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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183295
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】火災検知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20231220BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/06 J
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096832
(22)【出願日】2022-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-12-05
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 昌彦
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AA05
5C085AB09
5C085CA04
5C085CA07
5G405AA01
5G405AA06
5G405AB02
5G405AB03
5G405AC07
5G405CA05
5G405CA08
(57)【要約】
【課題】ガソリンによる放火では火災の発生から1~2分で床面近くまで煙が充満するとのシミュレーションもあり、早い段階で避難が困難になる。ガソリンが撒かれる放火を想定した場合には、火災検知システムが迅速に発報して火災を報知することが望まれる。本発明は、ガソリンが撒かれた放火の際に、建物内にいる人へ迅速に火災を報知することができる火災検知システムを提供することを目的とする。
【解決手段】火災感知器を備えた火災検知システムにおいて、ガソリンガスを検知するガソリン検知手段を設け、前記ガソリン検知手段がガソリンガスを検知した際に、火災感知の感度を上昇させる制御、火災受信機の蓄積時間を短縮させる制御、または火災感知器の遅延時間を短縮させる制御の少なくともいずれかの制御を行う制御手段を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災感知器を備えた火災検知システムにおいて、
ガソリンガスを検知するガソリン検知手段を設け、
前記ガソリン検知手段がガソリンガスを検知した際に、火災感知の感度を上昇させる制御、火災受信機の蓄積時間を短縮させる制御、または火災感知器の遅延時間を短縮させる制御の少なくともいずれかの制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする火災検知システム。
【請求項2】
前記制御手段は、火災受信機と前記火災感知器の両方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載された火災検知システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記火災感知器に設けられ、
前記ガソリン検知手段は、前記火災感知器に接続していることを特徴とする請求項1に記載された火災検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災を検知して警報を報知する火災検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンを建物内に持ち込んで放火する事件が発生している。ガソリンは、点火後に急速に激しく燃焼するうえ、煙が猛烈なスピードで行き渡るため、建物内にいる人にとって避難が難しい。その結果、逃げ遅れにより多大な被害が生じている。しかも、ガソリンは販売規制が難しく、放火犯によるガソリンの入手を阻止することも困難である。
【0003】
一方、炎感知器や煙感知器等の火災感知器には、特許文献1のように検出感度を変更できるものがある。設定はディップスイッチを手動で操作することにより行う。さらに、特許文献2、3のように、検出感度を変更するために、炎や煙の検出から発報までの遅延時間を設定できるものがある。
【0004】
遅延時間が設定できる場合には、火災感知器の設置時に設定して運用することが一般的である。図1を用いて、煙感知器を用いた火災検知における遅延時間について説明する。図1において、横軸は時間tを、縦軸はセンサ出力となる散乱強度Lを示す。また、点線で示すLcは煙草の煙による散乱強度の変化を、実線で示すLfは火災の煙による散乱強度の変化を示す。煙感知器が煙を感知してすぐに火災報知すると、煙草の煙が煙感知器に入り、誤報である非火災報となってしまう。煙草等の煙による非火災報を回避するため、煙感知器を用いた火災検知システムでは、一般的に火災閾値となる散乱閾値Lthと遅延時間Tdを設けている。
【0005】
散乱強度Lが散乱閾値Lthを越えると、遅延時間Tdのカウントを開始し、遅延時間Td後に散乱閾値Lthを越えている場合には、火災警報を発する。図1に示す煙草の煙による散乱強度Lcは、tc1の時点で散乱閾値Lthを越える。しかしながら、遅延時間Td後のtc2の時点では、散乱強度Lcは散乱閾値Lthを越えていないため、火災警報を発報しない。煙草の煙は短時間で消失するため、適切な遅延時間Tdを設けることにより非火災報は生じない。一方で、火災により生じる煙は短時間では消失しない。図1において、火災の散乱強度Lfは、tf1の時点で散乱閾値Lthを越える。そして、遅延時間Td後のtf2の時点でも散乱強度Lcは散乱閾値Lthを越えているため、火災警報を発報する。遅延時間Tdについては、炎感知器2等の他の火災感知器においても用いられ、煙感知器と同様の作用を示す。
【0006】
この遅延時間Tdは、長い時間に設定すると、誤検出しにくくなるが、火災の早期検知が難しくなる。一方で、遅延時間Tdが短いと、早期の炎や煙の検知が可能であるが、非火災報の危険性が高くなる。このように、遅延時間Tdの設定は、炎や煙の早期の検知と非火災報の抑制がトレードオフの関係になっているが、一般的には非火災報を抑制するように、遅延時間は50秒等のある程度長い時間に設定にされる場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-326390号公報
【特許文献2】特開平9-204585号公報
【特許文献3】特許第4026798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ガソリンによる放火では火災の発生から1~2分で床面近くまで煙が充満するとのシミュレーションもあり、早い段階で避難が困難になる。ガソリンが撒かれる放火を想定した場合には、火災検知システムが迅速に発報して火災を報知することが望まれる。本発明は、ガソリンが撒かれた放火の際に、建物内にいる人へ迅速に火災を報知することができる火災検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る火災検知システムは、火災感知器を備えた火災検知システムにおいて、ガソリンガスを検知するガソリン検知手段を設け、前記ガソリン検知手段がガソリンガスを検知した際に、火災感知の感度を上昇させる制御、火災受信機の蓄積時間を短縮させる制御、または火災感知器の遅延時間を短縮させる制御の少なくともいずれかの制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の火災検知システムによって、ガソリンが撒かれた放火に際しては、通常の火災検知システムよりも迅速に火災を報知することができる。そして、早期の火災報知によって建物内にいる人がすぐに避難することにより、放火による被害を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】遅延時間を説明する図。
図2】本発明の実施例1の火災検知システムを備えた部屋が放火された状況を示す図。
図3】本発明の実施例1における火災検知システムの構成を示す図。
図4】本発明の実施例2における火災検知システムの全体構成を示す図。
図5】本発明の実施例2における煙感知器の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【実施例0012】
図2において、本発明の実施例1の火災検知システムを備えた部屋5で放火犯Aが放火した状況を示す。部屋5には上方に炎感知器2が設けられ、感知線21により火災受信機1に接続している。炎感知器2は、部屋5の上方に取り付けられることで、防護対象となる部屋5全体を監視している。なお図2の炎感知器2から延びている直線は、炎感知器2の監視視野を示している。また、部屋5の出入口51の下方には、ガソリン検知手段4が設けられている。ガソリン検知手段4は、中継器3と配線31を介して火災受信機1に接続している。火災受信機1には、他の部屋における炎感知器2と中継器3にも接続している。火災受信機1は部屋5の中に設ける必要はなく、建物の管理室やエントランス等に設けてもよい。ガソリン検知手段4は、ガソリンガスの中に含まれている特定の分子、例えば微量な硫化水素等を検出するものであるが、可燃性ガス検知器を用いてもよい。特にガソリンガスの特定の分子を検出するために、周りの空気を吸引する吸引式のガス検知器を用いてもよい。
【0013】
図2は、出入口51から部屋5に入った放火犯Aがガソリン携行缶CからガソリンGを床に撒き、火を付けて火災Fを生じさせた状況を示している。火災Fの炎は赤外線を感知する炎感知器2で検出され、炎感知信号が火災受信機1に送られる。また、ガソリンGから気化したガソリンガスはガソリン検知手段4で検知され、中継器3から配線31を介してガソリン検知信号が火災受信機1に送られる。ガソリンガスは空気よりも重いため、ガソリン検知手段4は部屋5の下方に設置される。また、放火犯Aが出入口51の近くでガソリンGを撒いて放火すると避難が困難であることから、ガソリン検知手段4は出入口51に近い場所に、空調設備による空気の流れを考慮して設置することが好ましい。
【0014】
図3は、実施例1における火災検知システムの構成を示す。火災検知システムでは、火災受信機1が感知線21を介して複数の炎感知器2に接続している。また、火災受信機1は配線31を介して複数の中継器3に接続している。各々の中継器3は、ガソリン検知手段4に接続する。炎感知器2は個別にアドレスを備え、中継器3も個別にアドレスを備えている。炎感知器2とガソリン検知手段4は建物の複数の部屋5に設置される。そして、炎感知器2は部屋5の上部に、ガソリン検知手段4は部屋5の下部に設置される。
【0015】
火災受信機1は制御手段11を備えている。制御手段11は、火災信号受信手段12、蓄積手段13、火災判定手段14、ガソリン信号受信手段15および警報出力手段16と接続している。また、蓄積手段13は火災判定手段14と接続している。火災信号受信手段12は感知線21と接続し、ガソリン信号受信手段15は配線31と接続する。蓄積手段13は、所定の蓄積時間、例えば50秒をカウントするための回路であり、火災信号受信手段12が、炎感知器2から1報目の火災信号を受信したときに、50秒の蓄積時間をカウントする。50秒後に火災信号を発した炎感知器2がまだ火災を検知した状態であり、火災信号を出している場合には、検知信号を火災判定手段14に出力して、火災と判定する。もし、蓄積時間の50秒後に火災信号がない場合には、蓄積手段13から検知信号は生じず火災判定手段14は火災を判定することはない。
【0016】
次に、火災検知システムの動作を説明する。炎感知器2とガソリン検知手段4による検出は、連続的に行われている。炎感知器2が閾値以上の赤外線量を感知すると、炎感知器2に付与されているアドレスを有する炎感知信号を感知線21に送信する。また、ガソリン検知手段4がガソリンガスを検知すると、中継器3から配線31を介して、中継器3に付与されているアドレスを有するガソリン検知信号が送信される。
【0017】
<ガソリンガスが検知されない場合>
ガソリン検知手段4がガソリンガスを検知せず、ガソリン検知信号をガソリン信号受信手段15が受信しない場合には、火災受信機1は、蓄積手段13を正常に動作させ、次のように動作する。炎感知信号が火災信号受信手段12で受信されると、制御手段11は蓄積手段13と火災判定手段14へ、炎感知器2に付与されているアドレスを有する検知信号を送信する。蓄積手段13には蓄積用のタイマ回路が設けられており、検知信号を入力すると50秒の蓄積時間をカウントする。ここで、火災信号受信手段12が、先に火災発報した炎感知器2から炎感知信号を受信している状態では、火災判定手段14へ検知信号を出力している。そして、火災判定手段14は、蓄積手段13による蓄積時間のカウント終了時に検知信号を入力していると、制御手段11に発報信号を返信する。制御手段11は、発報信号を受信すると、警報出力手段16に発報信号を送信する。そして、警報出力手段16は警報灯(図示せず)を発光させるとともに、図示しないブザーなどを鳴動させると共に、外部に設けたスピーカー(図示せず)に鳴動信号を送り、警報音を発生させる。一方、火災判定手段14は、蓄積手段13からの検知信号の入力時に制御手段11からの検知信号の入力が無い場合、即ち火災受信機1が炎感知器2から火災信号を受信していない場合には、制御手段11に発報信号を返信せず、発報信号を送信しない。また、蓄積手段13からの検知信号の入力時に制御手段11と蓄積手段13から異なったアドレスを有した検知信号が入力された場合、即ち蓄積時間を開始した炎感知信号を出力した炎感知器2とは別の炎感知器2が動作して炎感知信号を受信したような場合には、制御手段11に発報信号を返信せず、発報信号を送信しない。この場合には、別途、その新たに発報し炎感知信号を出力した炎感知器2に対する蓄積時間の計測が行われる。
【0018】
<ガソリンガスが検知される場合>
ガソリン検知手段4がガソリンガスを検知して、ガソリン検知信号をガソリン信号受信手段15が受信する場合には、次のように動作する。ガソリン信号受信手段15がガソリン検知信号を受信すると、制御手段11は火災判定手段14に蓄積無効信号を送信する。火災判定手段14では、蓄積手段13からの検知信号の有無に関わらず、制御手段11から検知信号を受信した場合には制御手段11へ発報信号を返信する。このようにして、火災受信機1では蓄積時間を0秒の蓄積時間に短縮して発報信号を発し、警報出力手段16は警報灯(図示せず)を発光させるとともに、図示しないブザーなどを鳴動させると共に、外部に設けたスピーカー(図示せず)に鳴動信号を送り、警報音を発生させる。
【0019】
<変形例>
実施例1では、ガソリン検知信号の受信により蓄積手段13における蓄積時間を0秒の蓄積時間に短縮した。言い換えると火災受信機1が備えている蓄積手段13による蓄積機能を無効化(キャンセル)した。しかし、蓄積時間を50秒からより短い時間である10秒の蓄積時間に短縮するなど、0秒以外の蓄積時間に短縮してもよい。このようにガソリン検知時には、蓄積機能をキャンセルしたり蓄積時間を短縮したりすることで、火災発生を早期に判定し、その警報を行うことが可能となる。
【0020】
また、実施例1では、ガソリン検知信号の受信により蓄積手段13における蓄積時間を0秒に短縮した蓄積時間に変更した。しかし、ガソリン検知信号の受信により火災受信機1から対応するアドレスの炎感知器2に感度上昇信号を送信し、炎感知器2の火災判定用の閾値を下げることにより感度を上昇させてもよい。これにより、ガソリン検知信号を発した中継器3に対応した炎感知器2の感度が上昇して、ガソリンガスを検知したガソリン検知手段4の近傍の火災を監視する炎感知器2で炎感知信号を発しやすくすることができる。
【0021】
さらに、炎感知器から火災受信機に赤外線量のデータを送信し、火災受信機に記憶した火災判定用の閾値で感度が得られている、アナログ式の火災検知システムでは、火災受信機の閾値を下げて感度を上昇させることができる。以上のように、ガソリンガスを検出した際に、蓄積時間の短縮や感度の上昇等により火災検知システムをより早く発報容易状態に設定することにより、早期に火災発報を行うことができる。火災感知器の火災判定用の閾値を下げる点、および火災受信機の火災判定用の閾値を下げる点は、ともに「火災感知」の感度を上昇させる制御の一例となる。なお、通常の建物内において、ガソリンガスの検出は、放火の可能性が高いので、非火災報を防止する手段としての蓄積機能をキャンセルするシステムを構成しても非火災報が増えるわけではない。
【0022】
実施例1では、各々の炎感知器2の炎感知信号から火災受信機1で蓄積時間により発報信号を発する際に、ガソリンガスを検知したガソリン検知手段4と中継器3に対応した炎感知器2の蓄積時間を短縮している。しかし、いずれかのガソリン検知手段4がガソリンガスを検知した際に、建物内の全ての炎感知器2について蓄積時間を短縮するようにしてもよい。この場合には、炎感知器2にアドレスがなくてもよい。また、ガソリン検知に関してもアドレスがなくてよいため、中継器3によるガソリン検知信号へのアドレスの付与は不要であり、中継器3はなくてもよい。
【実施例0023】
図4に実施例2における火災検知システムの全体構成を示し、図5に火災検知システムで用いる煙感知器7の構成を示す。図4に示すように、実施例2の火災検知システムは、火災受信機6を備え、火災感知器として煙感知器7を備えている。火災受信機6は、制御手段61、火災信号受信手段62、警報出力手段63を有している。火災信号受信手段62と警報出力手段63は、制御手段61に接続する。また、図5に示すように、煙感知器7は制御手段71、送信手段72、遅延手段73、ガソリン信号受信手段74を有している。そして、ガソリン信号受信手段74は接続線81を介してガソリン検知手段8に接続する。また、送信手段72は、感知線75を介して火災受信機6の火災信号受信手段62に接続している。
【0024】
実施例2において、煙感知器7はアドレスを有していない。煙感知器7とガソリン検知手段8は建物の複数の部屋に設置される。そのため、ガソリン検知手段8を接続する接続線81は、壁を通過させなくてもよい。そして、煙感知器7は部屋の上部に、ガソリン検知手段8は同じ部屋の下部に設置される。
【0025】
次に、火災検知システムの動作を説明する。煙感知器7とガソリン検知手段8による検出は、連続的に行われている。ガソリンガスを検知した際には、ガソリン検知手段8はガソリン検知信号を、接続線81へ送信し、ガソリン検知信号は煙感知器7のガソリン信号受信手段74で受信される。実施例1では、ガソリンガスを検知した際、火災受信機1の蓄積時間をキャンセル化することで、火災判定を早期に行えるようにしている。この実施例2は、ガソリンガスを検知した際、火災感知器が備える遅延時間の機能をキャンセル化することで、火災判定を早期に行えるようにしたものである。
【0026】
<ガソリンガスが検知されない場合>
ガソリン検知手段8がガソリンガスを検知せず、ガソリン検知信号を煙感知器7のガソリン信号受信手段74が受信しない場合には、煙感知器7は、次のように動作する。煙感知器7が閾値以上のセンサ出力である散乱強度を生じる煙を感知すると、遅延手段73が作動する。そして、20秒の遅延時間Td後にも閾値以上の散乱強度を生じる煙が感知されている場合には、制御手段71は送信手段72から感知線75に煙感知信号を送信する。火災信号受信手段62で煙感知信号を受信した火災受信機6は、制御手段61が警報出力手段63に発報信号を送信する。そして、警報出力手段63は警報灯(図示せず)を発光させるとともに、図示しないブザーなどを鳴動させると共に、外部に設けたスピーカー(図示せず)に鳴動信号を送り、警報音を発生させる。
【0027】
<ガソリンガスが検知される場合>
ガソリン検知手段8がガソリンガスを検知して、ガソリン検知信号を煙感知器7のガソリン信号受信手段74が受信する場合には、煙感知器7は、次のように動作する。ガソリン信号受信手段74がガソリン検知信号を受信すると、煙感知器7の制御手段71は遅延手段73による遅延時間20秒の計測を行わず、送信手段72を介して直ちに感知線75に煙感知信号を送信する。このように、煙感知器7では20秒の遅延時間Tdを0秒の遅延時間Tdsに短縮して煙感知信号を発する。煙感知信号を受けた火災受信機6は、制御手段61が警報出力手段63に発報信号を送信する。そして、警報出力手段63は警報灯(図示せず)を発光させるとともに、図示しないブザーなどを鳴動させると共に、外部に設けたスピーカー(図示せず)に鳴動信号を送り、警報音を発生させる。
なお、このシステムにおいても、実施例1で説明した、火災受信機の蓄積時間を短縮させる制御を適用するようにしてもよい。このシステムは、煙感知器7がアドレスを持たない、いわゆるP型の火災報知システムを構成しているので、火災受信機6に蓄積手段を設ける場合には、次に記載したとおりとなる。煙感知器7が火災を検出し、第1報目の火災信号を火災受信機6へ出力すると、火災受信機6は図示しない蓄積手段を動作させ、例えば60秒の蓄積時間を計測する。その際、火災受信機6はいったん煙感知器7を復旧させる。蓄積時間の60秒経過後、煙感知器7が再度、火災信号を発する場合には、火災受信機6は、2報目の火災信号を受信したことをもって、火災が発生したものと判定する。
【0028】
<変形例>
実施例2における煙感知器7の遅延手段73においても、実施例1の蓄積手段13と同様にカウントする時間を短縮させる。つまり遅延時間Tdを0秒の遅延時間Tdsに短縮するが、実施例1と同様に20秒を10秒の遅延時間Tdsに短縮する等、0秒以外の遅延時間Tdsに短縮することもできる。
【0029】
実施例2では、全ての煙感知器7にガソリン検知手段8を接続している。しかし、ガソリン検知による制御が必要な煙感知器にのみガソリン検知手段を接続してもよい。そのため、既存の火災検知システムを備えた建物において、防護対象となる領域が、放火犯によって放火されやすい領域である場合には、そこに設置されている煙感知器を、実施例2の煙感知器7に交換し、部屋内で接続線81とガソリン検知手段8を設置するだけで必要な部屋にだけ実施例2の火災検知システムを導入することができる。
【0030】
実施例1では、火災感知器として炎感知器を用い、実施例2では煙感知器を用いて火災感知を行っている。しかし、実施例1において煙感知器を用い、実施例2で炎感知器を用いてもよい。さらに、実施例1、2において、他の種類の火災感知器を用いて火災感知を行ってもよい。また、火災検知システムに複数種の火災感知器を用いて火災を監視してもよい。
【0031】
実施例1、2では、火災感知器や火災受信機において、感度や蓄積時間または遅延時間の変更を行っている。しかし、中継器等、火災検知システムに設けた他の装置により蓄積時間、遅延時間や感度の変更を行ってもよい。また、実施例1では火災受信機において蓄積時間の制御を行い、実施例2では火災感知器において遅延時間の制御を行っている。しかし、ガソリン検知による蓄積時間または遅延時間の制御や感度を上昇させる制御のいずれか一方または両方を、火災感知器と火災受信機のいずれか一方又は両方で行ってもよい。
【0032】
実施例1、2の火災検知システムでは火災受信機を備えているが、火災受信機を備えずに複数の火災感知器が無線により連動する火災検知システムに適用してもよい。この火災検知システムでは、ガソリン検知手段がガソリンガスを検知した際に特定の火災感知器の火災感知の感度を上昇させる制御、または特定の火災感知器の遅延時間を短縮させる制御の少なくともいずれか一方の制御を行う。また、ガソリン検知手段がガソリンガスを検知した際に全ての火災感知器の感度を上昇させる制御、または全ての遅延時間を短縮させる制御の少なくともいずれか一方の制御を行うようにしてもよい。これらの火災検知システムでは、ガソリン検知手段を火災感知器に有線で接続してもよく、無線で接続してもよい。
【0033】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施例は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 火災受信機、11 制御手段、12 火災信号受信手段、13 蓄積手段、14 火災判定手段、15 ガソリン信号受信手段、16 警報出力手段、
2 炎感知器、21 感知線、3 中継器、31 配線、
4 ガソリン検知手段、
5 部屋、51 出入口、
6 火災受信機、61 制御手段、62 火災信号受信手段、63 警報出力手段、
7 煙感知器、71 制御手段、72 送信手段、73 遅延手段、74 ガソリン信号受信手段、75 感知線、
8 ガソリン検知手段、81 接続線、
L 散乱強度、Lth 散乱閾値、Lc 散乱強度、Lf 散乱強度、
Td 遅延時間、Tds 遅延時間、
A 放火犯、
C ガソリン携行缶、
G ガソリン、
F 火災
図1
図2
図3
図4
図5