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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183281
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0202 20230101AFI20231220BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20231220BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20231220BHJP
【FI】
G06Q30/02 310
G06Q50/10
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096812
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514246299
【氏名又は名称】株式会社FIND
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】不動野 亮
(72)【発明者】
【氏名】富野 永和
(72)【発明者】
【氏名】山形 知大
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049BB02
5L049CC20
(57)【要約】
【課題】自動車市場の分析を精度良く行う。
【解決手段】記憶装置に、複数の仮想ユーザを記述した第一のデータと、市場にて販売される複数の自動車のモデルを記述した第二のデータと、を含むデータベースを記憶させる。また、制御装置が、前記市場に対する販売促進施策を取得し、前記第一のデータ、前記第二のデータ、および、前記販売促進施策に基づいて、前記販売促進施策を実行した後における複数の前記仮想ユーザの購買行動を予測し、前記複数の仮想ユーザについて予測した購買行動を前記第一のデータに反映する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の仮想ユーザを記述した第一のデータと、市場にて販売される複数の自動車のモデルを記述した第二のデータと、を含むデータベースを記憶する記憶装置と、
前記市場に対する販売促進施策を取得することと、
前記第一のデータ、前記第二のデータ、および、前記販売促進施策に基づいて、前記販売促進施策を実行した後における複数の前記仮想ユーザの購買行動を予測することと、
前記複数の仮想ユーザについて予測した購買行動を前記第一のデータに反映することと、
を実行する制御装置と、
を有する、情報処理装置。
【請求項2】
前記販売促進施策は、前記自動車の販売ラインナップの変更を伴うものである、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第一のデータは、前記仮想ユーザのそれぞれについて定義された、前記自動車の購買行動に影響する複数のユーザパラメータを含む、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ユーザパラメータは、前記仮想ユーザの嗜好、ライフステージ、および経済状況のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ユーザパラメータは、前記仮想ユーザが所有している自動車に関するデータを含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記第二のデータは、前記複数の自動車のモデルのそれぞれについて定義された、複数の車両パラメータを含む、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記ユーザパラメータと前記車両パラメータをマッチングした結果に基づいて、前記仮想ユーザと、前記複数の自動車のモデルのそれぞれとの適合度を算出し、前記適合度に基づいて前記購買行動の予測を行う、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記複数の仮想ユーザが前記購買行動を起こした後における市場の変化を予測し、結果を出力する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記購買行動が反映された前記第一のデータに基づいて市場分析をさらに行い、新たな前記販売促進施策を決定するための情報を出力する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記制御装置は、指定された日時の経過をシミュレーションし、前記シミュレーションの結果に基づいて前記第一のデータを更新する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
複数の仮想ユーザを記述した第一のデータと、市場にて販売される複数の自動車のモデルを記述した第二のデータと、を取得するステップと、
前記市場に対する販売促進施策を取得するステップと、
前記第一のデータ、前記第二のデータ、および、前記販売促進施策に基づいて、前記販売促進施策を実行した後における複数の前記仮想ユーザの購買行動を予測するステップと、
前記複数の仮想ユーザについて予測した購買行動を前記第一のデータに反映するステップと、
を含む、情報処理方法。
【請求項12】
前記販売促進施策は、前記自動車の販売ラインナップの変更を伴うものである、
請求項11に記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記第一のデータは、前記仮想ユーザのそれぞれについて定義された、前記自動車の購買行動に影響する複数のユーザパラメータを含む、
請求項12に記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記ユーザパラメータは、前記仮想ユーザの嗜好、ライフステージ、および経済状況のうちの少なくともいずれかを含む、
請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記ユーザパラメータは、前記仮想ユーザが所有している自動車に関するデータを含む、
請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記第二のデータは、前記複数の自動車のモデルのそれぞれについて定義された、複数の車両パラメータを含む、
請求項13に記載の情報処理方法。
【請求項17】
前記ユーザパラメータと前記車両パラメータをマッチングした結果に基づいて、前記仮想ユーザと、前記複数の自動車のモデルのそれぞれとの適合度を算出し、前記適合度に基づいて前記購買行動の予測を行う、
請求項16に記載の情報処理方法。
【請求項18】
前記複数の仮想ユーザが前記購買行動を起こした後における市場の変化を予測し、結果を出力するステップをさらに含む、
請求項11から17のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項19】
前記購買行動が反映された前記第一のデータに基づいて市場分析をさらに行い、新たな前記販売促進施策を決定するための情報を出力するステップをさらに含む、
請求項11から17のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項20】
指定された日時の経過をシミュレーションし、前記シミュレーションの結果に基づいて前記第一のデータを更新するステップをさらに含む、
請求項11から17のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、市場をシミュレーションする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの嗜好に基づいて市場ニーズのシミュレーションを行う技術がある。これに関連して、特許文献1には、アンケートによって取得した個人の価値観に基づいて市場分析を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-238182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械学習の発達に伴い、シミュレーションデータを活用する場が今後ますます増えていくと考えられる。
【0005】
本開示は、自動車市場の分析を精度良く行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一の態様は、複数の仮想ユーザを記述した第一のデータと、市場にて販売される複数の自動車のモデルを記述した第二のデータと、を含むデータベースを記憶する記憶装置と、前記市場に対する販売促進施策を取得することと、前記第一のデータ、前記第二のデータ、および、前記販売促進施策に基づいて、前記販売促進施策を実行した後における複数の前記仮想ユーザの購買行動を予測することと、前記複数の仮想ユーザについて予測した購買行動を前記第一のデータに反映することと、を実行する制御装置と、を有する、情報処理装置である。
【0007】
また、本開示の第二の態様は、複数の仮想ユーザを記述した第一のデータと、市場にて販売される複数の自動車のモデルを記述した第二のデータと、を取得するステップと、前記市場に対する販売促進施策を取得するステップと、前記第一のデータ、前記第二のデータ、および、前記販売促進施策に基づいて、前記販売促進施策を実行した後における複数の前記仮想ユーザの購買行動を予測するステップと、 前記複数の仮想ユーザについて予測した購買行動を前記第一のデータに反映するステップと、を含む、情報処理方法である。
【0008】
また、本開示の他の態様は、上記の方法を実行するためのプログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、自動車市場の分析を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示に係る分析システムの処理概要を説明する図。
図2】サーバ装置100の構成要素を詳細に示した図。
図3】仮想市場データベースに記憶される仮想ユーザデータを例示した図。
図4】仮想ユーザに関連付いた嗜好を例示した図。
図5】仮想市場データベースに記憶される車両データを例示した図。
図6】仮想ユーザデータを生成する方法を説明する図。
図7】モジュール間で送受信されるデータを説明する図。
図8】分析部1011が実行する市場分析の概要を説明する図。
図9】市場俯瞰分析における出力結果の一例。
図10】競合車種分析における出力結果の一例。
図11】重要指標分析における出力結果の一例。
図12】ユーザ分析における出力結果の一例。
図13】ポテンシャル分析における出力結果の一例。
図14】施策を入力する画面の一例。
図15】施策を入力する画面の一例。
図16】仮想ユーザのそれぞれについて算出されたスコアの一例。
図17】施策実行後における市場の反応をシミュレーションした結果の一例。
図18】施策実行後における市場の反応をシミュレーションした結果の一例。
図19】予測部1012が実行する処理のフローチャート。
図20】第二の実施形態におけるサーバ装置100の構成要素を詳細に示した図。
図21】時間の経過とともに変化する仮想ユーザのステータスを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
個人の嗜好といったパーソナルデータを用いて、市場の分析や、未来の需要予測を行う技術が知られている。例えば、ターゲットが自動車である場合、個人の嗜好を表す複数のパラメータと、車種ごとに定義された複数のパラメータをマッチングさせることで、新たに市場に投入しようとしている自動車がどの程度ユーザに受け入れられるかを予測することができる。
【0012】
しかし、斯様な分析では、新たなモデルを市場に投入した場合における、ユーザの直近の反応を予測することはできるが、それが今後市場にどのような影響を及ぼすかを予測することはできない。例えば、新しい車種の投入によって、既存車種からの乗り換えが多く発生した場合、市場のバックグラウンドが変わってしまうことがある。このような場合、「利益を増加させるため、その次にどのような車種を投入すればよいか」といった戦略が立てづらくなる。既存の需要予測は、あくまである一時点に対して行うものであるからである。
【0013】
この問題を解決するためには、ユーザの購買行動を予測するだけでなく、「ユーザが購買行動を起こした結果、市場がどのように変化するか」を予測し、前提となる市場のバックグラウンド自体を更新する必要がある。
本開示に係る情報処理装置は、かかる問題を解決する。
【0014】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、複数の仮想ユーザを記述した第一のデータと、市場にて販売される複数の自動車のモデルを記述した第二のデータと、を含むデータベースを記憶する記憶装置と、前記市場に対する販売促進施策を取得することと、前記第一のデータ、前記第二のデータ、および、前記販売促進施策に基づいて、前記販売促進施策を実行した後における複数の前記仮想ユーザの購買行動を予測することと、前記複数の仮想ユーザについて予測した購買行動を前記第一のデータに反映することと、を実行する制御装置と、を有することを特徴とする。
【0015】
第一のデータは、複数の仮想ユーザを記述したデータの集合である。第一のデータは、例えば、年齢、性別、経済状況、ライフステージといったパラメータのほか、自動車の嗜好に対する複数のパラメータを含んでいてもよい。これらのパラメータは、自動車に対する購買行動に影響するものであれば、どのようなものであってもよい。さらに、第一のデ
ータは、現在保有している自動車や、過去に保有していた自動車についての詳細な情報などを含んでいてもよい。
第二のデータは、市場にて販売される自動車の情報を記述したデータの集合である。第二のデータは、例えば、車両のタイプ、クラス、機能、価格など、複数のパラメータを含んでいてもよい。
【0016】
制御装置は、装置の操作者から、自動車の販売に関する販売促進施策を取得し、第一のデータと第二のデータを用いて、ユーザの購買行動を予測する。
自動車の販売に関する販売促進施策とは、典型的には、販売ラインナップの変更を伴うものであり、例えば、新モデルの投入、旧モデルの販売終了、モデルチェンジ等を含む。例えば、第二のデータに販売促進施策を反映させたうえで、第一のデータとマッチングさせることで、仮想ユーザの購買行動を予測することができる。
【0017】
しかし、前述したように、これだけでは、ユーザの購買行動を単発で予測することしかできない。
そこで、本開示に係る情報処理装置は、予測の結果を、第一のデータに反映させる。すなわち、仮想ユーザが購買行動を起こしたと仮定し、予測の大元となるデータを更新する。かかる構成によると、更新後の第一のデータを利用して、次の世代の需要予測を行うことが可能になる。なお、販売促進施策の投入によって自動車の販売ラインナップが変わる場合、第一のデータとともに第二のデータを更新してもよい。
【0018】
また、制御装置は、複数の仮想ユーザが前記購買行動を起こした後における市場の変化を予測し、結果を出力してもよい。これにより、例えば、「販売促進施策の投入によって会社間のシェアがどの程度変動するか」といった情報を提供することが可能になる。かかる構成によると、販売促進施策を実際に市場に投入すべきか否かを判断するための材料を提供することができる。
【0019】
また、制御装置は、購買行動が反映された第一のデータに基づいて市場分析をさらに行い、新たな前記販売促進施策を決定するための情報を出力してもよい。
かかる構成によると、販売促進施策を投入した後の市場を分析することが可能になる。すなわち、次の世代以降の販売促進施策を決定するための情報を提供することができる。
【0020】
なお、制御装置は、日時の経過をシミュレーションして、当該シミュレーションの結果を第一のデータに反映させてもよい。例えば、自動車を購入してから年月が経過すると、仮想ユーザのライフステージや経済状況が変化する場合があるためである。
【0021】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。各実施形態に記載されているハードウェア構成、モジュール構成、機能構成等は、特に記載がない限りは開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る分析システムの概要について説明する。図1は、本実施形態におけるサーバ装置100の概要図である。
本実施形態に係るサーバ装置は、複数の仮想的なユーザと、市場で販売される自動車のモデルに関する情報とを記憶するデータベース(以下、仮想市場データベース)を有しており、当該データベースを用いて、ユーザの購買行動の予測と、市場の分析を行う装置である。
【0023】
本実施形態では、サーバ装置100は、自動車市場を表した仮想市場データベースを記憶している。仮想市場データベースとは、自動車の買い手となる消費者(以下、ユーザ)
と、商品である自動車についてのデータを記憶するデータベースである。仮想市場データベースでは、実在する消費者に基づいて生成された仮想的な複数のユーザが定義される。以降、仮想的な複数のユーザのことを仮想ユーザと称し、仮想ユーザを表現するデータのことを仮想ユーザデータと称する。仮想ユーザは、例えば、年齢やライフステージ、嗜好などが、実在する消費者と同様の比率になるように調整されたデータとすることができる。
なお、本実施形態では、サーバ装置100を操作して市場分析を行う者を管理者と称し、消費者であるユーザと区別する。
【0024】
また、仮想市場データベースには、市場にて販売される複数の自動車についてのデータが記憶される。斯様なデータを以降、車両データと称する。車両データは、現在販売中である自動車のモデルを定義したものであってもよいし、仮想的な自動車のモデルを定義したものであってもよい。例えば、何らかの販売促進施策(例えば、販売中の自動車のモデルチェンジなど)を実行した場合における市場の反応を予測したい場合、モデルチェンジ前の車両データを削除し、モデルチェンジ後の車両データを追加することもできる。
以降の説明において、新モデルの投入、モデルチェンジ、モデル廃止といった、販売ラインナップの変更を伴う販売促進施策を単に「施策」と称する。また、以降の説明において、モデルという語を、市場で販売される自動車の特定の型を表す語として用いる。
【0025】
図1に示したように、サーバ装置100は、大きく分けて三種類の機能を実行可能に構成される。一つ目は、仮想市場データベースに記憶されたデータに基づいて市場分析を行い、その結果を出力する機能である。これにより、例えば、自社の自動車のラインナップに不足しているものは何であるか、販売促進のためにどのような方向性の施策を実行すればよいか(例えば、どのようなモデルを新規に発売すべきか)といった情報を提供することができる。
【0026】
二つ目は、自動車の販売に関する施策を実行(施策を投入するとも言う)した場合における、市場の反応をシミュレーションする機能である。例えば、仮想ユーザのそれぞれに与えられた嗜好等のパラメータを用いて、新たに市場に投入される施策が仮想ユーザにどの程度受け入れられるか(例えば、仮想ユーザが新しいモデルの自動車を購入するか否か)を予測することができる。また、この処理を複数の仮想ユーザについて実行することで、市場におけるシェアがどの程度変動するかといったシミュレーションを行うことができる。
【0027】
三つ目は、施策を実際に市場に投入したと仮定して、仮想市場データベースをアップデートする機能である。前述したように、施策を投入した結果、複数の仮想ユーザのうちの一部が特定のモデルの自動車を購入したり、乗り換えたりする場合がある。また、施策を投入することで、自動車の販売ラインナップが変化する。サーバ装置100は、仮想ユーザデータおよび車両データを更新することで、これらの市場の変化を仮想市場データベースに反映させる。
サーバ装置100は、更新された仮想市場データベースを利用して再度の市場分析を行うことができる。これにより、複数の施策を継続して投入した場合に、市場がどのように変化していくかを経時的にシミュレーションすることが可能になる。
【0028】
次に、サーバ装置100の詳細について説明する。図2は、本実施形態に係るサーバ装置100の構成要素を詳細に示した図である。
【0029】
サーバ装置100は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、およびリムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティン
グシステム(OS)、各種プログラム、および各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0030】
サーバ装置100は、制御部101、記憶部102、および、入出力部103を有して構成される。
制御部101は、サーバ装置100が行う制御を司る演算装置である。制御部101は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。
制御部101は、機能モジュールとして、分析部1011、および、予測部1012を有して構成される。各機能モジュールは、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0031】
分析部1011は、仮想市場データベースに記憶されたデータを用いて、市場分析を行い、その結果を出力する。市場分析とは、特定の自動車のモデルと、需要者(ユーザ)との関係を所定の観点で分析し、結果を出力するものである。市場分析の方法として、例えば、以下のようなものがある。
(1)市場俯瞰分析
あるモデルの自動車を所有するユーザについて、任意のパラメータ同士の関係(例えば、年齢層と収入の関係)をマッピングする分析方法である。
(2)競合車種分析
あるモデルの自動車について、比較検討されやすい他のモデルを可視化する方法である。
(3)重要指標分析
ある自動車のモデルについて、ユーザに選ばれる理由は何であるかを分析し、可視化する方法である。
(4)ユーザ分析
ある自動車のモデルについて、どのようなパラメータを持つ層が実際に購入しているかを統計する方法である。
(5)ポテンシャル分析
ある自動車のモデルについて、どのようなパラメータを持つ層が興味を持ちうるかを可視化する方法である。
これらの手法は、公知のものを採用することができる。具体的な方法については後述する。市場分析を行った結果に基づいて、システムの管理者は、自動車メーカーが取るべき施策を立案することができる。
【0032】
予測部2012は、管理者によって入力された施策を市場に投入した場合における、市場の反応をシミュレーションする。予測部2012は、例えば、仮想ユーザが持っている複数のパラメータ(自動車に対する購買行動に影響するパラメータ。以下、ユーザパラメータ)と、市場に投入しようとしている自動車が有するパラメータ(以下、車両パラメータ)を用いてマッチングを実行し、適合度を表すスコアを算出する。これを全ての仮想ユーザについて実行することで、どの程度の仮想ユーザが購買行動を起こすか(例えば、どの程度の仮想ユーザが、新規に発売されたモデルを購入するか)を予測することができる。また、これにより、「モデル間でどのような移動(乗り換え)が発生するか」、「会社間のシェアがどのように変動するか」といったシミュレーションを行うことができる。
【0033】
さらに、予測部1012は、管理者の指示に基づいて、シミュレーションの結果を仮想市場データベースに反映させる。具体的には、購買行動を起こした後の仮想ユーザの状態(保有している自動車等)を仮想ユーザデータに反映させ、施策を実行した後の自動車の
ラインナップを車両データに反映させる。この処理により、入力された施策が仮想市場に投入された状態となる。これにより、次のステップにおける市場分析を続けて行うことが可能になる。
【0034】
記憶部102は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部101によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部101において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが記憶される装置である。
【0035】
また、記憶部102には、仮想ユーザデータ102A、および、車両データ102Bが記憶される。
仮想ユーザデータ102Aは、自動車を購入しうる複数の仮想的な消費者を記述したデータである。図3は、仮想ユーザデータの一例である。図示したように、仮想ユーザデータは、性別や年齢、ライフステージ、年収、居住地、現在保有している自動車、過去に保有していた自動車などに関する情報等を含む。仮想ユーザデータには、仮想ユーザが保有している(していた)自動車の詳細(車齢、走行距離、特徴など)な情報が含まれていてもよい。仮想ユーザデータは、仮想ユーザのカーライフを表現したユーザモデルと言い換えることもできる。
また、仮想ユーザデータには、仮想ユーザの、自動車に対する嗜好に関する情報が含まれる。本例では、嗜好に関する情報が、嗜好テーブルとして定義されている。
【0036】
図4は、嗜好テーブルの一例である。
ユーザの自動車に対する嗜好には、例えば、メーカーの好み、ボディタイプの好み、クラスの好みといったように、様々なものがある。嗜好テーブルでは、これらの、購買行動に影響する複数のパラメータごとにスコアが(例えば、10点満点で)割り当てられている。図示した例では、該当する仮想ユーザは、A社の自動車、SUVタイプの自動車、ミディアムクラスの自動車を最も好む旨が定義されている。
【0037】
なお、嗜好テーブルには、「商品イメージ」、「期待点」、「車両機能」といった、自動車選びにおいて仮想ユーザが重要視する項目についての定義が存在する(符号401)。図示した例では、仮想ユーザが、自動車選びにおいて、複数の項目のそれぞれをどの程度重要視するかを表した点数が10点満点で割り当てられている。本例では、該当する仮想ユーザは、環境にやさしく、低走行コストである自動車を好む旨が定義されている。
これらの、自動車に対する購買行動に影響するパラメータをユーザパラメータと称する。
【0038】
車両データ202Bは、仮想市場で販売される複数の自動車のモデルを定義したデータである。図5は、車両データ202Bの一例である。車両データには、例えば、車名、モデル名、メーカー、ボディタイプ、クラス、価格、排気量といった、車両モデルに固有な項目が含まれる。ボディタイプやクラスは、予め定められた複数の項目の中から決定される。なお、車両データ202Bには、販売を開始する(した)日付、販売を終了する(した)日付などが含まれていてもよい。
【0039】
また、車両データ202Bには、「商品イメージ」、「期待点」、「車両機能」といった、自動車の特徴を表す項目が含まれる。商品イメージとは、該当モデルに対して想起される特定のイメージ(例えば、「かわいい」「スポーティ」「都会的」など)を表すものである。期待点とは、該当モデルのアピールポイント(例えば、「低燃費」「高出力」「広い室内空間」など)である。車両機能とは、該当モデルが有している機能である。これらの項目は、符号501で示したように、複数のサブ項目を含み、それぞれのサブ項目に点数が割り当てられている。なお、複数のサブ項目(符号501)は、仮想ユーザについ
て定義された嗜好(符号401)と一対一で対応している。
【0040】
図5に例示したような、自動車が有しているパラメータを車両パラメータと称する。
ユーザパラメータと車両パラメータを利用することで、仮想ユーザと、特定の自動車のモデルとの間で適合度(すなわち、仮想ユーザが、当該モデルをどの程度好むかを表す値)を算出することができる。
【0041】
仮想ユーザデータ202Aは、実在するユーザのデータを用いて生成してもよい。図6(A)は、仮想ユーザデータ202Aを生成する方法の一例を示した図である。例えば、自動車メーカーが顧客データベースを有している場合、当該データベースの内容に対して匿名化処理と拡張処理を施すことで、仮想ユーザデータを生成することができる。
【0042】
匿名化処理とは、個人が特定できる要素(例えば、氏名、住所、電話番号、生年月日等、または、これらの組み合わせ等)を削除または加工する処理である。加工の一例として、例えば、詳細な住所から、市区町村以下の情報を取り除く処理や、生年月日から月日を取り除く処理などが例示できる。また、これらの要素を、ランダムな値に置き換える処理などが例示できる。
【0043】
拡張処理とは、限られた数のユーザの集合から、市場に存在する多数の仮想ユーザを生成する処理である。例えば、実在する顧客のデータに基づいて、パラメータの分布を推定し、推定結果に基づいて仮想ユーザを生成してもよい。例えば、ある地域における年齢分布、収入分布、保有車種の分布等が既知である場合、当該既知のデータを元にして、当該地域に居住する仮想ユーザについてのデータを自動生成するようにしてもよい。これにより、例えば、千人分の顧客データに基づいて、十万人分の仮想ユーザを生成するといったことが可能になる。
【0044】
なお、顧客データが複数のデータベースから成っている場合、重複を排除する処理を行ったうえで、匿名化処理を実行してもよい。図6(B)は、仮想ユーザデータ202Aを生成する他の方法を例示した図である。
例えば、ある自動車メーカーに属する自動車販売店が複数あり、各販売店が独自の顧客データベースを有している場合がある。また、自動車メーカーのウェブサイトにおいてオンライン会員のデータが蓄積されている場合がある。このような場合、複数のデータベース間でユーザが重複している可能性があるため、重複を排除する処理を行ったうえで、前述したような、匿名化処理および拡張処理を行う。例えば、匿名化処理を行う前の個人情報をキーとしてデータ間の紐付けを行ったうえで重複の判定を行ってもよい。重複を排除した後の処理は、図6(A)の例と同様である。
【0045】
入出力部103は、サーバ装置100の管理者が行った入力操作を受け付け、管理者に対して情報を提示するユニットである。入出力部103は、例えば、液晶ディスプレイ、タッチパネルディスプレイや、ハードウェアスイッチを有して構成される。
【0046】
なお、図2に示した構成は一例であり、図示した機能の全部または一部は、専用に設計された回路を用いて実行されてもよい。また、図示した以外の、主記憶装置および補助記憶装置の組み合わせによってプログラムの記憶ないし実行を行ってもよい。
【0047】
次に、制御部101が実行する処理の詳細について説明する。図7は、制御部101が有する複数の機能モジュール、および、データベース間で入出力されるデータの流れを示した図である。
処理の前提として、仮想市場データベースには、現在の自動車市場を再現した仮想ユーザデータおよび車両データが格納されているものとする。例えば、仮想ユーザデータは、
実際の顧客データに基づいて生成されたものであり、車両データは、現在販売されている自動車のモデルを表すものである。
【0048】
管理者は、サーバ装置100を用いて市場分析を行い、どのような施策を市場に投入すべきか(例えば、既存のモデルのモデルチェンジを行うべきか、新しいモデルを発売すべきか、既存のモデルの販売を終了すべきか等)を判断する。前述したように、分析部1011は、5種類の分析手法を提供することができる。分析部1011は、管理者からの指示に基づいて、所定の方法で市場分析を行い、結果を出力する。
図8は、各分析手法によって出力されるデータを示した図である。
【0049】
(1)市場俯瞰分析
市場俯瞰分析では、あるモデルの自動車を所有しているユーザについて、任意のユーザパラメータ同士の関係をマッピングした結果を出力する。図9は、市場俯瞰分析において出力されるデータの一例である。本例では、ユーザのライフステージと、性別および年齢を分析軸に設定し、特定のモデルを所有しているユーザの数の分布をマッピングした表(分布マップ)を出力している。
なお、仮想ユーザデータに定義されているユーザパラメータであれば、例示したもの以外のパラメータを設定することも可能である。本分析手法によると、属性ごとにユーザ数がどのような分布を成しているかを知ることができる。
【0050】
(2)競合車種分析
競合車種分析は、あるモデルの自動車について、比較検討されやすい他のモデルを可視化する方法である。例えば、仮想ユーザデータに、比較検討を行ったモデルについての情報や、過去に所有していたモデルに関する情報が含まれる場合、複数の仮想ユーザの統計を取ることで、競合となるモデルのランキング(車種ランキング)を生成することができる。図10は、特定のモデルについて生成された、競合車種ランキングの一例である。本分析手法によると、特定のモデルの自動車を所有しているユーザについて、好みの近い他のモデルを抽出することができる。
【0051】
(3)重要指標分析
重要指標分析は、あるモデルについて、ユーザに支持されている理由を分析し、可視化する方法である。本実施形態では、複数の仮想ユーザが、図4に示したように、嗜好に関するパラメータを持っている。よって、Aというモデルを所有しているユーザと、Bというモデルを所有しているユーザの嗜好を分析することで、「Aというモデルについて、Bというモデルと比較してどこに魅力があるのか」を分析することができる。
【0052】
具体的には、対象車種を所有している複数の仮想ユーザと、比較車種を所有している複数の仮想ユーザで、嗜好についての有意差や効果量を求め、そのランキング(重要指標ランキング)を出力する。有意差や効果量は、例えば、P値やカイ二乗検定を用いて求めることができる。
例えば、Aというモデルを所有している仮想ユーザが、Bというモデルを所有している仮想ユーザよりも、「かわいい」というイメージを重要視する傾向にある場合、Aというモデルは、「かわいい」という特徴がユーザに受け入れられていると判定することができる。
【0053】
図11は、AとBの2つのモデルを比較した結果出力されるデータの一例である。本例では、「かわいい」というイメージについて、最も高い有意差および効果量が認められたことが示されている。斯様なケースにおいては、Aというモデルについては、「かわいい」というイメージを変更する戦略を取るべきではないと言える。
【0054】
(4)ユーザ分析
ユーザ分析は、ある自動車のモデルについて、どのようなパラメータを持つ層が実際に購入しているかを可視化する方法である。
ユーザ分析は、仮想ユーザデータから、特定のモデルを所有している仮想ユーザを抽出し、そのユーザパラメータの統計を取ることで行うことができる。図12は、特定のモデルを所有している仮想ユーザの属性の統計を取り、分析レポートにまとめた例である。
【0055】
(5)ポテンシャル分析
ポテンシャル分析は、ある自動車のモデルについて、どのようなパラメータを持つ層が興味を持ちうるかを可視化する方法である。
例えば、ワゴンタイプの自動車を購入した人であっても、SUVに対する嗜好がある程度強い場合がある。よって、仮想ユーザデータに定義された嗜好を分析することで、特定のモデルの自動車に興味を持ちうる層を判定することができる。
【0056】
ポテンシャル分析では、あるモデルの自動車を所有している仮想ユーザについて、任意のユーザパラメータを分析軸に設定し、嗜好の強さをマッピングした分布マップを出力する。例えば、図13の例では、あるモデルの自動車を所有している仮想ユーザについて、2BOXのコンパクトカーを嗜好する仮想ユーザが最も多く、次に、SUVのコンパクトカーを嗜好する仮想ユーザが多い旨が示されている。斯様なケースでは、コンパクトSUVが需要の受け皿になるポテンシャルを有していると判断できる。
【0057】
図7に戻り、説明を続ける。分析部1011による分析の結果は、入出力部103を介して管理者に提供される。管理者は、市場分析の結果に基づいて、市場に投入する施策を立案する。
次に、管理者は、立案した施策の内容をサーバ装置100(予測部1012)に入力する。図14は、施策を入力する画面の一例である。本実施形態では、図示したように、モデルごとに、「現行維持」「廃止」「変更」が選択可能となっている。また、新しいモデルを追加することができる。図15は、新しいモデルの車両パラメータを入力する画面の例である。なお、本例では、新しいモデルを追加する際に用いられる画面を例示したが、モデルチェンジを行う際にも同様の画面が用いられる。
【0058】
予測部1012は、仮想市場データベースに含まれる仮想ユーザデータおよび車両データに基づいて、入力された施策が実行された場合における市場の反応をシミュレーションする。予測部1012は、具体的には、以下の処理を実行する。
【0059】
(1)仮想市場データベースを利用して、シミュレーションに用いる一時的なデータベースを生成する
入力された施策を実行することで市場がどのように反応するかをシミュレーションするため、既存の仮想市場データベースをコピーし、シミュレーションを行うための一時的な仮想市場データベース(以下、第二データベース)を生成する。
この際、予測部1012は、入力された施策を第二データベースに反映させる。例えば、「新しいモデルを追加する」という施策をテストする場合、第二データベースが有する車両データに、当該新しいモデルのデータを追加する。第二データベースは、シミュレーションが終了するまで記憶部102に一時的に記憶される。
【0060】
(2)施策を実行した後の車両データと、仮想ユーザとのマッチングを行い、スコアを算出する
次に、予測部1012は、車両データが有している複数の車両パラメータと、仮想ユーザが有している複数のユーザパラメータとを用いてマッチングを行い、仮想ユーザごとに、複数のモデルのそれぞれとの適合度を表すスコア(以下、マッチングスコア)を算出す
る。マッチングスコアは、パラメータ同士の合致度に基づいて、数式等によって算出されてもよいし、機械学習モデルを用いて算出してもよい。本処理によると、複数の仮想ユーザのそれぞれについて、図16に示したような、モデルごとの適合度ランキングを生成することができる。
【0061】
(3)マッチングスコアに基づいて、自動車の購入予測を行う
次に、予測部1012は、仮想ユーザの購買行動(適合するモデルの自動車を購入するか否か)を予測する。予測は、仮想ユーザの収入、ライフステージ、現在保有している自動車の車齢、走行距離、車検タイミング、営業活動の有無、販売促進活動の有無(コマーシャルの放映タイミングなど)などに基づいて行うことができる。予測処理は、例えば、機械学習モデル等を用いて実行してもよい。
【0062】
例えば、過去に自動車を購入した履歴のあるユーザについて、マッチングスコアと、上述したような複数の要素との関係を学習させた機械学習モデルを利用することで、ある条件下において仮想ユーザが実際に自動車を購入するか否かを予測することができる。
予測部2012は、予測の結果に基づいて、第二データベースが有する仮想ユーザデータを更新する。例えば、ある仮想ユーザが自動車を購入するという予測結果が得られた場合、該当する仮想ユーザの所有している自動車が更新される。
【0063】
上述した(2)および(3)の処理は、第二データベースに含まれる全ての仮想ユーザについて行われる。これにより、ある施策を市場に投入した場合に、市場においてどのような反応が得られるかをシミュレーションすることができる。例えば、買い替えが発生した結果、複数の自動車メーカーのシェアがどのように変動するか、同一メーカーにおいて車種ごとのユーザ分布がどのように変動するかといった分析を行うことが可能になる。
【0064】
図17は、複数の自動車メーカーについて、施策の投入前後で、市場におけるシェア、台数、売り上げがどのように変動するかをシミュレーションしたデータの一例である。また、図18は、特定の自動車メーカーについて、施策の投入前後で、モデルごとの台数がどのように変動するかをシミュレーションしたデータの一例である。
【0065】
管理者は、分析の結果に基づいて、入力した施策によって仮想市場データベースを更新するか否かを決定する。入力した施策によって仮想市場データベースを更新する場合、予測部1012は、第二データベースによって仮想市場データベースを上書き更新する。これにより、仮想市場データベースは、「管理者によって入力された施策が実行された後における市場の状態」が反映されたものとなる。
【0066】
サーバ装置の管理者は、さらにこの後、更新後の仮想市場データベースに対して市場分析を行い、次なる施策を決定することができる。また、次なる施策に基づいてシミュレーションを行い、その結果を仮想市場データベースに反映することができる。これにより、複数の世代にわたってのシミュレーションが可能になり、より精度の高い経時的なシミュレーションを行うことが可能になる。
【0067】
図19は、予測部1012が実行する処理のフローチャートである。図示した処理は、管理者の要求に基づいて開始される。
まず、ステップS11で、管理者によって入力された施策を取得する。入力可能な施策は、図14で例示したように、現状維持、廃止、変更、新型車(新モデル)投入の4種類である。また、変更および新型車投入が選択された場合、具体的な車両パラメータの入力を受け付ける。
ステップS12では、仮想市場データベースのコピーである第二データベースを生成する。また、管理者によって入力された施策を第二データベースに反映させる。これにより
、施策に応じて、第二データベースが有する車両データが更新される。
【0068】
ステップS13では、第二データベースが有する車両データと仮想ユーザデータに基づいて、複数の仮想ユーザのそれぞれについてマッチングスコアを算出する。これにより、図16に示したような、マッチングスコアのランキングが仮想ユーザごとに求められる。
【0069】
ステップS14では、仮想ユーザごとに生成されたマッチングスコアに基づいて、仮想ユーザの購買行動を予測する。予測結果は、第二データベースが有する仮想ユーザデータに反映される。
ステップS15では、予測結果に基づいて、市場の統計を取り、その結果を出力する。統計は、例えば、モデル別の流出入予測、会社間の流出入予測、ポートフォリオ予測など、複数の観点で実行することができる。
ステップS16では、シミュレーションの結果を確認した管理者の指示に基づいて、現在入力されている施策を仮想市場データベースに反映させるか否かを決定する。本ステップで肯定判定となった場合、すなわち、施策を仮想市場データベースに反映させる指示があった場合、処理はステップS17へ遷移し、第二データベースを仮想市場データベースに上書きする。ステップS16で否定判定となった場合、すなわち、施策を破棄する指示があった場合、処理は終了する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態に係るサーバ装置は、仮想市場を表すデータベースを保持しており、市場分析を行うとともに、任意の施策を市場に投入した場合における市場の反応をシミュレーションすることができる。これにより、より適切な施策を決定することができる。さらに、施策を投入した結果を仮想市場データベースに反映させることで、次のステップにおける市場分析が可能になる。すなわち、一回の施策を決定するだけでなく、「継続してどのような施策を投入していくか」といった課題に対する答えを導くことが可能になる。
【0071】
なお、本実施形態では、施策として、自社製品に関する施策を入力する例を挙げたが、入力可能な施策は、自社製品に関するものに限られない。例えば、競合する他社が何らかの施策を実行したものと仮定し、その内容を入力してもよい。これにより、他社の動きに応じて、自社が取るべき適切な施策を立案することが可能になる。
【0072】
(第二の実施形態)
自動車を保有するユーザの状況(例えば、年齢、ライフステージ、収入など)は、時間の経過とともに変化しうる。第二の実施形態は、時間の経過とともに変化する仮想ユーザのライフスタイル等をデータベースに反映させる実施形態である。
【0073】
第二の実施形態に係るサーバ装置100は、指定された期間の経過をシミュレーションし、その結果を、仮想市場データベースに含まれる仮想ユーザデータに反映させる機能をさらに有して構成される。
図20は、第二の実施形態に係るサーバ装置100Aの構成要素を詳細に示した図である。第二の実施形態に係るサーバ装置100Aは、更新部1013をさらに有して構成される。更新部1013は、指定された期間の経過をシミュレーションし、仮想市場データベースに含まれる仮想ユーザのユーザパラメータを更新する。
【0074】
例えば、ある施策を市場に投入してから3年後に、さらなる施策を投入する場合を考える。第一の実施形態に係るサーバ装置100では、3年という時間の経過を考慮することはできないが、実際は、時間が経過すると、ユーザの年代、収入、ライフステージ、または家庭環境といった様々なユーザパラメータが変化する。例えば、時間の経過とともに子供の数が増え、車が手狭になることがある。よって、正確な市場分析を行うためには、こ
れらの変化をデータベースに反映させなければならない。図21は、時間の経過にともなって変化する仮想ユーザのステータスを例示した図である。
【0075】
更新部1013は、ある期間(例えば、3年)が指定された場合に、当該期間が経過したものとして、仮想ユーザのステータスを推定し、対応するユーザパラメータを更新する。仮想ユーザのステータスがどのように変化するかは、統計データ等を用いて推定することができる。さらに、更新部1013は、期間中において運転をリタイアした仮想ユーザの数を推定し、該当する仮想ユーザを削除してもよい。また、期間中において新たに運転免許を取得した仮想ユーザの数を推定し、該当する仮想ユーザを追加してもよい。
【0076】
第二の実施形態では、仮想ユーザデータが更新された後で、分析部1011による市場分析を行うことができる。これにより、時間の経過を反映した市場分析を行うことができる。例えば、「ある施策を投入してから3年後に別の施策を投入したら、市場のユーザはどう反応するか」といったシミュレーションを行うことが可能になる。
【0077】
(その他の変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0078】
また、実施形態の説明では、制御部101と記憶部102を同一の装置が有している例を挙げたが、仮想市場データベースを記憶する装置は、サーバ装置100と別体の装置であってもよい。
【0079】
また、実施形態の説明では、市場に投入する施策として、販売する自動車のラインナップを変更する例を示したが、自動車の販売に関する施策であれば、これ以外のものを併用してもよい。例えば、あるモデルの自動車について、テレビコマーシャル、ネット広告などのキャンペーンを行うことで、メディアへの露出が増え、ユーザの購買行動につながる場合がある。このように、広告の出稿を「施策」の一部としてもよい。
【0080】
この場合、仮想市場に仮想的な広告(仮想広告)を出したものとして、(例えばステップS14において)仮想ユーザの購買行動を予測してもよい。仮想広告の詳細は、管理者によって指定されてもよい。例えば、広告の対象(自動車のモデル)、媒体(テレビ、新聞、インターネット等)、規模および期間などを管理者に入力させ、その効果(例えば、当該広告に接するユーザの数)を推定したうえで、仮想ユーザの購買行動を予測することができる。なお、仮想広告に関するデータは、仮想市場データベースに含ませてもよい。かかる構成によると、自動車のラインナップを変更した場合において、どのような広告を行えば、ユーザに対してより効果的な訴求を行えるかをシミュレーションすることができる。
【0081】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0082】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコ
ンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0083】
10・・・車両
100・・・サーバ装置
101・・・制御部
102・・・記憶部
103・・・入出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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