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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183325
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】切削加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/09 20060101AFI20231220BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B23Q17/09 C
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096872
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】井上 健二
(72)【発明者】
【氏名】望月 千織
(72)【発明者】
【氏名】辻 秀和
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩次
【テーマコード(参考)】
3C011
3C029
【Fターム(参考)】
3C011DD04
3C029DD04
(57)【要約】
【課題】工具の折損を迅速に検知することによりワークの加工精度を向上させることができる切削加工装置を提供する。
【解決手段】切削加工装置1は、工具20が先端部に固定された回転主軸を回転駆動する主軸駆動部51を有するヘッド5と、近接センサ34と、工具20を用いたワークWの切削加工の前後において、近接センサ34が工具20の側方に対向するようにヘッド5を移動させた状態で、回転主軸52を回転させたときの近接センサ34から出力される検出信号の信号波形を取得する信号取得部と、切削加工の前後において取得された信号波形の差異の有無に基づいて、工具20の折損有無を判定する判定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が先端部に固定された回転主軸を回転駆動する主軸駆動部を有するヘッドと、
第1近接センサと、
前記工具を用いたワークの切削加工の前後において、前記第1近接センサが前記工具の側方に対向するように前記ヘッドを移動させた状態で、前記回転主軸を回転させたときの前記第1近接センサから出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する信号取得部と、
前記切削加工の前後において取得された前記検出信号情報それぞれが示す前記検出信号の大きさの時間推移に相当する信号波形の差異の有無に基づいて、前記工具の折損有無を判定する判定部と、を備える、
切削加工装置。
【請求項2】
前記ワークを保持するワーク保持部と、前記ワーク保持部が外側に露出した状態で前記ワーク保持部を支持するユニット本体と、を有する保持ユニットを更に備え、
前記第1近接センサは、前記ユニット本体の内側に配置されている、
請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項3】
前記ワークを保持するワーク保持部と、前記ワークを保持した前記ワーク保持部を回転駆動する回転駆動部と、を有する保持ユニットと、
前記ヘッドに配設された第2近接センサと、を更に備え、
前記信号取得部は、前記工具を用いたワークの切削加工後において、前記第2近接センサが前記ワークの側方に対向するように前記ヘッドを移動させた状態で、前記ワーク保持部を回転させたときの前記第2近接センサから出力される検出信号の信号波形を取得し、
前記判定部は、前記切削加工後において前記第2近接センサから取得した信号波形に基づいて、前記ワークに付着した前記工具の折損片の有無を判定する、
請求項1または2に記載の切削加工装置。
【請求項4】
前記ヘッドは、有底筒状であり底壁に前記回転主軸が挿通される開口部が設けられるとともに、内側に前記主軸駆動部が配置されるヘッドカバーを更に有し、
前記第2近接センサは、前記ヘッドカバーの内側に配置されている、
請求項3に記載の切削加工装置。
【請求項5】
周壁に前記ヘッドが挿通される第1開口部と前記保持ユニットが挿通される第2開口部とが穿設されるとともに、前記ワーク保持部と前記工具とが内側に配置される内装ケースと、
軟性材料から形成され、前記ヘッドと前記内装ケースにおける前記第1開口部の外周部との間を閉塞する第1カバーと、
軟性材料から形成され、前記保持ユニットと前記内装ケースにおける前記第2開口部の外周部との間を閉塞する第2カバーと、を更に備える、
請求項2に記載の切削加工装置。
【請求項6】
周壁に前記ヘッドが挿通される第1開口部と前記保持ユニットが挿通される第2開口部とが穿設されるとともに、前記ワーク保持部と前記工具とが内側に配置される内装ケースと、
軟性材料から形成され、前記ヘッドと前記内装ケースにおける前記第1開口部の外周部との間を閉塞する第1カバーと、
軟性材料から形成され、前記保持ユニットと前記内装ケースにおける前記第2開口部の外周部との間を閉塞する第2カバーと、を更に備える、
請求項4に記載の切削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切刃、鋼管および柄を互いに銀ロー付け接合部により接合することにより形成されたガンドリルであって、一端が柄の端部に設けられた銅板に接続され、他端が切刃の基端部近傍に導電性接着剤で接続されるとともに、切刃、鋼管および柄の表面にこれらと電気的に絶縁した状態でエナメル線が埋設されたガンドリルが提案されている(例えば特許文献1参照)。このガンドリルは、使用中に銀ロー付け接合部で折れると、同時にエナメル線が切断され、エナメル線の導通が遮断されるので、エナメル線の導通状態を監視することにより、ガンドリルの折損を検知することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9―225719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたガンドリルの場合、例えばエナメル線が埋設されていない切刃の先端部分が折損した場合、切刃の折損を検知することができない。このため、切刃の先端部が折損しているにも関わらずワークの加工を継続してしまい、ワークの加工精度が大きく低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、工具の折損を迅速に検知することによりワークの加工精度を向上させることができる切削加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る切削加工装置は、
工具が先端部に固定された回転主軸を回転駆動する主軸駆動部を有するヘッドと、
第1近接センサと、
前記工具を用いたワークの切削加工の前後において、前記第1近接センサが前記工具の側方に対向するように前記ヘッドを移動させた状態で、前記回転主軸を回転させたときの前記第1近接センサから出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する信号取得部と、
前記切削加工の前後において取得された前記検出信号情報それぞれが示す前記検出信号の大きさの時間推移に相当する信号波形の差異の有無に基づいて、前記工具の折損有無を判定する判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信号取得部が、ワークの切削加工の前後において、近接センサが工具の側方に配置されるようにヘッドを移動させた状態で、回転主軸を回転させたときの近接センサから出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する。そして、判定部が、切削加工の前後において取得された検出信号情報それぞれが示す検出信号の大きさの時間推移に相当する信号波形の差異の有無に基づいて、工具の折損有無を判定する。これにより、切削加工中における工具の先端部の折損を迅速に検知することができるので、ワークの加工精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る切削加工装置の概略図である。
図2】実施の形態に係る切削加工装置の一部破断した側面図である。
図3】(A)は実施の形態に係るヘッドの斜視図であり、(B)は実施の形態に係るヘッドを+Z方向側から見た図である。
図4】実施の形態に係る保持ユニットの側面図である。
図5】実施の形態に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図6】(A)は実施の形態に係るヘッドを保持ユニットに設けられた近接センサの側方へ配置した状態を示す図であり、(B)は実施の形態に係るヘッドをワークの側方に配置した状態を示す図である。
図7】実施の形態に係る切削加工装置が実行する切削加工処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】実施の形態に係る信号取得部が取得した信号波形を示し、(A)は切削加工前の信号波形の一例を示す図であり、(B)は工具の一部が折損した場合の切削加工後の信号波形の一例を示す図である。
図9】実施の形態に係る切削加工装置が実行する切削加工処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】変形例に係る保持ユニットの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る切削加工装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る切削加工装置は、工具が先端部に固定された回転主軸を回転駆動する主軸駆動部を有するヘッドと、近接センサと、工具を用いたワークの切削加工の前後において、近接センサが前記工具の側方に対向するようにヘッドを移動させた状態で、回転主軸を回転させたときの近接センサから出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する信号取得部と、切削加工の前後において取得された検出信号情報それぞれが示す検出信号の大きさの時間推移に相当する信号波形の差異の有無に基づいて、工具の折損有無を判定する判定部と、を備える。本実施の形態に係る切削加工装置は、特に、ワークを加工する加工領域を清浄な環境で維持しながら、ワークを高精度に加工する必要のある医療分野で使用される。この切削加工装置は、例えば、患者から採取した骨片から患者の骨折部分を接合するためのいわゆる骨螺子、或いは、患者の骨の欠損部分に充填するために欠損部分の形状に適合した形状を有する充填部材を作製するために使用される。なお、本実施の形態に係る切削加工装置は、前述の骨片を加工するものに限定されるものではなく、他の生体組織或いは生体組織とは異なる材料を加工するために適用されるものであってもよい。
【0010】
図1に示すように、本実施の形態に係る切削加工装置1は、ワークWを保持する保持ユニット3と、保持ユニット3に対向して配置され工具20を保持するヘッド5と、保持ユニット3およびヘッド5の動作を制御する制御部(図示せず)と、表示パネル11と、を備える。また、切削加工装置1は、矩形箱状であり+Y方向側の側壁にワークWを出し入れするための開口部10bが形成され、内側に保持ユニット3、ヘッド5および制御部を収容する筐体10を備える。なお、図1では図示していないが、開口部10bは後述の扉15により閉塞可能となっている。更に、切削加工装置1は、図2に示すように、一面が開放した矩形箱状であり内側に保持ユニット3、ヘッド5それぞれの一部が配置される内装ケース13と、軟性材料から形成された第1カバー141、第2カバー142と、+Y方向側から開口部10bを覆う扉15と、を備える。また、切削加工装置1は、ヘッド5を鉛直方向に昇降させる昇降駆動部44と、ヘッド5をX軸方向に沿って駆動するX方向駆動部71と、ヘッド5をY軸方向に沿って駆動するY方向駆動部76と、を備える。筐体10は、内側に内装ケース13が配置され、+Y方向側の側壁における開口部10bの+Z方向側に表示パネル11が取り付けられている。表示パネル11は、例えばワークWに対して行う切削加工処理の進捗状況を表示する。
【0011】
内装ケース13は、その内側にワークWの加工が行われる加工領域S1が形成されている。加工領域S1は、内装ケース13および扉15により囲まれている。内装ケース13は、開放部分が筐体10の開口部10b側を向く姿勢で筐体10内に配置され、+Z方向側の周壁と-Y方向側の周壁とのそれぞれに開口部13a、13bが設けられている。ここで、開口部13aは、ヘッド5が挿通される第1開口部であり、開口部13bは、保持ユニット3が挿通される第2開口部である。また、筐体10の内側における内装ケース13の外側の領域S2には、ヘッド5、保持ユニット3等を支持する支持部材12が配置されている。
【0012】
ヘッド5は、長尺であり長手方向の一端部に工具20を保持するチャック53が設けられた回転主軸52と、回転主軸52をその長手方向に沿った中心軸周りに回転させる主軸駆動部51と、ヘッドカバー54と、近接センサ55と、を有する。チャック53は、チャック(図示せず)と、チャックを駆動するアクチュエータ(図示せず)と、を有し、制御部から入力される制御信号に基づいてチャックが開閉する。ヘッド5は、ベース41の+Y方向側においてZ軸方向に沿って延在するレール421に摺動自在に保持されたスライダ422に固定されている。昇降駆動部44は、Z軸方向に沿って配置されスライダ422の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺の送り螺子(図示せず)と、送り螺子に連結され送り螺子を回転させるモータ(図示せず)と、を有する。そして、昇降駆動部44は、Z軸方向に沿って配置された送り螺子を回転させることにより、スライダ422およびスライダ422に固定されたヘッド5をZ軸方向に沿って昇降させる。
【0013】
また、ベース41は、X軸方向に沿って延在するレール721に摺動自在に保持されたスライダ722にブラケット43を介して固定されている。X方向駆動部71は、X軸方向に沿って配置されブラケット43の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺の送り螺子(図示せず)と、送り螺子に連結され送り螺子を回転させるモータ(図示せず)と、を有する。そして、X方向駆動部71は、X軸方向に沿って配置された送り螺子を回転させることにより、スライダ722およびスライダ722に固定されたベース41をX軸方向に沿って移動させる。これにより、X方向駆動部71は、送り螺子を介してベース41およびヘッド5を纏めてX軸方向に沿って移動させる。また、レール721は、その長手方向における両端部がY軸方向に沿って延在する2つのレール771に摺動自在に保持されたスライダ772に支持されている。Y方向駆動部76は、Y軸方向に沿って配置されベース41の一部に設けられたナット部(図示せず)に螺合する長尺の送り螺子(図示せず)と、送り螺子に連結され送り螺子を回転させるモータ(図示せず)と、を有する。そして、Y方向駆動部76は、Y軸方向に沿って配置された送り螺子を回転させることにより、スライダ772およびスライダ772に支持されるレール721をY軸方向に沿って移動させる。これにより、Y方向駆動部76は、送り螺子を介してレール721、スライダ722、ベース41およびヘッド5を纏めてY軸方向に沿って移動させる。
【0014】
ヘッドカバー54は、図3(A)に示すように、有底角筒状であり底壁に工具20が挿通される開口部54aが設けられるとともに、内側に主軸駆動部51および回転主軸52の先端部が配置される。近接センサ55は、例えば誘導型近接センサであり、図3(B)に示すように、センサ部551と信号出力部552とを有する第2近接センサである。センサ部551は、誘導コイル(図示せず)と、内側に誘導コイルが埋設された扁平な矩形板状のパッケージと、を有する。信号出力部552は、扁平な矩形板状のパッケージを有し、内側に誘導コイルに接続された発振回路(図示せず)と、発振回路の出力電流の振幅を検出して検出した振幅の大きさを反映した検出電圧を出力する振幅検出回路(図示せず)と、振幅検出回路から出力される検出電圧に基づいて検出信号を生成して制御部へ送信する出力回路(図示せず)と、を有する。センサ部551および信号出力部552は、ヘッドカバー54の内側における主軸駆動部51との間の領域に配置されている。
【0015】
保持ユニット3は、図4に示すように、ワークWを保持するワーク保持部32と、略有底円状であり内側に工具20が挿入された状態で工具20を保持する工具保持部33と、箱状のユニット本体31と、近接センサ34と、を有する。また、保持ユニット3は、図2に示すように、ユニット本体31全体をユニット本体31の長手方向に延在する回転軸(以下、「B軸」と称する。)JB周りに回転させる回転駆動部81と、ワーク保持部32をユニット本体31の長手方向に直交する方向に延在する回転軸(以下、「C軸」と称する。)JC周りに回転させる回転駆動部86と、を有する。
【0016】
回転駆動部86は、ユニット本体31の内側に配置され、C軸JCに沿って延在し先端部がワーク保持部32に連結されたシャフト(図示せず)を回転させるモータを有する。回転駆動部81は、円柱状でありB軸に沿って延在するシャフト82の-Y方向側の端部を支持し、シャフト82をB軸JB周りに回転させるモータを有する。シャフト82の+Y方向側の端部には、ユニット本体31が固定されている。回転駆動部81は、筐体10の内側における内装ケース13の外側に設けられた支持部材12に支持されている。
【0017】
ユニット本体31は、中空の直方体状の第1部位311と、矩形箱状であり第1部位311の+Y方向側の端部において第1部位311に連続する第2部位312と、を有する。第1部位311は、図2に示すように、-Y方向側の端部がシャフト82に固定されている。そして、ユニット本体31は、回転駆動部81のシャフト82が、B軸JB周りに回転すると、これに伴い、B軸JB周りに回転する。ワーク保持部32は、長尺のワークWの基端部を挟持するチャックである。ワーク保持部32は、ユニット本体31の第2部位312の周壁に固定されている。工具保持部33は、その工具保持部33に工具20が挿入されていない状態で工具保持部33の内側がユニット本体31の外側に連通し且つ工具保持部33の外壁がユニット本体31の外側から隔離されるようにユニット本体31に固定されている。
【0018】
近接センサ34は、例えば誘導型近接センサであり、センサ部341と信号出力部342とを有する第1近接センサである。センサ部341は、誘導コイル(図示せず)と、内側に誘導コイルが埋設された扁平な矩形板状のパッケージと、を有する。信号出力部342は、扁平な矩形板状のパッケージを有し、内側に誘導コイルに接続された発振回路(図示せず)と、発振回路の出力電流の振幅を検出して検出した振幅の大きさを反映した検出電圧を出力する振幅検出回路(図示せず)と、振幅検出回路から出力される検出電圧に基づいて検出信号を生成して制御部へ送信する出力回路(図示せず)と、を有する。センサ部341は、ユニット本体31の第1部位311におけるY軸方向においてワーク保持部32に対向する側壁の内側に配置され、信号出力部342は、ユニット本体31の第2部位312の内側においてワーク保持部32に隣接する位置に配置されている。
【0019】
第1カバー141は、ゴム薄膜、ビニール製フィルム等の軟性材料から形成されており、例えばエチレンオキサイドガスを用いた滅菌が可能なものであることが好ましい。第1カバー141は、筒状であり筒軸方向における一端部から他端部に向かって縮径する形状を有し、筒軸方向における一端部全体が内装ケース13の開口部13aの外周部に固定され、筒軸方向における他端部全体がヘッドカバー54の底壁側とは反対側の端部全体に固定されている。第2カバー142も、ゴム薄膜、ビニール製フィルム等の軟性材料から形成されており、例えばエチレンオキサイドガスを用いた滅菌が可能なものであることが好ましい。第2カバー142は、筒状であり筒軸方向における一端部から他端部に向かって縮径する形状を有し、筒軸方向における一端部全体が内装ケース13の開口部13bの外周部に固定され、筒軸方向における他端部全体が保持ユニット3のユニット本体31に固定されている。
【0020】
制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)ユニットと入出力制御ユニットとを含むPLC(Programmable Logic Controller)と、PLCに接続された、キーボード、タッチパネル等の入力装置と、を有する。図5に示すように、制御部100は、CPUユニット101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、入力部105と、インタフェース106、104と、各部を接続するバス109と、を有する。また、制御部100は、駆動回路107a、107b、107c、107d、107e、107f、107gと、を有する。主記憶部102は、例えばRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリであり、CPUユニット101の作業領域として使用される。補助記憶部103は、半導体メモリのような不揮発性メモリであり、加工プログラムを含む制御部100の各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。入力部105は、前述の入力装置と入力装置をバス109に接続するためのインタフェースとを有する。入力部105は、ユーザが入力装置を操作することにより入力した各種操作情報を受け付けると、受け付けた各種操作情報をCPUユニット101へ出力する。インタフェース106は、駆動回路107a、107b、107c、107d、107e、107f、107gに接続されており、CPUユニット101から入力される制御情報を制御信号に変換して、駆動回路107a、107b、107c、107d、107e、107f、107gへ出力する。また、インタフェース106は、近接センサ34、55に接続されており、近接センサ34、55から入力される検出信号を検出信号情報に変換してCPUユニット101へ出力する。インタフェース104は、CPUユニット101から入力される工具20の折損有無を利用者に通知するための通知情報を表示パネル11へ出力する。
【0021】
駆動回路107aは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、主軸駆動部51を駆動する。駆動回路107bは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、昇降駆動部44を駆動する。駆動回路107cは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、X方向駆動部71を駆動し、駆動回路107dは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、Y方向駆動部76を駆動する。駆動回路107eは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、回転駆動部81を駆動し、駆動回路107fは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、回転駆動部86を駆動する。駆動回路107gは、インタフェース106を介して入力される制御信号に基づいて、チャック53を駆動する。
【0022】
CPUユニット101は、補助記憶部103が記憶する前述のプログラムを主記憶部102に読み出して実行することにより、ヘッド制御部111、保持ユニット制御部112、信号取得部113、判定部114および通知部115として機能する。また、補助記憶部103は、近接センサ34により得られる信号波形情報であって、ワークWの切削加工を行う前の工具20の折損有無を判定する基準となる工具20の形状を反映した信号波形情報を記憶する基準信号波形記憶部131を有する。主記憶部102は、ワークWの切削加工を行った後の工具20についての近接センサ34の検出信号の波形を示す信号波形情報と、ワークWについての近接センサ55の検出信号の波形を示す信号波形情報と、を一時的に記憶する。基準信号波形記憶部131は、ワークWの切削加工を行う前に、保持ユニット3に設けられた近接センサ34が工具20の側方に対向するようにヘッド5を移動させた状態で、回転主軸52を回転させたときの近接センサ34から出力される検出信号の信号波形を示す信号波形情報を、工具20を識別する工具識別情報に対応づけて記憶する。
【0023】
信号波形記憶部121は、ワークWの切削加工を行った後に、保持ユニット3に設けられた近接センサ34が工具20の側方に対向するようにヘッド5を移動させた状態で、回転主軸52を回転させたときの近接センサ34から出力される検出信号の波形を示す信号波形情報を一時的に記憶する。また、信号波形記憶部121は、更に、ワークWの切削加工を行った後に、ヘッド5に設けられた近接センサ55がワークWの側方に対向するようにヘッド5を移動させた状態で、ワーク保持部32を回転させたときの近接センサ55から出力される検出信号の波形を示す信号波形情報も一時的に記憶する。
【0024】
ヘッド制御部111は、ワークWの切削加工の方法に応じて、回転主軸52を回転させたり或いは回転主軸52を回転させない状態で維持したりするように、制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107aは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、主軸駆動部51を動作させたり停止させたりする。また、ヘッド制御部111は、ワークWの形状に応じた加工プログラムに応じてヘッド5を昇降させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107bは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、昇降駆動部44を動作させる。また、ヘッド制御部111は、チャック53に工具20を保持させたり保持を解除させたりするための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107gは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、チャック53に、工具20を保持させた状態にしたり工具20の保持状態を解除させたりする。更に、ヘッド制御部111は、ヘッド5をX軸方向、Y軸方向へ移動させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107c、107dは、それぞれ、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、X方向駆動部71、Y方向駆動部76を動作させたり停止させたりする。
【0025】
また、ヘッド制御部111は、ワークWの切削加工の前後において、図6(A)に示すように、保持ユニット3に設けられた近接センサ34のセンサ部341が工具20の側方に対向するようにヘッド5を移動させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。更に、ヘッド制御部111は、ワークWの切削加工後において、図6(B)に示すように、ヘッド5に設けられた近接センサ55がワークWの側方に対向するようにヘッド5を移動させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。
【0026】
図5に戻って、保持ユニット制御部112は、ユニット本体31全体をB軸JB周りに回転させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107eは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、回転駆動部81を動作させたり停止させたりする。また、保持ユニット制御部112は、ワーク保持部32をC軸JC周りに回転させるための制御情報を生成してインタフェース106へ出力する。このとき、駆動回路107fは、インタフェース106から入力される制御信号に基づいて、回転駆動部86を動作させたり停止させたりする。
【0027】
信号取得部113は、近接センサ34、55から出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する。ここで、信号取得部113は、ワークWの切削加工の前において、図6(A)に示すように、近接センサ34のセンサ部341が工具20の側方に対向するようにヘッド5を移動させた状態で、ヘッド5の回転主軸52を回転させたときの近接センサ34から出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する。そして、信号取得部113は、ワークWの切削加工の前において、切削加工で使用する複数の工具20それぞれについて取得した近接センサ34の検出信号情報を、近接センサ55によるサンプリング時刻を示すサンプリング時刻情報と複数の工具20それぞれの工具識別情報とに対応づけて、基準信号波形情報として基準信号波形記憶部131に記憶させる。また、信号取得部113は、ワークWの切削加工の後において、切削加工に用いた工具20を保持したヘッドを近接センサ34が工具20の側方に対向するように移動させた状態で、ヘッド5の回転主軸52を回転させたときの近接センサ34から出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する。そして、信号取得部113は、ワークWの切削加工の後において取得した近接センサ34の検出信号情報を、近接センサ55によるサンプリング時刻を示すサンプリング時刻情報に対応づけて信号波形記憶部121に記憶させる。
【0028】
更に、信号取得部113は、工具20を用いたワークWの切削加工後において、図6(B)に示すように、近接センサ55のセンサ部551がワークWの側方に対向するようにヘッド5を移動させた状態で、ワーク保持部32を回転させたときの近接センサ55から出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する。そして、信号取得部113は、ワークWの切削加工の後において取得した近接センサ55の検出信号情報を、近接センサ55によるサンプリング時刻を示すサンプリング時刻情報に対応づけて信号波形記憶部121に記憶させる。
【0029】
判定部114は、近接センサ34によりワークWの切削加工の前後において取得された検出信号情報それぞれが示す検出信号の大きさ、即ち、検出信号の振幅値の時間推移に相当する信号波形の差異の有無に基づいて、工具20の折損有無を判定する。具体的には、判定部114は、例えば、まず、基準信号波形記憶部131が記憶する基準信号波形情報を構成する検出信号情報に対応するサンプリング時刻と信号波形記憶部121が記憶する近接センサ34により取得した検出信号情報に対応するサンプリング時刻とを同期させる処理を行う。次に、判定部114は、同一のサンプリング時刻における、基準信号波形情報を構成する検出信号情報が示す振幅値と信号波形記憶部121が記憶する検出信号情報が示す振幅値との差分値を、互いに同期している全てのサンプリング時刻について算出し、算出した差分値の総和を差分積算値として算出する。そして、判定部114は、算出した差分積算値が予め設定された差分積算閾値以上である場合、工具20が折損していると判定する。また、判定部114は、ワークWの切削加工後において近接センサ55により取得した信号波形情報に基づいて、ワークWに付着した工具20の折損片の有無を判定する。具体的には、判定部114は、例えば信号波形記憶部121が記憶する近接センサ55により取得した検出信号情報それぞれが示す検出信号の振幅値の時間推移に相当する信号波形に、ピーク波形が存在し、そのピーク波形の尖頭値と信号波形の平均値との差分値が予め設定された差分閾値以上である場合、工具20の折損片がワークWに付着していると判定する。
【0030】
通知部115は、判定部114による判定結果に基づいて、工具20の折損有無並びにワークWに付着した工具20の折損片の有無を作業者に通知するための通知情報を生成してインタフェース104へ出力する。
【0031】
次に、本実施の形態に係る切削加工装置1が実行する切削加工処理について、図7乃至図9を参照しながら説明する。ここでは、切削加工装置1が、切削加工処理において、ワークWに対して少なくとも1つの加工ステップを実行するものとして説明する。また、保持ユニット3は、初期状態において、工具保持部33が+Z方向側を向く姿勢で維持されているものとする。更に、ヘッド5は、初期状態において、保持ユニット3の+Z方向側の初期位置に配置されているものとする。まず、図7に示すように、切削加工装置1は、切削加工処理が開始されると、切削加工で使用する少なくとも1つの工具20の中から1つの工具20を特定する(ステップS1)。次に、切削加工装置1は、特定した工具20を受け取る位置へヘッド5を移動させてから特定した工具20をヘッド5に保持させる(ステップS2)。具体的には、ヘッド制御部111が、切削加工で使用する少なくとも1つの工具20の中から1つの工具20を特定し、ヘッド5が前述の初期位置から特定した工具20の+Z方向側へ移動するようにX方向駆動部71およびY方向駆動部76の動作を制御する。また、保持ユニット制御部112が、保持ユニット3をB軸JB周りに回転させて保持ユニット3に保持されたワークWが鉛直上方を向く姿勢になるように回転駆動部81の動作を制御する。そして、ヘッド制御部111は、ヘッド5を-Z方向へ降下させて特定した工具20を受け取る位置へ移動するように昇降駆動部44の動作を制御する。更に、ヘッド制御部111は、ヘッド5が特定した工具を受け取る位置に配置された状態で、チャック53により特定した工具20が保持されるようにチャック53の動作を制御する。
【0032】
続いて、切削加工装置1は、ヘッド5を、それに保持された工具20が保持ユニット3の近接センサ34に対向する位置へ移動させる(ステップS3)。具体的には、ヘッド制御部111が、図6(A)に示すように、保持ユニット3に設けられた近接センサ34のセンサ部341が工具20の側方に対向した状態となる位置にヘッド5が配置されるように、X方向駆動部71、Y方向駆動部76および昇降駆動部44の動作を制御する。図7に戻って、その後、切削加工装置1は、工具20を回転させながら近接センサ34により得られる信号波形情報を取得して基準信号波形記憶部131に記憶させる(ステップS4)。具体的には、ヘッド制御部111が、工具20を保持した回転主軸52が予め設定された回転速度で回転するように主軸駆動部51の動作を制御しながら、信号取得部113が、近接センサ34から出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する。そして、信号取得部113は、取得した検出信号情報を、サンプリング時刻情報および特定した工具20の工具識別情報に対応づけて基準信号波形記憶部131に記憶させる。また、ヘッド制御部111は、回転主軸52を予め設定された回転数だけ回転させた後、回転主軸52の回転を停止させる。次に、切削加工装置1は、ヘッド5に保持した工具20を保持ユニット3へ移載する位置へヘッド5を移動させてからヘッド5に保持した工具20を保持ユニット3の工具保持部33に収納させる(ステップS5)。具体的には、ヘッド制御部111が、ヘッド5に保持された工具20の一部が保持ユニット3の工具保持部33の内側に配置された状態となる位置にヘッド5が配置されるように、X方向駆動部71、Y方向駆動部76および昇降駆動部44の動作を制御する。また、保持ユニット制御部112が、保持ユニット3をB軸JB周りに回転させて保持ユニット3に保持されたワークWが鉛直上方を向く姿勢になるように回転駆動部81の動作を制御する。そして、ヘッド制御部111は、チャック53による工具20の保持を解除するようにチャック53の動作を制御する。
【0033】
続いて、切削加工装置1は、切削加工処理で使用する全ての工具20について信号波形情報の取得が完了したか否かを判定する(ステップS6)。ここで、切削加工装置1は、切削加工処理で使用する全ての工具20のうち、未だ信号波形情報を取得していない工具20が存在すると判定したとする(ステップS6:No)。この場合、切削加工装置1は、未だ信号波形情報を取得していない工具20のうちの1つを特定し(ステップS1)、再びステップS2以降の一連の処理を実行する。一方、切削加工装置1が、切削加工処理で使用する全ての工具20について信号波形情報の取得が完了したと判定したとする(ステップS6:Yes)。この場合、切削加工装置1は、加工プログラムに従って、最初の加工ステップで使用する工具20を特定し、特定した工具20を保持する(ステップS7)。その後、切削加工装置1は、特定した工具20を受け取る位置へヘッド5を移動させてから特定した工具20をヘッド5に保持させる(ステップS8)。次に、切削加工装置1は、切削加工処理に含まれる1つの加工ステップを開始する(ステップS9)。具体的には、ヘッド制御部111が、加工ステップの内容に応じて、工具20が保持された回転主軸52を回転させながら、ヘッド5を移動させて工具20の先端部をワークWに接触させるように主軸駆動部51、X方向駆動部71、Y方向駆動部76および昇降駆動部44の動作を制御する。ここで、保持ユニット制御部112は、加工ステップの内容に応じて、ワーク保持部32が+Z方向またはZ軸から傾いた方向を向く姿勢で維持するように回転駆動部81の動作を制御する。或いは、ヘッド制御部111が、加工ステップの内容に応じて、工具20が保持された回転主軸52を停止させた状態を維持させながら、ヘッド5を移動させて工具20の先端部をワークWに接触させるように主軸駆動部51、X方向駆動部71、Y方向駆動部76および昇降駆動部44の動作を制御する。ここで、保持ユニット制御部112が、加工ステップの内容に応じて、ワーク保持部32を回転させながら、ワーク保持部32が+Z方向またはZ軸から傾いた方向を向く姿勢で維持するように回転駆動部81、86の動作を制御する。
【0034】
続いて、切削加工装置1は、1つの加工ステップが終了すると(ステップS10)、ヘッド5を、図6(A)に示すようにヘッド5に保持された工具20が保持ユニット3の近接センサ34に対向する位置へ移動させる(ステップS11)。図7に戻って、その後、切削加工装置1は、工具20を回転させながら近接センサ34により得られる信号波形情報を取得して信号波形記憶部121に記憶させる(ステップS12)。
【0035】
次に、切削加工装置1は、加工ステップの前後において近接センサ34により取得した信号波形情報が示す信号波形に差異があるか否かを判定する(ステップS13)。具体的には、判定部114が、信号波形記憶部121が記憶する近接センサ34により取得した検出信号情報それぞれが示す検出信号の振幅値の時間推移に相当する信号波形と、基準信号波形記憶部131が記憶する検出信号情報それぞれが示す検出信号の振幅値の時間推移に相当する信号波形とを比較して、信号波形に差異があるか否かを判定する。ここで、判定部114は、例えば基準信号波形情報に対応する信号波形が例えば図8(A)に示す波形であり、信号波形記憶部121が記憶する検出信号情報に対応する信号波形が例えば例えば図8(B)に示すように図8(A)に示す信号波形とは異なっている場合、信号波形に差異があると判定する。図7に戻って、切削加工装置1は、信号波形に差異があると判定すると(ステップS13:Yes)、後述のステップS15の処理が実行される。一方、切削加工装置1は、信号波形が同じであると判定すると(ステップS13:No)、切削加工処理に含まれる全ての加工ステップが終了したか否かを判定する(ステップS14)。ここで、切削加工装置1は、切削加工処理に含まれる加工ステップのうち未だ終了していない加工ステップが存在すると判定したとする(ステップS14:No)。この場合、切削加工装置1は、次の加工ステップで使用する工具20を特定し(ステップS7)、再びステップS8以降の一連の処理を実行する。
【0036】
一方、切削加工装置1は、切削加工処理に含まれる全ての加工ステップが終了したと判定すると(ステップS14:Yes)、図9に示すように、ヘッド5を、ヘッド5の近接センサ55がワークWに対向する位置へ移動させる(ステップS15)。具体的には、ヘッド制御部111は、図6(B)に示すように、ヘッド5に設けられた近接センサ55のセンサ部551がワーク保持部32に保持されたワークWの側方に対向する位置にヘッド5が配置されるように、X方向駆動部71、Y方向駆動部76および昇降駆動部44の動作を制御する。図9に戻って、続いて、切削加工装置1は、ワークWを回転させながら近接センサ55により得られる信号波形情報を取得して信号波形記憶部121に記憶させる(ステップS16)。具体的には、保持ユニット制御部112が、ワークWを保持したワーク保持部32が回転するように回転駆動部86の動作を制御しつつ、信号取得部113が、近接センサ55から出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得し、取得した検出信号情報をサンプリング時刻情報に対応づけて信号波形記憶部121に記憶させる。その後、切削加工装置1は、信号波形記憶部121が記憶する近接センサ55により取得した検出信号情報それぞれが示す検出信号の振幅値の時間推移に相当する信号波形に基づいて、ワークWに付着した工具20の折損片の有無を判定する(ステップS17)。次に、切削加工装置1は、工具20の折損有無並びにワークWに付着した工具20の折損片の有無を作業者に通知するための通知情報を生成して表示パネル11に表示させる(ステップS18)。具体的には、通知部115が、判定部114による判定結果を示す通知情報を生成してインタフェース104へ出力する。その後、切削加工処理が終了する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係る切削加工装置1によれば、信号取得部113が、ワークWの切削加工の前後において、近接センサ34が工具20の側方に配置されるようにヘッド5を移動させた状態で、回転主軸52を回転させたときの近接センサ34から出力される検出信号の大きさを示す検出信号情報を取得する。そして、判定部114が、切削加工の前後において取得された検出信号情報それぞれが示す検出信号の大きさの時間推移に相当する信号波形の差異の有無に基づいて、工具20の折損有無を判定する。これにより、ワークWの切削加工中における工具20の先端部の折損を迅速に検知することができるので、ワークWの加工精度を高めることができる。
【0038】
ところで、ワークWの寸法が小さくなると、それに応じて、ワークWの加工に使用する工具20の寸法も小さくなる。そして、ワークWに微細な切削加工を施す場合、工具20に微小な折損が生じた場合でも加工精度に大きく影響してしまう。しかしながら、工具20の微小な折損は、作業者が目視で確認できない場合もある。これに対して、本実施の形態に係る切削加工装置1では、近接センサ34から出力される検出信号の波形と工具20の形状との間に相関関係があることを利用して、ワークWの切削加工の前後において、工具20が保持された回転主軸52を回転させながら近接センサ34の検出信号の振幅を示す検出信号情報を取得し、取得した検出信号情報それぞれが示す検出信号の振幅の時間推移に相当する信号波形を比較することにより、切削加工中の工具20の折損有無を検知する。従って、作業者が目視で確認するのが困難な工具20の微小な折損を検知することができる。
【0039】
また、本実施の形態に係る近接センサ34が、保持ユニット3のユニット本体31の内側に配置され、近接センサ55が、ヘッドカバー54の内側に配置されている。これにより、近接センサ34、55が、加工領域S1から隔離した状態で配置されるので、加工領域S1の清浄度を維持することができる。また、ワークWの切削加工を行う毎に、近接センサ34、55の洗浄、滅菌処理等を行う必要がないので、ワークWの切削加工を行う作業者の作業負担が軽減されるという利点もある。
【0040】
更に、本実施の形態に係る信号取得部113は、ワークWの切削加工後において、近接センサ55がワークWの側方に対向するようにヘッド5を移動させた状態で、ワーク保持部32を回転させたときの近接センサ55から出力される検出信号の波形を示す信号波形情報を取得する。そして、判定部114は、近接センサ55から取得した信号波形情報に基づいて、ワークWに付着した工具20の折損片の有無を判定する。これにより、工具20が折損したときに発生した折損片のワークWへの付着を検知することができる。従って、例えば工具20の折損に起因した加工不良のワークWが、切削加工処理を行う工程の後工程へ流出してしまうことを未然に防止できる。
【0041】
また、本実施の形態に係る切削加工装置1では、内装ケース13の内側にワーク保持部32と工具保持部33とチャック53とが配置され、第1カバー141が、ヘッド5と内装ケース13における開口部13aの外周部との間を閉塞し、第2カバー142が、保持ユニット3と内装ケース13における開口部13bの外周部との間を閉塞している。また、工具保持部33が、その内側に工具20が挿入されていない状態で、内側が保持ユニット3のユニット本体31の外側に連通し且つ工具保持部33の外壁がユニット本体31の外側から隔離されるようにユニット本体31に固定されている。これにより、内装ケース13の内側に内装ケース13の外側から隔離された切削加工を行う加工領域S1を形成でき、内装ケース13の外側に存在する異物の加工領域S1への侵入が抑制される。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば図10に示すように、保持ユニットが、工具保持部33における工具20の刃部21が収納される部分の近傍に配置された近接センサ2034を有するものであってもよい。この場合、制御部が、工具保持部33に工具20が保持された状態で近接センサ2034から出力される検出信号に基づいて、工具20の刃部21の種類を特定する種類特定部と、種類特定部により特定された工具20の種類と予め工具保持部33それぞれについて設定された保持すべき工具20の種類とが一致するか否かを判定する種類判定部と、を有するものであってもよい。
【0043】
本構成によれば、工具保持部33への工具20のセットミスの発生を抑制できる。
【0044】
実施の形態において、切削加工装置1が、加工ステップを開始する直前に、ヘッド5の近接センサ55にワークWが対向する位置へヘッド5を移動させて、ワークWを回転させながら信号波形情報を取得し、取得した信号波形情報に基づいて、ワーク保持部32に保持されたワークWの形状を特定するものであってもよい。そして、切削加工装置1が、特定したワークWの形状に基づいて、加工ステップで使用する工具20の種類を特定するものであってもよい。
【0045】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、骨の切削加工を行う切削加工装置として好適である。
【符号の説明】
【0047】
1:切削加工装置、3:保持ユニット、5:ヘッド、10:筐体、10b,13a,13b,54a:開口部、11:表示パネル、12:支持部材、13:内装ケース、15:扉、20:工具、21:刃部、31:ユニット本体、32:ワーク保持部、33:工具保持部、34,55,2034:近接センサ、41:ベース、43:ブラケット、44:昇降駆動部、51:主軸駆動部、52:回転主軸、53:チャック、54:ヘッドカバー、71:X方向駆動部、76:Y方向駆動部、81,86:回転駆動部、82:シャフト、100:制御部、101:CPUユニット、102:主記憶部、103:補助記憶部、105:入力部、104,106:インタフェース、107a,107b,107c,107d,107e,107f,107g:駆動回路、109:バス、111:ヘッド制御部、112:保持ユニット制御部、113:信号取得部、114:判定部、115:通知部、121:信号波形記憶部、131:基準信号波形記憶部、141:第1カバー、142:第2カバー、311:第1部位、312:第2部位、341,551:センサ部、342,552:信号出力部、421,721,771:レール、422,722,772:スライダ、JB:B軸、JC:C軸、S1:加工領域、S2:領域、W:ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10