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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183249
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】飛行計画生成システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/10 20060101AFI20231220BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20231220BHJP
   B64D 9/00 20060101ALI20231220BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20231220BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20231220BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G05D1/10
B64F1/36
B64D9/00
B64D27/24
B64C39/02
B64C27/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096771
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小原 大輝
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 拓
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD07
5H301DD15
5H301FF11
5H301GG16
5H301HH01
5H301HH02
5H301JJ05
5H301KK02
5H301KK03
5H301KK04
5H301KK06
5H301KK08
5H301KK19
(57)【要約】
【課題】少なくともバッテリ残量と可搬性能を含む、飛行ドローンの個体差を考慮し、発揮可能な推力が大きい飛行ドローンが発揮可能な推力が小さい飛行ドローンよりも、搬送物の揺れ補正に作用する力を大きくすることで、航続距離およびバッテリ効率が改善された飛行計画生成装置を提供する。
【解決手段】飛行計画生成装置420は、複数の飛行体20により搬送物30を搬送する。飛行計画生成装置420は、搬送物30の搬送ルート情報を格納した記憶部210bと、複数の飛行体20のうち特定の飛行体20からの搬送物30へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの飛行体20の搬送物30に対する相対位置を補正する相対位置補正部423と、補正された相対位置と搬送物30の搬送ルート情報とに基づいて、飛行体20の飛行計画を生成する飛行計画生成部424と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の飛行体により搬送物を搬送する飛行計画生成装置であって、
前記搬送物の搬送ルート情報を格納した記憶部と、
複数の前記飛行体のうち特定の飛行体からの前記搬送物へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を補正する相対位置補正部と、
補正された前記相対位置と前記搬送物の前記搬送ルート情報とに基づいて、前記飛行体の飛行計画を生成する飛行計画生成部と、
を備えることを特徴とする飛行計画生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行計画生成装置において、
前記複数の飛行体のそれぞれの位置情報に基づいて、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を算出する相対位置算出部と、
算出した前記相対位置から、それぞれの前記飛行体の揺れが前記搬送物へ伝搬する伝搬量を算出する揺れ伝搬量算出部と、
を、さらに備えることを特徴とする飛行計画生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の飛行計画生成装置において、
前記飛行体はバッテリを有し、
前記相対位置補正部は、前記バッテリのバッテリ残量情報に基づいてバッテリ残量が最も小さい特定の前記飛行体を選択し、
複数の前記飛行体のうちの前記特定の飛行体からの前記伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する前記相対位置を補正することを特徴とする飛行計画生成装置。
【請求項4】
請求項2に記載の飛行計画生成装置において、
前記相対位置補正部は、
前記飛行体の最大可搬荷重情報に基づいて最大可搬荷重が最も小さい特定の飛行体を選択し、
複数の前記飛行体のうち前記特定の飛行体からの前記伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する前記相対位置を補正することを特徴とする飛行計画生成装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の前記飛行計画生成装置において、
前記相対位置補正部は、
前記伝搬量が最小となる前記特定の飛行体が前記搬送物の位置を操作し、前記特定の飛行体以外の前記飛行体が前記搬送物の位置を操作し、かつ前記搬送物の荷重を支えるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する前記相対位置を補正することを特徴とする飛行計画生成装置。
【請求項6】
複数の飛行体により搬送物を搬送する飛行計画生成システムであって、
複数の前記飛行体と、
前記飛行体に無線通信回線を介して前記飛行体に飛行計画を送信する無線通信装置を有する管制局と、
を備え、
前記管制局は、
前記搬送物の搬送ルート情報を格納した記憶部と、
複数の前記飛行体のうち特定の飛行体からの前記搬送物へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を補正する相対位置補正部と、
補正された前記相対位置と前記搬送物の前記搬送ルート情報とに基づいて、前記飛行体の飛行計画を生成する飛行計画生成部と、
を有する飛行計画生成装置を備えることを特徴とする飛行計画生成システム。
【請求項7】
請求項6に記載の飛行計画生成システムにおいて、
飛行計画生成装置は、
前記複数の飛行体のそれぞれの位置情報に基づいて、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を算出する相対位置算出部と、
算出した前記相対位置から、それぞれの前記飛行体の揺れが前記搬送物へ伝搬する伝搬量を算出する揺れ伝搬量算出部と、
を、さらに備えることを特徴とする飛行計画生成システム。
【請求項8】
複数の飛行体により搬送物を搬送する飛行計画生成方法であって、
複数の前記飛行体のうち特定の飛行体からの前記搬送物へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を補正し、
補正された前記相対位置と、記憶部に格納された前記搬送物の搬送ルート情報とに基づいて、飛行計画生成装置により、前記飛行体の飛行計画を生成する、
ことを特徴とする飛行計画生成方法。
【請求項9】
請求項8に記載の飛行計画生成方法において、
飛行計画生成装置は、前記複数の飛行体のそれぞれの位置情報に基づいて、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を算出し、
算出した前記相対位置から、それぞれの前記飛行体の揺れが前記搬送物へ伝搬する伝搬量を算出する、
ことを特徴とする飛行計画生成方法。
【請求項10】
請求項9に記載の飛行計画生成方法において、
前記飛行体はバッテリを有し、
前記飛行計画生成装置は、前記バッテリのバッテリ残量情報に基づいてバッテリ残量が最も小さい特定の前記飛行体を選択し、
複数の前記飛行体のうちの前記特定の飛行体からの前記伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する前記相対位置を補正することを特徴とする飛行計画生成方法。
【請求項11】
請求項9に記載の飛行計画生成方法において、
前記飛行計画生成装置は、
前記飛行体の最大可搬荷重情報に基づいて最大可搬荷重が最も小さい特定の飛行体を選択し、
複数の前記飛行体のうち前記特定の飛行体からの前記伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する前記相対位置を補正することを特徴とする飛行計画生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行計画生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動搬送において、複数台の飛行ドローンを協調させて単一の搬送物を吊り下げて搬送する搬送方式がある。この搬送方式により、1台当たりの可搬性能を超える搬送物を運ぶことができるため、飛行ドローンの1台当たりの機体コストを低減できる。
【0003】
また、複数台の飛行ドローンを協調させることにより、一部の飛行ドローンが故障した場合も搬送物の搬送が継続可能となり、単機による配送よりも耐障害性の向上が可能となる。
【0004】
このような搬送方式では、搬送物が揺れるほど、エネルギ消費量が大きくなり、航続距離や搬送回数に対する燃費効率が低下するため、搬送物の揺れを抑える必要がある。
【0005】
協調搬送システムとして、特許文献1には以下の内容が開示されている。
【0006】
複数のクレーンの動作を制御してこれら複数のクレーンにより単一の搬送物を吊り下げて搬送する共吊クレーンの協調搬送制御装置であって、複数のクレーンのうちの一は、作業者の操作、または、予め指定された指令によって動作するリーダクレーンである。そして、複数のクレーンのうち、リーダクレーンの他のクレーンは、制御装置による制御に従って動作するフォロワクレーンである。
【0007】
制御装置は、フォロワクレーンにおける搬送物の振れ幅に基づいてフォロワクレーンのリーダクレーンに対する距離偏差を閉ループ伝達関数[G(s)/(1+G(s))]が安定となる伝達関数G(s)を用いて推定する推定器と、この推定器により推定された距離偏差をなくすようにフォロワクレーンヘの動作指令を生成する動作指令制御部とを有する。
【0008】
そして、この動作指令によりフォロワクレーンを動作させてリーダクレーンの動作に追従させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5076352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された制御方法は、共吊クレーンの協調搬送制御装置であり、搬送機械が搬送物に作用できる力の限界は考慮されていない。
【0011】
飛行ドローンの協調搬送では、個々の飛行ドローンのバッテリ残量、可搬性能等にバラつきがあり、発揮できる推力がばらつき、搬送物に作用できる力に偏りが生じる場合がある。このような場合には、搬送物の揺れを抑えられず、安定した搬送が困難となる恐れがある。
【0012】
本発明の目的は、飛行ドローンの個体差を考慮することで、航続距離およびバッテリ効率が改善された飛行計画生成装置、飛行計画生成システムおよび飛行計画生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0014】
複数の飛行体により搬送物を搬送する飛行計画生成装置であって、搬送物の搬送ルート情報を格納した記憶部と、複数の前記飛行体のうち特定の飛行体からの前記搬送物へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を補正する相対位置補正部と、補正された前記相対位置と前記搬送物の前記搬送ルート情報とに基づいて、前記飛行体の飛行計画を生成する飛行計画生成部と、を備える。
【0015】
また、複数の飛行体により搬送物を搬送する飛行計画生成システムであって、複数の前記飛行体と、前記飛行体に無線通信回線を介して前記飛行体に飛行計画を送信する無線通信装置を有する管制局と、を備え、前記管制局は、前記搬送物の搬送ルート情報を格納した記憶部と、複数の前記飛行体のうち特定の飛行体からの前記搬送物へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を補正する相対位置補正部と、補正された前記相対位置と前記搬送物の前記搬送ルート情報とに基づいて、前記飛行体の飛行計画を生成する飛行計画生成部と、を有する飛行計画生成装置を備える。
【0016】
また、複数の飛行体により搬送物を搬送する飛行計画生成方法であって、複数の前記飛行体のうち特定の飛行体からの前記搬送物へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの前記飛行体の前記搬送物に対する相対位置を補正し、補正された前記相対位置と、記憶部に格納された前記搬送物の搬送ルート情報とに基づいて、飛行計画生成装置により、前記飛行体の飛行計画を生成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、飛行ドローンの個体差を考慮することで、航続距離およびバッテリ効率が改善された飛行計画生成装置、飛行計画生成システムおよび飛行計画生成方法を提供することができる。
【0018】
上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例における飛行計画生成システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施例における飛行計画生成システムの機能ブロック図である。
図3】飛行計画情報のテーブル例を示す図である。
図4】搬送ルートを示す図である。
図5】飛行計画生成装置の相対位置算出部の処理手順を示すフローチャートである。
図6】搬送物と飛行ドローンの相対位置関係の例を示す図である。
図7】飛行計画生成装置の飛行計画生成部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例0022】
図1は、本発明の一実施例による飛行計画生成システム1の概略構成を示す図である。
【0023】
図1に示す飛行計画生成システム1は、自動搬送サービスであり、搬送物を搬送するための少なくとも1台以上の飛行ドローン20(20-1、20-2、20-3)により構成される。管制局40は、無線通信回線50を介して飛行ドローン20(20-1、20-2、20-3)に飛行計画を送信する。
【0024】
飛行ドローン20(20-1、20-2、20-3)は、搬送物30の搬送ルート10に基づいて管制局40から与えられる飛行計画を無線通信回線50から受け取って、飛行する。なお、図中、各飛行ドローン20を、20-1、20-2、20-3として示している。また、飛行ドローン20は飛行体20と定義することもできる。
【0025】
図2は、飛行計画生成システム1の機能ブロック図である。
【0026】
図2において、飛行ドローン20は、ハードウェア構成として、記憶装置210aと、自律飛行制御装置220と、ロータ駆動装置230と、無線通信装置240と、位置センサ250と、姿勢センサ260とを備える。また、飛行ドローン20は、動力源であるバッテリ261を備えている。
【0027】
記憶装置210aは、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム、データベース等が格納されている。記憶装置210aは、機体情報記憶部211と、飛行計画情報記憶部212とを含む。
【0028】
機体情報記憶部211は、機体情報として、少なくともバッテリ261のバッテリ残量と最大可搬荷重を記憶する。バッテリ残量はバッテリ電圧から残量を推定した値であってもよいし、ロータへの供給電力をバッテリ261の容量から減算した値であってもよい。ロータへの供給電力から推定する場合は、バッテリ電圧センサがない構成であってもバッテリ残量を算出可能となる。
【0029】
最大可搬荷重は、飛行ドローン20に搭載されたロータが仕様上の出力可能な推力と機体荷重から算出された値でもよいし、ロータへの供給電力に対する回転速度から推定された現状の出力可能な推力と機体荷重から算出された値であってもよい。現状の出力可能な推力を用いることで、経年変化、故障により可搬性能が低下した場合であっても発揮可能な推力を算出することが可能となる。
【0030】
飛行計画情報記憶部212は、図3に示す飛行計画情報のテーブル60を記憶しており、飛行計画情報のテーブル60は飛行ドローン20が通過すべきノードのIDと3次元のノード位置(Xn、Yn、Zn)と、そのノード位置の予定通過時刻Tnを少なくとも含む。
【0031】
自律飛行制御装置220は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を含み、これらがそれぞれプログラムの演算、作業領域への情報の読み書き、プログラムの一時的な格納を行い、飛行計画に従って飛行ドローン20を自律飛行させる制御指令を生成する。制御指令にはロータ操作量を少なくとも含む。
【0032】
ロータ駆動装置230は、飛行ドローン20に搭載されたロータを駆動させるためのものであり、自律飛行制御装置220が生成した制御指令によって動作する。
【0033】
無線通信装置240は、無線通信回線50に接続するための無線機であり、機体情報と飛行計画情報を共有する。
【0034】
位置センサ250は、飛行ドローン20の位置情報(ドローン位置情報)を取得するためのものであり、例えばGPS(Global Positioning System)であってもよい。
【0035】
姿勢センサ260は、飛行ドローン20の姿勢(ドローン姿勢)を取得するためのものであり、例えば慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)で求めた角加速度情報の時間変化から姿勢を求めてもよい。
【0036】
搬送物30は、ハードウェア構成として、無線通信装置240、位置センサ250を備える。
【0037】
位置センサ250は、搬送物30の位置(搬送物位置)を取得するためのものであり、例えばGPS(Global Positioning System)であってもよい。
【0038】
管制局40は、ハードウェア構成として、記憶装置210b、無線通信装置240、飛行計画生成装置420を備える。
【0039】
記憶装置210bは、搬送ルート情報記憶部411を含む。搬送ルート情報記憶部411は、搬送ルート10を示す搬送ルート情報を格納し、例えば、図4に示す飛行可能領域110(破線で示す)であってもよいし、搬送物30が追従すべき飛行経路120であってもよいし、空間上に設定された予定通過点130であってもよい。本発明の一実施例では、予定通過点130の点列で格納された場合を示す。
【0040】
飛行計画生成装置420は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を含み、これらがそれぞれプログラムの演算、作業領域への情報の読み書き、プログラムの一時的な格納を行い、飛行ドローン20に与える飛行計画を生成する。飛行計画生成装置420は、機能として、相対位置算出部421と、揺れ伝搬量算出部422と、相対位置補正部423と、飛行計画生成部424を少なくとも含む。
【0041】
図5に飛行計画生成装置420の相対位置算出部421の処理手順を示す。
【0042】
飛行計画生成装置420は、無線通信装置240及び無線通信回線50を介して搬送物30から搬送物位置を取得する(ステップS21)。
【0043】
飛行計画生成装置420は、変数kに1を設定し(ステップS22)、k番目の飛行ドローン20から無線通信回線50を介してドローン位置を取得する(ステップS23)。
【0044】
飛行計画生成装置420は、k番目の飛行ドローン20のドローン位置から搬送物30の位置までの相対位置関係を算出する(ステップS24)。k番目の飛行ドローン20のドローン位置から搬送物30の位置までの相対位置関係は、例えば、2点間を結ぶベクトルとして表現してもよい。
【0045】
また、図6に示すように、ドローン位置からワイヤ取付位置までのベクトルαとワイヤ取付位置から搬送物位置までのベクトルβを足したベクトルとして表現してもよい。さらに、ベクトルαはワイヤの長さとワイヤの姿勢を示すオイラー角を用いて表現してもよい。
【0046】
飛行計画生成装置420は、変数kに1を足し(ステップS25)、変数kがドローン台数以下である場合(ステップS26でNоの場合)には、ステップS23に戻り、k番目の飛行ドローン20に対してステップS23およびステップS24の処理を行う。ステップS26において、変数kがドローン台数より大きい場合(ステップS26でYesの場合)には、処理を終了する。
【0047】
飛行計画生成装置420の揺れ伝搬量算出部422は、ドローン20(20-1、20-2、20-3)と搬送物30との全ての相対位置関係から揺れ伝搬量を算出する。
【0048】
揺れ伝搬量は、ドローン20の位置の微小変化ΔPで生じる搬送物30の位置の微小変化ΔQの関係において、以下の式(1)の係数となるヤコビ行列Jとして算出する。
ΔQ=JΔP ・・・(1)
【0049】
ヤコビ行列Jの各要素は相対位置関係として算出したベクトルを、ドローン位置を変数として偏微分することで算出できる。全てのドローン位置の変数と相対位置関係の組合せで偏微分し、飛行計画生成システム1の揺れ伝搬量を示すヤコビ行列Jを算出する。
【0050】
飛行計画生成装置420は、揺れ伝搬量として算出したヤコビ行列Jから搬送物30の揺れやすさを示す揺れ指標を算出する。揺れ指標はヤコビ行列Jにおける要素の絶対値の総和であってもよいし、ドローン20の位置を入力、搬送物30の位置を出力とした場合の可制御性楕円体の軸の長さの総和であってもよい。
【0051】
可制御性楕円体は、軸の向きとその長さが入力により操作しやすい出力方向と操作しやすさを表し、本発明の一実施例の場合、軸が長いほどドローン位置の変化に対する搬送物位置の感度が高い、つまり、揺れやすいことを示す。可制御性楕円体はヤコビ行列Jから以下の式(2)により算出した行列Aの固有値と固有ベクトルとして軸の長さと方向を算出できる。
A=JJ ・・・(2)
【0052】
揺れ指標を算出するときに以下の式(3)により、感度設計係数Kを用いて、特定の飛行ドローン20のドローン位置の変化に対して感度を調整することを可能にする。
ΔQ=JKΔP ・・・(3)
【0053】
感度設計係数Kを大きくした飛行ドローン20に対しては揺れ伝搬量が特に小さくなる配置となるように補正量が計算される。相対位置補正部423は、感度設計係数Kを最大可搬荷重が小さい飛行ドローン20ほど大きい値としてもよいし、バッテリ261のバッテリ残量が小さい飛行ドローン20ほど大きくしてもよい。
【0054】
また、特定の飛行ドローン20のドローン位置の変化に対して感度を大きく下げるとき、その飛行ドローン20の揺れが搬送物位置に伝搬しなくなる、つまり、その飛行ドローン20は搬送物位置の維持に作用しない状況となる。
【0055】
このとき、搬送物30の位置を操作し、かつ搬送物30の荷重を支える飛行ドローン20と搬送物30の位置の操作のみを担う飛行ドローン20に分担させることができる。
【0056】
これにより、例えば、相対位置補正部423は、バッテリ残量情報に基づいてバッテリ残量が最も小さい特定の飛行ドローン20を選択し、選択した飛行ドローン20に対して搬送物30の荷重を支えるためのエネルギ消費がない配置を生成することができる。
【0057】
つまり、相対位置補正部423は、バッテリ261のバッテリ残量情報に基づいて、機体性能が最も低い飛行体20として、バッテリ残量が最も小さい特定の飛行体20を選択し、算出した伝搬量から、複数の飛行体20のうちの特定の飛行体20からの伝搬量が最小となるように、それぞれの飛行体20の搬送物30に対する相対位置を補正することができる。
【0058】
また、相対位置補正部423は、複数の飛行体20のそれぞれの最大可搬荷重情報に基づいて最大可搬荷重が最も小さい特定の飛行体20を選択し、複数の飛行体20のうち特定の飛行体20からの伝搬量が最小となるように、それぞれの飛行体20の搬送物30に対する相対位置を補正することも可能である。
【0059】
また、相対位置補正部423は、算出された伝搬量から、複数の飛行体20のうち特定の飛行体20(バッテリ残量が最も小さい特定の前記飛行体20または最大可搬荷重が最も小さい飛行体20)の伝搬量が最小となるように、特定の飛行体20には搬送物30の位置を操作するように制御し、特定の飛行体20以外の飛行体20には搬送物30の位置を操作し、かつ搬送物30の荷重を支えるように制御できるように、それぞれの飛行体20の搬送物30に対する相対位置を補正することも可能である。
【0060】
飛行計画生成装置420は、揺れ指標を最小化するドローン位置補正量を算出する(ステップS32)。例えば、最急降下法を用いて揺れ指標が小さくなる方向にドローン位置を補正することを繰り返し、揺れ指標が所定値未満、または繰り返し回数が所定回数以上となったときのドローン位置への補正量をドローン位置補正量として算出してもよい。
【0061】
図7に飛行計画生成装置420の飛行計画生成部424の処理手順を示す。
【0062】
図7において、飛行計画生成装置420は、記憶装置210bから搬送ルート情報を取得する(ステップS41)。
【0063】
飛行計画生成装置420は、変数kに1を設定し(ステップS42)、k番目の飛行ドローン20から無線通信回線50及び無線通信装置240を介して最大可搬荷重を取得する(ステップS43)。
【0064】
飛行計画生成装置420は、k番目の飛行ドローン20のドローン位置補正量から現在位置配置を算出する(ステップS44)。現在のドローン位置とドローン位置補正量から補正後ドローン位置を算出し、搬送物30の位置から補正後ドローン位置までの相対位置関係を現在位置配置として算出する。
【0065】
現在位置配置は、例えば、搬送物30の位置を起点とした補正後ドローン位置までのベクトルとして表現してもよい。また、搬送物30の位置からワイヤ取付位置までのベクトルとワイヤ取付位置から補正後ドローン位置までのベクトルを足したベクトルとして表現してもよい。さらに、ワイヤ取付位置から補正後ドローン位置までのベクトルはワイヤの長さとワイヤの姿勢を示すオイラー角を用いて表現してもよい。
【0066】
飛行計画生成装置420は、現在位置配置と搬送ルート情報に基づいてノード位置を生成する(ステップS45)。搬送物30の位置に対する相対的なドローン位置である現在位置配置を維持した飛行を計画し、搬送ルート10の予定通過点130ごとに対応する飛行ドローン20のノード位置を算出する。
【0067】
飛行計画生成装置420は、変数kに1を足し(ステップS46)、変数kがドローン台数以下である場合(ステップS47でNоの場合)には、k番目の飛行ドローン20に対してステップS43、ステップS44、およびステップS45の処理を行う。変数kがドローン台数より大きい場合(ステップS47でYesの場合)にステップS48の処理に進む。
【0068】
飛行計画生成装置420は、現在位置配置と搬送物30の荷重から各飛行ドローン20が担う機体負荷を算出する(ステップS48)。機体負荷は、搬送物30の荷重と飛行ドローン20との間の力のつり合いを現在位置配置に基づいて算出し、搬送物30の位置と姿勢を空中で一定に保つ場合に、ぞれぞれの飛行ドローン20が出力する推力として算出する。
【0069】
飛行計画生成装置420は、各飛行ドローン20が担う機体負荷と最大可搬荷重から搬送物30の位置と姿勢を空中で一定に保つための推力を除いた余剰推力を算出し、協調搬送する全ての飛行ドローン20の中で最小の余剰推力に基づいて航行速度を算出する(ステップS49)。
【0070】
飛行計画生成装置420は、航行速度に基づいて予定通過点130ごとに通過時刻を算出し、各飛行ドローン20の予定通過点130と対応したノード位置の通過時刻として生成する(ステップS410)。
【0071】
本発明によれば、複数の飛行体20により単一の搬送物30を搬送する飛行計画生成システム1を実現することができる。
【0072】
飛行計画生成システム1は、複数の飛行体20と、飛行体20に無線通信回線50を介して飛行体20に飛行計画を送信する無線通信装置240を有する管制局40と、を備え、管制局40は、搬送物30の搬送ルート情報を格納した記憶部210bと、複数の飛行体20のうち特定の飛行体20からの搬送物30へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの飛行体20の搬送物30に対する相対位置を補正する相対位置補正部423と、補正された相対位置と搬送物30の搬送ルート情報とに基づいて、飛行体20の飛行計画を生成する飛行計画生成部424と、を有する飛行計画生成装置420を備える。
【0073】
また、本発明によれば、複数の飛行体20により単一の搬送物30を搬送する飛行計画生成方法を実現することができる。
【0074】
飛行計画生成方法は、複数の飛行体20のうち特定の飛行体20からの搬送物30へ伝搬する伝搬量が最小となるように、それぞれの飛行体20の搬送物30に対する相対位置を補正し、補正された相対位置と、記憶部210bに格納された搬送物30の搬送ルート情報とに基づいて、飛行計画生成装置420により、飛行体20の飛行計画を生成する。
【0075】
以上で説明したように、本発明の一実施例によれば、少なくともバッテリ261のバッテリ残量と可搬性能を含む、飛行ドローン20の個体差を考慮し、発揮可能な推力が大きい飛行ドローン20が発揮可能な推力が小さい飛行ドローン20よりも、搬送物30の揺れ補正に作用する力を大きくすることで、航続距離およびバッテリ効率が改善された飛行計画生成装置420、飛行計画生成システム1および飛行計画生成方法を提供することができる。
【0076】
また、飛行計画生成システム1は、飛行ドローン20からの揺れ伝搬量を最小化し、搬送物30の揺れを抑えた協調搬送を可能とし、揺れ補正によるバッテリ261のバッテリ消費と追従誤差を低減し、航続距離およびバッテリ効率を改善することができる。
【0077】
また、バッテリ261のバッテリ残量に基づいて飛行ドローン20からの揺れ伝搬量を調整することを可能とし、バッテリ残量が小さい飛行ドローン20はバッテリ残量が大きい飛行ドローン20と比べて機体負荷を小さくすることで、航続距離およびバッテリ効率をさらに改善することができる。
【0078】
また、飛行ドローン20の設計時の仕様としての最大可搬荷重に基づいて飛行ドローン20からの揺れ伝搬量を調整することを可能とし、最大可搬荷重が最も小さい飛行ドローン20は最大可搬荷重が大きい飛行ドローン20と比べて機体負荷を小さくすることで、航続距離およびバッテリ効率をさらに改善することができる。
【0079】
また、飛行ドローン20の推定された現状の最大可搬荷重に基づいて飛行ドローン20からの揺れ伝搬量を調整することを可能とし、最大可搬荷重が小さい飛行ドローン20は最大可搬荷重が大きい飛行ドローン20と比べて機体負荷を小さくすることで、航続距離およびバッテリ効率をさらに改善し、加えて故障する可能性がある飛行ドローン20の機体負荷を低減し、耐障害性を改善することができる。
【0080】
また、バッテリ261のバッテリ残量または最大可搬荷重に基づいて飛行ドローン20からの揺れ伝搬量を調整することを可能とし、バッテリ残量または最大可搬荷重が大きい飛行ドローン20に搬送物位置を操作し、かつ搬送物30の荷重を支える役割を与え、バッテリ残量または最大可搬荷重が小さい飛行ドローン20には搬送物位置の操作のみを担う配置を生成することで、バッテリ残量または最大可搬荷重が小さい飛行ドローン20に対して機体負荷を小さくすることで、航続距離およびバッテリ効率をさらに改善することができる。
【0081】
(本発明の他の実施例)
本発明の他の実施例は、図2に示した飛行計画生成システム1において、飛行体20の記憶装置210aと、管制局40の記憶装置210bと、飛行計画生成装置420とをクラウドコンピューティングで構成する。本願発明においては、飛行体20の記憶装置210aと、管制局40の記憶装置210bと、飛行計画生成装置420とは、クラウドコンピューティングと総称することができる。定義する。
【0082】
上述のようなクラウドコンピューティングで構成することにより、複数の飛行ドローン20で記憶装置210aを共有することができる。また、複数の管制局40が複数存在する場合には、複数の管制局40で、記憶装置210bおよび飛行計画生成装置420を共有することができる。
【0083】
本発明の他の実施例においても、一実施例と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1・・・飛行計画生成システム、10・・・搬送ルート、20(20-1、20-2、20-3)・・・飛行ドローン(飛行体)、30・・・搬送物、40・・・管制局、50・・・無線通信回線、60・・・飛行計画情報のテーブル、130・・・予定通過点、210a、210b・・・記憶装置、211・・・機体情報記憶部、212・・・飛行計画情報記憶部、220・・・自律飛行制御装置、230・・・ロータ駆動装置、240・・・無線通信装置、250・・・位置センサ、260・・・姿勢センサ、261・・・バッテリ、411・・・搬送ルート情報記憶部、420・・・飛行計画生成装置、421・・・相対位置算出部、422・・・揺れ伝搬量算出部、423・・・相対位置補正部、424・・・飛行計画生成部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7