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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183269
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20231220BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C9/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096800
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】河野 恭介
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131BA03
3D131BB06
3D131BB09
3D131BC15
3D131CA03
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA52
3D131EA08U
3D131EA09V
3D131EA09X
3D131KA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車体の倒し込み初期での旋回性能を高めるめることができる自動二輪車用タイヤを提供する。
【解決手段】ジョイントレスバンドプライからなるトレッド補強層7を含む自動二輪車用タイヤ1である。ジョイントレスバンドプライは、トレッド展開幅TWeの65%以下の展開幅を有する。トレッド部2の接地面プロファイルPは、曲率半径R1のクラウン円弧部Pcと、曲率半径R2の一対のショルダー円弧部Psとを含む。曲率半径R1は、曲率半径R2よりも小さく、かつ、タイヤ断面幅Wtの50%よりも小さい。正規状態において、クラウン円弧部Pcの外端P1は、ジョイントレスバンドプライの外端8eよりもタイヤ軸方向の内側に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車用タイヤであって、
トレッド部と、トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側かつ前記トレッド部に配されたトレッド補強層とを含み、
前記トレッド補強層は、バンド層を含み、
前記バンド層は、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライからなり、
前記ジョイントレスバンドプライは、タイヤ赤道を中心として、トレッド展開幅の65%以下の展開幅を有し、
前記トレッド部の接地面プロファイルは、タイヤ赤道を含む曲率半径R1のクラウン円弧部と、前記クラウン円弧部の一対のタイヤ軸方向の外端から延びる曲率半径R2の一対のショルダー円弧部とを含み、
前記曲率半径R1は、前記曲率半径R2よりも小さく、
前記曲率半径R1は、タイヤ断面幅の50%よりも小さく、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧に調整された正規状態において、前記クラウン円弧部の前記一対の外端は、それぞれ、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ軸方向の一対の外端よりもタイヤ軸方向の内側に位置する、
自動二輪車用タイヤ。
【請求項2】
前記曲率半径R2と前記曲率半径R1との比(R2/R1)は、1.1~3.0である、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項3】
前記クラウン円弧部は、タイヤ赤道を中心として、トレッド展開幅の30%以上の展開幅を有する、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項4】
前記ジョイントレスバンドプライは、タイヤ赤道を中心として、トレッド展開幅の30%以上かつ50%未満の展開幅を有する、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項5】
前記トレッド補強層は、さらに、ベルト層を含み、
前記ベルト層は、複数のベルトコードが並列された複数のベルトプライを含み、
前記複数のベルトプライは、それぞれ、前記ジョイントレスバンドプライの前記展開幅よりも大きい展開幅を有する、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項6】
前記複数のベルトプライは、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ半径方向の外側に配される外側ベルトプライと、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ半径方向の内側に配される内側ベルトプライとを含む、請求項5に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項7】
前記外側ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対する角度θoは、前記内側ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対する角度θiよりも大きい、請求項6に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項8】
前記角度θoと前記角度θiとの差(θo-θi)は、10~40度である、請求項7に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項9】
前記角度θoは、70~90度であり、
前記角度θiは、50~80度である、請求項7に記載の自動二輪車用タイヤ。
【請求項10】
前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ軸方向の両外側において、前記外側ベルトプライと前記内側ベルトプライとの間に補強ゴム層が配されており、
前記補強ゴム層の配置範囲では、前記外側ベルトプライと前記内側ベルトプライとの間のベルトコード最小近接距離が0.5~3mmである、請求項6に記載の自動二輪車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、タイヤ赤道方向に対する角度が0度~5度であるスパイラルベルト層が配設された自動二輪車用空気入りタイヤが記載されている。このタイヤは、前記スパイラルベルト層の端部からトレッド部の端部にかけての曲率半径が、前記スパイラルベルト層の端部からタイヤ赤道面にかけての曲率半径よりも大径となっている。このようなタイヤは、深いコーナリング時から加速する時のトラクション性能と車体倒しこみ時の安定性を向上させるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5327957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、この種の自動二輪車用タイヤにおいて、車体の倒し込み初期での旋回性能を高めることが望まれている。
【0005】
本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、車体の倒し込み初期での旋回性能を高めることができる自動二輪車用タイヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動二輪車用タイヤであって、トレッド部と、トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側かつ前記トレッド部に配されたトレッド補強層とを含み、前記トレッド補強層は、バンド層を含み、前記バンド層は、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライからなり、前記ジョイントレスバンドプライは、タイヤ赤道を中心として、トレッド展開幅の65%以下の展開幅を有し、前記トレッド部の接地面プロファイルは、タイヤ赤道を含む曲率半径R1のクラウン円弧部と、前記クラウン円弧部の一対のタイヤ軸方向の外端から延びる曲率半径R2の一対のショルダー円弧部とを含み、前記曲率半径R1は、前記曲率半径R2よりも小さく、前記曲率半径R1は、タイヤ断面幅の50%よりも小さく、正規リムにリム組みしかつ正規内圧に調整された正規状態において、前記クラウン円弧部の前記一対の外端は、それぞれ、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ軸方向の一対の外端よりもタイヤ軸方向の内側に位置する、自動二輪車用タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動二輪車用タイヤは、上記の構成を採用することで、車体の倒し込み初期での旋回性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の自動二輪車用タイヤの一実施例を示すタイヤ子午線断面図である。
図2図1のタイヤのトレッド部の展開図である。
図3】トレッド補強層の横断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の自動二輪車用タイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。本発明のタイヤ1は、例えば、サーキットでのレース走行を目的としたものに好適に用いられる。このようなタイヤ1は、相対的に大きな速度で走行されるので、タイヤ1の外径成長が促進される。但し、本発明のタイヤ1は、このようなレース走行のものに限定されるものではない。
【0010】
前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧となるように調整され、しかも無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤ1の各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
【0011】
また、「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
また、「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2を含んでいる。トレッド部2の外表面であるトレッド接地面2aは、例えば、一対のトレッド端Te間を、タイヤ半径方向外側に凸となる円弧状に湾曲して延びている。このようなタイヤ1は、大きなキャンバー角で旋回することができる。
【0014】
ここで、トレッド端Teは、キャンバー角が最大となるときに接地するタイヤ軸方向の外端である。本実施形態のタイヤ1は、トレッド端Teの位置が、タイヤ最大幅位置である。両トレッド端Te、Te間をトレッド接地面2aに沿って測定された長さが、トレッド展開幅TWeである。また、両トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の中心がタイヤ赤道Cである。
【0015】
タイヤ1は、さらに、トロイド状のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向の外側かつトレッド部2に配されたトレッド補強層7とを含んでいる。本実施形態のカーカス6は、周知の構造で形成されている。
【0016】
図2は、トレッド補強層7の展開図である。図1及び図2に示されるように、トレッド補強層7は、本実施形態では、バンド層8を含んでいる。バンド層8は、バンドコード8cがタイヤ周方向に対して5度以下の角度θaで螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライ8Aとして形成される。このようなバンド層8は、タイヤ1の外径成長を抑制して、高い高速安定性を発揮する。
【0017】
ジョイントレスバンドプライ8Aは、タイヤ赤道Cを中心として、トレッド展開幅TWeの65%以下の展開幅Waを有している。これにより、車体倒し込み初期以降において、路面と接地するトレッド接地面2aのタイヤ半径方向の内側にジョイントレスバンドプライ8Aが配されないので、基本的な旋回性能が確保される。
【0018】
トレッド部2の接地面プロファイルPは、タイヤ赤道Cを含む曲率半径R1のクラウン円弧部Pcと、クラウン円弧部Pcの一対のタイヤ軸方向の外端P1から延びる曲率半径R2の一対のショルダー円弧部Psとを含んでいる。接地面プロファイルPは、タイヤ子午線断面におけるトレッド接地面2aの輪郭である。
【0019】
曲率半径R1は、接地面プロファイルPのタイヤ赤道C上の第1点C1と、クラウン円弧部Pcの両外端P1、P1との3点を通る円の半径である。また、曲率半径R2は、ショルダー円弧部Psのタイヤ軸方向の内端P2と、トレッド端Teと、内端P2とトレッド端Teとの間のトレッド接地面2aに沿った長さの中点P3との3点を通る円の半径である。ショルダー円弧部Psの内端P2は、クラウン円弧部Pcの外端P1と一致する。
【0020】
曲率半径R1は、曲率半径R2よりも小さく形成されている。また、曲率半径R1は、タイヤ断面幅Wtの50%よりも小さく形成されている。このようなクラウン円弧部Pcは、車体の倒し込み初期での操縦性、特に軽快性(以下、単に「初期旋回性能」という場合がある)を高めることができる。タイヤ断面幅Wtは、本明細書では、タイヤ最大幅位置でのタイヤ軸方向距離である。タイヤ断面幅Wtは、本実施形態では、トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向長さである。
【0021】
曲率半径R2と曲率半径R1との比(R2/R1)は、1.1以上が望ましく、1.3以上がさらに望ましく、3.0以下が望ましく、2.0以下がさらに望ましい。比(R2/R1)が1.1未満の場合、換言すると、曲率半径R2と曲率半径R1との差が小さい場合、車体の倒し込み初期から終期にかけての操縦性が低下するおそれがある。比(R2/R1)が3.0を超える場合、例えば、曲率半径R2が過度に大きい場合、車体倒し込み中期から終期でのスムーズな操縦ができにくくなるおそれがある。また、比(R2/R1)が3.0を超える場合、例えば、曲率半径R1が過度に小さい場合、直進走行時の安定性が低下するおそれがある。
【0022】
クラウン円弧部Pcの一対の外端P1は、それぞれ、ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ軸方向の一対の外端8e、8eよりもタイヤ軸方向の内側に位置している。これにより、タイヤ1の外径成長を引き起こすような高速走行がされた場合でも、ジョイントレスバンドプライ8Aが、クラウン円弧部Pcの外端P1での外径成長を抑制し、クラウン円弧部Pcの曲率半径R1を維持する。これにより、初期旋回性能が高く維持される。前記「外端8eよりもタイヤ軸方向の内側に位置」とは、本明細書では、ジョイントレスバンドプライ8Aの外端8eが、クラウン円弧部Pcの外端P1と曲率半径R1の中心Ocとを結ぶ仮想線Kよりもトレッド端Te側に位置する態様を含むものとする。
【0023】
特に限定されるものではないが、クラウン円弧部Pcの外端P1と、ジョイントレスバンドプライ8Aの外端8eとの間の展開長さLaは、トレッド展開幅TWeの2%以上が望ましく、4%以上がさらに望ましく、10%以下が望ましく、8%以下がさらに望ましい。また、クラウン円弧部Pcの曲率半径R1は、タイヤ断面幅Wtの40%以上が望ましく、45%以上がさらに望ましく、55%以下が望ましい。前記「展開長さ」は、本明細書では、仮想線Kと、外端8eを通る仮想線Kと平行な仮想線K1との間のトレッド接地面2aに沿った長さである。さらに、クラウン円弧部Pcの展開幅Wdは、タイヤ赤道Cを中心として、トレッド展開幅TWeの30%~60%が望ましい。
【0024】
ジョイントレスバンドプライ8Aの展開幅Waは、タイヤ赤道Cを中心として、トレッド展開幅TWeの30%以上が望ましく、35%以上がより望ましい。これにより、直進走行での安定性が高く維持される。より高い初期旋回性能を得るために、ジョイントレスバンドプライ8Aの展開幅Waは、トレッド展開幅TWeの50%未満が望ましく、45%未満がより望ましい。
【0025】
バンドコード8cは、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、及びアラミド繊維等の有機繊維のコードで形成されるのが望ましい。
【0026】
トレッド補強層7は、さらに、ベルト層9を含んでいる。ベルト層9は、複数のベルトコード9cが並列された複数のベルトプライ9Aを含んでいる。複数のベルトプライ9Aは、それぞれ、ジョイントレスバンドプライ8Aの展開幅Waよりも大きい展開幅を有している。このようなベルトプライ9Aは、トレッド部2の剛性を向上させ、大きいコーナリングフォースを発生させることに役立つ。
【0027】
複数のベルトプライ9Aは、ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ半径方向の外側に配される外側ベルトプライ10と、ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ半径方向の内側に配される内側ベルトプライ11とを含んでいる。このように、本実施形態では、ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ半径方向の両側に、ベルトプライ9Aが形成されている。これにより、ジョイントレスバンドプライ8Aが配されている領域では、タガ効果が緩和されるので、コーナリングフォースの発生が抑制される。ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ半径方向の外側のトレッド接地面2aは、直進走行から車体の倒し込み初期にかけて接地する。そして、この車体の倒し込み初期では、遠心力が小さい。このため、車体の倒し込み初期において、コーナリングフォースと遠心力とが釣り合うことができるので、初期旋回性能がさらに向上する。
【0028】
外側ベルトプライ10のベルトコード10cのタイヤ赤道Cに対する角度θoは、内側ベルトプライ11のベルトコード11cのタイヤ赤道Cに対する角度θiよりも大きく形成されている。一般に、トレッド接地面2aに近い外側ベルトプライ10のベルトコード10cが走行特性に大きく影響する。本実施形態では、外側ベルトプライ10のベルトコード10cの角度θoが相対的に大きいので、旋回時のスムーズな操縦を図ることができる。
【0029】
角度θoと角度θiとの差(θo-θi)は、10~40度であるのが望ましい。差(θo-θi)が10度以上であるので、基本的なタガ効果が発揮される。差(θo-θi)が40度以下であるので、コーナリングフォースの過度の増加が抑制され、車体の倒し込みの初期から終期、又は、終期から初期への過渡特性が高く維持される。
【0030】
角度θoは、70度以上が望ましく、75度以上がさらに望ましく、90度以下が望ましく、85度以下がさらに望ましい。角度θoが70度以上であることで、過度なタガ効果を抑制し、良好なコーナリングフォースを発生させ、旋回性能を向上させることができる。角度θiは、50度以上が望ましく、60度以上がさらに望ましく、80度以下が望ましく、70度以下がさらに望ましい。角度θiが50度以上であることで、過度なタガ効果を抑制し、良好なコーナリングフォースを発生させ、旋回性能を向上させることができる。角度θiが80度以下であることで、外側ベルトプライ10のベルトコード10cとの間に角度差を設けることができ、有効なタガ効果を発揮させることができる。
【0031】
外側ベルトプライ10のベルトコード10cのタイヤ赤道Cに対する傾斜の向きは、内側ベルトプライ11のベルトコード11cのタイヤ赤道Cに対する傾斜の向きと異なるのが望ましい。これにより、有効なタガ効果を発揮することができる。
【0032】
特に限定されるものではないが、外側ベルトプライ10の展開幅Wbは、トレッド展開幅TWeの75%~95%が望ましい。外側ベルトプライ10の展開幅Wbは、本実施形態では、内側ベルトプライ11の展開幅Wcよりも小さく形成されている。特に限定されるものではないが、外側ベルトプライ10の外端10eと内側ベルトプライ11の外端11eとの間の展開長さLbは、トレッド展開幅TWeの3%~10%が望ましい。
【0033】
ベルトコード9cは、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、及びアラミド繊維等の有機繊維のコードで形成されるのが望ましい。
【0034】
ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ軸方向の両外側において、外側ベルトプライ10と内側ベルトプライ11との間に補強ゴム層13が配されている。このような補強ゴム層13は、ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ軸方向の外側の領域でのねじり剛性を高める。これにより、車体の倒し込み中期から終期でのコーナリングフォースが大きくなり、旋回性能が向上する。
【0035】
図3は、トレッド補強層7の端部の横断面の模式図である。図3に示されるように、補強ゴム層13の配置範囲では、外側ベルトプライ10と内側ベルトプライ11との間のベルトコード最小近接距離Lcが0.5~3mmであるのが望ましい。ベルトコード最小近接距離Lcが0.5mm以上であるので、上述の作用が効果的に発揮される。ベルトコード最小近接距離Lcが3mm以下であるので、コーナリングフォースが過度に大きくなることが抑制され、車体の倒し込み初期から終期での過渡特性が高く維持される。
【0036】
補強ゴム層13のタイヤ軸方向の外端13eは、外側ベルトプライ10のタイヤ軸方向の外端10eよりもタイヤ軸方向の外側に位置している。換言すると、外側ベルトプライ10の外端10eは、補強ゴム層13のタイヤ半径方向の外側に位置している。これにより、ベルトコード最小近接距離Lcが、外側ベルトプライ10の外端10e、10e間に亘って0.5~3mmとなるように維持される。特に限定されるものではないが、補強ゴム層13のタイヤ軸方向の外端13eは、本実施形態では、内側ベルトプライ11のタイヤ軸方向の外端11eと一致している。
【0037】
特に限定されるものではないが、補強ゴム層13の複素弾性率E*1は、例えば、0.5MPa以上が望ましく、0.7MPa以上がさらに望ましく、3.0MPa以下が望ましく、2.5MPa以下がさらに望ましい。補強ゴム層13の複素弾性率E*1が0.5MPa以上であるので、ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ軸方向の外側の領域でのねじり剛性が効果的に高められる。補強ゴム層13の複素弾性率E*1が3.0MPa以下であるので、ジョイントレスバンドプライ8Aのタイヤ軸方向の外側の領域での剛性の過度の増加が抑えられるので、車体の倒し込み中期から終期への過渡特性が高く維持される。
【0038】
本明細書では、複素弾性率E*は、JIS-K6394の規定に準拠して、下記の条件で、GABO社製動的粘弾性測定装置(イプレクサーシリーズ)を用いて測定された値である。
初期歪:10%
動歪の振幅:±1%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70℃
【0039】
図1に示されるように、トレッド部2は、外側ベルトプライ10のタイヤ半径方向の外側に位置するトレッドゴム2Gをさらに含んでいる。トレッドゴム2Gは、トレッド接地面2aを形成している。トレッドゴム2Gの複素弾性率E*2は、補強ゴム層13の複素弾性率E*1よりも大きいのが望ましい。このようなトレッドゴム2Gは、走行時の安定性と最適なグリップ力を発揮することができる。トレッドゴム2Gの複素弾性率E*2は、例えば、4.0MPa以上が望ましく、5.0MPa以上がさらに望ましく、8.5MPa以下が望ましく、7.0MPa以下がさらに望ましい。
【0040】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0041】
図1の基本構造を有する自動二輪車用タイヤが、表1の仕様に基づき試作された。試作されたタイヤを自動二輪車の前輪に装着し、初期旋回性能と、中期旋回性能と、車体の倒し込み中のスムーズさである過渡特性と、車体の倒し込み中の安定性である接地感とが、テストドライバーの官能により評価された。中期旋回性能は、車体の倒し込み中期から終期までの操縦性、特に軽快性である。後輪タイヤの仕様は共通である。結果は、比較例1を10とする評点で表され、数値が大きいほど各種性能が優れていることを示す。なお、主な共通事項は、以下のとおりである。
【0042】
<共通事項>
前輪タイヤサイズ : 120/70R17
前輪空気圧 : 250kPa
前輪のタイヤ断面幅Wt:120mm
後輪タイヤサイズ : 200/60R17
後輪空気圧 : 290kPa
自動二輪車 : 排気量1000cc
結果が表1に示される。
表1の「La/TWe (%)」の結果の「-」表示は、クラウン円弧部の外端が、ジョイントレスバンドプライの外端よりもタイヤ軸方向の外側に位置することを意味する。
【0043】
【表1】
【0044】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例に対して、初期旋回性能が向上していることが理解される。
【0045】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0046】
[本発明1]
自動二輪車用タイヤであって、
トレッド部と、トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側かつ前記トレッド部に配されたトレッド補強層とを含み、
前記トレッド補強層は、バンド層を含み、
前記バンド層は、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライからなり、
前記ジョイントレスバンドプライは、タイヤ赤道を中心として、トレッド展開幅の65%以下の展開幅を有し、
前記トレッド部の接地面プロファイルは、タイヤ赤道を含む曲率半径R1のクラウン円弧部と、前記クラウン円弧部の一対のタイヤ軸方向の外端から延びる曲率半径R2の一対のショルダー円弧部とを含み、
前記曲率半径R1は、前記曲率半径R2よりも小さく、
前記曲率半径R1は、タイヤ断面幅の50%よりも小さく、
正規リムにリム組みしかつ正規内圧に調整された正規状態において、前記クラウン円弧部の前記一対の外端は、それぞれ、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ軸方向の一対の外端よりもタイヤ軸方向の内側に位置する、
自動二輪車用タイヤ。
[本発明2]
前記曲率半径R2と前記曲率半径R1との比(R2/R1)は、1.1~3.0である、本発明1に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本発明3]
前記クラウン円弧部は、タイヤ赤道を中心として、トレッド展開幅の30%以上の展開幅を有する、本発明1又は2に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本発明4]
前記ジョイントレスバンドプライは、タイヤ赤道を中心として、トレッド展開幅の30%以上かつ50%未満の展開幅を有する、本発明1ないし3のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本発明5]
前記トレッド補強層は、さらに、ベルト層を含み、
前記ベルト層は、複数のベルトコードが並列された複数のベルトプライを含み、
前記複数のベルトプライは、それぞれ、前記ジョイントレスバンドプライの前記展開幅よりも大きい展開幅を有する、本発明1ないし4のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本発明6]
前記複数のベルトプライは、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ半径方向の外側に配される外側ベルトプライと、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ半径方向の内側に配される内側ベルトプライとを含む、本発明5に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本発明7]
前記外側ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対する角度θoは、前記内側ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道に対する角度θiよりも大きい、本発明6に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本発明8]
前記角度θoと前記角度θiとの差(θo-θi)は、10~40度である、本発明7に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本発明9]
前記角度θoは、70~90度であり、
前記角度θiは、50~80度である、本発明7又は8に記載の自動二輪車用タイヤ。
[本発明10]
前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ軸方向の両外側において、前記外側ベルトプライと前記内側ベルトプライとの間に補強ゴム層が配されており、
前記補強ゴム層の配置範囲では、前記外側ベルトプライと前記内側ベルトプライとの間のベルトコード最小近接距離が0.5~3mmである、本発明6ないし9のいずれか1項に記載の自動二輪車用タイヤ。
【符号の説明】
【0047】
1 自動二輪車用タイヤ
2 トレッド部
7 トレッド補強層
8A ジョイントレスバンドプライ
8e ジョイントレスバンドプライの外端
P 接地面プロファイル
Pc クラウン円弧部
Ps ショルダー円弧部
P1 クラウン円弧部の外端
TWe トレッド展開幅
Wt タイヤ断面幅
図1
図2
図3