(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183244
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信機器
(51)【国際特許分類】
H04W 4/48 20180101AFI20231220BHJP
H04B 1/3822 20150101ALI20231220BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20231220BHJP
H04B 1/401 20150101ALI20231220BHJP
H04W 84/10 20090101ALI20231220BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20231220BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20231220BHJP
【FI】
H04W4/48
H04B1/3822
H04B1/16 M
H04B1/401
H04W84/10 110
H04W84/18
H04W52/02 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096765
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曹 冷馳
(72)【発明者】
【氏名】青野 孝之
【テーマコード(参考)】
5K011
5K061
5K067
【Fターム(参考)】
5K011BA04
5K011FA07
5K011JA01
5K011KA03
5K061AA02
5K061CC02
5K061EE01
5K067AA34
5K067AA43
5K067BB03
5K067BB27
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE41
5K067FF02
5K067LL05
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】通信構成の複雑化を抑えつつ、電力消費の増大を抑制可能な無線通信システムおよび無線通信機器を提供する。
【解決手段】TPMSは、電池25を電源として動作し、通信モードをスタンバイ状態とウェイクアップ状態とに切替可能な第1制御部23を有するタイヤセンサ2を備える。TPMSは、タイヤセンサ2との間でBLE通信を実施可能に構成され、タイヤセンサ2からアドバタイズ信号を受信すると、タイヤセンサ2に対して接続要求してタイヤセンサ2とのコネクションを確立可能な車載ユニット3を備える。タイヤセンサ2は、第1制御部が23スタンバイ状態となっている際に車載ユニット3が発するBLE通信規格に準ずる周波数帯の無線信号を受信すると、無線信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合する。そして、タイヤセンサ2は、照合結果に応じて第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムであって、
電池(25)を電源として動作するものであって、通信モードをスタンバイ状態とウェイクアップ状態とに切替可能な制御部(23)を有する第1機器(2)と、
前記第1機器との間でBLE通信規格に準ずる無線通信を実施可能に構成され、前記第1機器からアドバタイズ信号を受信すると、前記第1機器に対して接続要求して前記第1機器とのコネクションを確立可能な第2機器(3、5)と、を備え、
前記第1機器は、前記制御部が前記スタンバイ状態となっている際に前記第2機器が発する前記BLE通信規格に準ずる周波数帯の無線信号を受信すると、前記無線信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合し、照合結果に応じて前記制御部を前記ウェイクアップ状態に切り替える起動部(27、27A)を含んでいる、無線通信システム。
【請求項2】
前記第2機器は、前記アドバタイズ信号を前記ウェイクアップ信号として前記第1機器に向けて発信し、
前記起動部(27)は、前記第2機器が発する前記アドバタイズ信号の少なくとも一部を前記照合パターンと照合する照合部(271)と、前記照合部での照合結果に応じて前記制御部を前記ウェイクアップ状態に切り替える切替部(272)と、を含む請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第2機器は、前記アドバタイズ信号とは異なる2.4GHz帯の高周波信号を前記ウェイクアップ信号として前記第1機器に向けて発信し、
前記起動部(27A)は、前記第2機器が発する前記高周波信号を前記照合パターンと照合する照合部(271A)と、前記照合部での照合結果に応じて前記制御部を前記ウェイクアップ状態に切り替える切替部(272A)と、を含む請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第2機器は、前記アドバタイズ信号よりもデータ量の小さい前記高周波信号を前記ウェイクアップ信号として発信する、請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1機器は、前記第2機器からの前記ウェイクアップ信号を受信して前記制御部が前記ウェイクアップ状態になると、前記アドバタイズ信号をブロードキャスト可能な状態になる、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1機器は、車両に取り付けられた車輪のタイヤ空気圧を検出するタイヤセンサ(2)であり、
前記第2機器は、前記車両に設置されて前記タイヤセンサでの検知結果に基づいて前記タイヤ空気圧の異常の有無を監視する車載ユニット(3)である、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記電池は、放電が可能な一次電池である、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の無線通信システム。
【請求項8】
電池(25)を電源として動作する無線通信機器であって、
通信モードをスタンバイ状態とウェイクアップ状態とに切替可能な制御部(23)と、
外部機器(3、5)との間でBLE通信規格に準ずる無線通信を実施するものであって、前記外部機器からの接続要求によって前記外部機器とのコネクションが確立される通信回路(24)と、
前記制御部が前記スタンバイ状態となっている際に、前記BLE通信規格に準ずる周波数帯の無線信号を受信すると、前記無線信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合し、照合結果に応じて前記制御部を前記ウェイクアップ状態に切り替える起動部(27)と、
を備える、無線通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システムおよび無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートキー等の電池駆動型の携帯通信機と車載通信機との間で、BLE通信規格に準ずる無線通信(以下、BLE通信とも呼ぶ)を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このBLE通信では、一方の通信機の制御部を間欠的に起動させてアドバタイズ信号をブロードキャストし、この信号をスキャンした他方の通信機が接続要求を行うことで、各通信機の間の通信接続を確立させるのが一般的である。
【0003】
これに対し、特許文献1には、無線通信の電力消費を抑えるために、BLE通信規格に準ずる無線通信とLF信号等を用いた無線通信とを組み合わせることによって、スタンバイ状態の通信機をウェイクアップ状態に切り替える技術が開示されている。具体的には、特許文献1に記載のシステムは、通信機の制御部を間欠的にウェイクアップ状態に切り替えてアドバタイズ信号をブロードキャストするのではなく、LF信号等を用いた無線通信により通信機をウェイクアップ状態に切り替える構成になっている。なお、“BLE”は、Bluetooth(登録商標) Low Energy の略称である。また、“LF”は、Low Frequency の略称である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、BLE通信を行うための機器に加えて、LF信号等を用いた無線通信を行うための機器が別途必要となることで、通信構成が大幅に複雑化してしまう。
【0006】
本開示では、通信構成の複雑化を抑えつつ、電力消費の増大を抑制可能な無線通信システムおよび無線通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
無線通信システムであって、
電池(25)を電源として動作するものであって、通信モードをスタンバイ状態とウェイクアップ状態とに切替可能な制御部(23)を有する第1機器(2)と、
第1機器との間でBLE通信規格に準ずる無線通信を実施可能に構成され、第1機器からアドバタイズ信号を受信すると、第1機器に対して接続要求して第1機器とのコネクションを確立可能な第2機器(3、5)と、を備え、
第1機器は、制御部がスタンバイ状態となっている際に第2機器が発するBLE通信規格に準ずる周波数帯の無線信号を受信すると、無線信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合し、照合結果に応じて制御部をウェイクアップ状態に切り替える起動部(27、27A)を含んでいる。
【0008】
このように、第2機器が発するウェイクアップ信号の受信を契機として、第1機器の制御部がスタンバイ状態からウェイクアップ状態に切り替わる構成になっていれば、第1機器の制御部を間欠的に起動させる必要がないので、第1機器の電力消費を抑制できる。そして、第2機器が発するウェイクアップ信号は、BLE通信規格に準ずる周波数帯の信号であるため、第1機器に対してウェイクアップ信号を受信するための専用アンテナを追加する必要がない。
【0009】
したがって、本開示の無線通信システムによれば、通信構成の複雑化を抑えつつ、電力消費を抑制することができる。
【0010】
請求項8に記載の発明は、
電池(25)を電源として動作する無線通信機器であって、
通信モードをスタンバイ状態とウェイクアップ状態とに切替可能な制御部(23)と、
外部機器(3、5)との間でBLE通信規格に準ずる無線通信を実施するものであって、外部機器からの接続要求によって外部機器とのコネクションが確立される通信回路(24)と、
制御部がスタンバイ状態となっている際に、BLE通信規格に準ずる周波数帯の無線信号を受信すると、無線信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合し、照合結果に応じて制御部をウェイクアップ状態に切り替える起動部(27)と、を備える。
【0011】
このように、第2機器が発するウェイクアップ信号の受信を契機として、無線通信機器の制御部がスタンバイ状態からウェイクアップ状態に切り替わる構成になっていれば、無線通信機器の制御部を間欠的に起動させる必要がない。加えて、外部機器が発するウェイクアップ信号は、BLE通信規格に準ずる周波数帯の信号であるため、無線通信機器に対してウェイクアップ信号を受信するための専用アンテナを追加する必要がない。
【0012】
したがって、本開示の無線通信システムによれば、従来に比べて、通信構成の複雑化を抑えつつ、電力消費を抑制することができる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る無線通信システムを構成するタイヤ空気圧監視システムの概略構成図である。
【
図2】タイヤセンサの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態のタイヤセンサに含まれる第1通信回路の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図5】車載ユニットの概略的な構成を示すブロック図である。
【
図6】車載ユニット等が実行する通信処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態におけるタイヤセンサと車載ユニットとの間の無線通信を説明するための説明図である。
【
図8】第1実施形態の車載ユニットが発するウェイクアップ信号を説明するための説明図である。
【
図9】第2実施形態におけるタイヤセンサと車載ユニットとの間の無線通信を説明するための説明図である。
【
図10】第2実施形態の車載ユニットが発するウェイクアップ信号を説明するための説明図である。
【
図11】第2実施形態のタイヤセンサに含まれる第1通信回路の概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0016】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。本開示では、無線通信システムをタイヤ空気圧監視システム(以下、TPMSと称する)に適用した例について説明する。TPMSは、車両1の車輪6a~6dのタイヤ空気圧を監視するシステムである。TPMSは、タイヤセンサ2と、車載ユニット3と、表示機器4と、整備ツール5と、を含んでいる。本実施形態では、タイヤセンサ2が “第1機器”に対応し、車載ユニット3および整備ツール5が“第2機器”に対応している。また、本実施形態では、タイヤセンサ2が“無線通信機器”に対応し、車載ユニット3および整備ツール5が“外部機器”に対応している。
【0017】
タイヤセンサ2は、タイヤを含む複数の車輪6a~6dのそれぞれに設けられるもので、タイヤの空気圧等を検出すると共に、その検出結果を示すタイヤ空気圧に関する情報をフレーム内に格納して送信する。
【0018】
車載ユニット3は、車両1における車体7側に設けられるもので、タイヤセンサ2から送信されたフレームを受信すると共に、その中に格納された情報に基づいて各種処理や演算等を行うことでタイヤ空気圧検出を行う。
【0019】
車載ユニット3は、タイヤセンサ2との間でBLE通信を実施可能に構成されている。車載ユニット3は、タイヤセンサ2からアドバタイズ信号を受信すると、タイヤセンサ2に対して接続要求してタイヤセンサ2とのコネクションを確立する。
【0020】
表示機器4は、乗員に伝える情報を表示する機器である。表示機器4は、車室内のうちドライバが視認可能な場所に設置される。具体的には、表示機器4は、インストルメントパネルに設置される警報ランプやディスプレイによって構成される。表示機器4は、車載ユニット3からタイヤ空気圧が低下した旨を示す信号が送られてくると、その旨の表示を行うことでドライバにタイヤ空気圧の低下を報知する。
【0021】
整備ツール5は、車両1の各種機器における異常の有無を診断するものであって、主に車両1の整備士が扱うツールである。整備ツール5は、タイヤセンサ2や車載ユニット3との間でBLE通信を実施可能に構成されている。なお、整備ツール5は、車載ユニット3と有線通信によって接続可能に構成されていてもよい。
【0022】
以下、タイヤセンサ2の概略的な構成について、
図2~
図4を参照しつつ説明する。
図2に示すように、タイヤセンサ2は、センシング部21と、加速度センサ22と、第1制御部23と、第1通信回路24と、第1通信アンテナ26と、電池25とを有する。
【0023】
センシング部21は、タイヤ空気圧やタイヤ内温度を検出する。すなわち、センシング部21は、圧力センサや温度センサを備えた構成とされ、タイヤ空気圧に応じた検出信号やタイヤ内温度に応じた検出信号を出力する。
【0024】
加速度センサ22は、重力加速度と、各車輪6a~6dの回転によって生じる加速度を検出する。本実施形態の加速度センサ22は、例えば、車輪6a~6dの回転時に車輪6a~6dに働く加速度のうち、各車輪6a~6dの径方向に働く遠心加速度と重力加速度を加えた値に応じた検出信号を出力する。
【0025】
第1制御部23は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備えるマイクロコンピュータによって構成される。第1制御部23は、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、所定の処理を実行する。メモリには、各タイヤセンサ2を特定するための固有の識別情報と自車両を特定するための車両固有の識別情報とを含む個別のID情報が格納されている。
【0026】
第1制御部23は、センシング部21から出力された検出信号を受け取り、それを信号処理すると共に必要に応じて加工し、センシング部21の検出結果を示すデータとして各タイヤセンサ2のID情報と共にフレーム内に格納する。すなわち、第1制御部23は、センシング部21の検出結果を示すデータが格納されたフレームを作成する。第1制御部23は、作成したフレームを第1通信回路24に送る。以下の説明では、センシング部21の検出結果を示すデータのことを、タイヤ空気圧に関するデータ、または、単に、タイヤ情報という。なお、タイヤ空気圧に関するデータにこれらすべてのデータが必ず含まれている必要はなく、タイヤ空気圧の検出結果を示すデータのみであってもよい。
【0027】
第1制御部23は、加速度センサ22の検出信号に基づいて、加速度が一定値以上であるか否か、すなわち、車両1が所定速度以上での走行中であるか、車両1が徐行および駐停車中であるかを検出する。また、第1制御部23は、センシング部21の検出信号に基づいて、タイヤ調圧によるタイヤ空気圧変化を検出する。
【0028】
第1制御部23は、電力消費を抑えるために、他の機器との通信が不要な場合に省電力な通信モードであるスタンバイ状態に移行する。第1制御部23は、通信モードをスタンバイ状態とウェイクアップ状態とに切替可能な“制御部”である。
【0029】
ここで、スタンバイ状態は、信号の待ち受け状態であり、ウェイクアップ状態に比べて省電力で動作する。具体的には、スタンバイ状態は、BLE通信規格に準ずる周波数帯(すなわち、2.4GHz帯)の無線信号を受信可能であるが、当該無線信号の送信ができない状態である。スタンバイ状態では、常に無線信号を受信できるわけではなく、周期的に無線信号を受信可能な状態に移行するようになっている。これにより、電力消費が抑制される。
【0030】
ウェイクアップ状態は、第1制御部23が起動された状態であり、BLE通信規格に準ずる無線信号を送受信可能な状態である。ウェイクアップ状態は、スタンバイ状態に比べて電力消費が大きい。
【0031】
第1制御部23は、例えば、ウェイクアップ状態となっている際に、所定のタイミングで、単方向通信によるタイヤ情報の送信を第1通信回路24に行わせる。なお、タイヤ情報の送信とは、タイヤ情報が格納されたフレームを送信することを意味する。
【0032】
第1通信回路24は、車載ユニット3および整備ツール5等との間で、BLE通信を行う通信回路である。第1通信アンテナ26は、車載ユニット3および整備ツール5等とBLE通信を行うためのアンテナである。
【0033】
第1通信回路24は、第1通信アンテナ26を通じて、BLE通信規格に準ずる無線信号の送信および受信を行う。BLE通信では、タイヤセンサ2から車載ユニット3への単方向通信と、タイヤセンサ2と車載ユニット3との間の双方向通信とが可能である。
【0034】
第1通信回路24は、第1制御部23がスタンバイ状態となっている際に車載ユニット3が発するBLE通信規格に準ずる周波数帯のウェイクアップ信号を受信すると、第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える起動部27を含んでいる。具体的には、第1通信回路24は、BLE通信規格に準ずる周波数帯の無線信号を受信すると、当該無線信号をウェイクアップ信号に対応する所定の照合パターンと照合し、照合結果に応じて第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える。
【0035】
BLE通信では、周波数帯が2.4GHz帯であって、GFSK(GaussianFSK)の変調方式が採用されている。第1通信回路24は、前述のBLE通信で採用される通信方式に対応した回路構成になっている。
【0036】
具体的には、第1通信回路24は、
図3に示すように、ローノイズアンプ(LNA)241、位相同期回路(PLL)242、デジタル変換器(ADC)243、復調器244、データバッファ245、起動部27を備えている。
【0037】
第1通信回路24は、第1通信アンテナ26で受信した受信信号をローノイズアンプ241で増幅したものを位相同期回路242が発信するロック信号と同期させた後、デジタル変換器243でデジタル信号に変換する。そして、第1通信回路24は、デジタル変換器243で変換されたデジタル信号を復調器244で復調し、復調した信号データをデータバッファ245に一時的に記憶する。復調器244で復調した信号データやデータバッファ245に記憶された信号データは、所定のBLE手続作業を経てウェイクアップ状態の第1制御部23へ出力される。
ここで、データバッファ245は、第1制御部23がスタンバイ状態になっている際に復調器244で復調した信号データを一時的に記憶しておくものである。第1通信回路24は、例えば、復調器244で復調した信号データが後述のウェイクアップ信号と一致すると、データバッファ245に記憶された信号データを第1制御部23へ出力する。また、第1通信回路24は、復調器244で復調した信号データが後述のウェイクアップ信号と一致しない場合には、データバッファ245に記憶された信号データを破棄する。なお、復調器244で復調した信号データは、常にデータバッファ245に記憶されるわけではない。第1通信回路24は、例えば、第1制御部23の起動後に復調器244で復調した信号データについてはデータバッファ245に記憶せずに第1制御部23へ出力するようになっていてもよい。また、第1通信回路24は、例えば、復調器244で復調した信号データが、第1制御部23を起動させるための専用の信号である場合等はデータバッファ245に記憶せずに第1制御部23へも出力しないようになっていてもよい。なお、データバッファは、必須の構成ではなく、例えば、車載ユニット3が同じ信号を複数回送信するように構成されている場合は省略されていてもよい。
【0038】
起動部27は、第1制御部23を起動させるものである。本実施形態の起動部27は、デジタル変換器243で変換されたデジタル信号に基づいて、第1制御部23の通信モードをスタンバイ状態からウェイクアップ状態に切り替える。起動部27は、照合部271および切替部272を備える。
【0039】
照合部271は、
図4に示すように、車載ユニット3等の外部機器が発するBLE通信規格に準ずる無線信号を受信すると、当該信号に対応するデジタル信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合する。この照合パターンは、車載ユニット3等の外部機器が発するウェイクアップ信号の少なくとも一部に対応しており、予めメモリに記憶されている。照合部271は、車載ユニット3等の外部機器からウェイクアップ信号を受信すると、ウェイクアップ信号を照合パターンと照合し、一致しているか否かを示す信号を照合結果として切替部272に出力する。
【0040】
切替部272は、照合部271での照合結果に応じて第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える。切替部272は、例えば、照合部271での照合結果が一致を示す場合に、復調器244およびデータバッファ245とBLE接続作業を実施する構成との間の接続をオンして、第1制御部23を起動させる。なお、切替部272は、照合部271での照合結果が不一致を示す場合に、復調器244およびデータバッファ245とBLE接続作業を実施する構成との間の接続をオフに維持する。
【0041】
図2に戻り、電池25は、センシング部21や第1制御部23等に対して電力供給を行う。電池25からの電力供給により、センシング部21でのタイヤ空気圧に関するデータの収集や、第1制御部23での各種演算等が実行される。電池25は、放電可能な一次電池で構成されている。
【0042】
このように構成されるタイヤセンサ2は、各車輪6a~6dのホイールにおけるエア注入バルブに取り付けられ、センシング部21がタイヤの内側に露出するように配置される。これにより、タイヤセンサ2は、タイヤ空気圧を検出し、その検出結果を示すタイヤ情報が格納されたフレームを送信する。
【0043】
続いて、車載ユニット3の概略的な構成について、
図5を参照しつつ説明する。
図5に示すように、車載ユニット3は、第2通信アンテナ31と、第2通信回路32と、電源制御部33と、第2制御部34とを有する。
【0044】
第2通信アンテナ31は、各タイヤセンサ2とBLE通信を行うためのアンテナである。第2通信アンテナ31は、車載ユニット3の本体内に配置された内部アンテナでもよいし、本体から配線を引き伸ばした外部アンテナとされていてもよい。
【0045】
第2通信回路32は、第2通信アンテナ31を通じて、各タイヤセンサ2とBLE通信を行う回路である。第2通信回路32は、第2通信アンテナ31を通じて、BLE通信規格に準ずる無線信号の送信及び受信を行う。第2通信回路32は、車載ユニット3からタイヤセンサ2への単方向通信と、タイヤセンサ2と車載ユニット3との間の双方向通信とが可能である。第2通信回路32は、BLE通信で採用される通信方式に対応した回路構成になっている。
【0046】
電源制御部33は、バッテリ8からの電源供給、具体的には、バッテリ8から印加される所定電圧(+B)に基づいて車載ユニット3の各部に駆動用電源を供給する。電源制御部33による電源制御に基づいて車載ユニット3が作動し、BLE通信や第2制御部34でのタイヤ空気圧検出等が行われる。電源制御部33は、第2制御部34からの制御信号に基づいて駆動用電源を生成する。基本的には、電源制御部33は、イグニッションスイッチがオフされると、駆動用電源の生成を停止し、イグニッションスイッチがオンされると、駆動用電源を生成する。なお、バッテリ8は、充放電可能な二次電池で構成される。バッテリ8は、例えば、車両1の制動時の回生エネルギによって充電される。
【0047】
第2制御部34は、CPU、ROMやRAM等のメモリ、I/O等を備えたマイクロコンピュータによって構成される。第2制御部34は、内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って、通信処理、タイヤ空気圧検出処理、オートロケーション処理等の所定の処理を実行する。
【0048】
通信処理では、各タイヤセンサ2との無線通信を実施する処理である。第2制御部34は、受信の開始と停止とを第2通信回路32に行わせる。以下、第2制御部34が実行する通信処理の一例について
図6を参照しつつ説明する。
図6に示す制御ルーチンは、第2制御部34によって周期的または不定期に実行される。
【0049】
図6に示すように、第2制御部34は、ステップS10にて、タイヤセンサ2との通線接続が必要か否かを判定する。タイヤセンサ2との通線接続が必要なシーンとしては、例えば、タイヤ空気圧検出処理やオートロケーション処理を実施するシーン、車両工場や車両ディーラでの異常診断を実施するシーン等が挙げられる。タイヤセンサ2との通信接続が必要である場合(S10:YES)、第2制御部34は、ステップS20にて、タイヤセンサ2との通信接続を実施する通信接続処理を実行する。なお、タイヤセンサ2と車載ユニット3との間のBLE通信の接続処理については、後述する。
【0050】
タイヤ空気圧検出処理では、第2制御部34は、各タイヤセンサ2が取り付けられた車輪6a~6dのタイヤ空気圧の検出などを行う。具体的には、第2制御部34は、第2通信回路32が受信したフレームに格納されたタイヤ情報に基づいて演算することで、タイヤ空気圧を検出する。そして、検出したタイヤ空気圧に応じた電気信号を表示機器4に出力する。また、第2制御部34は、検出したタイヤ空気圧を所定の警報閾値Thと比較し、タイヤ空気圧が所定の警報閾値Th以下に低下したことを検知した場合には、その旨の信号を表示機器4に出力する。このようにして、第2制御部34は、タイヤ空気圧が低下したことをユーザに知らせるための警報を発令する。
【0051】
オートロケーション処理は、各タイヤセンサ2からのタイヤ情報を、各車輪6a~6dの位置に自動的に結び付ける処理である。例えば、第2制御部34は、各タイヤセンサ2からの受信する無線信号の信号強度、各タイヤセンサ2と車載ユニット3との間での無線信号の到達時間等に基づいて、各タイヤセンサ2が各車輪6a~6dのいずれに取り付けられているかを特定する。
【0052】
整備ツール5は、図示しないが、車載された各種機器の異常の有無を診断する診断、各タイヤセンサ2や車載ユニット3等と無線通信するためのアンテナおよび通信回路等を備えている。整備ツール5は、車載ユニット3と同様の通信処理を実施可能になっている。整備ツール5とタイヤセンサ2との通線接続が必要なシーンとしては、例えば、車両工場や車両ディーラでの異常診断、タイヤ交換、タイヤローテンション等を実施するシーンが挙げられる。
【0053】
次に、タイヤセンサ2と車載ユニット3との間のBLE通信の接続処理について、
図3、
図7および
図8を参照しつつ説明する。車載ユニット3は、タイヤセンサ2との通信接続が必要となるシーンになると、タイヤセンサ2の通信モードをウェイクアップ状態に切り替えるために、タイヤセンサ2に向けてウェイクアップ信号を発する。本実施形態の車載ユニット3は、
図7に示すように、アドバタイズ信号をウェイクアップ信号としてタイヤセンサ2に向けて発信する。
【0054】
アドバタイズ信号のフレーム構成は、
図8に示すように、プリアンブル、アクセスアドレス、PDU、CRCからなる。PDUは、ヘッダとペイロードからなる。ヘッダには、車載ユニット3に固有のデバイス情報が含まれている。なお、PDUは、Protocol Data Unit の略称である。また、CRCは、Cyclic Redundancy Check の略称である。
【0055】
タイヤセンサ2は、車載ユニット3からの無線信号を受信すると、第1通信回路24の起動部27にて、当該無線信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合する。照合パターンは、ウェイクアップ信号であるアドバタイズ信号の少なくとも一部が含まれている。具体的には、照合パターンには、車載ユニット3を識別可能なように、少なくともアドバタイズ信号のプリアンブル、アクセスアドレス、PDUのヘッダまでの情報が含まれている。なお、照合の精度を高める上では、照合パターンには、プリアンブルからCRCまでの情報が含まれていることが望ましい。
【0056】
タイヤセンサ2は、起動部27の照合部271での照合結果が無線信号と照合パターンとの一致を示すものである場合、第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える。これにより、省電力状態のタイヤセンサ2が各種機能を発揮可能な通常状態に復帰する。そして、タイヤセンサ2は、第1制御部23がウェイクアップ状態になると、アドバタイズ信号をブロードキャスト可能な状態になる。なお、タイヤセンサ2は、第1制御部23がウェイクアップ状態になると、アドバタイズ信号をブロードキャストするようになっていてもよいし、アドバタイズ信号のブロードキャスト以外の動作を実施するようになっていてもよい。
【0057】
車載ユニット3は、ウェイクアップ信号を発した後、アドバタイズ信号をスキャンするためのスキャン処理を所定の周期で実行する。車載ユニット3は、タイヤセンサ2が発したアドバタイズ信号をスキャンすると、タイヤセンサ2に向けて接続要求してタイヤセンサ2とのコネクションを確立する。
【0058】
このようにして、TPMSでは、タイヤセンサ2と車載ユニット3との間のBLE通信の接続処理が実現される。なお、本実施形態では、タイヤセンサ2と整備ツール5との間のBLE通信の接続処理は、タイヤセンサ2と車載ユニット3との間のBLE通信の接続処理と同様の態様で実現される。
【0059】
ここで、BLE通信の通信接続は、周期的にタイヤセンサ2の第1制御部23を起動させてアドバタイズ信号をブロードキャストし、車載ユニット3側でアドバタイズ信号をスキャンしてコネクションを形成することでも実現可能である。
【0060】
ところが、このような通信接続によると、タイヤセンサ2側では周期的にアドバタイズ信号をブロードキャストするために第1制御部23を起動させる必要があり、電力消費が大きくなってしまう。このことは、タイヤセンサ2の寿命を縮める要因となる。また、車載ユニット3側では、タイヤセンサ2がアドバタイズ信号を発するタイミングが把握できず、コネクションを形成までに時間がかかるため、応答性が低い。
【0061】
また、BLE通信の通信接続は、周期的に車載ユニット3からアドバタイズ信号をブロードキャストし、周期的にタイヤセンサ2の第1制御部23を起動させてアドバタイズ信号をスキャンしてコネクションを形成することでも実現可能である。
【0062】
しかし、このような通信接続では、タイヤセンサ2側では周期的にアドバタイズ信号をスキャンするために第1制御部23を起動させる必要があり、電力消費が大きくなってしまう。また、タイヤセンサ2の電力消費を抑えるために、タイヤセンサ2でのアドバタイズ信号をスキャンする周期を大きくすると、応答性が低くなってしまう。
【0063】
これらに対して、本実施形態では、タイヤセンサ2は、第1制御部23がスタンバイ状態となっている際に、車載ユニット3が発するBLE通信規格に準ずる周波数帯の無線信号を受信すると、当該無線信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合する。そして、タイヤセンサ2は、照合結果に応じて第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える。
【0064】
このように、本実施形態のTPMSは、車載ユニット3が発するウェイクアップ信号の受信を契機として、タイヤセンサ2の第1制御部23がスタンバイ状態からウェイクアップ状態に切り替わる構成になっている。これによれば、タイヤセンサ2と車載ユニット3の通信接続時にタイヤセンサ2の第1制御部23を間欠的に起動させる必要がないので、タイヤセンサ2の電力消費を抑制できる。そして、車載ユニット3が発するウェイクアップ信号は、BLE通信規格に準ずる周波数帯の無線信号であるため、タイヤセンサ2に対してウェイクアップ信号を受信するための専用アンテナを追加する必要がない。
【0065】
したがって、TPMSに適用した本実施形態の無線通信システムおよび無線通信機器によれば、通信構成の複雑化を抑えつつ、電力消費を抑制することができる。なお、タイヤセンサ2におけるスタンバイ状態における消費電流は、μA単位であり、アドバタイズ信号を発したり、スキャンしたりするのに必要な消費電流(数mA)に比べて大幅に小さい。
【0066】
また、TPMSに適用した本実施形態の無線通信システムおよび無線通信機器は、以下の特徴を備える。
【0067】
(1)車載ユニット3は、アドバタイズ信号をウェイクアップ信号としてタイヤセンサ2に向けて発信する。タイヤセンサ2の起動部27は、車載ユニット3が発するアドバタイズ信号の少なくとも一部を照合パターンと照合する照合部271と、照合部271での照合結果に応じて第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える切替部272と、を含んでいる。このように、ウェイクアップ信号がGFSK変調方式で変調されるアドバタイズ信号であれば、タイヤセンサ2に既存の構成(BLE通信用の各種構成)でウェイクアップ信号の受信および復調可能となるので、通信構成の簡素化を図ることができる。また、アドバタイズ信号は、BLEプロトコル準拠のため、PDUに対して、通信接続の目的等を含む伝達情報を付加することができることもメリットとなる。
【0068】
(2)タイヤセンサ2は、車載ユニット3からのウェイクアップ信号を受信して第1制御部23がウェイクアップ状態になると、アドバタイズ信号のブロードキャストが可能な状態になる。すなわち、タイヤセンサ2は、車載ユニット3からのウェイクアップ信号の受信を契機に、タイヤセンサ2の第1制御部23が起動され、アドバタイズ信号をブロードキャスト可能な状態になる。これによれば、タイヤセンサ2の第1制御部23を間欠的に起動させる構成に比べて、タイヤセンサ2の電力消費を充分に抑制することができる。
【0069】
(3)タイヤセンサ2は、車両1に取り付けられた車輪6a~6dのタイヤ空気圧を検出する。車載ユニット3は、車両1に設置されてタイヤセンサ2での検知結果に基づいてタイヤ空気圧の異常の有無を監視する。これによると、タイヤセンサ2と車載ユニット3との間の通信接続を簡素な態様で実現しつつ、タイヤセンサ2の電力消費を抑制して長寿命化を図ることができる。特に、タイヤセンサ2は電池交換が煩雑な作業となりがちなので、電力消費を抑制できることの意義が大きい。
【0070】
(4)タイヤセンサ2の電池25は、放電が可能な一次電池である。このような構成では、電力消費を抑制して長寿命化を図ることの意義が大きい。
【0071】
(5)タイヤセンサ2の電力消費の小さいウェイクアップ動作を実現可能な構成のユーズケースとしては次のケースが挙げられる。すなわち、車両工場やディーラでの使用、通常動作時の車載ユニット3→タイヤセンサ2への問い合わせ、オートロケーション等の開始指示、電池25を小さくしたい場合、駐車時のon-demand圧力確認時リアルタイムで必要分だけ取得等が挙げられる。このことは、第2実施形態のおいても同様である。
【0072】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図9~
図11を参照して説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0073】
図9に示すように、本実施形態の車載ユニット3は、アドバタイズ信号とは異なる2.4GHz帯の高周波信号をウェイクアップ信号としてタイヤセンサ2に向けて発信する。車載ユニット3の第2通信回路32Aは、第1実施形態とは異なり、GFSKとは異なる変調方式で変調した高周波信号を発信する回路321を備える。本実施形態の第2通信回路32Aは、OOK変調方式で変調した高周波信号を発信可能になっている。なお、変調方式は、OOK変調とは異なるASK変調であってもよい。
【0074】
ウェイクアップ信号を構成する高周波信号は、アドバタイズ信号よりもデータ量が小さい。高周波信号は、例えば、
図10に示すように、2バイトのフレームで構成することができる。なお、ウェイクアップ信号を構成する高周波信号は、アドバタイズ信号よりもデータ量が小さければ、
図10に示すものとは異なっていてもよい。
【0075】
本実施形態のタイヤセンサ2は、ウェイクアップ信号を構成する2.4GHz帯の高周波信号を受信可能に構成されている。タイヤセンサ2の第1通信回路24Aは、
図11に示すように、ローノイズアンプ241、位相同期回路242、デジタル変換器243、復調器244、データバッファ245、起動部27Aに加えて、WUP回路28を備えている。
【0076】
WUP回路28は、ウェイクアップ信号を構成する2.4GHz帯の高周波信号を受信するための専用の受信回路である。WUP回路28は、車載ユニット3における信号の変調方式に対応した復調を実施可能に構成されている。
【0077】
WUP回路28は、ローパスフィルタ(LPF)281、比較器(CMP)282、サンプルホールド回路(S/H)283、RC発信器(RC-OSC)284、シフトレジスタ285を有する。WUP回路28は、第1通信アンテナ26で受信した受信信号をローノイズアンプ241で増幅した信号を、ローパスフィルタ281に通した後、比較器282にてOOK変調方式に準ずる電圧信号Vrefと比較する。そして、比較器282から出力される信号をサンプルホールド回路283およびRC発信器284を用いて得た所期の信号をシフトレジスタ285に記憶させる。
【0078】
起動部27Aは、シフトレジスタ285に記憶された信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合し、照合結果に応じて第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える。起動部27Aは、照合部271Aと切替部272Aを備える。照合部271Aは、シフトレジスタ285に記憶された信号をウェイクアップ信号に対応する照合パターンと照合し、一致しているか否かを示す信号を照合結果として切替部272Aに出力する。切替部272Aは、照合部271Aでの照合結果に応じて第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える。切替部272Aは、例えば、照合部271Aでの照合結果が一致を示す場合に、第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える。第1制御部23は、起動時にアドバタイズ信号を受けるための構成(位相同期回路242、デジタル変換器243、復調器244、データバッファ245等)を起動させる。
【0079】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態の無線通信システムおよび無線通信機器は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0080】
また、TPMSに適用した本実施形態の無線通信システムおよび無線通信機器は、以下の特徴を備える。
【0081】
(1)車載ユニット3は、アドバタイズ信号とは異なる2.4GHz帯の高周波信号をウェイクアップ信号として第1機器に向けて発信する。タイヤセンサ2の起動部27Aは、車載ユニット3が発する高周波信号を照合パターンと照合させる照合部271Aと、照合部271Aでの照合結果に応じて第1制御部23をウェイクアップ状態に切り替える切替部272Aと、を含んでいる。このように、ウェイクアップ信号がアドバタイズ信号以外の2.4GHz帯の高周波信号であれば、第1機器に既存のアンテナで受信可能なので、LF信号等を受信する場合に比べて、通信構成の複雑化を抑えることができる。
【0082】
(2)車載ユニット3は、アドバタイズ信号よりもデータ量の小さい高周波信号をウェイクアップ信号として発信する。これによると、アドバタイズ信号をウェイクアップ信号とする場合に比べて、タイヤセンサ2におけるウェイクアップ信号の受信や照合に要する電力消費を抑えることができる。
【0083】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の如く、車載ユニット3は、アドバタイズ信号よりもデータ量の小さい高周波信号をウェイクアップ信号として発信するようになっていることが望ましいが、そのようになっていなくてもよい。
【0084】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0085】
上述の実施形態のTPMSは、車載ユニット3が発するウェイクアップ信号によってタイヤセンサ2がウェイクアップ状態に切り替わるようになっているが、これに限定されない。TPMSは、整備ツール5等の外部機器が発するウェイクアップ信号によってタイヤセンサ2がウェイクアップ状態に切り替わるようになっていてもよい。
【0086】
上述の実施形態のタイヤセンサ2は、車載ユニット3等の外部機器からのウェイクアップ信号を受信して第1制御部23がウェイクアップ状態になると、アドバタイズ信号をブロードキャストするようになっているが、これに限定されない。タイヤセンサ2は、第1制御部23がウェイクアップ状態になると、例えば、アドバタイズ信号以外の信号(例えば、タイヤ情報を含む信号)を発信するようになっていてもよい。
【0087】
上述の実施形態では、本開示の無線通信システムおよび無線通信機器をTPMSに適用した例について説明したが、これに限定されない。本開示の無線通信システムおよび無線通信機器は、スマートキー等の携帯型端末と車載機器との間の通信システム等にも適用可能である。また、本開示の無線通信システムおよび無線通信機器は、車両1等の移動体に限らず、例えば、家屋、工場等に用いられる通信システムにも適用可能である。
【0088】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0089】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0090】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0091】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0092】
2 タイヤセンサ(第1機器)
23 第1制御部(制御部)
24 第1通信回路(通信回路)
27、27A 起動部
3 車載ユニット(第2機器)
5 整備ツール(第2機器)