(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183285
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物の光硬化物及び感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231220BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20231220BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20231220BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/031
G03F7/027 515
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096818
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】林 茉莉花
(72)【発明者】
【氏名】津留 紘樹
(72)【発明者】
【氏名】鶴巻 孝博
【テーマコード(参考)】
2H225
5E314
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AD02
2H225AD06
2H225AE12P
2H225AE14P
2H225AN35P
2H225AN56P
2H225AN62P
2H225AN82P
2H225AN94P
2H225AP03P
2H225AP08P
2H225AP09P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA33P
2H225CA13
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
5E314AA27
5E314AA32
5E314AA41
5E314AA45
5E314BB02
5E314CC01
5E314CC02
5E314CC03
5E314CC07
5E314FF01
5E314GG26
(57)【要約】
【課題】優れた解像性を有する光硬化物を得ることができ、また、高い隠蔽力を有する感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)着色剤と、を含有し、前記(F)着色剤が、(F1)窒化ジルコニウムを含有する感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)着色剤と、を含有し、
前記(F)着色剤が、(F1)窒化ジルコニウムを含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長365nmの光の透過率が、18.0%以上である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長365nmの光の透過率が、25.0%以上である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長550nmの光の透過率に対する波長365nmの光の透過率の比が、3.0以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長550nmの光の透過率に対する波長365nmの光の透過率の比が、4.5以上である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)感光性樹脂100質量部(固形分)に対して、前記(F1)窒化ジルコニウムを4.0質量部以上20質量部以下含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(A)感光性樹脂100質量部(固形分)に対して、前記(F1)窒化ジルコニウムを7.0質量部以上15質量部以下含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(F1)窒化ジルコニウムのL値が、8以上18以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
カーボンブラックを含有しない請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)光重合開始剤が、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(A)感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂であり、前記(D)エポキシ化合物が、前記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の骨格を形成している前記多官能エポキシ樹脂と同種のエポキシ樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
【請求項13】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた解像性と高い隠蔽力を有する感光性樹脂組成物に関するものであり、例えば、プリント配線板のソルダーレジストとして使用した場合に、電極のファインピッチ化と微細化に対応でき、プリント配線板に対する高い隠蔽力を有する感光性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板は、基板の上に導体回路パターンが形成された部材であり、導体回路パターンのはんだ付けランドに電子部品を搭載するために使用される。導体回路パターンのはんだ付けランドを除く回路部分は、絶縁保護膜(例えば、ソルダーレジスト膜)で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際に、はんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路(導体)が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食するのを防止する。
【0003】
また、近年、技術進歩に伴い、エレクトロニクス分野では、小型化、軽量化への要求がさらに高まり、これに伴い、より小型化された電子部品をプリント配線板に高密度に搭載するために、プリント配線板の導体回路パターンのファインピッチ化、微細化、高精度性が求められている。これに応じて、絶縁保護膜についても、解像性について、より高性能なものが要求されている。また、絶縁保護膜には高い隠蔽力が要求されることがある。絶縁保護膜に高い隠蔽力を付与するために、絶縁保護膜を黒色等に着色する場合がある。
【0004】
黒色の絶縁保護膜を形成する材料として、カルボキシル基含有樹脂に配合される着色剤が、黒色着色剤と、黒色着色剤以外の1種以上の着色剤であるソルダーレジスト組成物が提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、特許文献1の黒色ソルダーレジスト組成物は、高い隠蔽力を付与する黒色着色剤として、カーボンブラックを好ましく使用している。しかし、カーボンブラックは紫外線の波長域の光透過率も低いので、露光時に紫外線を多く吸収してしまい、ソルダーレジスト塗膜の深部にまで紫外線が届きにくい傾向がある。従って、特許文献1では、ソルダーレジスト塗膜の深部における光硬化が十分ではなく、現像後にソルダーレジスト塗膜深部の寸法が小さくなりすぎて、プリント配線板から硬化塗膜が剥離等するので、絶縁保護膜の解像性に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、優れた解像性を有する光硬化物を得ることができ、また、高い隠蔽力を有する感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)着色剤と、を含有し、
前記(F)着色剤が、(F1)窒化ジルコニウムを含有する感光性樹脂組成物。
[2]前記(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長365nmの光の透過率が、18.0%以上である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長365nmの光の透過率が、25.0%以上である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長550nmの光の透過率に対する波長365nmの光の透過率の比が、3.0以上である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長550nmの光の透過率に対する波長365nmの光の透過率の比が、4.5以上である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(A)感光性樹脂100質量部(固形分)に対して、前記(F1)窒化ジルコニウムを4.0質量部以上20質量部以下含有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(A)感光性樹脂100質量部(固形分)に対して、前記(F1)窒化ジルコニウムを7.0質量部以上15質量部以下含有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記(F1)窒化ジルコニウムのL値が、8以上18以下である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9]カーボンブラックを含有しない[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[10]前記(B)光重合開始剤が、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含む[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[11]前記(A)感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂であり、前記(D)エポキシ化合物が、前記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の骨格を形成している前記多官能エポキシ樹脂と同種のエポキシ樹脂を含有する[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[12][1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化物。
[13][1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板。
【0009】
(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の光の透過率は、セル厚が10mmの測定用セルに前記分散体を注入して測定した光の透過率である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(F)着色剤が(F1)窒化ジルコニウムを含有することにより、窒化ジルコニウムは紫外線の波長域の光の透過率が高いので、塗工した感光性樹脂組成物の深部まで光硬化が十分に進行して優れた解像性を有し、また、窒化ジルコニウムは可視光線の波長域の光の透過率が低いので、隠蔽力を有する硬化物を得ることができる。また、(F)着色剤が(F1)窒化ジルコニウムを含有することにより、現像後における塗膜深部の幅寸法の減少を防止できるので、塗膜深部の幅寸法は塗膜表層部の幅寸法に近づき、硬化塗膜の寸法精度が向上する。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長365nmの光の透過率が、18.0%以上であることにより、塗工した感光性樹脂組成物の深部まで光硬化がより確実に進行して、より優れた解像性を有する硬化物を得ることができる。
【0012】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長365nmの光の透過率が、25.0%以上であることにより、塗工した感光性樹脂組成物の深部における光硬化性がさらに向上して、さらに優れた解像性を有する硬化物を得ることができる。
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長550nmの光の透過率に対する波長365nmの光の透過率の比が、3.0以上であることにより、優れた解像性を確実に得ることができる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(F1)窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長550nmの光の透過率に対する波長365nmの光の透過率の比が、4.5以上であることにより、解像性がさらに向上する。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)感光性樹脂100質量部(固形分)に対して、(F1)窒化ジルコニウムを4.0質量部以上20質量部以下含有することにより、優れた解像性と高い隠蔽力をバランスよく向上させることができる。
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)感光性樹脂100質量部(固形分)に対して、(F1)窒化ジルコニウムを7.0質量部以上15質量部以下含有することにより、優れた解像性と高い隠蔽力をバランスよく向上させつつ、隠蔽力をさらに向上させることができる。
【0017】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(B)光重合開始剤が、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択された少なくとも1種を含むことにより、感光性樹脂組成物の光硬化性が向上して、硬化物に優れた硬度と耐久性を付与することができる。
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物の態様によれば、(A)感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂であり、(D)エポキシ化合物が、前記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の骨格を形成している前記多官能エポキシ樹脂と同種のエポキシ樹脂を含有することにより、感光性樹脂組成物の硬化物の強度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の各成分について詳細を説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)感光性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)フィラーと、(F)着色剤と、を含有し、前記(F)着色剤が、(F1)窒化ジルコニウムを含有する。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物では、(F)着色剤が(F1)窒化ジルコニウムを含有することにより、窒化ジルコニウムは、紫外線の波長域の光の透過率が高く、可視光線の波長域の光の透過率が低いので、塗工した感光性樹脂組成物の深部まで光硬化が十分に進行して優れた解像性を有しつつ、高い隠蔽力を有する硬化物を得ることができる。また、(F)着色剤が(F1)窒化ジルコニウムを含有することにより、現像後における塗膜深部の幅寸法の減少を防止できるので、塗膜深部の幅寸法は塗膜表層部の幅寸法に近づき、硬化塗膜の寸法精度が向上する。
【0021】
<(A)感光性樹脂>
(A)成分である感光性樹脂は、感光性樹脂組成物のベース樹脂である。感光性樹脂の構造は、特に限定されず、例えば、感光性の不飽和二重結合を1個以上と遊離のカルボキシル基とを有するカルボキシル基含有感光性樹脂が挙げられる。カルボキシル基含有感光性樹脂としては、例えば、(A1)1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A1樹脂)、(A2)ラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A2樹脂)、(A3)1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基にポリイソシアネート化合物を付加反応させ、さらに付加反応したポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、水酸基とカルボキシル基を有する化合物を付加反応させて得られる構造を有する酸変性ウレタン化不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A3樹脂)等が挙げられる。
【0022】
(A1)多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されず、例えば、その上限値は、3000g/eqが好ましく、2000g/eqがより好ましく、1000g/eqがさらに好ましく、500g/eqが特に好ましい。一方で、多官能エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、100g/eqが好ましく、200g/eqが特に好ましい。多官能エポキシ樹脂の化学構造は、特に限定されず、多官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基が、多官能エポキシ樹脂のエポキシ基と反応してエステル結合を形成することで、エポキシ樹脂に感光性の不飽和二重結合が導入され、多官能エポキシ樹脂骨格に感光特性が付与される。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(アクリル酸及び/またはメタクリル酸を「(メタ)アクリル酸」ということがある。)、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸等を挙げることができる。これらのうち、反応性、入手容易性、取り扱い性の点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
多官能エポキシ樹脂にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させる方法は、特に限定されず、例えば、多官能エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸とを適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で加熱しながら撹拌する方法が挙げられる。
【0025】
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物
多塩基酸及び/または多塩基酸無水物が、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の水酸基に付加反応することで、感光性樹脂に遊離のカルボキシル基が導入されて、A1樹脂を得ることができる。多塩基酸及び/または多塩基酸無水物は、特に限定されず、飽和、不飽和のいずれも使用することができる。多塩基酸には、例えば、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、3-メチルテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、3-エチルテトラヒドロフタル酸、4-エチルテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸等のテトラヒドロフタル酸類、ヘキサヒドロフタル酸、3-メチルヘキサヒドロフタル酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸、3-エチルヘキサヒドロフタル酸、4-エチルヘキサヒドロフタル酸等のヘキサヒドロフタル酸類、ジグリコール酸等の2官能のカルボン酸、トリメリット酸等の3官能のカルボン酸、ピロメリット酸等の4官能のカルボン酸等が挙げられる。多塩基酸無水物としては、上記した多塩基酸の無水物が挙げられる。これらの多塩基酸及び多塩基酸無水物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させる方法は、特に限定されず、例えば、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と多塩基酸及び/または多塩基酸無水物とを適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で加熱しながら撹拌する方法が挙げられる。
【0027】
(A2)ラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂
A2樹脂は、上記多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂のカルボキシル基の一部に、さらに、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物(例えば、グリシジル化合物)を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂である。ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物をさらに反応させたカルボキシル基含有感光性樹脂では、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の側鎖にラジカル重合性不飽和基がさらに導入されている化学構造を有している。従って、ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を反応させた化学構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂は、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A1樹脂)よりも、光重合反応性に優れ、感光特性がさらに向上する。
【0028】
ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(アクリレート及び/またはメタクリレートを「(メタ)アクリレート」ということがある。)、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂にラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を反応させる方法は、特に限定されず、例えば、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂と、ラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物と、を適当な分散媒(例えば、不活性な有機溶媒)中で加熱しながら撹拌する方法が挙げられる。
【0029】
(A3)酸変性ウレタン化不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂
多官能エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A1樹脂)と同じく、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、特に限定されないが、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A1樹脂)と同じく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのうち、反応性、入手容易性、取り扱い性の点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物は、特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネアート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリメチルヘキサメチルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチルアミンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、1,3-ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネート等のジイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
水酸基とカルボキシル基を有する化合物
水酸基とカルボキシル基を有する化合物は、特に限定されず、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘプタン酸等のジメチロールアルカン酸といったジアルカノールアルカン酸を挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
A1樹脂、A2樹脂、A3樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価は、特に限定されないが、例えば、その下限値は、感光性樹脂組成物の光硬化物にアルカリ現像性を確実に付与する点から、30mgKOH/gが好ましく、40mgKOH/gが特に好ましい。一方で、カルボキシル基含有感光性樹脂の酸価の上限値は、アルカリ現像液による露光部(光硬化部)の溶解を確実に防止する点から、200mgKOH/gが好ましく、光硬化物の絶縁信頼性を確実に向上させる点から、150mgKOH/gが特に好ましい。
【0035】
カルボキシル基含有感光性樹脂は、上記各成分を用いて上記反応工程にて調製してもよく、上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂を使用してもよい。上市されているカルボキシル基含有感光性樹脂として、例えば、「リポキシSP-4621」、「リポキシSP-4785L」(以上、昭和電工株式会社)、「ZAR-2000」、「ZFR-1122」、「ZFR-1887」、「FLX-2089」、「ZCR-1569H」、「ZCR-1601H」(以上、日本化薬株式会社)、「サイクロマーP(ACA)Z-250」(株式会社ダイセル)等を挙げることができる。
【0036】
また、感光性樹脂組成物に対してアルカリ現像処理を実施しない場合には、カルボキシル基を有さない感光性樹脂を使用してもよい。
【0037】
カルボキシル基を有さない感光性樹脂としては、例えば、(A4)(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルからなるモノマーの重合体(A4樹脂)、(A5)(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルと他の重合性モノマーからなる共重合体(A5樹脂)、(A6)(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルと、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物と、の共重合体のエポキシ基の少なくとも一部に、(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させた樹脂(A6樹脂)、(A7)(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の重合体のカルボキシル基の少なくとも一部または(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸と(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルとを反応させて得られる共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物を反応させた樹脂(A7樹脂)、(A8)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて得ることができるエポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A8樹脂)等を挙げることができる。
【0038】
上記したカルボキシル基を有さない感光性樹脂の調製には、カルボキシル基含有感光性樹脂の調製に使用できる上記ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸及び上記1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物と同じ化合物を使用することができる。また、エポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂としては、例えば、上記したカルボキシル基含有感光性樹脂の調製過程で得られるエポキシ(メタ)アクリレート等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂が挙げられる。
【0039】
A4樹脂、A5樹脂、A6樹脂、A7樹脂、A8樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されず、使用条件等により適宜選択可能であり、例えば、その下限値は、光硬化物の強靭性及びタック性の向上に寄与する点から、6000が好ましく、7000がより好ましく、8000が特に好ましい。一方で、感光性樹脂の質量平均分子量の上限値は、アルカリ現像性の向上に寄与する点から、200000が好ましく、100000がより好ましく、50000が特に好ましい。なお、上記「質量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、常温で測定し、ポリスチレン換算にて算出される質量平均分子量を意味する。
【0041】
<(B)光重合開始剤>
光重合開始剤は、一般的に使用されるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(0-アセチルオキシム)、(Z) -(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ) -2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム、2-(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン-9-オン、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、1,8-オクタンジオン,1,8-ビス[9-(2-エチルヘキシル)-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル]-,1,8-ビス(O-アセチルオキシム)、(Z)-(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)(4-((1-メトキシプロパン-2-イル)オキシ) -2-メチルフェニル)メタノン O-アセチルオキシム等のオキシムエステル系化合物が挙げられる。また、1-(4-モルホリノフェニル)-2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-ブタノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤が挙げられる。
【0042】
また、上記以外の光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
これらのうち、感光性樹脂組成物の光硬化性が向上して、硬化物に優れた硬度と耐久性を付与することができる点から、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤が好ましい。
【0044】
光重合開始剤の配合量は、特に限定されず、感光性樹脂100質量部(固形分、以下同じ)に対して、0.5質量部以上20質量部以下が好ましく、1.0質量部以上10質量部以下が特に好ましい。
【0045】
<(C)反応性希釈剤>
反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を補強して、感光性樹脂組成物の硬化物に十分な強度、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性等を付与することに寄与する。
【0046】
反応性希釈剤としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレート化合物、2官能の(メタ)アクリレート化合物、3官能の(メタ)アクリレート化合物、4官能以上の(メタ)アクリレート化合物等、単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物のモノマーを挙げることができる。(メタ)アクリレート化合物のモノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上50質量部以下が好ましく、15質量部以上35質量部以下が特に好ましい。
【0048】
<(D)エポキシ化合物>
エポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げて十分な硬度を硬化物に付与するためのものである。エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらのエポキシ化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
感光性樹脂が、上記したA1樹脂、A2樹脂、A3樹脂またはA8樹脂の場合には、感光性樹脂組成物の硬化物の強度を向上させることができる点から、エポキシ化合物が、A1樹脂、A2樹脂、A3樹脂またはA8樹脂の骨格を形成している上記多官能エポキシ樹脂と同種のエポキシ樹脂を含有することが好ましい。すなわち、エポキシ化合物として、上記した感光性樹脂の調製に使用した多官能エポキシ樹脂の種類と同じ種類のエポキシ樹脂を使用することができる。例えば、感光性樹脂が、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させてラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸及び/または多塩基酸無水物を反応させて得られる構造を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A1樹脂)である場合には、(D)成分のエポキシ化合物として、多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A1樹脂)の骨格を形成している多官能エポキシ樹脂と同種のエポキシ樹脂を含有することができる。
【0050】
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上50質量部以下が好ましく、15質量部以上35質量部以下が特に好ましい。
【0051】
<(E)フィラー>
フィラーは、感光性樹脂組成物の塗膜の物理的強度を上げることに寄与する成分である。フィラーとしては、無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、タルク、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、マイカ等を挙げることができる。有機フィラーとしては、例えば、ウレタン樹脂(イソシアネートとポリオールの重合体)、アクリル樹脂、ポリエチレン、スチレン・ブタジエンゴム等のスチレンとブタジエンとの共重合体、シリコーンゴム等のシリコーン樹脂等の重合体を挙げることができる。
【0052】
フィラーの形状は、特に限定されないが、粒子状が好ましい。フィラーの平均粒子径は、特に限定されないが、感光性樹脂組成物中における均一分散性と感光性樹脂組成物の塗工性の点から、0.1μm以上20μm以下が好ましく、0.5μm以上10μm以下が特に好ましい。
【0053】
フィラーの配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂100質量部に対して、5.0質量部以上50質量部以下が好ましく、10質量部以上30質量部以下が特に好ましい。
【0054】
<(F)着色剤>
本発明の感光性樹脂組成物では、着色剤として(F1)窒化ジルコニウムを含有する。窒化ジルコニウムは黒色着色剤として機能し、着色剤として窒化ジルコニウムを含有することにより、感光性樹脂組成物は黒色の色彩を有している。窒化ジルコニウムは、紫外線の波長域である波長300nm~400nmの光の透過率が高く、一方で、可視光線の波長域(波長400nm~800nm程度)の光の透過率が低い。従って、塗工した本発明の感光性樹脂組成物は、露光処理による光硬化が塗膜深部まで十分に進行して優れた解像性を有し、また、高い隠蔽力を有する硬化物となる。また、着色剤が窒化ジルコニウムを含有することにより、現像後における塗膜深部の幅寸法の減少を防止できるので、塗膜深部の幅寸法は塗膜表層部の幅寸法に近づき、硬化塗膜の寸法精度が向上する。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物では、カーボンブラック等の他の黒色着色剤を含有する必要はないので、波長300~400nmの光の透過率が向上して、感光性樹脂組成物の塗膜深部までの光硬化性が確実に向上する。また、本発明の感光性樹脂組成物では、カーボンブラックを含有する必要はないので、硬化物の絶縁特性が向上する。上記から、本発明の感光性樹脂組成物は、カーボンブラックを含有しないことが好ましい。
【0056】
窒化ジルコニウムの波長365nmの光の透過率は、カーボンブラックの波長365nmの光の透過率よりも高い。塗工した感光性樹脂組成物の深部まで光硬化がより確実に進行して、より優れた解像性を有する硬化物を得ることができる点から、窒化ジルコニウムの50ppm分散体における波長365nmの光の透過率(T365)は、18.0%以上であることが好ましく、20.0%以上であることがより好ましく、塗工した感光性樹脂組成物の深部における光硬化性がさらに向上して、さらに優れた解像性を有する硬化物を得ることができる点から、25.0%以上であることが特に好ましい。窒化ジルコニウムの50ppm分散体における波長365nmの光の透過率(T365)の上限値としては、例えば、波長365nmの光の透過率が高すぎることによる過剰な光硬化の進行を防止して、現像処理後の塗膜開口部が設定よりも狭くなることを防止して、優れた寸法精度を確実に得る点から、35.0%が好ましい。
【0057】
また、窒化ジルコニウムの50ppm分散体の波長550nmの光の透過率(T550)に対する窒化ジルコニウムの50ppm分散体の波長365nmの光の透過率(T365)の比(T365/T550)は、優れた解像性を確実に得ることができる点から、3.0以上が好ましく、3.5以上がより好ましく、解像性がさらに向上する点から、4.5以上が特に好ましい。窒化ジルコニウムの50ppm分散体の、波長550nmの光の透過率(T550)に対する波長365nmの光の透過率(T365)の比(T365/T550)の上限値としては、例えば、光透過率の比(T365/T550)が高すぎることによる塗膜表面の光硬化の優先的な進行と塗膜底部の硬化不足を防止して、塗膜開口部がオーバーハング状になることを防止する点から、7.0が好ましい。
【0058】
窒化ジルコニウムの50ppm分散体の波長550nmの光の透過率(T550)としては、優れた隠蔽力を有する硬化物を得ることができる点から、8.0%以下が好ましく、6.0%以下が特に好ましい。
【0059】
窒化ジルコニウムのL値(明度)は、例えば、8以上18以下であり、8以上16以下が好ましい。
【0060】
窒化ジルコニウムは粒子形状であり、平均一次粒子径は、例えば、20nm以上50nm以下である。
【0061】
窒化ジルコニウムの配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂100質量部に対して、優れた解像性とともに高い隠蔽力を確実に得る点から、4.0質量部が好ましく、5.0質量部がより好ましく、隠蔽力をさらに向上させることができる点から、7.0質量部がさらに好ましく、8.0質量部が特に好ましい。一方で、窒化ジルコニウムの配合量の上限値は、高い隠蔽力とともに優れた解像性を確実に得る点から、20質量部が好ましく、解像性をさらに向上させる点から、15質量部がより好ましく、12質量部が特に好ましい。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物では、上記各成分の他に、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、消泡剤、硬化促進剤等の各種添加剤、(F1)成分である窒化ジルコニウム以外のさらなる着色剤、難燃剤、非反応性希釈剤等を適宜配合することができる。
【0063】
消泡剤には、公知のものを使用でき、例えば、シリコーン系、炭化水素系、アクリル系等を挙げることができる。硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、アミンイミド(AI)等が挙げられる。
【0064】
(F1)成分である窒化ジルコニウム以外のさらなる着色剤としては、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、黒色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤、赤色着色剤等、所望の色彩に応じて、いずれも使用可能である。さらなる着色剤を含有することで、本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の意匠性に寄与することがある。さらなる着色剤には、例えば、白色着色剤である二酸化チタン等の無機系着色剤、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン及び青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系等の有機系着色剤を挙げることができる。これらのさらなる着色剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
難燃剤は、感光性樹脂組成物の硬化物に難燃性を付与する成分である。難燃剤としては、リン系難燃剤を挙げることができ、このうち、有機リン酸塩系の難燃剤が好ましい。リン系難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下HCA)、HCAとアクリル酸エステルの付加反応生成物、HCAとエポキシ樹脂の付加反応生成物、HCAとハイドロキノンの付加反応生成物等のHCA変性型化合物、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
【0066】
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の、粘度、塗工性及び指触乾燥性等を調整するための成分である。非反応性希釈剤としては、例えば、感光性樹脂組成物に配合されている各成分に対して不活性である有機溶剤を挙げることができる。上記有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールアセテート、エチレンジグリコールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、常温(例えば、25℃)にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ニーダー等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス等の攪拌、混合手段により、配合成分を混練または混合して製造することができる。また、前記した混練または混合工程の前に、必要に応じて、予備混練、予備混合の工程を実施してもよい。
【0068】
次に、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法例について説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物を用いてプリント配線板の絶縁保護膜(例えば、ソルダーレジスト膜等)を形成する方法、すなわち、感光性樹脂組成物の光硬化膜を有するプリント配線板を得る方法を例にとって説明する。
【0069】
上記のようにして調製した本発明の感光性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するプリント配線板上に、スクリーン印刷法、バーコータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法、グラビアコータ法、スプレーコータ法等、公知の塗工方法にて、所望の厚さ(例えば、5.0μm~50μmの厚さ)で塗布して塗膜を形成する。次に、感光性樹脂組成物に非反応性希釈剤が含まれている場合には、非反応性希釈剤を揮散させるために、60℃~90℃程度の温度で10分間~60分間程度、加熱する予備乾燥を行って、タックフリーの塗膜を形成する。
【0070】
次に、塗膜上に、回路パターンのランド以外を透光性にしたパターンを有するネガフィルム(フォトマスク)を密着させ、その上から活性エネルギー線(例えば、波長300~400nmの範囲の紫外線)を照射して塗膜を光硬化させる。光硬化後、前記ランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより、塗膜が現像される。現像方法には、スプレー法、シャワー法等が用いられ、使用する希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5質量%~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次いで、130℃~170℃程度の熱風循環式の乾燥機等で20分間~80分間ポストキュア(本熱硬化処理)を行うことにより、プリント配線板上に目的のパターンを有する、光硬化物である絶縁保護膜を形成することができる。なお、プリント配線板の基板としては、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板が挙げられる。
【実施例0071】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0072】
実施例1~4、比較例1~3
下記表1に示す各成分を下記表1に示す割合にて配合し、3本ロールを用いて室温(約25℃)にて混合分散させて、実施例1~4、比較例1~3にて使用する黒色の感光性樹脂組成物を調製した。なお、特に断りのない限り、下記表1中の数字は質量部を示す。また、下記表1中の空欄は配合なしを意味する。
【0073】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
(A)感光性樹脂
・リポキシSP-4621:クレゾールノボラック構造を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、固形分(樹脂分)65質量%、昭和電工株式会社
【0074】
(B)光重合開始剤
・Omnirad 369:α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、IGM Resins B.V.社
・NCI-831:オキシムエステル系光重合開始剤、株式会社ADEKA
【0075】
(C)反応性希釈剤
・DPHA:東亞合成株式会社
【0076】
(D)エポキシ化合物
・EPICLON N-695:DIC株式会社
・YX-4000K:三菱ケミカル株式会社
【0077】
フィラー
・硫酸バリウムB-30:堺化学工業株式会社
【0078】
(F)着色剤
・NITBLACK UB-1:窒化ジルコニウム(黒色着色剤)、波長365nmの光の透過率(T365)20.1%、波長550nmの光の透過率(T550)5.4%、T365/T550=3.7、L値10~12、粉末状、平均一次粒子径20nm~50nm、三菱マテリアル電子化成株式会社
・NITBLACK UB-2:窒化ジルコニウム(黒色着色剤)、波長365nmの光の透過率(T365)28.7%、波長550nmの光の透過率(T550)5.6%、T365/T550=5.1、L値11~16、粉末状、平均一次粒子径20nm~50nm、三菱マテリアル電子化成株式会社
【0079】
添加剤
・メラミン:硬化促進剤、日産化学工業株式会社
・DICY-7:硬化促進剤、ジャパンエポキシレジン株式会社
・X-50-1095C:消泡剤、信越化学工業株式会社
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
【0080】
(F)成分以外の着色剤
・MA14:カーボンブラック(黒色着色剤)、三菱ケミカル株式会社
・リオノールブルー FG-7351:フタロシアニン化合物(青色着色剤)、東洋インキ製造株式会社
【0081】
試験基板作製工程
基板:ガラスエポキシ基板(FR-4、厚さ1.6mm)、導体(Cu箔)厚22μm
基板の表面処理:バフ研磨
塗膜塗工方法:スクリーン印刷、DRY膜厚10μm
予備乾燥:75℃、20分
露光:塗膜上60mJ/cm2、オーク株式会社製直描露光機(波長300~500nm)
現像:1質量%炭酸ナトリウム水溶液、30℃、90秒、噴霧圧力:0.2MPa
ポストキュア:150℃、60分
【0082】
評価
(1)解像性
所定のフォトマスク(ライン幅10μm/スペース10μmごとに、ライン幅30μm~120μmの範囲/スペース30μm~120μmの範囲のフォトマスク)を介して形成した露光部の残存ラインと抜けたスペースを目視にて確認し、以下の基準にて評価した。△評価以上を合格とした。
◎:30μm
○:40μm
△:50μm
×:60μm以上
【0083】
(2)色調
上記のように調製した試験基板について、JIS-8722に準拠して、明度(L*値)、クロマネティクス指数(a*値)、クロマネティクス指数(b*値)を測定した。測定機器として、色差計CM-700d(コニカミノルタ株式会社)を用いた。L*=25、a*値=0、b*=-1を基準として、下記式から、色差を表すΔEを算出し、以下の基準にて色調を評価し、○評価以上を合格とした。
◎:ΔE=3.2未満
○:ΔE=3.2以上6.5未満
△:ΔE=6.5以上10未満
×:ΔE=10以上
【0084】
実施例1~4及び比較例1~3の評価結果を下記表1に示す。
【0085】
【0086】
上記表1から、着色剤として、カーボンブラックではなく、黒色着色剤である窒化ジルコニウムを配合した実施例1~4では、ライン幅が50μm以下と、優れた解像性を有し、また、色調がΔE=6.5未満と、黒色度に優れた高い隠蔽力を有する光硬化物を得ることができた。特に、波長365nmの光の透過率(T365)28.7%、波長550nmの光の透過率(T550)5.6%、T365/T550=5.1である窒化ジルコニウムを配合した実施例1、2では、波長365nmの光の透過率(T365)20.1%、波長550nmの光の透過率(T550)5.4%、T365/T550=3.7である実施例3、4と比較して解像性がさらに向上した。また、感光性樹脂100質量部に対して窒化ジルコニウムを約8.7質量部配合した実施例1、3は、感光性樹脂100質量部に対して窒化ジルコニウムを約6.4質量部配合した実施例2、4と比較してΔE値がより低減して隠蔽力がさらに向上した光硬化物を得ることができた。
【0087】
なお、実施例1~4では、感光性樹脂は、クレゾールノボラック骨格を有する多塩基酸変性ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂であり、エポキシ化合物として、同種のエポキシ樹脂であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含有していた。
【0088】
一方で、黒色着色剤としてカーボンブラックを配合した比較例1~3では、解像性を得ることができなかった。また、感光性樹脂100質量部に対してカーボンブラックを約6.4質量部配合した比較例3では、高い隠蔽力も得ることができなかった。
本発明の感光性樹脂組成物は、優れた解像性と隠蔽力を有する光硬化物を得ることができるので、例えば、プリント配線板に塗工される絶縁被膜(例えば、ソルダーレジスト膜)の分野で利用価値が高い。