IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特開2023-183289粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法
<>
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図1
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図2
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図3
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図4
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図5
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図6
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図7
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図8
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図9
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図10
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図11
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図12
  • 特開-粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183289
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20231220BHJP
   G21K 5/00 20060101ALI20231220BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61N5/10 H
G21K5/00 A
G01T1/20 E
G01T1/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096823
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】藤高 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幸太
(72)【発明者】
【氏名】三好 拓人
(72)【発明者】
【氏名】高柳 泰介
【テーマコード(参考)】
2G188
4C082
【Fターム(参考)】
2G188AA01
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB14
2G188CC16
2G188CC19
2G188CC22
2G188DD05
2G188DD17
2G188EE12
2G188EE25
4C082AA01
4C082AC04
4C082AE03
4C082AG02
4C082AG05
4C082AG09
4C082AP01
4C082AR08
(57)【要約】
【課題】所定のビーム照射位置からのずれの有無を従来に比べて高精度に判定することが可能な粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法を提供する。
【解決手段】粒子線治療システムにおける飛程計測装置80は、患部101内に設定された各々のスポット103への粒子線の照射時のマルチピクセル型のガンマ線の検出器83信号を確認しながら、加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による粒子線の照射制御を実行する。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線を発生、照射する照射装置と、
前記照射装置を制御する中央制御部と、
追跡対象の3次元位置を求め、その動きを追跡する動体追跡装置と、
前記照射装置による前記粒子線の照射時に発生する二次放射線を計測する検出器を有する飛程計測装置と、を備え、
前記飛程計測装置は、標的内に設定された各々のスポットへの前記粒子線の照射時の検出器信号を確認しながら、前記照射装置による前記粒子線の照射制御を実行する
粒子線治療システム。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記飛程計測装置は、前記検出器信号の分布を確認しながら、前記照射装置による前記粒子線の照射制御を実行する
粒子線治療システム。
【請求項3】
請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記検出器は、その視野が前記標的の移動範囲を覆うように設置されたものである
粒子線治療システム。
【請求項4】
請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記飛程計測装置は、前記検出器の特定チャンネルに着目して計数監視を行う
粒子線治療システム。
【請求項5】
請求項4に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記飛程計測装置は、計数量が多くならないはずの特定チャンネルからの信号が所定閾値以上となったときは前記照射装置による前記粒子線の発生を停止させる
粒子線治療システム。
【請求項6】
請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記飛程計測装置は、コリメータを有する
粒子線治療システム。
【請求項7】
請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記飛程計測装置は、前記粒子線の照射精度が高いと判定されたときは、前記粒子線の強度を強める
粒子線治療システム。
【請求項8】
請求項2に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記飛程計測装置は、前記二次放射線として即発ガンマ線に基づく信号を処理する
粒子線治療システム。
【請求項9】
請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記動体追跡装置は、前記標的に埋め込まれたマーカの位置を求め、求めた前記マーカの位置から前記追跡対象を追跡する
粒子線治療システム。
【請求項10】
請求項1に記載の粒子線治療システムにおいて、
前記動体追跡装置は、前記標的あるいは高密度領域の位置を求め、求めた前記標的あるいは前記高密度領域の位置から前記追跡対象を追跡する
粒子線治療システム。
【請求項11】
粒子線の照射時に発生する二次放射線を計測する検出器を有し、
標的内に設定された各々のスポットへの前記粒子線の照射時の検出器信号を確認しながら、照射装置による前記粒子線の照射制御を実行する
飛程計測装置。
【請求項12】
粒子線の照射時に放出される二次信号を検出して前記粒子線の照射位置を求めるビーム監視方法であって、
粒子線治療システムが前記粒子線を放出し、
標的内に設定された各々のスポットへの前記粒子線の照射時の検出器信号を確認しながら、前記粒子線治療システムによる前記粒子線の照射制御を実行する
ビーム監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子線加速器により加速された荷電粒子ビームをがん患部に照射して治療を行う粒子線治療システムや飛程計測装置、及びビーム監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、動体追跡において、追跡対象に似た構造が追跡対象の近傍にある場合においても、誤検出することなく追跡対象を追跡することができる動体追跡装置の一例として、撮像画像に対して諧調処理を実施し、この諧調処理実施後の撮像画像を用いてマーカの位置を計測し、このマーカの位置に基づき放射線の照射を制御する信号を生成する、ことが記載されている。
【0003】
非特許文献1には、スリットコリメータにより方向と位置を限定された即発ガンマ線が検出器に形成する特徴的な計数量分布から、粒子線が体内で停止した位置を測定する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-196036号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】I.Perali, et al., “Prompt gamma imaging of proton pencil beams at clinical dose rate”, Phys.Med.Biol. 59 (2014) 5849-5871.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
粒子線治療では、シンクロトロン型やサイクロトロン型、シンクロサイクロトロン型と呼ばれる加速器で荷電粒子ビームを加速し、治療室までビーム輸送系で輸送して、治療室のベッドに横たわる患者の患部に照射して、がん治療を行う。
【0007】
荷電粒子ビームは、照射ノズルにより患者により異なるがん患部に照射出来るようにビームが適切に整形されて照射される。加速器により加速された荷電粒子ビームを直接走査しながら照射していく照射方法をスキャニング照射と呼ばれており、従来の照射方法より患部に線量を集中した線量分布が形成可能であることから、最近の粒子線治療で主流の照射法になりつつある。
【0008】
スキャニング照射では患部を層に分割し、各層にスポットと呼ばれる線量集中性が最大であるブラッグピーク点を配置する。各層の中に横方向に配置されたスポットは、加速器からの細いビームを走査電磁石で塗りつぶすように走査することにより照射していく。深さ方向に分けられた層を変更して照射を続けるためには、加速器のエネルギーあるいは照射ノズル内に配置されたレンジシフタと呼ばれるエネルギー吸収体の厚さを変更し、患者に入射する荷電粒子ビームのエネルギーを調整する。
【0009】
ここで、ブラッグピークは、荷電粒子ビームのエネルギーを深さ方向の線量分布で表したときに、その線量分布のピークとして定義される。ブラッグピークの位置が荷電粒子ビームの到達位置に相当する。
【0010】
以上のようなスキャニング照射では、実際の照射が行われる前に治療計画と呼ばれるプロセスで患部を一様にスキャニング照射するための計画が作成される。治療計画では治療計画ソフトウェアと呼ばれる専用のソフトウェアにより患者のX線CT画像をもとに、患部のみを高線量で照射するためのスポット位置、各スポットを照射する荷電粒子ビームのエネルギーが計算される。
【0011】
荷電粒子ビームは治療計画の結果に基づき、治療照射が実施される。この時、呼吸移動する患部に対して、特許文献1に記載されているような動体追跡照射が行われている。患部近傍にマーカを埋め込み、X線透視画像でマーカの位置を確認して、2対のX線透視画像で特定されたマーカ位置から三次元患部位置を計算する。三次元的な患部位置が所定の範囲内に入っている時のみ、荷電粒子ビームの照射を行うことで、呼吸移動する患部に対しても患部のみに集中した線量を投与することが可能となる。また、近年、マーカを体内に刺入する患者の身体負荷を低減するために、マーカを体内に埋め込まないマーカーレスの動体追跡照射が開発されている。
【0012】
荷電粒子ビームを照射しているときに、ブラッグピーク点を把握するための方法に、非特許文献1に記載されているような、荷電粒子ビームを人体に照射したときに、荷電粒子ビームの通過経路上に発生する即発ガンマ線と呼ばれるガンマ線を測定して、ビームが停止した体内深さを正確に把握する技術がある。
【0013】
この技術によりスポット毎の照射深さが測定できることにより、治療計画で計画された位置との比較をすることで、治療計画で使用するX線CT画像の密度情報の不確定性に伴う誤差を小さくすることが出来る。また、粒子線停止位置を高精度で予測できるようになることから、治療計画時の患部に付与するマージン量を減らすことが出来るため、患部周辺の正常組織の線量を減らすことが期待出来る。
【0014】
しかしながら、荷電粒子ビームは、人体内の通過経路上の水等価厚の和で停止する位置が決まるために、X線動体追跡装置により所定の位置にあると判定されたときに、確かに患部にビームが照射されているということを確認する手段がなかった。
【0015】
すなわち、実際の患者の臓器の動きは、ゆっくりとした動きで呼吸移動により所定の位置からずれていくことが知られているが、同様にビーム通過経路上の水等価厚が患部手前の組織の相対位置関係のずれが発生して、所定のビーム照射位置からずれる可能性があった。しかし、上述の非特許文献1の方法では、このずれが考慮されておらず、ずれを確認する手段がなかった。
【0016】
本発明は、所定のビーム照射位置からのずれの有無を従来に比べて高精度に判定することが可能な粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、粒子線を発生、照射する照射装置と、前記照射装置を制御する中央制御部と、追跡対象の3次元位置を求め、その動きを追跡する動体追跡装置と、前記照射装置による前記粒子線の照射時に発生する二次放射線を計測する検出器を有する飛程計測装置と、を備え、前記飛程計測装置は、標的内に設定された各々のスポットへの前記粒子線の照射時の検出器信号を確認しながら、前記照射装置による前記粒子線の照射制御を実行する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定のビーム照射位置からのずれの有無を従来に比べて高精度に判定することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例の粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
図2】スキャニング照射で層に分割した患部とスポットを示す図である。
図3】スキャニング照射ノズルの構成を示す図である。
図4】深さ方向の線量分布形成を示す図である。
図5】動体追跡装置の概要を示す図である。
図6】動体追跡装置の作動原理を示す図である。
図7】飛程計測装置の測定原理を示す図である。
図8】飛程計測装置を示す図である。
図9】実施例の粒子線治療システムにおける飛程計測装置の配置と計数分布を示す図である。
図10】実施例の粒子線治療システムにおける動体追跡治療時の飛程計測装置の配置を示す図である。
図11】実施例の粒子線治療システムにおける動体追跡制御、飛程計測制御、粒子線治療システムの制御を示す図である。
図12】実施例の粒子線治療システムにおける飛程計測装置の制御内容を示す図である。
図13】実施例の粒子線治療システムにおける動体追跡治療のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の粒子線治療システム、飛程計測装置、及びビーム監視方法の実施例について図1乃至図13を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0021】
最初に粒子線スキャニング照射について説明するため、粒子線治療システムの全体構成について図1を用いて説明する。図1は、実施例の粒子線治療システムの全体構成を示す図である。
【0022】
粒子線治療装置は、図1に示すように、粒子線を発生、照射する加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40、治療台50などから構成される。
【0023】
加速器20は入射器21、シンクロトロン加速器22から構成されるが、サイクロトロンなどの加速器でも良い。線形加速器あるいはサイクロトロン加速器でも良いし、更にはシンクロサイクロトロン加速器でも良く、特に限定されない。
【0024】
ビーム輸送系30と照射ノズル40は、回転ガントリーと呼ばれる患者の周りに回転出来る架台の上に設置されており、治療台50に寝ている患者5に任意の方向から荷電粒子ビーム104を照射することが可能となっている。
【0025】
治療台50は、患者5を載せるベッドである。治療台50は全体制御装置2からの指示に基づき、直交する3軸の方向へ移動することができ、さらにそれぞれの軸を中心として回転する、いわゆる6軸方向に移動することができる。これらの移動と回転により、患者5の位置を所望の位置に移動させることができる。
【0026】
治療計画装置1により照射方向を検討し、線量を当てたくない重要臓器を避けて、患部101を医者が決めた処方線量で照射するための荷電粒子ビーム104のスポット位置とエネルギー、照射量が計算される。
【0027】
各スポットの位置、エネルギー、照射量の情報は、全体制御装置2に送られて治療が行われる。全体制御装置2は、スポットの位置、照射量の情報を照射ノズル制御装置3に送り、スポットのエネルギー情報が加速器・ビーム輸送系制御装置4に送られる。照射ノズル制御装置3は各層の照射を行い、層の照射が完了すると完了信号を全体制御装置2に送り、全体制御装置2から加速器・ビーム輸送系制御装置4にエネルギー変更信号を送り、次の層に対応したエネルギーの荷電粒子ビーム104を照射する。
【0028】
全体制御装置2は、治療計画装置1、加速器・ビーム輸送系制御装置4、照射ノズル制御装置3、動体追跡制御装置70、飛程計測装置80(図8参照)、治療台50と接続されており、各機器の動作を制御する。
【0029】
加速器・ビーム輸送系制御装置4は、加速器20やビーム輸送系30を構成する各機器の動作を制御する。
【0030】
照射ノズル制御装置3は、照射ノズル40を構成する各機器の動作を制御する。
【0031】
動体追跡装置は、患部101に埋め込まれたマーカ、患部101あるいは高密度領域の位置を求め、求めたマーカ、患部101あるいは高密度領域の位置から追跡対象の3次元位置を求め、その動きを追跡する装置であり、その詳細は図3を用いて後ほど説明する。動体追跡制御装置70は、動体追跡装置の動作を制御する装置である。
【0032】
治療計画装置1は、治療計画を実施して処方箋を作成して、作成した処方箋を全体制御装置2に転送する。
【0033】
これら全体制御装置2や加速器・ビーム輸送系制御装置4、照射ノズル制御装置3、治療計画装置1は、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)およびこのCPUに接続されたメモリを有する。
【0034】
なお、実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに分かれていても良く、更にはそれらの組み合わせでも良い。
【0035】
各装置の保有するプログラムの一部またはすべては専用ハードウェアで実現しても良く、モジュール化されていても良い。更には、各種プログラムは、プログラム配布サーバや外部記憶メディアによって各装置にインストールされていてもよいし、既存の装置をアップデートしてもよい。
【0036】
また、各装置は、各々が独立した装置で有線あるいは無線のネットワークで接続されたものであっても、2つ以上が一体化していてもよい。
【0037】
図2はスキャニング照射で患部101を層102に分割し、各層にスポット103を配置する様子を示す図である。荷電粒子ビーム104は各スポットを移動しながら塗りつぶすように照射していく。荷電粒子ビーム104のブラッグピークと呼ばれる高線量の部分がスポットの位置に該当し、スポットは最も高い線量で照射される。治療計画で決められた各スポットの照射量を照射し終ると、荷電粒子ビーム104は次のスポットに移動して照射を行う。同じ層102のスポットが照射し終わると、加速器・ビーム輸送系により荷電粒子ビーム104のエネルギーを変更して次の層102のスポットの照射を行う。
【0038】
図3は、粒子線スキャニング用の照射ノズル40の概要を示す図である。照射ノズル40では、水平、垂直方向用の走査電磁石41A,41Bにより二次元平面内に荷電粒子ビーム104を走査する。走査電磁石41A,41Bにより走査された荷電粒子ビーム104は、患部101に照射される。
【0039】
線量モニタ42は各照射スポットに照射された荷電粒子ビーム104の照射量を測定する。線量モニタ制御装置52は、各照射スポットに照射する照射量を制御する。位置モニタ43は各照射スポットのビーム位置(例えば重心の位置)を計測する。位置モニタ制御装置53は、位置モニタ43で計測したビーム位置のデータをもとに照射スポットの位置及び幅の演算を行い、荷電粒子ビーム104の照射位置を確認する。
【0040】
リッジフィルタ44は、ブラッグピークを太らせるために必要な場合に使用する。また、レンジシフタ45を挿入して荷電粒子ビーム104の到達位置を調整しても良い。図4に深さ方向の線量分布を示す。深さ方向にはブラッグカーブを重ね合わせて一様な線量分布を形成する。
【0041】
ビームのエネルギーが変化すると、ビームの体内到達位置が変わる。エネルギーの高い荷電粒子ビーム104は、体内の深い位置まで到達し、エネルギーの低い荷電粒子ビーム104は体内の浅い位置までしか到達しない。
【0042】
粒子線スキャニング照射では、深さ方向に一様な線量分布を形成するために、層ごとにビームのエネルギーを変更して、エネルギーごとの照射量を適切に配分することにより深さ方向のSOBP(Spread Out Bragg Peak)を形成する。各エネルギーの照射量を適切に配分することで各エネルギーのブラッグカーブ61を重ね合わせて、図4に示すように深さ方向に一様な線量分布SOBP62を形成する。粒子線治療装置で治療を行うためには、治療に先立ち、あらかじめ治療計画装置1でビームを照射する各スポットの位置、エネルギー、照射量を決定する。
【0043】
本発明が関係する動体追跡治療について図5を用いて説明する。動体追跡治療では、2対のX線管72とX線イメージャー73より得られるX線透視画像から、患部101、体内に刺入されたマーカ、あるいは特徴のある骨端点などの骨格ランドマーク点71(上述の高密度領域)となる部位を追跡して、患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71の三次元位置を治療中に計算して求める装置である。
【0044】
動体追跡では、患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71がX線透視画像に写った位置74より、図5に示すX線管72と位置74との交点計算より患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71の三次元位置を計算する。
【0045】
本発明が関係する動体追跡計算のビーム出射許可について図6を用いて説明する。X線管72、位置74を結ぶ2対の直線の交点計算により計算された患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71の位置が図6に示す三次元位置75で求まったとすると、計算で求まった患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71の三次元位置75が所定の照射許可範囲76内に入っている時のみ、荷電粒子ビーム104の照射を行う。これにより患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71が所定の位置に存在している時のみに荷電粒子ビーム104を照射することになり、呼吸移動で移動する臓器に対して、荷電粒子ビーム104の位置ずれが抑制された高精度の照射が実現する。
【0046】
図6の荷電粒子ビーム104の照射許可範囲76は、例えば一辺2mmあるいは1mmの立方体を想定すれば良い。照射許可範囲76の大きさに応じてマーカあるいはランドマーク点の位置把握精度が決まることになる。X線透視画像は1秒間に30回程度撮影されるため、ほぼリアルタイムに人体ならびに患部101の呼吸移動を追跡することが可能な技術である。
【0047】
動体追跡装置の制御を図7を用いて説明する。動体追跡制御装置70はX線管72の曝射、X線イメージャー73の画像取得ならびに画像処理に基づく患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71の位置74の抽出を行う。
【0048】
また、動体追跡制御装置70は、2対のX線透視画像から求まる患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71の位置74の交点計算を行い、三次元位置75を求めた後、図6に示す出射許可範囲に入っているかどうかの判定を実施する。
【0049】
動体追跡制御装置70は、判定の結果、患部101、マーカあるいは骨格ランドマーク点71の三次元位置75が所定の照射許可範囲76に入っている場合に、粒子線治療システムの全体制御装置2に荷電粒子ビーム104を照射しても良い出射許可信号を送る。これに対し、マーカあるいはランドマーク点の三次元位置75が所定の照射許可範囲76から外れた場合は、全体制御装置2に荷電粒子ビーム104の出射不許可信号を送る。
【0050】
全体制御装置2は、動体追跡装置からビーム出射許可信号を受け取っている期間内のみ、荷電粒子ビーム104の照射を行い治療を進行させる。
【0051】
本発明が関係する飛程計測装置の測定原理を図8を用いて説明する。
【0052】
飛程計測装置80は、患部101内に設定された各々のスポット103への粒子線の照射時の検出器83信号の分布を確認しながら、加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による粒子線の照射制御を実行するための装置であり、加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による荷電粒子ビーム104の患部101への照射時に発生する二次放射線としての即発ガンマ線81と呼ばれるガンマ線を計測するマルチピクセル型のガンマ線の検出器83と、検出器83に対してガンマ線が来る方向を限定するスリットコリメータ82と、により構成される。
【0053】
図8において、荷電粒子ビーム104が左から入射して検出器83の視野中心に位置する患部101で停止した場合、ビーム進行する経路上で核反応により即発ガンマ線81が発生する。患部101で荷電粒子ビーム104が停止した以降の領域で、即発ガンマ線81はほとんど発生しない。このように即発ガンマ線81の発生はビーム通過経路上からのみ発生するという特徴を有する。
【0054】
このようにして発生する即発ガンマ線81をスリットコリメータ82を配置することにより、ビーム通過経路上から発生した即発ガンマ線81は図8中の斜線領域85を直進して検出器83に入射する。
【0055】
ガンマ線の検出器83は、縦長の多数のシンチレータ結晶から構成されている。各シンチレータは遮光されており、検出器83を構成するシンチレータ各位置の計数分布を測定することが可能となっている。検出器83を構成する縦長の各シンチレータをチャンネルと呼び、検出器83はマルチチャンネルで構成されている。
【0056】
即発ガンマ線81はビーム停止以降は発生しないことから、検出器83で検出したガンマ線の計数分布84は、図8に示すようにビーム入射方向と逆の右側方向が高くなり、ビーム入射方向である左側方向の計数量が低くなるという特徴的な計数分布を形成することになる。
【0057】
飛程計測装置80は、スリットコリメータ82により、ピンホールカメラと同様の原理で荷電粒子ビーム104進行方向に対して反転した計数分布の像が得られることになる。
【0058】
スリットコリメータ82は、図8に示すようにナイフエッジ型であるときは視野が大きくとれるものの精度の向上に限界がある。これに対し、垂直型であるときは視野は狭いものの精度の向上を図れることから、測定体系等に応じて適宜形態を選択することができる。
【0059】
本発明により飛程計測装置80を動体追跡治療に適用したときの原理について、図9を用いて説明する。
【0060】
図9において、患部101は呼吸移動により位置101Aと位置101Bとの間を移動する。そのため、飛程計測装置80の検出器83は、その視野が患部101の移動範囲を覆うように設置されたものとすることが望まれる。また、飛程計測装置80は、検出器83の特定チャンネルに着目して計数監視を行うことが望まれる。
【0061】
図9において、患部101は位置101Aと位置101Bとの間を呼吸周期で移動し続けているが、荷電粒子ビーム104の照射は、動体追跡治療では、荷電粒子ビーム104の照射は位置101Aに患部101が位置するときのみ行われる。
【0062】
荷電粒子ビーム104が位置101Aに位置する患部101に照射されたときの即発ガンマ線81の通過経路は、スリットコリメータ82の働きにより図9の斜線領域を通過し、検出器83を構成する図9では右端チャンネル領域83Aの計数が高くなる計数分布84Aが得られる。逆に言うと、動体追跡治療が問題なく進行している時は、患部101は常に位置101Aに位置するために、検出器83の計数分布は右端チャンネル領域83Aの計数が高くなる計数分布84Aが得られる。右端チャンネル領域83Aが計数量が高い計数分布84Aの時は、左側のチャンネル領域83Bの計数は低く、バックグラウンドにノイズ成分を加えた計数量になっている。
【0063】
したがって、動体追跡治療中に仮に図9の破線に示す計数分布84Bのような計数分布が得られた時、荷電粒子ビーム104の停止した位置が患部101から外れていると判定することが出来る。
【0064】
本発明による動体追跡治療における飛程計測装置80の配置について図10を用いて説明する。図9で本発明による飛程計測装置の使用方法に記載したように、本発明では動体追跡治療で呼吸移動する患部101を治療する際に、検出器83の視野の左端部に荷電粒子ビーム104が照射されるときの患部101位置が来る必要がある。
【0065】
図10では検出器83の視野の左端に荷電粒子ビーム104が照射されるときの位置101Aに患部101が位置している。呼吸移動により、患部101は位置101Aから位置101Bまでの領域を周期的に移動するとする。図10に示すような位置に検出器83を配置することにより、本発明では図9に示す原理に基づき動体追跡治療中の照射されたビーム位置を確実に確認することが出来る。
【0066】
本発明による動体追跡治療に飛程計測装置を組み合わせた粒子線治療システムの制御について図11を用いて説明する。図11に示すように、飛程計測装置80を制御する飛程計測制御装置86を新たに追加する。
【0067】
飛程計測制御装置86の制御内容について図12に説明する。図12では図9に示す検出器83と検出器により検出されたガンマ線の計数分布84を示す。
【0068】
本発明では、動体追跡治療が問題なく進行しているときのガンマ線計数分布は計数分布84Aのような分布となる。検出器83の左側のチャンネル領域83Bの計数は、動体追跡治療が問題なく進行しているときは、計数量が高くなることはないため、左側のチャンネル領域83Bの計数に判定用の計数しきい値87を設定する。
【0069】
しかしながら、動体追跡治療を実施中に計数分布84Bに示す領域の検出器チャンネルの計数が高くなった時に、動体追跡治療で所定の位置101Aに位置する患部101を突き抜ける荷電粒子ビーム104が照射されたと判定し、異常判定する。飛程計測制御装置86で異常が判断されると、即座に図11に示す全体制御装置2にビーム停止指令を送信する。全体制御装置2はビーム停止を粒子線治療システムに送ることにより、治療照射が中断される。
【0070】
このように、飛程計測制御装置86は、計数量が多くならないはずの特定チャンネルからの信号が所定閾値以上となったときは加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による粒子線の発生を停止させる。
【0071】
飛程計測制御装置86の制御内容の変形例について説明する。
【0072】
飛程計測制御装置86は、粒子線の照射精度が高いと判定されたときは、粒子線の強度を強めることができる。より具体的には、上述の図12の計数しきい値87を複数段階設定し、計数しきい値87と本来検出されないはず(バックグラウンドレベル)の検出器83の左側のチャンネル領域83Bのガンマ線の計数分布84Bとの差分が大きいときは精度が担保できているとしてビーム強度を上げ、小さいときは計数しきい値87の絶対値を上げて照射OFFの領域を広げる制御を実行することができる。
【0073】
本発明による動体追跡治療のフローを図13に示す。
【0074】
患者が治療室に入室(プロセス501)して、治療台50に横になり、治療台の上で治療計画で決められた位置に患者位置決めが行われる(プロセス502)。
【0075】
次に、図10に示す位置101A,101Bを調べるために、動体追跡装置を構成するX線透視を用いて患部101の移動範囲を算出する(プロセス503)。
【0076】
次に調査した患部101の移動範囲をもとに、図10に示すように、検出器83の視野の左領域に荷電粒子ビーム104オンする患部101位置が来るように検出器83を設置する(プロセス504)。検出器83を配置した状態で、荷電粒子ビーム104が照射されたときに計数量が高くなる検出器チャンネルを特定し、それ以外の領域、つまり図12に示す左側のチャンネル領域83Bのように、計数の動体追跡治療中に計数が高くならない検出器チャンネルを決定する(プロセス505)。
【0077】
以上のプロセスにより飛程計測装置の設置、照射前設定が完了するので、動体追跡治療を開始する(プロセス506)。
【0078】
動体追跡治療中は、プロセス505で決めた検出器チャンネルの計数監視を常に行い(プロセス507)、しきい値を超えると即座に荷電粒子ビーム104の照射を中断する(プロセス509)。問題がなければ、照射を継続する(プロセス508)。
【0079】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0080】
上述した本実施例の粒子線治療システムは、粒子線を発生、照射する加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40と、加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40を制御する全体制御装置2と、追跡対象の3次元位置を求め、その動きを追跡する動体追跡装置と、加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による粒子線の照射時に発生する二次放射線を計測する検出器83を有する飛程計測装置80と、を備え、飛程計測装置80は、患部101内に設定された各々のスポット103への粒子線の照射時の検出器83信号を確認しながら、加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による粒子線の照射制御を実行する。
【0081】
動体追跡治療では患部101の三次元位置は把握できているが、荷電粒子ビーム104が通過する患部101手前の呼吸移動に伴う密度変化がビーム到達位置に変化を引き起こすことまでには対応できていない。例えば、動体追跡装置では図9に示すように三次元の患部101位置は把握できているが、呼吸移動により患部101手前の密度変化が発生した場合、ビームが患部101を突き抜けることが発生する。例えば肺の治療などでは起こりうる。また、状況次第ではあるものの、ブラッグピークの位置はビーム通過経路上に存在する体内物質の密度和を合算したものになるため、患部101手前のビーム通過経路上の変化が呼吸移動で起こったりすると、所定の位置にブラッグピークが形成されているか分からないという課題が生じかねなかった。
【0082】
これに対し、本発明では患部101の三次元位置だけではなく、荷電粒子ビーム104の到達位置に影響を及ぼすビーム通過経路上の密度変化を監視していることに相当するため、呼吸移動の監視がより厳密になることで、動体追跡治療の安全性向上に貢献できるとともに、所定の位置にブラッグピークが形成されているかをより正確に判定することができる。
【0083】
また、飛程計測装置80は、検出器83信号の分布を確認しながら、加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による粒子線の照射制御を実行するため、精度の高い検出をより実現することができる。
【0084】
更に、検出器83は、その視野が患部101の移動範囲を覆うように設置されたものである。動体追跡治療において検出器83の視野範囲を呼吸移動する患部101領域を覆うように配置することにより、呼吸移動する患部101を動体追跡治療する際、荷電粒子ビーム104が形成する信号分布は特徴的な形となる、より具体的には、動体追跡治療が問題なく進行しているときは特定の検出器チャンネルの計数量が高くなる特徴を持つ計数分布が出来るため、これらの検出器チャンネル以外の計数量が高くなった時に、即座にビーム遮断する制御装置を粒子線治療システムに組み込むような処理を実現することができ、より安全な動体追跡治療を実現することが可能となる。また、飛程計測制御装置86での位置演算などをすることがなくなるため、処理の高速化を図ることも可能である。
【0085】
また、飛程計測装置80は、検出器83の特定チャンネルに着目して計数監視を行う。従来の飛程計測装置でビーム到達深さをもとにビームを止める方法では、ビーム到達深さを求めるために飛程計測制御装置は荷電粒子ビーム104照射で得られる計数分布から、フィッティングなどの演算処理を行う必要があり、処理に時間がかかる課題があった。これに対し、飛程計測装置80から飛程を求める演算処理を無くした上で、検出器83を構成する一部チャンネルの計数量を監視することができるため、荷電粒子ビーム104の照射位置を判定することから、制御装置の構成や処理をより簡易にすることができる。従って、よりリアルタイムで高速に処理することが可能となる。
【0086】
更に、飛程計測制御装置86は、計数量が多くならないはずの特定チャンネルからの信号が所定閾値以上となったときは加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による粒子線の発生を停止させる。検出器83は多チャンネル(検出器内の場所)から構成されていることが多いが、動体追跡治療がうまく進行しているときは、ある特定のチャンネルの計数量が高くなるという特徴的な信号分布となり、それ以外のチャンネルはバックグラウンドレベルの信号分布となる。したがって、本来計数量が高くならないチャンネルに着目して信号レベルを監視することにより、動体追跡中に何か異常が発生した場合、あるいは、動体追跡治療中に体内の密度変化が発生した場合に、本来計数量が少ないチャンネルの計数量が上がることになり、このとき即座にビーム停止するように照射制御を実施するため、呼吸移動する臓器に荷電粒子ビーム104を精度良く照射する動体追跡治療に、簡便な制御装置を追加することで、動体追跡治療の安全性をより向上させることができる。
【0087】
また、飛程計測装置80は、スリットコリメータ82を有することにより、ビーム通過経路上から発生した二次放射線以外の放射線の検出を低減することができ、計数精度の更なる向上を図ることができる。
【0088】
更に、飛程計測制御装置86は、粒子線の照射精度が高いと判定されたときは、粒子線の強度を強めることで、より短時間での高精度な照射を実現することができる。
【0089】
また、飛程計測装置80は、二次放射線として即発ガンマ線に基づく信号を処理することにより、検出器83や処理系の実現性をより高めたものとすることができる。
【0090】
更に、動体追跡装置は、患部101に埋め込まれたマーカ、患部101あるいは高密度領域の位置を求め、求めたマーカ、患部101あるいは高密度領域の位置から追跡対象を追跡することで、より正確な患部101の三次元位置を特定しながらの照射を実現することができる。
【0091】
<その他>
なお、本発明は上記の実施例に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0092】
例えば、実施例では二次放射線として即発ガンマ線を検出する飛程計測装置を取り上げたが、本発明の意図は、透視X線に付け加えた荷電粒子ビーム104照射位置確認手段を設けることであるため、例えば、二次放射線は荷電粒子ビーム104を照射したときに発生する超音波や、荷電粒子ビーム104照射時に発生する低エネルギーX線であっても良い。超音波を検出する場合、飛程計測装置80は、検出器信号の分布ではなく検出器信号を確認しながら、加速器20、ビーム輸送系30、照射ノズル40による粒子線の照射制御を実行する。低エネルギーX線を検出する場合は、即発ガンマ線と同様に検出器信号の分布を確認しながら照射制御を実行するものとできる。
【0093】
本発明実施形態は以下の態様であってもよい。
【0094】
(1)粒子線を発生、照射する照射装置と、前記照射装置を制御する中央制御部と、追跡対象の3次元位置を求め、その動きを追跡する動体追跡装置と、前記照射装置による前記粒子線の照射時に発生する二次放射線を計測する検出器を有する飛程計測装置と、を備え、前記飛程計測装置は、標的内に設定された各々のスポットへの前記粒子線の照射時の検出器信号を確認しながら、前記照射装置による前記粒子線の照射制御を実行する粒子線治療システム。
【0095】
(2):(1)記載の粒子線治療システムにおいて、前記飛程計測装置は、前記検出器信号の分布を確認しながら、前記照射装置による前記粒子線の照射制御を実行する。
【0096】
(3):(1)または(2)記載の粒子線治療システムにおいて、前記検出器は、その視野が前記標的の移動範囲を覆うように設置されたものである。
【0097】
(4):(1)乃至(3)のいずれかに記載の粒子線治療システムにおいて、前記飛程計測装置は、前記検出器の特定チャンネルに着目して計数監視を行う。
【0098】
(5):(4)に記載の粒子線治療システムにおいて、前記飛程計測装置は、計数量が多くならないはずの特定チャンネルからの信号が所定閾値以上となったときは前記照射装置による前記粒子線の発生を停止させる。
【0099】
(6):(1)乃至(5)のいずれかに記載の粒子線治療システムにおいて、前記飛程計測装置は、コリメータを有する。
【0100】
(7):(1)乃至(6)のいずれかに記載の粒子線治療システムにおいて、前記飛程計測装置は、前記粒子線の照射精度が高いと判定されたときは、前記粒子線の強度を強める。
【0101】
(8):(2)乃至(7)のいずれかに記載の粒子線治療システムにおいて、前記飛程計測装置は、前記二次放射線として即発ガンマ線に基づく信号を処理する。
【0102】
(9):(1)乃至(8)のいずれかに記載の粒子線治療システムにおいて、前記動体追跡装置は、前記標的に埋め込まれたマーカの位置を求め、求めた前記マーカの位置から前記追跡対象を追跡する。
【0103】
(10):(1)乃至(9)のいずれかに記載の粒子線治療システムにおいて、前記動体追跡装置は、前記標的あるいは高密度領域の位置を求め、求めた前記標的あるいは前記高密度領域の位置から前記追跡対象を追跡する。
【符号の説明】
【0104】
1:治療計画装置
2:全体制御装置(中央制御部)
3:照射ノズル制御装置
4:加速器・ビーム輸送系制御装置
5:患者
20:加速器(照射装置)
21:入射器
22:シンクロトロン加速器
30:ビーム輸送系(照射装置)
40:照射ノズル(照射装置)
41A,41B:走査電磁石
42:線量モニタ
43:位置モニタ
44:リッジフィルタ
45:レンジシフタ
50:治療台
51A:水平走査電磁石電源
51B:垂直走査電磁石電源
52:線量モニタ制御装置
53:位置モニタ制御装置
54:走査電磁石電源制御装置
61:ブラッグカーブ
62:線量分布SOBP
70:動体追跡制御装置
71:患部、マーカあるいは骨格ランドマーク点
72:X線管
73:X線イメージャー
74:位置
75:三次元位置
76:照射許可範囲
80:飛程計測装置
81:即発ガンマ線
82:スリットコリメータ
83:検出器
83A:右端チャンネル領域
83B:チャンネル領域
84,84A,84B:検出器で検出された計数分布
85:斜線領域
86:飛程計測制御装置
87:判定用しきい値
101:患部(標的)
101A,101B:位置
102:層
103:スポット
104:荷電粒子ビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13