(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183311
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】切削加工装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/10 20060101AFI20231220BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20231220BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B23Q11/10 F
B23Q11/08 Z
B23Q17/09 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096853
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀和
(72)【発明者】
【氏名】望月 千織
(72)【発明者】
【氏名】井上 健二
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩次
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
【Fターム(参考)】
3C011DD04
3C029CC00
(57)【要約】
【課題】切削加工を行う領域の清浄度を高めつつ、被加工物の加工時における被加工物の温度上昇を抑制できる切削加工装置を提供する。
【解決手段】切削加工装置1は、ワーク保持部32、工具保持部33およびユニット本体31を有する保持ユニット3と、保持ユニット3に対向して配置され、工具20を保持するチャック53を有するヘッド5と、箱状であり、周壁に保持ユニット3が挿通される開口部13aとヘッド5が挿通される開口部13bとが穿設されるとともに、ワーク保持部32と工具保持部33とチャック53とが内側に配置される内装ケース13と、ヘッド5と内装ケース13における開口部13aの外周部との間を閉塞する第1カバー141と、保持ユニット3と内装ケース13における開口部13bの外周部との間を閉塞する第2カバー142と、ユニット本体31の内側から伝熱部材34を介して工具保持部33を冷却する冷熱源35と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するワーク保持部と、有底筒状であり内側に工具が挿入された状態で前記工具を保持する工具保持部と、前記工具保持部に前記工具が挿入されていない状態で前記工具保持部の内側が外側に連通し且つ前記工具保持部の外壁が外側から隔離されるように前記工具保持部が固定されたユニット本体と、を有する保持ユニットと、
前記保持ユニットに対向して配置され、前記工具保持部に保持された工具を保持するチャックを有するヘッドと、
周壁に前記保持ユニットが挿通される第1開口部と前記ヘッドが挿通される第2開口部とが穿設されるとともに、前記ワーク保持部と前記工具保持部と前記チャックとが内側に配置される内装ケースと、
軟性材料から形成され、前記保持ユニットと前記内装ケースにおける前記第1開口部の外周部との間を閉塞する第1カバーと、
軟性材料から形成され、前記ヘッドと前記内装ケースにおける前記第2開口部の外周部との間を閉塞する第2カバーと、
前記ユニット本体の内側から前記工具保持部を冷却する冷却機構と、を備える、
切削加工装置。
【請求項2】
前記工具は、
板状の工具本体と、
前記工具本体と連続一体に形成され前記工具本体の厚さ方向における一面側から突出する前記ワークを切削するための刃部と、
前記工具本体と連続一体に形成され前記工具本体の厚さ方向における他面側から突出し前記チャックにより保持されるシャンクと、を有し、
前記工具保持部は、前記シャンクが前記内装ケースの内側において前記保持ユニットの外側に露出した状態で前記工具を保持する、
請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項3】
前記工具保持部は、
有底筒状であり第1底壁に前記第1底壁の厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され前記工具本体が前記第1底壁と側壁との少なくとも一方に当接した状態で内側に前記工具本体が配置される工具本体収納部と、
有底筒状であり第2底壁側とは反対側の端部全体が前記第1底壁における前記貫通孔の外周部と連続一体に形成されるとともに、内側に前記刃部が配置される刃部収納部と、
前記工具本体収納部における前記第1底壁側とは反対側の端部から前記工具本体収納部の筒軸方向に直交し且つ前記工具本体収納部の筒軸から離れる方向へ延在する外鍔部と、を有し、
前記冷却機構は、前記工具本体収納部と前記刃部収納部との少なくとも一方を覆うように配置された伝熱部材を有し、
前記外鍔部は、前記伝熱部材における前記ユニット本体の外側に露出した部分に固定されている、
請求項2に記載の切削加工装置。
【請求項4】
前記工具本体収納部は、前記第1底壁または側壁における前記工具に当接する部分が金属から形成され、それ以外の部分が樹脂から形成されている、
請求項3に記載の切削加工装置。
【請求項5】
前記工具本体収納部、前記刃部収納部および前記外鍔部のうちの少なくとも1つは、
樹脂から形成された第1基材と、
メッシュ状に編み込まれた金属ワイヤから形成され前記第1基材内に埋設された第2基材と、を有する、
請求項3に記載の切削加工装置。
【請求項6】
ワークを保持するワーク保持部を有する第1保持ユニットと、
有底筒状であり内側に工具が挿入された状態で前記工具を保持する工具保持部と、前記工具保持部に前記工具が挿入されていない状態で前記工具保持部の内側が外側に連通し且つ前記工具保持部の外壁が外側から隔離された状態で前記工具保持部が固定されたユニット本体と、を有する第2保持ユニットと、
前記第1保持ユニットに対向する第1位置と前記第2保持ユニットに対向する第2位置とに配置可能であり、前記工具保持部に保持された工具を保持するチャックを有するヘッドと、
周壁に前記ヘッドが挿通される第2開口部が穿設されるとともに、少なくとも前記ワーク保持部と前記工具保持部と前記チャックとが内側に配置される内装ケースと、
軟性材料から形成され、前記ヘッドと前記内装ケースにおける前記第2開口部の外周部との間を閉塞するカバーと、を備え、
前記ユニット本体の内側には、前記工具保持部の少なくとも一部と接触するように冷媒が充填されている、
切削加工装置。
【請求項7】
ワークを保持するワーク保持部と、有底筒状であり内側に工具が挿入された状態で前記工具を保持する工具保持部と、前記工具保持部に前記工具が挿入されていない状態で前記工具保持部の内側が外側に連通し且つ前記工具保持部の外壁が外側から隔離された状態で前記工具保持部が固定されるとともに、周壁に外側に存在する気体を内側へ導入するための気体導入孔が設けられたユニット本体と、を有する保持ユニットと、
前記保持ユニットに対向して配置され、前記工具保持部に保持された工具を保持するチャックを有するヘッドと、
周壁に前記保持ユニットが挿通される第1開口部と前記ヘッドが挿通される第2開口部とが穿設されるとともに、前記ワーク保持部と前記工具保持部と前記チャックとが内側に配置される内装ケースと、
軟性材料から形成され、前記保持ユニットと前記内装ケースにおける前記第1開口部の外周部との間を閉塞する第1カバーと、
軟性材料から形成され、前記ヘッドと前記内装ケースにおける前記第2開口部の外周部との間を閉塞する第2カバーと、
前記内装ケースの内側から前記気体導入孔を通じて前記ユニット本体の内側へ流入し、前記工具保持部との間で熱交換してから前記ユニット本体の外側へ排出される気流を発生させる気流発生部と、を備える、
切削加工装置。
【請求項8】
前記気流発生部は、
前記内装ケースの外側に存在する気体を前記内装ケースの内側へ流入させる吸気ファンと、
前記内装ケースの内側に存在する気体を、前記気体導入孔を通じて前記ユニット本体の内側へ流入させるとともに、前記ユニット本体の外側へ排出させる排気ファンと、を有し、
前記吸気ファンによる気体の流入量が前記排気ファンによる気体の排出量よりも大きく設定されていることにより前記内装ケースの内側の圧力が前記内装ケースの外側の圧力に対して陽圧になるように設定されている、
請求項7に記載の切削加工装置。
【請求項9】
前記ユニット本体は、前記ユニット本体の内側へ引き込まれた気体を前記ユニット本体の外側へ排出するための気体排出孔を更に有し、
前記工具保持部は、前記ユニット本体における前記気体導入孔と前記気体排出孔との間に配置されている、
請求項7または8に記載の切削加工装置。
【請求項10】
前記ワークの加工中における前記工具の温度を計測する温度計測部と、
前記工具の温度が予め設定された基準温度以上である場合、前記ワークの加工を中断して前記工具を交換するように前記ヘッドの動作を制御する制御部と、を更に備える、
請求項1から8のいずれか1項に記載の切削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者本人の骨を切り出して得られる骨片を切削加工することで骨同士を接合するための螺子を作製し、この螺子により患者の骨折部分を接合することにより、骨折部分が癒合した後の螺子を除去するための再手術を不要にして患者の負担を大幅に軽減することがなされつつある。この場合、螺子の作製のために患者の骨から切り出す骨片のサイズをできるだけ小さくすることにより患者の負担を軽減することが要求される。また、ワークの高精度な加工を安定して行うことができるマシニングセンタが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば特許文献1に記載されたようなマシニングセンタを使用して骨片を加工する場合、工具と骨片との摩擦により発生する熱が過度に加わってしまう虞がある。そして、骨片に過度の熱が加わると、骨片の活性化が阻害され、骨片から作製した螺子を用いて骨折部分を接合した後の螺子の癒合の速度が低下してしまうことが報告されている。従って、骨片を加工する際の骨片の温度上昇を抑制することができる切削加工装置が要請されている。また、切削加工により螺子を作製する場合、作製された螺子に付着した雑菌に起因した患者の感染症を防止する観点から、螺子を作製する領域に存在する異物は極力低減する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載されたマシニングセンタでは、加工領域が外部に露出しているため、加工対象である骨片の周囲に存在する異物により螺子が汚染されてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、切削加工を行う領域の清浄度を高めつつ、被加工物の加工時における被加工物の温度上昇を抑制できる切削加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る切削加工装置は、
ワークを保持するワーク保持部と、有底筒状であり内側に工具が挿入された状態で前記工具を保持する工具保持部と、前記工具保持部に前記工具が挿入されていない状態で前記工具保持部の内側が外側に連通し且つ前記工具保持部の外壁が外側から隔離されるように前記工具保持部が固定されたユニット本体と、を有する保持ユニットと、
前記保持ユニットに対向して配置され、前記工具保持部に保持された工具を保持するチャックを有するヘッドと、
周壁に前記保持ユニットが挿通される第1開口部と前記ヘッドが挿通される第2開口部とが穿設されるとともに、前記ワーク保持部と前記工具保持部と前記チャックとが内側に配置される内装ケースと、
軟性材料から形成され、前記保持ユニットと前記内装ケースにおける前記第1開口部の外周部との間を閉塞する第1カバーと、
軟性材料から形成され、前記ヘッドと前記内装ケースにおける前記第2開口部の外周部との間を閉塞する第2カバーと、
前記ユニット本体の内側から前記工具保持部を冷却する冷却機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内装ケースの内側に保持ユニットにおける少なくともワーク保持部と工具保持部とチャックとが配置され、第1カバーが、保持ユニットと内装ケースにおける第1開口部の外周部との間を閉塞し、第2カバーが、ヘッドと内装ケースにおける第2開口部の外周部との間を閉塞している。また、工具保持部が、その内側に工具が挿入されていない状態で、内側がユニット本体の外側に連通し且つ工具保持部の外壁がユニット本体の外側から隔離されるようにユニット本体に固定されている。これにより、内装ケースの内側に内装ケースの外側から隔離された切削加工を行う領域を形成でき、内装ケースの外側に存在する異物の切削加工を行う領域への侵入が抑制される。また、冷却機構が、ユニット本体の内側から工具が保持された工具保持部を冷却するので、切削加工を行う領域の清浄度を高めつつ、被加工物の加工時における被加工物の温度上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る切削加工装置の概略図である。
【
図2】実施の形態1に係る切削加工装置の一部破断した側面図である。
【
図3】実施の形態1に係る保持ユニットの側面図である。
【
図4】(A)は実施の形態1に係る工具保持部および伝熱部材の断面図であり、(B)は実施の形態1に係る工具保持部の斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係る切削加工装置を示し、(A)はヘッドが加工して工具を保持する様子を示す正面図であり、(B)はワークを加工する様子を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2に係る切削加工装置の一部破断した側面図である。
【
図7】実施の形態2に係る切削加工装置を示し、(A)はヘッドが加工して工具を保持する様子を示す正面図であり、(B)はワークを加工する様子を示す正面図である。
【
図8】本発明の実施の形態3に係る切削加工装置の一部破断した側面図である。
【
図9】実施の形態3に係る工具保持部および伝熱部材の断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態4に係る切削加工装置の一部破断した側面図である。
【
図11】実施の形態4に係る切削加工装置が実行する切削加工処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】変形例に係る工具保持部および伝熱部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態に係る切削加工装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る切削加工装置は、ワークを保持するワーク保持部と、工具を保持する工具保持部と、箱状のユニット本体と、を有する保持ユニットと、保持ユニットに対向して配置され、工具保持部に保持された工具を保持するチャックを有するヘッドと、箱状であり、周壁にヘッドが挿通される第1開口部と保持ユニットが挿通される第2開口部とが穿設されるとともに、ワーク保持部と工具保持部とチャックとが内側に配置される内装ケースと、軟性材料から形成され、ヘッドと内装ケースにおける第1開口部の外周部との間を閉塞する第1カバーと、軟性材料から形成され、保持ユニットと内装ケースにおける第2開口部の外周部との間を閉塞する第2カバーと、ユニット本体の内側から工具保持部を冷却する冷却機構と、を備える。ここで、工具保持部は、有底筒状であり内側に工具が挿入された状態で工具を保持する。ユニット本体は、箱状であり工具保持部に工具が挿入されていない状態で工具保持部の内側が外側に連通し且つ工具保持部の外壁が外側から隔離されるように工具保持部が固定されている。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態に係る切削加工装置1は、ワークWを保持する保持ユニット3と、保持ユニット3に対向して配置され工具20を保持するヘッド5と、保持ユニット3およびヘッド5の動作を制御する制御部(図示せず)と、表示パネル11と、を備える。また、切削加工装置1は、矩形箱状であり+Y方向側の側壁にワークWを出し入れするための開口部10bが形成され、内側に保持ユニット3、ヘッド5および制御部を収容する筐体10を備える。なお、
図1では図示していないが、開口部10bは後述の扉15により閉塞可能となっている。更に、切削加工装置1は、
図2に示すように、一面が開放した矩形箱状であり内側に保持ユニット3、ヘッド5それぞれの一部が配置される内装ケース13と、軟性材料から形成された第1カバー141、第2カバー142と、+Y方向側から開口部10bを覆う扉15と、を備える。また、切削加工装置1は、ヘッド5を鉛直方向に昇降させる昇降駆動部44と、ヘッド5をX軸方向に沿って駆動するX方向駆動部71と、ヘッド5をY軸方向に沿って駆動するY方向駆動部76と、を備える。筐体10は、内側に内装ケース13が配置され、+Y方向側の側壁における開口部10bの+Z方向側に表示パネル11が取り付けられている。表示パネル11は、例えばワークWに対して行う切削加工処理の進捗状況を表示する。
【0011】
内装ケース13は、その内側にワークWの加工が行われる加工領域S1が形成されている。加工領域S1は、内装ケース13および扉15により囲まれている。内装ケース13は、開放部分が筐体10の開口部10b側を向く姿勢で筐体10内に配置され、+Z方向側の周壁と-Y方向側の周壁とのそれぞれに開口部13a、13bが設けられている。ここで、開口部13aは、ヘッド5が挿通される第1開口部であり、開口部13bは、保持ユニット3が挿通される第2開口部である。また、筐体10の内側における内装ケース13の外側の領域S2には、ヘッド5、保持ユニット3等を支持する支持部材12が配置されている。
【0012】
ヘッド5は、長尺であり長手方向の一端部に工具20を保持するチャック53が設けられた回転主軸52と、回転主軸52をその長手方向に沿った中心軸周りに回転させる主軸駆動部51と、を有する。チャック53は、チャック(図示せず)と、チャックを駆動するアクチュエータ(図示せず)と、を有し、制御部から入力される制御信号に基づいてチャックが開閉する。ヘッド5は、ベース41の+Y方向側においてZ軸方向に沿って延在するレール421に摺動自在に保持されたスライダ422に固定されている。昇降駆動部44は、Z軸方向に沿って配置されスライダ422の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺の送り螺子(図示せず)と、送り螺子に連結され送り螺子を回転させるモータ(図示せず)と、を有する。そして、昇降駆動部44は、Z軸方向に沿って配置された送り螺子を回転させることにより、スライダ422およびスライダ422に固定されたヘッド5をZ軸方向に沿って昇降させる。
【0013】
また、ベース41は、X軸方向に沿って延在するレール721に摺動自在に保持されたスライダ722にブラケット43を介して固定されている。X方向駆動部71は、X軸方向に沿って配置されブラケット43の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺の送り螺子(図示せず)と、送り螺子に連結され送り螺子を回転させるモータ(図示せず)と、を有する。そして、X方向駆動部71は、X軸方向に沿って配置された送り螺子を回転させることにより、スライダ722およびスライダ722に固定されたベース41をX軸方向に沿って移動させる。これにより、X方向駆動部71は、送り螺子を介してベース41およびヘッド5を纏めてX軸方向に沿って移動させる。また、レール721は、その長手方向における両端部がY軸方向に沿って延在する2つのレール771に摺動自在に保持されたスライダ772に支持されている。Y方向駆動部76は、Y軸方向に沿って配置されベース41の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺の送り螺子(図示せず)と、送り螺子に連結され送り螺子を回転させるモータ(図示せず)と、を有する。そして、Y方向駆動部76は、Y軸方向に沿って配置された送り螺子を回転させることにより、スライダ772およびスライダ772に支持されるレール721をY軸方向に沿って移動させる。これにより、Y方向駆動部76は、送り螺子を介してレール721、スライダ722、ベース41およびヘッド5を纏めてY軸方向に沿って移動させる。
【0014】
保持ユニット3は、
図3に示すように、ワークWを保持するワーク保持部32と、略有底円状であり内側に工具20が挿入された状態で工具20を保持する工具保持部33と、箱状のユニット本体31と、伝熱部材34と、冷熱源35と、を有する。保持ユニット3は、
図2に示すように、ユニット本体31全体をユニット本体31の長手方向に延在する回転軸(以下、「B軸」と称する。)JB周りに回転させる回転駆動部81と、ワーク保持部32をユニット本体31の長手方向に直交する方向に延在する回転軸(以下、「C軸」と称する。)JC周りに回転させる回転駆動部86と、を有する。
【0015】
回転駆動部86は、ユニット本体31の内側に配置され、C軸に沿って延在し先端部がワーク保持部32に連結されたシャフト(図示せず)を回転させるモータを有する。回転駆動部81は、円柱状でありB軸に沿って延在するシャフト82の-Y方向側の端部を支持し、シャフト82をB軸周りに回転させるモータを有する。シャフト82の+Y方向側の端部には、ユニット本体31が固定されている。回転駆動部81は、筐体10の内側における内装ケース13の外側に設けられた支持部材12に支持されている。
【0016】
ユニット本体31は、
図3に示すように、中空の直方体状の第1部位311と、矩形箱状であり第1部位311の+Y方向側の端部において第1部位311に連続する第2部位312と、を有する。第1部位311は、
図2に示すように、-Y方向側の端部がシャフト82に固定されている。そして、ユニット本体31は、回転駆動部81のシャフト82が、B軸周りに回転すると、これに伴い、B軸周りに回転する。第1部位311におけるZ軸方向に沿った側壁には、3つの開口部311aが形成されている。ワーク保持部32は、長尺のワークWの基端部を挟持するチャックである。ワーク保持部32は、ユニット本体31の第2部位312の周壁に固定されている。
【0017】
工具保持部33は、その工具保持部33に工具20が挿入されていない状態で工具保持部33の内側がユニット本体31の外側に連通し且つ工具保持部33の外壁がユニット本体31の外側から隔離されるようにユニット本体31に固定されている。ここで、工具20は、
図4(A)および(B)に示すように、円板状の工具本体22と、工具本体22と連続一体に形成され工具本体22の厚さ方向における一面側から突出するワークを切削するための刃部21と、工具本体22と連続一体に形成され工具本体22の厚さ方向における他面側から突出しヘッド5のチャック53により保持されるシャンク23と、を有する。また、工具保持部33は、アルミニウム、銅等の金属から形成され、内側に工具20の工具本体22が配置される工具本体収納部331と、内側に工具20の刃部21が配置される刃部収納部332と、外鍔部333と、を有する。ここで、工具本体収納部331は、有底円筒状であり第1底壁である底壁331aに底壁331aの厚さ方向に貫通する貫通孔331bが形成され、工具20の工具本体22が底壁331aと側壁331cとの少なくとも一方に当接した状態で内側に配置される。刃部収納部332は、有底円筒状であり内径が工具本体収納部331の内径よりも小さく、第2底壁である底壁332a側とは反対側の端部全体が底壁331aにおける貫通孔331bの外周部と連続一体に形成されている。外鍔部333は、工具本体収納部331における底壁331a側とは反対側の端部から工具本体収納部331の筒軸方向に直交し且つ工具本体収納部331の筒軸から離れる方向へ延在している。工具保持部33は、外鍔部333がユニット本体31の周壁に設けられた開口部311aからユニット本体31の外側に露出した状態で外鍔部333がユニット本体31の周壁に固定されている。ここで、外鍔部333とユニット本体31の開口部311aの外周部との間は封止部材(図示せず)により密閉されていてもよい。
【0018】
伝熱部材34は、アルミニウム、銅等の金属から直方体状に形成され、工具保持部33の工具本体収納部331と刃部収納部332とを覆うように配置されている。また、伝熱部材34には、ユニット本体31の3つの開口部311aそれぞれに対向する部分に開口し内側に工具保持部33が嵌入される凹部34aが形成されている。そして、工具保持部33は、伝熱部材34の凹部34aの内側に嵌入され、その外鍔部333が伝熱部材34における凹部34aの外周部に密着した状態で伝熱部材34に固定されている。冷熱源35は例えばペルチェ素子を有し、ユニット本体31の内側に伝熱部材34に接触した状態で配置され、伝熱部材34を予め設定された温度で維持する。この伝熱部材34と冷熱源35とから、ユニット本体31の内側から工具保持部33を冷却する冷却機構が構成されている。そして、工具保持部33は、
図2に示すように、シャンク23が内装ケース13の内側において保持ユニット3の外側に露出した状態で工具20を保持する。
【0019】
第1カバー141は、ゴム薄膜、ビニール製フィルム等の軟性材料から形成されており、例えばエチレンオキサイドガスを用いた滅菌が可能なものであることが好ましい。第1カバー141は、筒状であり筒軸方向における一端部から他端部に向かって縮径する形状を有し、筒軸方向における一端部全体が内装ケース13の開口部13aの外周部に固定され、筒軸方向における他端部全体がヘッド5の主軸駆動部51に固定されている。第2カバー142も、ゴム薄膜、ビニール製フィルム等の軟性材料から形成されており、例えばエチレンオキサイドガスを用いた滅菌が可能なものであることが好ましい。第2カバー142は、筒状であり筒軸方向における一端部から他端部に向かって縮径する形状を有し、筒軸方向における一端部全体が内装ケース13の開口部13bの外周部に固定され、筒軸方向における他端部全体が保持ユニット3のユニット本体31に固定されている。
【0020】
制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)ユニットと入出力制御ユニットとを含むPLC(Programmable Logic Control1er)と、PLCに接続された、キーボード、タッチパネル等の入力装置と、を有する。制御部は、主軸駆動部51、昇降駆動部44、X方向駆動部71、Y方向駆動部76、回転駆動部81、86、チャック53を駆動するための駆動回路それぞれへ制御信号を出力することにより、これらの動作を制御する。
【0021】
次に、本実施の形態に係る切削加工装置1の動作について
図5(A)および(B)を参照しながら説明する。ここでは、ドリルである工具20により長尺のワークWの長手方向に沿って穿孔する加工を行う例について説明する。また、使用する工具20が保持ユニット3の3つの工具保持部33に保持され、ワーク保持部32にワークWが保持されているものとする。更に、保持ユニット3は、工具保持部33が+Z方向側を向く姿勢で維持されているものとする。まず、切削加工装置1は、
図5(A)に示すように、ヘッド5を保持ユニット3の工具保持部33の+Z方向側に配置した状態で、矢印AR11に示すようにヘッド5を-Z方向へ下降させて1つの工具20をヘッド5に保持させる。次に、切削加工装置1は、工具20を保持したヘッド5を+Z方向側へ上昇させる。続いて、切削加工装置1は、保持ユニット3を、
図5(B)の矢印AR12に示すようにB軸JB周りに回転させることにより、ワークWを保持したワーク保持部32が+Z方向側を向く姿勢にする。その後、切削加工装置1は、矢印AR13に示すように、工具20の位置がZ軸方向においてワークWと一致するようにヘッド5をX軸方向およびY軸方向へ移動させる。次に、切削加工装置1は、ワーク保持部32を動かさずに回転主軸52を回転させながら、矢印AR14に示すようにヘッド5を-Z方向へ下降させて工具20の先端部をワークWに接触させることによりワークWを切削加工する。
【0022】
なお、ワークWの長手方向に沿った側壁に穿孔する加工を行う場合、切削加工装置1は、保持ユニット3をワーク保持部32が±X方向側に向けた姿勢で維持する。続いて、切削加工装置1は、ワーク保持部32を動かさずに回転主軸52を回転させながら、ヘッド5を-Z方向へ下降させて工具20の先端部をワークWに接触させることにより工具20でワークWを切削加工する。また、工具20がタップである場合、切削加工装置1は、回転主軸52とともにワーク保持部32を回転主軸52の回転方向とは逆方向へ回転させながら、ヘッド5を-Z方向へ下降させて工具20の先端部をワークWに接触させることによりワークWを高速でねじ切り加工することもできる。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態に係る切削加工装置1によれば、内装ケース13の内側にワーク保持部32と工具保持部33とチャック53とが配置され、第1カバー141が、ヘッド5と内装ケース13における開口部13aの外周部との間を閉塞し、第2カバー142が、保持ユニット3と内装ケース13における開口部13bの外周部との間を閉塞している。また、工具保持部33が、その内側に工具20が挿入されていない状態で、内側が保持ユニット3のユニット本体31の外側に連通し且つ工具保持部33の外壁がユニット本体31の外側から隔離されるようにユニット本体31に固定されている。これにより、内装ケース13の内側に内装ケース13の外側から隔離された切削加工を行う加工領域S1を形成でき、内装ケース13の外側に存在する異物の加工領域S1への侵入が抑制される。また、伝熱部材34と冷熱源35とが、ユニット本体31の内側から工具20が保持された工具保持部33を冷却するので、加工領域S1の清浄度を高めつつ、ワークWの加工時におけるワークWの温度上昇を抑制できる。
【0024】
ところで、切削加工時における工具20とワークWとの過度の温度上昇を抑制するために、エアブロー或いはクーラントによる工具20の冷却を行うことが多い。但し、本実施の形態に係る切削加工装置1のようにワークWが骨片である場合、エアブローによる冷却方法では、ワークWが過度に乾燥してしまうことが懸念される。また、クーラントによる冷却方法では、ワークWの汚染が懸念される。これに対して、本実施の形態に係る切削加工装置1の場合、工具20を清浄な加工領域S1内に配置しつつ、工具20を冷却することができるので、ワークWの乾燥或いは汚染を抑制することができる。
【0025】
また、本実施の形態に係る工具20は、工具本体22と刃部21とシャンク23とが連続一体に形成されている。これにより、工具20によるワークWの加工中に刃部21で発生する摩擦熱が効率良く工具本体22およびシャンク23へ伝達するので、刃部21で発生した摩擦熱を工具本体22およびシャンク23を介してヘッド5へ効率良く逃がすことができる。従って、切削加工中における工具20およびワークWの過度の温度上昇を抑制することができる。
【0026】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る切削加工装置は、ワークを保持する第1保持ユニットと、第1保持ユニットとは別体であり工具を保持する第2保持ユニットと、を備える点で実施の形態1と相違する。本実施の形態に係る第2保持ユニットは、有底筒状の工具保持部と、箱状であり工具保持部に工具が挿入されていない状態で工具保持部の内側が外側に連通し且つ工具保持部の外壁が外側から隔離された状態で工具保持部が固定されたユニット本体と、を有する。そして、ユニット本体の内側には、前記工具保持部の少なくとも一部と接触するように冷媒が充填されている。
【0027】
図6に示すように、本実施の形態に係る切削加工装置2001は、ヘッド5と、ワークWを保持する保持ユニット2003と、工具20を保持する保持ユニット2006と、制御部(図示せず)と、筐体2010と、内装ケース2013と、第1カバー141と、第2カバー142と、扉15と、を備える。なお、
図6において、実施の形態1と同様の構成については
図2と同一の符号を付している。また、切削加工装置2001は、実施の形態1と同様に、昇降駆動部44、X方向駆動部71およびY方向駆動部76を備える。筐体2010および内装ケース2013は、それぞれ、後述する保持ユニット2006の排気管2062が挿通される開口部2010c、2013cが設けられている。また、保持ユニット2003と保持ユニット2006とは、内装ケース2013内において互いに離間した配置されており、ヘッド5は、保持ユニット2003に対向する第1位置と保持ユニット2006に対向する第2位置とに配置可能となっている。
【0028】
保持ユニット2003は、ワーク保持部32と、箱状のユニット本体2031と、を有する第1保持ユニットである。ユニット本体2031は、中空の直方体状の第1部位2311と、矩形箱状であり第1部位2311の+Y方向側の端部において第1部位2311に連続する第2部位312と、を有する。第1部位2311は、-Y方向側の端部がシャフト82に固定されている。ワーク保持部32は、ユニット本体2031の第2部位312の周壁に固定されている。
【0029】
保持ユニット2006は、工具20を保持する工具保持部33と、矩形箱状であり内側に冷媒Reが充填されたユニット本体2061と、ユニット本体2061の内側に連通し気化した冷媒をユニット本体2061外へ排出するための排出管2062と、を有する第2保持ユニットである。ユニット本体2061は、例えば周壁の内部に比較的高い真空度(例えば10-3Pa程度の真空度)で維持された空隙(図示せず)が形成され、ユニット本体2061の外側から冷媒Reへの熱の伝達を抑制する構造を有するものであってもよい。ユニット本体2061の内側には、工具保持部33の少なくとも一部と接触するように冷媒Reが充填されている。冷媒Reとしては、例えば液体窒素を採用することができる。排気管2062は、内装ケース2013の開口部2013cおよび筐体2010の開口部2010cに挿通され、ユニット本体2061の内側に連通する一端部とは反対側の他端部が筐体2010の外側に配置されている。ここで、内装ケース2013の開口部2013cと排気管2062との間には封止部材(図示せず)が嵌入されている。
【0030】
次に、本実施の形態に係る切削加工装置2001の動作について
図7(A)および(B)を参照しながら説明する。ここでは、工具20がドリルであって、工具20により長尺のワークWの長手方向に沿って穿孔する加工を行う例について説明する。また、使用する工具20が保持ユニット2006の3つの工具保持部33に保持され、ワーク保持部32にワークWが保持されているものとする。更に、保持ユニット2003が、ワークWを保持したワーク保持部32を+Z方向側に向けた姿勢で維持されているものとする。まず、切削加工装置2001は、
図7(A)に示すように、ヘッド5を保持ユニット2006の工具保持部33の+Z方向側の第2位置Pos2に配置した状態で、矢印AR21に示すようにヘッド5を-Z方向へ下降させてヘッド5に1つの工具20を保持させる。次に、切削加工装置2001は、工具20を保持したヘッド5を+Z方向側へ上昇させる。続いて、切削加工装置2001は、矢印AR22に示すように、工具20の位置がZ軸方向においてワークWと一致する第1位置Pos1に配置されるようにヘッド5をX軸方向およびY軸方向へ移動させる。続いて、切削加工装置2001は、ワーク保持部32を動かさずに回転主軸52を回転させながら、矢印AR23に示すようにヘッド5を-Z方向へ下降させて工具20の先端部をワークWに接触させることにより工具20でワークWを切削加工する。
【0031】
なお、ワークWの長手方向に沿った側壁に穿孔する加工を行う場合、切削加工装置2001は、保持ユニット2003をB軸JB周りに90度回転させることによりワーク保持部32を±X方向側に向けた姿勢で維持する。その後、切削加工装置2001は、ワーク保持部32を動かさずに回転主軸52を回転させながら、ヘッド5を-Z方向へ下降させて工具20の先端部をワークWに接触させることにより工具20でワークWを切削加工する。また、工具20がタップである場合、切削加工装置2001は、回転主軸52とともにワーク保持部32を回転させながら、ヘッド5を-Z方向へ下降させて工具20の先端部をワークWに接触させることによりワークWを高速でねじ切り加工することもできる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態に係る切削加工装置2001によれば、工具20を保持する保持ユニット2006が、ワークWを保持する保持ユニット2003と別体である。このため、実施の形態1に係る保持ユニット3に比べて、保持ユニット2006に設ける工具保持部33の数或いは工具保持部33の配置の制約が少ない。従って、保持ユニット2006により多くの工具20を保持させることができる。
【0033】
(実施の形態3)
本実施の形態に係る切削加工装置は、保持ユニットのユニット本体の周壁にユニット本体の外側に存在する気体をユニット本体の内側へ導入するための気体導入孔が設けられている点が実施の形態1と相違する。また、本実施の形態に係る切削加工装置は、内装ケースの内側から気体導入孔を通じてユニット本体の内側へ流入し、工具保持部との間で熱交換してからユニット本体の外側へ排出される気流を発生させる気流発生部を備える。
【0034】
図8に示すように、本実施の形態に係る切削加工装置3001は、ヘッド5と、ワークWおよび工具20を保持する保持ユニット3003と、制御部(図示せず)と、筐体3010と、内装ケース13と、第1カバー141と、第2カバー142と、扉3015と、吸気ファン3161と、排気ファン3162と、を備える。なお、
図8において、実施の形態1と同様の構成については
図2と同一の符号を付している。また、切削加工装置3001は、実施の形態1と同様に、昇降駆動部44、X方向駆動部71およびY方向駆動部76を備える。筐体3010は、矩形箱状であり、周壁の一部に排気ファン3162が固定される開口部3010cが形成されている。排気ファン3162は、開口部3010cに固定され、筐体3010の内側における内装ケース13の外側の領域S2に存在する気体を筐体3010外へ排気する。扉3015は、一部に開口部3015aが形成されており、この開口部3015aを覆うようにフィルタ部材3151と吸気ファン3161とが取り付けられている。吸気ファン3161は、筐体3010の外側に存在する気体を、フィルタ部材3151を通じて内装ケース13の内側の加工領域S1へ流入させる。フィルタ部材3151は、筐体3010の外側の気体を内装ケース13の内側へ流入させる際、筐体3010の外側に存在する異物が内装ケース13の内側の加工領域S1へ侵入するのを抑制する。この吸気ファン3161と前述の排気ファン3162とが、内装ケース13の内側の加工領域S1からユニット本体3031の内側に流入しユニット本体3031の外側へ流出する気流を発生させる気流発生部として機能する。ここで、吸気ファン3161による気体の流入量は、排気ファン3162による気体の排出量よりも大きく設定されている。これにより、内装ケース13の内側の圧力が、内装ケース13の外側の圧力に対して陽圧になるように設定されている。
【0035】
保持ユニット3003は、ワーク保持部32と、工具保持部33と、ユニット本体3031と、伝熱部材3034と、フィルタ部材3036と、を有する。ユニット本体30、31は、中空の直方体状の第1部位3311と、矩形箱状であり第1部位311の+Y方向側の端部において第1部位311に連続する第2部位3312と、を有する。第1部位3311におけるZ軸方向に沿った側壁には、3つの開口部311aが形成されている。また、ユニット本体3031の周壁には、ユニット本体3031の外側に存在する気体をユニット本体3031の内側へ導入するための気体導入孔3312aと、ユニット本体3031の内側へ引き込まれた気体をユニット本体3031の外側へ排出するための気体排出孔3311bと、が形成されている。ここで、工具保持部33および伝熱部材3034は、Y軸方向において、ユニット本体3031における気体導入孔3312aと気体排出孔3311bとの間に配置されている。
【0036】
伝熱部材3034は、アルミニウム、銅等の金属から直方体状に形成され、
図9に示すように、直方体状の本体部3341と、本体部3341から突出する複数の放熱フィン3342と、を有する。なお、
図9において、実施の形態1と同様の構成については、
図4(A)と同一の符号を付している。本体部3341は、工具保持部33の工具本体収納部331と刃部収納部332とを覆うように配置されている。また、本体部3341には、ユニット本体3031の3つの開口部311aそれぞれに対向する部分に開口し内側に工具保持部33が嵌入される凹部3034aが形成されている。そして、工具保持部33は、本体部3341の凹部3034aの内側に嵌入され、その外鍔部333が本体部3341における凹部3034aの外周部に密着した状態で本体部3341に固定されている。
図8に戻って、フィルタ部材3036は、気体導入孔3312aを覆うようにユニット本体3031に取り付けられており、ユニット本体3031の内側に存在する異物が内装ケース13の内側の加工領域S1へ流出するのを抑制している。
【0037】
本実施の形態に係る切削加工装置3001は、排気ファン3162を駆動させることにより、破線矢印で示すような気流が発生する。具体的には、筐体3010の外側から内装ケース13の内側の加工領域S1へ流入した後、保持ユニット3003のユニット本体3031の気体導入孔3312aからユニット本体3031の内側へ流入し、その後、ユニット本体3031の気体排出孔3311bを通じて内装ケース外側の領域S2へ流出するような気流が発生する。ここで、内装ケース13の内側の加工領域S1から気体導入孔3312aを通じてユニット本体3031の内側へ引き込まれた気体が、伝熱部材3034との間で熱交換してからユニット本体3031の外側へ排出される。これにより、工具保持部33および工具保持部33に保持された工具20が伝熱部材3034を介して冷却される。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態に係る切削加工装置3001によれば、内装ケース13の内側の加工領域S1から気体導入孔3312aを通じてユニット本体3031の内側へ流入し、工具保持部33および伝熱部材3034との間で熱交換してからユニット本体3031の外側へ排出される気流により、工具保持部33を冷却する。これにより、工具20が保持された工具保持部33を冷却することができるので、ワークWの加工時におけるワークWの温度上昇を抑制できる。
【0039】
(実施の形態4)
本実施の形態に係る切削加工装置は、ワークの加工中における工具の温度を計測する温度計測部を備える点が実施の形態1と相違する。本実施の形態に係る切削加工装置は、温度計測部により計測される工具の温度が予め設定された基準温度以上である場合、ワークの加工を中断して工具を交換するようにヘッドの動作を制御する。
【0040】
図10に示すように、本実施の形態に係る切削加工装置4001は、ヘッド5と、ワークWおよび工具20を保持する保持ユニット3と、制御部(図示せず)と、筐体10と、内装ケース13と、第1カバー141と、第2カバー142と、扉15と、温度計測部4101と、を備える。なお、
図10において、実施の形態1と同様の構成については
図2と同一の符号を付している。また、切削加工装置4001は、実施の形態1と同様に、昇降駆動部44、X方向駆動部71およびY方向駆動部76を備える。温度計測部4101は、先端部がヘッド5に装着された工具20の近傍に配置された光ファイバFBの基端部に接続されており、工具20から放射された光ファイバFB内を伝播してくる赤外光を検出する赤外線センサ(図示せず)を有する。そして、温度計測部4101は、赤外線センサにより検出された赤外光の予め設定された波長における強度に基づいて工具20の温度を算出し、算出した温度を示す温度情報を制御部へ出力する。
【0041】
制御部は、温度計測部4101により計測される工具の温度が予め設定された基準温度以上である場合、ワークWの加工を中断して工具を交換するようにヘッド5の動作を制御する。
【0042】
ここで、本実施の形態に係る切削加工装置4001の動作について、
図11を参照しながら詳細に説明する。ここでは、切削加工装置4001が、ワークWに対して少なくとも1つの加工ステップを実行する切削加工処理を行う場合について説明する。まず、切削加工装置4001は、切削加工処理が開始されると、初めの加工ステップで使用する工具を特定する(ステップS1)。次に、切削加工装置4001は、保持ユニット3を、工具保持部33がヘッド5側を向く姿勢にしてからヘッド5を特定した工具20が保持された工具保持部33の+Z方向側へ移動させた後、ヘッド5を-Z方向へ下降させることにより特定した工具20をヘッド5に保持させる(ステップS2)。ここで、切削加工装置4001は、ヘッド5を+Z方向側へ上昇させてから保持ユニット3をB軸JB周りに回転させることにより、保持ユニット3を、ワークWを保持したワーク保持部32が+Z方向側を向く姿勢にする。また、切削加工装置4001は、工具20の位置がZ軸方向においてワークWと一致するようにヘッド5をX軸方向へ移動させる。続いて、切削加工装置1は、回転主軸52またはワーク保持部32を回転させながら、ヘッド5を-Z方向へ下降させて工具20をワークWに接触させることによりワークWの切削加工を開始する(ステップS3)。
【0043】
その後、切削加工装置4001は、温度計測部4101により工具20の温度を計測する(ステップS4)。次に、切削加工装置4001は、計測された工具20の温度Thが予め設定された基準温度Thth以上であるか否かを判定する(ステップS5)。ここで、切削加工装置4001は、計測された工具20の温度Thが基準温度Thth以上であると判定すると(ステップS5:Yes)、ヘッド5を+Z方向側へ上昇させて加工ステップを終了する(ステップS6)。続いて、切削加工装置4001は、保持ユニット3を、工具保持部33がヘッド5側を向く姿勢にしてからヘッド5を工具20が保持されていない工具保持部33の+Z方向側へ移動させた後、ヘッド5を-Z方向へ下降させることによりヘッド5に保持した工具20を工具保持部33に収納する(ステップS7)。その後、切削加工装置4001は、ヘッド5を+Z方向側へ上昇させてから同種の他の工具20を保持する工具保持部33の+Z方向側へ移動させた後、ヘッド5を-Z方向へ下降させることにより同種の他の工具20を保持する(ステップS8)。次に、切削加工装置4001は、ヘッド5を+Z方向側へ上昇させてから保持ユニット3をB軸JB周りに回転させることにより、保持ユニット3を、ワークWを保持したワーク保持部32が+Z方向側を向く姿勢にする。また、切削加工装置4001は、工具20の位置がZ軸方向においてワークWと一致するようにヘッド5をX軸方向へ移動させる。続いて、切削加工装置1は、回転主軸52またはワーク保持部32を回転させながら、ヘッド5を-Z方向へ下降させて工具20をワークWに接触させることにより再びワークWの切削加工を開始する(ステップS3)。
【0044】
また、切削加工装置4001は、ステップS5の処理において、計測された工具20の温度Thが基準温度Thth未満であると判定すると(ステップS5:No)、加工ステップが終了したか否かを判定する(ステップS9)。ここで、切削加工装置4001は、加工ステップが未だ終了していないと判定すると(ステップS9:No)、再びステップS4の処理を実行する。一方、切削加工装置4001は、加工ステップが終了したと判定すると(ステップS9:Yes)、ヘッド5を+Z方向側へ上昇させて加工ステップを終了する(ステップS10)。その後、切削加工装置4001は、保持ユニット3を、工具保持部33がヘッド5側を向く姿勢にしてからヘッド5を工具20が保持されていない工具保持部33の+Z方向側へ移動させた後、ヘッド5を-Z方向へ下降させることによりヘッド5に保持した工具20を工具保持部33に収納する(ステップS11)。次に、切削加工装置4001は、切削加工処理において残っている他の加工ステップが有るか否かを判定する(ステップS12)。ここで、切削加工装置4001は、他の加工ステップが有ると判定すると(ステップS12:Yes)、他の加工ステップで使用する工具を特定し(ステップS1)、ステップS2以降の一連の処理を実行する。一方、切削加工装置4001は、切削加工処理において行われる加工ステップが全て完了したと判定すると(ステップS12:No)、切削加工処理を終了する。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態に係る切削加工装置4001によれば、ワークWの加工中において、工具20の温度を基準温度未満で維持することができるので、ワークWの加工時においてワークWの温度が過度に上昇することによるワークWの損傷を抑制できる。
【0046】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば
図12に示すように、工具保持部5033の工具本体収納部5331が、側壁5331cにおける工具20に当接する当接部分5311dのみが金属から形成されているものであってもよい。そして、工具本体収納部5311における当接部分5311d以外の部分、即ち、工具本体収納部5331における当接部分5311d以外の部分と、刃部収納部332および外鍔部333と、が樹脂から形成されているものであってもよい。なお、工具保持部5033の工具本体収納部5331が、底壁331aのみ、または、底壁331aおよび側壁5331cの両方における工具20に当接する部分が金属から形成され、それ以外の部分が樹脂から形成されているものであってもよい。
【0047】
本構成によれば、工具保持部5033を軽量化することができるので、その分、切削加工装置全体を軽量化することができる。
【0048】
各実施の形態では、工具保持部33全体が金属から形成されている例について説明したが、これに限らず、例えば工具本体収納部331、刃部収納部332および外鍔部333のうちの少なくとも1つが、樹脂から形成された第1基材と、メッシュ状に編み込まれた金属ワイヤから形成され第1基材内に埋設された第2基材と、を有するものであってもよい。ここで、第1基材を形成する樹脂としては、例えばポリプロピレンを採用することができる。また、金属ワイヤとしては、例えばアルミニウム製のワイヤを採用することができる。
【0049】
本構成によれば、工具保持部33を軽量化することができるので、その分、切削加工装置全体を軽量化することができる。
【0050】
各実施の形態では、工具保持部33を3つ備え、3つの工具を収納する例について説明したが、工具保持具33の数は3つに限定されるものではなく、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。また、工具保持具33は、ユニット本体31の周壁における1つの側壁に纏めて配設されている例について説明したが、ユニット本体31における工具保持部33が配設される位置はこれに限定されない。例えばユニット本体31の周壁おける互いに対向する2面それぞれに工具保持部33が固定されていてもよい。また、ユニット本体31は、全体として略有底円筒状であり、側壁に周方向に沿って工具保持部33が配設されているものであってもよい。
【0051】
実施の形態3では、保持ユニット3003が、直方体状の本体部3341と、本体部3341から突出する複数の放熱フィン3342と、を有する伝熱部材3034を備える例について説明したが、これに限定されるものではなく、放熱フィン3342が無いものであってもよい。また、実施の形態3では、保持ユニット3003が、伝熱部材3034を有する例について説明したが、これに限定されるものではなく、保持ユニット3003が伝熱部材3034を有さないものであってもよい。この場合、保持ユニット3003は、周壁に工具保持部33が挿通される複数の開口部が形成されたユニット本体を有し、複数の工具保持部33は、それぞれ、外鍔部333がユニット本体の周壁の開口部の外周部に密着固定された状態でユニット本体に固定されたものとすればよい。
【0052】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、骨の切削加工を行う切削加工装置として好適である。
【符号の説明】
【0054】
1:切削加工装置、3,2003,2006,3003:保持ユニット、5:ヘッド、10:筐体、10b,13a,13b,311a,2010c,2013c,3010c,3015a:開口部、11:表示パネル、12:支持部材、13:内装ケース、15,3015:扉、20:工具、21:刃部、22:工具本体、23:シャンク、31,2031,2061:ユニット本体、32:ワーク保持部、33,5033:工具保持部、34,3034:伝熱部材、34a,3034a:凹部、35:冷熱源、41:ベース、43:ブラケット、44:昇降駆動部、51:主軸駆動部、52:回転主軸、53:チャック、71:X方向駆動部、76:Y方向駆動部、81,86:回転駆動部、82:シャフト、141:第1カバー、142:第2カバー、311,2311,3311:第1部位、312,3312:第2部位、331:工具本体収納部、331a,332a:底壁、331b:貫通孔、331c,5331c:側壁、332:刃部収納部、333:外鍔部、421,721,771:レール、422,722,772:スライダ、2062:排気管、3036,3151:フィルタ部材、3161:吸気ファン、3162:排気ファン、3311b:気体排気孔、3312a:気体導入孔、3341:本体部、3342:放熱フィン、4101:温度計測部、5331d:当接部分、FB:光ファイバ、JB:B軸、JC:C軸、Re:冷媒、S1:加工領域、S2:領域、W:ワーク