IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アントレックスの特許一覧 ▶ 艫居 隆三の特許一覧

<>
  • 特開-回転取出し装置及び発電装置 図1
  • 特開-回転取出し装置及び発電装置 図2
  • 特開-回転取出し装置及び発電装置 図3
  • 特開-回転取出し装置及び発電装置 図4
  • 特開-回転取出し装置及び発電装置 図5
  • 特開-回転取出し装置及び発電装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183247
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】回転取出し装置及び発電装置
(51)【国際特許分類】
   F02G 1/044 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
F02G1/044
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096768
(22)【出願日】2022-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】596007577
【氏名又は名称】株式会社アントレックス
(71)【出願人】
【識別番号】593111738
【氏名又は名称】艫居 隆三
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮内 正裕
(72)【発明者】
【氏名】艫居 隆三
(57)【要約】
【課題】熱交換器の伝熱面積を拡大しつつ、シリンダが軸方向に大型化することを抑制する回転取出し装置及び発電装置を得る。
【解決手段】回転取出し装置10は、往復運動するディスプレーサピストン18を内包する第1シリンダ50と、第1シリンダ50の第1熱交換室V1(圧縮空間)と連通して設けられ、往復運動するパワーピストン20を内包する第2シリンダ52と、ディスプレーサピストン18とパワーピストン20の往復運動により回転可能なクランク軸26と、を有するスターリング式の回転取出し装置であって、第1シリンダ50の軸方向一方側の開口端部を覆い、圧縮空間に隣接して設けられた低温側熱交換器60と、第1シリンダ50の軸方向他方側の開口端部を覆い、第1シリンダ50の第1熱交換室V1に隣接して設けられた高温側熱交換器62と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動するディスプレーサピストンを内包する第1シリンダと、
前記第1シリンダの圧縮空間と連通して設けられ、往復運動するパワーピストンを内包する第2シリンダと、
前記ディスプレーサピストンと前記パワーピストンの往復運動により回転可能なクランク軸と、
を有するスターリング式の回転取出し装置であって、
前記第1シリンダの軸方向一方側の開口端部を覆い、前記圧縮空間に隣接して設けられた低温側熱交換器と、
前記第1シリンダの軸方向他方側の開口端部を覆い、前記第1シリンダの膨張空間に隣接して設けられた高温側熱交換器と、を有する回転取出し装置。
【請求項2】
前記低温側熱交換器及び前記高温側熱交換器は、複数の直管を平面視で矩形状となるように並列配置してなる伝熱管と、前記複数の直管を配列方向に沿って連結する複数のフィンとを有する、請求項1に記載の回転取出し装置。
【請求項3】
前記第1シリンダは、稼働場所に設置するための矩形筒状のフレーム体に内包されると共に、前記フレーム体と一体に構成されている、請求項1又は請求項2に記載の回転取出し装置。
【請求項4】
前記フレーム体の四隅には、前記第1シリンダとの間に前記圧縮空間と前記膨張空間とを連通させる連通路が形成され、
前記連通路は、多孔質の蓄熱体を内包することにより再生器を構成している、請求項3に記載の回転取出し装置。
【請求項5】
前記低温側熱交換器及び前記高温側熱交換器は、前記伝熱管の一端と他端に設けられ、複数の直管内の流路を連結するマニホールドを有し、
前記マニホールドは、熱源流体の導入又は排出用の開口とは別に設けられ、前記複数の直管と同軸的に配置された複数のメンテナンス開口を有する、請求項2に記載の回転取出し装置。
【請求項6】
前記高温側熱交換器は、温泉水を熱源流体として構成されている、請求項1に記載の回転取出し装置。
【請求項7】
請求項1に記載の回転取出し装置と、
前記クランク軸の回転出力により発電する発電機と、を備える発電装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリング式の回転取出し装置及びこれを用いた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部からの熱による温度差に基づく作動流体の収縮・膨張により回転動力を出力する外燃機関として、スターリングエンジン(回転取出し装置)が知られている。スターリングエンジンは、作動流体を圧縮空間と膨張空間との間を交互に移動させ、熱交換器による作動流体の膨張と収縮とを繰り返すことで、ピストンを駆動させて、外部からの熱を回転動力に変換している(特許文献1参照)。
【0003】
このようなスターリングエンジンには、圧縮空間と膨張空間とを別シリンダに構成するα型や、ディスプレーサピストン及びパワーピストンを共に同一シリンダに収容するβ型や、ディスプレーサピストン及びパワーピストンを別シリンダに収容するγ型などが知られている。
【0004】
また、ディスプレーサピストン及びパワーピストンを別シリンダに収容するγ型のスターリングエンジンは、β型に比べ機構が簡単であり、また圧縮比等の設定に自由度が大きいことから、低温度差スターリングエンジンに好適に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-060180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、γ型のスターリングエンジンでは、ディスプレーサピストンを内包する筒状のシリンダの外周側に熱交換器が配置される構造が知られる。このような熱交換器では、交換熱量を増やすために熱交換器の伝熱面積を大きくすると、シリンダが軸方向に大型化するため、設置が容易ではないという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、熱交換器の伝熱面積を拡大しつつ、シリンダが軸方向に大型化することを抑制する回転取出し装置及びこれを用いた発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の回転取出し装置は、往復運動するディスプレーサピストンを内包する第1シリンダと、前記第1シリンダの圧縮空間と連通して設けられ、往復運動するパワーピストンを内包する第2シリンダと、前記ディスプレーサピストンと前記パワーピストンの往復運動により回転可能なクランク軸と、を有するスターリング式の回転取出し装置であって、前記第1シリンダの軸方向一方側の開口端部を覆い、前記圧縮空間に隣接して設けられた低温側熱交換器と、前記第1シリンダの軸方向他方側の開口端部を覆い、前記第1シリンダの膨張空間に隣接して設けられた高温側熱交換器と、を有する。
【0009】
請求項1に記載の回転取出し装置では、所謂γ型のスターリングエンジンにより、回転動力を取り出す構成となっている。即ち、回転取出し装置では、ディスプレーサピストン及びパワーピストンを別シリンダに収容し、ディスプレーサピストンとパワーピストンの往復運動によりクランク軸を回転させる。そして、クランク軸の回転出力により回転動力が取り出される。
【0010】
ここで、第1シリンダには、軸方向の一方側と他方側に低温側熱交換器と高温側熱交換器がそれぞれ設けられている。低温側熱交換器は、第1シリンダの軸方向一方側の開口端部を覆い、圧縮空間に隣接して設けられる。一方、高温側熱交換器は、第1シリンダの軸方向他方側の開口端部を覆い、第1シリンダの膨張空間に隣接して設けられている。かかる構成では、第1シリンダの開口面積を拡張することにより熱交換器の伝熱面積を拡大することができるため、熱交換器の伝熱面積を拡大しつつ、シリンダが軸方向に大型化することを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の回転取出し装置は、請求項1に記載の構成において、前記低温側熱交換器及び前記高温側熱交換器は、複数の直管を平面視で矩形状となるように並列配置してなる伝熱管と、前記複数の直管を配列方向に沿って連結する複数のフィンとを有する。
【0012】
請求項2に記載の回転取出し装置では、各熱交換器が複数の直管と複数のフィンとで平面視で矩形状となるように構成される。これにより、伝熱管をコイル状に湾曲させる従来のγ型スターリング式回転取出し装置と比較して、シリンダが軸方向に大型化することを抑制することができる。また、熱交換器の製造を容易にし、製造コストの削減を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載の回転取出し装置は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記第1シリンダは、稼働場所に設置するための矩形筒状のフレーム体に内包されると共に、前記フレーム体と一体に構成されている。
【0014】
請求項3に記載の回転取出し装置では、第1シリンダを矩形筒状のフレーム体に内包し、一体に構成している。これにより、設置の際の部品点数が減らすことができる。また、フレーム体を矩形筒状に形成することで、設置の際のハンドリング性に優れる。これにより、装置の組み立てを容易にすることができる。
【0015】
請求項4に記載の回転取出し装置は、請求項3に記載の構成において、前記フレーム体の四隅には、前記第1シリンダとの間に前記圧縮空間と前記膨張空間とを連通させる連通路が形成され、前記連通路は、多孔質の蓄熱体を内包することにより再生器を構成している。
【0016】
請求項4に記載の回転取出し装置では、矩形筒状のフレーム体に内包されるようにして第1シリンダを配置することにより、フレーム体の四隅には、第1シリンダとの間に圧縮空間と膨張空間とを連通させる連通路が形成される。また、連通路は、多孔質の蓄熱体を内包することにより、再生器を構成している。これにより、フレーム体の内側に第1シリンダと再生器を収容され、装置の小型化を図ることができる。
【0017】
請求項5に記載の回転取出し装置は、請求項2に記載の構成において、前記低温側熱交換器及び前記高温側熱交換器は、前記伝熱管の一端と他端に設けられ、複数の直管内の流路を連結するマニホールドを有し、前記マニホールドは、熱源流体の導入又は排出用の開口とは別に設けられ、前記複数の直管と同軸的に配置された複数のメンテナンス開口を有する。
【0018】
請求項5に記載の回転取出し装置では、伝熱管の一端と他端に設けられたマニホールドを介して、複数の直管内に熱源流体が流れる構成となっている。ここで、マニホールドには、複数の直管と同軸的に配置された複数のメンテナンス開口が流体の導入又は排出用の開口とは別に設けられている。これにより、メンテナンス開口を通じて直管内の清掃を容易に行うことができるため、メンテナンス性に優れる。
【0019】
請求項6に記載の回転取出し装置は、請求項1に記載の構成において、前記高温側熱交換器は、温泉水を熱源流体として構成されている。
【0020】
請求項6に記載の回転取出し装置では、高温側熱交換器の熱源流体が温泉水で構成されている。これにより、冷水や外気などを低温側熱交換器の熱源流体とすることにより低温度差のスターリングエンジン式回転取出し装置を構成することができる。その結果、温泉水のようにコストがかからず、且つ輸送や貯蔵が困難な熱源を有効に利用してクリーンエネルギーを生成することができる。
【0021】
請求項7に記載の回転取出し装置は、請求項1に記載の回転取出し装置と、前記クランク軸の回転出力により発電する発電機と、を備えている。
【0022】
請求項7に記載の回転取出し装置では、上述のように、熱交換器の伝熱面積を拡大しつつ、シリンダが軸方向に大型化することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明に係る回転取出し装置及び発電装置は、熱交換器の伝熱面積を拡大しつつ、シリンダが軸方向に大型化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る回転取出し装置を備える発電装置の斜視図である。
図2図1の2-2線に沿って切断した断面を示す発電装置の断面図である。
図3】本実施形態に係る回転取出し装置のケース体の平面図である。
図4】(A)は、本実施形態に係る熱交換器の平面図であり、(B)は、伝熱管の軸方向から見た熱交換器の側面図である。
図5】本実施形態に係るハウジングの内部の構造の模式図である。
図6】γ型スターリングエンジンのサイクル過程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図6に基づいて、実施形態に係る回転取出し装置10を含む発電装置1について説明する。なお、説明の便宜上、各図中に適宜記すFR、UP,LHの方向を発電装置1の前方向、上方向、左方向と定義して構成要素の位置や向きを説明する。また、各図においては図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の発電装置1では、回転取出し装置10の回転出力をモータ発電機からなる発電機2に入力し、発電する。また、回転取出し装置10の駆動方式には、公知のγ型スターリングエンジンが用いられている。
【0027】
スターリングエンジンは、原理的にカルノーサイクルに相当する高い熱効率を得ることができる。また、外燃機関であり多種多様の熱源に利用できる一方で、内燃機関に爆発的な燃焼を伴わず、安全に運用することができるため、新たな動力源として注目されている。
【0028】
この中でも、ディスプレーサピストン及びパワーピストンを別シリンダに収容するγ型のスターリングエンジンでは、機構が簡単であり、また圧縮比等の設定に自由度が大きいことから、熱源の温度差を低温度差で利用することができる。このため、温泉水や地熱など、輸送や貯蔵が困難な熱源にも導入することが期待される。
【0029】
ここで、図6を参照して、γ型スターリングエンジン12のサイクル過程について説明する。この図に示すように、γ型のスターリングエンジン12は、内部空間が連通された大小二つのシリンダ14,16と、大シリンダ14に収容されたディスプレーサピストン18と、小シリンダ16に収容されたパワーピストン20と、を含んでいる。また、大小二つのシリンダ14,16の内部には、作動流体が充填されている。
【0030】
大シリンダ14に収容されたディスプレーサピストン18と小シリンダ16に収容されたパワーピストン20は、ロッド22を介して別のクランク24に接続されており、各ピストンの往復運動を回転運動に変換する。具体的に、二つのクランク24は、ディスプレーサピストン18に接続されたクランク24の回転角がパワーピストン20に接続されたクランク24の回転角よりも90度だけ先に進むように固定されており、クランク軸26を中心に一つのユニットとして回転する。また、クランク軸26には、クランク24の回転を滑らかにするためのフライホイール30が装着されている。
【0031】
図6では、大シリンダ14の上方側に低温側の熱源HS1が設けられ、大シリンダ14の下方側に高温側の熱源HS2が設けられている場合について説明する。(A)→(B)に示す気体の移動過程では、パワーピストン20が最下点にある状態から、クランク24に時計回り方向の初期角度を与えて回転を開始させる。
【0032】
(B)→(C)に示す気体の膨張過程では、高温側の熱源HS2で暖められた気体が膨張してパワーピストン20を上昇させる。
【0033】
(C)→(D)に示す気体の移動過程では、パワーピストン20が最上点にある状態からフライホイール30の慣性力を利用して回転を持続させる。その後、ディスプレーサピストン18が最下点に到達し、大シリンダ14内の作動流体の多くが大シリンダの上方側の圧縮空間に移動して低温側の熱源HS1で冷やされる。
【0034】
(D)→(A)に示す気体の圧縮過程では、低温側の熱源HS1で冷やされた作動流体はパワーピストン20で圧縮されて元の状態に戻る。
【0035】
以上のサイクルを繰り返すことにより、スターリングエンジン12が回転する。本実施形態の発電装置1では、図1及び図2で示したように、二機のスターリングエンジン12を矩形箱状のハウジング40に搭載した回転取出し装置10を有している。回転取出し装置10では、各エンジン12のディスプレーサピストン18及びパワーピストン20の往復運動が共通のクランク軸26を中心に回転運動へと変換される構成となっている。
【0036】
ここで、図1には、発電装置1の斜視図が示されている。図2には、発電装置1に含まれる回転取出し装置10の縦断面図が示されている。
【0037】
発電装置1は、クランク軸26を回転させて回転動力を出力する回転取出し装置10と、クランク軸26の回転出力により発電する発電機2とを有している。発電機2は一例として、公知のモータ発電機で構成されており、図示しない回転子に連結された回転軸32を有している。この回転軸32は、フライホイール30を介してクランク軸26に連結されており、クランク軸26の回転出力により回転し、発電する。
【0038】
回転取出し装置10は、二機のスターリングエンジン12を搭載した矩形箱状のハウジング40を有している。ハウジング40は、二つの第1シリンダを内包する矩形筒状のフレーム体42と、第1シリンダ50の軸方向一方側(図2では上端側)の開口端部を閉塞する蓋状の上部シリンダヘッド44と、第1シリンダ50の軸方向の他方側(図2では下端側)の開口端部を閉塞する蓋状の下部シリンダヘッド46とを有している。
【0039】
ハウジング40のフレーム体42、上部シリンダヘッド44及び下部シリンダヘッド46は、樹脂材料により形成されている。フレーム体42、上部シリンダヘッド44及び下部シリンダヘッド46により形成される内包空間は、矩形筒状のフレーム体42の中央部に配置された区画壁部48によって左右に分割されている。左右の内包空間S1,S2(図3参照)には、円筒状の第1シリンダ50と、第1シリンダ50の軸方向一方側(図2では上端側)の開口端部を覆う低温側熱交換器60と、第1シリンダ50の軸方向他方側(図2では下端側)の開口端部を覆う高温側熱交換器62とが収容されている。
【0040】
また、第1シリンダ50とフレーム体42との間の間隙には、低温側熱交換器60と高温側熱交換器62を連通させる再生器70が配置されている。
【0041】
第1シリンダ50は、スターリングエンジン12の大シリンダを構成しており、ディスプレーサピストン18を内包している。第1シリンダ50の内包空間は、ディスプレーサピストン18によって、第1熱交換室V1と第2熱交換室V2に区画されている。
【0042】
第1熱交換室V1は、低温側熱交換器60に隣接しており、第1シリンダ50の圧縮空間を形成している。第2熱交換室V2は、高温側熱交換器に隣接しており、第1シリンダ50の膨張空間を形成している。第1シリンダ50内の第1熱交換室V1(圧縮空間)と第2熱交換室V2(膨張空間)とを合わせて作動空間と称する。
【0043】
第1シリンダ50内の作動空間には、作動流体が充填されており、ディスプレーサピストン18の往復運動により作動流体が第1熱交換室V1と第2熱交換室V2の間を移動して、低温側熱交換器60及び高温側熱交換器62との間で熱交換を行う。
【0044】
例えば、ディスプレーサピストン18が高温側熱交換器62に向かって下降すると、第2熱交換室V2の作動流体は、再生器70を通って第2熱交換室V2に移動し、低温側熱交換器60と熱交換することで温度が低下する。一方、ディスプレーサピストン18が低温側熱交換器60に向かって上昇すると、第1熱交換室V1の作動流体は、再生器70を通って第2熱交換室V2に移動し、高温側熱交換器62と熱交換することで温度が上昇する。このように、低温側熱交換器60及び高温側熱交換器62と第1シリンダ50内の作動空間との間で作動流体が順逆に流れることで、第1シリンダ50の作動空間における内圧が変化し、ディスプレーサピストン18の往復運動を促す。
【0045】
なお、作動流体は、一例として、ヘリウムガス、窒素、空気等の気体で構成することができる。
【0046】
ハウジング40の上面を構成する上部シリンダヘッド44の上方側には、スターリングエンジン12の小シリンダを構成する円筒状の第2シリンダ52が設けられている。この第2シリンダ52は、第1シリンダ50の第1熱交換室V1(圧縮空間)と連通して設けられ、往復運動するパワーピストン20を内包している。第2シリンダ52は一例として、パワーピストン20の荷重による変形を抑制するために、金属材料で形成されている。
【0047】
第2シリンダ52内は、パワーピストン20の下方側の空間が第1シリンダ50の第1熱交換室V1と連通している。また、パワーピストン20の上方側の空間は、二本の連結パイプ54を介して他方のスターリングエンジン12の第2シリンダ52内の上方空間と連通されている。
【0048】
上述したように、ディスプレーサピストン18の往復運動により作動空間の内圧が変化すると、ディスプレーサピストン18の往復運動が第1シリンダ50の圧縮空間を介してパワーピストン20に伝達される。これにより、パワーピストン20の往復運動が促される。
【0049】
上部シリンダヘッド44の上方側には、前後に間隔を空けて配置された一対の支柱56が立設されている。この一対の支柱の間には、クランク軸26が架け渡されて回転可能に支持されている。また、クランク軸26の上方側では、二つのリンクアーム64を回動可能に支持するリンク支持軸58が一対の支柱に支持されている。
【0050】
二つのリンクアーム64は、ディスプレーサピストン18の往復運動に連動する第1リンクアーム64Aとパワーピストン20の往復運動に連動する第2リンクアーム64Bとを有している。
【0051】
第1リンクアーム64Aは、二機のスターリングエンジン12のディスプレーサピストン18とロッド22を介して接続されている。また、第1リンクアーム64Aは、クランク24を介してクランク軸26に連結されている。これにより、二機のスターリングエンジン12のディスプレーサピストン18の往復運動がロッド22、第1リンクアーム64A及びクランク24を介して、共通のクランク軸26に伝達される。なお、本実施形態では、二機のスターリングエンジン12のディスプレーサピストン18の往復動作における位相差を90度に設定している。
【0052】
第2リンクアーム64Bは、二機のスターリングエンジン12のパワーピストン20とロッド22を介して接続されている。また、第2リンクアーム64Bは、クランク24を介してクランク軸26に連結されている。これにより、二機のスターリングエンジン12のパワーピストン20の往復運動がロッド22、第2リンクアーム64B及びクランク24を介して、共通のクランク軸26に伝達される。なお、本実施形態では、二機のスターリングエンジン12のパワーピストン20の往復動作における位相差を90度に設定している。
【0053】
また、ハウジング40の前後方向の側面には、板状のブラケット66を介してマニホールド80が連結されている。マニホールド80の詳細については後述する。
【0054】
ここで、図3に示す平面図を参照して、フレーム体42の詳細な構造について説明する。この図に示すように、フレーム体42は、全体として矩形筒状をなしている。即ち、フレーム体42は、四辺を構成する四つの板状部(前壁部421、後壁部422、左壁部423、右壁部424)を有する。また、フレーム体42の中央部には、前壁部421と後壁部422に架け渡されて延在する区画壁部48を有している。これにより、フレーム体42の内包空間は、区画壁部48によって左右に分割され、第1内包空間S1と第2内包空間S2が形成されている。
【0055】
第1内包空間S1及び第2内包空間S2には、円筒状の第1シリンダ50がフレーム体42と一体に構成されている。第1シリンダ50と矩形筒状のフレーム体42を一体に構成する方法としては、種々の方法を適用できる。例えば、フレーム体42と第1シリンダ50を金属材料で形成し、溶接することにより一体に構成してもよい。または、フレーム体42と第1シリンダ50を個別に形成した後、ボルト等により機械的に接合して一体に構成することもできる。本実施形態の一例では、フレーム体42と第1シリンダ50を樹脂材料で一体成形することにより一体に構成している。
【0056】
装置右側の第1内包空間S1では、第1シリンダ50の外周面が、フレーム体42の前壁部421、後壁部422、右壁部424及び区画壁部48の側面に当接し、一体化されている。また、装置左側の第2内包空間S2では、第1シリンダ50の外周面がフレーム体42の前壁部421、後壁部422、左壁部423、区画壁部48の側面に当接し、一体化されている。これにより、第1及び第2内包空間S1,S2において、フレーム体42の四隅には、第1シリンダ50との間に第1シリンダ50の第1熱交換室(圧縮空間)と第2熱交換室(膨張空間)とを連通させる連通路Rが形成されている。
【0057】
本実施形態では、フレーム体42と第1シリンダ50との間に形成される連通路Rに、多孔質の蓄熱体を内包させることで再生器70を構成している。再生器70は、例えば、金属繊維や金網を積層させたものや、作動流体の流路をハニカム形状などで配列させたものや、綿状金属繊維を内包させたものなどで構成されており、蓄熱式熱交換器として機能する。即ち、再生器70は、低温側熱交換器60から高温側熱交換器62に低温の作動流体が流れる際には、蓄熱した熱を作動ガスに放熱する。一方で、高温側熱交換器62から低温側熱交換器60に高温の作動流体が流れる際には、作動流体の熱を蓄熱する。
【0058】
次に、図4(A)及び図4(B)を参照して、低温側熱交換器60及び高温側熱交換器62の基本構成について説明する。図4(A)は、熱交換器60,62の平面図であり、図4(B)は、伝熱管72の軸方向から見た熱交換器60,62の側面図である。この図に示されるように、熱交換器60,62は、複数の直管74を同一平面に並列配置してなる伝熱管72と、複数の直管74を配列方向に沿って連結する複数のフィン76とを有している。
【0059】
伝熱管72を構成する複数の直管74は、第1シリンダ50の軸方向と直交する方向に沿って延在している。各フィン76は、長尺な薄板状に形成され、複数の直管74を圧入して一体化させたあと、溶接接合している。複数のフィン76は、直管74の延在方向に沿って等間隔に配置されている。
【0060】
かかる構成の熱交換器60,62は、平面視で矩形状の板体状に形成される。熱交換器60,62は、矩形筒状のフレーム体42の内包空間S1,S2を塞ぐように配置され、これにより、第1シリンダ50の軸方向一方側と他方側の開口端部が熱交換器60,62によって塞がれている。なお、低温側熱交換器60は、ディスプレーサピストン18との干渉を避けるためにピストンの軸の両側で左右に分割された構成となり配置されている。
【0061】
伝熱管72を構成する複数の直管74には、低温側熱交換器60において低温の熱源流体が流入される。また、高温側熱交換器62においては、低温の熱源流体よりも温度の高い高温の熱源流体が流入される。本実施形態の一例では、低温側の熱源流体が冷水で構成される。また、高温側の伝熱流体が温泉水で構成される。
【0062】
図5には、矩形箱状のハウジング40と、ハウジング40の内部に収容された第1シリンダ50、低温側熱交換器60、高温側熱交換器62及び再生器70の構造が模式的に示されている。
【0063】
この図に示すように、第1シリンダ50内の作動空間において、ディスプレーサピストン18の上方側の第1熱交換室V1(圧縮空間)の作動流体は、第1熱交換室V1の上方側から低温側熱交換器60のフィン76の間を通って再生器70を通過する。その後、高温側熱交換器62を経てディスプレーサピストン18の下方側の第2熱交換室V2(膨張空間)に移動する。同様に、ディスプレーサピストン18の下方側の第2熱交換室V2(膨張空間)の作動流体は、第2熱交換室V2の下方側から高温側熱交換器62のフィン76の間を通って再生器70を通過する。その後、低温側熱交換器60を経てディスプレーサピストン18の上方側の第1熱交換室V1(圧縮空間)に移動する。
【0064】
図1に戻り、マニホールド80(80A,80B)の構成について説明する。マニホールド80は、伝熱管72を構成する複数の直管74内の流路を連結させる共通流路を形成する。このマニホールド80は、熱交換器60,62側に開口した箱状に形成され、伝熱管72の一端と他端に装着される。また、各マニホールド80には、熱源流体の導入又は排出用の開口82が設けられている。
【0065】
図1に示すように、ハウジング40の上部で低温側熱交換器60に装着される第1マニホールド80Aでは、第1マニホールド80Aの上面に突出して設けられた開口82が設けられている。低温側熱交換器60には、一方に装着された第1マニホールド80Aの開口82から低温側の熱源流体としの冷水が導入され、直管74内の流路を通り他方に装着された第1マニホールド80Aの開口82から冷水が排出される。
【0066】
一方で、ハウジング40の下部で高温側熱交換器62に装着される第2マニホールド80Bでは、第1マニホールド80Aの下面に突出して設けられた開口82が設けられている。高温側熱交換器62には、一方に装着された第2マニホールド80Bの開口82から高温側の熱源流体としの温泉水が導入され、直管74内の流路を通り他方に装着された第2マニホールド80Bの開口82から温泉水が排出される。
【0067】
ここで、各マニホールド80の側面には、熱源流体の導入又は排出用の開口82とは別に設けられた複数のメンテナンス開口84が設けられている。各メンテナンス開口84は、熱交換器60,62の伝熱管72を構成する複数の直管74と同軸的に配置されている。また、これらのメンテナンス開口84は、通常時は、着脱可能な蓋部材等が装着されて閉塞されている。これにより、マニホールド80のメンテナンス開口84を開放すると、各メンテナンス開口84から熱交換器60,62の直管74内に一方向からアクセスすることができる。このため、例えば、メンテナンス開口84から清掃用のブラシを挿入して直管74の内部を清掃することができ、熱源流体に温泉水などを利用した場合に、湯ノ花等の直管74内に蓄積される汚れを簡単に取り除くことができる。
【0068】
(作用・効果)
以上説明したように、本実施形態の回転取出し装置10は、γ型のスターリングエンジン12により、回転動力を取り出す構成となっている。即ち、回転取出し装置10では、ディスプレーサピストン18及びパワーピストン20を別シリンダ(第1シリンダ50,第2シリンダ52)に収容し、ディスプレーサピストン18とパワーピストン20の往復運動によりクランク軸26を回転させる。そして、クランク軸26の回転出力により回転動力が取り出される。
【0069】
ここで、第1シリンダ50には、軸方向の一方側と他方側に低温側熱交換器60と高温側熱交換器62がそれぞれ設けられている。低温側熱交換器60は、第1シリンダ50の軸方向一方側の開口端部を覆い、圧縮空間に隣接して設けられる。一方、高温側熱交換器62は、第1シリンダ50の軸方向他方側の開口端部を覆い、第1シリンダ50の膨張空間に隣接して設けられている。かかる構成では、第1シリンダ50の開口面積を拡張することにより熱交換器60,62の伝熱面積を拡大することができる。これにより、熱交換器60,62の伝熱面積を拡大しつつ、第1シリンダ50が軸方向に大型化することを抑制することができる。
【0070】
回転取出し装置10では、各熱交換器60,62が複数の直管74と複数のフィン76とで平面視で矩形状となるように構成される。これにより、伝熱管をコイル状に湾曲させる従来のγ型スターリング式回転取出し装置と比較して、シリンダが軸方向に大型化することを抑制することができる。また、熱交換器の製造を容易にし、製造コストの削減を図ることができる。
【0071】
回転取出し装置10では、第1シリンダ50を矩形筒状のフレーム体42に内包し、一体に構成している。これにより、設置の際の部品点数が減らすことができる。また、フレーム体42を矩形筒状に形成することで、設置の際のハンドリング性に優れ、装置の組み立てを容易にすることができる。
【0072】
回転取出し装置10では、矩形筒状のフレーム体42に内包されるようにして第1シリンダ50を配置することにより、フレーム体42の四隅には、第1シリンダ50との間にシリンダ内の第1熱交換室V1(圧縮空間)と第2熱交換室V2(膨張空間)とを連通させる連通路Rが形成される。また、連通路Rは、多孔質の蓄熱体を内包することにより、再生器70を構成している。これにより、フレーム体42の内側に第1シリンダ50と再生器70を収容され、装置の小型化を図ることができる。
【0073】
回転取出し装置10では、伝熱管72の一端と他端に設けられたマニホールド80を介して、複数の直管74内に熱源流体が流れる構成となっている。ここで、マニホールド80には、複数の直管74と同軸的に配置された複数のメンテナンス開口84が流体の導入又は排出用の開口82とは別に設けられている。これにより、メンテナンス開口84を通じて直管74内の清掃を容易に行うことができるため、メンテナンス性に優れる。
【0074】
回転取出し装置10では、高温側熱交換器62の熱源流体が温泉水で構成されている。これにより、冷水や外気などを低温側熱交換器の熱源流体とすることにより低温度差のスターリングエンジン式回転取出し装置10を構成することができる。その結果、温泉水のようにコストがかからず、且つ輸送や貯蔵が困難な熱源を有効に利用してクリーンエネルギーを生成することができる。
[補足説明]
【0075】
上記実施形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成同士の組み合わせや変更を適宜行うことができる。例えば、上記実施形態では、高温側の熱源流体を温泉水で構成したがこれに限らない。例えば、焼却炉等で発生する高温の排ガスや、太陽光等で暖められた熱風を熱源流体としてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、低温側の熱源流体を冷水で構成したがこれに限らない。例えば、高温側の熱源流体よりも温度の低い外気等の空気であってもよい。
【0077】
上記実施形態では、回転取出し装置のハウジング40に二機のスターリングエンジン12が搭載される構成としたが、これに限らない。一機、又は三機以上のスターリングエンジンを搭載する構成としてもよい。
【0078】
上記実施形態では、熱交換器を複数の直管からなる伝熱管と複数のフィンで構成したがこれに限らない。例えば、複数のフィンを省略し、等間隔に並列配置された複数の直管で熱交換器を構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 発電装置
2 発電機
10 回転取出し装置
18 ディスプレーサピストン
20 パワーピストン
26 クランク軸
42 フレーム体
50 第1シリンダ
52 第2シリンダ
60 低温側熱交換器
62 高温側熱交換器
70 再生器
72 伝熱管
74 直管
76 フィン
80 マニホールド
82 熱源流体の導入又は排出用の開口
84 メンテナンス開口
V1 第1熱交換室(膨張空間)
V2 第2熱交換室(圧縮空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項1に記載の回転取出し装置は、往復運動するディスプレーサピストンを内包する第1シリンダと、前記第1シリンダの軸方向一方側に並んで配置され、前記第1シリンダの中心から偏心した位置において前記第1シリンダと軸を平行にすると共に前記第1シリンダの圧縮空間と連通して設けられ、往復運動するパワーピストンを内包する第2シリンダと、前記ディスプレーサピストンと前記パワーピストンの往復運動により回転可能なクランク軸と、を有するスターリング式の回転取出し装置であって、前記第1シリンダの軸方向一方側の開口端部を覆い、前記圧縮空間に隣接して設けられた低温側熱交換器と、前記第1シリンダの軸方向他方側の開口端部を覆い、前記第1シリンダの膨張空間に隣接して設けられた高温側熱交換器と、を有する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動するディスプレーサピストンを内包する第1シリンダと、
前記第1シリンダの軸方向一方側に並んで配置され、前記第1シリンダの中心から偏心した位置において前記第1シリンダと軸を平行にすると共に前記第1シリンダの圧縮空間と連通して設けられ、往復運動するパワーピストンを内包する第2シリンダと、
前記ディスプレーサピストンと前記パワーピストンの往復運動により回転可能なクランク軸と、
を有するスターリング式の回転取出し装置であって、
前記第1シリンダの軸方向一方側の開口端部を覆い、前記圧縮空間に隣接して設けられた低温側熱交換器と、
前記第1シリンダの軸方向他方側の開口端部を覆い、前記第1シリンダの膨張空間に隣接して設けられた高温側熱交換器と、を有する回転取出し装置。
【請求項2】
前記低温側熱交換器及び前記高温側熱交換器は、複数の直管を平面視で矩形状となるように並列配置してなる伝熱管と、前記複数の直管を配列方向に沿って連結する複数のフィンとを有する、請求項1に記載の回転取出し装置。
【請求項3】
前記第1シリンダは、稼働場所に設置するための矩形筒状のフレーム体に内包されると共に、前記フレーム体と一体に構成されている、請求項1又は請求項2に記載の回転取出し装置。
【請求項4】
前記フレーム体の四隅には、前記第1シリンダとの間に前記圧縮空間と前記膨張空間とを連通させる連通路が形成され、
前記連通路は、多孔質の蓄熱体を内包することにより再生器を構成している、請求項3に記載の回転取出し装置。
【請求項5】
前記低温側熱交換器及び前記高温側熱交換器は、前記伝熱管の一端と他端に設けられ、複数の直管内の流路を連結するマニホールドを有し、
前記マニホールドは、熱源流体の導入又は排出用の開口とは別に設けられ、前記複数の直管と同軸的に配置された複数のメンテナンス開口を有する、請求項2に記載の回転取出し装置。
【請求項6】
前記高温側熱交換器は、温泉水を熱源流体として構成されている、請求項1に記載の回転取出し装置。
【請求項7】
請求項1に記載の回転取出し装置と、
前記クランク軸の回転出力により発電する発電機と、を備える発電装置。