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特開2023-183305木質基材含浸用樹脂組成物および樹脂含浸木質基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183305
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】木質基材含浸用樹脂組成物および樹脂含浸木質基材
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20231220BHJP
   B27K 5/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
C08F290/06
B27K5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096846
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】坂本 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 清二
【テーマコード(参考)】
2B230
4J127
【Fターム(参考)】
2B230AA08
2B230AA12
2B230AA30
2B230BA03
2B230BA04
2B230CB01
2B230CB08
2B230CB09
2B230CB25
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2B230CC06
2B230CC09
2B230DA02
2B230EA11
2B230EA20
2B230EB02
2B230EB03
2B230EB04
2B230EB07
2B230EB13
2B230EC02
4J127AA03
4J127BA031
4J127BA051
4J127BB021
4J127BB031
4J127BB051
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4J127BB221
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4J127BC121
4J127BD421
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4J127BE311
4J127BE31Y
4J127BF601
4J127BF60Y
4J127BF641
4J127BF64Y
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127BG291
4J127BG29X
4J127BG29Y
4J127BG31X
4J127CB161
4J127CC181
4J127CC291
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】木材内部での硬化性に優れながら、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造可能な樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、木質基材への含浸に用いられるものであって、
(A)イソシアネート(メタ)アクリレートと、
(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマー(但し、(A)成分を除く)と、
(C)光重合開始剤と、
を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材への含浸に用いられる樹脂組成物であって、
(A)イソシアネート(メタ)アクリレートと、
(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマー(但し、(A)成分を除く)と、
(C)光重合開始剤と、
を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)イソシアネート(メタ)アクリレートの含有量が、前記樹脂組成物の固形分換算100質量%に対して、20質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)イソシアネート(メタ)アクリレートが、オリゴマーまたはポリマーである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)イソシアネート(メタ)アクリレートは、1分子中に(メタ)アクリレート基を1つ以上2つ未満有する場合にはイソシアネート含有量が10%以上であり、1分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有する場合にはイソシアネート含有量が3%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマーが、(メタ)アクリロイルモルホリンを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、前記樹脂組成物の固形分換算100質量%に対して、5質量%以上75質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)光重合開始剤の含有量が、前記樹脂組成物の固形分換算100質量に対して、1質量%以上15質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
25℃における粘度(KU値)が49以上80以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
無溶剤型である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物が含浸された木質基材。
【請求項11】
硬化塗膜を表面に有する、請求項10に記載の木質基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質基材への含浸に用いられる樹脂組成物に関する。また、本発明は、当該樹脂組成物が含浸された木質基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コロナ禍の在宅勤務等による住宅需要の高まりや、国産材利用の推進政策、国際的なSDGsの取り組みの観点から木材の利用が拡大しつつある。木材の用途としては、内装材だけではなく、屋外に曝される外装材(建物の外壁、デッキ、バルコニー、フェンス、サッシ、木製ドア等)でも使用されている。
【0003】
屋外に曝される外装材において木材を使用する際には、多くの場合、木材に塗装が施されている。屋外における塗装の主な目的は、日光、風雨、露霜、寒暖、乾湿といった自然の作用に起因する気象劣化、およびカビ等の表面汚染菌から木材表面を保護し、美観を維持することにある。日本では、木質感が損なわれにくい半透明な仕上がりが得られる木材保護塗料が多く利用されている。木材保護塗料は、木材に含浸して塗膜形成を目立たなくするタイプ(含浸)と表面に塗膜を形成するタイプ(造膜)に大別される。含浸タイプでは、微細な割れやはがれが均一的に分散して生じ、塗膜は表面から徐々に風化したように失われていく。例えば、特許文献1~3には、木材の含浸タイプの樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-055719号公報
【特許文献2】特開2007-326313号公報
【特許文献3】特表2008-540160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、一般的な塗装を施した木材を屋外で曝露した際に、劣化により塗膜剥離および白化が発生し易く、特に木口付近で顕著に発生し易いことを知見した。 屋外での曝露では、太陽光による紫外線と雨による水分により屋内環境より木材と塗膜の劣化が相乗して促進される。特に、木材の木口付近は、樹種により仮道管や導管より水分が侵入し易く、特に上記の影響を受け易い。そこで、含浸タイプ用の樹脂組成物を木質基材に含浸させることで、木材表面、特に木口付近表面への水分の侵入を防ぐ効果が期待され、劣化抑制につながり、木質基材の耐久性が向上する。しかし、含浸タイプ用の樹脂組成物を木質基材に含浸させた場合、溶剤等の乾燥工程が必要となり、作業効率の短縮が求められるという課題があった。一方、従来の紫外線硬化型の塗料を木質基材に含浸させた場合、木材内部まで紫外線が届かず、硬化が十分に進行しない部分が生じるため、耐候性が低く、木質基材の白化が十分に抑制できないという課題があった。
【0006】
したがって、本発明は、木材内部での硬化性に優れながら、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、木質基材含浸用の樹脂組成物に(A)イソシアネート(メタ)アクリレートと、(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマー(但し、(A)成分を除く)と、(C)光重合開始剤とを含有させることにより、上記課題を解決できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 木質基材への含浸に用いられる樹脂組成物であって、
(A)イソシアネート(メタ)アクリレートと、
(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマー(但し、(A)成分を除く)と、
(C)光重合開始剤と、
を含む、樹脂組成物。
[2] 前記(A)イソシアネート(メタ)アクリレートの含有量が、前記樹脂組成物の固形分換算100質量%に対して、20質量%以上70質量%以下である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記(A)イソシアネート(メタ)アクリレートが、オリゴマーまたはポリマーである、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 前記(A)イソシアネート(メタ)アクリレートは、1分子中に(メタ)アクリレート基を1つ以上2つ未満有する場合にはイソシアネート含有量が10%以上であり、1分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有する場合にはイソシアネート含有量が3%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 前記(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマーが、(メタ)アクリロイルモルホリンを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 前記(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、前記樹脂組成物の固形分換算100質量%に対して、5質量%以上75質量%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] 前記(C)光重合開始剤の含有量が、前記樹脂組成物の固形分換算100質量に対して、1質量%以上15質量%以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 25℃における粘度(KU値)が49以上80以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 無溶剤型である、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物が含浸された木質基材。
[11] 硬化塗膜を表面に有する、[10]に記載の木質基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、木材内部での硬化性に優れながら、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造可能な樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、密着性、耐水性、および耐候性に優れながら、紫外線硬化の特徴を合わせ持つ事により、含浸塗装から積層膜塗装まで効率の良い連続塗装ライン化可能な樹脂含浸木質基材を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、「固形分」とは、樹脂組成物から有機溶剤等の揮発成分を除いたものである。
【0011】
<樹脂組成物>
本発明による樹脂組成物は、少なくとも、(A)イソシアネート(メタ)アクリレートと、(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマー(但し、(A)成分を除く)と、(C)光重合開始剤とを含むものである。本発明による樹脂組成物は、他の(メタ)アクリレートモノマー(但し、(A)成分および(B)成分を除く)をさらに含んでもよい。本発明による樹脂組成物は、上記の成分を含むため、紫外線照射による硬化反応だけでなく、水分(空気中の湿気等)によっても硬化反応が進行する。すなわち、本発明による樹脂組成物は、いわゆるデュアルキュア(二重硬化)型である。そのため、本発明による樹脂組成物は、紫外線照射による硬化反応が進行し難い木材内部でも硬化性に優れるため、木質基材への含浸に好適に用いることができる。このような樹脂組成物を用いることで、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造可能である。
【0012】
本発明による樹脂組成物の25℃における粘度(KU値)は、好ましくは49以上80以下であり、より好ましくは49以上70以下である。本発明による樹脂組成物の25℃における粘度(KU値)が上記数値範囲内であれば、木質基材への含浸が容易となる。
なお、本発明による樹脂組成物の25℃における粘度(KU値)は、JIS K 5600-2-2に記載の条件にてストーマー粘度計で測定した値である。
【0013】
以下、本発明による樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0014】
((A)イソシアネート(メタ)アクリレート)
本発明による樹脂組成物に含まれるイソシアネート(メタ)アクリレート(以下、(A)成分とも言う)は、イソシアネート基(-N=C=O)と、アクリロイル基(CH=CHCO-)および/またはメタクリロイル基(CH=C(CH)-CO-)とを有するものである。イソシアネート(メタ)アクリレートは、イソシアネート基が水分(空気中の湿気等)による硬化反応(ウレア結合の形成)に寄与し、(メタ)アクリロイル基が紫外線照射による硬化反応に寄与するため、デュアルキュア型である。このようなイソシアネート(メタ)アクリレートを用いることで、紫外線照射による硬化反応が進行し難い木材内部でも硬化性に優れるため、木質基材への含浸に好適に用いることができる。このような樹脂組成物を用いることで、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造可能である。
【0015】
イソシアネート(メタ)アクリレートは、1分子中に(メタ)アクリレート基を1つ以上2つ未満有する場合にはイソシアネート含有量が10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましく、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。また、イソシアネート(メタ)アクリレートは、1分子中に(メタ)アクリレート基を2つ以上有する場合にはイソシアネート含有量が3%以上であるであることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、25%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。イソシアネート(メタ)アクリレートのイソシアネート含有量が上記数値範囲内であれば、水分(空気中の湿気等)による硬化反応(ウレア結合の形成)が進行し易くなる。
なお、イソシアネート(メタ)アクリレートのイソシアネート含有量は、当該質量に占めるイソシアネート基(-NCO:Mw=42)の質量割合を示し、以下の日本産業規格JIS K 1603-1 ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法で定める方法で算出することができる。
【0016】
イソシアネート(メタ)アクリレートとしては、モノマー、オリゴマー、およびポリマーのいずれも用いることができる。イソシアネート(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソシアネート基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個有する化合物を用いることができる。イソシアネート基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個有する化合物としては、例えば、イソシアネートメチル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、イソシアネートブチル(メタ)アクリレート、イソシアネートオクチル(メタ)アクリレート、p-メタクリロキシ-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネート、m-アクリロキシ-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネート、等のイソシアネートアルキル基を有する(メタ)アクリレート、m-又はp-イソプロペニル-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルとジイソシアネート化合物1モルとの反応生成物、具体的には例えば、イソホロンジイソシアネートの如き(反応性の異なる)2つのイソシアネート基を有する化合物と(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有重合性不飽和モノマーとの等モル付加反応により得られる化合物等を挙げることができる。
【0017】
イソシアネート基又は不飽和基を2個以上有する化合物としては、例えば、3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基含有重合性不飽和化合物と反応させることにより得られる化合物;カルボジイミド基含有イソシアネート化合物のカルボジイミド基の一部又は全部をカルボキシル基含有重合性不飽和化合物と反応させることにより得られる化合物等を使用することができる。
【0018】
また、イソシアネート(メタ)アクリレートとしては、イソシアネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートとを反応させることによって得ても良いし、例えば、ポリイソシアネートと水酸基含有(メタ)アクリレートと、必要に応じて他のモノマーとを反応させることによって得ても良い。
【0019】
上記ポリイソシアネートとしては、本発明の効果を損なわない限り炭素数を限定するものではないが、例えば、全炭素数が4~20、好ましくは6~15の直鎖状または分岐状のイソシアネート基含有炭化水素、イソシアネート基含有環状炭化水素、イソシアネート基含有芳香族炭化水素を用いることができる。
【0020】
具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有直鎖状炭化水素、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有分岐鎖状炭化水素、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等のイソシアネート基含有環状炭化水素、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4、4-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート基含有芳香族炭化水素等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0021】
上記ポリイソシアネートは、アダクト、アロファネート、イソシアヌレート等に変性されていてもよく、アダクト変性されたものとしては、例えば、トリメチロールプロパンで変性されたヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。アロファネート変性されたものとしては、例えば、アロファネート変性ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。イソシアヌレート変性されたものとしては、例えば、イソシアヌレート変性トルエンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記以外のポリイソシアネートとして、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、イソシアネート基含有アクリレート等の多官能イソシアネートを用いてもよい。このようなポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、水酸基を少なくとも1個以上、好ましくは1~5個有する(メタ)アクリレートを用いることができる。また、このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、本発明の効果を損なわない限りその炭素数を限定するものではないが、好ましくは炭素数が2~20の炭化水素部位を有することが望ましい。ここで、炭化水素部位とは、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、あるいは芳香族炭化水素基を有する有機基をいい、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。なお、当該炭化水素部位の一部には、エーテル結合(C-O-C結合)が含まれていてもよい。
【0023】
具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。このような水酸基含有(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
上記他のモノマーとしては、上記の水酸基含有(メタ)アクリレート以外のものであって、1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーやオリゴマー等、公知のモノマーを用いることができる。
【0025】
(A)イソシアネート(メタ)アクリレートとしては、市販品を用いることができる。例えば、BASF(株)製のLaromer LR-9000、ダイセル・オルネクス(株)製のEBECRYL 4150、EBECRYL 4250等が挙げられる。
【0026】
(A)イソシアネート(メタ)アクリレートの含有量は、樹脂組成物の固形分換算100質量%に対して、好ましくは20質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは25質量%以上65質量%以下であり、さらに好ましくは27質量%以上60質量%以下である。イソシアネート(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であれば、樹脂組成物は、木材内部での硬化性に優れながら、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造可能である。
【0027】
((B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマー)
(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマー(但し、(A)成分を除く)としては、(メタ)アクリロイルモルホリンおよびアクリルアミド、N-ビニルホルムアミド等が挙げられる。これらの中でも、含浸性、木材との密着性、耐候性の観点から、(メタ)アクリロイルモルホリンを用いることが好ましい。
【0028】
(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、樹脂組成物の固形分換算100質量%に対して、好ましくは5質量%以上75質量%以下であり、より好ましくは7質量%以上72質量%以下であり、さらに好ましくは9質量%以上70質量%以下である。(B)窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量が上記範囲内であれば、樹脂組成物は、木材内部での硬化性に優れながら、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造可能である。
【0029】
((C)光重合開始剤)
(C)光重合開始剤は、特に限定されず、従来公知の紫外線硬化用の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、ベンゾイルホルメート系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
アルキルフェノン系光重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメチル-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル) ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、および2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
ベンゾイルホルメート系光重合開始剤としては、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。
チオキサントン系光重合開始剤としては、イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
オキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]およびエタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、および4,4′-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0031】
(C)光重合開始剤の含有量は、樹脂組成物の固形分換算100質量%に対して、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上12質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上10質量%以下である。光重合開始剤の含有量が上記数値範囲内であれば、樹脂組成物の硬化性が良好となる。
【0032】
(他の(メタ)アクリレート)
本発明による樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)成分および(B)成分以外の他の(メタ)アクリレートを含んでもよい。他の(メタ)アクリレートは特に限定されないが、例えば、多官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることが好ましい。多官能(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、好ましく2官能以上6官能以下である。
【0033】
2官能以上6官能以下の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレートおよびネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラフルオロエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のハロゲン置換アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の脂肪族ポリオールのジ(メタ)アクリレート;水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の水添ジシクロペンタジエンまたはトリシクロデカンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;1,3-ジオキサン-2,5-ジイルジ(メタ)アクリレート〔別名:ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート〕等のジオキサングリコールまたはジオキサンジアルカノールのジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物、ビスフェノールFエチレンオキサイド付加物ジアクリレート物等のビスフェノールAまたはビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のビスフェノールAまたはビスフェノールFのエポキシジ(メタ)アクリレート;シリコーンジ(メタ)アクリレート;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル]プロパン;2,2-ビス[4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル]プロパン;2-(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン〕のジ(メタ)アクリレート;トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(PO部がn=2)、PO付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(PO部がn=3)、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンテレフタレート、PO付加グリコールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO付加ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ジペンタエリスリトール多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、シリコーン変性およびフッ素変性等による変性モノマーであってもよい。これらの多官能(メタ)アクリレートモノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
他の(メタ)アクリレートの含有量は、(A)成分および(B)成分の含有量に応じて、適宜調節することができる。他の(メタ)アクリレートの含有量は、樹脂組成物の固形分換算100質量%に対して、好ましくは1質量%以上60質量%以下であり、好ましくは5質量%以上55質量%以下である。他の(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であれば、樹脂組成物は、木材内部での硬化性に優れながら、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造可能である。
【0035】
(その他の成分)
本発明による樹脂組成物には、上記成分の他に、更に必要に応じて、重合禁止剤、有機溶剤(非反応性希釈剤)、消泡剤、沈降防止剤、レベリング剤、分散剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防汚性向上剤、基材密着性向上剤、光増感剤、帯電防止剤、耐傷剤、防カビ剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、艶消し剤、シランカップリング剤、可塑剤等を、本発明の目的を損なわない範囲で用いることができる。
【0036】
なお、本発明による樹脂組成物は、アルコール類を含まないシンナーの有機溶剤(非反応性希釈剤)で希釈する溶剤型樹脂組成物、また、有機溶剤で希釈する必要が無い無溶剤型樹脂組成物のいずれもよい。ただし、揮発性有機化合物(VOC)の残留がないため、人体への影響がなく環境対応性に優れる等の理由から、無溶剤型樹脂組成物であることが好ましい。また、無溶剤型樹脂組成物の場合、乾燥工程を必要としないため、工業利用での生産効率を向上させることができる。
【0037】
(樹脂組成物の調製方法)
本発明による樹脂組成物は、上記の各成分を従来より公知の混合機、分散機、撹拌機等の装置を用い、混合・撹拌することにより得られる。このような装置としては、例えば、ディスパー、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等が挙げられる。
【0038】
[木質基材]
本発明による木質基材は、上記の樹脂組成物が含浸されたものである。本発明による木質基材は、表面に硬化塗膜をさらに有してもよい。上記の樹脂組成物を含浸することで、硬化塗膜との密着性、耐水性、および耐候性に優れた樹脂含浸木質基材を製造することができる。
【0039】
(木質基材)
木質基材としては、例えば、木質床材、壁材、天井材、合板、無垢材、ハードボード、パーティクルボード等が挙げられる。木質基材の厚さは特に限定さないが、通常、1~50mm程度である。
【0040】
(硬化塗膜)
硬化塗膜を形成する塗料組成物は、特に限定されず、従来公知の塗料組成物を用いることができる。硬化塗膜は、基材の片面全面に設けられていてもよく、片面の一部にのみ設けられていてもよく、また木質基材の両面に設けられていてもよい。一部に設ける場合の硬化塗膜の態様は特に制限されず、例えば、海島状の海部または島部、格子状、モザイク状など任意の態様を特に制限することなく採用できる。また、硬化塗膜は、下塗塗料、中塗塗料、および上塗塗料等を用いて、複数の層を形成してもよい。
【0041】
硬化塗膜は、膜厚は特に限定されないが、乾燥性、硬化性、密着性、耐水性、耐候性等の観点から、通常1~200μm、好ましくは3~150μm、さらに好ましくは5~100μmが望ましい。本発明における膜厚とは、硬化塗膜の断面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡(SEM)等にて観察した際の、硬化塗膜の厚さを指す。このような膜厚の塗膜を形成する際は、1回の塗装で、所望の厚みの塗膜を形成してもよいし、複数回の塗装で、所望の厚みの塗膜を形成してもよい。
【0042】
<木質基材の製造方法>
本発明による木質基材の製造方法は、木質基材に上記の樹脂組成物を含浸させる工程を含むものである。本発明による木質基材の製造方法は、樹脂含浸後の木質基材の表面に硬化塗膜を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0043】
(含浸工程)
樹脂組成物の含浸方法は、特に限定されず、従来公知の含浸方法を選択することができる。含浸方法としては、自然含浸法および減圧加圧含浸法が挙げられる。自然含浸法とは、木質基材に樹脂組成物を塗布または浸漬した後、含浸が完了するまで静置する方法である。減圧加圧含浸法とは、木質基材を密閉したタンク内へ入れ、タンク内を減圧後に上記の樹脂組成物をタンク内へ注入した後、タンク内の加圧・減圧を繰り返し、木質基材の内部まで樹脂組成物を含浸させる方法である。
【0044】
(硬化塗膜形成工程)
硬化塗膜形成工程では、樹脂含浸後の木質基材の表面に塗料組成物を塗布した後、塗膜面を硬化させることで、硬化塗膜を形成することができる。塗料組成物の塗布方法は、特に限定されず、従来公知の塗布方法を選択することができる。塗布方法には、例えば、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(ナチュラルロールコーターおよびリバースロールコーター等)、カーテンフローコーター、エアナイフコーター、スピンコーターおよびブレードコーター等の塗布機が使用できる。これらの中でも、作業性および生産性の観点からロールコーターを用いた塗布方法が好ましい。なお、塗布膜厚は、硬化乾燥後の膜厚が、上記硬化塗膜の膜厚の範囲にあることが好ましい。
【0045】
硬化方法は、特に限定されず、従来公知の硬化方法を選択することができる。硬化方法としては、例えば、木質基材の塗布面に紫外線を照射して硬化させることが挙げられる。紫外線の照射量は、塗料組成物の硬化性の観点から、好ましくは100~3,000mJ/cmであり、より好ましくは100~2,000mJ/cmであり、さらに好ましくは100~1,000mJ/cmである。
【実施例0046】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
まず、樹脂組成物の調製のために、以下の原材料を準備した。
・イソシアネート(メタ)アクリレート1((メタ)アクリレート基数:2、イソシアネート含有量:14.75%、BASF(株)製、商品名:Laromer LR9000)
・イソシアネート(メタ)アクリレート2((メタ)アクリレート基数:1、イソシアネート含有量:12.8%、ダイセル・オルネクス(株)製、商品名:EBECRYL 4150)
・イソシアネート(メタ)アクリレート3((メタ)アクリレート基数:3~4、イソシアネート含有量:5%、ダイセル・オルネクス(株)製、商品名:EBECRYL 4250)
・ウレタン(メタ)アクリレート((メタ)アクリレート基数:2、イソシアネート含有量:0%、大竹明新化学株式会社(株)製、商品名:UV-831)
・ポリイソシアネート(イソシアネート含有量:21.25%、東ソー(株)製、商品名:コロネート HX)
・窒素含有単官能(メタ)アクリレートモノマー(アクリロイルモルホリン、KJケミカルズ(株)製、商品名:ACMO)
・窒素非含有単官能(メタ)アクリレートモノマー(フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、共栄社化学(株)製、商品名:P-200A)
・3官能(メタ)アクリレートモノマー(トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート(TMP(EO)TA)、KPXグリーンケミカル(株)製、商品名:KOMERATE -T033)
・3官能/4官能(メタ)アクリレートモノマー(ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート(PETA)、KPXグリーンケミカル(株)製、商品名:KOMERATE-T001L)
・光重合開始剤1(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、Chemfine International(株)製、商品名:HYCURE 1173)
・光重合開始剤2(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、Chitec Technology(株)製、商品名:CHIVACURE TPO)
・重合禁止剤(p-ジヒドロキシベンゼン、宇部興産株式会社(株)製、商品名:ハイドロキノン)
【0048】
[実施例1~7、比較例1~3]
<樹脂組成物の調製>
表1に記載の配合に従って、各原材料を、ディスパーを用いて均一に混合・撹拌して、無溶剤型の樹脂組成物を得た。
【0049】
<樹脂組成物の粘度>
上記で調製した樹脂組成物の25℃における粘度をストーマー粘度計(太佑機材(株)製、商品名:ストーマー粘度計)を用いて、JIS K 5600-2-2の条件で測定した。測定結果を表1に示した。
【0050】
<樹脂含浸木質基材の作製1>
木質基材としてヒノキ材挽板合板(厚さ2mm)を準備した。次に、木質基材に実施例1~3および比較例1~3の樹脂組成物をそれぞれスポンジロールコーターにて約10g/尺塗布し、約1時間含浸させた。その後、表面に残った樹脂組成物をヘラ等で取り除き、UV照射装置を使用して、硬化させて、樹脂含浸木質基材を得た。UV照度計は、UV POWER PUCK IIを使用し、波長A(320~390nm)で以下の数値となるように設定した。
・80W水銀ランプの場合、330mJ/cm
・80Wガリウムランプ220mJ/cm
【0051】
続いて、得られた樹脂含浸木質基材に、下記(1)~(6)の順序で、ロールコーターを使用して、一般的な紫外線硬化塗料(中国塗料((株))製、商品名:オーレックス)を塗布した。
(1)研磨紙#400にて中間研磨を行う。
(2)オーレックス下塗塗料を塗布し、紫外線照射(100mJ/cm)により硬化させる。
(3)オーレックス中塗塗料を塗布し、紫外線照射(100mJ/cm)により硬化させる。
(4)研磨紙#400にて中間研磨を行う。
(5)オーレックス中塗塗料(2回目)を塗布し、紫外線照射(100mJ/cm)により硬化させる。
(6)オーレックス上塗塗料を塗布し、紫外線照射(400mJ/cm)により硬化させる。
【0052】
また、木質基材(ヒノキ材挽板合板)に樹脂含浸しなかった以外は、上記と同様にして紫外線硬化塗料(オーレックス)を塗布したものを比較例4とした。
【0053】
<樹脂含浸木質基材の作製2>
木質基材としてヒノキ材挽板合板の代わりにヒノキ無垢材(厚さ15mm)を用いた以外は、<樹脂含浸木質基材の作製1>と同様にして、木質基材に実施例4~7の樹脂組成物を含浸させ、硬化させて、樹脂含浸木質基材を得た。
続いて、得られた樹脂含浸木質基材を用いて、上記(1)~(6)の順序でロールコーターを使用して、一般的な紫外線硬化塗料(中国塗料((株))製、商品名:オーレックス)を塗布した。
【0054】
また、木質基材(ヒノキ無垢材)に樹脂含浸しなかった以外は、上記と同様にして紫外線硬化塗料(オーレックス)を塗布したものを比較例5とした。
【0055】
<硬化塗膜形成後の樹脂含浸木質基材の評価>
(密着性)
上記の<樹脂含浸木質基材の作製1>および<樹脂含浸木質基材の作製2>で得られた硬化塗膜形成後の樹脂含浸木質基材について、以下の方法により密着性を評価した。具体的には、JIS K 5600-5-6に記載されている碁盤目試験の方法に準じて、当該樹脂含浸木質基材の硬化塗膜上にカッターで1mm幅、100マス(10マス×10マス)の傷を入れ碁盤目を付けた試験片を作製した。続いて、セロテープ(登録商標)(商品名、ニチバン株式会社製)を試験片に貼り付けた。その後、このセロテープ(登録商標)を速やかに、碁盤目に対して45度斜め上方方向に引っ張って剥離させた。残った碁盤目の塗膜数を数え、この塗膜数を密着性の指標とし、下記の基準で評価した。評価結果を表2に示した。
[評価基準]
○:剥離が全く無かった。(残存塗膜数100/100)
△:剥離が僅かにあった。(残存塗膜数90以上100未満/100)
×:剥離が多かった。(残存塗膜数90未満/100)
【0056】
(耐水性)
上記の<樹脂含浸木質基材の作製1>および<樹脂含浸木質基材の作製2>で得られた硬化塗膜形成後の樹脂含浸木質基材について、以下の方法により耐水性を評価した。具体的には、当該樹脂含浸木質基材について、耐水性試験(60℃の温水に1時間浸漬した後、60℃の乾燥機で2時間乾燥させる操作)を2回行った。続いて、2回の耐水性試験後の樹脂含浸木質基材を、上記と同様の方法により密着性を評価した。評価結果を表2に示した。
【0057】
(耐候性:屋外)
上記の<樹脂含浸木質基材の作製1>で得られた硬化塗膜形成後の樹脂含浸木質基材を用いて、横10cm×縦15cmの試験片を作成した。続いて、当該試験片を屋外の曝露台に設置し、6か月間放置した。その後、試験片の面および切断面(木口)のそれぞれの白化および塗膜剥離の状態を目視にして下記の基準で評価した。評価結果を表2に示した。また、小口の白化割合を測定し、表2に示した。
[評価基準(白化)]
◎:白化が確認できなかった。
〇:白化の範囲が面全体または木口全長に対して10%未満であり、目立たなかった。
△:白化の範囲が面全体または木口全長に対して10%以上50%未満であり、目立った。
×:白化の範囲が面全体または木口全長に対して50%以上であり、非常に目立った。
[評価基準(塗膜剥離)]
〇:塗膜の剥離が確認できなかった。
△:一部の塗膜の剥離が発生した。
×:大部分の塗膜の剥離が発生した。
【0058】
(耐候性:促進試験)
上記の<樹脂含浸木質基材の作製2>で得られた硬化塗膜形成後の樹脂含浸木質基材を用いて、横7.5cm×縦7.5cmの試験片を作成した。続いて、当該試験片を屋内の曝露台に設置し、耐候性試験機(スガ試験機(株)製、キセノンウェザーメーターX75)を用いて、400時間の照射試験(5か月の屋外暴露試験に相当)を行った。その後、上記の耐候性:屋外と同様にして、試験片の面および切断面(木口)のそれぞれの白化および塗膜剥離の状態を目視にして上記の基準で評価した。評価結果を表2に示した。また、小口の白化割合を測定し、表2に示した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】