより、オペアンプ802の一方の入力端子(+)には所望の電圧が入力される。オペアンプ802の出力端子は、他方の入力端子(-)に接続されると共にコンパレータ805の一方の入力端子(-)に接続される。コンパレータ805は、他方の入力端子(+)にて受けたBUF188からの信号との比較結果をロジック部806に出力する。
【0074】
ロジック部806は、信号(ad_lt_in)に基づいて、コンパレータ805からの信号を、BUF188からの信号のアナログデジタル変換の結果を示す信号として、出力バッファ191に出力する。このようにして、ADC189は、BUF188からの信号をアナログデジタル変換し、出力バッファ191を介して該変換の結果を出力する。
【0075】
バイアス回路803により生成されたバイアス電圧Vbはオペアンプ802に供給される。バイアス回路804により生成されたバイアス電圧Vbはコンパレータ805に供給される。オペアンプ802、バイアス回路803、バイアス回路804およびコンパレータ805には、電源vhtbの電源電圧が供給され、イネーブル信号(en_tk)が入力される。Lレベルのイネーブル信号(en_tk)が入力されると、トランジスタMP811がオン状態になる。イネーブル信号(en_tk)がHレベルとなってトランジスタMP811がオフ状態になった場合、抵抗素子アレイ807への電源vhtbの電流供給が抑制される。尚、バイアス回路803およびバイアス回路804の回路構成は、
図6Bのバイアス回路202同様とし、オペアンプ802、コンパレータ805の回路構成は、
図6Bのオペアンプ201同様とする。
【0076】
このような構成により、ADC189においても、電源vhtbの電源電圧の下、イネーブル信号(en_ad)のLレベル/Hレベルにより、その停止状態/動作状態を制御することが可能となる。
【0077】
以上の回路構成によれば、通信データ147に設定されたflag7およびflag6に基づいて、吐出検知回路部170およびデジタル温度検出回路部180への電流供給が制御可能となる。そのため、本実施形態によれば、該電流供給を制御するための専用電極をヘッド基板100に設置不要となる。更に、電極数が低減されることにより、ヘッド基板100および其れを備えるインクジェット記録ヘッドの小型化にも有利であり、其れらの配線(例えば、ワイヤ、フレキシブルケーブル等)の小型化、又は、該配線の数の低減にも有利となりうる。よって、本実施形態によれば、ヘッド基板100の消費電流の低減を比較的簡素な構成で実現可能となる。尚、本実施形態では吐出検知回路部170およびデジタル温度検出回路部180を例示したが、付随的/追加的に、他の機能を備えるアナログ回路ないしアナログ回路部について本実施形態の内容が適用されてもよく、其れらはまとめて機能部と表現されてもよい。
【0078】
<第2実施形態>
図12は、第2実施形態に係るフラグ137のデータフォーマットの一例を
図2B同様に示す。また、
図13は、本実施形態に係るヘッド基板100の構成例の詳細を
図3同様に示す。
【0079】
本実施形態では、フラグ137のビット#6のflag6に、吐出検知の実行およびデジタル温度検出の実行がまとめて設定される。即ち、flag6は、吐出検知回路部170およびデジタル温度検出回路180のイネーブル信号(en_tk)およびイネーブル信号(en_ad)に対応することとなる。一方、ビット#7は、flag70として、サブヒータ選択140を未送信の通信データとする用途に割当て可能となり、通信データ147に拡張性を持たせることができる。
【0080】
本実施形態によれば、通信データ147に設定されたflag6により、吐出検知回路部170およびデジタル温度検出回路部180への電流供給を制御可能となる。よって、本実施形態によっても前述の第1実施形態同様の効果が得られうる。
【0081】
<第3実施形態>
図14Aは、第3実施形態に係るフラグ137のデータフォーマットの一例を
図2B同様に示す。また、
図14Bは、本実施形態に係る通信データ147のフォーマットの一部を
図2A同様に示す。
【0082】
本実施形態では、フラグ137のビット#7のflag7の内容をデジタル温度検出各種設定145にて設定可能、かつ、ビット#6のflag6の内容を吐出検知各種設定144にて設定可能なデータフォーマットとした。一方、ビット#7およびビット#6には、それぞれ、flag71およびflag61として、サブヒータ選択140およびヒートパルス設定139を未送信の通信データとする用途に割当て可能となり、通信データ147に拡張性を持たせることができる。
【0083】
本実施形態によれば、吐出検知各種設定144およびデジタル温度検出各種設定145を用いて、吐出検知回路部170およびデジタル温度検出回路部180への電流供給を制御可能となる。よって、本実施形態によっても前述の第1実施形態同様の効果が得られうる。
【0084】
<第4実施形態>
図15は、第4実施形態に係るオペアンプ201およびバイアス回路202のそれぞれの詳細な構成の一例を示す。本実施形態は、イネーブル信号(en_tk)の反転信号がオペアンプ201にて生成されていた構成を、バイアス回路202にて生成されたものが共通使用される、という点で第1~第3実施形態とは異なる。このような構成によれば、イネーブル信号(en_tk)の反転信号を生成するための回路部を削減可能となる。本実施形態によっても前述の第1実施形態同様の効果が得られうる。
【0085】
<適用例>
以上の実施形態にて例示されたヘッド基板100はインクジェット記録ヘッドに設けられ、インクジェット記録ヘッドはインクジェット記録装置に設けられうる。インクジェット記録装置は、記録媒体を搬送する搬送機構を備え、該記録媒体に対してインクジェット記録ヘッドを用いて記録を行う。インクジェット記録ヘッドには、ヒータ101及び106の複数のヒータに対応する複数のノズルが設けられており、上記記録は、個々のヒータが通電ないし駆動されて対応のノズルからインクが吐出されることにより実現されうる。インクジェット記録ヘッドは、記録媒体の搬送方向と実質的に交差する方向に走査されるシリアルヘッドであってもよいし、記録媒体の幅方向に亘って延設されたラインヘッドであってもよい。
【0086】
<その他>
以上の実施形態にて例示された個々の回路部ないし要素は、その趣旨を逸脱しない範囲で変更されてもよい。例えば、ある回路部の機能の一部は他の回路部に設けられてもよいし、ある回路部は、主機能または副機能とは異なる他の機能を備えるように他の要素を更に備えてもよい。また、ある回路部ないし要素が備える複数のユニットの数量は変更されてもよい。
【0087】
<プログラム>
本発明は、上記実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、該システム又は装置のコンピュータにおける1以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理により実現されてもよい。例えば、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
【0088】
<その他>
上述の説明においては、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明したが、記録方式は上述の態様に限られるものではない。また、記録装置は、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであっても良いし、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであっても良い。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0089】
また、本明細書でいう「記録」は広く解釈されるべきものである。従って、「記録」の態様は、記録媒体上に形成される対象が文字、図形等の有意の情報であるか否かを問わないし、また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わない。
【0090】
また、「記録媒体」は、上記「記録」同様広く解釈されるべきものである。従って、「記録媒体」の概念は、一般的に用いられる紙の他、布、プラスチックフィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能な如何なる部材をも含みうる。
【0091】
更に、「インク」は、上記「記録」同様広く解釈されるべきものである。従って、「インク」の概念は、記録媒体上に付与されることによって画像、模様、パターン等を形成する液体の他、記録媒体の加工、インクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)等に供され得る付随的な液体をも含みうる。この観点で、インクジェット記録ヘッドは、液体吐出ヘッド、吐出ヘッド、或いは単にヘッドと表現されてもよい。同様の趣旨で、記録装置は、液体吐出装置などと表現されてもよいし、ヘッド基板は、インクジェット記録ヘッド基板、液体吐出ヘッド基板などと表現されてもよいし、また、ヒータは、記録素子、液体吐出素子などと表現されてもよい。
【0092】
実施形態の幾つかの特徴は次のとおり纏められうる:
[1]
液体を吐出させるための液体吐出素子を備えるヘッド基板であって、
所定の機能を実現する機能部と、通信データが入力される通信入力部とを備え、
前記通信データは、前記機能部の機能を設定する第1部分と、前記機能部への電流供給を制御する第2部分とを含む
ことを特徴とするヘッド基板。
[2]
前記所定の機能は、前記液体が吐出されたことを検知する吐出検知の機能と、前記ヘッド基板の温度を検出するデジタル温度検出の機能とを含む
ことを特徴とする上記[1]記載のヘッド基板。
[3]
前記機能部は、前記吐出検知の機能を実現するためのセンサを含む
ことを特徴とする上記[2]記載のヘッド基板。
[4]
前記センサは複数のセンサの1つであり、前記第1部分は、該複数のセンサから選択されるべきものを設定するデータである
ことを特徴とする上記[3]記載のヘッド基板。
[5]
前記機能部は、前記デジタル温度検出の機能を実現するためのダイオードを含む
ことを特徴とする上記[2]記載のヘッド基板。
[6]
前記ダイオードは複数のダイオードの1つであり、前記第1部分は、該複数のダイオードから選択されるべきものを設定するデータである
ことを特徴とする上記[5]記載のヘッド基板。
[7]
前記機能部は、イネーブル信号を受取り可能に構成され、前記イネーブル信号が一方の信号レベルの場合に前記機能部への電流供給が行われ、前記イネーブル信号が他方の信号レベルの場合に前記機能部への電流供給が抑制される
ことを特徴とする上記[1]記載のヘッド基板。
[8]
前記通信データを受信するための電極を含む複数の電極を更に備え、
前記液体吐出素子は複数の液体吐出素子の1つであり、
前記複数の電極および前記複数の液体吐出素子は前記ヘッド基板の辺方向に配列されており、前記機能部は、前記複数の電極および前記複数の液体吐出素子の間に配置されている
ことを特徴とする上記[1]記載のヘッド基板。
[9]
上記[1]乃至[8]の何れか1つに記載のヘッド基板と、前記ヘッド基板の液体吐出素子に対応するノズルとを備える
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
[10]
上記[9]記載の液体吐出ヘッドと、記録媒体を搬送する搬送機構とを備える
ことを特徴とする液体吐出装置。
【0093】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0094】
100:ヘッド基板、127:通信入力部、147:通信データ。