(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183265
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H01T13/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096792
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 文明
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】西尾 典晃
【テーマコード(参考)】
5G059
【Fターム(参考)】
5G059AA01
5G059DD11
5G059EE04
5G059EE11
5G059KK23
5G059KK30
(57)【要約】
【課題】内燃機関の圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを提供すること。
【解決手段】スパークプラグ1において、プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。接地電極6の基端側面62に形成された接地凸部65又は接地凹部は、その一部が中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。また、基端側面62に形成された接地凸部65又は接地凹部は、少なくとも、基端側面62における放電ギャップGよりも固定端部61側の位置から、放電ギャップGまでにわたって連続的に形成されている。接地電極6の突出端面631又は周方向側面において、接地凸部65又は接地凹部は、基端側面62から離れるほど先端側へ向かうように形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に露出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
上記接地電極は、上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記接地電極における、基端側面(62)と、突出端面(631)又は周方向側面(64)とには、それぞれ接地凸部(65)又は接地凹部(66)が形成されており、
上記基端側面に形成された上記接地凸部又は上記接地凹部は、その一部が上記中心電極との間に上記放電ギャップを形成すると共に、少なくとも、上記基端側面における上記放電ギャップよりも上記固定端部側の位置から、上記放電ギャップまでにわたって連続的に形成されており、
上記突出端面又は上記周方向側面において、上記接地凸部又は上記接地凹部は、上記基端側面から離れるほど先端側へ向かうように形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
上記基端側面と、上記突出端面又は上記周方向側面とには、それぞれ上記接地凸部が形成されている、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
上記基端側面と上記突出端面とに、それぞれ上記接地凸部が形成されている、請求項2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
上記接地凸部は、上記基端側面から上記突出端面までにわたって連続的に形成されている、請求項3に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
上記基端側面に形成された上記接地凸部と、上記突出端面に形成された上記接地凸部とは、滑らかな曲線状に形成された凸部接続部(651)によって互いに接続されている、請求項4に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項6】
上記接地電極は、接地母材(60)と、該接地母材に固定された接地チップ(67)とを有し、上記接地凸部は上記接地チップからなる、請求項2~5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項7】
上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(683)から上記副燃焼室内に突出する補助接地電極(68)を有し、該補助接地電極から上記中心電極までの最短距離(D2)は、上記接地電極から上記中心電極までの最短距離(D1)よりも長い、請求項1~5のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えたスパークプラグが知られている。当該スパークプラグにおいて、副燃焼室を覆うプラグカバーには、複数の噴孔が形成されている。これにより、噴孔を介して副燃焼室から主燃焼室に火炎を噴出させ、主燃焼室の混合気を燃焼させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグは、内燃機関の圧縮行程及び膨張行程の両行程において、副燃焼室内に形成された気流によって、放電ギャップに生じた放電を引き伸ばして着火性を向上させることについては考慮されていない。そのため、着火性向上の観点から、改善の余地があるといえる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、内燃機関の圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に露出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
上記接地電極は、上記ハウジング又は上記プラグカバーに固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記接地電極における、基端側面(62)と、突出端面(631)又は周方向側面(64)とには、それぞれ接地凸部(65)又は接地凹部(66)が形成されており、
上記基端側面に形成された上記接地凸部又は上記接地凹部は、その一部が上記中心電極との間に上記放電ギャップを形成すると共に、少なくとも、上記基端側面における上記放電ギャップよりも上記固定端部側の位置から、上記放電ギャップまでにわたって連続的に形成されており、
上記突出端面又は上記周方向側面において、上記接地凸部又は上記接地凹部は、上記基端側面から離れるほど先端側へ向かうように形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【発明の効果】
【0007】
上記スパークプラグにおいて、基端側面に形成された接地凸部又は接地凹部は、少なくとも、基端側面における放電ギャップよりも固定端部側の位置から、放電ギャップまでにわたって連続的に形成されている。また、突出端面又は周方向側面において、接地凸部又は接地凹部は、基端側面から離れるほど先端側へ向かうように形成されている。それゆえ、圧縮行程において、噴孔を介して副燃焼室に流入した気流、及び膨張行程において、噴孔を介して副燃焼室から流出する気流のいずれの気流によっても、放電ギャップに生じた放電を伸長させやすい。その結果、内燃機関の圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、着火性を向上させることができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、内燃機関の圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、
図2のI-I線矢視断面図。
【
図4】実施形態1における、スパークプラグが設置された内燃機関の断面図。
【
図5】実施形態1における、圧縮行程時の、放電が伸長する前のスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図6】実施形態1における、圧縮行程時の、放電が伸長したときのスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図7】実施形態1における、膨張行程時の、放電が伸長したときのスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図8】実施形態2における、接地電極を突出側から見た図であって、
図1のIII矢視相当図。
【
図9】実施形態3における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図10】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、
図11のX-X線矢視断面図。
【
図12】実施形態4における、膨張行程時の、放電が伸長する前のスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図13】実施形態4における、膨張行程時の、放電が伸長したときのスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図14】実施形態5における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図15】実施形態6における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図16】実施形態6における、接地電極の、接地凸部周辺の斜視図。
【
図17】実施形態7における、接地電極の、接地凸部周辺の斜視図。
【
図18】実施形態8における、接地凸部周辺のプラグ軸方向に沿った断面図。
【
図19】実施形態9における、接地電極の、接地凸部周辺の斜視図。
【
図20】実施形態10における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図22】実施形態11における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。
【
図23】実施形態12における、スパークプラグの先端部の、プラグ軸方向に直交する断面図。
【
図25】実施形態13における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、
図26のXXV-XXV線矢視断面図。
【
図27】実施形態13における、圧縮行程時の、放電が伸長する前のスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図28】実施形態13における、圧縮行程時の、放電が伸長したときのスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図29】実施形態13における、圧縮行程時の、放電の接地電極側の起点が補助接地電極に飛び移ったときのスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図30】実施形態13における、圧縮行程時の、放電が基端側へ向かって一層伸長したときの、スパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図31】実施形態14における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、
図32のXXXI-XXXI線矢視断面図。
【
図33】実施形態14における、圧縮行程時の、放電が伸長する前のスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図34】実施形態14における、圧縮行程時の、放電が伸長したときのスパークプラグの先端部付近の断面図であって、
図35のXXXIV-XXXIV線矢視断面図。
【
図36】実施形態14における、圧縮行程時の、放電が基端側かつプラグ周方向の一方側へ向かって一層伸長したときの、スパークプラグの先端部の断面図。
【
図37】実施形態15における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、
図38のXXXVII-XXXVII線矢視断面図。
【
図38】
図37のXXXVIII-XXXVIII線矢視断面図。
【
図39】実施形態15における、接地電極の、接地凹部周辺の斜視図。
【
図41】実施形態16における、接地電極の、接地凹部周辺の斜視図。
【
図42】実施形態16における、接地電極を突出側から見た図であって、
図37のXL矢視相当図。
【
図43】実施形態17における、接地電極の、接地凹部周辺の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、
図1~
図7を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1、
図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に露出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。
【0011】
接地電極6は、ハウジング2又はプラグカバー5に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。接地電極6における、基端側面62と、突出端面631又は周方向側面64とには、それぞれ接地凸部65が形成されている。
【0012】
基端側面62に形成された接地凸部65は、その一部が中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。また、基端側面62に形成された接地凸部65は、少なくとも、基端側面62における放電ギャップGよりも固定端部61側の位置から、放電ギャップGまでにわたって連続的に形成されている。
【0013】
また、突出端面631又は周方向側面64において、接地凸部65は、基端側面62から離れるほど先端側へ向かうように形成されている。
【0014】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。
図4に示すごとく、ハウジング2のネジ部21を、シリンダヘッド71のプラグホール711の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。
【0015】
内燃機関10は、シリンダ70内を往復運動するピストン74を備える。主燃焼室101は、ピストン74の往復運動によって、容積変化する。内燃機関10には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されている。吸気ポート721には、吸気弁72が備えられ、排気ポート731には、排気弁73が備えられている。
【0016】
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室101に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室101に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸PCは、スパークプラグ1の中心軸PCを意味するものとする。また、プラグ径方向とは、プラグ中心軸PCに直交する平面上において、プラグ中心軸PCを中心とする円の半径方向を意味する。また、プラグ周方向は、プラグ中心軸PCを中心とする円周に沿った方向である。また、プラグ中心軸PCは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。
【0017】
スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室101と区画している。プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に接合されている。
【0018】
図1、
図2に示すごとく、プラグカバー5には、複数の噴孔51が形成されている。それぞれの噴孔51は、
図1に示すごとく、放電ギャップGよりも先端側に形成されている。
【0019】
本形態において、複数の噴孔51のうち一部の噴孔51は、接地電極6の突出側に形成されると共に、
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、接地電極6の固定端部61側を向くように開口した、突出側噴孔512である。Z方向から見たとき、突出側噴孔512の噴孔軸512Cは、接地電極6の突出方向に沿っている。また、突出側噴孔512は、
図1に示すごとく、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。
【0020】
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、接地電極6の突出方向において、突出側噴孔512と接地電極6の固定端部61とは、突出端部63を挟んで、互いに反対側に位置している。また、Z方向から見たとき、接地電極6の突出方向において、突出側噴孔512と放電ギャップGとは、プラグ中心軸PCを挟んで、互いに反対側に位置している。また、突出側噴孔512は、Z方向から見たとき、噴孔軸512Cが、基端側面62に形成された接地凸部65の長手方向に沿うように開口している。
【0021】
また、プラグカバー5に形成された複数の噴孔51のうち一部の噴孔51は、
図1、
図2に示すごとく、Z方向に沿って開口した軸方向噴孔511である。本形態において、軸方向噴孔511は、プラグ中心軸PCに沿って開口している。軸方向噴孔511は、
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、軸方向噴孔511の少なくとも一部が、接地電極6と重ならないように形成されている。また、本形態においては、Z方向から見たとき、軸方向噴孔511の一部と接地電極6の突出端部63の一部とが、互いに重なっている。また、Z方向から見たとき、軸方向噴孔511の一部は、接地電極6の突出方向において、プラグ中心軸PCを挟んで、接地電極6の固定端部61とは反対側に位置している。また、Z方向から見たとき、軸方向噴孔511の一部は、接地電極6の突出方向において、突出端部63を挟んで、固定端部61とは反対側に位置している。
【0022】
また、接地電極6は、ハウジング2の先端部に接合されている。接地電極6は、屈曲することなく、固定端部61から副燃焼室50内に突出している。接地電極6は、
図1に示すごとく、接地電極6の突出側へ向かうほど先端側へ向かうように、Z方向に対して傾斜している。また、接地電極6の基端側面62も、接地電極6の突出側へ向かうほど先端側へ向かうように、Z方向に対して傾斜している。
【0023】
接地電極6は、
図1~
図3に示すごとく、略四角柱形状をなしている。接地電極6は、4つの平坦な側面を備えており、そのうちの一つが基端側面62となっている。また、4つの平坦な側面のうち2つが、プラグ周方向を向く周方向側面64となっている。周方向側面64は、Z方向に沿うように形成されている。
【0024】
本形態においては、基端側面62と突出端面631とに、それぞれ接地凸部65が形成されている。接地凸部65には、角部654が形成されている。
【0025】
また、
図3に示すごとく、接地凸部65の幅W1は、接地電極6の幅W2よりも小さい。幅W1は、後述する中心電極4の中心チップ41の外径よりも小さい。
【0026】
図1、
図2に示すごとく、基端側面62に形成された接地凸部65である基端側凸部652は、基端側面62から基端側へ突出するように設けられている。基端側凸部652は、接地電極6の突出方向に長尺な形状を有する。つまり、基端側凸部652は、その長手方向が接地電極6の突出方向に沿うように設けられている。また、基端側凸部652の角部654は、基端側凸部652の長手方向に沿って形成されている。
【0027】
基端側凸部652は、固定端部61に近づくほど基端側へ向かうように形成されている。また、基端側凸部652の角部654も、固定端部61に近づくほど基端側へ向かうように形成されている。
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、基端側凸部652の角部654の一部と、中心電極4の先端部の一部とは、互いに重なっている。
【0028】
基端側凸部652の固定端部61側の端部は、
図1に示すごとく、中心電極4よりもプラグ径方向の外側に位置している。基端側凸部652の固定端部61側の端部は、絶縁碍子3とZ方向に対向している。
【0029】
また、
図1、
図3に示すごとく、突出端面631に形成された接地凸部65である突出側凸部653は、突出端面631から、接地電極6の突出側へ突出している。突出側凸部653は、突出端面631の先端部から基端部までにわたって連続的に形成されている。突出側凸部653の角部654は、基端側面62から離れるほど先端側へ向かうように形成されている。
【0030】
突出側凸部653は、
図1に示すごとく、先端側へ向かうほど軸方向噴孔511に近づくように形成されている。突出側凸部653から軸方向噴孔511までの最短距離は、軸方向噴孔511の内径よりも小さい。
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、突出側凸部653の少なくとも一部と軸方向噴孔511とは、互いに重なっている。本形態においては、Z方向から見たとき、突出側凸部653の全体と軸方向噴孔511とが、互いに重なっている。
【0031】
また、接地凸部65は、
図1に示すごとく、基端側面62から突出端面631までにわたって連続的に形成されている。つまり、基端側凸部652と突出側凸部653とは、一体的に形成されている。また、角部654は、基端側凸部652の固定端部61側の端部から、突出側凸部653の先端部までにわたって連続的に形成されている。
【0032】
また、接地電極6は、接地母材60と、接地母材60に固定された接地チップ67とを有する。接地凸部65は接地チップ67からなる。接地チップ67は、例えば、接地母材60に溶接によって固定することができる。接地母材60は、例えば、ニッケル基合金等からなる。
【0033】
また、中心電極4の先端部には、中心チップ41が接合されている。そして、中心チップ41と、接地チップ67からなる基端側凸部652との間に、放電ギャップGが形成されている。中心チップ41及び接地チップ67は、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金からなるものとすることができる。
【0034】
本形態において、放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。放電ギャップGは、例えば、中心チップ41に最も近い基端側凸部652の一部と、基端側凸部652に最も近い中心チップ41の一部との間の領域である。
【0035】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記スパークプラグ1において、基端側面62に形成された接地凸部65は、少なくとも、基端側面62における放電ギャップGよりも固定端部61側の位置から、放電ギャップGまでにわたって連続的に形成されている。また、突出端面631又は周方向側面64において、接地凸部65は、基端側面62から離れるほど先端側へ向かうように形成されている。それゆえ、圧縮行程において、噴孔51を介して副燃焼室50に流入した気流、及び膨張行程において、噴孔51を介して副燃焼室50から流出する気流のいずれの気流によっても、放電ギャップGに生じた放電を伸長させやすい。その結果、内燃機関10の圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、着火性を向上させることができる。つまり、本形態のスパークプラグ1は、点火タイミングにかかわらず、着火性を向上させることができる。
【0036】
内燃機関10の圧縮行程においては、ピストン74が基端側に移動することにより、噴孔51を介して主燃焼室101から副燃焼室50に混合気が流入する。これにより、
図5に示すごとく、副燃焼室50に基端側へと向かう気流A1が形成される。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電Sの接地電極6側の起点S1は、
図6に示すごとく、放電ギャップGに流入した気流A1によって、基端側凸部652を伝って、固定端部61側へと向かいやすい。これにより、放電Sの中心電極4側の起点と、接地電極6側の起点S1との間の距離が大きくなり、放電Sが伸長しやすい。さらに、放電Sは、起点S1が基端側凸部652の固定端部61側の端部に留まった状態にて、気流A1よって、基端側へ向かって大きく伸長しやすい。そのため、圧縮行程において、着火性を向上させることができる。その結果、部分負荷運転時等の着火性を向上させることができる。また、放電Sの起点間の距離が大きくなることにより、放電Sが伸長した際、放電Sの一部同士が重なることによる短絡を抑制することができる。そのため、放電Sを確実に伸長させることができる。
【0037】
また、膨張行程においては、ピストン74が先端側に移動することにより、主燃焼室101が副燃焼室50に対して陰圧となる。そのため、膨張行程においては、噴孔51を介して副燃焼室50から混合気が流出する。これにより、
図7に示すごとく、副燃焼室50に先端側へと向かう気流A2が形成される。それゆえ、放電Sの起点S1は、放電ギャップGに形成された気流A2によって、突出側凸部653を伝って、先端側へと向かいやすい。これにより、放電Sの中心電極4側の起点と、接地電極6側の起点S1との間の距離が大きくなり、放電Sが伸長しやすい。さらに、放電Sは、気流A2よって、先端側へ向かって大きく伸長しやすい。それゆえ、排ガス浄化フィルタの触媒温度を高くする等の目的のため、内燃機関10の膨張行程において、放電Sによる点火を行う場合であっても、着火性を向上させることができる。これにより、排ガス浄化フィルタの触媒温度を、短期間に上昇させることができる。その結果、燃費向上、エミッション低減が期待できる。
【0038】
本形態においては、基端側面62と突出端面631とに、それぞれ接地凸部65が形成されている。それゆえ、圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、気流A1、A2によって、放電Sを一層伸長させることができる。その結果、圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、着火性を一層向上させることができる。
【0039】
接地凸部65は、基端側面62から突出端面631までにわたって連続的に形成されている。それゆえ、放電中に、副燃焼室50内の気流の向きが変化した場合であっても、放電の起点S1は、接地凸部65上をスムーズに移動しやすい。それゆえ、点火タイミングにかかわらず、放電を確実に伸長させることができる。その結果、着火性を確実に向上させることができる。
【0040】
接地電極6は、接地母材60と、接地母材60に固定された接地チップ67とを有する。また、接地凸部65は接地チップ67からなる。それゆえ、接地凸部65の消耗を確実に抑制することができる。その結果、圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても着火性を向上させることができるスパークプラグ1の、長寿命化を図ることができる。
【0041】
基端側凸部652は、固定端部61に近づくほど基端側へ向かうように形成されている。それゆえ、圧縮行程において、放電Sの起点S1は、気流A1によって基端側へと向かいやすい。それゆえ、圧縮行程において、放電Sは基端側へ向かって一層伸長しやすい。その結果、圧縮行程における着火性を一層向上させることができる。
【0042】
接地凸部65は角部654を有する。それゆえ、放電Sの起点S1は、角部654を伝って、接地凸部65上を移動しやすい。それゆえ、放電Sの起点S1は、気流A1、A2によって、接地凸部65上を一層移動しやすい。その結果、放電Sを一層伸長させることができる。
【0043】
プラグカバー5には、突出側噴孔512が形成されている。それゆえ、圧縮行程において、突出側噴孔512を介して副燃焼室50に流入した気流A1は、基端側かつ接地電極6の固定端部61側へ向かいやすい。それゆえ、放電Sの起点S1は、気流A1によって、基端側凸部652を伝って、固定端部61側へと一層向かいやすい。それゆえ、放電Sは、基端側へ向かって一層伸長しやすい。その結果、圧縮行程における着火性を一層向上させることができる。
【0044】
また、プラグカバー5には、軸方向噴孔511が形成されている。それゆえ、膨張行程において、副燃焼室50内には、先端側へと向かう強い気流A2が一層形成されやすい。そのため、放電Sの起点S1は、突出側凸部653を伝って、先端側へと一層向かいやすい。それゆえ、放電Sは、先端側へ向かって一層伸長しやすい。その結果、膨張行程における着火性を一層向上させることができる。
【0045】
以上のごとく、本形態によれば、内燃機関の圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ1を提供することができる。
【0046】
上記実施形態1において、接地電極6は、略四角柱形状をなしている。ただし、接地電極は、例えば、略円柱形状とすることもできる。
【0047】
(実施形態2)
本形態は、
図8に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0048】
図8に示すごとく、接地電極6の幅方向の両端部は、それぞれ、幅方向の外側へ向かうほど、厚みが小さくなるように形成されている。接地電極6は、突出側から見たとき、略八角形状となっている。また、接地電極6の延設方向に直交する断面(図示略)の外径輪郭は、略八角形状となっている。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
本形態においても、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0049】
(実施形態3)
本形態は、
図9に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0050】
接地電極6の突出端部63は、
図9に示すごとく、接地電極6の突出側に向かうほど、接地電極6の基端側面62に直交する方向の厚みが小さくなるように形成されている。
【0051】
また、接地電極6の突出端面631は、Z方向に沿うように形成されている。また、突出側凸部653の長手方向は、Z方向に沿っている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0052】
突出側凸部653の長手方向は、Z方向に沿っている。それゆえ、膨張行程において、放電の接地電極6側の起点は、気流によって、突出側凸部653を伝って先端側へと一層移動しやすい。その結果、膨張行程において、放電を一層伸長させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0053】
(実施形態4)
本形態は、
図10~
図13に示すごとく、実施形態3に対し、軸方向噴孔511の形成位置を変更した形態である。
【0054】
図10、
図11に示すごとく、軸方向噴孔511の噴孔軸511Cは、プラグ中心軸PCから偏心している。軸方向噴孔511は、噴孔軸511Cが、接地電極6を通過しないように、形成されている。また、
図11に示すごとく、Z方向から見たとき、軸方向噴孔511の噴孔軸511Cは、プラグ中心軸PCよりも、接地電極6の突出側に位置している。また、Z方向から見たとき、接地電極6の突出方向において、噴孔軸511Cと固定端部61とは、プラグ中心軸PCを挟んで、互いに反対側に位置している。
その他は、実施形態3と同様である。
【0055】
軸方向噴孔511は、噴孔軸511Cが、接地電極6を通過しないように、形成されている。また、Z方向から見たとき、軸方向噴孔511の噴孔軸511Cは、プラグ中心軸PCよりも、接地電極6の突出側に位置している。それゆえ、膨張行程において、軸方向噴孔511を介して、副燃焼室50から流出する気流は、接地電極6によって阻害されにくい。それゆえ、放電ギャップGに気流が形成されやすい。それゆえ、
図12に示すごとく、膨張行程において、放電ギャップGに生じた放電Sの起点S1は、
図13に示すごとく、気流A2によって、突出側凸部653を伝って、軸方向噴孔511へと向かいやすい。その結果、膨張行程において、放電Sを一層伸長させることができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0056】
(実施形態5)
本形態は、
図14に示すごとく、接地電極6の突出端部63の一部が、軸方向噴孔511の内側に配置された形態である。
【0057】
本形態において、接地電極6は、
図14に示すごとく、軸方向噴孔511へ向かって突出している。突出側凸部653の先端部は、軸方向噴孔511の内側に配置されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0058】
突出側凸部653の先端部は、軸方向噴孔511の内側に配置されている。それゆえ、膨張行程において、放電は、軸方向噴孔511へと向かう気流によって、一層伸長しやすい。その結果、膨張行程における着火性を一層向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0059】
(実施形態6)
本形態は、
図15、
図16に示すごとく、実施形態1に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0060】
本形態において、接地電極6は、
図15に示すごとく、立設部691と、屈曲部692と、接地延設部693とを有する。立設部691は、固定端部61を有すると共にハウジング2の先端側面からプラグ軸方向Zに沿って先端側へ立設している。屈曲部692は、立設部691の先端からプラグ径方向の内側へ向かって屈曲している。接地延設部693は、屈曲部692からプラグ中心軸PCへ向かって延設されている。また、接地凸部65は、接地延設部693に設けられている。
【0061】
接地延設部693は、プラグ径方向に沿って設けられている。接地延設部693と中心電極4の先端部とがZ方向に互いに対向することにより、放電ギャップGが形成されている。本形態において、放電ギャップGは、例えば、中心電極4の先端面42をZ方向に投影した領域であって、中心電極4の先端面42と接地電極6の基端側面62との間の領域である。
【0062】
また、プラグカバー5は、その内周面の一部がプラグ径方向の外側へ後退することにより形成された内側凹部52を有する。内側凹部52は、プラグカバー5におけるプラグ周方向の一部に形成されている。内側凹部52は、基端側に開口するように形成されている。接地電極6の立設部691の少なくとも一部は、内側凹部52の内側に配置されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態1と同様である。
【0063】
(実施形態7)
本形態は、
図17に示すごとく、実施形態6に対し、接地凸部65の形状を変更した形態である。
【0064】
図17に示すごとく、基端側面62に形成された接地凸部65と、突出端面631に形成された接地凸部65とは、滑らかな曲線状に形成された凸部接続部651によって互いに接続されている。つまり、基端側凸部652と突出側凸部653とは、凸部接続部651を介して、互いに繋がっている。
【0065】
凸部接続部651は、凸部接続部651と接地母材60との互いの接合部側とは反対側に凸となるように形成されている。また、凸部接続部651の角部654は、滑らかな曲線状に形成されている。
その他は、実施形態6と同様である。
【0066】
基端側面62に形成された接地凸部65と、突出端面631に形成された接地凸部65とは、滑らかな曲線状に形成された凸部接続部651によって互いに接続されている。それゆえ、放電中に、副燃焼室50内の気流の向きが変化した場合であっても、放電の接地電極6側の起点は、接地凸部65上を一層スムーズに移動しやすい。その結果、点火タイミングにかかわらず、放電を一層確実に伸長させることができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0067】
(実施形態8)
本形態は、
図18に示すごとく、実施形態7に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0068】
図18に示すごとく、接地電極6の突出端面631と突出側凸部653とは、それぞれ、基端側へ向かうほど、接地延設部693の突出側へ向かうように、Z方向に対して傾斜している。また、突出端面631と突出側凸部653とは、それぞれ、先端側へ向かうほど、プラグ中心軸PCに近づくように形成されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態7と同様である。
【0069】
(実施形態9)
本形態は、
図19に示すごとく、実施形態6に対し、接地凸部65の形状を変更した形態である。
【0070】
本形態において、突出側凸部653は、
図19に示すごとく、Z方向における、突出端面631の先端の位置から、先端側へ延設された先端側延設部655を有する。先端側延設部655は、接地母材60よりも先端側に位置している。
その他は、実施形態6と同様である。
【0071】
突出側凸部653は先端側延設部655を有する。それゆえ、膨張行程において、放電の接地電極6側の起点は、先端側延設部655を伝って先端側へ移動しやすい。その結果、膨張行程において、放電を一層伸長させることができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0072】
(実施形態10)
本形態は、
図20、
図21に示すごとく、先端側延設部655の一部が、軸方向噴孔511の内側に配置された形態である。なお、
図21においては、プラグカバー5の図示を省略している。
その他は、実施形態9と同様である。
【0073】
先端側延設部655の一部は、軸方向噴孔511の内側に配置されている。それゆえ、膨張行程において、放電の接地電極6側の起点は、軸方向噴孔511へと向かう気流によって、先端側延設部655を伝って、軸方向噴孔511側に移動しやすい。その結果、放電を、より一層伸長させることができる。
その他、実施形態9と同様の作用効果を有する。
【0074】
(実施形態11)
本形態は、
図22に示すごとく、実施形態6に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0075】
本形態において、接地電極6の突出端部63は、
図22に示すごとく、突出側噴孔512に近づくほど、Z方向の厚みが小さくなるように、形成されている。突出側凸部653は、先端側へ向かうほど、プラグ径方向の外側へ向かうように形成されている。また、突出側凸部653は、先端側へ向かうほど、突出側噴孔512に近づくように形成されている。Z方向から見たとき(図示略)、突出側凸部653は、接地電極6の突出方向において、プラグ中心軸PCと突出側噴孔512との間に配置されている。
【0076】
また、本形態において、プラグカバー5には、軸方向噴孔511が形成されていない。
その他は、実施形態6と同様である。
【0077】
突出側凸部653は、先端側へ向かうほど、突出側噴孔512に近づくように形成されている。それゆえ、膨張行程において、放電の接地電極6側の起点は、突出側噴孔512へと向かう気流によって、突出側凸部653を伝って、先端側かつ突出側噴孔512側へ移動しやすい。それゆえ、放電が突出側噴孔512に向かって伸長しやすい。その結果、膨張行程における着火性を向上させることができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0078】
(実施形態12)
本形態は、
図23、
図24に示すごとく、接地凸部65が周方向側面64に形成された形態である。
【0079】
本形態において、基端側凸部652は、
図23に示すごとく、Z方向から見たとき、その長手方向が、接地電極6の突出方向に対し傾斜するように設けられている。
【0080】
また、
図24に示すごとく、2つの周方向側面64のうち、一方の周方向側面64には、接地凸部65が形成されている。つまり、基端側面62と周方向側面64とには、それぞれ接地凸部65が形成されている。周方向側面64に形成された接地凸部65である側面凸部656は、その長手方向がZ方向に沿うように形成されている。また、接地凸部65は、基端側面62から周方向側面64までにわたって連続的に形成されている。つまり、側面凸部656と基端側凸部652とは、一体的に形成されている。
【0081】
また、軸方向噴孔511は、
図23に示すごとく、Z方向から見たとき、噴孔軸511Cが、プラグ中心軸PCに対し、側面凸部656側に偏心するように、形成されている。
その他は、実施形態1と同様である。
【0082】
基端側面62と周方向側面64とには、それぞれ接地凸部65が形成されている。それゆえ、圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、気流によって、放電を一層伸長させることができる。その結果、圧縮行程及び膨張行程のいずれの行程においても、着火性を一層向上させることができる。
【0083】
周方向側面64には、側面凸部656が形成されている。それゆえ、膨張行程において、放電の接地電極6側の起点は、気流によって、側面凸部656を伝って、先端側へと移動しやすい。それゆえ、放電が伸長しやすい。その結果、膨張行程における着火性を向上させることができる。
【0084】
また、軸方向噴孔511は、Z方向から見たとき、噴孔軸511Cが、プラグ中心軸PCに対し、側面凸部656側に偏心するように、形成されている。それゆえ、膨張行程において、放電の接地電極6側の起点は、軸方向噴孔511へと向かう気流によって、側面凸部656を伝って、軸方向噴孔511側へと移動しやすい。その結果、放電が一層伸長しやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0085】
(実施形態13)
本形態は、
図25~
図30に示すごとく、補助接地電極68を有する形態である。
【0086】
スパークプラグ1は、
図25~
図30に示すごとく、ハウジング2又はプラグカバー5に固定された固定端部683から副燃焼室50内に突出する補助接地電極68を有する。
図25に示すごとく、補助接地電極68から中心電極4までの最短距離D2は、接地電極6から中心電極4までの最短距離D1よりも長い。また、最短距離D1は、放電ギャップGの距離でもある。
【0087】
本形態において、補助接地電極68は、ハウジング2の先端部に固定されている。
図26に示すごとく、補助接地電極68の固定端部683と、接地電極6の固定端部61とは、プラグ周方向において、互いに同等の位置に配置されている。
【0088】
図26に示すごとく、Z方向から見たとき、補助接地電極68は、接地電極6の突出方向に沿って、突出している。補助接地電極68は、プラグ径方向に沿って突出している。Z方向から見たとき、補助接地電極68の突出側の端部681は、固定端部61と放電ギャップGとの間に配置されている。また、Z方向から見たとき、端部681は、固定端部61と基端側凸部652との間に配置されている。端部681は、基端側凸部652よりも、プラグ径方向の外側に位置している。
【0089】
補助接地電極68は、接地電極6よりも基端側に設けられている。Z方向から見たとき、補助接地電極68と接地電極6とは、互いに重なるように、設けられている。本形態においては、Z方向から見たとき、補助接地電極68の全体が接地電極6と重なっている。
【0090】
補助接地電極68は、少なくとも突出側の端部681に、角部682を有する。本形態において、角部682は、固定端部683から突出側の端部681までにわたって連続的に形成されている。
【0091】
図25に示すごとく、補助接地電極68の突出側の端部681から接地電極6までの最短距離D3は、最短距離D1以下である。
その他は、実施形態6と同様である。
【0092】
スパークプラグ1は補助接地電極68を有する。それゆえ、放電Sは一層伸長しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
【0093】
具体的には、
図27に示すごとく、圧縮行程において、放電ギャップGに生じた放電Sは、
図28に示すように、気流A1によって、固定端部61側へと伸長しやすい。また、放電Sが固定端部61側へ伸長することにより、
図29に示すように、放電Sの起点S1が、接地電極6から補助接地電極68へと飛び移りやすい。つまり、放電Sが固定端部61側へ伸長した際、中心電極4と接地電極6との間で放電Sを維持するよりも低い電圧で、中心電極4と補助接地電極68との間に放電Sを形成しやすいため、起点S1が接地電極6から補助接地電極68へと飛び移りやすい。そのため、放電Sの起点間の距離が、一層長くなりやすいと共に、
図30に示すごとく、放電Sが基端側へ向かって一層伸長しやすい。その結果、着火性を一層向上させることができる。
【0094】
また、最短距離D2は、最短距離D1よりも長い。それゆえ、放電ギャップGに、確実に放電を生じさせることができる。つまり、中心電極4の先端部と接地凸部65との間に、確実に放電を生じさせることができる。その結果、圧縮行程及び膨張行程の双方において、着火性を確実に向上させることができる。
【0095】
最短距離D3は、最短距離D1以下である。それゆえ、圧縮行程において、放電Sが固定端部61側へ伸長した際、起点S1は、接地電極6から補助接地電極68へと一層移動しやすい。その結果、放電Sを、確実に、大きく伸長させることができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0096】
(実施形態14)
本形態は、
図31~
図36に示すごとく、実施形態13に対し、補助接地電極68の配置を変更した形態である。
【0097】
図32に示すごとく、補助接地電極68の固定端部683は、接地電極6の固定端部61に対し、プラグ周方向にずれて配置されている。Z方向から見たとき、補助接地電極68の突出方向は、接地電極6の突出方向に対し、傾斜している。
【0098】
Z方向から見たとき、補助接地電極68は、固定端部683から突出側の端部681に向かうほど、接地電極6に近づくように設けられている。
【0099】
また、本形態において、プラグカバー5には、複数の傾斜噴孔513が形成されている。傾斜噴孔513は、
図32に示すごとく、Z方向から見たとき、噴孔軸513Cがプラグ径方向に対し傾斜している。傾斜噴孔513は、
図31に示すごとく、先端側へ向かうほど、プラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。
【0100】
図32に示すごとく、Z方向から見たとき、傾斜噴孔513とプラグ中心軸PCとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線VLに対して、傾斜噴孔513の噴孔軸513Cは鋭角の角度をもって傾斜している。複数の傾斜噴孔513は、Z方向から見たとき、各傾斜噴孔513における仮想直線VLに対する噴孔軸513Cの傾斜方向が、プラグ周方向における同じ側となっている。
【0101】
このような傾斜噴孔513の形成態様により、
図33~
図36の破線矢印AFに示すごとく、傾斜噴孔513を介して副燃焼室50に導入された気流によって、副燃焼室50にスワール流が形成される。本形態の場合、スワール流AFは、プラグ中心軸PCの周りに、
図35及び
図36における時計回りの螺旋状に生じる。
【0102】
また、補助接地電極68は、接地電極6に対し、圧縮行程において形成されるスワール流AFの下流側に配置されている。
その他は、実施形態13と同様である。
【0103】
本形態においても、スパークプラグ1は補助接地電極68を有する。それゆえ、放電Sは一層伸長しやすい。つまり、
図33に示すごとく、圧縮行程において、放電ギャップGに生じた放電Sは、
図34、
図35に示すように、スワール流AFによって固定端部61側かつ補助接地電極68側へと伸長しやすい。また、放電Sが伸長した際、放電Sの起点S1は、
図36に示すごとく、接地電極6から補助接地電極68へと飛び移りやすい。その結果、放電Sを、基端側かつプラグ周方向の一方側へ向かって、一層伸長させることができる。
その他、実施形態13と同様の作用効果を有する。
【0104】
(実施形態15)
本形態は、
図37~
図40に示すごとく、接地電極6に接地凹部66が形成された形態である。
【0105】
図37~
図40に示すごとく、接地電極6における、基端側面62と、突出端面631とには、それぞれ接地凹部66が形成されている。基端側面62に形成された接地凹部66は、その一部が中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。また、基端側面62に形成された接地凹部66は、少なくとも、基端側面62における放電ギャップGよりも固定端部61側の位置から、放電ギャップGまでにわたって連続的に形成されている。また、突出端面631において、接地凹部66は、基端側面62から離れるほど先端側へ向かうように形成されている。また、接地凹部66の開口端には、凸角部661が形成されている。
【0106】
図37~
図40に示すごとく、基端側面62に形成された接地凹部66である基端側凹部662は、基端側面62の一部が先端側へ後退することにより形成されている。基端側凹部662は、
図38に示すごとく、Z方向から見たとき、接地電極6の突出方向に長尺な形状を有する。また、基端側凹部662の開口端における凸角部661は、基端側凹部662の長手方向に沿って形成されている。
【0107】
また、基端側凹部662の固定端部61側の端部は、
図37に示すごとく、中心電極4よりもプラグ径方向の外側に位置している。
【0108】
また、
図39、
図40に示すごとく、突出端面631に形成された接地凹部66である突出側凹部663は、突出端面631の一部が、接地電極6の突出側とは反対側へ後退することにより形成されている。突出側凹部663は、突出端面631の先端部から基端部までにわたって連続的に形成されている。突出側凹部663の開口端における凸角部661は、基端側面62から離れるほど先端側へ向かうように形成されている。
【0109】
また、接地凹部66は、
図37、
図39に示すごとく、基端側面62から突出端面631までにわたって連続的に形成されている。また、凸角部661は、基端側凹部662の固定端部61側の端部から、突出側凹部663の先端部までにわたって連続的に形成されている。
その他は、実施形態6と同様である。
【0110】
圧縮行程において、放電の接地電極6側の起点は、気流によって、基端側凹部662を伝って、固定端部61側へと向かいやすい。そのため、圧縮行程において、放電が伸長しやすい。その結果、圧縮行程における着火性を向上させることができる。
【0111】
また、膨張行程において、放電の接地電極6側の起点は、気流によって、突出側凹部663を伝って、先端側へと向かいやすい。そのため、膨張行程において、放電が伸長しやすい。その結果、膨張行程における着火性を向上させることができる。
その他、実施形態6と同様の作用効果を有する。
【0112】
(実施形態16)
本形態は、
図41、
図42に示すごとく、実施形態15に対し、接地凹部66の形状を変更した形態である。
【0113】
本形態において、接地凹部66を形成する凹部形成面は、
図41、
図42に示すごとく、曲面状に形成されている。基端側凹部662は、先端側へ向かうほど、幅が小さくなるように形成されている。また、突出側凹部663は、接地電極6の突出側へ向かうほど、幅が大きくなるように形成されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態15と同様である。
【0114】
(実施形態17)
本形態は、
図43に示すごとく、実施形態15に対し、接地凹部66の形状を変更した形態である。
【0115】
基端側凹部662と突出側凹部663とは、
図43に示すごとく、滑らかな曲線状に形成された凹部接続部664によって互いに接続されている。凹部接続部664の開口端における凸角部661も、滑らかな曲線状に形成されている。
その他は、実施形態15と同様である。
【0116】
基端側凹部662と突出側凹部663とは、滑らかな曲線状に形成された凹部接続部664によって互いに接続されている。それゆえ、放電中に、副燃焼室50内の気流の向きが変化した場合であっても、放電の接地電極6側の起点は、接地凹部66上を一層スムーズに移動しやすい。その結果、点火タイミングにかかわらず、放電を一層確実に伸長させることができる。
その他、実施形態15と同様の作用効果を有する。
【0117】
上記実施形態1~11、13、14において、接地凸部65は、基端側面62から突出端面631までにわたって連続的に形成されている。ただし、基端側凸部と突出側凸部とは、一体的に形成されることなく、別々に設けることもできる。
【0118】
上記実施形態13、14において、接地電極6と補助接地電極68とは、互いに当接することなく、設けられている。ただし、補助接地電極は、例えば、突出側の端部を接地電極に当接させた状態にて、設けることもできる。
【0119】
上記実施形態13、14において、補助接地電極68の突出側の端部681は、放電ギャップGよりも、圧縮行程において形成される気流の下流側に配置されている。ただし、例えば、補助接地電極の突出側の端部を、放電ギャップよりも、膨張行程において形成される気流の下流側に配置させることもできる。この場合、膨張行程において、放電の接地電極側の起点は、接地電極から補助接地電極へと移動しやすく、放電を一層伸長させることができる。また、スパークプラグに、補助接地電極を2つ以上設けることもできる。
【0120】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0121】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…噴孔、6…接地電極、61…固定端部、62…基端側面、631…突出端面、64…周方向側面、65…接地凸部、66…接地凹部、G…放電ギャップ