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特開2023-183264内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183264
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20231220BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096791
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 文明
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】木下 翔太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】河田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】西尾 典晃
【テーマコード(参考)】
5G059
【Fターム(参考)】
5G059AA01
5G059GG01
5G059KK23
5G059KK30
(57)【要約】
【課題】所望の長さの放電ギャップを確実に形成することができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】スパークプラグ1において、接地電極6はハウジング2の先端部に固定されている。プラグカバー5はハウジング2の先端部に溶接されている。プラグカバー5とハウジング2との溶接部11は、プラグ周方向の全周にわたって連続的に形成されている。プラグ軸方向から見たときの固定端部61とプラグ中心軸Cとの並び方向における、プラグ中心軸Cよりも固定端部61側の領域であって、プラグ軸方向から見て、直線L1と直線L2との間の領域を接地側領域Rとする。このとき、接地側領域Rの外側に、溶接部11における溶接開始部111と溶接終了部112とが形成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に露出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの先端部に固定されると共に、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に溶接されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記ハウジングに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記プラグカバーと上記ハウジングとの溶接部(11)は、プラグ周方向の全周にわたって連続的に形成されており、
プラグ軸方向(Z)から見たときの上記固定端部とプラグ中心軸(C)との並び方向における、上記プラグ中心軸よりも上記固定端部側の領域であって、プラグ軸方向から見て、上記プラグ中心軸と上記固定端部の上記プラグ周方向における一方の端部(611)とを結ぶ直線(L1)と、上記プラグ中心軸と上記固定端部の上記プラグ周方向における他方の端部(612)とを結ぶ直線(L2)との間の領域を接地側領域(R)としたとき、
該接地側領域の外側に、上記溶接部における溶接開始部(111)と溶接終了部(112)とが形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
上記溶接開始部と上記溶接終了部とは、それぞれ、上記プラグ周方向において、上記接地側領域から、上記接地電極の幅(W1)の2倍以上離れた位置に形成されている、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
上記プラグカバーの基端部は、上記ハウジングの先端部に対し、プラグ軸方向及びプラグ径方向の双方に対向すると共に、上記プラグ周方向に沿って形成されたカバー嵌合部(52)を有し、上記ハウジングの先端部は、上記カバー嵌合部に対し、プラグ軸方向及び上記プラグ径方向の双方に対向すると共に、上記プラグ周方向に沿って形成されたハウジング嵌合部(21)を有し、
上記カバー嵌合部と上記ハウジング嵌合部とがプラグ軸方向に互いに対向する軸方向対向部(12)を、上記プラグ径方向の複数個所に有し、複数の上記軸方向対向部のうち、一部の上記軸方向対向部には上記溶接部が形成されており、上記溶接部が形成されていない上記軸方向対向部のうち、少なくとも一部の上記軸方向対向部には、上記プラグカバー及び上記ハウジングよりも熱伝導率が高い熱伝導部材(13)が介在しており、上記熱伝導部材は、上記ハウジングの先端部及び上記プラグカバーの基端部と密着している、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
上記熱伝導部材は、銅を主成分とすると共に、焼鈍されている、請求項3に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に露出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、該ハウジングの先端部に固定されると共に、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に溶接されたプラグカバー(5)と、を有し、上記接地電極は、上記ハウジングに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出している、内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記ハウジングに上記プラグカバーを溶接するにあたっては、プラグ周方向の全周にわたって連続的に上記プラグカバーと上記ハウジングとの溶接部(11)を形成し、
プラグ軸方向(Z)から見たときの上記固定端部とプラグ中心軸(C)との並び方向における、上記プラグ中心軸よりも上記固定端部側の領域であって、プラグ軸方向から見て、上記プラグ中心軸と上記固定端部のプラグ周方向における一方の端部(611)とを結ぶ直線(L1)と、上記プラグ中心軸と上記固定端部のプラグ周方向における他方の端部(612)とを結ぶ直線(L2)との間の領域を接地側領域(R)としたとき、
該接地側領域の外側から溶接を開始すると共に、該接地側領域の外側にて溶接を終了する、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項6】
溶接の開始位置と溶接の終了位置とは、それぞれ、上記プラグ周方向において、上記接地側領域から、上記接地電極の幅(W1)の2倍以上離れている、請求項5に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項7】
上記プラグカバーの基端部は、上記ハウジングの先端部に対し、プラグ軸方向及びプラグ径方向の双方に対向すると共に、上記プラグ周方向に沿って形成されたカバー嵌合部(52)を有し、上記ハウジングの先端部は、上記カバー嵌合部に対し、プラグ軸方向及び上記プラグ径方向の双方に対向すると共に、上記プラグ周方向に沿って形成されたハウジング嵌合部(21)を有し、上記カバー嵌合部と上記ハウジング嵌合部とがプラグ軸方向に互いに対向する軸方向対向部(12)を、上記プラグ径方向の複数個所に有し、
上記ハウジングに上記プラグカバーを溶接する前に、複数の上記軸方向対向部のうち、一部の上記軸方向対向部に対し、上記プラグカバー及び上記ハウジングよりも熱伝導率が高い熱伝導部材(13)を配置すると共に、上記ハウジングに対して上記プラグカバーをプラグ軸方向に沿って押圧することにより、上記熱伝導部材と上記ハウジング、及び上記熱伝導部材と上記プラグカバーとを互いに密着させ、
上記ハウジングに上記プラグカバーを溶接するにあたっては、上記熱伝導部材が配されていない上記軸方向対向部に対し溶接する、請求項5又は6に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項8】
上記熱伝導部材は、銅を主成分とすると共に、焼鈍されている、請求項7に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えたスパークプラグが知られている。当該スパークプラグにおいて、副燃焼室を覆うプラグカバーには、複数の噴孔が形成されている。これにより、噴孔を介して副燃焼室から主燃焼室に火炎を噴出させ、主燃焼室の混合気を燃焼させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-184435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグにおいて、接地電極とプラグカバーとは、それぞれハウジングの先端部に固定されている。それゆえ、放電ギャップを調整した後、プラグカバーをハウジングに溶接によって固定する場合、その溶接の仕方によっては、溶接後の放電ギャップの長さが、溶接前の放電ギャップの長さから変わるおそれがある。それゆえ、放電ギャップ形成の観点から、さらなる改善の余地があるといえる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、所望の長さの放電ギャップを確実に形成することができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に露出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
該ハウジングの先端部に固定されると共に、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に溶接されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記ハウジングに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記プラグカバーと上記ハウジングとの溶接部(11)は、プラグ周方向の全周にわたって連続的に形成されており、
プラグ軸方向(Z)から見たときの上記固定端部とプラグ中心軸(C)との並び方向における、上記プラグ中心軸よりも上記固定端部側の領域であって、プラグ軸方向から見て、上記プラグ中心軸と上記固定端部の上記プラグ周方向における一方の端部(611)とを結ぶ直線(L1)と、上記プラグ中心軸と上記固定端部の上記プラグ周方向における他方の端部(612)とを結ぶ直線(L2)との間の領域を接地側領域(R)としたとき、
該接地側領域の外側に、上記溶接部における溶接開始部(111)と溶接終了部(112)とが形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【0007】
本発明の他の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に露出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、該ハウジングの先端部に固定されると共に、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に溶接されたプラグカバー(5)と、を有し、上記接地電極は、上記ハウジングに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出している、内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記ハウジングに上記プラグカバーを溶接するにあたっては、プラグ周方向の全周にわたって連続的に上記プラグカバーと上記ハウジングとの溶接部(11)を形成し、
プラグ軸方向(Z)から見たときの上記固定端部とプラグ中心軸(C)との並び方向における、上記プラグ中心軸よりも上記固定端部側の領域であって、プラグ軸方向から見て、上記プラグ中心軸と上記固定端部のプラグ周方向における一方の端部(611)とを結ぶ直線(L1)と、上記プラグ中心軸と上記固定端部のプラグ周方向における他方の端部(612)とを結ぶ直線(L2)との間の領域を接地側領域(R)としたとき、
該接地側領域の外側から溶接を開始すると共に、該接地側領域の外側にて溶接を終了する、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【発明の効果】
【0008】
上記スパークプラグは、接地側領域の外側に、溶接開始部と溶接終了部とが形成されている。それゆえ、ハウジングにプラグカバーを溶接した後の放電ギャップの長さが、当該溶接前の放電ギャップの長さから変わることを抑制することができる。その結果、所望の長さの放電ギャップを確実に形成することができる。
【0009】
上記スパークプラグの製造方法において、ハウジングにプラグカバーを溶接するにあたっては、接地側領域の外側から溶接を開始すると共に、接地側領域の外側にて溶接を終了する。それゆえ、ハウジングにプラグカバーを溶接した後の放電ギャップの長さが、当該溶接前の放電ギャップの長さから変わることを抑制することができる。その結果、所望の長さの放電ギャップを確実に形成することができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、所望の長さの放電ギャップを確実に形成することができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図2のI-I線矢視断面図。
図2図1のII矢視図。
図3】実施形態1における、直線L1と直線L2とを示す、スパークプラグを先端側から見た図。
図4図2のIV矢視図。
図5】実施形態1における、ハウジングにプラグカバーを嵌合させる様子を示す断面図。
図6図5のVI矢視図。
図7】実施形態1における、ハウジングにプラグカバーを溶接する前の、軸方向対向部付近の断面図。
図8】実施形態1における、レーザー光の照射位置の移動方向を示す図。
図9】実施形態1における、スパークプラグが設置された内燃機関の断面図。
図10】実施形態2における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
図11】実施形態3における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
図12】実験例1における、実施形態3のスパークプラグのCT画像。
図13】実験例1における、比較形態1のスパークプラグのCT画像。
図14】実験例1における、実施形態3のスパークプラグの、溶接終了部付近の外観写真。
図15】実験例1における、実施形態3のスパークプラグの、図12とは反対側から見た外観写真。
図16】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
図17】実施形態5における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
図18】実施形態6における、溶接部付近の断面図。
図19】実施形態6における、ハウジングにプラグカバーを溶接する前の、軸方向対向部付近の断面図。
図20】実施形態7における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
図21】実施形態7における、熱伝導部材付近の拡大断面図。
図22】実施形態7における、ハウジングに対しプラグカバーを押圧する様子を示す断面図。
図23】実施形態8における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
図24】実施形態9における、溶接部付近の断面図。
図25】実施形態9における、ハウジングにプラグカバーを溶接する前の、軸方向対向部付近の断面図。
図26】実施形態10における、溶接部付近の断面図。
図27】実施形態10における、ハウジングにプラグカバーを溶接する前の、軸方向対向部付近の断面図。
図28】実施形態11における、溶接部付近の断面図。
図29】実施形態11における、ハウジングにプラグカバーを溶接する前の、軸方向対向部付近の断面図。
図30】実施形態12における、溶接部付近の断面図。
図31】実施形態12における、ハウジングにプラグカバーを溶接する前の、プラグカバーの基端部とハウジングの先端部との互いの当接部付近の断面図。
図32】実施形態13における、溶接部付近の断面図。
図33】実施形態13における、ハウジングにプラグカバーを溶接する前の、プラグカバーの基端部とハウジングの先端部との互いの当接部付近の断面図。
図34】実施形態14における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図35のXXXIV-XXXIV線矢視断面図。
図35図34のXXXV矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法に係る実施形態について、図1図9を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に露出している。ハウジング2は絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、ハウジング2の先端部に固定されると共に、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に溶接されている。接地電極6は、ハウジング2に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。
【0013】
図2図3に示すごとく、プラグカバー5とハウジング2との溶接部11は、プラグ周方向の全周にわたって連続的に形成されている。図3に示すごとく、プラグ軸方向Zから見て、プラグ中心軸Cと固定端部61のプラグ周方向における一方の端部611とを結ぶ直線を直線L1とする。また、プラグ軸方向Zから見て、プラグ中心軸Cと固定端部61のプラグ周方向における他方の端部612とを結ぶ直線を直線L2とする。また、プラグ軸方向Zから見たときの固定端部61とプラグ中心軸Cとの並び方向における、プラグ中心軸Cよりも固定端部61側の領域であって、プラグ軸方向Zから見て、直線L1と直線L2との間の領域を接地側領域Rとする。このとき、接地側領域Rの外側に、溶接部11における溶接開始部111と溶接終了部112とが形成されている。
【0014】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。図9に示すごとく、ハウジング2のネジ部23を、シリンダヘッド71のプラグホール711の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。シリンダヘッド71とハウジング2とは、互いに熱的に接触している。
【0015】
内燃機関10は、シリンダ70内を往復運動するピストン74を備える。主燃焼室101は、ピストン74の往復運動によって、容積変化する。内燃機関10には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。
【0016】
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室101に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室101に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。また、プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とする円周に沿った方向である。また、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。
【0017】
スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室101と区画している。
【0018】
また、プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室101とを連通させている。
【0019】
また、プラグカバー5の基端部は、図1に示すごとく、カバー嵌合部52を有する。カバー嵌合部52は、ハウジング2の先端部に対し、プラグ軸方向Z及びプラグ径方向の双方に対向すると共に、プラグ周方向に沿って形成されている。また、ハウジング2の先端部は、ハウジング嵌合部21を有する。ハウジング嵌合部21は、カバー嵌合部52に対し、プラグ軸方向Z及びプラグ径方向の双方に対向すると共に、プラグ周方向に沿って形成されている。
【0020】
本形態において、ハウジング嵌合部21は、ハウジング2の外周面の一部がプラグ径方向の内側に後退することにより形成されている。ハウジング嵌合部21は先端側に開口している。また、ハウジング嵌合部21に、カバー嵌合部52が嵌合されている。
【0021】
本形態のスパークプラグ1は、カバー嵌合部52とハウジング嵌合部21とがプラグ軸方向Zに互いに対向する軸方向対向部12を有する。本形態において、軸方向対向部12は、プラグ周方向の全周にわたって形成されている。つまり、軸方向対向部12は、環状に形成されている。
【0022】
また、軸方向対向部12には、溶接部11が形成されている。そして、ハウジング2とプラグカバー5とは、溶接部11を介して、互いに熱的に接触している。プラグカバー5及びハウジング2は、例えば、鉄、ニッケル、鉄或いはニッケルの合金、ステンレス鋼等の材料からなる。
【0023】
また、ハウジング2の先端部は、先端側面22の一部が先端側へ突出することにより形成された先端側突出部24を有する。先端側突出部24は、ハウジング2の内周面に沿って形成されていると共に、プラグカバー5の基端部に対し、プラグ径方向の内側に形成されている。また、先端側突出部24は、図6に示すごとく、ハウジング2の先端部における、プラグ周方向の一部に形成されている。
【0024】
図1に示すごとく、先端側突出部24におけるプラグ径方向の内側を向く面には、接地電極6が溶接によって固定されている。接地電極6は、先端側突出部24からプラグ径方向の内側へ向かって突出している。接地電極6は、屈曲することなく、プラグ径方向に沿って設けられている。また、接地電極6の突出端部63と中心電極4の先端部とがプラグ径方向に互いに対向することにより、放電ギャップGが形成されている。
【0025】
本形態において、接地電極6の固定端部61は、Z方向において、溶接部11よりも先端側に位置している。Z方向における、溶接部11から固定端部61までの最短距離D1は、溶接部11のZ方向における幅W2の3倍の長さよりも短い。また、最短距離D1は幅W2の2倍の長さよりも短い。本形態において、最短距離D1は幅W2よりも短い。
【0026】
溶接部11は、接地側領域Rと、スパークプラグ1における接地側領域R以外の領域との双方に形成されている。図3に示すごとく、溶接部11の溶接開始部111と溶接終了部112とは、それぞれ、プラグ周方向において、接地側領域Rから、接地電極6の幅W1以上離れた位置に形成されている。また、溶接開始部111と溶接終了部112とは、それぞれ、プラグ周方向において、接地側領域Rから、幅W1の2倍以上離れた位置に形成されている。また、溶接開始部111と溶接終了部112とは、それぞれ、プラグ周方向において、接地側領域Rから、幅W1の3倍以上離れた位置に形成されている。なお、本形態において、幅W1は、接地電極6における、Z方向及び接地電極6の突出方向の双方に直交する方向の長さである。
【0027】
また、プラグ周方向における、溶接開始部111と溶接終了部112との間には、溶接重なり部113が形成されている。溶接重なり部113は、プラグカバー5とハウジング2との互いの対向部に対し、複数回溶接することにより形成される。本形態において、溶接重なり部113は、軸方向対向部12の一部に対し、2回溶接することにより形成されている。溶接重なり部113は、接地側領域Rに形成されることなく、接地側領域Rの外側に形成されている。本形態においては、溶接部11における、溶接開始部111から溶接終了部112までの範囲が溶接重なり部113となっている。
【0028】
溶接重なり部113は、プラグ周方向において、接地側領域Rから、幅W1以上離れた位置に形成されている。また、溶接重なり部113は、プラグ周方向において、接地側領域Rから、幅W1の2倍以上離れた位置に形成されている。また、溶接重なり部113は、プラグ周方向において、接地側領域Rから、幅W1の3倍以上離れた位置に形成されている。
【0029】
次に、スパークプラグ1の製造方法について説明する。
本形態の製造方法において、ハウジング2にプラグカバー5を溶接するにあたっては、プラグ周方向の全周にわたって連続的にプラグカバー5とハウジング2との溶接部11を形成する。また、接地側領域Rの外側から溶接を開始すると共に、接地側領域Rの外側にて溶接を終了する。以下、詳細に説明する。
【0030】
まず、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前に、ハウジング2に対し、絶縁碍子3及び中心電極4を組み付ける。また、ハウジング2に接地電極6を溶接すると共に、放電ギャップGを所望の長さとするため、放電ギャップGの長さを調整する。
【0031】
次に、図5の矢印Mに示すごとく、ハウジング2の先端部に対しプラグカバー5を基端側へ移動させることにより、ハウジング嵌合部21にカバー嵌合部52を嵌合させる。図7に示すごとく、ハウジング嵌合部21にカバー嵌合部52を嵌合させた状態において、ハウジング2の先端部の外周面とプラグカバー5の基端部の外周面とは面一となっている。そして、ハウジング嵌合部21を形成する嵌合部形成面に対しカバー嵌合部52の基端面をZ方向に当接させた状態にて、ハウジング2の先端部にプラグカバー5を溶接する。本形態において、ハウジング2とプラグカバー5との溶接は、レーザー溶接によって行う。
【0032】
具体的には、軸方向対向部12に対し、外周側からレーザー光Lを照射することにより、ハウジング2の先端部とカバー嵌合部52とを互いに溶接する。また、軸方向対向部12に対し、レーザー光Lの照射位置を、図8の矢印IPに示すごとく、プラグ周方向に移動させつつ、連続的に溶接を行う。そして、溶接の開始位置SPを少し過ぎた位置までレーザー光Lの照射位置を移動させる。これにより、溶接部11を、プラグ周方向の全周にわたって連続的に形成することができる。また、図2図4に示すごとく、溶接の開始位置SPに溶接開始部111が形成され、溶接の終了位置に溶接終了部112が形成される。また、この溶接によって、溶接開始部111から溶接終了部112までにわたって溶接重なり部113が形成される。
【0033】
本形態において、溶接重なり部113は、レーザー光Lの1回の照射により形成された溶接部11に対し、もう1回レーザー光Lを照射することにより形成されている。つまり、図8の矢印IPに示すごとく、軸方向対向部12に対するレーザー光Lの照射位置を、プラグ周方向の1周よりも多く移動させることにより、軸方向対向部12の同じ個所に2回のレーザー光Lの照射が行われることとなる。
【0034】
また、接地側領域Rの軸方向対向部12に対する溶接回数は、接地側領域R以外の領域における軸方向対向部12に対する溶接回数以下である。また、接地側領域Rの軸方向対向部12に対する、レーザー光Lによる溶接の回数は1回である。
【0035】
また、溶接の開始位置と溶接の終了位置とは、それぞれ、プラグ周方向において、接地側領域Rから、接地電極6の幅W1(図3参照)以上離れている。また、溶接の開始位置と溶接の終了位置とは、それぞれ、プラグ周方向において、接地側領域Rから、接地電極6の幅W1の2倍以上離れている。また、溶接の開始位置と溶接の終了位置とは、それぞれ、プラグ周方向において、接地側領域Rから、接地電極6の幅W1の3倍以上離れている。
【0036】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記スパークプラグ1は、接地側領域Rの外側に、溶接開始部111と溶接終了部112とが形成されている。それゆえ、ハウジング2にプラグカバー5を溶接した後の放電ギャップGの長さが、当該溶接前の放電ギャップGの長さから変わることを抑制することができる。その結果、所望の長さの放電ギャップGを確実に形成することができる。
【0037】
ここで、仮に、接地側領域に溶接開始部と溶接終了部とが形成されている場合を想定する。この場合、副燃焼室の気密を確保するため、軸方向対向部に対し、溶接部を、プラグ周方向の全周にわたって連続的に形成すると、接地側領域に溶接重なり部が形成される。つまり、接地側領域の軸方向対向部の少なくとも一部に対し行う溶接の回数が、接地側領域以外の領域の軸方向対向部に対し行う溶接の回数よりも多くなる。そのため、接地側領域の軸方向対向部付近における溶接による受熱量が比較的多くなりやすい。それゆえ、接地側領域に位置する接地電極の一部、又は接地電極の固定端部付近のハウジングの一部が熱によって変形しやすくなるおそれがある。そのため、溶接後の放電ギャップの長さが、溶接前の放電ギャップの長さから変わりやすくなるおそれがある。そこで、本形態のスパークプラグ1は、接地側領域Rの外側に、溶接開始部111と溶接終了部112とが形成されている。それゆえ、接地側領域Rの軸方向対向部12に対し行う溶接の回数を、接地側領域R以外の領域の軸方向対向部12に対し行う溶接の回数以下とすることができる。そのため、接地側領域Rの軸方向対向部12付近における溶接による受熱量を抑えることができる。それゆえ、接地電極6及び固定端部61付近のハウジング2の一部が、熱によって変形することを確実に抑制することができる。そのため、ハウジング2にプラグカバー5を溶接した後の放電ギャップGの長さが、当該溶接前の放電ギャップGの長さから変わることを抑制することができる。その結果、所望の長さの放電ギャップGを確実に形成することができる。
【0038】
溶接開始部111と溶接終了部112とは、それぞれ、プラグ周方向において、接地側領域Rから、幅W1(図3参照)の2倍以上離れた位置に形成されている。それゆえ、接地電極6及び固定端部61付近のハウジング2の一部が、溶接時の熱によって変形することを一層確実に抑制することができる。それゆえ、ハウジング2にプラグカバー5を溶接した後の放電ギャップGの長さが、当該溶接前の放電ギャップGの長さから変わることを一層抑制することができる。その結果、所望の長さの放電ギャップGを一層確実に形成することができる。
【0039】
上記スパークプラグ1の製造方法において、ハウジング2にプラグカバー5を溶接するにあたっては、接地側領域Rの外側から溶接を開始すると共に、接地側領域Rの外側にて溶接を終了する。それゆえ、ハウジング2にプラグカバー5を溶接した後の放電ギャップGの長さが、当該溶接前の放電ギャップGの長さから変わることを抑制することができる。その結果、所望の長さの放電ギャップGを確実に形成することができる。
【0040】
溶接の開始位置と溶接の終了位置とは、それぞれ、プラグ周方向において、接地側領域Rから、幅W1の2倍以上離れている。それゆえ、ハウジング2とプラグカバー5との溶接時における、ハウジング2と接地電極6との接合部付近の受熱量を、より抑制することができる。そのため、ハウジング2にプラグカバー5を溶接した後の放電ギャップGの長さが、当該溶接前の放電ギャップGの長さから変わることを一層抑制することができる。
【0041】
また、溶接部11は、軸方向対向部12において、プラグ周方向の全周にわたって連続的に形成されている。それゆえ、副燃焼室50の気密を確保することができる。そのため、噴孔51を介して副燃焼室50から主燃焼室へと、勢いよく火炎を噴出させることができる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0042】
軸方向対向部12には、溶接重なり部113が形成されている。それゆえ、副燃焼室50の気密を確実に確保することができる。つまり、副燃焼室50の気密を確実に確保するためには、軸方向対向部12において、溶接部11が、プラグ周方向の全周にわたって、確実に、連続的に形成される必要がある。そこで、本形態においては、軸方向対向部12に対するレーザー光Lの照射位置を、プラグ周方向の1周よりも多く移動させている。これにより、プラグ周方向の全周にわたって、溶接部11が確実に形成されると共に、溶接重なり部113が形成される。それゆえ、副燃焼室50の気密を確実に確保することができ、着火性を確実に向上させることができる。
【0043】
以上のごとく、本形態によれば、所望の長さの放電ギャップGを確実に形成することができる内燃機関用のスパークプラグ1及びその製造方法を提供することができる。
【0044】
(実施形態2)
本形態は、図10に示すごとく、接地電極6が、プラグ径方向に対し傾斜するように設けられた形態である。
【0045】
本形態において、接地電極6は、図10に示すごとく、屈曲することなく、固定端部61から副燃焼室50内に突出している。接地電極6は、プラグ中心軸Cに近づくほど先端側へ向かうように傾斜している。また、接地電極6の基端側面62も、プラグ中心軸Cに近づくほど先端側へ向かうように傾斜している。
【0046】
放電ギャップGは、接地電極6の基端側面62と中心電極4の先端部とが互いに対向することにより形成されている。放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0047】
放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。それゆえ、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前において、ハウジング2に固定された接地電極6と中心電極4との間に形成された放電ギャップGを確認しやすい。それゆえ、放電ギャップGの調整を容易に行うことができる。その結果、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0048】
(実施形態3)
本形態は、図11に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0049】
本形態において、接地電極6の突出端部63は、図11に示すごとく、プラグ中心軸Cに近づくほどZ方向の幅が小さくなるように、形成されている。接地電極6は、プラグ中心軸Cを含むと共に、接地電極6の突出方向に沿った断面において、突出端部63の輪郭が、中心電極4の先端部の外周面に沿うように、形成されている。
【0050】
また、接地電極6の固定端部61は、ハウジング2の先端側面22に固定されている。また、接地電極6の突出方向から見たとき(図示略)、溶接部11の一部と固定端部61の一部とが互いに重なるように、溶接部11が形成されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
【0051】
(実験例1)
本例では、図12図15に示すごとく、実施形態3のスパークプラグ1と、比較形態1のスパークプラグ9とについて、ハウジング2にプラグカバー5を溶接した後の放電ギャップGの長さD2と、当該溶接前の放電ギャップGの長さとの関係を調べた。図14図15に示すごとく、本例にて用いた実施形態3のスパークプラグ1は、溶接終了部112が、プラグ径方向の外側へ向かって、わずかに突出している。つまり、実施形態3のスパークプラグ1において、溶接終了部112の少なくとも一部は、溶接部11の他の部分よりも、プラグ径方向の外側に位置している。また、図13に示す比較形態1のスパークプラグ9は、溶接部11以外の基本構造を実施形態3と同様としつつ、溶接開始部と溶接終了部と溶接重なり部113とが、それぞれ接地側領域Rに形成されたスパークプラグである。
【0052】
図12は、ハウジング2にプラグカバー5を溶接した後の、実施形態3のスパークプラグ1のCT(computed tomography)画像である。実施形態3のスパークプラグ1について、溶接前後の放電ギャップGの長さを調べた結果、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前の放電ギャップGの長さと、図12に示す溶接部11形成後の長さD2とが、実質的に同じであることを確認した。具体的には、溶接前の放電ギャップGの長さが0.700mm、溶接後の長さD2が0.702mmであり、溶接前後において、ほとんど変化がなかったことを確認した。なお、溶接前の放電ギャップGの長さはピンゲージにて計測し、溶接後の長さD2はCT画像より計測した。
【0053】
また、図13は、ハウジング2にプラグカバー5を溶接した後の、比較形態1のスパークプラグ9のCT画像である。比較形態1のスパークプラグ9について、溶接前後の放電ギャップGの長さを調べた結果、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前の放電ギャップGの長さと比較し、図13に示す長さD2が短いことを確認した。具体的には、溶接前の放電ギャップGの長さが0.72mm、溶接後の長さD2が0.06mmであり、溶接前後において、放電ギャップGの長さに変化が見られた。
【0054】
図13に示す比較形態1のスパークプラグ9の場合、上述のごとく、溶接開始部と溶接終了部と溶接重なり部113とが、それぞれ接地側領域Rに形成されている。そのため、比較形態1のスパークプラグ9は、実施形態3のスパークプラグ1と比較し、接地側領域Rにおける接地電極6及びハウジング2の、溶接時の受熱量が多くなったと考えられる。そのため、溶接時の熱によって接地電極6又はハウジング2が変形し、溶接前の放電ギャップGの長さに対し、溶接後の長さD2が短くなったと考えられる。一方、図12図14図15に示す実施形態3のスパークプラグ1の場合、接地側領域Rの外側に、溶接開始部と溶接終了部112とが形成されている。それゆえ、実施形態3のスパークプラグ1は、比較形態1と比較し、接地側領域Rにおける接地電極6及びハウジング2の、溶接時の受熱量が少なかったと考えられる。そのため、溶接時の熱による接地電極6及びハウジング2の変形を抑制することができたと考えられる。それゆえ、放電ギャップGの長さは、溶接の前後において、実質的に変化がなかったと考えられる。つまり、接地側領域Rの外側に、溶接開始部111と溶接終了部112とが形成されているスパークプラグ1は、所望の長さの放電ギャップGを確実に形成することができる。
【0055】
(実施形態4)
本形態は、図16に示すごとく、実施形態2に対し、接地電極6の接合箇所を変更した形態である。
【0056】
本形態において、接地電極6は、図16に示すごとく、ハウジング2の先端側面22に設けた傾斜面に接合されている。この傾斜面は、ハウジング2の先端側面22における、プラグ周方向の一部に形成されている。また、固定端部61は、プラグカバー5の内周面に接触するように、配置されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態2と同様である。
【0057】
(実施形態5)
本形態は、図17に示すごとく、プラグカバー5の基端部に、接地電極6を挿通させる挿通凹部53が形成された形態である。
【0058】
本形態において、プラグカバー5の基端部には、図17に示すごとく、プラグカバー5の基端側面の一部が先端側に後退することにより形成された挿通凹部53が形成されている。挿通凹部53は、接地電極6の突出方向に貫通するように形成されている。挿通凹部53の内側には、接地電極6の固定端部61が配置されている。
【0059】
また、ハウジング2の先端部は、その内周面の一部が、プラグ径方向の内側、かつ接地電極6の突出方向に沿って突出することにより形成された接地側突出部26を有する。接地側突出部26は、ハウジング2の先端部におけるプラグ周方向の一部に形成されている。
【0060】
接地電極6は、接地側突出部26に接合されている。また、接地電極6は、溶接部11を介して、ハウジング2の先端部に固定されている。
その他は、実施形態4と同様である。
【0061】
挿通凹部53の内側には、固定端部61が配置されている。それゆえ、ハウジング2と接地電極6との接合面積を大きくすることができる。それゆえ、接地電極6の熱がハウジング2に移動しやすい。その結果、接地電極6の過熱を抑制することができる。
【0062】
接地電極6は、接地側突出部26にも接合されている。それゆえ、ハウジング2と接地電極6との接合面積を一層大きくすることができる。その結果、接地電極6の過熱を一層抑制することができる。
【0063】
接地電極6は、溶接部11を介して、ハウジング2の先端部に固定されている。それゆえ、接地電極6の熱は、溶接部11を介して、ハウジング2に確実に移動しやすい。その結果、接地電極6の過熱を確実に抑制することができる。
その他、実施形態4と同様の作用効果を有する。
【0064】
(実施形態6)
本形態は、図18図19に示すごとく、プラグカバー5の基端部とハウジング2の先端部とが、それぞれ段状に形成された形態である。
【0065】
本形態のスパークプラグ1は、図18図19に示すごとく、カバー嵌合部52とハウジング嵌合部21とがプラグ軸方向Zに互いに対向する軸方向対向部12を、プラグ径方向の複数個所に有する。本形態のスパークプラグ1は、プラグ径方向において、2個所に軸方向対向部12が形成されている。
【0066】
図19に示すごとく、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前に、ハウジング嵌合部21とカバー嵌合部52とを互いに嵌合させた際、2個所に形成された軸方向対向部12の双方において、ハウジング2とプラグカバー5とが互いにZ方向に当接している。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
【0067】
(実施形態7)
本形態は、図20図22に示すごとく、軸方向対向部12に熱伝導部材13を介在させた形態である。
【0068】
本形態のスパークプラグ1は、図20図22に示すごとく、複数の軸方向対向部12のうち、一部の軸方向対向部12には溶接部11が形成されている。また、溶接部11が形成されていない軸方向対向部12のうち、少なくとも一部の軸方向対向部12には、プラグカバー5及びハウジング2よりも熱伝導率が高い熱伝導部材13が介在している。熱伝導部材13は、ハウジング2の先端部及びプラグカバー5の基端部と密着している。
【0069】
熱伝導部材13は、プラグ周方向の全周にわたって設けられている。熱伝導部材13は、ハウジング嵌合部21の先端面に密着していると共に、カバー嵌合部52の基端側面にも密着している。
【0070】
熱伝導部材13は、銅を主成分とすると共に、焼鈍されている。本形態において、熱伝導部材13の銅の含有量は、例えば、99質量%以上とすることができる。
【0071】
本形態において、軸方向対向部12は、プラグ径方向及びZ方向の双方において、2個所に形成されている。一方の軸方向対向部12に溶接部11が形成されており、他方の軸方向対向部12に、熱伝導部材13が介在している。溶接部11が形成されている軸方向対向部12は、熱伝導部材13が介在している軸方向対向部12に対し、プラグ径方向の外側に位置している。
【0072】
また、接地電極6は、ハウジング2の先端部の内周面に固定されている。接地電極6の突出方向から見たとき(図示略)、溶接部11の一部と固定端部61の一部とが互いに重なるように、溶接部11が形成されている。
【0073】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
本形態においては、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前に、複数の軸方向対向部12のうち、一部の軸方向対向部12に対し、熱伝導部材13を配置すると共に、図22の矢印Pに示すごとく、ハウジング2に対してプラグカバー5をプラグ軸方向Zに沿って押圧する。これにより、熱伝導部材13とハウジング2、及び熱伝導部材13とプラグカバー5とを互いに密着させる。
【0074】
また、ハウジング2にプラグカバー5を溶接するにあたっては、熱伝導部材13が配されていない軸方向対向部12に対し溶接する。
【0075】
本形態においては、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前に、副燃焼室50側の軸方向対向部12に対し、熱伝導部材13を配置する。そして、図22の矢印Pに示すごとく、ハウジング2に対しプラグカバー5を基端側に押圧する。これにより、熱伝導部材13を圧縮変形させ、熱伝導部材13が配されていない外周側の軸方向対向部12において、ハウジング2とプラグカバー5とを互いに当接させる。そして、この押圧状態にて、外周側の軸方向対向部12に対して、レーザー光Lを照射する。これにより、ハウジング2の先端部にプラグカバー5を溶接する。
その他は、実施形態6と同様である。
【0076】
本形態のスパークプラグ1は、軸方向対向部12を、プラグ径方向の複数個所に有する。複数の軸方向対向部12のうち、一部の軸方向対向部12には溶接部11が形成されている。また、溶接部11が形成されていない軸方向対向部12のうち、少なくとも一部の軸方向対向部12には、熱伝導部材13が介在している。熱伝導部材13は、ハウジング2の先端部及びプラグカバー5の基端部と密着している。それゆえ、溶接部11に加え、熱伝導部材13を介して、プラグカバー5の熱をハウジング2に伝えることができる。つまり、複数の軸方向対向部12のうち、熱伝導部材13が介在する軸方向対向部12においては、溶接部11を形成することなく、プラグカバー5の熱をハウジング2に効率的に伝えることができる。それゆえ、接地電極6、及び固定端部61付近のハウジング2の一部が、溶接時の熱によって変形することを確実に抑制しつつ、プラグカバー5の熱を、ハウジング2を介して外部に効率的に放熱させることができる。その結果、所望の長さの放電ギャップGを確実に形成することができると共に、プラグカバー5の過熱を確実に抑制することができる。
【0077】
本形態のスパークプラグ1は、プラグ径方向の2個所に軸方向対向部12が形成されている。そのため、仮に、軸方向対向部に熱伝導部材を介在させない場合、2個所の軸方向対向部において、ハウジングとプラグカバーとが互いに当接するように設計したとしても、一方の軸方向対向部に隙間が生じる場合がある。つまり、カバー嵌合部及びハウジング嵌合部の加工公差等に起因して、一方の軸方向対向部に隙間が生じる場合がある。それゆえ、溶接部が形成されていない軸方向対向部に隙間が形成されている場合、この軸方向対向部においては、プラグカバーとハウジングとの間に空気層が介在しているため、プラグカバーの熱をハウジングに伝えにくい。また、プラグカバーの放熱性を向上させるため、双方の軸方向対向部に溶接部を形成した場合、接地側領域の溶接回数が多くなる。そのため、接地電極6、及び固定端部61付近のハウジング2の一部が、溶接時の熱によって変形しやすくなるおそれがある。そこで、本形態のスパークプラグ1は、溶接部11が形成されていない軸方向対向部12に、熱伝導部材13を介在させている。それゆえ、接地電極6、及び固定端部61付近のハウジング2の一部が、溶接時の熱によって変形することを確実に抑制しつつ、プラグカバー5の過熱を確実に抑制することができる。その結果、所望の長さの放電ギャップGを確実に形成することができると共に、内燃機関の高負荷運転時においても、プレイグニッションを確実に抑制することができる。
【0078】
本形態のスパークプラグ1の製造方法においては、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前に、熱伝導部材13とハウジング2、及び熱伝導部材13とプラグカバー5とを互いに密着させる。また、ハウジング2にプラグカバー5を溶接するにあたっては、熱伝導部材13が配されていない軸方向対向部12に対し溶接する。そのため、所望の長さの放電ギャップGを確実に形成することができると共に、プラグカバー5の過熱を確実に抑制することができる。
【0079】
熱伝導部材13は、銅を主成分とすると共に、焼鈍されている。そのため、熱伝導部材13の硬度を比較的低くすることができる。それゆえ、熱伝導部材13を、プラグカバー5及びハウジング2に、一層密着させやすい。それゆえ、プラグカバー5の熱をハウジング2に、一層効率的に伝えやすい。その結果、プラグカバー5の過熱を一層抑制することができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0080】
(実施形態8)
本形態は、図23に示すごとく、実施形態6に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0081】
本形態において、接地電極6は、図23に示すごとく、ハウジング2の先端側面22に溶接によって接合されている。また、接地電極6は、立設部64と、屈曲部65と、延設部66とを有する。立設部64は、固定端部61を有すると共にハウジング2の先端側面22からプラグ軸方向Zに沿って先端側へ立設している。屈曲部65は、立設部64の先端からプラグ径方向の内側へ向かって屈曲している。延設部66は、屈曲部65からプラグ中心軸Cへ向かって延設されている。延設部66と中心電極4の先端部とがZ方向に互いに対向することにより、放電ギャップGが形成されている。
【0082】
また、プラグカバー5は、その内周面の一部がプラグ径方向の外側に後退することにより形成された内側凹部55を有する。内側凹部55は、プラグカバー5におけるプラグ周方向の一部に形成されている。また、内側凹部55は、基端側に開口するように形成されている。接地電極6の立設部64の少なくとも一部は、内側凹部55の内側に配置されている。
その他は、実施形態6と同様である。
【0083】
立設部64の少なくとも一部は、内側凹部55の内側に配置されている。それゆえ、ハウジング2と接地電極6との接合面積を大きくしやすい。つまり、内側凹部55の内側に立設部64が配置されている分、先端側面22と接地電極6との接合面積を広くすることができる。それゆえ、接地電極6の熱がハウジング2に移動しやすい。その結果、接地電極6の過熱を抑制することができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0084】
(実施形態9)
本形態は、図24図25に示すごとく、実施形態6に対し、ハウジング2の先端部の形状を変更した形態である。
【0085】
本形態においては、図24図25に示すごとく、ハウジング2の先端部におけるハウジング嵌合部21の基端側の部分の厚みと、プラグカバー5の基端部におけるカバー嵌合部52の先端側の部分の厚みとが、互いに同等の厚みとなっている。また、ハウジング2の先端部の内周面とプラグカバー5の基端部の内周面とが面一となっている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態6と同様である。
【0086】
(実施形態10)
本形態は、図26図27に示すごとく、溶接部11が形成された軸方向対向部12が、他方の軸方向対向部12に対し先端側に位置する形態である。つまり、外周側の軸方向対向部12は、副燃焼室50側の軸方向対向部12に対し先端側に位置する。
その他の構成及び作用効果は、実施形態9と同様である。
【0087】
(実施形態11)
本形態は、図28図29に示すごとく、実施形態9に対し、プラグカバー5の基端部及びハウジング2の先端部の形状を変更した形態である。
【0088】
ハウジング2の先端部は、図28図29に示すごとく、ハウジング2の先端側面22の一部が基端側へ後退することにより形成された溝部27を有する。溝部27は、プラグ径方向において、ハウジング2の先端部の内周面よりも外側であって、ハウジング2の先端部の外周面よりも内側に形成されている。溝部27は、プラグ周方向の全周にわたって形成されている。
【0089】
溝部27には、カバー嵌合部52が嵌合されている。また、軸方向対向部12は、プラグ径方向において、3個所に形成されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態9と同様である。
【0090】
(実施形態12)
本形態は、図30図31に示すごとく、実施形態9に対し、プラグカバー5の基端部及びハウジング2の先端部の形状を変更した形態である。
【0091】
図31に示すごとく、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前において、ハウジング2の先端部は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の幅が小さくなるように形成されたハウジング傾斜部28を有する。ハウジング傾斜部28は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の内側へ向かうように傾斜したハウジング傾斜面281を有する。ハウジング傾斜部28及びハウジング傾斜面281は、それぞれプラグ周方向の全周にわたって形成されている。
【0092】
また、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前において、プラグカバー5の基端部は、基端側へ向かうほどプラグ径方向の幅が小さくなるように形成されたカバー傾斜部56を有する。カバー傾斜部56は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の内側へ向かうように傾斜したカバー傾斜面561を有する。カバー傾斜部56及びカバー傾斜面561は、それぞれプラグ周方向の全周にわたって形成されている。
【0093】
本形態のスパークプラグ1の製造方法において、ハウジング2にプラグカバー5を溶接するにあたっては、ハウジング傾斜面281とカバー傾斜面561とを互いに当接させた状態にて溶接する。また、本形態においては、ハウジング傾斜面281とカバー傾斜面561とを互いに面接触させた状態にて、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する。
その他の構成及び作用効果は、実施形態9と同様である。
【0094】
(実施形態13)
本形態は、図32図33に示すごとく、実施形態9に対し、プラグカバー5の基端部及びハウジング2の先端部の形状を変更した形態である。
【0095】
本形態において、ハウジング2は、図32図33に示すごとく、ハウジング嵌合部21を有さない。図33に示すごとく、ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前において、ハウジング2の先端側面22は、Z方向に直交するように形成されている。
【0096】
また、プラグカバー5は、カバー嵌合部52を有さない。ハウジング2にプラグカバー5を溶接する前において、プラグカバー5の基端側面は、Z方向に直交するように形成されている。
【0097】
ハウジング2にプラグカバー5を溶接するにあたっては、図33に示すごとく、プラグカバー5の基端側面とハウジング2の先端側面22とを、Z方向に互いに当接させた状態にて、外周側からレーザー光を照射する。
その他の構成及び作用効果は、実施形態9と同様である。
【0098】
(実施形態14)
本形態は、図34図35に示すごとく、実施形態1に対し、ハウジング2の先端部の形状を変更した形態である。
【0099】
図34図35に示すごとく、ハウジング2の先端側面22は、プラグ周方向の全周にわたって、連続的に形成されている。接地電極6は先端側面22に接合されている。また、接地電極6の固定端部61は、プラグカバー5の内周面に接触するように、配置されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
【0100】
上記実施形態1~14のスパークプラグ1において、溶接開始部111と溶接終了部112と溶接重なり部113とは、それぞれ、Z方向から見たときの固定端部61とプラグ中心軸Cとの並び方向における、プラグ中心軸Cよりも固定端部61側の領域に形成されている。ただし、溶接開始部と溶接終了部と溶接重なり部とは、それぞれ、Z方向から見たときの固定端部とプラグ中心軸との並び方向において、プラグ中心軸を挟んで、固定端部とは反対側の領域に形成することもできる。
【0101】
上記実施形態1~14のスパークプラグ1において、接地電極6はハウジング2の先端部に固定されている。ここで、「接地電極6はハウジング2の先端部に固定されている」とは、例えば、接地電極とハウジングとが一体的に形成された場合も含むものとする。
【0102】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…スパークプラグ、11…溶接部、111…溶接開始部、112…溶接終了部、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、6…接地電極、61…固定端部、611、612…端部、C…プラグ中心軸、G…放電ギャップ、L1,L2…直線、R…接地側領域、Z…プラグ軸方向
図1
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