(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183273
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】全館空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 3/16 20210101AFI20231220BHJP
F24F 8/167 20210101ALI20231220BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20231220BHJP
【FI】
F24F3/16
F24F8/167
F24F8/108 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096804
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】鳥原 健太
【テーマコード(参考)】
3L053
【Fターム(参考)】
3L053BD04
3L053BD05
(57)【要約】
【課題】建物内に菌やウイルスが拡散するのを抑制することができる全館空調システムを提供する。
【解決手段】全館空調システム30は、空調空気を生成し、その空調空気を各部屋に供給する室内機32を備える。各部屋に供給された空調空気は室内機32に還気として還流し、その還気が室内機32に形成された取込口37より室内機32内部に取り込まれる。そして、室内機32は、その還気をもとに空調空気を生成する。室内機32には、取込口37を覆うようにカバー部材51が設けられている。カバー部材51は、略箱状に形成され、その内側空間57を通じて還気が取込口37より取り込まれる。カバー部材51の内側空間57には、取込口37より埃等の異物が室内機32の内部に入るのを防止すべく、2つのエアフィルタ61,62が設けられている。これらエアフィルタ61,62のうち、下流側のエアフィルタ62には光触媒71が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空気を生成し、その生成した空調空気を建物内の複数の屋内空間に供給する空調装置を備え、
前記複数の屋内空間に供給された空調空気は前記空調装置へ還気として還流するようになっており、
前記空調装置は、前記還気を取り込む取込口を有し、その取込口より取り込んだ前記還気をもとに空調空気を生成する全館空調システムであって、
前記取込口より前記空調装置の内部に埃等の異物が入るのを防止するエアフィルタと、
前記エアフィルタに設けられた光触媒と、を備える、全館空調システム。
【請求項2】
前記取込口に向けて前記還気が流れる還気通路を形成する通路形成部を備え、
前記還気通路には、前記エアフィルタとして、前記光触媒が設けられた第1エアフィルタと、前記光触媒が設けられていない第2エアフィルタとが設けられており、
前記第2エアフィルタは、前記第1エアフィルタよりも上流側に配置されている、請求項1に記載の全館空調システム。
【請求項3】
前記第1エアフィルタは、前記第2エアフィルタよりも目が粗い、請求項2に記載の全館空調システム。
【請求項4】
前記第1エアフィルタと前記第2エアフィルタとは、互いに重なるようにして配置されている、請求項2に記載の全館空調システム。
【請求項5】
前記還気通路には、前記光触媒に光を照射する複数の光源が設けられた枠状の支持部が設けられており、
前記支持部は、前記第1エアフィルタと対向して配置されている、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の全館空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全館空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物において、共通の空調装置を用いて複数の部屋の空調を行う全館空調システムが知られている(例えば、特許文献1)。全館空調システムでは、空調装置が空調空気を生成するとともに、その空調空気を各部屋へダクトを介して供給することにより、それら各部屋の空調を行うようになっている。
【0003】
また、全館空調システムでは、各部屋に供給された空調空気が建物内を通じて空調装置に還流する。そして、空調装置は、その還流した空気(還気)を空調装置に取り込み、その取り込んだ還気をもとに空調空気を生成する。そのため、全館空調システムでは、建物内において空調空気を循環させながら、各部屋の空調を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、全館空調システムでは、建物内にて空気を循環させながら各部屋の空調を行うようになっているため、空気中に菌やウイルスが含まれている場合、菌やウイルスが各部屋に拡散されるおそれがある。
【0006】
また、菌やウイルスが空調装置内に取り込まれると、菌やウイルスが空調装置内に付着するおそれがある。その場合、その付着した菌やウイルスを起点として菌やウイルスが拡散されるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、建物内に菌やウイルスが拡散するのを抑制することができる全館空調システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明の全館空調システムは、空調空気を生成し、その生成した空調空気を建物内の複数の屋内空間に供給する空調装置を備え、前記複数の屋内空間に供給された空調空気は前記空調装置へ還気として還流するようになっており、前記空調装置は、前記還気を取り込む取込口を有し、その取込口より取り込んだ前記還気をもとに空調空気を生成する全館空調システムであって、前記取込口より前記空調装置の内部に埃等の異物が入るのを防止するエアフィルタと、前記エアフィルタに設けられた光触媒と、を備える。
【0009】
全館空調システムでは、空調装置が、その取込口より取り込まれる還気をもとに空調空気を生成する。また、全館空調システムでは、取込口より埃等の異物が空調装置の内部に入るのを防止すべくエアフィルタが設けられている。そこで、第1の発明では、このエアフィルタに着目し、エアフィルタに光触媒を設けている。かかる構成によれば、光触媒に光を照射し光触媒作用を生じさせることで、エアフィルタを通過する還気に含まれる菌やウイルスを除去することができる。これにより、取込口より空調装置内に菌やウイルスが取り込まれるのを抑制することができ、その結果、空調装置より菌やウイルスが建物内に拡散するのを抑制することができる。
【0010】
第2の発明の全館空調システムは、第1の発明において、前記取込口に向けて前記還気が流れる還気通路を形成する通路形成部を備え、前記還気通路には、前記エアフィルタとして、前記光触媒が設けられた第1エアフィルタと、前記光触媒が設けられていない第2エアフィルタとが設けられており、前記第2エアフィルタは、前記第1エアフィルタよりも上流側に配置されている。
【0011】
第2の発明によれば、通路形成部に形成された還気通路に、光触媒が設けられた第1エアフィルタと、光触媒が設けられていない第2エアフィルタとが設けられている。第2エアフィルタは、第1エアフィルタよりも上流側に配置されている。この場合、上流側の第2エアフィルタにより埃等の異物を捕集することで、下流側の第1エアフィルタに異物が付着するのを抑制することができる。そのため、第2エアフィルタを異物捕集用として用い、第1エアフィルタを菌やウイルスを除去する除菌用として用いる、といった使い分けをすることが可能となる。
【0012】
かかる構成では、異物が溜まり易い第2エアフィルタについては水洗い等の洗浄を行う頻度が高くなるが、第2エアフィルタには光触媒が設けられていないため、洗浄の頻度が高くても特段問題はない。それに対し、異物が付着しにくい第1エアフィルタについては、水洗い等の洗浄を行う頻度を少なくすることができる。そのため、洗浄を行うことにより第1エアフィルタから光触媒が取れる等して、除菌効果が低下してしまうのを抑制することができる。
【0013】
第3の発明の全館空調システムは、第2の発明において、前記第1エアフィルタは、前記第2エアフィルタよりも目が粗い。
【0014】
第3の発明によれば、第1エアフィルタは第2エアフィルタよりも目が粗いため、第1エアフィルタに異物が付着するのをより一層抑制することができる。これにより、第1エアフィルタの洗浄頻度をより少なくすることができ、その結果、洗浄に伴う除菌効果の低下をより一層抑制することができる。
【0015】
第4の発明の全館空調システムは、第2の発明において、前記第1エアフィルタと前記第2エアフィルタとは、互いに重なるようにして配置されている。
【0016】
第4の発明によれば、第1エアフィルタと第2エアフィルタとが、互いに重なるように配置されているため、第1エアフィルタにて生じる光触媒による除菌効果を第2エアフィルタにも及ぼすことが可能となる。このため、第2エアフィルタに付着した菌やウイルスについても除去することが可能となり、その結果、除菌効果を高めることが可能となる。
【0017】
第5の発明の全館空調システムは、第2~第4のいずれかの発明において、前記還気通路には、前記光触媒に光を照射する複数の光源が設けられた枠状の支持部が設けられており、前記支持部は、前記第1エアフィルタと対向して配置されている。
【0018】
第5の発明によれば、光触媒に光を照射する複数の光源が設けられた枠状の支持部が還気通路に設けられており、その支持部が第1エアフィルタと対向して配置されている。この場合、光触媒が第1エアフィルタの広範囲(例えばフィルタ面の全域)に亘って設けられている場合において、光触媒の全体に光を照射し易くすることができる。そのため、光触媒による除菌効果を高めることができる。また、支持部が枠状に形成されているため、支持部により還気の流れが妨げられるのを抑制しながら、上記の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態における全館空調システムが設けられた建物の一階部分を示す図。
【
図2】室内機及びその周辺の構成を示す分解斜視図。
【
図4】第2実施形態における全館空調システムが設けられた建物の二階部分及び屋根部を示す図。
【
図5】吸込チャンバ及びその内部に設けられた各部材を分解した状態で示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1に示すように、基礎11の上方には、住宅等の建物10が設けられている。建物10は、一階部分12を有している。一階部分12には、複数の部屋14~17が設けられている。これらの部屋14~17のうち、部屋14~16は、例えばリビングやダイニング、和室、寝室等からなる。部屋17は、後述する全館空調システム30の室内機32が設置される機械室となっており、以下、機械室17ということがある。部屋14~17は、間仕切壁18により互いに仕切られている。間仕切壁18に設けられた通気口19等を通じて、隣接する部屋14~17同士で常時通気可能となっている。
【0021】
一階部分12には、床部21が設けられ、この床部21により部屋14~17の床面が形成されている。床部21の下方には、床下空間22が設けられている。床下空間22は、床部21により部屋14~17と上下に仕切られている。床下空間22は、その周囲が基礎11により囲まれている。
【0022】
建物10には、一階部分12の各部屋14~16(屋内空間に相当)を空調対象として空調を行う全館空調システム30が設けられている。以下、全館空調システム30の構成について説明する。
【0023】
全館空調システム30は、ヒートポンプ式の空調システムであり、少なくとも冷房運転及び暖房運転を行うことが可能となっている。全館空調システム30は、屋内に設けられた室内機32と、屋外に設けられた室外機33とを有している。室内機32と室外機33とは冷媒管34を介して接続されており、
図1では便宜上、冷媒管34を点線で示している。なお、室内機32が空調装置に相当する。
【0024】
室内機32は、機械室17に設けられている。室内機32は、略直方体状に形成され、その側面部32aには取込口37が設けられている(
図2参照)。室内機32は、取込口37を通じて機械室17内の空気(還気RA)を取り込み、その取り込んだ空気を温度調整することで、空調空気(冷気及び暖気)を生成する。
【0025】
室内機32は、床下空間22に設置された空調チャンバ41と接続されている。空調チャンバ41には、複数の空調ダクト42が接続されている。これら各空調ダクト42はいずれも床下空間22に配設され、床部21に設けられた吹出口43に接続されている。各吹出口43は、一階部分12の各部屋14~16に設けられている。
【0026】
室内機32により生成される空調空気(冷気又は暖気)は、空調チャンバ41及び各空調ダクト42を通じて各吹出口43に供給され、それら各吹出口43より各部屋14~16に吹き出される。それら吹き出された空調空気により、各部屋14~16の空調(冷房又は暖房)が行われる。
【0027】
建物10の一階部分12では、各部屋14~16に供給された空調空気が通気口19等を通じて機械室17へ還気RAとして戻る(還流する)。そして、室内機32は、その機械室17に戻った還気RAを取込口37より取り込み、その取り込んだ還気RAをもとに空調空気を再度生成する。このように、全館空調システム30は、空気循環式の空調システムとされている。
【0028】
続いて、室内機32の取込口37付近の構成について、
図2及び
図3に基づき説明する。
【0029】
図2及び
図3に示すように、室内機32の側面部32aには、取込口37を覆うようにカバー部材51が設けられている。カバー部材51は、金属製の板材により略箱状に形成されている。カバー部材51は、取込口37と離間対向する前板部52と、前板部52の各側辺部からそれぞれ室内機32の側面部32aへ延びる一対の側板部53と、前板部52の下辺部から室内機32の側面部32aへ延びる底板部54とを有する。カバー部材51の上面部には上方に開口した開口部55が形成され、カバー部材51の背面部には室内機32側に開口した開口部56が形成されている。開口部56は、取込口37と連通している。
【0030】
機械室17内の還気RAは、開口部55よりカバー部材51の内側空間57に流れ込む。その後、還気RAは、内側空間57から開口部56と取込口37とを通じて室内機32の内部に取り込まれる。したがって、機械室17内の還気RAは、カバー部材51の内側空間57を通じて室内機32の内部に取り込まれる。この場合、内側空間57は、還気RAが取込口37に向けて流れる還気通路に相当する。また、カバー部材51が通路形成部に相当する。
【0031】
カバー部材51の内側空間57には、2つのエアフィルタ61,62が設けられている。これらのエアフィルタ61,62は、内側空間57を流れる還気RAに含まれる埃等の異物を捕集するものである。これにより、異物が取込口37より室内機32の内部に入ることが防止されている。各エアフィルタ61,62は、不織布を有して形成され、例えば中高性能フィルタからなる。また、各エアフィルタ61,62は、同じ大きさからなる矩形形状を有している。
【0032】
各エアフィルタ61,62は、カバー部材51の各側板部53の内面に設けられたフィルタ支持部59により支持されている。フィルタ支持部59は、側板部53に沿って上下方向に延びており、詳しくは上方に向かうにつれ室内機32側に傾斜して延びている。各フィルタ支持部59の上面(詳しくは傾斜面上)には、それら両フィルタ支持部59に跨る状態で各エアフィルタ61,62が載置されている。この場合、各エアフィルタ61,62は、互いに重なった状態でフィルタ支持部59に載置されている。これにより、各エアフィルタ61,62は、室内機32側(換言すると取込口37側)に傾斜した状態で支持されている。また、このように各エアフィルタ61,62が支持されていることにより、各エアフィルタ61,62は着脱可能とされている。
【0033】
カバー部材51の内側空間57においては、還気RAが各エアフィルタ61,62を通過して取込口37へと流れる。各エアフィルタ61,62のうち、上流側にはエアフィルタ61が配置され、下流側にはエアフィルタ62が配置されている。上流側のエアフィルタ61は不織布の目が細かくなっており、下流側のエアフィルタ62は不織布の目が粗くなっている。そのため、還気RA中の異物の大部分は、上流側のエアフィルタ61により捕集されるようになっている。
【0034】
下流側のエアフィルタ62には、光触媒71が設けられている。光触媒71は、エアフィルタ62のフィルタ面の略全域に担持されている。光触媒71は、酸化チタン(TiO2)等の光触媒活性化物質を有している。光触媒71は光が照射されると活性化し、光触媒作用が生じる。この光触媒作用により、還気RA中に含まれる菌やウイルスがエアフィルタ62を通過する際に除去されるようになっている。また、本実施形態では、光触媒71として、可視光により活性化する可視光応答型光触媒が用いられている。光触媒71は、例えばV―CAT(登録商標)からなる。
【0035】
なお、光触媒71が設けられた下流側のエアフィルタ62は、第1エアフィルタに相当する。また、上流側のエアフィルタ61には光触媒が設けられておらず、そのため、エアフィルタ61が第2エアフィルタに相当する。かかる構成では、主に、エアフィルタ61が埃等の異物を捕集する異物捕集用として用いられ、エアフィルタ62が異物捕集後の還気RAに含まれる菌やウイルスを除去する除菌用として用いられる。
【0036】
カバー部材51の内側空間57には、エアフィルタ62よりも下流側に発光ユニット73が設けられている。発光ユニット73は、複数のLED74と、各LED74が取り付けられた矩形枠状のベース部75とを有している。各LED74は、エアフィルタ62の光触媒71に向けて光を照射する光源であり、本実施形態では、可視光を照射するものが用いられている。なお、ベース部75が支持部に相当する。
【0037】
ベース部75は、エアフィルタ62に近接した位置で、エアフィルタ62に対向した状態で配置されている。ベース部75は、外枠部76と、外枠部76の枠内に配設された複数の内枠部77とを有している。各内枠部77はいずれも横方向に延び、両端部がそれぞれ外枠部76に連結されている。また、各内枠部77は等間隔に配置され、それら各内枠部77には、LED74が複数ずつ(例えば3つずつ)配置されている。これら複数のLED74は、内枠部77において等間隔で配置されている。
【0038】
上記の構成では、カバー部材51の内側空間57において、各エアフィルタ61,62を通過した還気RAが、発光ユニット73のベース部75の枠内を通じて下流側へと流れる。そして、その後、取込口37より室内機32の内部に取り込まれる。
【0039】
以上、詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果を得ることができる。
【0040】
室内機32の取込口37より室内機32内部に埃等の異物が入るのを防止すべくエアフィルタ62を設け、そのエアフィルタ62に光触媒71を設けた。かかる構成によれば、光触媒71に光を照射し光触媒作用を生じさせることで、エアフィルタ62を通過する還気RAに含まれる菌やウイルスを除去することができる。これにより、取込口37より室内機32の内部に菌やウイルスが取り込まれるのを抑制することができ、その結果、室内機32より菌やウイルスが建物内10に拡散するのを抑制することができる。
【0041】
また、室内機32内に菌やウイルスが入り込んでしまうと、室内機32の内部に菌やウイルスが付着するおそれがある。その場合、付着した菌やウイルスを起点として菌やウイルスが建物10内に拡散されるおそれがある。その点、エアフィルタ62に光触媒71を設けた上記の構成によれば、室内機32内部への菌やウイルスの入り込み自体を抑制することができるため、室内機32内に菌やウイルスが付着するのを抑制することができ、ひいては付着に伴う菌やウイルスの拡散を抑制することができる。
【0042】
カバー部材51の内側空間57に、光触媒71が設けられたエアフィルタ62と、光触媒が設けられていないエアフィルタ61とを設け、エアフィルタ61をエアフィルタ62よりも上流側に配置した。この場合、上流側のエアフィルタ61により埃等の異物を捕集することで、下流側のエアフィルタ62に異物が付着するのを抑制することができる。そのため、エアフィルタ61を異物捕集用として用い、エアフィルタ62を菌やウイルスを除去する除菌用として用いる、といった使い分けをすることが可能となる。
【0043】
このような構成では、異物が溜まり易い上流側のエアフィルタ61については水洗い等の洗浄を行う頻度が高くなるが、エアフィルタ61には光触媒が設けられていないため、洗浄の頻度が高くても特段問題はない。それに対し、異物が付着しにくい下流側のエアフィルタ62については、水洗い等の洗浄を行う頻度を少なくすることができる。そのため、洗浄を行うことによりエアフィルタ62から光触媒71が取れる等して、除菌効果が低下してしまうのを抑制することができる。
【0044】
エアフィルタ62はエアフィルタ61よりも目が粗いため、エアフィルタ62に異物が付着するのをより一層抑制することができる。これにより、エアフィルタ62の洗浄頻度をより少なくすることができ、その結果、洗浄に伴う除菌効果の低下をより一層抑制することができる。
【0045】
各エアフィルタ61,62が互いに重なるように配置されているため、エアフィルタ62にて生じる光触媒71による除菌効果をエアフィルタ61にも及ぼすことが可能となる。このため、エアフィルタ61に付着した菌やウイルスについても除去することが可能となり、その結果、除菌効果を高めることが可能となる。
【0046】
カバー部材51の内側空間57に、光触媒71に光を照射する複数のLED74と、それら各LED74が取り付けられた枠状のベース部75とを設け、そのベース部75をエアフィルタ62と対向させて配置した。この場合、光触媒71の全体に光を照射し易くすることができ、その結果、光触媒71による除菌効果を高めることができる。また、ベース部75が枠状に形成されているため、ベース部75により還気RAの流れが妨げられるのを抑制しながら、上記の効果を得ることができる。
【0047】
LED74が設けられたベース部75をエアフィルタ61,62よりも上流側に配置する場合、LED74から照射される光がエアフィルタ61により妨げられ、エアフィルタ62上の光触媒71に光を好適に当てることができないおそれがある。その場合、光触媒71の除菌効果が低下するおそれがある。その点、上記の実施形態では、LED74が設けられたベース部75をエアフィルタ62よりも下流側に配置したため、光触媒71に好適に光を当てることができ、その結果、光触媒71による除菌効果を好適に発揮させることができる。
【0048】
・カバー部材51は、前板部52と一対の側板部53とにより囲まれた内側空間57を有し、その内側空間57に各LED74を配置した。これにより、各LED74から照射される光が周囲に漏れるのを抑制することができる。
【0049】
・フィルタ支持部59によりエアフィルタ61,62を斜めの向きで支持するようにした。詳しくは、エアフィルタ61,62が取込口37の開口面に対して斜めの向きとなるように支持した。この場合、エアフィルタ62の面積を大きくすることができるため、その分、光触媒71を広く設けることができる。これにより、光触媒71による除菌効果を高めることができる。
【0050】
・光触媒71は、可視光応答型光触媒となっているため、各LED74として可視光を照射するものを用いることができる。これにより、ユーザ等がエアフィルタ61,62をメンテナンスする際に安心である。
【0051】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0052】
図4に示すように、建物10は、二階部分81を有している。二階部分81には、複数の居室83,84と廊下85とが設けられている。各居室83,84と廊下85とは、間仕切壁86により仕切られている。各間仕切壁86には、通気口89が設けられている。各居室83,84と廊下85とは、各通気口89を通じて常時通気可能となっている。なお、居室83の隣りにはベランダ92が設けられている。
【0053】
建物10は、二階部分81の上方に屋根部91を有している。また、二階部分81には天井部93が設けられている。天井部93は天井面材を有して構成され、その天井部93により居室83,84及び廊下85の天井面が形成されている。天井部93の上方には、屋根部91の小屋裏空間95が形成されている。小屋裏空間95は、天井部93により居室83,84及び廊下85と仕切られている。
【0054】
建物10には、二階部分81の各居室83,84(屋内空間に相当)を空調対象として空調を行う全館空調システム100が設けられている。以下、この全館空調システム100について説明する。
【0055】
全館空調システム100は、一階部分12の全館空調システム30と同様、室内機101と室外機102とを有し、室内機101と室外機102とは冷媒管103を介して接続されている。
図4では便宜上、冷媒管103を点線で示している。
【0056】
室内機101は、小屋裏空間95に設置されている。室内機101には空調チャンバ107を介して複数の空調ダクト108が接続されている。各空調ダクト108は、小屋裏空間95に配設され、各居室83,84の天井部93に設けられた吹出口109にそれぞれ接続されている。室内機101により生成された空調空気は、各空調ダクト108を通じて各吹出口109に供給され、それら各吹出口109から各居室83,84にそれぞれ吹き出される。これにより、各居室83,84の空調(冷暖房)が行われる。
【0057】
各居室83,84に供給された空調空気(給気SA)は、各通気口89を通じて廊下85へ還気RAとして還流するようになっている。廊下85の天井部93には、廊下85に還流した還気RAを吸い込む吸込チャンバ111が設けられている。吸込チャンバ111には、還気ダクト112が接続されている。還気ダクト112は小屋裏空間95に配設され、室内機101の側面部に接続されている。詳しくは、室内機101の側面部には開口部113が設けられ、その開口部113に還気ダクト112が接続されている。
【0058】
上記の構成では、吸込チャンバ111により廊下85内の還気RAが吸い込まれると、その還気RAが還気ダクト112を通じて室内機101に取り込まれる。この場合、還気RAは、還気ダクト112から室内機101の開口部113を通じて室内機101の内部に取り込まれる。したがって、この場合、開口部113が取込口に相当する、また、還気RAは、吸込チャンバ111の内部と還気ダクト112の内部とを通じて開口部113に向けて流れるため、この場合、吸込チャンバ111の内部と還気ダクト112の内部とにより還気通路が構成されている。また、吸込チャンバ111と還気ダクト112とにより、通路形成部が構成されている。
【0059】
続いて、吸込チャンバ111周辺の構成について、
図5及び
図6に基づき説明する。なお、
図5及び
図6では、便宜上、天井部93の図示を省略している。
【0060】
図5及び
図6に示すように、吸込チャンバ111には、下方に向けて開口された収容凹部117と、収容凹部117の底部に形成され還気ダクト112が接続された接続口118とが設けられている。収容凹部117には、その開口部分を塞ぐように吸込グリル119が取り付けられている。吸込グリル119は、格子状の通気部を有して形成されている。
【0061】
吸込グリル119の上面部には、エアフィルタ121が取り付けられている。エアフィルタ121は、吸込チャンバ111の収容凹部117に配置されている。収容凹部117においてエアフィルタ121の上方には、さらにエアフィルタ122が設けられている。エアフィルタ122は、エアフィルタ121と重なり合って配置されている。これら各エアフィルタ121,122は、吸込チャンバ111に吸い込まれる還気RA(換言すると、吸込チャンバ111内を流れる還気RA)に含まれる埃等の異物を捕集するものである。この場合、各エアフィルタ121,122のうち、エアフィルタ121が上流側(下側)に配置され、エアフィルタ122が下流側(上側)に配置されている。
【0062】
各エアフィルタ121,122のうち、下流側のエアフィルタ122には光触媒126が設けられている。その一方で、上流側のエアフィルタ121には光触媒が設けられていない。したがって、エアフィルタ122が第1エアフィルタに相当し、エアフィルタ121が第2エアフィルタに相当する。また、エアフィルタ121は、エアフィルタ122よりも目が粗くなっている。
【0063】
吸込チャンバ111の収容凹部117には、エアフィルタ122の上方に発光ユニット128が設けられている。この場合、発光ユニット128は、エアフィルタ122に対して下流側に配置されている。発光ユニット128は、第1実施形態の発光ユニット73と同様の構成を有しており、光源としての複数のLED129と、支持部としてのベース部131とを有している。
【0064】
上述の構成によれば、吸込チャンバ111に吸い込まれた還気RAは、収容凹部117を下流側に向けて流れる。この際、還気RAは、各エアフィルタ121,122を順に通過する。まず、上流側のエアフィルタ121において還気RA中の異物が捕集され、その後、下流側のエアフィルタ122において光触媒126の光触媒作用により還気RA中の菌やウイルスが除去される。その後、還気RAは、還気ダクト112を通じて室内機101の内部に開口部113より取り込まれる。
【0065】
以上より、本実施形態の構成によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0067】
・上記各実施形態では、各エアフィルタ61,62のうち、エアフィルタ62にのみ光触媒71を設けたが、これに加えて、エアフィルタ61にも光触媒を設けてもよい。
【0068】
・上記各実施形態では、2つのエアフィルタ61,62を設けたが、これを変更して、光触媒71の設けられたエアフィルタ62のみ設けるようにしてもよい。この場合、エアフィルタ62が異物捕集と除菌との両方で用いられることになる。ただし、エアフィルタ62の洗浄に伴う光触媒71の除菌効果低下を考慮すると、上記実施形態のように、2つのエアフィルタ61,62を設け、異物捕集用と除菌用とに使い分けするのが好ましい。
【0069】
また、エアフィルタとして、エアフィルタ62のみ設ける構成とする場合には、エアフィルタ62を室内機32の取込口37に取り付けてもよい。その場合、LED74については、例えば室内機32の内部に配置することが考えられる。
【0070】
・2つのエアフィルタ61,62は必ずしも重ねて配置する必要はなく、互いに離間させて配置してもよい。ただし、光触媒71による除菌効果を光触媒を有しないエアフィルタ61にも及ぼすようにする上では、上記実施形態のように各エアフィルタ61,62を重ねて配置するのが好ましい。
【0071】
・エアフィルタの素材は不織布に限定する必要はなく、例えば活性炭フィルタ等を用いてもよい。
【0072】
・光触媒71に光を照射する光源としては、必ずしもLED74を用いる必要はなく、白熱灯等、LED以外のものを用いてもよい。また、光触媒71の光源としては、必ずしも光触媒専用の光源を設ける必要はなく、例えば機械室17に設けられた電球等の照明器具を光源として用いてもよい。
【0073】
・上記各実施形態では、光触媒として、可視光応答型光触媒を用いたが、紫外光応答型光触媒を用いてもよい。その場合、光触媒の光源としては、紫外線ランプ等を用いることが考えられる。
【0074】
・全館空調システムは、1つの階を空調対象とするものに限定されず、建物10全体を空調対象とするものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…建物、30…全館空調システム、32…空調装置としての室内機、37…取込口、51…通路形成部としてのカバー部材、57…還気通路としての内側空間、61…第2エアフィルタとしてのエアフィルタ、62…第1エアフィルタとしてのエアフィルタ、71…光触媒、74…光源としてのLED、75…支持部としてのベース部、100…全館空調システム、101…空調装置としての室内機、113…取込口としての開口部、121…第2エアフィルタとしてのエアフィルタ、122…第1エアフィルタとしてのエアフィルタ、126…光触媒、129…光源としてのLED,131…支持部としてのベース部。