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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183243
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20231220BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20231220BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231220BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20231220BHJP
   H01M 4/60 20060101ALI20231220BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20231220BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20231220BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20231220BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M4/60
H01M4/13
H01M50/591 101
H01M50/534
H01M50/586
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096762
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 航
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ12
5H029AK05
5H029AK15
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029DJ05
5H029DJ07
5H029HJ00
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ12
5H029HJ18
5H043AA04
5H043BA20
5H043CA08
5H043CA13
5H043EA06
5H043EA12
5H043GA22
5H043JA21E
5H043KA31E
5H043KA45E
5H043LA00E
5H043LA02E
5H043LA11E
5H043LA21E
5H043LA31E
5H050AA08
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA11
5H050CA19
5H050CA26
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA04
5H050DA20
5H050FA02
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA12
5H050HA18
(57)【要約】
【課題】セルエネルギー密度の低下の抑制を図りつつ、放熱することができる全固体電池を提供する。
【解決手段】全固体電池1Aは、積層体10と、積層体10を収容する外装体60と、を備えている。積層体10は、正極層11a~11fと、負極層12a~12fと、固体電解質層13a~13eと、正極集電体20と、負極集電体30と、を含んでいる。全固体電池1Aは、積層体10の積層方向における上端面10aに配置され、正極集電体20と接合されていると共に、外装体60の外部に延出する正極タブ40と、下端面10bに配置され、負極集電体30と接合されていると共に、外装体60の外部に延出する負極タブ50と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体と、前記積層体を収容する外装体と、を備える全固体電池であって、
前記積層体は、
正極層と、
負極層と、
前記正極層と前記負極層との間に介在する固体電解質層と、
前記正極層に接触している正極集電体と、
前記負極層に接触している負極集電体と、を含んでおり、
前記全固体電池は、
前記積層体の積層方向における第1又は第2の端面側に配置され、前記正極集電体と接合されていると共に、前記外装体の外部に延出する正極タブと、
前記第1又は第2の端面側に配置され、前記負極集電体と接合されていると共に、前記外装体の外部に延出する負極タブと、を備えている全固体電池。
【請求項2】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記固体電解質層は、硫化物固体電解質である全固体電池。
【請求項3】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記正極層は、正極活物質を含んでおり、
前記正極活物質は硫黄を含む全固体電池。
【請求項4】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記正極層は、前記正極集電体の両面に形成されており、
前記負極層は、前記負極集電体の両面に形成されている全固体電池。
【請求項5】
請求項4に記載の全固体電池であって、
前記積層体に含まれる前記正極層及び前記負極層のうち、前記正極層は前記積層方向における前記第1の端面側の最も外側に位置しており、前記負極層は前記積層方向における前記第2の端面側の最も外側に位置している全固体電池。
【請求項6】
請求項5に記載の全固体電池であって、
前記正極タブは、前記第1の端面に配置されており、
前記負極タブは、前記第2の端面に配置されている全固体電池。
【請求項7】
請求項5に記載の全固体電池であって、
前記正極タブ及び前記負極タブは、前記第1及び第2の端面側のいずれか一方側に配置されており、
前記全固体電池は、前記正極タブと前記負極タブとの間に介在し、前記正極タブと前記負極タブとを電気的に絶縁する絶縁層をさらに備え、
前記絶縁層の耐電圧は、500V以上である全固体電池。
【請求項8】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記正極タブは、前記正極集電体と接合している第1の接合部を有し、
前記負極タブは、前記負極集電体と接合している第2の接合部を有し、
前記第1の接合部の厚みばらつきは、前記正極タブの厚みの10%以下であり、
前記第2の接合部の厚みばらつきは、前記負極タブの厚みの10%以下である全固体電池。
【請求項9】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記正極タブは、前記正極集電体と接合している第1の接合部を有し、
前記負極タブは、前記負極集電体と接合している第2の接合部を有し、
前記第1の接合部は、前記積層方向から視た場合において前記正極層と重複しておらず、
前記第2の接合部は、前記積層方向から視た場合において前記負極層と重複していない全固体電池。
【請求項10】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記正極タブは、前記積層体の前記第1又は第2の端面に対向する第1の対向面を有し、
前記負極タブは、前記積層体の前記第1又は第2の端面に対向する第2の対向面を有し、
前記第1及び第2の対向面は、前記正極層及び前記負極層の主面の面積以上の面積を有している全固体電池。
【請求項11】
請求項1に記載の全固体電池であって、
前記正極集電体又は前記負極集電体は、前記積層体の前記積層方向における最外端に配置されており、
前記正極集電体又は前記負極集電体の主面は、前記正極タブ又は前記負極タブの主面と接合されている全固体電池。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の全固体電池であって、
前記正極タブ及び前記負極タブは、10W/m・K以上の熱伝導率を有する材料から構成されている全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全固体電池セルは、外装材と、外装材に封入された電極積層体と、電極積層体から延出する集電タブと、を有している(例えば、特許文献1参照)。また、この全固体電池セルでは、電極積層体と外装材とに接するように、外装材の内部に第1伝熱材及び第2伝熱材が配置されており、この第1及び第2伝熱材から外装材を通過するよう熱伝導させて放熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-113496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の全固体電池では、第1伝熱材及び第2伝熱材を配置しているため、セルエネルギー密度が低下してしまう、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、セルエネルギー密度の低下の抑制を図りつつ、放熱することができる全固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、積層体の積層方向における端面側に正負極タブを配置することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、セルエネルギー密度の低下の抑制を図りつつ、放熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態における全固体電池の一例を示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2実施形態における全固体電池の一例を示す断面図である。
図3図3は、本発明の第3実施形態における全固体電池の一例を示す断面図である。
図4図4は、本発明の第4実施形態における全固体電池の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
<<第1実施形態>>
図1は、第1実施形態における全固体電池1Aの一例を示す断面図である。全固体電池1Aはユニポーラ型の電池セルである。この全固体電池1Aは、積層体10と、正極タブ40と、負極タブ50と、外装体60と、を備えている。
【0011】
積層体10は、複数(本例では6個)の正極層11a~11fと、複数(本例では6個)の負極層12a~12fと、複数(本例では5個)の固体電解質層13a~13eと、正極集電体20と、負極集電体30と、を備えている。この積層体は、正極層11a~11fと、負極層12a~12fと、固体電解質層13a~13eと、正極集電体20の第1の介在部21a~21cと、負極集電体30の第2の介在部31a~31cと、が図中のZ方向に沿って積層されることで形成されている。
【0012】
この積層体10に含まれる正極層11a~11fと負極層12a~12fのうち、負極層12aは、積層体10の積層方向における上端面10a側の最も外側(最上端)に位置しており、正極層11fは、積層体10の積層方向における下端面10b側の最も外側(最下端)に位置している。つまり、この積層体10では、最上端に位置している電極と、最下端に位置している電極の極性が異なっている。これにより、積層体10の上端面10aと下端面10bとのそれぞれに後述の負極タブ50と正極タブ40とを配置することができるため、冷却効率の向上を図ることができる。
【0013】
積層体10の一対の正極層11a,11bは、正極集電体20の第1の介在部21aの両面に形成されている。この正極層11a,11bは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、又は、カリウム(K)等のアルカリ金属を放出及び吸蔵可能な正極活物質を少なくとも含有しており、特に限定されないが、硫黄を含む正極活物質を含有することが好ましい。硫黄を含む正極活物質は、硫黄の酸化還元反応を利用して、充電時にリチウムイオン等のアルカリ金属イオンを放出し、放電時に当該アルカリ金属イオンを吸蔵することができる物質であればよい。硫黄を含む正極活物質の種類としては、特に制限されないが、硫黄単体(S)、有機硫黄化合物、又は、無機硫黄化合物の粒子或いは薄膜を使用することができる。
【0014】
有機硫黄化合物としては、特に限定されないが、ジスルフィド化合物、硫黄変性ポリアクリロニトリル、硫黄変性ポリイソプレン、ルベアン酸(ジチオオキサミド)、ポリ硫化カーボン等を用いることができる。無機硫黄化合物としては、特に限定されないが、S-カーボンコンポジット、TiS、TiS、TiS、NiS、NiS、CuS、FeS、LiS、MoS、MoS等が挙げられる。なお、正極活物質として、硫黄を含まないものを使用してもよい。
【0015】
また、一対の正極層11c,11dは、第1の介在部21bの両面に形成されており、一対の正極層11e,11fは、第1の介在部21cの両面に形成されている。これらの正極層11c,11d,11e,11fも上述の正極層11a,11bと同様の材料を含んでいる。
【0016】
一対の負極層12a,12bは、負極集電体30の第2の介在部31aの両面に形成されている。この負極層12a,12bは、特に限定されないが、負極活物質を含有する層で形成されている。負極活物質の種類としては、特に制限されないが、炭素材料、金属酸化物および金属活物質が挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。また、金属酸化物としては、例えば、Nb、LiTi12、SiO等が挙げられる。さらに、金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSn等の金属単体や、TiSi、LaNiSn等の合金が挙げられる。
【0017】
また、負極活物質は、Liを含有する金属でもよく、このような負極活物質は、Liを含有する活物質であれば特に限定されず、Li金属のほか、Liを含有するリチウム合金でもよい。リチウム合金としては、たとえば、リチウムと、金(Au)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、及びビスマス(Bi)から選択される少なくとも1種の金属との合金が挙げられる。また、リチウム合金としては、リチウムと、上述した金属のうち2種以上の金属との合金であってもよい。リチウム合金の具体例としては、例えば、リチウム-金合金(Li-Au)、リチウム-マグネシウム合金(Li-Mg)、リチウム-アルミニウム合金(Li-Al)、リチウム-カルシウム合金(Li-Ca)、リチウム-亜鉛合金(Li-Zn)、リチウム-スズ合金(Li-Sn)、リチウム-ビスマス合金(Li-Bi)などが挙げられる。
【0018】
なお、負極活物質層としては、リチウム合金を含有するものであればよく、その構成は、特に限定されないが、たとえば、リチウム合金を構成するリチウム以外の金属を「Me」とした場合に、次の(1)~(3)のいずれかの態様とすることができる。(1)リチウム合金のみからなる単一の層からなるもの(すなわち、Li-Me層)。(2)リチウム金属からなる層と、リチウム合金からなる層とを備えるもの(すなわち、Li層/Li-Me層)。(3)リチウム金属からなる層と、リチウム合金からなる層と、リチウム以外の金属からなる層とを備えるもの(すなわち、Li層/Li-Me層/Me層)。
【0019】
或いは、負極層12a,12bは、負極中間層を含んでいてもよい。また、負極層12bは、当該負極中間層又は第2の介在部31aに析出するアルカリ金属層も含んでいてもよい。なお、本実施形態における負極層12a側には、固体電解質層や正極層が存在しないため、基本的にアルカリ金属層は析出しない。
【0020】
負極中間層は、アルカリ金属の平滑な析出を補助するため、及び/又は、アルカリ金属層が固体電解質層に直接接しないようにするための層である。負極中間層は、アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出可能な材料または電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有する材料を含有している。アルカリ金属イオンを吸蔵及び放出可能な材料は、グラファイト等の炭素材料や銀等の金属材料からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含有している。
【0021】
また、電子絶縁性およびリチウムイオン伝導性を有する材料は、固体電解質層に含まれる固体電解質よりもリチウム金属と接触することによる還元分解に対して安定な材料であり、例えば、ハロゲン化リチウム(フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI))、リチウムイオン伝導性ポリマー、Li-M-O(Mは、Mg、Au、Al、SnおよびZnからなる群より選ばれる1種または2種以上の金属元素である)で表される複合金属酸化物、ならびにLi-Ba-TiO複合酸化物からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含有している。これらの材料はいずれも、リチウム金属との接触による還元分解について特に安定である。また、負極中間層は、例えば、樹脂バインダーを含んでも良い。
【0022】
アルカリ金属層は、以下のように形成される。すなわち、全固体電池1Aの充電に伴って、正極層11aから放出されたアルカリ金属イオンが、固体電解質層13aを介して第2の介在部31a又は負極中間層の主面に到達する。これにより、第2の介在部31a又は負極中間層の主面にアルカリ金属層が析出する。このアルカリ金属層の体積は、全固体電池1Aの充電に伴ってアルカリ金属が析出して増加していく一方で、放電に伴ってアルカリ金属が消失(正極層11a側へ移動)して減少していく。アルカリ金属層の主成分としては、例えば、リチウム金属、ナトリウム金属、及び、カリウム金属等を挙げることができる。
【0023】
また、一対の負極層12c,12dは、第2の介在部31bの両面に形成されており、一対の負極層12e,12fは、第2の介在部31cの両面に形成されている。これらの負極層12c,12d,12e,12fも上述の負極層12a,12bと同様の構成を有していると共に、同様の材料を含んでいる。
【0024】
固体電解質層13aは、正極層11aと負極層12bとの間に介在しており、正極層11aと負極層12bとに接触している。固体電解質層13bは、正極層11bと負極層12cとの間に介在しており、正極層11bと負極層12cとに接触している。固体電解質層13cは、正極層11cと負極層12dとの間に介在しており、正極層11cと負極層12dとに接触している。固体電解質層13dは、正極層11dと負極層12eとの間に介在しており、正極層11dと負極層12eとに接触している。固体電解質層13eは、正極層11eと負極層12fとの間に介在しており、正極層11eと負極層12fとに接触している。
【0025】
固体電解質13a~13eとしては、例えば、硫化物固体電解質又は酸化物固体電解質等を用いることができるが、硫化物固体電解質を用いることが好ましい。硫化物固体電解質としては、例えば、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiS-P、LiI-LiPS、LiI-LiBr-LiPS、LiPS、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ただし、m、nは正の数であり、Zは、Ge、Zn、Gaのいずれかである)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LixMOy(ただし、x、yは正の数であり、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、又はInのいずれかである)等が挙げられる。なお、「LiS-P」という記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味しており、上記の他の記載についても同様である。或いは、硫化物固体電解質として硫化物ガラス等を用いてもよい。
【0026】
酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等を用いることができる。NASICON型構造を有する化合物としては、例えば、一般式Li1+xAlGe2-x(PO(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)、一般式Li1+xAlTi2-x(PO(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)等を用いることができる。また、他の酸化物固体電解質としては、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.30.46)、LiLaZrO(例えば、LiLaZr12)等を用いることができる。
【0027】
正極集電体20は、導電性を有する板状(又は箔状)の部材であり、特に限定されないが、例えば、金属や、導電性を有する樹脂から構成されている。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、又は、銅等を用いることができる。或いは、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、又は、銅とアルミニウムとのクラッド材等が用いられてもよい。また、導電性を有する樹脂としては、非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。
【0028】
正極集電体20は、複数(本例では3個)の第1の介在部21a~21cと、第1の連結部22と、を有している。第1の介在部21aは正極層11aと正極層11bとの間に介在しており、第1の介在部21bは正極層11cと正極層11dとの間に介在しており、第1の介在部21cは正極層11eと正極層11fとの間に介在している。第1の介在部21a~21cは、正極層間に介在している介在部分の他に、当該介在部分から延出し正極層から露出している延出部分も有している。
【0029】
第1の連結部22は、第1の介在部21a~21cを相互に連結していると共に、正極タブ40と接合している。具体的には、第1の介在部21a~21cの延出部分同士を接続している。この第1の連結部22は、図中のZ方向(積層方向)に沿って延在しており、正極タブ40と接合している。
【0030】
負極集電体30は、複数(本例では3個)の第2の介在部31a~31cと、第2の連結部32と、を有している。第2の介在部31aは負極層12aと負極層12bとの間に介在しており、第2の介在部31bは負極層12cと負極層12dとの間に介在しており、第2の介在部31cは負極層12eと負極層12fとの間に介在している。第2の介在部31a~31cは、負極層間に介在している介在部分の他に、当該介在部分から延出し正極層から露出している延出部分も有している。
【0031】
第2の連結部32は、第2の介在部31a~31cを相互に連結していると共に、負極タブ50と接合している。具体的には、第2の介在部31a~31cの延出部分同士を接続している。この第2の連結部32は、図中のZ方向(積層方向)に沿って延在しており、負極タブ50と接合している。
【0032】
正極タブ40は、導電性を有する板状の部材である。本実施形態における正極タブ40は、積層体10の下端面10b側に配置されており、当該下端面10bと接触している。本実施形態における積層体10の下端面10bは、正極層11fの下面である。よって、正極タブ40は、正極層11fと外装体60との間に介在していると共に、正極層11fと外装体60と接触している。
【0033】
正極タブ40は、例えば、金属や、導電性を有する樹脂から構成されている。特に限定されないが、正極タブ40は、正極集電体20と同じ材料から構成されていてもよい。また、正極タブ40は、10W/m・K以上の熱伝導率を有する材料から構成されていてもよい。これにより、正極タブ40による全固体電池1Aの冷却効率の向上を図ることができる。
【0034】
本実施形態における正極タブ40は、第1の接触部41と、第1の接合部42と、第1の露出部43と、を含んでいる。第1の接触部41は、積層体10の下端面10bと接触している部分である。この第1の接触部41は、積層体10の下端面10bと対向し接触する第1の接触面411を含んでいる。なお、本実施形態における第1の接触面411は、本発明における「第1の対向面」の一例に相当する。
【0035】
第1の接触面411は、正極層11fの下面(下側主面)の面積以上の面積を有しており、正極層11fの下面の全面と接触している。このように第1の接触面411が、正極層11fの下面の面積以上の面積を有することで、積層体10に積層方向に沿って圧力を印加する場合に、積層体10へ印加される圧力を一定とすることができる。これにより、全固体電池1Aの急速な劣化を抑制することができる。
【0036】
第1の接合部42は、正極集電体20の第1の連結部22と接合している部分である。正極タブ40と正極集電体20は、特に限定されないが、この第1の接合部42の表面において溶接などによって接合されている。この第1の接合部42は、積層方向(図中のZ方向)から視た場合において正極層11a~11fと重複していない。このため、積層体10に積層方向に沿って圧力を印加する場合に、積層体10へ印加される圧力を一定とすることができる。
【0037】
第1の露出部43は、外装体60の内部から延出しており、外装体60に収容されることなく外装体60から露出している部分である。この第1の露出部43は、例えば、バスバを介して他の全固体電池と接続されたり、或いは、外部装置の端子と接続される部分である。
【0038】
負極タブ50は、導電性を有する板状の部材である。本実施形態における負極タブ50は、積層体10の上端面10a側に配置されており、当該上端面10aと接触している。本実施形態における積層体10の上端面10aは、負極層12aの上面である。よって、負極タブ50は、負極層12aと外装体60との間に介在していると共に、負極層12aと外装体60と接触している。
【0039】
負極タブ50は、例えば、正極タブ40と同様に、金属や、導電性を有する樹脂から構成されている。また、負極タブ50は、10W/m・K以上の熱伝導率を有する材料から構成されていてもよい。これにより、負極タブ50による全固体電池1Aの冷却効率の向上を図ることができる。
【0040】
本実施形態における負極タブ50は、第2の接触部51と、第2の接合部52と、第2の露出部53と、を含んでいる。第2の接触部51は、積層体10の上端面10aと接触している部分である。この第2の接触部51は、積層体10の上端面10aと対向し接触する第2の接触面511を含んでいる。なお、本実施形態における第2の接触面511は、本発明における「第2の対向面」の一例に相当する。
【0041】
第2の接触面511は、負極層12aの上面(上側主面)の面積以上の面積を有しており、負極層12aの上面の全面と接触している。このように第2の接触面511が、負極層12aの上面の面積以上の面積を有することで、積層体10に積層方向に沿って圧力を印加する場合に、積層体10へ印加される圧力を一定とすることができる。これにより、全固体電池1Aの急速な劣化を抑制することができる。
【0042】
第2の接合部52は、負極集電体30の第2の連結部32と接合している部分である。負極タブ50と負極集電体30は、特に限定されないが、この第2の接合部52の表面において超音波溶着などによって接合されている。この第2の接合部52も、積層方向(図中のZ方向)から視た場合において負極層12a~12fと重複していない。このため、積層体10に積層方向に沿って圧力を印加する場合に、積層体10へ印加される圧力を一定とすることができる。
【0043】
第2の露出部53は、外装体60の内部から延出しており、外装体60に収容されることなく外装体60から露出している部分である。この第2の露出部53は、例えば、バスバを介して他の全固体電池と接続されたり、或いは、外部装置の端子と接続される部分である。
【0044】
外装体60は、積層体10を内部に収容している。この外装体としては、ラミネートフィルム等を用いることができる。外装体60の内部は、特に限定されないが、真空引きされており、外装体60の内部には気体がほとんど存在していない。
【0045】
以上のような全固体電池1Aでは、積層体10の上端面10aに負極タブ50が配置されていると共に、下端面10bに正極タブ40が配置されている。外装体60の内部に気体がほぼ存在しない全固体電池1Aでは、積層体10から生じた熱が、その積層方向に伝達していく。このため、正負極タブ40,50が積層体10の上下端面10a,10bに配置されていることで、正負極タブ40,50に熱が伝達し易くなっている。そして、正負極タブ40,50は、外装体60の外部に露出する第1及び第2の露出部43,53を備えているため、効率よく全固体電池1Aの外部に放熱することができる。
【0046】
本実施形態における全固体電池1Aの構成は、特に、全固体電解質13a~13eに硫化物固体電解質を使用している場合に効果的である。液体電解質二次電池の電解液に比較して、硫化物固体電解質は熱容量が小さいため、全固体電池1Aは発熱し易くなる。このため、本実施形態における全固体電池1Aのような構成により、効率よく全固体電池1Aの外部に放熱することが重要である。
【0047】
また、本実施形態における全固体電池1Aの構成は、特に、正極層11a~11fに含まれる正極活物質として、硫黄を含む正極活物質を使用している場合にも効果的である。硫黄系の正極活物質は、NMC系の正極活物質と比較して熱容量が小さく、熱伝導性も低いので全固体電池1Aは発熱し易くなる。このため、本実施形態における全固体電池1Aのような構成により、効率よく全固体電池1Aの外部に放熱することが重要である。
【0048】
さらに、本実施形態のような全固体電池1Aであれば、積層体10や正負極タブ40,50の他に伝熱材などを配置する必要が無いので、セルエネルギー密度の低下の抑制を図ることができる。
【0049】
<<第2実施形態>>
次に、第2実施形態における全固体電池1Bを図2を参照しながら説明する。第2実施形態における全固体電池1Bでは、負極タブ50が積層体10の下端面10b側に配置されている点が第1実施形態における全固体電池1Aと異なる。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
【0050】
この全固体電池1Bでは、負極タブ50は、正極タブ40の下方に設けられている。また、全固体電池1Bは、負極タブ50と正極タブ40との間に絶縁層70を有している。負極タブ50の第2の接触面は、絶縁層70と接触しており、第1実施形態のように負極層とは直接接触していない。
【0051】
絶縁層70は、絶縁性を有する材料から構成された層であり、正極タブ40と負極タブ50とを絶縁している。この絶縁層70の耐電圧は、特に限定されないが、500V以上とすることができる。これにより、正負極タブ40,50の短絡を抑制できる。
【0052】
絶縁層70を構成する材料としては、例えば、樹脂を用いることができる。特に限定されないが、樹脂の種類や、厚みを適切な値とすることで、耐電圧を500V以上に設定できる。
【0053】
第2実施形態における全固体電池1Bのように積層体10の一方の端面側に正負極タブ40,50の両方を配置しても、第1実施形態の全固体電池1Aと同様に、セルエネルギー密度の低下の抑制を図りつつ放熱することができる。
【0054】
<<第3実施形態>>
次に、第3実施形態における全固体電池1Cを図3を参照しながら説明する。第3実施形態における全固体電池1Cでは、積層体10の上端面10a側に正極タブ40を配置し、下端面10b側に負極タブ50を配置している点が第1実施形態における全固体電池1Aと異なる。つまり、積層体10の最外層に位置する電極と異なる極性を有する電極タブを配置している。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
【0055】
この第3実施形態の全固体電池1Cでは、負極層12aの上方に正極タブ40が配置されている。このため、負極層12aと正極層40aとの短絡を抑制するために、負極層12aと正極タブ40との間に絶縁層70aが配置されている。
【0056】
同様に、正極層11fの下方に負極タブ50が配置されているため、正極層11fと負極タブ50との間に絶縁層70bが配置されている。
【0057】
第3実施形態における全固体電池1Cのように、異なる極性を有する電極と電極タブを絶縁層70a,70bを介して対向させる場合であっても、第1実施形態の全固体電池1Aと同様に、セルエネルギー密度の低下の抑制を図りつつ放熱することができる。
【0058】
<<第4実施形態>>
次に、第4実施形態における全固体電池1Dを図4を参照しながら説明する。第4実施形態における全固体電池1Dでは、積層体10Dの上端面10aが負極集電体30Dの第4の介在部33の上面であり、下端面10bが正極集電体20Dの第3の介在部23の下面である点が第1実施形態における全固体電池1Aと異なる。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略して、上述の実施形態においてした説明を援用する。
【0059】
この積層体10Dでは、積層方向における最外端(最上層)に負極集電体30Dの第4の介在部33が配置されている。この第4の介在部33は、負極層12aと負極タブ50との間に介在しており、負極層12aと負極タブ50とに接触している。
【0060】
第4実施形態における負極タブ50の下面(下側主面)は、第2の接触部51において第4の介在部33の上面と接合されている。つまり、第2の接触部51が第2の接合部52も兼ねている。この第2の接触部51の厚みのばらつきは、負極タブ50の厚みの10%以下であることが好ましい。負極タブ50は、積層体10の直上に配置されているため、第2の接触部51(第2の接合部52)の厚みばらつきを小さくすることによって、全固体電池1Dの外部からの印可圧力を均一とすることができる。これにより、全固体電池1Dの急激な劣化を抑制することができる。
【0061】
なお、負極タブ50の厚みとしては、例えば、負極タブ50の面内の複数の点で厚みを測定した平均厚みを使用することができる。そして、第2の接触部51において測定される厚みが、この平均厚みの±10%以内であればよい。
【0062】
また、積層体10Dでは、積層方向における最外端(最下層)に正極集電体20Dの第3の介在部23が配置されている。この第3の介在部23は、正極層11fと正極タブ40との間に介在しており、正極層11fと正極タブ40とに接触している。
【0063】
第4実施形態における正極タブ40の上面(上側主面)は、第1の接触部41において第3の介在部23の下面と接合されている。つまり、第1の接触部41が第1の接合部42も兼ねている。この第1の接触部41の厚みのばらつきは、正極タブ40の厚みの10%以下であることが好ましい。正極タブ40は、積層体10の直下に配置されているため、第1の接触部41(第1の接合部42)の厚みばらつきを小さくすることによって、全固体電池1Dの外部からの印可圧力を均一とすることができる。これにより、全固体電池1Dの急激な劣化を抑制することができる。
【0064】
また、第3及び第4の介在部23,33を介して正負極タブ40,50が正負極集電体20,30と接合することにより、接触面積を向上させて接触抵抗を抑制することができる。
【0065】
第4実施形態における全固体電池1Dにおいても、第1実施形態の全固体電池1Aと同様に、セルエネルギー密度の低下の抑制を図りつつ放熱することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0067】
1A~1D…全固体電池
10,10D…積層体
10a…上端面
10b…下端面
11a~11f…正極層
12a~12f…負極層
13a~13e…固体電解質層
20,20D…正極集電体
21a~21c…第1の介在部
22…第1の連結部
23…第3の介在部
30,30D…負極集電体
31a~31c…第2の介在部
32…第2の連結部
33…第4の介在部
40…正極タブ
41…第1の接触部
411…第1の接触面
42…第1の接合部
43…第1の露出部
50…負極タブ
51…第2の接触部
511…第2の接触面
52…第2の接合部
53…第2の露出部
60…外装体
70,70a,70b…絶縁層
図1
図2
図3
図4