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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183266
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ステータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20231220BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H02K11/25
H02K3/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096794
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田村 和宏
(72)【発明者】
【氏名】三戸 信二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 工
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604BB08
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604PB03
5H611AA01
5H611BB04
5H611PP02
5H611QQ04
5H611UA02
(57)【要約】
【課題】コイルに対する温度センサの温度追従性を向上させることを可能にしたステータ及び回転電機を提供する。
【解決手段】ステータ11は、ティース23を有するステータコア20と、ティース23を被覆するボビン30と、ボビン30に巻回されているコイル40と、コイル40の温度を検出する温度センサ50と、を備える。コイル40は、ボビン30に接する内周面41を有する。ボビン30は、コイル40の内周面41に対向する位置に溝部34を有する。温度センサ50は、溝部34内に配置されている。そして、温度センサ50は、コイル40の内周側に位置している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティース(23,71)を有するステータコア(20,70)と、
前記ティースを被覆するボビン(30,80)と、
前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、
前記コイルの温度を検出する温度センサ(50)と、
を備えたステータ(11)であって、
前記コイルは、前記ボビンに接する内周面(41)を有し、
前記ボビンは、前記コイルの前記内周面に対向する位置に溝部(34,83)を有し、
前記温度センサは、前記溝部内に配置されており、
前記温度センサは、前記コイルの内周側に位置している、
ステータ。
【請求項2】
前記溝部は、前記コイル側に開口する開口部(35,84)を有し、
前記開口部は、前記コイルの前記内周面にて塞がれており、
前記温度センサは、前記コイルの前記内周面に接している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記温度センサは、前記コイルの前記内周面と前記溝部との間への圧入により固定されている、
請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記溝部は、前記ステータの周方向において前記ティースの中央部(C1)と同位置に設けられている、
請求項1に記載のステータ。
【請求項5】
前記ティースは、前記ステータの径方向に沿って延在しており、
前記ステータの径方向において、前記温度センサの中央部(C2)が前記コイルの中央部(C3)よりも内径側に位置している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項6】
前記溝部は、前記温度センサを位置決めする位置決め部(36,85,91)を有している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項7】
前記ステータの周方向において、前記溝部の寸法(D1)が前記温度センサの寸法(D2)よりも大きい、
請求項1に記載のステータ。
【請求項8】
前記温度センサは、前記溝部に対して接着剤(G)により固定されている、
請求項1に記載のステータ。
【請求項9】
前記コイルを覆う樹脂モールド部(60)を備え、
前記樹脂モールド部は、前記溝部に入り込んでいる充填部(63)を有し、
前記充填部は、前記コイルの前記内周面と、前記温度センサの表面と、前記溝部の内面とに密着している、
請求項1に記載のステータ。
【請求項10】
前記ボビンの熱伝導率は、前記樹脂モールド部の熱伝導率よりも大きい、
請求項9に記載のステータ。
【請求項11】
ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、
前記ステータは、
ティース(23,71)を有するステータコア(20,70)と、
前記ティースを被覆するボビン(30,80)と、
前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、
前記コイルの温度を検出する温度センサ(50)と、を備え、
前記コイルは、前記ボビンに接する内周面(41)を有し、
前記ボビンは、前記コイルの前記内周面に対向する位置に溝部(34,83)を有し、
前記温度センサは、前記溝部内に配置されており、
前記温度センサは、前記コイルの内周側に位置している、
回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及び回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のステータは、ティースを有するステータコアと、ティースを被覆するボビンと、ボビンに巻回されているコイルと、を備える。また、同ステータは、コイルの温度を検出する温度センサを備える。温度センサは、ステータの径方向におけるコイル側面に接するようにボビンに取り付けられている。このような構成によれば、温度センサにて検出したコイルの温度に基づく回転電機の駆動制御が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-174488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記のようなステータにおいて、コイルと温度センサとの位置関係に着目しつつ、コイルに対する温度センサの温度追従性を如何に向上させるかを検討していた。
【0005】
本発明は、コイルに対する温度センサの温度追従性を向上させることを可能にしたステータ及び回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するステータは、ティース(23,71)を有するステータコア(20,70)と、前記ティースを被覆するボビン(30,80)と、前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、前記コイルの温度を検出する温度センサ(50)と、を備えたステータ(11)であって、前記コイルは、前記ボビンに接する内周面(41)を有し、前記ボビンは、前記コイルの前記内周面に対向する位置に溝部(34,83)を有し、前記温度センサは、前記溝部内に配置されており、前記温度センサは、前記コイルの内周側に位置している。
【0007】
上記課題を解決する回転電機は、ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、前記ステータは、ティース(23,71)を有するステータコア(20,70)と、前記ティースを被覆するボビン(30,80)と、前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、前記コイルの温度を検出する温度センサ(50)と、を備え、前記コイルは、前記ボビンに接する内周面(41)を有し、前記ボビンは、前記コイルの前記内周面に対向する位置に溝部(34,83)を有し、前記温度センサは、前記溝部内に配置されており、前記温度センサは、前記コイルの内周側に位置している。
【0008】
上記のステータ及び回転電機によれば、コイルからコイル内周側に発せられる熱流束を温度センサが好適に受けることが可能となる。このため、コイルに対する温度センサの温度追従性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における回転電機の模式図である。
図2】同形態のステータにおける分割コア及びボビンの斜視図である。
図3】同形態のステータの断面図である。
図4】同形態のステータの断面図である。
図5】変更例のステータの断面図である。
図6】変更例のステータの模式断面図である。
図7】同変更例のステータの断面図である。
図8】変更例のステータの模式平面図である。
図9】同変更例における温度センサの配置部分を径方向外側から見た模式図である。
図10】変更例のステータの一部を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ステータ及び回転電機の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率については各図面で異なる場合がある。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の回転電機10は、ステータ11と、ステータ11に対向するロータ12とを備える。ステータ11は、円環状をなしている。ロータ12は、ステータ11の内側に配置される。ロータ12は、回転軸13を有する。ロータ12は、例えば、ステータ11に対して径方向に対向している。
【0012】
(ステータ11の構成)
ステータ11は、ステータコア20と、ボビン30と、コイル40と、温度センサ50とを備える。ステータコア20は、ステータ11の周方向に沿って環状に並ぶ複数の分割コア21を有する。本実施形態のステータコア20は、例えば12個の分割コア21を有する。各分割コア21は、例えば磁性金属材からなる。なお、以下の説明では、ステータ11の周方向、ステータ11の径方向、及びステータ11の軸方向をそれぞれ単に「周方向」、「径方向」及び「軸方向」と言う場合がある。
【0013】
各分割コア21は、バックヨーク22と、バックヨーク22から径方向に沿って延出するティース23とを有している。複数の分割コア21は、それぞれのバックヨーク22が全体で円環状をなすように周方向に沿って配置される。各ティース23は、径方向に沿って延在する。
【0014】
各分割コア21において、ティース23は、例えば、バックヨーク22の内側面から径方向内側に突出している。ティース23の先端部は、ステータ11の軸線L1を向いている。ティース23の基端部は、ティース23における径方向外側の端部である。
【0015】
各分割コア21には、ボビン30が設けられている。コイル40は、各ボビン30に巻回されている。すなわち、ボビン30は、分割コア21とコイル40との間に介在されている。これにより、ボビン30は、分割コア21とコイル40との間を電気的に絶縁する。なお、それぞれ1つの分割コア21、ボビン30及びコイル40は、1つの一体部品を構成している。
【0016】
(ボビン30の構成)
図2は、分割コア21と、分割コア21に設けられたボビン30を示している。ボビン30は、合成樹脂等の絶縁体にて構成されている。ボビン30の材料としては、例えばエポキシ系樹脂等を用いることができる。ボビン30は、例えば、分割コア21に対してモールド成形されている。すなわち、分割コア21に対して一体に形成されている。これにより、ボビン30が分割コア21に対して密着した状態とすることが可能となる。
【0017】
なお、本実施形態の構成とは異なる構成として、例えば、分割コア21とは別で作製したボビンを分割コア21に後付けで装着する場合には、分割コア21とボビンとの間に大きな隙間が生じる懸念がある。その点、本実施形態のように、ボビン30を分割コア21に対してモールド成形することで、分割コア21とボビン30との間の隙間を無くす、もしくは当該隙間を極めて小さくすることが可能である。
【0018】
図3は、ティース23及びボビン30における径方向と直交する断面を示している。図3に示すように、ティース23は、軸方向端面24と周方向端面25とを有している。軸方向端面24は、ティース23の軸方向一方側の端部と軸方向他端側の端部とにそれぞれ設けられている。周方向端面25は、ティース23の周方向一方側の端部と周方向他端側の端部とに設けられている。ティース23における径方向と直交する断面形状は、例えば長方形状をなす。各軸方向端面24は、例えば、軸方向に対して垂直な平面状をなす。各周方向端面25は、例えば、軸方向に対して平行な平面状をなす。
【0019】
ボビン30は、ティース23の軸方向端面24を被覆する第1被覆部31と、ティース23の周方向端面25を被覆する第2被覆部32とを有している。第1被覆部31は、ティース23の軸方向両側の軸方向端面24にそれぞれ対応して一対設けられている。第2被覆部32は、ティース23の周方向両側の周方向端面25にそれぞれ対応して一対設けられている。ボビン30におけるティース23を被覆する部位は、第1被覆部31と第2被覆部32とによってティース23を囲む環状をなしている。
【0020】
各コイル40は、例えば1本の導線を複数巻回することによって形成されている。コイル40を形成する導線は、第1被覆部31及び第2被覆部32の外表面上に複数巻回されている。第1被覆部31及び第2被覆部32は、コイル40とティース23との間に介在している。コイル40の内周面41は、ボビン30の各第1被覆部31及び各第2被覆部32に接している。
【0021】
なお、コイル40を形成する導線の横断面形状は、例えば円形状である。また、同導線は、例えばノズル式やフライヤ式等の図示しない巻線機によってボビン30に直巻きされる。すなわち、コイル40は、別途作製した所謂カセットコイルをボビン30の上からティース23に装着するものではない。このため、ボビン30の第1被覆部31及び第2被覆部32とコイル40との間の隙間を小さく抑えることが可能となる。したがって、周方向に隣り合うティース23の間に形成されるスロット内におけるコイル40の占積率を向上させることが可能となる。
【0022】
図2及び図3に示すように、第1被覆部31は、コイル40を形成する導線をガイドする凹凸状のガイド部33を有している。ガイド部33は、コイル40の巻回方向に沿って設けられている。第1被覆部31は、例えば、ガイド部33を一対有している。一対のガイド部33は、第1被覆部31の周方向両端部に設けられている。各ガイド部33は、第1被覆部31の周方向の中央側から端部にかけて、第1被覆部31の軸方向の厚さが小さくなるように湾曲している。
【0023】
各ガイド部33は、複数の凸部33aと、複数の凹部33bとを有している。凸部33aと凹部33bは、径方向において交互に並んでいる。各凸部33a及び各凹部33bは、コイル40の巻回方向に沿って延びている。コイル40を形成する導線は、各凹部33bに収まるように凹部33bに沿って順次巻回される。
【0024】
(溝部34の構成)
図3及び図4に示すように、ボビン30は、コイル40の内周面41に対向する位置に溝部34を有している。溝部34は、例えば、ボビン30の軸方向の端部、すなわち、第1被覆部31に設けられている。溝部34は、ステータ11の軸方向において、コイル40のコイルエンド部42に対向している。コイルエンド部42は、コイル40の軸方向端部であって、コイル40において第1被覆部31に沿って設けられる部位である。
【0025】
溝部34は、第1被覆部31の表面において径方向に沿って延びるように形成されている。溝部34は、例えば、第1被覆部31の周方向両端部にそれぞれ設けられたガイド部33の間に設けられている。溝部34は、第1被覆部31の周方向中央部に設けられている。すなわち、溝部34は、ステータ11の周方向においてティース23の中央部C1と同位置に設けられている。
【0026】
溝部34は、コイル40に向かって開口する開口部35を有している。本実施形態の溝部34では、開口部35が軸方向に沿った方向に開口している。開口部35は、コイルエンド部42の内周面41にて塞がれている。
【0027】
(温度センサ50の構成)
ステータ11は、1つまたは複数の温度センサ50を有している。温度センサ50は、例えばサーミスタである。温度センサ50は、例えば、径方向から見て円形をなしている。
【0028】
温度センサ50は、溝部34内に配置されている。温度センサ50は、コイル40の内周側に位置している。温度センサ50は、例えば、コイル40の内周面41に接している。温度センサ50は、例えば、コイル40の内周面41と溝部34との間への圧入により固定されている。すなわち、温度センサ50は、コイル40の内周面41と溝部34とに挟まれる態様で設けられている。なお、ステータ11の軸方向において、溝部34の底面からコイル40の内周面41までの寸法は、温度センサ50の寸法よりも小さく設定されている。
【0029】
図3に示すように、ステータ11の周方向において、溝部34の寸法D1は、温度センサ50の寸法D2よりも大きく設定されている。これにより、例えば温度センサ50の周方向両側において、溝部34との間の間隙Sが形成されている。
【0030】
図4に示すように、ステータ11の径方向において、温度センサ50の中央部C2は、コイル40の中央部C3よりも内径側に位置している。したがって、温度センサ50は、ステータ11の径方向における内径寄りの位置に配置される。
【0031】
図2及び図4に示すように、溝部34は、ステータ11の径方向において温度センサ50を位置決めする位置決め部36を有している。位置決め部36は、例えば、溝部34の内面から軸方向に沿って突出している。ステータ11の径方向における温度センサ50の内側端部は、位置決め部36に当接されている。これにより、径方向内側への温度センサ50の移動が位置決め部36によって規制されている。なお、温度センサ50は、検出情報の出力用のリード線51を有している。リード線51は、ステータ11の径方向における温度センサ50の外側端部から引き出されている。
【0032】
本実施形態の作用について説明する。
各コイル40への通電によりステータ11で発生する回転磁界との相互作用によって、ロータ12が回転する。このとき、コイル40は通電により発熱する。ここで、コイル40の温度を検出する温度センサ50は、コイル40からの熱流束がより大きくなるコイル40の内周面41側に配置されている。したがって、温度センサ50によって、コイル40の温度に対し追従性良く温度検出することが可能となっている。
【0033】
本実施形態の効果について説明する。
(1)溝部34内に配置された温度センサ50は、コイル40の内周側に位置している。この構成によれば、コイル40からその内周側に発せられる熱流束を温度センサ50が好適に受けることが可能となる。このため、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性を向上させることが可能となる。
【0034】
(2)溝部34は、コイル40側に開口する開口部35を有している。開口部35は、コイル40の内周面41にて塞がれている。そして、温度センサ50は、コイル40の内周面41に接している。この構成によれば、温度センサ50がコイル40に接することにより、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性をより一層向上させることが可能となる。
【0035】
(3)温度センサ50は、コイル40の内周面41と溝部34との間への圧入により固定されている。この構成によれば、圧入により温度センサ50を強固に固定することが可能となる。また、温度センサ50がコイル40の内周面41に強く押し当てられる構成となるため、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性をより一層向上させることが可能となる。
【0036】
(4)溝部34は、ステータ11の周方向においてティース23の中央部C1と同位置に設けられている。この構成によれば、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性をより一層向上させることが可能となる。
【0037】
(5)ステータ11の径方向において、温度センサ50の中央部C2がコイル40の中央部C3よりも内径側に位置している。コイル40の径方向内径側でより多く発生する交流銅損等によって、コイル40は、径方向の外径側に比べて内径側の温度が高くなる傾向がある。したがって、ステータ11の径方向において、温度センサ50の中央部C2がコイル40の中央部C3よりも内径側に位置するように温度センサ50を配置することで、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性をより一層向上させることが可能となる。
【0038】
(6)溝部34は、ステータ11の径方向において温度センサ50を位置決めする位置決め部36を有している。この構成によれば、位置決め部36によって温度センサ50を溝部34に容易に取り付けることが可能となる。
【0039】
(7)ステータ11の周方向において、溝部34の寸法D1が温度センサ50の寸法D2よりも大きい。この構成によれば、ステータ11の周方向において温度センサ50と溝部34との間に間隙Sを設けることが可能となる。これにより、温度センサ50がボビン30から受ける応力を小さく抑えつつ、温度センサ50を溝部34内に配置することが可能となる。
【0040】
(8)ボビン30は、コイル40をガイドする凹凸状のガイド部33を有している。ガイド部33によってコイル40をボビン30に好適に密着させることが可能となる。これにより、コイル40からボビン30への熱伝導が起こりやすくなり、その結果、ボビン30における温度センサ50が触れているボビン30の部位の温度がコイル40の温度に近づく。このため、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性をより一層向上させることが可能となる。
【0041】
(9)ガイド部33は、第1被覆部31の周方向両端部にそれぞれ設けられ、それら一対のガイド部33の周方向の間に溝部34が設けられている。この構成によれば、一対のガイド部33によってコイル40の巻回をガイド可能な構成としつつも、溝部34をティース23の周方向の中央部C1と同位置に設けることが可能となる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図5に示すように、温度センサ50が溝部34に対して接着剤Gにより固定される構成であってもよい。この構成によれば、接着剤Gによって温度センサ50を溝部34に対してより強固に固定することが可能となる。なお、図5に示す構成では、接着剤Gにて溝部34に固定されるため、温度センサ50をコイル40の内周面41から離して設けることが可能となる。
【0043】
図6及び図7に示すように、コイル40を覆う樹脂モールド部60を備えたステータ11の構成としてもよい。樹脂モールド部60は、複数のコイル40をまとめて覆っている。図6に示すように、樹脂モールド部60は、周方向に隣り合うコイル40の間に介在する第1部位61を有している。図7に示すように、樹脂モールド部60は、各コイル40の軸方向外側をまとめて覆う第2部位62を有している。第2部位62は、各ボビン30及び各分割コア21の軸方向端面についてもまとめて覆っている。
【0044】
図6及び図7に示すような構成のステータ11では、分割コア21、ボビン30及びコイル40を含む一体部品を環状に配置し、各コイル40を例えばバスバ等により電気的に接続する。その後、例えば、各コイル40、各ボビン30、温度センサ50及び前記バスバなどをまとめて覆うように、樹脂モールド部60をモールド成形する。
【0045】
図7に示すように、樹脂モールド部60の第2部位62は、溝部34に入り込んでいる充填部63を有している。充填部63は、コイル40の内周面41と、温度センサ50の表面と、溝部34の内面とに密着している。このような構成によれば、コイル40の熱を充填部63を介して好適に温度センサ50に伝えることが可能となる。
【0046】
樹脂モールド部60は、例えば、合成樹脂にて形成されている。樹脂モールド部60の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂や不飽和ポリエステル系樹脂にアルミナ粉末等を混合した材料を用いることができる。樹脂モールド部60の熱伝導率は、例えば、2.0(W/m・K)以上、かつ5.0(W/m・K)以下に設定される。ボビン30の熱伝導率は、樹脂モールド部60の熱伝導率よりも大きく設定される。このように、ボビン30の熱伝導率が高くなることで、コイル40からボビン30への熱伝導が起こりやすくなる。その結果、ボビン30における温度センサ50が触れているボビン30の部位の温度がコイル40の温度に近づく。このため、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性をより一層向上させることが可能となる。
【0047】
また、図6及び図7に示すような構成によれば、コイル40の熱を樹脂モールド部60を介して効率的に外部に放出することが可能となる。放熱経路としては、例えば、コイル40から樹脂モールド部60を介してステータコア20に達する放熱経路や、コイル40から樹脂モールド部60を介してハウジング14に達する放熱経路等である。
【0048】
なお、樹脂モールド部60の熱伝導率をボビン30の熱伝導率と同等、または、ボビン30の熱伝導率よりも大きく設定してもよい。これにより、コイル40から充填部63への熱伝導が起こりやすくなる。したがって、温度センサ50を囲む充填部63の温度がコイル40の温度に近づくため、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性をより一層向上させることが可能となる。
【0049】
・回転電機10は、ロータ12とステータ11とが軸方向に対向する構成をなすアキシャルギャップモータであってもよい。アキシャルギャップモータにおけるステータ11の一例を図8に示す。なお、図8では、説明の便宜のため、複数のティース71のうちの1つのみを図示している。
【0050】
図8に示すように、アキシャルギャップモータのステータ11は、ステータ11の軸方向に延びる複数のティース71を有するステータコア70を備える。ティース71は、径方向外側端面72と周方向端面73とを有している。周方向端面73は、ティース71の周方向一方側の端部と周方向他端側の端部とに設けられている。
【0051】
ステータ11は、ティース71を被覆するボビン80を備える。ボビン80は、ティース71の径方向外側端面72を被覆する第3被覆部81と、ティース71の各周方向端面73を被覆する第4被覆部82とを有している。ボビン80は、ステータ11の軸方向から見て、ティース71を囲む環状をなしている。
【0052】
コイル40は、ボビン80における第3被覆部81及び第4被覆部82の外表面上に巻回されている。コイル40は、ステータ11の軸方向から見て、ティース71及びボビン80を囲む環状をなしている。ボビン80の第3被覆部81及び第4被覆部82は、コイル40とティース71との間に介在している。コイル40の内周面41は、ボビン30の第3被覆部81及び第4被覆部82に接している。
【0053】
ボビン30は、コイル40の内周面41に対向する位置に溝部83を有している。溝部83は、例えば、ボビン30の径方向外側端部、すなわち、第3被覆部81に設けられている。溝部83は、ステータ11の径方向において、コイル40のコイルエンド部43に対向している。コイルエンド部43は、コイル40の径方向外側端部であって、コイル40において第3被覆部81に沿って設けられる部位である。
【0054】
溝部83は、第3被覆部81の表面において軸方向に沿って延びるように形成されている。溝部83は、第3被覆部81の周方向中央部に設けられている。すなわち、溝部83は、ステータ11の周方向においてティース71の中央部と同位置に設けられている。溝部83は、コイル40に向かって開口する開口部84を有している。開口部84は、径方向外側に開口している。開口部84は、コイルエンド部43の内周面41にて塞がれている。
【0055】
温度センサ50は、溝部83内に配置されている。本例の温度センサ50は、例えば、直方体状をなしている。温度センサ50は、コイル40の内周側に位置している。温度センサ50は、例えば、コイルエンド部43の内周面41に接している。温度センサ50は、例えば、内周面41と溝部83との間への圧入、または接着剤による接着等により固定されている。
【0056】
図9に示すように、溝部83は、ステータ11の軸方向において温度センサ50を位置決めする位置決め部85を有している。位置決め部85は、ステータ11の軸方向における溝部34の端部である。ステータ11の軸方向における温度センサ50の一端部は、位置決め部85に当接されている。これにより、軸方向への温度センサ50の移動が位置決め部85によって規制されている。
【0057】
上記のような構成によっても、溝部83内に配置された温度センサ50がコイル40の内周側に位置するため、コイル40からその内周側に発せられる熱流束を温度センサ50が好適に受けることが可能となる。このため、コイル40に対する温度センサ50の温度追従性を向上させることが可能となる。
【0058】
・ボビン30の位置決め部36の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば図10に示すように変更可能である。
図10に示すように、溝部34は、ステータ11の径方向において温度センサ50を位置決めする位置決め部91を有している。位置決め部91は、例えば、溝部34の内面から軸方向に突出している。位置決め部91は、温度センサ50の径方向外側に設けられている。そして、ステータ11の径方向における温度センサ50の外側端部は、位置決め部91に当接されている。これにより、径方向外側への温度センサ50の移動が位置決め部91によって規制される。このため、リード線51の取り付け時等において、リード線51に径方向外側への引っ張り力が掛かる場合でも、位置決め部91によって温度センサ50が溝部34から抜けにくくなっている。
【0059】
また、位置決め部91は、例えば、リード線51の周方向両側に一対設けられている。リード線51は、一対の位置決め部91の間に通されている。これにより、ステータ11の周方向におけるリード線51の位置決めを一対の位置決め部91によって行うことが可能となる。
【0060】
・温度センサ50の形状等の構成は上記実施形態に限定されるものではなく、回転電機10の構成に応じて適宜変更可能である。
・上記実施形態において、温度センサ50をコイル40の内周面41から離して設けてもよい。
【0061】
・ステータ11の周方向において、溝部34の寸法D1が温度センサ50の寸法D2と同等であってもよい。
・溝部83がティース23の中央部C1から周方向にずれた位置に設けられる構成であってもよい。
【0062】
・ステータ11の径方向において、温度センサ50の中央部C2がコイル40の中央部C3と一致する構成であってもよい。また、ステータ11の径方向において、温度センサ50の中央部C2がコイル40の中央部C3よりも外径側に位置する構成であってもよい。
【0063】
・上記実施形態において、圧入による温度センサ50の固定に加えて、接着剤により温度センサ50を溝部83に固定してもよい。
・上記実施形態では、ガイド部33が第1被覆部31の周方向両端部にそれぞれ設けられるが、これに以外に例えば、ガイド部33を第1被覆部31の周方向の一端部のみに形成してもよい。
【0064】
・上記実施形態のボビン30は、ステータコア20に対してモールド成形されるが、これに限らず、例えば、別途作製したボビンをステータコア20に装着する構成としてもよい。
【0065】
・ティース23及びコイル40の数は、上記実施形態に限定されるものではなく、構成に応じて適宜変更可能である。
・ステータコア20は、複数の分割コア21で形成される構成に限らず、一体部品で形成されてもよい。
【0066】
・上記実施形態の回転電機10は、ロータ12がステータ11の内周側に配置されるインナロータ型の回転電機であるが、これ以外に例えば、ロータがステータの外周側に配置されるアウタロータ型の回転電機に適用してもよい。
【0067】
・今回開示された実施形態及び変更例はすべての点で例示であって、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。すなわち、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0068】
(付記)
本発明の特徴を以下の通り示す。
[1]ティース(23,71)を有するステータコア(20,70)と、前記ティースを被覆するボビン(30,80)と、前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、前記コイルの温度を検出する温度センサ(50)と、を備えたステータ(11)であって、前記コイルは、前記ボビンに接する内周面(41)を有し、前記ボビンは、前記コイルの前記内周面に対向する位置に溝部(34,83)を有し、前記温度センサは、前記溝部内に配置されており、前記温度センサは、前記コイルの内周側に位置している、ステータ。
【0069】
[2]前記溝部は、前記コイル側に開口する開口部(35,84)を有し、前記開口部は、前記コイルの前記内周面にて塞がれており、前記温度センサは、前記コイルの前記内周面に接している、上記[1]に記載のステータ。
【0070】
[3]前記温度センサは、前記コイルの前記内周面と前記溝部との間への圧入により固定されている、上記[1]または[2]に記載のステータ。
[4]前記溝部は、前記ステータの周方向において前記ティースの中央部(C1)と同位置に設けられている、上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のステータ。
【0071】
[5]前記ティースは、前記ステータの径方向に沿って延在しており、前記ステータの径方向において、前記温度センサの中央部(C2)が前記コイルの中央部(C3)よりも内径側に位置している、上記[1]から[4]のいずれか1つに記載のステータ。
【0072】
[6]前記溝部は、前記温度センサを位置決めする位置決め部(36,85,91)を有している、上記[1]から[5]のいずれか1つに記載のステータ。
[7]前記ステータの周方向において、前記溝部の寸法(D1)が前記温度センサの寸法(D2)よりも大きい、上記[1]から[6]のいずれか1つに記載のステータ。
【0073】
[8]前記温度センサは、前記溝部に対して接着剤(G)により固定されている、上記[1]から[7]のいずれか1つに記載のステータ。
[9]前記コイルを覆う樹脂モールド部(60)を備え、前記樹脂モールド部は、前記溝部に入り込んでいる充填部(63)を有し、前記充填部は、前記コイルの前記内周面と、前記温度センサの表面と、前記溝部の内面とに密着している、上記[1]から[8]のいずれか1つに記載のステータ。
【0074】
[10]前記ボビンの熱伝導率は、前記樹脂モールド部の熱伝導率よりも大きい、上記[9]に記載のステータ。
[11]ステータ(11)と、前記ステータに対向するロータ(12)と、を備える回転電機(10)であって、前記ステータは、ティース(23,71)を有するステータコア(20,70)と、前記ティースを被覆するボビン(30,80)と、前記ボビンに巻回されているコイル(40)と、前記コイルの温度を検出する温度センサ(50)と、を備え、前記コイルは、前記ボビンに接する内周面(41)を有し、前記ボビンは、前記コイルの前記内周面に対向する位置に溝部(34,83)を有し、前記温度センサは、前記溝部内に配置されており、前記温度センサは、前記コイルの内周側に位置している、回転電機。
【符号の説明】
【0075】
10…回転電機、11…ステータ、12…ロータ、20,70…ステータコア、23,71…ティース、30,80…ボビン、34,83…溝部、35,84…開口部、36,85,91…位置決め部、40…コイル、41…内周面、50…温度センサ、60…樹脂モールド部、63…充填部、C1…ティースの中央部、C2…温度センサの中央部、C3…コイルの中央部、D1,D2…寸法、G…接着剤。
図1
図2
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