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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183284
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】配管走行装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/46 20060101AFI20231220BHJP
   B61B 13/10 20060101ALI20231220BHJP
   F16L 55/34 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
F16L55/46
B61B13/10
F16L55/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096817
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】505466295
【氏名又は名称】株式会社イクシス
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 高志
(72)【発明者】
【氏名】中山 錬
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和茂
(72)【発明者】
【氏名】平 治
(72)【発明者】
【氏名】長峰 春夫
(57)【要約】
【課題】検査等を行うための計測器を備えるとともに、アクシデントが生じた場合の回収性能に優れた配管走行装置を提供する。
【解決手段】配管走行装置1は、配管設備Gに設けられた配管入り口H3から配管H1内に挿入され配管H1内を走行可能な配管走行ロボット10を備えている。配管走行装置1は、配管走行ロボット10に牽引部材30を介して牽引され、計測器が搭載された計測器収容車40を備えている。計測器収容車40には、配管入り口H3から配管H1の外部に引き出されるレスキュー用ケーブル50が連結されている構成とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管設備に設けられた配管入り口から配管内に挿入され前記配管内を走行可能な配管走行ロボットを備えた配管走行装置であって、
前記配管走行ロボットに牽引部材を介して牽引され、計測器が搭載された計測器収容車を備え、
前記計測器収容車には、前記配管入り口から前記配管の外部に引き出されるレスキュー用ケーブルが連結されていることを特徴とする配管走行装置。
【請求項2】
前記配管走行ロボットは、
複数のリンク部材が前後方向に略ジグザグ状に連結されて構成されており、
複数の前記リンク部材同士の連結部分に配置され、前記配管の中心軸を挟んで対向する配管内面における2つの領域に当接する駆動輪と、
複数の前記リンク部材のうち先頭の前記リンク部材の前端部及び後尾の前記リンク部材の後端部に配置され、前記配管内面における2つの領域のうち一方の領域に当接して前記配管の中心軸周りにおける前記配管走行ロボットのロール姿勢を変更する従動輪と、を備えており、
複数の前記リンク部材は、隣合う前記リンク部材同士の角度が小さくなる方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の配管走行装置。
【請求項3】
前記従動輪は、先頭の前記リンク部材の前端部から突出する前側ロール操舵軸、及び後尾の前記リンク部材の後端部から突出する後側ロール操舵軸に支持されており、
前記牽引部材は、前記後側ロール操舵軸に対して連結されていることを特徴とする請求項2に記載の配管走行装置。
【請求項4】
前記配管走行ロボット及び前記計測器収容車に接続され、前記配管入り口から配管の外部に引き出されるコントロール用ケーブルを備え、
前記コントロール用ケーブルは、前記レスキュー用ケーブルに一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の配管走行装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された配管走行装置の前記配管走行ロボットを、配管設備に設けられた前記配管入り口から前記配管内に挿入し、前記配管内の所定位置まで走行させる工程と、
前記計測器による計測を行う工程と、を備えたことを特徴とする計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を走行可能な配管走行ロボットを備えた配管走行装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、原子力発電所の配管設備の保守点検や検査等を行う目的で、自律走行可能な配管走行ロボットを配管内に送り込み、保守点検や検査等を行う配管走行装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
配管走行ロボットは、走行用の駆動輪と姿勢変更用の従動輪とを備えている。また、配管走行ロボットは、配管の屈曲部の屈曲方向を判別する撮像装置を備えており、撮像装置により判別した配管の屈曲部の屈曲方向に合うように、配管の中心軸周りの回動姿勢であるロール姿勢を従動輪により変更して、配管内を移動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-210210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の配管走行ロボットは、小型化により狭い配管内も自律走行可能に構成されていたが、検査等を行うための計測器の搭載スペースを有しておらず、その改善が望まれていた。
また、特許文献1の配管走行ロボットは、ロール姿勢を変更することにより配管の屈曲部の走行が可能であったが、配管内において何らかのアクシデントが生じた場合等に配管走行ロボットの自律走行による回収が不可能となるおそれがあった。
本発明は、前記した課題を解決し、検査等を行うための計測器を備えるとともに、アクシデントが生じた場合の回収性能に優れた配管走行装置及び計測方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の配管走行装置は、配管設備に設けられた配管入り口から配管内に挿入され配管内を走行可能な配管走行ロボットを備えている。配管走行装置は、前記配管走行ロボットに牽引部材を介して牽引され、計測器が搭載された計測器収容車を備えている。前記計測器収容車には、前記配管入り口から前記配管の外部に引き出されるレスキュー用ケーブルが連結されている。
本発明では、計測器収容車が配管走行ロボットに牽引部材を介して牽引されているので、配管走行ロボットの小型化を図りつつ、計測器により取得したデータに基づいて配管設備の状態や傾向の把握を容易に行うことができる。したがって、配管設備の保守点検や検査等を好適に行うことができる。
また、仮に、配管の屈曲部等で配管走行ロボットがスタックした場合には、配管の外部からレスキュー用ケーブルを引っ張ることで、配管走行ロボットのスタックを解消することが可能である。さらに、配管走行ロボットに何らかのアクシデントが生じて配管走行ロボットが配管内で停止した場合には、配管の外部からレスキュー用ケーブルを引っ張ることで、計測器収容車及び配管走行ロボットの両方を回収できる。
【0006】
また、前記配管走行ロボットは、複数のリンク部材が前後方向に略ジグザグ状に連結されて構成されていることが好ましい。この場合、複数の前記リンク部材同士の連結部分に、前記配管の中心軸を挟んで対向する配管内面における2つの領域に当接する駆動輪を配置し、複数の前記リンク部材のうち先頭の前記リンク部材の前端部及び後尾の前記リンク部材の後端部に、前記配管内面における2つの領域のうち一方の領域に当接して前記配管の中心軸周りにおける前記配管走行ロボットのロール姿勢を変更する従動輪を配置することが好ましい。そして、複数の前記リンク部材は、隣合う前記リンク部材同士の角度が小さくなる方向に付勢されていることが好ましい。
このように構成することで、配管内面における2つの領域に駆動輪を当接させながら走行しつつ、従動輪によりロール姿勢を変更させることで配管の屈曲部の屈曲方向に合った姿勢で走行可能な配管走行ロボットが得られる。
【0007】
また、前記従動輪は、先頭の前記リンク部材の前端部から突出する前側ロール操舵軸、及び後尾の前記リンク部材の後端部から突出する後側ロール操舵軸に支持されていることが好ましく、前記後側ロール操舵軸に対して、前記牽引部材が連結されていることが好ましい。
このように構成することで、配管走行ロボットに対する牽引部材の連結位置が、配管の中心軸から径方向外側に偏倚した位置となる。これにより、レスキュー用ケーブルを引っ張った際に、配管の角部付近において配管の内側に従動輪が向くロール姿勢となり、計測器収容車及び配管走行ロボットの回収が容易になる。
【0008】
また、前記配管入り口から配管の外部に引き出され、前記配管走行ロボット及び前記計測器収容車に接続されるコントロール用ケーブルを備えている場合には、前記コントロール用ケーブルは、前記レスキュー用ケーブルに一体に設けられていることが好ましい。
このように構成することで、コントロール用ケーブルの取り回しが向上するとともに、配管走行ロボットの走行安定性の向上及び回収性能の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明の計測方法は、前記した配管走行装置の前記配管走行ロボットを、配管設備に設けられた前記配管入り口から前記配管内に挿入し、前記配管内の所定位置まで走行させる工程と、前記計測器による計測を行う工程と、を備える。
本発明では、配管内の所定位置まで走行させる工程及び計測器による計測を行う工程により取得したデータに基づいて、配管設備の状態や傾向の把握を容易に行うことができるので、配管設備の保守点検や検査等を好適に行うことができる。
また、仮に、配管の屈曲部等で配管走行ロボットがスタックした場合には、配管の外部からレスキュー用ケーブルを引っ張ることで、配管走行ロボットのスタックを解消することが可能である。さらに、配管走行ロボットに何らかのアクシデントが生じて配管走行ロボットが配管内で停止した場合には、配管の外部からレスキュー用ケーブルを引っ張ることで、計測器収容車及び配管走行ロボットの両方を回収できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る配管走行装置及び計測方法によれば、検査等を行うための計測器を備えるとともに、アクシデントが生じた場合の回収性能に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の主要構成を示した斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の配管走行ロボットを示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の配管走行ロボットを示した図であり、(a)は底面図、(b)は図3(a)の要部の拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の配管走行ロボットを示した図であり、(a)は正面図、(b)は後面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の配管走行ロボットと牽引部材との連結構造を示した拡大斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の計測器収容車を示した図であり、(a)は平面図、(b)は図6(a)の計測器収容車を長軸周りに45度回動させた平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の配管走行ロボット及び計測器収容車の配管内における走行形態を示した一部断面側面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の使用時の様子を示した模式説明図である。
図9】本発明の一実施形態に係る配管走行装置において、配管走行ロボット及び計測器収容車のレスキュー時における配管の屈曲部を通過する際の様子を示した一部断面側面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る配管走行装置において、配管走行ロボット及び計測器収容車のレスキュー時における回収の様子を示した説明図である。
図11】本発明の一実施形態に係る配管走行装置の計測器収容車の変形例を示した図であり、(a)は平面図、(b)は図11(a)の計測器収容車を長軸周りに45度回動させた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、配管内を走行可能な配管走行ロボットを備えた配管走行装置である。配管走行装置は、配管走行ロボットと、当該配管走行ロボットに牽引部材を介して牽引された計測器収容車とが、レスキュー用ケーブル、及びコントロール用ケーブルで接続されている。配管走行ロボットは、複数のリンク部材が前後方向に略ジグザグ状に連結されて構成される駆動輪を備えており、前後の駆動輪同士は一定距離で維持され、かつ前後の駆動輪の重心高さを上下に変化させることで、配管内を移動させるものである。
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る配管走行装置の主要構成を示した斜視図であり、図2は、同じく配管走行ロボットを示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図3は、同じく配管走行ロボットを示した図であり、(a)は底面図、(b)は図3(a)の要部の拡大図、図4は、同じく配管走行ロボットを示した図であり、(a)は正面図、(b)は後面図である。なお、図1図4では走行する配管の図示を省略している。また、図8は、同じく配管走行装置の使用時の様子を示した模式説明図である。なお、以下の説明において、上下左右前後を言うときは図1に示した方向を基準として説明する。
【0013】
本実施形態の配管走行装置1は、図1に示すような配管走行ロボット10と、配管走行ロボット10に牽引部材30を介して牽引された計測器収容車40と、レスキュー用ケーブル50と、コントロール用ケーブル60とを備えている。その他、配管走行装置1は、図8に示すように、電源装置71,コントローラ72及びタブレット端末73等を備えている。
配管走行ロボット10は、コントロール用ケーブル60を通じて電源装置71から電力を受けるとともにコントローラ72により駆動制御されることで、配管H1内を自律走行可能である。
牽引部材30は、金属製のスイベルであり、配管走行ロボット10と計測器収容車40とを繋ぐ部材である。
計測器収容車40は、計測器を内部に搭載した収容車である。本実施形態では、計測器として放射線計測器を搭載している。計測器収容車40に搭載される計測器としては、放射線計測器の他に、例えば、配管の肉厚を測定可能な肉厚測定センサ等を搭載できる。なお、計測器収容車に対して複数の計測器を搭載することも可能である。
レスキュー用ケーブル50は、配管走行ロボット10に何らかのアクシデントが生じて配管走行ロボット10が配管内で停止した場合や、配管H1の屈曲部H2付近等で配管走行ロボット10がスタックした場合に、これらを引っ張って回収するためのケーブルである。レスキュー用ケーブル50としては、柔軟で頑丈な線材、例えば金属製のワイヤーが用いられている。なお、レスキュー用ケーブル50としては、配管走行ロボット10及び計測器収容車40を回収できるものであればよく、金属製のワイヤーの他に、例えば、繊維や樹脂あるいはそれに類する牽引力を発揮できるものであれば種々の材料のものを使用できる。コントロール用ケーブル60は、レスキュー用ケーブル50に一体に設けられている。コントロール用ケーブル60は、レスキュー用ケーブル50の側方に沿わせてテープや保持部材等により部分的あるいは全体的に一体化してもよいし、レスキュー用ケーブル50を内包するように一体化してもよく、一体化として種々の形態を取り得る。
【0014】
以下、各部の構成について詳細に説明する。
配管走行ロボット10は、図2図3に示すように、胴部12と、胴部12に設けられた前後3つの駆動輪13a~13cと、胴部12に設けられた前後2つの従動輪14a,14bとを備えている。駆動輪13a~13cは、配管走行ロボット10を前進あるいは後進させるための車輪である。また、従動輪14a,14bは、配管走行ロボット10のロール姿勢を変更するための車輪である。
胴部12は、図2(b)に示すように、上向きに凸となった二つの円弧(劣弧)を連ねた外観を呈しており、前後方向に略ジグザグ状に配置された4つのリンク部材12a~12dが連結されることで構成されている。以下、胴部12の下側(円弧の内径側)を「腹」、上側(円弧の外径側)を「背」と称する場合がある。各リンク部材12a~12dは、略ジグザグ状の連結部分に配置された回動軸15a~15cの周りに不図示のベアリング等を介して回動可能に連結されている。回動軸15a~15cは、相互に平行であり、配管H1の中心軸O1方向(図7参照、以下同じ)と直交する方向に延在している。回動軸15a~15cの同軸上に駆動輪13a~13cの図示しない支軸が配置されている。つまり、第一の駆動輪13aは、先頭のリンク部材12aとその後方のリンク部材12bとの連結部に配置され、第二の駆動輪13bは、リンク部材12bとその後方のリンク部材12cとの連結部に配置されている。また、第三の駆動輪13cは、リンク部材12cとその後方のリンク部材12dとの連結部に配置されている。
【0015】
4つのリンク部材12a~12dは、いずれも、側面視で略円弧状を呈している。前後方向に隣合うリンク部材12a,12b同士、リンク部材12b,12c同士、及びリンク部材12c,12d同士は、回動軸15a~15cの軸周りに配置された図示しないバネ部材(付勢部材)により、隣合う角度が小さくなる方向に付勢されている。
これにより、配管走行ロボット10は、図8に示すように、配管設備Gの配管入り口H3から配管H1内に挿入されると、図7に示すように、配管H1の中心軸O1を挟んで対向する配管内面における2つの領域R1,R2のうち、一方の領域R1に対して2つの従動輪14a,14b及び駆動輪13bが矢印X1方向に押し付けられるようにして当接し、配管内面における他方の領域R2に対して駆動輪13a,13cが矢印X2方向に押し付けられるようにして当接する。つまり、3つの駆動輪13a~13cのうち、中央に位置する第二の駆動輪13b及び2つの従動輪14a,14bは、胴部12の腹側において配管内面における領域R1に当接し、第二の駆動輪13bの前後に位置する第一の駆動輪13a及び第二の駆動輪13cは、胴部12の背側において配管内面における領域R2に当接する。
前側の駆動輪13a及び中央の駆動輪13bは、例えば、先頭から2番目のリンク部材12bの内部に設けられた図示しない駆動ユニットにより回転駆動される。また、後側の駆動輪13cは、例えば、先頭から3番目のリンク部材12cの内部に設けられた図示しない駆動ユニットにより回転駆動される。各駆動ユニットは、駆動輪13a~13cに対して駆動力を付与する不図示の電動モータ、歯車、及び電動モータの駆動を制御する駆動制御部等を備えている。
先頭のリンク部材12aの前面及び後尾のリンク部材12dの後面には、図4(a)(b)に示すように、配管H1内を撮像する2つのカメラ21,22が配置されている。
なお、各駆動ユニットの配置場所は、特に限定されるものではなく、駆動力の伝達が可能であれば他のリンク部材に対して配置可能である。また、リンク部材12a~12dの寸法(大きさ)は、配管走行ロボット10が走行する配管H1の径等に応じて、適宜設定可能である。また、各リンク部材12a~12dは、略同形状のものを示したが、これに限られることはなく、配管H1の内部に収まるとともに配管走行ロボット10の自律走行を可能とする形状であれば、種々の形状のものを採用することができる。
【0016】
各駆動輪13a~13cは、左右一対の樹脂製等のホイールを備えている。各駆動輪13a~13cのホイールは、配管H1の周方向にも移動可能な公知のオムニホイール(登録商標)であり、外周縁部に所定の間隔を空けて合成ゴム製の樽型ローラ13eが複数備わる。これにより、配管走行ロボット10は、配管H1の軸方向及び周方向(ロール方向)に移動可能となっている。各駆動輪13a~13cには、各駆動ユニットの歯車に噛み合う図示しない歯車が組み付けられている。これにより、各駆動ユニットの電動モータを駆動させると、各駆動ユニットの歯車から各駆動輪13a~13cに駆動力が伝達され、各駆動輪13a~13cが同期して回転する。
【0017】
前側の従動輪14aは、図2(a)(b),図3(a)に示すように、先頭のリンク部材12aの先端前方に配置されている。前側の従動輪14aは、図4(a)に示すように、リンク部材12aの前端部から前方斜め下方に突出する円柱状の前側ロール操舵軸16aに、車軸17aを介して自由回転可能に支持されている。前側ロール操舵軸16aは、大径部16cと、大径部16cに連続する小径部16dとからなる段付き円柱状を呈している。車軸17aは、小径部16dに直交して配置され、左右方向に延在している。前側ロール操舵軸16aは、リンク部材12aの内部に設けられたロール操舵軸駆動ユニット18a(図2(b)参照)に接続されており、ロール操舵軸駆動ユニット18aによって軸周りに回動可能となっている。前側ロール操舵軸16aの回動により、前側の従動輪14aの向きが変更されることで、配管走行ロボット10のロール姿勢が変更可能になる。
後側の従動輪14bは、図2(a)(b),図3(a)に示すように、後尾のリンク部材12dの後端後方に配置されている。後側の従動輪14bは、図4(b)に示すように、リンク部材12dの後端部から後方斜め下方に突出する円柱状の後側ロール操舵軸16bに、車軸17bを介して自由回転可能に支持されている。後側ロール操舵軸16bは、前側ロール操舵軸16aと同様に大径部16cと、大径部16cに連続する小径部16dとからなる段付き円柱状を呈している。車軸17bは、小径部16dに直交して配置され、左右方向に延在している。後側ロール操舵軸16bは、リンク部材12aの内部に設けられたロール操舵軸駆動ユニット18b(図2(b)参照)に接続されており、ロール操舵軸駆動ユニット18bによって軸周りに回動可能となっている。後側ロール操舵軸16bの回動により、後側の従動輪14bの向きが変更されることで、配管走行ロボット10のロール姿勢が変更可能になる。ロール操舵軸駆動ユニット18bは、前側のロール操舵軸駆動ユニット18aの駆動と同期あるいは非同期で駆動可能である。
後側ロール操舵軸16bの小径部16dは、図5に示すように、先端部側の左右側面16e,16eが平らに形成されており、牽引部材30の連結具31を取り付けるための取付部としても機能している。
【0018】
牽引部材30は、図5に示すように、前端及び後端に連結具31,35を備えている。前端の連結具31は、左右一対の連結板32,32と、連結板32,32の後端部に接続された円柱状の繋ぎ部材33とを備えている。左右一対の連結板32,32は、前後方向に伸びる長板状を呈している。両連結板32,32の前端部同士は、図示しない軸部材で繋がっており、この軸部材が小径部16dの左右側面16e,16eに設けられた図示しない貫通穴に挿入されることで、小径部16dに対して上下方向に回動自在に連結されている。繋ぎ部材33は、スイベルの前端部を連結具31に対して繋ぐ部材である。繋ぎ部材33は、両連結板32,32の後端部同士を繋ぐ図示しない軸部材に対して上下方向に回動自在に支持されている。後端の連結具35は、フック状を呈しており、リング部材34を介してスイベルの後端に配置されている。後端の連結具35には、図1に示すように、レスキュー用ケーブル50が連結される。
このように牽引部材30の前端の連結具31は、後側の従動輪14bの後側ロール操舵軸16bに対して連結されている。これにより、計測器収容車40は、図7に示すように、配管H1の中心軸O1よりも後側の従動輪14bが接触する配管H1の内面R1に偏位した位置にて牽引されることとなる。
【0019】
計測器収容車40は、図6(a)(b)に示すように、外形状が略ラグビーボール状(回転楕円状)を呈している。計測器収容車40は、収容車本体41と、収容車本体41に設けられた複数のフリー車輪42と、複数のローラ43とを備えている。収容車本体41の内部には、緩衝材等を介して図示しない放射線計測器が収容されている。放射線計測器には、収容車本体41の後端部に接続されたコントロール用ケーブル60の後記する主ケーブル部62を通じて電力が供給される。また、放射線計測器の計測データは、主ケーブル部62を通じて配管H1の外部のタブレット端末73に送信される。収容車本体41には、主ケーブル部62が貫通しており、収容車本体41の前端部からは主ケーブル部62に連続する引出し部61が引き出されている。
フリー車輪42は、収容車本体41の長軸方向の中央部の外周面において周方向に90度の間隔で計4個設けられている。ローラ43は、収容車本体41の長軸方向の前部及び後部の外周面に配置されており、フリー車輪42の前後に2個ずつ計16個設けられている。収容車本体41の前部及び後部の外周面41aは、面取りされて平らに形成されている。
【0020】
コントロール用ケーブル60は、図1に示すように、計測器収容車40の後側に接続された主ケーブル部62と、計測器収容車40の前側に引き出された引出し部61と、引出し部61の先端から配管走行ロボット10に向けて延在された延在部63と、を備えている。
主ケーブル部62及び引出し部61には、前記したようにレスキュー用ケーブル50が一体に内包されている。レスキュー用ケーブル50は、引出し部61の先端部から分岐して(露出して)、牽引部材30の後側の連結具35に向けて延び、連結具35に接続されている。延在部63は、引出し部61から胴部12に向けて上側に凸となる弧状に湾曲しており、後側の従動輪14bに対して上下方向に間隔を有するように配置されている。
主ケーブル部62は、図8に示すように、配管設備Gの床面や壁等に開口した点検口等の配管入り口(配管開口部)H3から配管H1の外部に引き出される全長を有している。主ケーブル部62の端部には、電源装置71、コントローラ72及びタブレット端末(モニター)73等の機器が接続されている。電源装置71は、配管走行ロボット10及び計測器収容車40に対して電力を供給する装置である。コントローラ72は、配管走行ロボット10の自律走行をコントロールするレバーや、カメラ21,22のオンオフ操作スイッチを備えている。タブレット端末73には、計測器収容車40の放射線計測器により取得された放射線量のデータの表示、カメラ21,22により撮像された画像(動画)データ、配管設備G内における配管経路図等を表示可能である。
主ケーブル部62及び引出し部61は、前記のようにレスキュー用ケーブル50を内包しているので、配管走行ロボット10が配管H1内でスタックした場合等の回収用ケーブルとして機能する。
【0021】
次に、配管走行装置1を用いた原子力発電所の配管設備Gの保守点検や検査等を行う場合の作用について、図7図10を参照して説明する。
図7は本発明の一実施形態に係る配管走行装置の配管内における走行形態を示した一部断面側面図、図8は同じく配管走行装置の使用時の様子を示した模式説明図、図9は同じく配管走行ロボット及び計測器収容車のレスキュー時における配管の屈曲部を通過する際の様子を示した一部断面側面図、図10は同じく配管走行ロボット及び計測器収容車のレスキュー時における回収の様子を示した説明図である。
【0022】
配管設備Gの配管H1に対して配管走行ロボット10を送り込む(挿入する)場合には、図8に示すように、配管設備Gの配管入り口H3から行う。この場合、配管走行ロボット10の前側の従動輪14aから順に駆動輪13a~13c及び後側の従動輪14bを配管入り口H3から配管H1内に送り込み、続けて牽引部材30及び計測器収容車40を配管H1内に送り込む。この場合、図8に示すように、配管入り口H3から下方へ垂直に延びる配管H1では、コントロール用ケーブル60を掴みながら配管H1内に降ろすようにして送り込むことができる。
配管走行ロボット10及び計測器収容車40を配管H1内に送り込んだら、コントローラ72を操作して、配管走行ロボット10を前進させる。そして、タブレット端末73に表示されるカメラ21,22の映像を確認しながら屈曲部H2の存在を確認しつつ、屈曲部H2の内側に前後の従動輪14a,14b及び駆動輪13bが向くロール姿勢(配管走行ロボット10の下面側が向くロール姿勢)となるように、前側ロール操舵軸16a及び後側ロール操舵軸16bをコントローラ72の操作で回動させる。そして、屈曲部H2の内側に向く上記ロール姿勢となったら、配管走行ロボット10をさらに前進させて屈曲部H2を通過させる。
その後、同様の操作で直管部、屈曲部H2や図示しないチーズ部等を通過させて、検査等の目的位置まで配管走行ロボット10及び計測器収容車40を前進させる(配管内の所定位置まで走行させる工程)。そして、走行に併せて、計測器収容車40の放射線計測器により配管H1内の放射線量を計測する(計測器による計測を行う工程)。放射線計測器により取得した計測データは、主ケーブル部62を通じて配管H1の外部のタブレット端末73に送信される。また、カメラ21,22により撮像された画像(動画)データにより、配管H1内のクラッドD(汚染部、図8参照)等を確認する。
なお、カメラ21,22の映像から屈曲部H2やチーズ部の存在及び屈曲部H2の内側の方向、チーズ部等の曲がるべき側の方向を自動的に検出して、その方向に対応するロール姿勢となるように配管走行ロボット10を自動制御するように構成してもよい。
【0023】
次に、このような保守点検や検査時等に、仮に、配管走行ロボット10に何らかのアクシデントが生じて配管走行ロボット10が配管H1内で停止した場合の作用(配管入り口H3から計測器収容車40及び配管走行ロボット10を回収する工程)について説明する。
この場合には、配管入り口H3から外部に延びているコントロール用ケーブル60を手で掴み、コントロール用ケーブル60を引っ張って配管H1内から徐々に引き出す作業を行う。そうすると、図7に示すように、コントロール用ケーブル60に引っ張られて計測器収容車40及び配管走行ロボット10が一体となって配管入り口H3に向けて移動する。つまり、主ケーブル部62に引っ張られて計測器収容車40が配管入り口H3に向けて移動し、計測器収容車40により引出し部61、レスキュー用ケーブル50及び牽引部材30が引っ張られて配管走行ロボット10が配管入り口H3に向けて移動する。
このように配管入り口H3に向けて移動する過程で、配管走行ロボット10が配管H1の屈曲部H2に差し掛かると、図9に示すように、屈曲部H2を先に通過した計測器収容車40から延びる引出し部61、レスキュー用ケーブル50及び牽引部材30が屈曲部H2の内側に位置する状態となる。これにより、屈曲部H2の内側に向けて後側の従動輪14bが引っ張られる状態になり、配管走行ロボット10の下面側(腹)が屈曲部H2の内側に向くように配管走行ロボット10のロール姿勢が好適に変更される。つまり、コントロール用ケーブル60を継続して引っ張る作業を行うだけで、屈曲部H2における配管走行ロボット10の通過が可能である。このようなロール姿勢の変更は、従動輪14a,14bの回動が可能か否かにかかわらず、行うことができる。
【0024】
このような配管走行ロボット10のロール姿勢の変更は、図10に示すように、配管H1の各屈曲部H2に差し掛かる度に同様に行われる。すなわち、図中矢印Y1方向にロール姿勢が変更される。これにより、各屈曲部H2でスタックすることなく計測器収容車40及び配管走行ロボット10をスムーズに回収することができる。
なお、仮に、屈曲部H2付近で配管走行ロボット10がスタックしてしまった場合には、例えば、強弱をつけてコントロール用ケーブル60を引っ張る操作を行うことにより、屈曲部H2の内側に向けて後側の従動輪14bを徐々に近づける。これにより、配管走行ロボット10の下面側が屈曲部H2の内側に向くように配管走行ロボット10のロール姿勢が徐々に変更され、屈曲部H2の通過が可能になる。
なお、配管H1内における配管走行ロボット10の前進時等に、配管H1の屈曲部H2付近等で配管走行ロボット10がスタックした場合にも、同様に、コントロール用ケーブル60を引っ張ることにより、配管走行ロボット10を後進方向にずらすことができるので、スタックを好適に解消することができる。
【0025】
以上説明した本実施形態の配管走行装置1によれば、計測器収容車40が配管走行ロボット10に牽引部材30を介して牽引されているので、配管走行ロボット10の小型化を図りつつ、計測器により取得したデータに基づいて配管設備Gの状態や傾向の把握を容易に行うことができる。したがって、配管設備Gの保守点検や検査等を好適に行うことができる。
また、仮に、配管H1の屈曲部H2等で配管走行ロボット10がスタックした場合には、配管H1の外部からコントロール用ケーブル60(レスキュー用ケーブル50)を引っ張ることで、配管走行ロボット10のスタックを解消することが可能である。さらに、配管走行ロボット10に何らかのアクシデントが生じて配管走行ロボット10が配管H1内で停止した場合には、配管H1の外部からコントロール用ケーブル60(レスキュー用ケーブル50)を引っ張ることで、計測器収容車40及び配管走行ロボット10の両方を回収できる。
【0026】
また、配管走行ロボット10は、リンク部材12a~12d同士の連結部分に、配管内面における2つの領域R1,R2に当接する駆動輪13a~13cを配置し、配管内面における一方の領域R1に当接する従動輪14a,14bを先頭のリンク部材12a,後尾のリンク部材12dに配置している。そして、各リンク部材12a~12dは、隣合うもの同士の角度が小さくなる方向に付勢されている。これにより、配管内面における2つの領域R1,R2に駆動輪13a~13cを当接させながら自律走行しつつ、従動輪14a,14bによるロール姿勢の変更により配管H1の屈曲部H2を通過可能な配管走行ロボット10が得られる。
【0027】
また、配管走行ロボット10に対する牽引部材30の連結位置が、配管H1の中心軸O1から径方向外側に偏倚した位置となっているので、レスキュー時にコントロール用ケーブル60(レスキュー用ケーブル50)を引っ張る操作で、配管H1の屈曲部H2付近においてロール姿勢を容易に変更できる。したがって、計測器収容車40及び配管走行ロボット10の回収性能に優れる。
また、コントロール用ケーブル60にレスキュー用ケーブル50が一体に設けられているので、コントロール用ケーブル60の取り回しが向上するとともに、配管走行ロボット10の走行安定性の向上及び回収性能の向上を図ることができる。
【0028】
また、本実施形態の計測方法によれば、配管H1内の所定位置まで走行させる工程及び計測器による計測を行う工程により取得したデータに基づいて、配管設備の状態や傾向の把握を容易に行うことができるので、配管設備の保守点検や検査等を好適に行うことができる。
また、配管入り口H3から計測器収容車40及び配管走行ロボット10を回収する工程では、配管H1の外部からコントロール用ケーブル60(レスキュー用ケーブル50)を引っ張ることで、計測器収容車40及び配管走行ロボット10の両方を回収できる。また、配管H1の屈曲部H2付近等で配管走行ロボット10がスタックした場合にも、同様に、コントロール用ケーブル60を引っ張ることにより、配管走行ロボット10のスタックを好適に解消することができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限られず、各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、胴部12を4つのリンク部材12a~12dで構成したが、これに限られることはなく、2つのリンク部材や3つのリンク部材で胴部を構成してもよく、また、5つ以上のリンク部材により胴部を構成してもよい。
また、駆動輪13a~13cの数や従動輪14a,14bの数は、リンク部材の数に対応して適宜設定することができる。
また、駆動輪13a~13cの大きさ(外径)や厚さも適宜設定することができる。さらに、車輪ごとに大きさ(外径)異ならせてもよく、車輪ごとに厚さを異ならせてもよい。
また、コントロール用ケーブル60は、必ずしも必要ではなく、他の電力供給手段やコントロール通信手段等を用いてもよい。この場合には、レスキュー用ケーブル50を計測器収容車40及び配管走行ロボット10に直接接続して、これを配管入り口H3から外部に引出すことで、回収用のケーブルとして利用できる。
また、配管走行ロボット10に対して複数の計測器収容車40を牽引してもよい。さらに、計測器収容車40として、レスキュー時に計測器収容車40や配管走行装置10に作用する張力を計測可能な張力計測器を計測器収容車40の前後に連結してもよい。
【0030】
図11は、計測器収容車の変形例を示した図であり、(a)は平面図、(b)は図11(a)の計測器収容車を長軸周りに45度回動させた平面図である。
図11に示すように、変形例の計測器収容車40Aは、収容車本体41に対してフリー車輪45を増設したものである。フリー車輪45は、既存のフリー車輪42の周囲に4個ずつ配置されている。このようなフリー車輪45を設けることによって、計測器収容車40Aの走行性能がより向上するようになり、アクシデントが生じた場合の回収性能が向上する。
【符号の説明】
【0031】
1 配管走行装置
10 配管走行ロボット
12 胴部
12a~12d リンク部材
13a~13c 駆動輪
14a,14b 従動輪
15a~15c 回動軸
16a 前側ロール操舵軸
16b 後側ロール操舵軸
30 牽引部材
31 連結具
40 計測器収容車
50 レスキュー用ケーブル
60 コントロール用ケーブル
G 配管設備
H1 配管
H2 屈曲部
H3 配管入り口
O1 中心軸
R1,R2 配管内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11