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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183267
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H05B6/12 308
H05B6/12 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096798
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 正人
(72)【発明者】
【氏名】小坂 法興
(72)【発明者】
【氏名】杉山 広樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃裕
(72)【発明者】
【氏名】徳山 浩司
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA12
3K151CA01
3K151CA49
3K151CA50
(57)【要約】
【課題】複数の加熱コイルにより加熱対象物を効率よく加熱することができる誘導加熱調理器を提供すること。
【解決手段】誘導加熱調理器は、トッププレートと、トッププレートの下方に配置されるコイルユニットと、加熱対象物の加熱を制御するコントローラと、を備え、コイルユニットは、加熱対象物を加熱する加熱領域に配置される複数のコイルピースを備え、加熱領域は、外周を画定する外周ラインと、中心から放射状に延びる複数の境界ラインと、によって画定される複数のコイル配置領域を有し、複数のコイルピースは、複数のコイル配置領域内に配置され、コントローラは、複数のコイルピースの全てに電流を流しながら、加熱対象物の加熱を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トッププレートと、
前記トッププレートの下方に配置されるコイルユニットと、
前記コイルユニットによる加熱対象物の加熱を制御するコントローラと、
を備え、
前記コイルユニットは、平面視において前記加熱対象物を加熱する加熱領域に配置される複数のコイルピースを備え、
前記加熱領域は、平面視において、前記加熱領域の外周を画定する外周ラインと、前記加熱領域の中心から前記外周に向かって放射状に延びる複数の境界ラインと、によって画定される複数のコイル配置領域を有し、
前記複数のコイルピースは、平面視において前記複数のコイル配置領域内に配置され、
前記コントローラは、前記複数のコイルピースの全てに電流を流しながら、前記加熱対象物の加熱を制御する、
誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記複数のコイルピースのそれぞれは、平面視において、前記複数の境界ラインのうち隣り合う2つの境界ラインと、前記隣り合う2つの境界ラインを結ぶ外周ラインと、に沿って配置されるコイル線を有する、請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記コントローラは、前記複数のコイルピースのそれぞれに流れる電流のパラメータの少なくとも一部を制御することで、前記加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御し、前記パラメータは、電流の振幅、位相及び周波数を含む、請求項2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記コントローラは、前記加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱の分布が異なる複数の加熱モードのうちの1つ以上の加熱モードを用いて前記加熱対象物の加熱を制御する、請求項3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記コントローラは、前記複数の加熱モードのうちの2つ以上の加熱モードを切り換えて、前記加熱対象物の加熱を制御する、請求項4に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記コントローラは、前記複数の加熱モードの2つ以上を組み合わせた複数の所定シーケンスを有し、前記複数の所定シーケンスはそれぞれ、前記複数の加熱モードの組み合わせが異なる、請求項5に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記複数の加熱モードは第1加熱モードを含み、
前記第1加熱モードは、前記コントローラに前記複数のコイルピースのそれぞれに流れる電流を制御させて、前記複数のコイルピースのうちの隣接する2つのコイルピースの隣り合う部位に対応する領域上の前記加熱対象物を、前記隣接する2つのコイルピースのそれぞれの前記外周ラインに沿った部位に対応する領域上の前記加熱対象物よりも強く加熱させる、請求項4に記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記複数の加熱モードは第2加熱モードを含み、
前記第2加熱モードは、前記コントローラに前記複数のコイルピースのそれぞれに流れる電流を制御させて、前記複数のコイルピースの前記外周ラインに沿った部位に対応する領域上の前記加熱対象物を、前記複数のコイルピースの少なくとも1つのコイルピースの中央に対応する領域上の前記加熱対象物よりも強く加熱させる、請求項7に記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記コントローラは、少なくとも前記第1加熱モード及び前記第2加熱モードを組み合わせた第1シーケンスと、加熱モードの組み合わせが前記第1シーケンスとは異なる第2シーケンスとを有し、ユーザが前記第2シーケンスを選択すると、前記第2シーケンスで前記加熱対象物の加熱を制御する、請求項8に記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記コントローラは、前記複数のコイルピースの位置と、前記複数のコイルピースのそれぞれに基づいて取得した温度情報とを関連付けた情報に基づいて、前記複数のコイルピースのそれぞれに流れる電流の前記パラメータを制御する、請求項3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項11】
前記コントローラは、前記情報に基づいて、隣接する2つのコイルピースに流れる電流の位相を制御する、請求項10に記載の誘導加熱調理器。
【請求項12】
前記コントローラは、前記トッププレートに前記加熱対象物が配置された領域に基づいて、前記複数のコイルピースのそれぞれに流れる電流の前記パラメータを制御する、請求項3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項13】
前記複数のコイル配置領域の数は、3つ以上8つ以下である、請求項3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項14】
前記複数のコイルピースは、前記複数のコイル配置領域のうちの隣接する2つのコイル配置領域のそれぞれに配置される第1コイルピース及び第2コイルピースを有し、
前記第1コイルピースの一部及び前記第2コイルピースの一部は、前記複数の境界ラインのうちの所定境界ラインに沿って配置され、
前記コントローラは、前記第1コイルピースにおいて前記所定境界ラインに沿った部位に流れる電流と、前記第2コイルピースにおいて前記所定境界ラインに沿った部位に流れる電流とが所定の位相差若しくは所定の周波数差又はその両方を有するように前記複数のコイルピースのそれぞれに流れる電流を制御する、請求項3から請求項13のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項15】
前記所定の位相差は、0°、30°、45°、60°、90°又は180°である、請求項14に記載の誘導加熱調理器。
【請求項16】
前記所定の周波数差は、前記第1コイルピース又は前記第2コイルピースに流れる電流の周波数の0以上の整数倍である、請求項14に記載の誘導加熱調理器。
【請求項17】
前記コントローラは、前記複数のコイル配置領域のうちの隣接する2つのコイル配置領域のそれぞれに配置される、前記複数のコイルピースのうちの隣接する2つのコイルピースの組のそれぞれにおいて、前記複数の境界ラインのうちの、前記隣接する2つのコイルピースの間にある境界ラインに沿ったそれぞれの部位に流れる電流が所定の位相差若しくは所定の周波数差又はその両方を有するように前記複数のコイルピースのそれぞれに流れる電流を制御する、請求項3から請求項13のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項18】
前記所定の位相差は、0°、30°、45°、60°、90°又は180°である、請求項17に記載の誘導加熱調理器。
【請求項19】
前記所定の周波数差は、前記隣接する2つのコイルピースのうちの1つに流れる電流の周波数の0以上の整数倍である、請求項17に記載の誘導加熱調理器。
【請求項20】
前記コントローラは、外周が非磁性材料によって構成される加熱対象物が前記トッププレートに載置された場合、前記所定の位相差が180°となるように、前記複数のコイルピースのそれぞれに流れる電流の前記パラメータを制御する、請求項17に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の加熱コイルを有する誘導加熱調理器が知られている。例えば、特許文献1には、天板に負荷が配置されたことを検出するとリレーを駆動させて複数の加熱コイルに高周波電流を通電して負荷を加熱する誘導加熱装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-141082
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、誘導加熱調理器は、複数の加熱コイルを用いて加熱対象物を効率よく加熱することが求められている。
【0005】
本開示は、複数の加熱コイルにより加熱対象物を効率よく加熱することができる誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る誘導加熱調理器は、トッププレートと、トッププレートの下方に配置されるコイルユニットと、コイルユニットによる加熱対象物の加熱を制御するコントローラと、を備え、コイルユニットは、平面視において加熱対象物を加熱する加熱領域に配置される複数のコイルピースを備え、加熱領域は、平面視において、加熱領域の外周を画定する外周ラインと、加熱領域の中心から外周に向かって放射状に延びる複数の境界ラインと、によって画定される複数のコイル配置領域を有し、複数のコイルピースは、平面視において複数のコイル配置領域内に配置され、コントローラは、複数のコイルピースの全てに電流を流しながら、加熱対象物の加熱を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数の加熱コイルにより加熱対象物を効率よく加熱することができる誘導加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の一例の概略斜視図である。
図2】本開示に係る実施の形態1のコイルユニットの一例の平面図である。
図3図2のコイルユニットを構成するコイルピースの概略拡大図である。
図4】本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の構成の一例のブロック図である。
図5】本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の一例の回路図である。
図6】隣接する2つのコイルピースにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流の位相差が0°である場合の電流波形の一例を示すグラフである。
図7】隣接する2つのコイルピースにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流の位相差が180°である場合の電流波形の一例を示すグラフである。
図8】本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器において、第1加熱モードにより制御される加熱領域の一例を示す概略図である。
図9】第1加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。
図10】本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器において、第2加熱モードにより制御される加熱領域の別の一例を示す概略図である。
図11】第2加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。
図12】第3加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。
図13】第4加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。
図14】第5加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。
図15A】従来の加熱コイルを有する誘導加熱調理器により加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度変化の一例のグラフである。
図15B】本実施に係る実施の形態1の誘導加熱調理器により加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度変化の一例のグラフである。
図16】本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の別の例の回路図である。
図17】本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器のさらに別の例の回路図である。
図18】本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器のさらに別の例の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本開示に係る実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する構成は、本開示の一例に過ぎず、本開示は下記の実施の形態に限定されることはなく、これら実施の形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計に応じて種々の変更が可能である。
【0010】
従来、複数の加熱コイルを有する誘導加熱調理器は、加熱領域を有し、当該加熱領域には複数の加熱コイルが配置されている。この場合、従来の誘導加熱調理器は、加熱コイルへ高周波電流を通電するか否かを、例えばリレーのオン/オフによって切り換えることで、加熱領域内の加熱を制御していた。従来の誘導加熱調理器は、加熱領域内の加熱の強弱を、一部の加熱コイルへの通電を停止することで、例えば、局所的に変化させたり、加熱領域内の総合的な火力を変化させたりしていた。
【0011】
このように、従来の誘電加熱調理器は、加熱の制御により通電されない加熱コイルが存在するため、高出力で加熱することが難しい。また、従来の誘電加熱調理器は、加熱コイルへの通電の有無で加熱領域内での加熱の強弱の局所的な変化を行うため、局所的な変化のモードが少ない。さらに、加熱コイルへの通電の有無で加熱領域内での加熱の強弱を切り換えるため、従来の誘電加熱調理器は、加熱の制御の応答速度が低い。また、従来の誘電加熱調理器は、通電されていない加熱コイルと加熱対象物との磁気的な結合を検出できないため、加熱対象物による反応を加熱制御に反映することができない。また、従来の誘導加熱調理器は、1つの加熱コイルによって加熱される領域において、加熱の局所的な強弱を制御できない。また、従来の誘導加熱調理器は、複数の加熱コイル間の隙間の上方に載置された加熱対象物の部分を加熱することができない。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1の一例の概略斜視図である。図2は、本開示に係る実施の形態1のコイルユニット4の一例の平面図である。図1に示すように、本開示に係る誘導加熱調理器1は、トッププレート2と、トッププレート2の下方に配置されるコイルユニット4と、コイルユニット4による加熱対象物の加熱を制御するコントローラ5とを備える。図2に示すように、コイルユニット4は、平面視において加熱対象物を加熱する加熱領域S0に配置される複数のコイルピース10A~10Fを備える。加熱領域S0は、平面視において、加熱領域S0の外周を画定する外周ラインL10と、加熱領域S0の中心C1から外周に向かって放射状に延びる複数の境界ラインL1~L6と、によって画定される複数のコイル配置領域S1~S6を有する。複数のコイルピース10A~10Fは、平面視において複数のコイル配置領域(S1~S6)内に配置される。複数のコイルピースは、平面視において、複数の境界ライン(L1~L6)のうちの隣り合う2つの境界ラインと、隣り合う2つの境界ラインを結ぶ外周ラインL10と、に沿って配置されるコイル線を有する。コントローラ5は、複数のコイルピース10A~10Fの全てに電流を流しながら、加熱対象物の加熱を制御する。
【0013】
このような構成によれば、誘導加熱調理器1は、加熱対象物を効率よく加熱することができる。具体的には、加熱領域S0を複数の境界ラインL1~L6と外周ラインL10とによって複数のコイル配置領域S1~S6に分けている。複数のコイル配置領域S1~S6のそれぞれには、コイルピース10を構成するコイル線11が、隣り合う2つの境界ラインと、隣り合う2つの境界ラインを結ぶ外周ラインL10とに沿って配置されている。これにより、平面視において加熱領域S0の中心C1から外周に向かってコイルピース10のコイル線11が配置されるため、実施の形態1の誘導加熱調理器1は、加熱ムラを低減することができる。また、複数のコイルピース10間の隙間を小さくできると共に、隙間のばらつきを低減することができる。
【0014】
また、本開示に係る誘導加熱調理器1によれば、コントローラ5は、複数のコイルピース10A~10Fの全てに電流を流しながら、加熱対象物の加熱を制御する。したがって、コントローラ5は、全てのコイルピース10A~10Fに通電するため、複数のコイルピース10A~10Fのうちの1つのコイルピースに電流が集中することを避けることができ、総合的に高出力で加熱対象物を加熱することができる。また、全てのコイルピース10A~10Fが常時通電されているため、応答速度が速い。したがって、各コイルピース10A~10Fは、コントローラ5からの指示に対して早く応答できる。また、コントローラ5は、例えば電流のパラメータを連続的に漸進的に変更することで、各コイルピース10A~10Fの応答速度を制御することができる。
【0015】
[全体構成]
誘導加熱調理器1について図1を用いて説明する。なお、図中に示すX-Y-Z座標系は、発明の理解を助けるために記載されており、発明を限定することを意図しない。X軸方向およびY軸方向は水平方向を示し、Z軸方向は鉛直方向を示している。
【0016】
図1に示すように、誘導加熱調理器1は、加熱調理対象Tを収容する調理容器Cを誘導加熱する調理器である。本明細書では、調理容器Cは、加熱対象物の一例として説明している。加熱対象物は、調理容器Cに限定されず、誘導加熱される対象物であればよい。
【0017】
誘導加熱調理器1は、調理容器Cが載置され、例えば耐熱ガラスによって作製されたトッププレート2と、トッププレート2の下面に取り付けられた筐体3と、を有する。筐体3内には、複数のコイルユニット4と、コントローラ5と、入出力インタフェース装置6と、が搭載されている。複数のコイルユニット4のそれぞれは、トッププレート2の下方に配置され、対向するトッププレート2の部分に載置されている調理容器Cを誘導加熱する。即ち、複数のコイルユニット4のそれぞれは、誘導加熱コイルユニットとして機能する。コントローラ5は、複数のコイルユニット4を制御することができる。ユーザは、入出力インタフェース装置6を操作して、コントローラ5によって複数のコイルユニット4を操作することができる。
【0018】
[コイルユニット]
以下、コイルユニット4について図2及び図3を用いて説明する。
【0019】
図2に示すように、コイルユニット4は、複数のコイルピース10A~10Fを備える。複数のコイルピース10A~10Fは、従来の誘導加熱調理器の加熱コイルに対応する構成要素である。以下、複数のコイルピース10A~10Fを区別する必要がない場合、総称して、コイルピース10又は複数のコイルピース10と称する。
【0020】
複数のコイルピース10は、平面視において加熱対象物を加熱する加熱領域S0に配置される。本明細書では、「平面視」とは鉛直方向、即ちZ軸方向から見ることを意味する。加熱領域S0は、平面視において中心C1を有する閉じた領域であり、複数のコイルピース10が配置される領域である。実施の形態1では、加熱領域S0は平面視において円形に形成されている。また、加熱領域S0は、トッププレート2の上面に示される調理容器Cが配置される領域であってもよい。
【0021】
なお、加熱領域S0は平面視において円形である例に限定されない。例えば、加熱領域S0は平面視において矩形状、楕円形状又は正多角形状であってもよい。加熱領域S0が平面視において矩形状である場合、加熱領域S0の中心C1は対角線の交点である。加熱領域S0が平面視において楕円形状である場合、加熱領域S0の中心C1は長軸と短軸の交点である。加熱領域S0が平面視において正多角形状である場合、加熱領域S0の中心C1は正多角形を構成する全ての外辺に接する内接円の中心である。
【0022】
加熱領域S0は、複数のコイル配置領域S1~S6を有する。複数のコイル配置領域S1~S6は、平面視において加熱領域S0の中心C1を中心として放射状に且つ隣接して配置されている。具体的には、複数のコイル配置領域S1~S6は、平面視において加熱領域S0の中心C1から外周に向かって放射状に延びる複数の境界ラインL1~L6と、加熱領域S0の外周を画定する外周ラインL10と、によって画定されている。複数のコイル配置領域S1~S6は平面視において扇形状に形成されている。
【0023】
実施の形態1では、複数の境界ラインL1~L6は、平面視において加熱領域S0の中心C1を中心として放射状に等間隔で配置されている。複数の境界ラインL1~L6は、平面視において加熱領域S0の中心C1から外周に向かって延びる直線である。複数の境界ラインL1~L6において隣り合う2つの境界ラインがなす角度は、略同じである。これにより、平面視において、複数のコイル配置領域S1~S6は略同じ形状及び略同じサイズを有している。本明細書では、「略」とは、誤差10%以内を意味し、好ましくは、誤差5%以内を意味する。
【0024】
実施の形態1では、複数の境界ラインは、6つの境界ラインL1~L6を有し、隣り合う2つの境界ラインがなす角度は60度である。これにより、加熱領域S0は、平面視において略同じ形状及び略同じサイズである6つのコイル配置領域S1~S6に分けられている。
【0025】
複数のコイルピース10は、平面視において複数のコイル配置領域S1~S6内に配置されている。具体的には、1つのコイル配置領域内に、1つのコイルピース10が配置されている。これにより、複数のコイルピース10は、平面視において加熱領域S0内で放射状に且つ隣接して配置されている。
【0026】
複数のコイルピース10のそれぞれは、複数のコイル配置領域S1~S6内のそれぞれにおいて、巻回して配置されるコイル線11を有する。コイル線11は、平面視において、複数の境界ラインL1~L6のうち隣り合う2つの境界ラインと、隣り合う2つの境界ラインを結ぶ外周ラインL10と、に沿って配置されている。コイル線11は、コイル配置領域S1~S6内において、コイル配置領域S1~S6を画定するラインL1~L6,L10に沿って配置されており、内側に巻回して配置されている。
【0027】
実施の形態1では、複数のコイルピース10は、平面視において略同じ形状及び略同じサイズを有する。
【0028】
図3は、図2のコイルユニット4を構成するコイルピース10の概略拡大図である。なお、図3は、コイル配置領域S1に配置されるコイルピース10Aを示している。コイル配置領域S2~S6は、コイル配置領域S1と同様の構成を有するため、説明を省略する。また、コイルピース10B~10Fは、コイルピース10Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、コイル配置領域S1に配置されるコイルピース10Aは、平面視において、隣り合う2つの境界ラインL1,L2と、隣り合う2つの境界ラインL1,L2を結ぶ外周ラインL10と、に沿って配置されるコイル線11を有している。コイル線11は、導電性材料で形成されている。
【0030】
コイル線11は、平面視において、コイル配置領域S1内で境界ラインL1,L2及び外周ラインL10に沿って周回するように配置されている。コイル線11は、平面視において枠状に配置されている。実施の形態1では、コイル配置領域S1が平面視において扇形状に形成されているため、コイル線11の外形は平面視において扇形状に形成されている。
【0031】
実施の形態1では、コイル線11は、第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40を有する。第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40は、一体で構成されている。第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40は、略同じ線径を有する。第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40のそれぞれは、複数の金属線をねじりながら束ねたものを複数ターン巻回した線部である。例えば、線部は、直径0.2mmの銅線20本程度を、ねじりながら束ねたものを、60ターン程度巻回している。なお、金属線の直径は0.2mmに限定されず、適宜設定されてもよい。たとえば金属線の直径は、0.01mm以上0.5mm以下の範囲で適宜選択されてもよい。また金属線の材質は、銅に限定されず、たとえばアルミニウムまたは銅とアルミニウムのクラッド材でもよい。また、金属線を束にする本数(つまり、いわゆる芯数)は、20本に限定されず、適宜選択されてもよい。たとえば芯数は、5本以上50本以下の範囲で適宜選択されてもよい。また、線部の巻回数は、10ターンに限定されず、適宜設定されてもよい。たとえば巻回数は、5ターン以上20ターン以下で適宜選択されてもよい。
【0032】
第1コイル線部20は、平面視において隣り合う2つの境界ラインL1,L2と、外周ラインL10と、に沿って配置されている。第1コイル線部20は、平面視においてコイルピース10の最も外側に配置されるコイル線11の部分である。第1コイル線部20は平面視で枠状に形成されている。第1コイル線部20の外形は平面視において扇形状に形成されている。
【0033】
具体的には、第1コイル線部20は、直線部21,22、曲線部23及び接続部24,25,26を有している。直線部21は、境界ラインL1に沿って配置される略直線状のコイル部分である。直線部22は、境界ラインL2に沿って配置される直線状のコイル部分である。曲線部23は、外周ラインL10に沿って配置される曲線状のコイル部分である。接続部24は、平面視において加熱領域S0の中心C1側で、直線部21の一端と直線部22の一端とを接続するコイル部分である。接続部25は、平面視において加熱領域S0の外周ラインL10側で、直線部21の他端と曲線部23の一端とを接続するコイル部分である。接続部26は、平面視において加熱領域S0の外周ラインL10側で、直線部22の他端と曲線部23の他端とを接続するコイル部分である。接続部24,25,26は、例えば、U字状に湾曲した形状を有する。
【0034】
本明細書では、「境界ラインL1,L2又は外周ラインL10に沿って配置される」とは、特に言及しない限り、境界ラインL1,L2又は外周ラインL10との間を遮る他の部品が配置されておらず、境界ラインL1,L2又は外周ラインL10の延びる方向と略同じ方向に延びて配置されることを意味する。
【0035】
第2コイル線部30は、平面視において第1コイル線部20の内側に配置されている。実施の形態1では、第2コイル線部30は、平面視において第1コイル線部20の内側に沿って配置されている。第2コイル線部30は平面視で第1コイル線部20の内側に沿った枠状に形成されている。第2コイル線部30の外形は平面視において扇形状に形成されている。
【0036】
具体的には、第2コイル線部30は、直線部31,32、曲線部33及び接続部34,35,36を有している。直線部31は、第1コイル線部20の直線部21に沿って配置される直線状のコイル部分である。直線部32は、第1コイル線部20の直線部22に沿って配置される直線状のコイル部分である。曲線部33は、第1コイル線部20の曲線部23に沿って配置される曲線状のコイル部分である。接続部34は、平面視において加熱領域S0の中心C1側で、直線部31の一端と直線部32の一端とを接続するコイル部分である。接続部35は、平面視において加熱領域S0の外周ラインL10側で、直線部31の他端と曲線部33の一端とを接続するコイル部分である。接続部36は、平面視において加熱領域S0の外周ラインL10側で、直線部32の他端と曲線部33の他端とを接続するコイル部分である。接続部34,35,36は、例えば、U字状に湾曲した形状を有する。
【0037】
第3コイル線部40は、平面視において第2コイル線部30の内側に配置されている。実施の形態1では、第3コイル線部40は、平面視において第2コイル線部30の内側に沿って配置されている。第3コイル線部40は平面視で第2コイル線部30の内側に沿った枠状に形成されている。第3コイル線部40の外形は平面視において扇形状に形成されている。
【0038】
具体的には、第3コイル線部40は、直線部41,42、曲線部43及び接続部44,45,46を有している。直線部41は、第2コイル線部30の直線部31に沿って配置される直線状のコイル部分である。直線部42は、第2コイル線部30の直線部32に沿って配置される直線状のコイル部分である。曲線部43は、第2コイル線部30の曲線部33に沿って配置される曲線状のコイル部分である。接続部44は、平面視において加熱領域S0の中心C1側で、直線部41の一端と直線部42の一端とを接続するコイル部分である。接続部45は、平面視において加熱領域S0の外周ラインL10側で、直線部41の他端と曲線部43の一端とを接続するコイル部分である。接続部46は、平面視において加熱領域S0の外周ラインL10側で、直線部42の他端と曲線部43の他端とを接続するコイル部分である。接続部44,45,46は、例えば、U字状に湾曲した形状を有する。
【0039】
実施の形態1では、直線部21,31,41は互いに略平行に配置されている。直線部22,32,42は互いに略平行に配置されている。曲線部23,33,43は、互いに対向して配置されている。
【0040】
図4は、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1の構成の一例のブロック図である。図4に示すように、誘導加熱調理器1は、3つのコイルユニット4と、コントローラ5と、入出力インタフェース装置6と、を備える。
【0041】
[コントローラ]
コントローラ5は、誘導加熱調理器1の動作を制御する制御装置である。コントローラ5は、具体的には、各コイルユニット4の動作を制御し得る。コントローラ5は、演算回路7と、記憶装置8と、を備える。
【0042】
演算回路7は、コントローラ5における処理を実行する。演算回路7は、プログラムを実行することで所定の機能を実現するCPUまたはMPUのような汎用プロセッサを含む。演算回路7は、記憶装置8と通信可能に構成され、当該記憶装置8に格納された演算プログラム等を呼び出して実行することにより、コントローラ5における各種の処理を実現する。コントローラ5における処理は、例えば、複数のコイルピースによる加熱の局所的な強さの制御、後述するインバータ回路53への制御信号の出力、又は後述する温度情報の取得を含む。演算回路7は、ハードウェア資源とソフトウェアとが協働して所定の機能を実現する態様に限定されず、所定の機能を実現する専用に設計されたハードウェア回路でもよい。すなわち、演算回路7は、CPU、MPU以外にも、GPU、FPGA、DSP、ASIC等、種々のプロセッサで実現され得る。このような演算回路7は、例えば、半導体集積回路である信号処理回路で構成され得る。
【0043】
記憶装置8は、種々の情報を記憶できる記憶媒体である。記憶装置8は、例えば、DRAMやSRAM、フラッシュメモリ等のメモリ、HDD、SSD、その他の記憶デバイスまたはそれらを適宜組み合わせて実現される。記憶装置8は、上記したように演算回路7が行う各種の処理を実現するためのプログラムを格納する。また、記憶装置8は、後述する温度情報など、複数のコイルピース10を通じてコントローラ5が取得した情報を格納し得る。
【0044】
[入出力インタフェース装置]
入出力インタフェース装置6は、ユーザからの情報の入力のための入力装置、及びユーザへの情報の出力のための出力装置としての機能を有する。入出力インタフェース装置6は、ユーザが誘導加熱調理器1を操作するための操作パネル、ユーザが火力を変更するためのボタン、並びにユーザに誘導加熱調理器1の状態を報知するためのディスプレイ及びスピーカを含み得る。例えば、ユーザは、入出力インタフェース装置6を操作することで、後述する所定シーケンスを変更し得る。
【0045】
[回路]
図5は、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1の一例の回路図である。上記したように、誘導加熱調理器1は、コイルユニット4を構成する複数のコイルピース10A~10Fを備える。また、誘導加熱調理器1は、複数のコイルピース10A~10Fによる加熱を実現するための電子部品として、ダイオードブリッジ51と、平滑コンデンサ52と、複数のインバータ回路53A~53Fと、複数の共振コンデンサ54A~54F、55A~55Fと、を有する。誘導加熱調理器1は、複数のコイルユニット4のそれぞれに対して同様の構成の回路を有してもよいし、別の構成の回路を有してもよい。以下、複数のインバータ回路53A~53Fを区別する必要がない場合、総称して、インバータ回路53又は複数のインバータ回路53と称する。以下、複数の共振コンデンサ54A~54Fを区別する必要がない場合、総称して、共振コンデンサ54又は複数の共振コンデンサ54と称する。以下、複数の共振コンデンサ55A~55Fを区別する必要がない場合、総称して、共振コンデンサ55又は複数の共振コンデンサ55と称する。
【0046】
ダイオードブリッジ51は、交流電源(例えば、100V又は200Vの商用交流電源)50に接続されており、交流電源から入力される交流電圧を全波整流して、脈流を有する直流電圧に変換し、配線56a、56b間に印加する。
【0047】
平滑コンデンサ52は、配線56a、56b間に接続されており、ダイオードブリッジ51から印加される電圧を平滑化する。
【0048】
インバータ回路53Aは、スイッチング素子57A、58Aが、配線56a、56b間に直列に接続されている。各スイッチング素子57A、58Aは、IGBTと、IGBTに逆並列に接続されたダイオードとを有する。各スイッチング素子57A、58Aは、コントローラ5から受信する制御信号に基づいて、オン/オフを切り換える。インバータ回路53B~53Fは、スイッチング素子57B~57F、スイッチング素子58B~58Fを有する。インバータ回路53B~53Fは、インバータ回路53Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。スイッチング素子57B~57F及びスイッチング素子58B~58Fのそれぞれは、スイッチング素子57A、58Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0049】
共振コンデンサ54A、55Aは、配線56a、56b間に直列に接続されている。共振コンデンサ54B~54F及び共振コンデンサ55B~55Fのそれぞれは、共振コンデンサ54A、55Aと同様に構成される。
【0050】
コイルピース10Aは、一端がスイッチング素子57Aとスイッチング素子58Aとの間に接続され、他端が共振コンデンサ54Aと共振コンデンサ55Aとの間に接続されている。コイルピース10は、スイッチング素子57A、58Aのオン/オフが切り換えられることで、所定のパラメータを有する高周波の電流が流れるように制御される。他のコイルピース10B~10Fのそれぞれは、コイルピース10Aと同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0051】
コントローラ5は、インバータ回路53の動作を制御して、コイルユニット4の複数のコイルピース10に流れる電流を制御することができる。コントローラ5は、具体的には、インバータ回路53の動作を制御して、コイルユニット4による加熱対象物の加熱時、複数のコイルピース10に常に高周波電流が流れるようにインバータ回路53を制御できる。コントローラ5は、各コイルピース10に流れる電流を制御することで、加熱モードを切り換えることができる。本開示に係る実施の形態1において、コイルユニット4の回路は、複数のインバータ回路53を含むがこれに限定されず、単一のインバータ回路によって複数のコイルピース10に流れる電流が制御されるように構成されてもよい。
【0052】
[動作]
次に、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1に動作を説明する。
【0053】
本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1は、コイルユニット4上のトッププレート2に載置された加熱対象物を加熱する際、局所的な加熱の強さを制御できる。例えば、誘導加熱調理器1のコントローラ5は、1つ以上の加熱モードによって加熱対象物を加熱することで、局所的な加熱の強弱を制御することができる。加熱モードは、加熱が強い領域または加熱が弱い領域を局所的に生じさせる加熱方法を示す。したがって、コントローラ5が所定の加熱モードで加熱対象物を加熱するように制御した場合、加熱対象物は、当該所定の加熱モードに対応する所定の部位が他の部位より強く加熱され得る。加熱モードは、例えば、当該加熱モードを実現する電流のパラメータとともに記憶装置8に格納され得る。なお、コントローラ5による局所的な加熱の強弱の制御は、必ずしもあらかじめ定められた加熱モードを用いる必要はない。例えば、所定の領域を強く(又は弱く)加熱できる電流のパラメータを記憶装置8に記憶させておき、強く加熱することが求められる領域が複数ある場合、コントローラは、記憶されている情報を組み合わせて、加熱を制御してもよい。
【0054】
以下、本実施の形態1に係るコントローラ5による、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御する方法の一例を説明する。
【0055】
誘導加熱調理器1において、複数のコイルピース10は、上記したように、加熱領域の外周を画定する外周ラインと、加熱領域の中心から外周に向かって放射状に延びる複数の境界ラインと、によって画定される複数のコイル配置領域内に配置される。例えば、2つの隣接するコイルピース10Aとコイルピース10Bは、2つの隣接するコイル配置領域S1内とコイル配置領域S2内とにそれぞれ配置される。コイル配置領域S1及びコイル配置領域S2は、共有する境界ラインL2によって画定される。したがって、コイルピース10Aの一部およびコイルピース10Bの一部は、境界ラインL2に沿って配置される。
【0056】
コントローラ5は、コイルピース10Aにおいて境界ラインL2に沿った部位に流れる電流と、コイルピース10Bにおいて境界ラインL2に沿った部位に流れる電流とが、所定の位相差を有するようにコイルピース10A,10Bに流れる電流を制御し得る。コイルピース10Aにおいて境界ラインL2に沿った部位は、図3に記載のコイル線11の直線部22、32、42に相当する。コイルピース10Bにおいて境界ラインL2に沿った部位は、図3に記載の示すコイルピース10Aをコイルピース10Bとみなした場合、コイル線11の直線部21、31、41に相当する。
【0057】
例えば、コントローラ5は、所定の位相差として0°の位相差を有するように、すなわち同位相となるように、電流を制御し得る。このように電流を制御すると、コントローラ5は、コイルピース10Aとコイルピース10Bとが互いに隣り合う部位に対応する領域に載置された加熱対象物の部分を、加熱対象物の他の部分よりも強く加熱することができる。より具体的には、コントローラ5は、当該加熱対象物の部分を、コイルピース10A及びコイルピース10Bの他の部分に対応する領域に載置された加熱対象物の部分よりも強く加熱することができる。
【0058】
隣り合う部位に対応する領域は、例えば、トッププレート2において、当該部位の鉛直方向上側(図1におけるZ方向)に位置する領域である。他の部分に対応する領域は、例えば、トッププレート2において、コイルピース10A,10Bの隣り合う部位以外の部位(中央部分又は外周部分等)の鉛直方向上側に位置する領域である。
【0059】
図6は、隣接する2つのコイルピースにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流の位相差が0°である場合の電流波形の一例を示すグラフである。より具体的には、図6(a)は、コイルピース10Aにおいて境界ラインL2に沿った部位に流れる電流の波形を示すグラフである。図6(b)は、コイルピース10Bにおいて境界ラインL2に沿った部位に流れる電流の波形を示すグラフである。図6に示す各電流波形は、同じ周波数及び同じ振幅を有するがこれに限定されない。図6に示す電流波形は、コイルピース10A及びコイルピース10Bにおいて、時計回りに電流が流れる場合を正方向の電流として示す。図6に示すように、コントローラ5は、コイルピース10Aに流れる電流と、コイルピース10Bに流れる電流とが逆方向に流れるようにインバータ回路53を制御することで、隣接する部位に流れる電流の位相差が0°となるように電流を制御することができる。
【0060】
また、例えば、コントローラ5は、所定の位相差として180°の位相差を有するように電流を制御し得る。このように電流を制御すると、コントローラ5は、コイルピース10A及びコイルピース10Bの外周部分に対応する領域に載置された加熱対象物の部分を、加熱対象物の他の部分よりも強く加熱することができる。より具体的には、コントローラ5は、当該加熱対象物の部分を、コイルピース10A及びコイルピース10Bの内部に対応する領域に載置された加熱対象物の部分よりも強く加熱することができる。
【0061】
外周部分に対応する領域は、例えば、トッププレート2において、コイルピース10A及びコイルピース10Bの周辺の鉛直方向上側(図1におけるZ方向)に位置する領域である。内部に対応する領域は、例えば、トッププレート2において、コイルピース10A及びコイルピース10Bの内部の鉛直方向上側に位置する領域である。内部に対応する領域は、トッププレート2において、外周部分に対応する領域に囲まれている領域であってもよい。
【0062】
図7は、隣接する2つのコイルピースにおいて互いに隣り合う部位に流れる電流の位相差が180°である場合の電流波形の一例を示すグラフである。より具体的には、図7(a)は、コイルピース10Aにおいて境界ラインL2に沿った部位に流れる電流の波形を示すグラフである。図7(b)は、コイルピース10Bにおいて境界ラインL2に沿った部位に流れる電流の波形を示すグラフである。図7に示す各電流波形は、同じ周波数及び同じ振幅を有するがこれに限定されない。図7に示す電流波形は、コイルピース10A及びコイルピース10Bにおいて、時計回りに電流が流れる場合を正方向の電流として示す。図7に示すように、コントローラ5は、コイルピース10Aに流れる電流と、コイルピース10Bに流れる電流とが同じ方向に流れるようにインバータ回路53を制御することで、隣接する部位に流れる電流の位相差が180°となるように電流を制御することができる。
【0063】
所定の位相差は、0°又は180°に限定されず、30°、45°、60°又は90°であってもよい。また、所定の位相差は、その他の差であってもよい。
【0064】
また、コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースに流れる電流の間が所定の周波数差を有するようにインバータ回路53を制御することで、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御することができる。すなわち、コイルピース10Aに流れる電流と、コイルピース10Bに流れる電流とが、所定の周波数差を有するようにインバータ回路53を制御することで、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御することができる。コントローラ5は、コイルピース10Aに流れる電流と、コイルピース10Bに流れる電流との周波数差は、例えば、0であってもよいし、一方のコイルピース10に流れる電流の周波数の1以上の整数倍であってもよい。すなわち、周波数差は、一方のコイルピース10に流れる電流の周波数の0以上の整数倍であってもよい。しかし、周波数差は、これらに限定されず、コントローラ5は、周波数差が0以上の整数倍以外となるようにインバータ回路53を制御してもよい。例えば、コントローラ5は、各コイルピース10に流れる電流の振幅のピークが少なくとも部分的に一致するように電流の周波数及び位相を制御してもよい。
【0065】
このようにコントローラ5は、所定のパラメータを有する電流を各コイルピース10に流すことで、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御することができる。したがって、コントローラ5は、電流を制御することで、所定の加熱モードで、トッププレート2上に載置された加熱対象物を加熱することができる。パラメータは、電流の振幅、位相及び周波数を含む。コントローラ5は、例えば、インバータ回路53のオン/オフを制御することで、各コイルピース10に流れる電流のパラメータを制御できる。本開示に係る実施の形態1において、所定の加熱モードは、第1加熱モード~第5加熱モードを含むが、これに限定されない。
【0066】
図8は、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器において、第1加熱モードによって制御される加熱領域の一例を示す概略図である。図8には、コイルユニット4として6つのコイルピース10A~10Fが記載されている。図8に示す複数のコイルピース10A~10Fは、図2に示す複数のコイルピース10A~10Fに相当する。図8では、複数のコイルピース10に関して、簡便のため、図3には記載されている第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40を省略して、単一のコイル線として示す。なお、コイルピース10の形状は、これに限定されず、例えば、複数のコイルピース10のそれぞれの中央部分に別のコイル線が配置されてもよい。図8において、領域S21は、加熱対象物を強く加熱することができる領域である。領域S21は、隣接する2つのコイルピースの互いに隣り合う部位に位置する。
【0067】
コントローラ5は、例えば表1に示すパラメータを有する電流を各コイルピース10に流すことで、領域S21に対応する領域に載置された加熱対象物の部分を、加熱対象物の他の部分よりも強く加熱することができる。表1に示すパラメータを以後、適宜、第1パラメータと称する。領域S21に対応する領域に載置された加熱対象物の部分は、例えば、トッププレート2において、当該領域S21の鉛直方向上側(図1におけるZ方向)に位置する部分である。
【0068】
【表1】
【0069】
表1において、互いに隣り合う部位に流れる電流のパラメータの関係は、隣接する2つのコイルピース(例えば、コイルピース10Aとコイルピース10B)において、互いに隣り合う部位に流れる電流のパラメータの関係を意味する。この関係は、後述する表2~表6においても同様である。表1に示すように、第1パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同等の振幅を有する。第1パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同じ位相(すなわち、0°の位相差)を有する。第1パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同じ周波数を有する。コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースの全ての組について表1に示す第1パラメータとなるように電流を制御することで、第1加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。
【0070】
図9は、第1加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。図9は、加熱対象物を斜め上方から見下ろした図を示す。後述する図11~14も図9と同様に、加熱対象物を斜め上方から見下ろした図を示す。図9において、領域S22は、加熱対象物の温度が高い領域(すなわち、強く加熱されている領域)である。図9に示すように、加熱対象物の中央部分が、中央部分の周辺部分よりも高温となっている。したがって、加熱対象物の中央部分が、中央部分の周辺部分よりも強く加熱されていることが分かる。なお、第1加熱モードにより強く加熱される領域は、具体的には、図8に示すように、隣接する2つのコイルピースの互いに隣り合う部位に対応する領域である。
【0071】
図10は、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器において、第2加熱モードによって制御される加熱領域の一例を示す概略図である。図10には、コイルユニット4として6つのコイルピース10A~10Fが記載されている。図10において、領域S22は、加熱対象物を強く加熱することができる領域である。領域S23は、複数のコイルピース10の外周(すなわち、コイルユニット4の外周)に位置する。
【0072】
コントローラ5は、例えば表2に示すパラメータを有する電流を各コイルピース10に流すことで、領域S23に対応する領域に載置された加熱対象物の部分を、加熱対象物の他の部分よりも強く加熱することができる。表2に示すパラメータを以後、適宜、第2パラメータと称する。領域S23に対応する領域に載置された加熱対象物の部分は、例えば、トッププレート2において、当該領域S23の鉛直方向上側(図1におけるZ方向)に位置する部分である。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示すように、第2パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同等の振幅を有する。第2パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、逆の位相(すなわち、180°の位相差)を有する。第2パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同じ周波数を有する。コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースの全ての組について表2に示す第2パラメータとなるように電流を制御することで、第2加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。
【0075】
図11は、第2加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。図11において、領域S24は、加熱対象物の温度が高い領域(すなわち、強く加熱されている領域)である。図11に示すように、加熱対象物の中央部分が、中央部分の周辺部分よりも低温となっている。したがって、加熱対象物の当該周辺部分が、中央部分よりも強く加熱されていることが分かる。なお、第2加熱モードにより強く加熱される領域は、具体的には、図10に示すように、複数のコイルピース10の外周に対応する領域である。
【0076】
さらに、コントローラ5は、第1加熱モード及び第2加熱モード以外の加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。例えば、コントローラ5は、表3に示すパラメータを有する電流を各コイルピース10に流すことで、第3加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。表3に示すパラメータを以後、適宜、第3パラメータと称する。
【0077】
【表3】
【0078】
表3に示すように、第3パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、異なる振幅を有する。第3パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同じ位相(すなわち、0°の位相差)を有する。第3パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同じ周波数を有する。コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースの全ての組について表3に示す第3パラメータとなるように電流を制御することで、第3加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。
【0079】
第3加熱モードにおいて、コントローラ5は、電流の振幅が大きいコイルピースと振幅が小さいコイルピースとが交互に並ぶように電流を制御する。したがって、第3加熱モードにおいて、各コイルピース10に流れる電流の振幅は、2つの値のうちの一方を有する。しかし、コントローラ5は、後述するように、他の加熱モードで加熱を制御するために、電流の振幅の種類を3つ以上の値から選択した値となるように電流を制御してもよい。
【0080】
図12は、第3加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。図12において、領域S25は、加熱対象物の温度が高い領域(すなわち、強く加熱されている領域)である。図12に示すように、加熱対象物の中央部分の一部が、中央部分の周辺部分よりも高温となっている。例えば、図8に示すコイルユニット4において、コイルピース10B、10D及び10Eに流れる電流の振幅が、コイルピース10A、10C及び10Eに流れる電流の振幅より大きい場合、加熱対象物はこのように加熱され得る。コントローラ5は、各コイルピース10に流れる電流の振幅を変更することで、加熱対象物への加熱の強さ、及び強く加熱する領域を変更することができる。
【0081】
また、例えば、コントローラ5は、表4に示すパラメータを有する電流を各コイルピース10に流すことで、第4加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。表4に示すパラメータを以後、適宜、第4パラメータと称する。
【0082】
【表4】
【0083】
表4に示すように、第4パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、異なる振幅を有する。第4パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、逆の位相(すなわち、180°の位相差)を有する。第4パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、異なる周波数を有する。コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースの全ての組について表4に示す第4パラメータとなるように電流を制御することで、第4加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。
【0084】
第4加熱モードにおいて、コントローラ5は、電流の振幅が大きいコイルピースと振幅が小さいコイルピースとが交互に並ぶように電流を制御する。したがって、第4加熱モードにおいて、各コイルピース10に流れる電流の振幅は、2つの値のうちの一方を有する。しかし、コントローラ5は、後述するように、他の加熱モードで加熱を制御するために、電流の振幅の種類を3つ以上の値から選択した値となるように電流を制御してもよい。
【0085】
第4加熱モードにおいて、コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースに流れる電流の周波数の差が、所定の周波数差となるように各コイルピース10に流れる電流を制御する。例えば、コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースの一方に流れる電流の周波数が、他方に流れる電流の2倍の周波数(すなわち、1倍の周波数差)となるように制御してもよい。所定の周波数差は、1倍に限定されず、上記したように0以上の整数倍であってもよい。
【0086】
図13は、第4加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。図13において、領域S26は、加熱対象物の温度が高い領域(すなわち、強く加熱されている領域)である。図13に示すように、加熱対象物の中央部分が、中央部分の周辺部分よりも低温となっている。また、周辺部分の一部が、周辺部分の残りの部分よりも高温となっている。したがって、加熱対象物の当該周辺部分の一部が、中央部分、及び周辺部分の残りの部分よりも強く加熱されていることが分かる。
【0087】
また、例えば、コントローラ5は、表5に示すパラメータを有する電流を各コイルピース10に流すことで、第5加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。表5に示すパラメータを以後、適宜、第5パラメータと称する。
【0088】
【表5】
【0089】
表5に示すように、第5パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同等の振幅を有する。第5パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、異なる位相を有する。具体的には、第5パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、隣接する2つのコイルピースの全ての組について、同等の位相差を有する。同等の位相差は、例えば60°であるがこれに限定されない。第5パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同じ周波数を有する。コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースの全ての組について表5に示す第5パラメータとなるように電流を制御することで、第5加熱モードで加熱対象物を加熱することができる。
【0090】
図14は、第5加熱モードにより加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度の一例の分布図である。図14において、領域S27は、加熱対象物の温度が高い領域(すなわち、強く加熱されている領域)である。図14に示すように、加熱対象物の中央部分が広く、中央部分の周辺部分よりも高温となっている。したがって、加熱対象物の中央部分が広く、中央部分の周辺部分よりも強く加熱されていることが分かる。また、第1加熱モードと比べて広い範囲で加熱していることが分かる。なお、第5加熱モードにより強く加熱される領域は、具体的には、コイルユニット4の鉛直方向上側に対応する領域である。
【0091】
コントローラ5により加熱の制御は、上記する第1加熱モード~第5加熱モードに限定されない。コントローラ5は、隣接する2つのコイルピースにおいて互いに隣り合う部位に流れる電流のパラメータを第1パラメータ~第5パラメータ以外の関係となるように制御することで、上記加熱モード以外の加熱モードで加熱を制御することができる。例えば、コントローラ5は、表6に示すパラメータを有する電流を各コイルピース10に流すように制御できる。表6に示すパラメータを以後、適宜、第6パラメータと称する。
【0092】
【表6】
【0093】
表6に示すように、第6パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、異なる振幅を有する。第6パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、同じ位相(すなわち、0°の位相差)を有する。第6パラメータにおいて、互いに隣り合う部位に流れる電流は、異なる周波数を有する。第6パラメータは、第1パラメータと比べると、電流の振幅が同等でない。この差異により、コントローラ5は、各コイルピース10に流れる電流が第6パラメータを有するように制御することで、互いに隣り合う部位による加熱の強さの強弱を変更することができる。
【0094】
例えば、コントローラ5は、所定のコイルピースに流れる電流の振幅を減少させると、当該所定のコイルピースによって加熱される領域の加熱の強さを、他のコイルピースによって加熱される領域の強さと比べて、弱くすることができる。当該所定のコイルピースによって加熱される領域は、所定のコイルピースと、当該所定のコイルピースに隣接するコイルピースとの間で互いに隣り合う部位によって、加熱される領域を含む。
【0095】
上記した加熱モードにおいて、コントローラ5は、2種類の電流の振幅を用いて加熱の強さの強弱を変更しているがこれに限定されない。例えば、コントローラ5は、3種類の電流の振幅を用いて加熱の強さの強弱を変更してもよい。
【0096】
このように、コントローラ5は、互いに隣り合う部位に流れる電流の振幅、位相、又は周波数のうちの少なくとも1つを制御することで、コイルユニット4による加熱対象物の加熱の強弱を局所的に制御することができる。
【0097】
本開示の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱の分布が異なる複数の加熱モードのうちの1つ以上の加熱モードを用いて、加熱対象物の加熱を制御することができる。例えば、コントローラ5は、第1加熱モードを用いて加熱対象物の加熱を制御してもよいし、第2加熱モードを用いて加熱対象物の加熱を制御してもよい。
【0098】
コントローラ5は、複数の加熱モードのうちの2つ以上の加熱モードを切り換えて、加熱対象物の加熱を制御することができる。コントローラ5は、例えば2つの加熱モードに対応する2種類の電流のパラメータを用いて交互に切り換えてもよいし、当該2種類の電流のパラメータ間で交互に、連続的又は段階的に変化するように切り換えてもよい。
【0099】
コントローラ5は、複数の加熱モードを組み合わせたシーケンスを有し得る。コントローラ5は、加熱モードの組み合わせの異なる複数のシーケンスを備えることで、加熱対象物を加熱することにより調理される内容に応じた、適切な複数の加熱モードで加熱を制御することができる。
【0100】
コントローラ5は、少なくとも第1加熱モードと第2加熱モードを組み合わせた第1シーケンスを有し得る。コントローラ5は、加熱を制御する際の初期値として第1シーケンスを設定し得る。第1シーケンスは、複数の加熱モードの組み合わせにおいて、火力を高くすることができるシーケンスである。したがって、ユーザが、他のシーケンスを選択しない場合、コントローラ5は、最も効率的に加熱を行え得る加熱モードを用いて加熱を制御することができる。また、コントローラ5は、加熱モードの組み合わせが第1シーケンスとは異なる第2シーケンスを有し得る。コントローラ5は、ユーザが第2シーケンスを選択すると、第2シーケンスに含まれる加熱モードによって加熱を制御する。
【0101】
本開示の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、加熱対象物の温度に関する情報を取得することができる。コイルユニット4が加熱対象物を加熱する際、各コイルピース10によって発生する磁界が加熱対象物に影響を与え、加熱対象物内に電流が発生することで、加熱対象物は加熱される。磁界は、加熱対象物による影響を受けるため、各コイルピース10のインピーダンスが変化する。一般に、コイルピース10のインピーダンスは、コイルピース10によって発生する磁界の影響を受ける範囲に載置された加熱対象物の有無、その材質による磁性によって変化する。インピーダンスは、加熱対象物の温度によっても変化するため、コントローラ5は、各コイルピース10のインピーダンスを把握するなど、各コイルピース10の特性の変化を取得することで、加熱対象物の温度の変化を取得することができる。例えば、コントローラ5は、各コイルピース10の特性の変化を取得することで、加熱対象物の、各コイルピース10によって加熱されている領域の温度の変化を取得することができる。つまり、コントローラ5は、各コイルピース10を温度センサのように用いることができる。
【0102】
コントローラ5は、例えば、各コイルピース10に流れる電流を取得する電流センサを回路に設け、電圧値に対する電流値の変化を取得することで、各コイルピース10の特性の変化を取得することができる。各コイルピース10の特性の変化を取得する方法は、電流センサに限定されず、例えば、コントローラ5は、電圧センサを用いて特性の変化を取得してもよい。
【0103】
コントローラ5は、複数のコイルピース10から温度に関する情報を取得すると、温度情報として記憶装置8に格納し得る。温度情報は、例えば、複数のコイルピース10A~10F間の相対的かつ定性的な情報であり得る。温度情報は、これに限定されず、数値であってもよい。コントローラ5は、複数のコイルピース10の位置と、複数のコイルピース10のそれぞれに基づいて取得した温度情報とを関連付けた情報に基づいて、例えば温度が相対的に低い場所を検出することができる。したがって、コントローラ5は、温度が相対的に低い場所を強く加熱するように、複数のコイルピース10のそれぞれに流れる電流のパラメータを制御できる。このように、コントローラ5は、複数のコイルピース10の位置と、複数のコイルピース10のそれぞれに基づいて取得した温度情報とを関連付けた情報に基づいて、複数のコイルピース10のそれぞれに流れる電流のパラメータを制御することができる。
【0104】
例えば、コントローラ5は、当該情報に基づいて、1つ以上のコイルピース10に流れる電流の振幅を変更してもよい。電流の振幅を変更することで、コントローラ5は、当該コイルピース10によって加熱される領域の加熱の強さを制御することができる。また、コントローラ5は、当該情報に基づいて、任意の隣接する2つのコイルピースに流れる電流の位相を変更してもよい。電流の位相を変更することで、コントローラ5は、当該隣接する2つのコイルピースによって強く加熱される領域の位置を制御することができる。
【0105】
また、コントローラ5は、複数のコイルピース10に電流を流し、複数のコイルピース10の特性の変化を取得することで、各コイルピース10の鉛直方向上側にあるトッププレート2上に加熱対象物が載置されているか否かを判断することができる。例えば、コントローラ5は、トッププレート2に加熱対象物が載置されたと判断すると、複数のコイルピース10のそれぞれに流れる電流のパラメータを制御して、載置された位置に対応する1つ以上のコイルピース10による加熱領域を制御する。これにより、コントローラ5は、加熱対象物が載置された位置を効率的に加熱するように電流を制御することができる。
【0106】
本開示に係る誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、コイルユニット4を用いて加熱対象物を加熱する際、複数のコイルピース10の全てに通電するように制御する。したがって、加熱対象物の加熱中にユーザが加熱対象物を移動させたとしても、コントローラ5は、各コイルピース10上に加熱対象物が載置されているか否か判断でき、判断結果に応じて、素早く加熱領域を変更することができる。
【0107】
誘導加熱調理器による加熱のために用いられる加熱対象物は、加熱調理対象を収容する鍋又はフライパンなどの調理容器を含む。このような容器は、例えば鉄に代表される磁性材料で構成され得るが、これに限定されず、複数の材料で構成されることがある。複数の材料は、磁性材料に加えて、例えばアルミニウムに代表される非磁性材料を含み得る。容器は、複数の材料で構成される場合、例えば、底面の中央部分が磁性材料で構成され、その周辺部分(すなわち外周)が非磁性材料で構成され得る。このような、外周が非磁性材料で構成された容器は、中央部分とその周辺部分とが同一の強さで加熱された場合、周辺部分は、中央部分と比べて加熱効率が低いため温度の上昇が小さい。
【0108】
上記したように、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1によれば、コントローラ5は、加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、外周が非磁性材料によって構成される容器がトッププレートに載置された場合、コントローラ5は、非磁性材料に対応する領域を強く加熱するように電流を制御することで、当該容器を効率的に加熱することができる。コントローラ5は、例えば各コイルピース10A~10Fのインピーダンスの変化に基づいて、非磁性材料で構成される容器が載置されたか否か判断し得る。例えば、コントローラ5は、少なくとも一時的に第2加熱モードで加熱するように制御することで、トッププレートに載置された容器の外周を、当該容器の他の部分よりも強く加熱することができる。すなわち、コントローラ5は、少なくとも一時的に、隣接する2つのコイルピースにおいて互いに隣り合う部分に流れる電流の位相が180℃異なるように電流を制御することで、当該容器を効率的に加熱することができる。
【0109】
図15Aは、従来の加熱コイルを有する誘導加熱調理器により加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度変化の一例のグラフである。図15Aにおいて、縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(秒)を示す。図15Aに示す温度変化に関して、加熱対象物は、調理容器である鍋であり、鍋の温度が上昇することで容器内に収容された加熱調理対象である油が加熱される。図15Aに示すグラフは、具体的には、従来の誘導加熱調理器を用いて、約500gの油が約200℃に上昇するまで加熱した際の温度変化の一例を示す。図15Aに示すグラフは、加熱対象物の複数の場所での温度変化を示す。図15Aにおいて、線Aは、鍋の径方向の中心部分の温度である。線Bは、鍋の当該中心部分の周辺部分の温度である。すなわち、線Aは、鍋の径方向内側の温度(以後、適宜、内側の鍋温度という)を示し、線Bは、鍋の径方向外側の温度(以後、適宜、外側の鍋温度という)を示す。線Cは、鍋の径方向の中心部分で測定された油の温度である。線Dは、鍋の当該中心部分の周辺部分で測定された油の温度である。すなわち、線Cは、鍋内に収容された油の径方向内側部分の温度(以後、適宜、外側の油温度という)を示し、線Dは、鍋内に収容された油の径方向外側部分の温度(以後、適宜、外側の油温度という)を示す。線Eは、放射温度計を用いて赤外線によって計測した温度である。
【0110】
図15Aにおいて、従来の誘導加熱調理器のコントローラは、0秒付近で加熱を開始している。加熱を開始すると、図15Aに示すように、各温度は、上昇する。従来の誘導加熱調理器は、加熱領域の中央部分に配置された加熱コイルを備える。したがって、加熱対象物は、中央部分において強く加熱され、中央部分の周辺部分は、中央部分に比べて弱く加熱される。
【0111】
そのため、図15Aに示すように、従来の誘導加熱調理器により加熱対象物を加熱すると、内側の鍋温度が、外側の鍋温度よりも大きく上昇する。図15Aに示す例では、加熱開始後、100秒経過時点では、内側の鍋温度と外側の鍋温度とでは、約50℃の差がある。内側の鍋温度と外側の鍋温度との間に温度差があるため、内側の油温度と外側の油温度との間にも温度差が発生する。図15Aに示す例では、加熱開始後、100秒経過時点では、約15℃の差がある。したがって、従来の誘導加熱調理器による加熱では、外側の油温度が200℃に上昇するまでに必要な時間は、内側の油温度が200℃に上昇するまでに必要な時間よりも時間がかかる。
【0112】
また、誘導加熱調理器は、加熱対象物を加熱する際、加熱対象物の温度が所定温度(例えば300℃)以上とならないように制御する。加熱の出力を上げた場合、外側の油温度が200℃へと上昇する前に、内側の鍋温度が所定温度に到達する可能性がある。加熱出力を上昇させると、内側の鍋温度と外側の鍋温度の差が大きくなるため、油温度が200℃へと上昇する前に内側の鍋温度が所定温度に到達する可能性が増加する。したがって、従来の誘導加熱調理器で加熱する場合、加熱時間は、単純に出力を上昇させたとしても一定時間以上短縮されない。
【0113】
それに対して、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器は、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できるため、従来の誘導加熱調理器に比べて加熱時間を短縮することができる。図15Bは、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器により加熱対象物を加熱した際の、加熱対象物の温度変化の一例のグラフである。図15Bにおいて、縦軸は温度(℃)を示し、横軸は時間(秒)を示す。図15Bに示す温度変化に関して、加熱対象物は、調理容器である鍋であり、鍋の温度が上昇することで容器内に収容された加熱調理対象である油が加熱される。図15Bに示すグラフは、具体的には、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1を用いて、約500gの油が約200℃に上昇するまで加熱した際の温度変化の一例を示す。図15Bに示すグラフは、加熱対象物の複数の場所での温度変化を示す。図15Bにおける線A~線Eは、図15Aにおける線A~線Eと同様の対象の温度を示す。
【0114】
図15Bにおいて、誘導加熱調理器1のコントローラ5は、0秒付近で加熱を開始している。加熱を開始すると、図15Bに示すように、各温度は、上昇する。上記したように、誘導加熱調理器1は、加熱領域において、加熱領域の中心から放射状に配置された複数の加熱コイル(すなわち、複数のコイルピース10)を備える。また、上記したように、誘導加熱調理器1のコントローラ5は、複数のコイルピース10に流れる電流のパラメータを制御することで、加熱の局所的な強弱を制御できる。コントローラ5は、図15Bに示す例において、上記した第1加熱モードと第2加熱モードを切り換えて(すなわち、第1シーケンスで)加熱対象物を加熱している。
【0115】
図15Bの例において、まず、コントローラ5は、期間t1において、第1加熱モードで加熱を制御している。したがって、期間t1において、内側の鍋温度が、外側の鍋温度よりも大きく上昇している。コントローラ5は、期間t2において、第2加熱モードで制御している。したがって、期間t2において、外側の鍋温度が、内側の鍋温度よりも大きく上昇している。図15Bから分かるように、その後、コントローラ5は、第1加熱モードと第2加熱モードとを交互に切り換えることで、加熱対象物の中央部分と周辺部分とを局所的に加熱している。その結果、図15Aに示す例と比べて、内側の鍋温度と外側の鍋温度との差は、小さくなっている。その結果、内側の油温度と外側の油温度との差も小さくなっている。
【0116】
このように、誘導加熱調理器1は、従来の誘導加熱調理器に比べて、加熱対象物を全体的に加熱することできるため、加熱対象物を効率的に加熱することができる。例えば、図15Bの例では、コントローラ5は、第1加熱モードによって加熱対象物の中央部分を加熱し、第2加熱モードによって加熱対象物の当該中央部分の周辺部分を加熱することで、加熱対象物を全体的に加熱するように制御できる。また、加熱対象物の中央部分とその周辺部分をバランスよく加熱することができるため、従来の誘導加熱調理器のように、一部の温度のみが上昇するということがない。したがって、コイルユニット4による加熱出力を上昇させることができるため、実施の形態1の誘導加熱調理器1によれば、従来の誘導加熱調理器に比べて加熱時間が短縮され得る。図15Aの例において、内側の油温度は、加熱後、約350秒後に200℃を超え、図15Bの例において、内側の油温度は、加熱後、約220秒後に200℃を超えているため、加熱時間が短縮されていることが分かる。
【0117】
[効果]
実施の形態1に係る誘導加熱調理器1によれば、以下の効果を奏することができる。
【0118】
本開示の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1は、トッププレート2と、トッププレート2の下方に配置されるコイルユニット4と、コイルユニット4による加熱対象物の加熱を制御するコントローラ5とを備える。コイルユニット4は、平面視において加熱対象物を加熱する加熱領域S0に配置される複数のコイルピース10A~10Fを備える。加熱領域S0は、平面視において、加熱領域S0の外周を画定する外周ラインL10と、加熱領域S0の中心C1から外周に向かって放射状に延びる複数の境界ラインL1~L6と、によって画定される複数のコイル配置領域S1~S6を有する。複数のコイルピース10A~10Fは、平面視において複数のコイル配置領域(S1~S6)内に配置される。複数のコイルピースは、平面視において、複数の境界ライン(L1~L6)のうちの隣り合う2つの境界ラインと、隣り合う2つの境界ライン結ぶ外周ラインL10と、に沿って配置されるコイル線を有する。コントローラ5は、複数のコイルピース10A~10Fの全てに電流を流しながら、加熱対象物の加熱を制御する。
【0119】
このような構成によれば、誘導加熱調理器1は、加熱対象物を効率よく加熱することができる。具体的には、加熱領域S0を複数の境界ラインL1~L6と外周ラインL10とによって複数のコイル配置領域S1~S6に分けている。複数のコイル配置領域S1~S6のそれぞれには、コイルピース10を構成するコイル線11が、隣り合う2つの境界ラインと、隣り合う2つの境界ラインを結ぶ外周ラインL10とに沿って配置されている。これにより、平面視において加熱領域S0の中心C1から外周に向かってコイルピース10のコイル線11が配置されるため、実施の形態1の誘導加熱調理器1は、加熱ムラを低減することができる。また、複数のコイルピース10間の隙間を小さくできると共に、隙間のばらつきを低減することができる。なお、実施の形態1では、コイルピース10の平面視における外形は、コイル配置領域S1~S6のそれぞれの外形に合わせて扇形状のため、より加熱ムラを低減できるが、コイルピース10の外形は扇形状以外であってもよい。たとえばコイルピース10の平面視における外形は、楕円形状、または勾玉形状などであってもよい。
【0120】
また、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1によれば、コントローラ5は、複数のコイルピース10A~10Fの全てに電流を流しながら、加熱対象物の加熱を制御する。したがって、コントローラ5は、全てのコイルピース10A~10Fに通電するため、複数のコイルピース10A~10Fのうちの1つのコイルピースに電流が集中することを避けることができ、総合的には高出力で加熱対象物を加熱することができる。また、全てのコイルピース10A~10Fが常時通電されているため、応答速度が速い。したがって、各コイルピース10A~10Fは、コントローラ5からの指示に対して早く応答できる。また、コントローラ5は、例えば電流のパラメータを漸進的に変更することで、各コイルピース10A~10Fの応答速度を制御することができる。
【0121】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流のパラメータの少なくとも一部を制御することで、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御する。パラメータは、電流の振幅、位相及び周波数を含む。このように、誘導加熱調理器1のコントローラ5は、複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流のパラメータの少なくとも一部を制御することで、コイルユニット4上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0122】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱の分布が異なる複数の加熱モードのうちの1つ以上の加熱モードを用いて加熱対象物の加熱を制御する。このように制御することで、コントローラ5は、あらかじめ定められた局所的な強弱の分布を有する加熱モードを用いて、コイルユニット4上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0123】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、複数の加熱モードのうちの2つ以上の加熱モードを切り換えて、加熱対象物の加熱を制御する。このように制御することで、コントローラ5は、複数の加熱モードで加熱対象物に対する加熱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0124】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、複数の加熱モードの2つ以上を組み合わせた複数の所定シーケンスを有し、複数の所定シーケンスはそれぞれ、複数の加熱モードの組み合わせが異なる。このように構成することで、コントローラ5は、例えばユーザが複数の所定シーケンスのいずれかを選択することで、加熱対象物が加熱する調理物に応じた、適切な複数の加熱モードを用いて加熱を制御することができる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0125】
また、誘導加熱調理器1において、複数の加熱モードは、第1加熱モードを含み、第1加熱モードは、コントローラ5に複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流を制御させて、複数のコイルピース10A~10Fのうちの隣接する2つのコイルピースの隣り合う部位に対応する領域上の加熱対象物を、隣接する2つのコイルピースのそれぞれの外周ラインL10に沿った部位に対応する領域上の加熱対象物よりも強く加熱させる。コントローラ5は、第1加熱モードによって加熱対象物を加熱することにより、コイルユニット4の中央部分上にある加熱対象物の部分を、コイルユニット4の中央部分の周辺部分上にある加熱対象物の部分よりも強く加熱することができる。したがって、誘導加熱調理器1は、コイルユニット4の中央部分上にある加熱対象物の部分を強く加熱する際、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0126】
また、誘導加熱調理器1において、複数の加熱モードは、第2加熱モードを含み、第2加熱モードは、コントローラ5に複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流を制御させて、複数のコイルピース10A~10Fの外周ラインL10に沿った部位に対応する領域上の加熱対象物を、複数のコイルピース10A~10Fの少なくとも1つのコイルピースの中央に対応する領域上の加熱対象物よりも強く加熱させる。コントローラ5は、第2加熱モードによって加熱対象物を加熱することにより、コイルユニット4の中央部分の周辺部分上にある加熱対象物の部分を、複数のコイルピース10A~10Fの少なくとも1つのコイルピースの中央の上側にある加熱対象物の部分よりも強く加熱することができる。したがって、誘導加熱調理器1は、コイルユニット4の中央部分の周辺部分上にある加熱対象物の部分を強く加熱する際、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0127】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、少なくとも第1加熱モード及び第2加熱モードを組み合わせた第1シーケンスと、加熱モードの組み合わせが第1シーケンスとは異なる第2シーケンスとを有し、ユーザが第2シーケンスを選択すると、第2シーケンスで加熱対象物の加熱を制御する。このように制御することで、コントローラ5は、ユーザが第2シーケンスを選択しない場合、第1シーケンスで加熱対象物を加熱し、ユーザが第2シーケンスを選択した場合、第2シーケンスで加熱対象物を加熱するように制御する。第1シーケンスの火力は、第2シーケンスの火力より高いため、誘導加熱調理器1は、ユーザが第2シーケンスを選択した場合を除き、より火力が高いシーケンスで加熱対象物を加熱することができる。
【0128】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、複数のコイルピース10A~10Fの位置と、複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに基づいて取得した温度情報とを関連付けた情報に基づいて、複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流のパラメータを制御する。このように制御することで、コントローラ5は、温度情報に基づいて、加熱対象物内で温度が低い部位を把握し、温度が低い部位をより強く加熱できるように、温度が低い部位に関連するコイルピースに流れる電流のパラメータを制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0129】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、複数のコイルピース10A~10Fの位置と、複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに基づいて取得した温度情報とを関連付けた情報に基づいて、隣接する2つのコイルピースに流れる電流の位相を制御する。このように制御することで、コントローラ5は、温度情報に基づいて、加熱対象物内で温度が低い部位を把握し、温度が低い部位をより強く加熱できるように、温度が低い部位に関連する隣接する2つのコイルピースに流れる電流の位相を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0130】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、トッププレート2に加熱対象物が配置された領域に基づいて、複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流のパラメータを制御する。このように制御することで、コントローラ5は、トッププレート2に加熱対象物が配置された領域を取得すると、当該領域を強く加熱するように電流のパラメータを制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0131】
また、誘導加熱調理器1において、複数のコイルピース10A~10Fは、複数のコイル配置領域S1~S6のうちの隣接する2つのコイル配置領域のそれぞれに配置される第1コイルピース及び第2コイルピースを有する。第1コイルピースの一部及び第2コイルピースの一部は、複数の境界ラインL1~L6のうちの所定境界ラインに沿って配置される。コントローラ5は、第1コイルピースにおいて所定境界ラインに沿った部位に流れる電流と、第2コイルピースにおいて所定境界ラインに沿った部位に流れる電流とが所定の位相差若しくは所定の周波数差又はその両方を有するように複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流を制御する。このように制御することで、誘導加熱調理器1のコントローラ5は、コイルユニット4上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。特に、コントローラ5は、第1コイルピース及び第2コイルピース上に、又はその外周上に配置された加熱対象物の部分に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0132】
また、誘導加熱調理器1において、所定の位相差は、例えば、0°、30°、45°、60°、90°又は180°である。このように制御することで、コントローラ5は、第1コイルピース及び第2コイルピース上に、又はその外周上に配置された加熱対象物の部分に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0133】
また、誘導加熱調理器1において、所定の周波数差は、例えば、第1コイルピース又は第2コイルピースに流れる電流の周波数の0以上の整数倍である。このように制御することで、コントローラ5は、第1コイルピース及び第2コイルピース上に、又はその外周上に配置された加熱対象物の部分に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0134】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、複数のコイル配置領域S1~S6のうちの隣接する2つのコイル配置領域のそれぞれに配置される、複数のコイルピース10A~10Fのうちの隣接する2つのコイルピースの組のそれぞれにおいて、複数の境界ラインL1~L6のうちの、隣接する2つのコイルピースの間にある境界ラインに沿ったそれぞれの部位に流れる電流が所定の位相差若しくは所定の周波数差又はその両方を有するように複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流を制御する。このように制御することで、誘導加熱調理器1のコントローラ5は、コイルユニット4上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0135】
また、誘導加熱調理器1において、所定の位相差は、例えば、0°、30°、45°、60°、90°又は180°である。このように制御することで、コントローラ5は、コイルユニット4上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0136】
また、誘導加熱調理器1において、所定の周波数差は、例えば、隣接する2つのコイルピースのうちの1つに流れる電流の周波数の0以上の整数倍である。このように制御することで、コントローラ5は、コイルユニット4上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0137】
また、誘導加熱調理器1において、コントローラ5は、外周が非磁性材料によって構成される加熱対象物がトッププレート2に載置された場合、所定の位相差が180°となるように、複数のコイルピース10A~10Fのそれぞれに流れる電流のパラメータを制御する。このように構成することで、コントローラ5は、例えば、加熱対象物として、中央部分が磁性材料、中央部分の周辺部分が非磁性材料で構成される鍋がトッププレート上に載置された場合、周辺部分を中央部分より強く加熱するように制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0138】
なお、実施の形態1では、複数のコイル配置領域S1~S6の数が6つである例について説明したが、これに限定されない。また、複数のコイルピース10の数が6つである例について説明したが、これに限定されない。複数のコイル配置領域の数は、3つ以上8つ以下であればよい。複数のコイルピース10の数は、3つ以上8つ以下であればよい。このような構成によれば、誘導加熱調理器の加熱効率を向上させつつ、製造コストの低減が実現され得る。
【0139】
実施の形態1では、複数のコイル配置領域S1~S6が略同じ形状及び同じサイズである例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数のコイル配置領域S1~S6は、異なる形状及び/又は異なるサイズであってもよい。
【0140】
実施の形態1では、複数のコイルピース10が略同じ形状及び略同じサイズである例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数のコイルピース10は異なる形状及び/又は異なるサイズであってもよい。
【0141】
また、実施の形態1では、第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40のそれぞれの厚みは同じとしたが、少なくともいずれか一つの厚みを他の厚みと変えてもよい。コイル線部の厚みが大きくなるほどターン数を増やすことができ、加熱エネルギーを大きくすることができる。したがって、熱効率を高めることが必要な領域では、コイル線部の厚みを大きくすることで、加熱領域S0全体の加熱効率を高めることができる。なお、コイル線部の幅を大きくすることで加熱エネルギーを増やすこともできるが、コイル線部の幅を広げると、コイル配置領域S1~S6の形状に沿って急峻に折り曲げることが難しくなる。したがって、コイル線部の幅ではなく、厚みを大きくする方が、製造が容易となる。
【0142】
実施の形態1では、複数の境界ラインL1~L6が平面視において加熱領域S0の中心C1から外周に向かって延びる直線である例について説明したが、これに限定されない。例えば、複数の境界ラインL1~L6は、平面視において加熱領域S0の中心C1から外周に向かって延びる曲線であってもよい。
【0143】
実施の形態1では、コイル線11が第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40を有する例について説明したが、これに限定されない。例えば、コイル線11は、第2コイル線部30及び第3コイル線部40を含まず、第1コイル線部20で構成されていてもよい。コイル線11は、第3コイル線部40を含まず、第1コイル線部20及び第2コイル線部30で構成されていてもよい。また、実施の形態1では、第2コイル線部30および第3コイル線部40の外形は平面視において扇形状であるが、たとえば第2コイル線部30および第3コイル線部40の少なくとも一方の外形は、平面視において丸形状または他の形状であってもよい。
【0144】
実施の形態1では、第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40が一体で形成される例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1コイル線部20、第2コイル線部30及び第3コイル線部40は、別々の部材で形成されていてもよい。
【0145】
実施の形態1では、コイルユニット4が誘導加熱調理器1に適用される例について説明したが、これに限定されない。コイルユニット4は、誘導加熱調理器1以外の装置に適用されてもよい。
【0146】
(変形例)
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態1の変形例を記載する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0147】
一変型例において、誘導加熱調理器1の回路は、図16に示す回路のように構成されてもよい。図16は、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1の別の例の回路図である。図16に示す回路は、図5に示す回路に対して、共振コンデンサ54の位置が変更されている。具体的には、共振コンデンサ54が、スイッチング素子57の配線56a側に配置されている。さらに、コイルピース10A~10Fに対して、共振コンデンサ59A~59Fが並列に接続されている。このように構成することで、コントローラ5は、コイルピース10の周波数にかかわらず、複数のインバータ回路53のスイッチング周波数を共通化させることができるため、うなりの発生を抑制することができる。
【0148】
一変型例において、誘導加熱調理器1の回路は、図17に示す回路のように構成されてもよい。図17は、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1のさらに別の例の回路図である。図17に示す回路は、図5に示す回路に対して、ダイオードブリッジ51に数が増加している。また、ダイオードブリッジ51の下流に配置されるコイルピース10の数が変更されている。この構成によれば、複数のコイルピース10に電力を供給するためのダイオードブリッジ51が分けられているため、コントローラ5は、電力を容易に検出することができる。
【0149】
一変型例において、誘導加熱調理器1の回路は、図18に示す回路のように構成されてもよい。図18は、本開示に係る実施の形態1の誘導加熱調理器1のさらに別の例の回路図である。図18に示す回路は、図5に示す回路に対して、2つのコイルピース10が並列に構成されている。この構成によれば、部品点数を抑えることができるため、コストを低減することができる。
【0150】
このように、本開示の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1の回路は、図5に示す回路に限定されず、様々な回路が利用され得る。
【0151】
(態様のまとめ)
以上の説明から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0152】
(態様1)誘導加熱調理器(1)は、トッププレート(2)と、トッププレート(2)の下方に配置されるコイルユニット(4)と、コイルユニット(4)による加熱対象物の加熱を制御するコントローラ(5)と、を備え、コイルユニット(4)は、平面視において加熱対象物を加熱する加熱領域(S0)に配置される複数のコイルピース(10A~10F)を備え、加熱領域(S0)は、平面視において、加熱領域(S0)の外周を画定する外周ライン(L10)と、加熱領域(S0)の中心から外周に向かって放射状に延びる複数の境界ライン(L1~L6)と、によって画定される複数のコイル配置領域(S1~S6)を有し、複数のコイルピース(10A~10F)は、平面視において複数のコイル配置領域(S1~S6)内に配置され、コントローラ(5)は、複数のコイルピース(10A~10F)の全てに電流を流しながら、加熱対象物の加熱を制御する。
【0153】
このような構成によれば、コントローラ(5)は、複数のコイルピース(10A~10F)の全てに常に電流を流しながら、加熱対象物の加熱を制御する。したがって、コントローラ(5)は、全てのコイルピース(10A~10F)に通電するため、複数のコイルピース(10A~10F)のうちの1つのコイルピースに電流が集中することを避けることができ、総合的には高出力で加熱対象物を加熱することができる。また、全てのコイルピース(10A~10F)が常時通電されているため、応答速度が速い。したがって、各コイルピース(10A~10F)は、コントローラ(5)からの指示に対して早く応答できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、加熱対象物を効率よく加熱することができる。
【0154】
(態様2)複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれは、平面視において、複数の境界ライン(L1~L6)のうち隣り合う2つの境界ラインと、隣り合う2つの境界ラインを結ぶ外周ライン(L10)と、に沿って配置されるコイル線(11)を有してもよい。このように構成すれば、加熱ムラが低減され得るため、誘導加熱調理器(1)は、加熱対象物を効率よく加熱することができる。
【0155】
(態様3)態様1又は態様2の誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流のパラメータの少なくとも一部を制御することで、加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御し、パラメータは、電流の振幅、位相及び周波数を含んでもよい。このように、コントローラ(5)は、複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流のパラメータの少なくとも一部を制御することで、コイルユニット(4)上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0156】
(態様4)態様3の誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は記加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱の分布が異なる複数の加熱モードのうちの1つ以上の加熱モードを用いて加熱対象物の加熱を制御してもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、あらかじめ定められた局所的な強弱の分布を有する加熱モードを用いて、コイルユニット(4)上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0157】
(態様5)態様4の誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、複数の加熱モードのうちの2つ以上の加熱モードを切り換えて、加熱対象物の加熱を制御してもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、複数の加熱モードで加熱対象物に対する加熱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0158】
(態様6)態様4又は態様5の誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、複数の加熱モードの2つ以上を組み合わせた複数の所定シーケンスを有し、複数の所定シーケンスはそれぞれ、複数の加熱モードの組み合わせが異なってもよい。このように構成することで、コントローラ(5)は、例えばユーザが複数の所定シーケンスのいずれかを選択することで、加熱対象物が加熱する調理物に応じた、適切な複数の加熱モードを用いて加熱を制御することができる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0159】
(態様7)態様4から態様6のいずれかの誘導加熱調理器(1)において、複数の加熱モードは、第1加熱モードを含み、第1加熱モードは、コントローラ(5)に複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流を制御させて、複数のコイルピース(10A~10F)のうちの隣接する2つのコイルピースの隣り合う部位に対応する領域上の加熱対象物を、隣接する2つのコイルピースのそれぞれの外周ライン(L10)に沿った部位に対応する領域上の加熱対象物よりも強く加熱させてもよい。コントローラ(5)は、第1加熱モードによって加熱対象物を加熱することにより、コイルユニット(4)の中央部分上にある加熱対象物の部分を、コイルユニット(4)の中央部分の周辺部分上にある加熱対象物の部分よりも強く加熱することができる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、コイルユニット(4)の中央部分上にある加熱対象物の部分を強く加熱する際、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0160】
(態様8)態様7の誘導加熱調理器(1)において、複数の加熱モードは、第2加熱モードを含み、第2加熱モードは、コントローラ(5)に複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流を制御させて、複数のコイルピース(10A~10F)の外周ライン(L10)に沿った部位に対応する領域上の加熱対象物を、複数のコイルピース(10A~10F)の少なくとも1つのコイルピースの中央に対応する領域上の加熱対象物よりも強く加熱させてもよい。コントローラ(5)は、第2加熱モードによって加熱対象物を加熱することにより、コイルユニット(4)の中央部分の周辺部分上にある加熱対象物の部分を、複数のコイルピース(10A~10F)の少なくとも1つのコイルピースの中央の上側にある加熱対象物の部分よりも強く加熱することができる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、コイルユニット(4)の中央部分の周辺部分上にある加熱対象物の部分を強く加熱する際、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0161】
(態様9)態様8の誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、少なくとも第1加熱モード及び第2加熱モードを組み合わせた第1シーケンスと、加熱モードの組み合わせが第1シーケンスとは異なる第2シーケンスとを有し、ユーザが第2シーケンスを選択すると、第2シーケンスで加熱対象物の加熱を制御してもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、ユーザが第2シーケンスを選択しない場合、第1シーケンスで加熱対象物を加熱し、ユーザが第2シーケンスを選択した場合、第2シーケンスで加熱対象物を加熱するように制御する。第1シーケンスの火力は、第2シーケンスの火力より高いため、誘導加熱調理器(1)は、ユーザが第2シーケンスを選択した場合を除き、より火力が高いシーケンスで加熱対象物を加熱することができる。
【0162】
(態様10)態様3から態様9のいずれかの誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、複数のコイルピース(10A~10F)の位置と、複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに基づいて取得した温度情報とを関連付けた情報に基づいて、複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流のパラメータを制御してもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、温度情報に基づいて、加熱対象物内で温度が低い部位を把握し、温度が低い部位をより強く加熱できるように、温度が低い部位に関連するコイルピースに流れる電流のパラメータを制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0163】
(態様11)態様10の誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、情報に基づいて、隣接する2つのコイルピースに流れる電流の位相を制御してもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、温度情報に基づいて、加熱対象物内で温度が低い部位を把握し、温度が低い部位をより強く加熱できるように、温度が低い部位に関連する隣接する2つのコイルピースに流れる電流の位相を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0164】
(態様12)態様3から態様11のいずれかの誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、トッププレート(2)に加熱対象物が配置された領域に基づいて、複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流のパラメータを制御してもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、トッププレート(2)に加熱対象物が配置された領域を取得すると、当該領域を強く加熱するように電流のパラメータを制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0165】
(態様13)態様3から態様12のいずれかの誘導加熱調理器(1)において、複数のコイル配置領域(S1~S6)の数は、3つ以上8つ以下であってもよい。このように構成することで、誘導加熱調理器(1)の加熱効率を向上させつつ、製造コストの低減が実現され得る。
【0166】
(態様14)態様3から態様13のいずれかの誘導加熱調理器(1)において、複数のコイルピース(10A~10F)は、複数のコイル配置領域(S1~S6)のうちの隣接する2つのコイル配置領域のそれぞれに配置される第1コイルピース及び第2コイルピースを有し、第1コイルピースの一部及び第2コイルピースの一部は、複数の境界ライン(L1~L6)のうちの所定境界ラインに沿って配置され、コントローラ(5)は、第1コイルピースにおいて所定境界ラインに沿った部位に流れる電流と、第2コイルピースにおいて所定境界ラインに沿った部位に流れる電流とが所定の位相差若しくは所定の周波数差又はその両方を有するように複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流を制御してもよい。このように制御することで、誘導加熱調理器(1)のコントローラ(5)は、コイルユニット(4)上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。特に、コントローラ(5)は、第1コイルピース及び第2コイルピース上に、又はその外周上に配置された加熱対象物の部分に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0167】
(態様15)態様14の誘導加熱調理器(1)において、所定の位相差は、0°、30°、45°、60°、90°又は180°であってもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、第1コイルピース及び第2コイルピース上に、又はその外周上に配置された加熱対象物の部分に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0168】
(態様16)態様14又は態様15の誘導加熱調理器(1)において、所定の周波数差は、第1コイルピース又は第2コイルピースに流れる電流の周波数の0以上の整数倍であってもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、第1コイルピース及び第2コイルピース上に、又はその外周上に配置された加熱対象物の部分に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0169】
(態様17)態様3から態様13のいずれかの誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、複数のコイル配置領域(S1~S6)のうちの隣接する2つのコイル配置領域のそれぞれに配置される、複数のコイルピース(10A~10F)のうちの隣接する2つのコイルピースの組のそれぞれにおいて、複数の境界ライン(L1~L6)のうちの、隣接する2つのコイルピースの間にある境界ラインに沿ったそれぞれの部位に流れる電流が所定の位相差若しくは所定の周波数差又はその両方を有するように複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流を制御してもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、コイルユニット(4)上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0170】
(態様18)態様17の誘導加熱調理器(1)において、所定の位相差は、0°、30°、45°、60°、90°又は180°であってもよい。このように制御することで、コントローラ5は、コイルユニット4上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0171】
(態様19)態様17又は態様18の誘導加熱調理器(1)において、所定の周波数差は、隣接する2つのコイルピースのうちの1つに流れる電流の周波数の0以上の整数倍であってもよい。このように制御することで、コントローラ(5)は、コイルユニット(4)上に、又はその外周上に配置された加熱対象物に対する加熱の局所的な強弱を制御できる。したがって、誘導加熱調理器(1)は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0172】
(態様20)態様17から態様19のいずれかの誘導加熱調理器(1)において、コントローラ(5)は、外周が非磁性材料によって構成される加熱対象物がトッププレート(2)に載置された場合、所定の位相差が180°となるように、複数のコイルピース(10A~10F)のそれぞれに流れる電流のパラメータを制御してもよい。このように構成することで、コントローラ5は、例えば、加熱対象物として、中央部分が磁性材料、中央部分の周辺部分が非磁性材料で構成される鍋がトッププレート上に載置された場合、周辺部分を中央部分より強く加熱するように制御できる。したがって、誘導加熱調理器1は、効率よく加熱対象物を加熱することができる。
【0173】
本開示に記載のシステムは、ハードウェア資源、例えば、プロセッサ、メモリ、と、ソフトウェア資源(コンピュータプログラム)との協働などによって実現される。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本開示によれば、複数の加熱コイルにより加熱対象物を効率よく加熱することができる誘導加熱調理器を提供することができるため、この種の産業分野において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0175】
1 誘導加熱調理器
2 トッププレート
3 筐体
4 コイルユニット
5 コントローラ
6 入出力インタフェース装置
7 演算回路
8 記憶装置
10,10A~10F コイルピース
11 コイル線
53,53A~53F インバータ回路
L1~L6 境界ライン
L10 外周ライン
S0 加熱領域
S1~S6 コイル配置領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18