(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183336
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】バックラッシの測定方法、風車の診断方法及びバックラッシの測定装置
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20231220BHJP
F03D 17/00 20160101ALI20231220BHJP
G01M 13/021 20190101ALI20231220BHJP
【FI】
F03D7/04 K
F03D17/00
G01M13/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096886
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】野原 修
(72)【発明者】
【氏名】小森 啓史
【テーマコード(参考)】
2G024
3H178
【Fターム(参考)】
2G024AB02
2G024BA03
2G024CA08
2G024DA09
2G024EA11
2G024EA13
2G024FA02
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB56
3H178CC23
3H178CC25
3H178DD03X
3H178DD43X
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異なる複数の時刻におけるバックラッシのデータを収集できるバックラッシの測定方法を提供する。
【解決手段】バックラッシの測定方法は、接触ステップにおける対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持した状態でリングギヤを第2部分に対して制動し、リングギヤを第2部分に対して制動する制動力よりも弱い駆動力で、対象歯が回転方向第1側とは反対側である回転方向第2側においてリングギヤに接触するまで、対象ピニオン4aを回転方向第2側に回転させて、対象ピニオンの回転量を算出する回転量算出ステップと、回転量算出ステップにおいて算出された対象ピニオンの回転量に基づいて、リングギヤと対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定ステップと、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである対象ピニオンとの間のバックラッシの測定方法であって、
前記対象ピニオンの歯の一つである対象歯を、前記対象ピニオンの回転方向第1側において前記リングギヤに接触させる接触ステップと、
前記接触ステップにおける前記対象歯の前記リングギヤへの接触を維持した状態で前記リングギヤを前記第2部分に対して制動し、前記リングギヤを前記第2部分に対して制動する制動力よりも弱い駆動力で、前記対象歯が前記回転方向第1側とは反対側である回転方向第2側において前記リングギヤに接触するまで、前記対象ピニオンを前記回転方向第2側に回転させて、前記対象ピニオンの回転量を算出する回転量算出ステップと、
前記回転量算出ステップにおいて算出された前記対象ピニオンの回転量に基づいて、前記リングギヤと前記対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定ステップと、を備える、バックラッシの測定方法。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記リングギヤに噛み合うピニオンをそれぞれ有する複数の駆動装置を有し、
前記リングギヤと、前記複数の駆動装置の前記ピニオンの一つである対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する、請求項1に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項3】
前記駆動装置は、前記ピニオンに回転を入力するアクチュエータと、前記アクチュエータから伝達される入力回転を減速して前記ピニオンに伝達する減速機と、を有し、
前記回転量算出ステップにおいて、前記アクチュエータから前記減速機に伝達される入力回転量の測定値から、前記対象ピニオンの回転量を算出する、請求項1又は2に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項4】
前記接触ステップ及び前記回転量算出ステップの少なくともいずれか一方において、前記対象歯の前記リングギヤへの接触を、前記対象ピニオンに前記リングギヤから加わる負荷を測定する負荷センサによって測定される負荷の変化として検出する、請求項1又は2に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項5】
前記駆動装置は、前記ピニオンに回転を入力するアクチュエータを有し、
前記接触ステップは、前記対象歯の前記リングギヤへの接触を、前記負荷センサが測定する負荷の上昇として検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記負荷センサが前記対象歯の前記リングギヤへの接触を検出した場合に、前記アクチュエータから前記対象ピニオンに前記対象ピニオンの回転方向のいずれか一側への回転を入力する入力ステップと、
前記入力ステップにおける回転の入力によって前記負荷センサが測定する負荷が上昇した場合に、前記入力ステップにおいて回転が入力された一側を、前記対象歯が前記リングギヤに接触する前記回転方向第1側として特定する、特定ステップと、を有する、請求項4に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項6】
前記駆動装置は、前記ピニオンの回転を制動する制動部を有し、
前記接触ステップにおいては、前記対象ピニオンを前記制動部によって制動し、且つ前記対象ピニオン以外の前記ピニオンを前記制動部の制動から解放した状態で、前記第2部分を前記第1部分に対して回転させる外力によって、前記対象歯を前記リングギヤに接触させる、請求項1又は2に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項7】
前記駆動装置は、前記ピニオンに回転を入力するアクチュエータと、前記ピニオンの回転を制動する制動部と、を有し、
前記接触ステップにおいては、前記リングギヤを前記第2部分に対して制動した状態で、前記アクチュエータによって前記対象ピニオンを回転させることで、前記対象歯を前記リングギヤに接触させる、請求項1又は2に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項8】
前記駆動装置は、前記ピニオンに回転を入力するアクチュエータを有し、
前記回転量算出ステップにおいては、前記アクチュエータによって、前記対象ピニオンを前記回転方向第2側に回転させる、請求項1又は2に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項9】
前記駆動装置は、前記ピニオンの回転を制動する制動部を有し、
前記接触ステップにおいては、前記対象ピニオンが前記リングギヤに押圧されるように前記対象歯を前記リングギヤに接触させ、前記対象ピニオンを前記制動部によって制動することで前記対象歯の前記リングギヤへの接触を維持し、
前記回転量算出ステップにおいては、前記対象ピニオンを前記制動部の制動から解放し、前記対象ピニオンが前記リングギヤへの押圧から解放されることで生じる復元力によって、前記対象ピニオンを前記回転方向第2側に回転させる、請求項1又は2に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項10】
前記風車は、前記第2部分の前記リングギヤに対する回転を制動する回転ブレーキをさらに備え、
前記回転量算出ステップにおいては、前記回転ブレーキによって前記第2部分の前記リングギヤに対する回転を制動することで、前記リングギヤを前記第2部分に対して制動する、請求項1又は2に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項11】
前記駆動装置は、前記ピニオンの回転を制動する制動部を有し、
前記回転量算出ステップにおいては、前記対象ピニオン以外の前記ピニオンの少なくとも一つを制動部によって制動することで、前記リングギヤを前記第2部分に対して制動する、請求項1又は2に記載のバックラッシの測定方法。
【請求項12】
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである対象ピニオンとの間のバックラッシの測定方法であって、
前記対象ピニオンの歯の一つである対象歯を、前記リングギヤの周方向第1側において前記リングギヤに接触させる接触ステップと、
前記接触ステップにおける前記対象歯の前記リングギヤへの接触を維持した状態で前記対象ピニオンの回転を制動し、前記対象ピニオンを制動する制動力よりも弱い駆動力で、前記対象歯が前記周方向第1側とは反対側である周方向第2側において前記リングギヤに接触するまで、前記駆動機構を前記周方向第2側に回転させて、前記駆動機構の回転量を算出する駆動機構回転量算出ステップと、
前記駆動機構回転量算出ステップにおいて算出された前記駆動機構の回転量に基づいて、前記リングギヤと前記対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定ステップと、を備える、バックラッシの測定方法。
【請求項13】
請求項1、2又は12に記載のバックラッシの測定方法を、第1の時刻において実行して、前記第1の時刻におけるバックラッシを測定する第1測定ステップと、
前記バックラッシの測定方法を、前記第1の時刻より後の第2の時刻において実行して、前記第2の時刻におけるバックラッシを測定する第2測定ステップと、
前記第1の時刻におけるバックラッシと前記第2の時刻におけるバックラッシとに基づいて前記風車の状態を診断する診断ステップと、を備える、風車の診断方法。
【請求項14】
前記診断ステップにおいては、前記第1の時刻におけるバックラッシから前記第2の時刻におけるバックラッシを引いた差を、前記第1の時刻から前記第2の時刻までに前記リングギヤ及び前記対象ピニオンが摩耗した摩耗幅の合計値として算出し、前記摩耗幅の合計値に基づいて前記風車の状態を診断する、請求項13に記載の風車の診断方法。
【請求項15】
請求項1、2又は12に記載のバックラッシの測定方法を異なる複数の時刻において実行して、バックラッシの時系列データを収集する収集ステップと、
前記収集ステップにおいて収集されたバックラッシの時系列データに基づいて前記風車の状態を診断する診断ステップと、を備える、風車の診断方法。
【請求項16】
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の診断方法であって、
第1の時刻において、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである第1の対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する第1測定ステップと、
前記第1の時刻より後の第2の時刻において、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである第2の対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する第2測定ステップと、
前記第1の時刻におけるバックラッシと前記第2の時刻におけるバックラッシとに基づいて前記風車の状態を診断する診断ステップと、を備える、風車の診断方法。
【請求項17】
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである対象ピニオンとの間のバックラッシを測定するバックラッシの測定装置であって、
前記対象ピニオンの歯の一つである対象歯が前記対象ピニオンの回転方向第1側において前記リングギヤに接触した状態から、前記対象歯が前記回転方向第1側とは反対側である回転方向第2側において前記リングギヤに接触するまで前記回転方向第2側に回転する、前記対象ピニオンの回転量を算出する回転量算出部と、
前記回転量算出部が算出した前記対象ピニオンの回転量に基づいて、前記リングギヤと前記対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定部と、を備える、バックラッシの測定装置。
【請求項18】
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである対象ピニオンとの間のバックラッシを測定するバックラッシの測定装置であって、
前記対象ピニオンの歯の一つである対象歯が前記対象ピニオンの周方向第1側において前記リングギヤに接触した状態から、前記対象歯が前記周方向第1側とは反対側である周方向第2側において前記リングギヤに接触するまで前記周方向第2側に回転する、前記駆動機構の回転量を算出する駆動機構回転量算出部と、
前記駆動機構回転量算出部が算出した前記駆動機構の回転量に基づいて、前記リングギヤと前記対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定部と、を備える、バックラッシの測定装置。
【請求項19】
前記対象ピニオンに前記リングギヤから加わる負荷を測定する負荷センサをさらに備える、請求項17又は18に記載のバックラッシの測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックラッシの測定方法、風車の診断方法及びバックラッシの測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動装置が可動部を駆動する駆動機構が知られている。特に、複数の駆動装置が協働して可動部を駆動する駆動機構が知られている。例えば、特許文献1に記載された風力発電装置は、地上又は洋上に設置され、発電機の支柱となるタワーと、タワー上に設けられ、発電機を内蔵するナセルと、ナセルの一端に設けられ、風を受けて回転エネルギーへ変換するハブ及びブレードからなるロータと、を有している。この風力発電装置はさらに、タワーに設けられたヨーベアリングギアを有するとともに、複数の駆動装置として、ナセルに設けられた複数のヨーアクチュエータを有している。この風力発電装置は、ヨーベアリングギアとヨーアクチュエータのピニオンギヤとを噛み合わせてヨーアクチュエータから回転を出力することにより、タワーに対してナセルをヨー方向に回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リングギヤと、リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置と、を備えた風車において、リングギヤとピニオンとの間のバックラッシを測定することが求められる場合があった。特に、異なる複数の時刻におけるバックラッシのデータを容易に収集できるバックラッシの測定方法が求められていた。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、異なる複数の時刻におけるバックラッシのデータを収集できるバックラッシの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるバックラッシの測定装置は、
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである対象ピニオンとの間のバックラッシを測定するバックラッシの測定装置であって、
前記対象ピニオンの歯の一つである対象歯が前記対象ピニオンの回転方向第1側において前記リングギヤに接触した状態から、前記対象歯が前記回転方向第1側とは反対側である回転方向第2側において前記リングギヤに接触するまで前記回転方向第2側に回転する、前記対象ピニオンの回転量を算出する回転量算出部と、
前記回転量算出部が算出した前記対象ピニオンの回転量に基づいて、前記リングギヤと前記対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定部と、を備える。
【0007】
本発明によるバックラッシの測定装置は、
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである対象ピニオンとの間のバックラッシを測定するバックラッシの測定装置であって、
前記対象ピニオンの歯の一つである対象歯が前記対象ピニオンの周方向第1側において前記リングギヤに接触した状態から、前記対象歯が前記周方向第1側とは反対側である周方向第2側において前記リングギヤに接触するまで前記周方向第2側に回転する、前記駆動機構の回転量を算出する駆動機構回転量算出部と、
前記駆動機構回転量算出部が算出した前記駆動機構の回転量に基づいて、前記リングギヤと前記対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定部と、を備える。
【0008】
本発明によるバックラッシの測定装置において、
前記対象ピニオンに前記リングギヤから加わる負荷を測定する負荷センサをさらに備えてもよい。
【0009】
本発明によるバックラッシの測定方法は、
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである対象ピニオンとの間のバックラッシの測定方法であって、
前記対象ピニオンの歯の一つである対象歯を、前記対象ピニオンの回転方向第1側において前記リングギヤに接触させる接触ステップと、
前記接触ステップにおける前記対象歯の前記リングギヤへの接触を維持した状態で前記リングギヤを前記第2部分に対して制動し、前記リングギヤを前記第2部分に対して制動する制動力よりも弱い駆動力で、前記対象歯が前記回転方向第1側とは反対側である回転方向第2側において前記リングギヤに接触するまで、前記対象ピニオンを前記回転方向第2側に回転させて、前記対象ピニオンの回転量を算出する回転量算出ステップと、
前記回転量算出ステップにおいて算出された前記対象ピニオンの回転量に基づいて、前記リングギヤと前記対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定ステップと、を備える。
【0010】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記駆動機構は、前記リングギヤに噛み合うピニオンをそれぞれ有する複数の駆動装置を有し、
前記リングギヤと、前記複数の駆動装置の前記ピニオンの一つである対象ピニオンとの間のバックラッシを測定してもよい。
【0011】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記駆動装置は、前記ピニオンに回転を入力するアクチュエータと、前記アクチュエータから伝達される入力回転を減速して前記ピニオンに伝達する減速機と、を有し、
前記回転量算出ステップにおいて、前記アクチュエータから前記減速機に伝達される入力回転量の測定値から、前記対象ピニオンの回転量を算出してもよい。
【0012】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記接触ステップ及び前記回転量算出ステップの少なくともいずれか一方において、前記対象歯の前記リングギヤへの接触を、前記対象ピニオンに前記リングギヤから加わる負荷を測定する負荷センサによって測定される負荷の変化として検出してもよい。
【0013】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記駆動装置は、前記ピニオンに回転を入力するアクチュエータを有し、
前記接触ステップは、前記対象歯の前記リングギヤへの接触を、前記負荷センサが測定する負荷の上昇として検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて前記負荷センサが前記対象歯の前記リングギヤへの接触を検出した場合に、前記アクチュエータから前記対象ピニオンに前記対象ピニオンの回転方向のいずれか一側への回転を入力する入力ステップと、
前記入力ステップにおける回転の入力によって前記負荷センサが測定する負荷が上昇した場合に、前記入力ステップにおいて回転が入力された一側を、前記対象歯が前記リングギヤに接触する前記回転方向第1側として特定する、特定ステップと、を有してもよい。
【0014】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記駆動装置は、前記ピニオンの回転を制動する制動部を有し、
前記接触ステップにおいては、前記対象ピニオンを前記制動部によって制動し、且つ前記対象ピニオン以外の前記ピニオンを前記制動部の制動から解放した状態で、前記第2部分を前記第1部分に対して回転させる外力によって、前記対象歯を前記リングギヤに接触させてもよい。
【0015】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記駆動装置は、前記ピニオンに回転を入力するアクチュエータと、前記ピニオンの回転を制動する制動部と、を有し、
前記接触ステップにおいては、前記リングギヤを前記第2部分に対して制動した状態で、前記アクチュエータによって前記対象ピニオンを回転させることで、前記対象歯を前記リングギヤに接触させてもよい。
【0016】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記駆動装置は、前記ピニオンに回転を入力するアクチュエータを有し、
前記回転量算出ステップにおいては、前記アクチュエータによって、前記対象ピニオンを前記回転方向第2側に回転させてもよい。
【0017】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記駆動装置は、前記ピニオンの回転を制動する制動部を有し、
前記接触ステップにおいては、前記対象ピニオンが前記リングギヤに押圧されるように前記対象歯を前記リングギヤに接触させ、前記対象ピニオンを前記制動部によって制動することで前記対象歯の前記リングギヤへの接触を維持し、
前記回転量算出ステップにおいては、前記対象ピニオンを前記制動部の制動から解放し、前記対象ピニオンが前記リングギヤへの押圧から解放されることで生じる復元力によって、前記対象ピニオンを前記回転方向第2側に回転させてもよい。
【0018】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記風車は、前記第2部分の前記リングギヤに対する回転を制動する回転ブレーキをさらに備え、
前記回転量算出ステップにおいては、前記回転ブレーキによって前記第2部分の前記リングギヤに対する回転を制動することで、前記リングギヤを前記第2部分に対して制動してもよい。
【0019】
本発明によるバックラッシの測定方法において、
前記駆動装置は、前記ピニオンの回転を制動する制動部を有し、
前記回転量算出ステップにおいては、前記対象ピニオン以外の前記ピニオンの少なくとも一つを制動部によって制動することで、前記リングギヤを前記第2部分に対して制動してもよい。
【0020】
本発明によるバックラッシの測定方法は、
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである対象ピニオンとの間のバックラッシの測定方法であって、
前記対象ピニオンの歯の一つである対象歯を、前記リングギヤの周方向第1側において前記リングギヤに接触させる接触ステップと、
前記接触ステップにおける前記対象歯の前記リングギヤへの接触を維持した状態で前記対象ピニオンの回転を制動し、前記対象ピニオンを制動する制動力よりも弱い駆動力で、前記対象歯が前記周方向第1側とは反対側である周方向第2側において前記リングギヤに接触するまで、前記駆動機構を前記周方向第2側に回転させて、前記駆動機構の回転量を算出する駆動機構回転量算出ステップと、
前記駆動機構回転量算出ステップにおいて算出された前記駆動機構の回転量に基づいて、前記リングギヤと前記対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する測定ステップと、を備える。
【0021】
本発明による風車の診断方法は、
上記記載のバックラッシの測定方法を、第1の時刻において実行して、前記第1の時刻におけるバックラッシを測定する第1測定ステップと、
前記バックラッシの測定方法を、前記第1の時刻より後の第2の時刻において実行して、前記第2の時刻におけるバックラッシを測定する第2測定ステップと、
前記第1の時刻におけるバックラッシと前記第2の時刻におけるバックラッシとに基づいて前記風車の状態を診断する診断ステップと、を備える。
【0022】
本発明による風車の診断方法において、
前記診断ステップにおいては、前記第1の時刻におけるバックラッシから前記第2の時刻におけるバックラッシを引いた差を、前記第1の時刻から前記第2の時刻までに前記リングギヤ及び前記対象ピニオンが摩耗した摩耗幅の合計値として算出し、前記摩耗幅の合計値に基づいて前記風車の状態を診断してもよい。
【0023】
本発明による風車の診断方法は、
上記記載のバックラッシの測定方法を異なる複数の時刻において実行して、バックラッシの時系列データを収集する収集ステップと、
前記収集ステップにおいて収集されたバックラッシの時系列データに基づいて前記風車の状態を診断する診断ステップと、を備えてもよい。
【0024】
本発明による風車の診断方法は、
風車の第1部分に固定されたリングギヤと、風車の第2部分に固定され、前記リングギヤに噛み合うピニオンを有する駆動装置を有し、前記リングギヤの周方向に沿って回転することで前記第1部分に対して前記第2部分を駆動する駆動機構と、を備えた風車の診断方法であって、
第1の時刻において、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである第1の対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する第1測定ステップと、
前記第1の時刻より後の第2の時刻において、前記リングギヤと、前記駆動装置の前記ピニオンである第2の対象ピニオンとの間のバックラッシを測定する第2測定ステップと、
前記第1の時刻におけるバックラッシと前記第2の時刻におけるバックラッシとに基づいて前記風車の状態を診断する診断ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、異なる複数の時刻におけるバックラッシのデータを収集できるバックラッシの測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態における、風車の構成例を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態における、駆動機構を示す上面図である。
【
図3】第1実施形態における、駆動装置の構成例を示す図である。
【
図4】第1実施形態における、リングギヤに対する複数の駆動装置の位置の一例を示す上面図である。
【
図5A】第1実施形態における、対象駆動装置の制動部及びアクチュエータ、並びに回転ブレーキの動作制御方法を示す図である。
【
図5B】第1実施形態における、対象駆動装置以外の駆動装置の制動部及びアクチュエータの動作制御方法を示す図である。
【
図6A】変形例1における、対象駆動装置の制動部及びアクチュエータ、並びに回転ブレーキの動作制御方法を示す図である。
【
図6B】変形例1における、対象駆動装置以外の駆動装置の制動部及びアクチュエータの動作制御方法を示す図である。
【
図7A】変形例2における、対象駆動装置の制動部及びアクチュエータ、並びに回転ブレーキの動作制御方法を示す図である。
【
図7B】変形例2における、対象駆動装置以外の駆動装置の制動部及びアクチュエータの動作制御方法を示す図である。
【
図8A】変形例3における、対象駆動装置の制動部及びアクチュエータ、並びに回転ブレーキの動作制御方法を示す図である。
【
図8B】変形例3における、対象駆動装置以外の駆動装置の制動部及びアクチュエータの動作制御方法を示す図である。
【
図9】変形例4における、接触ステップの様子を示す上面図である。
【
図10】変形例4における、駆動機構回転量算出ステップの様子を示す上面図である。
【
図11】変形例5における、収集ステップにおいて収集されたバックラッシの時系列データを表示するグラフの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、本発明の第1実施形態に係るバックラッシの測定方法が適用される駆動機構1を備える風車10について説明する。
図1は、風車10の構成例を示す斜視図である。風車10は、風車本体101を備える。風車本体101は、タワー102と、ナセル103と、ロータ104(主軸部)と、複数のブレード105(羽根)とを備える。タワー102は、陸上又は海上において、鉛直方向の上向きに延びる。
【0028】
風車10は、第1部分5と、第1部分5に対して駆動される第2部分6と、を備える。第1実施形態においては、風車本体101のタワー102が第1部分5に相当する。また、風車本体101のナセル103が第2部分6に相当する。また、風車10は、風車本体101に加えて駆動機構1を備える。駆動機構1は、風車10の第2部分6に固定されて、第1部分5に対して第2部分6を駆動する。第1実施形態においては、ナセル103が、タワー102の上部に対して回転可能なように、タワー102に取り付けられている。すなわち、タワー102とナセル103との接続部が、タワー102に対してナセル103を回転可能な可動部となっている。そして、駆動機構1は、ナセル103に固定されて、タワー102に対してナセル103を駆動する。駆動機構1は、ナセル103を、タワー102の長手方向を回転軸として回転させるように駆動する。これによって、ナセル103は、タワー102に対してヨー方向(YAW)に回転する。
【0029】
ロータ104は、ナセル103においてロール方向(ROLL)に回転する。複数枚(例えば、3枚)のブレード105は、ロール方向の回転軸から放射方向に延びるように、互いに等角度でロータ104に備えられる。
【0030】
駆動機構1について、より詳細に説明する。
図2は、第1実施形態における駆動機構1を示す上面図である。風車10は、第1部分5(タワー102)に固定されたリングギヤ106をさらに備えている。リングギヤ106は、複数の歯107を有する。
図2に示す例において、リングギヤ106は、複数の歯107を有する環状のギヤである。また、駆動機構1は、駆動装置2を有する。駆動装置2は、リングギヤ106に噛み合うピニオン4を有する。第1実施形態における駆動機構1は、複数の駆動装置2を有している。複数の駆動装置2は、リングギヤ106に噛み合うピニオン4をそれぞれ有する。
図2に示す例において、複数の駆動装置2のピニオン4はそれぞれ複数の歯41を有し、リングギヤ106の歯107とピニオン4の歯41とが噛み合っている。また、複数の駆動装置2は、
図2には現れないが後述するように、それぞれピニオン4を駆動する駆動部3を有する。
【0031】
第1実施形態において、駆動装置2は、第2部分6(ナセル103)に固定されて、ヨー駆動力を発生させる。第1実施形態においては、4台の駆動装置2が第2部分6(ナセル103)に固定されている。駆動装置2がナセル103に取り付けられる場合、駆動部3は、ナセル103の内部に収容されていてもよい。以下、駆動装置を総称する場合には単に「駆動装置2」と記載する。第1実施形態において、駆動装置2は、ナセル103に、複数のボルト35で固定される。複数のボルト35は、円周状に配置される。この場合、ピニオン4の歯41がリングギヤ106に接触すると、リングギヤ106からピニオン4に負荷が加わることで、ボルト35には歪が生じる。
【0032】
駆動機構1は、リングギヤ106の周方向D1に沿って回転することで、第1部分5(タワー102)に対して第2部分6(ナセル103)を駆動する。
図2に示す例では、タワー102の内壁にリングギヤ106が形成されている。この場合、
図2に示すように、リングギヤ106は、複数の歯107として、内周に設けられた複数の内歯を有する。そして、駆動装置2のピニオン4が、タワー102の内壁に形成されたリングギヤ106に噛み合う。図示はしないが、タワー102の外壁にリングギヤ106が形成されていてもよい。この場合、リングギヤ106は、複数の歯107として、外周に設けられた複数の外歯を有する。そして、駆動装置2のピニオン4は、タワー102の外壁に形成されたリングギヤ106に噛み合う。
【0033】
各駆動装置2において、駆動部3はピニオン4を駆動し、回転軸線C1を中心として回転させる。ピニオン4の回転によって、各駆動装置2はリングギヤ106の周方向D1に沿って移動する。複数の駆動装置2がともに周方向D1に移動することによって、駆動機構1が固定されている第2部分6(ナセル103)が、回転中心C2を中心として、リングギヤ106が固定されている第1部分5(タワー102)に対してヨー方向に回転する。リングギヤ106の周方向D1の一側を、周方向第1側D11と称する。また、周方向D1の周方向第1側D11とは反対側を、周方向第2側D12と称する。
【0034】
また、風車10は、第2部分6(ナセル103)のリングギヤ106に対する回転を制動する回転ブレーキをさらに備える。第1実施形態において、回転ブレーキは、第2部分6(ナセル103)に取り付けられてリングギヤ106に対して制動力を与える油圧ブレーキである。油圧ブレーキは、例えば、キャリパーブレーキ機構である。油圧ブレーキは、図示しない油圧ブレーキ駆動部と、
図2に示す摩擦体50とを有する。油圧ブレーキ駆動部は、外部から供給された制御信号に応じて摩擦体50を
図2中のピニオン4の回転軸線C1が延びる方向に平行な方向(
図2の紙面に垂直な方向)に移動させる。油圧ブレーキ駆動部は、摩擦体50をリングギヤ106に押し当てることでリングギヤ106に制動力を印加する。回転ブレーキは、リングギヤ106に付与する制動力を調整できることが好ましい。
【0035】
図3は、駆動装置2の一つの構成例を示す図である。なお、
図3は、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41については記載を省略した概略図である。
図3に示す例では、リングギヤ106はタワー102の上部に備えられている。
【0036】
駆動装置2は、ピニオン4に回転を入力するアクチュエータ30を有する。また、駆動装置2は、アクチュエータ30から伝達される入力回転を減速してピニオン4に伝達する減速機32を有する。第1実施形態においては、複数の駆動装置2が、アクチュエータ30と減速機32とをそれぞれ有する。第1実施形態においては、駆動装置2のうち駆動部3が、アクチュエータ30と減速機32とを有している。また、駆動装置2は、ピニオン4の回転を制動する制動部31を有する。第1実施形態においては、複数の駆動装置2が、制動部31をそれぞれ有する。第1実施形態においては、駆動装置2のうち駆動部3が、制動部31を有している。また、駆動部3は、さらに軸33を備える。軸33は、減速機32よりもピニオン4側に位置する第1軸部33aと、減速機32よりもアクチュエータ30側に位置する第2軸部33bと、を有する。
【0037】
アクチュエータ30は、例えばモータである。アクチュエータ30は、アクチュエータ30に供給された電流に応じて、軸33の長手方向を回転軸として軸33を回転させる。アクチュエータ30は、軸33の第2軸部33bを回転させる。
【0038】
また、第1実施形態において、制動部31は、電磁ブレーキを用いて、軸33の回転速度を抑える。制動部31は、電磁ブレーキを用いて、軸33の回転の停止状態を維持してもよい。
【0039】
減速機32は、軸33の第2軸部33bの回転を、減速しつつ軸33の第1軸部33aに伝達する。減速機32は、減速機構としてのギヤを備える。減速機32は、減速機32に備えられたギヤを用いて、軸33の第1軸部33aの回転速度を定める。軸33の第1軸部33aは、アクチュエータ30に駆動されることによって、減速機32によって定められた回転速度で回転する。軸33は、アクチュエータ30に駆動されることによって、所定のトルク(軸トルク)で回転する。ピニオン4は、軸33の第1軸部33aの回転量に応じて、リングギヤ106の歯107と噛み合いながら回転する。また、ピニオン4は、駆動部3のうち軸33の第1軸部33aの端部に設けられている。このため、ピニオン4は軸33の第1軸部33aの回転に伴って回転する。アクチュエータ30が軸33を介してピニオン4を回転させることによって、上述のように駆動機構1がリングギヤ106の周方向D1に沿って回転し、第2部分6(ナセル103)が第1部分5(タワー102)に対して駆動される。
【0040】
続いて、上述した風車10の、リングギヤ106と駆動装置2のピニオン4との間のバックラッシの測定方法について説明する。また、リングギヤ106と駆動装置2のピニオン4との間のバックラッシを測定するバックラッシの測定装置7について説明する。駆動装置2のピニオン4のうち、バックラッシを測定する対象とするピニオン4を、対象ピニオン4aと称する。また、駆動装置2のうち、対象ピニオン4aを有する駆動装置2を、対象駆動装置2aと称する。
【0041】
まず、バックラッシについて説明する。バックラッシとは、噛み合う2つの歯車において、第1の歯車の歯が、第1の歯車の回転方向の一側の歯面において第2の歯車の歯に接触しているときの、第1の歯車の当該歯の当該回転方向の一側とは反対側の歯面と、当該歯面に向かい合う第2の歯車の歯との間の隙間の寸法である。
図4は、
図2に示す風車10のうち、対象ピニオン4aの歯41とリングギヤ106の歯107とが噛み合っている部分を拡大して示す図である。
図4に示す例では、対象ピニオン4aの歯41の一つである対象歯41aが、対象ピニオン4aの回転方向D2の一側の歯面において、リングギヤ106の第1の歯107aに接触している。バックラッシは、対象ピニオン4aの対象歯41aの回転方向D2の一側とは反対側の歯面と、当該歯面に向かい合うリングギヤ106の第2の歯107bとの間の隙間Hの寸法である。特に、第1実施形態において測定されるバックラッシは、法線方向バックラッシである。
図4に示す例において、法線方向バックラッシは、対象ピニオン4aの対象歯41aの回転方向D2の一側とは反対側の歯面と、当該歯面に向かい合うリングギヤ106の第2の歯107bとの間の隙間Hの、最小幅w1である。
【0042】
次に、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定することの意義について説明する。
【0043】
風車10が使用され、駆動機構1によって第1部分5に対して第2部分6が駆動されると、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗が進むと考えられる。リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗量が大きくなるにつれて、駆動機構1が第2部分6を駆動する際に、駆動機構1及び第2部分6の動きのがたつきが大きくなる。これに対して、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗量を計測することによって、駆動機構1及び第2部分6の動きのがたつきの大きさを把握できる。また、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗量が大きくなるにつれて、リングギヤ106及びピニオン4において疲労破壊が生じ易くなる。これに対して、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗量を計測することによって、リングギヤ106及びピニオン4における疲労破壊の生じ易さを把握できる。また、リングギヤ106及びピニオン4の表面は、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗を抑制するために、硬化層で形成されている場合がある。この場合に、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗が一定以上進むと、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41において硬化層が摩耗し尽くして、リングギヤ106及びピニオン4の強度が低下するおそれがある。これに対して、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗量を計測することによって、硬化層の摩耗量を計測できる。以上より、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗量を計測することが望まれている。
【0044】
ここで、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗が進むと、リングギヤ106の歯107と対象ピニオン4aの対象歯41aとの間の隙間Hの寸法であるバックラッシは大きくなる。このため、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定することで、測定されたバックラッシから、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗量を計測できる。
【0045】
特に、異なる複数の時刻においてバックラッシを測定して、異なる複数の時刻におけるバックラッシを収集することによって、リングギヤ106の歯107及びピニオン4の歯41の摩耗量の経時変化を計測できる。これによって、摩耗量の経時変化から、今後のリングギヤ106及びピニオン4の状態を予測して、リングギヤ106及びピニオン4のメンテナンス計画に役立てることができる。摩耗量の経時変化から予測できる今後のリングギヤ106及びピニオン4の状態は、例えば、バックラッシを測定した時刻よりも後の時刻におけるリングギヤ106及びピニオン4の摩耗量である。摩耗量の経時変化から、リングギヤ106及びピニオン4の摩耗量が許容可能な上限を超える時刻を予測してもよい。
【0046】
次に、リングギヤ106と駆動装置2のピニオン4である対象ピニオン4aとの間のバックラッシの測定方法について説明する。一例として、
図2に示すリングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシの測定方法について説明する。また、リングギヤ106と駆動装置2のピニオン4である対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定するバックラッシの測定装置7について説明する。
【0047】
第1実施形態に係るバックラッシの測定方法は、接触ステップと、回転量算出ステップと、測定ステップと、を備える。接触ステップにおいては、対象ピニオン4aの歯41の一つである対象歯41aを、対象ピニオン4aの回転方向第1側D21においてリングギヤ106に接触させる。回転量算出ステップにおいては、接触ステップにおける対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持した状態でリングギヤ106を第2部分6に対して制動し、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する制動力よりも弱い駆動力で、対象歯41aが回転方向第1側D21とは反対側である回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまで、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させて、対象ピニオン4aの回転量を算出する。測定ステップにおいては、回転量算出ステップにおいて算出された対象ピニオン4aの回転量に基づいて、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する。
【0048】
第1実施形態に係る駆動機構1は、複数の駆動装置2を有する。そして、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法においては、リングギヤ106と、複数の駆動装置2のピニオン4の一つである対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する。
【0049】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定装置7は、回転量算出部71と、測定部72と、を備える。回転量算出部71は、対象ピニオン4aの歯41の一つである対象歯41aが対象ピニオン4aの回転方向第1側D21においてリングギヤ106に接触した状態から、対象歯41aが回転方向第1側D21とは反対側である回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまで回転方向第2側D22に回転する、対象ピニオン4aの回転量を算出する。回転量算出部71によって、バックラッシの測定方法の回転量算出ステップを行い得る。測定部72は、回転量算出部71が算出した対象ピニオン4aの回転量に基づいて、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する。測定部72によって、バックラッシの測定方法の測定ステップを行い得る。
【0050】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定装置7は、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73をさらに備える。負荷センサ73は、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定できるセンサであれば、特に限られない。
【0051】
第1実施形態に係る負荷センサ73は、対象歯41aがリングギヤ106に接触している場合に、対象歯41aが回転方向D2のいずれの側においてリングギヤ106に接触しているかを検出できる。一例として、負荷センサ73は、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷の方向を特定することによって、対象歯41aが回転方向D2のいずれの側においてリングギヤ106に接触しているかを検出できる。
【0052】
なお、バックラッシの測定方法においては、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する方法として、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73を用いる方法に代えて、アクチュエータ30に流れる電流の増減を検出する方法を採用してもよい。この方法では、例えば、アクチュエータ30によってピニオン4を回転させている場合に、ピニオン4に負荷が加わると、ピニオン4に負荷が加わっていないときよりも、ピニオン4を回転させるためにアクチュエータ30に流す電流が増加することを利用する。この方法では、例えば、ピニオン4に負荷が加わっていないときよりも、アクチュエータ30に流れる電流が増加したときに、ピニオン4に負荷が加わったとみなす。
【0053】
第1実施形態に係る駆動機構1は、ピニオン4をそれぞれ有する複数の駆動装置2を有している。また、第1実施形態に係るバックラッシの測定装置7は、複数の駆動装置2のピニオン4のそれぞれにリングギヤ106から加わる負荷を測定する、複数の負荷センサ73を有している。
【0054】
第1実施形態に係るバックラッシの測定方法においては、上述した接触ステップ及び回転量算出ステップの少なくともいずれか一方において、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73によって測定される負荷の変化として検出する。
【0055】
第1実施形態に係るバックラッシの測定方法について、より具体的に説明する。第1実施形態に係るバックラッシの測定方法は、例えば、地上又は洋上などの風力発電を行い得る現地に風車10が設置されている場合において、ブレード105が回転しておらず、ブレード105を回転させるのに適した風が吹くのを待っているときに行われる。換言すれば、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法は、例えば風車10の風待ちのときに行われる。
【0056】
図5Aは、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法における、対象駆動装置2aの制動部31及びアクチュエータ30、並びに回転ブレーキの動作制御方法を示す図である。
図5Aには、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法を行う際の、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73が検出する負荷の一例を併せて示している。
図5Bは、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法における、対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31及びアクチュエータ30の動作制御方法を示す図である。
図5Bには、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法を行う際の、対象ピニオン4a以外のピニオン4にリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73が検出する負荷の一例を併せて示している。
【0057】
図5A及び
図5Bに示す例では、バックラッシの測定を開始するよりも前の時刻t0において、複数の駆動装置2のいずれの制動部31もONになっている。換言すれば、時刻t0において、対象ピニオン4a及び対象ピニオン4a以外のピニオン4は、いずれも制動部31によって制動されている。また、時刻t0において、回転ブレーキはONになっている。換言すれば、時刻t0において、回転ブレーキは、第2部分6のリングギヤ106に対する回転を制動している。また、時刻t0において、複数の駆動装置2のいずれのアクチュエータ30も、ピニオン4に回転を入力していない。
【0058】
まず、対象ピニオン4aの対象歯41aをリングギヤ106に接触させる接触ステップについて述べる。第1実施形態に係る接触ステップにおいては、対象ピニオン4aを制動部31によって制動し、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4を制動部31の制動から解放した状態で、第2部分6を第1部分5に対して回転させる外力によって、対象歯41aをリングギヤ106に接触させる。外力は、例えば第2部分6であるナセル103を第1部分5であるタワー102に対して回転させる風である。
【0059】
第1実施形態に係る駆動機構1において、駆動装置2の制動部31のそれぞれは、個別に制御できる。このために、接触ステップにおいて、対象ピニオン4aを制動部31によって制動し、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4を制動部31の制動から解放することができる。
図5A及び
図5Bに示す例では、時刻t0よりも後の時刻t1において、対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31がOFFにされている。また、時刻t1において、対象駆動装置2aの制動部31は、ON状態を維持している。これによって、対象ピニオン4aを制動部31によって制動し、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4を制動部31の制動から解放した状態が形成される。また、時刻t1において、回転ブレーキがOFFにされている。この状態で風車10を放置することによって、風などによる外力により、第2部分6を第1部分5に対して回転させ得る。
【0060】
第2部分6が第1部分5に対して回転すると、ピニオン4の歯41がリングギヤ106に接触する。特に、ピニオン4の歯41は、リングギヤ106の歯107に接触する。接触ステップにおいて、第2部分6が第1部分5に対して回転することでリングギヤ106に接触する対象ピニオン4aの歯41を、対象歯41aと定めることができる。
【0061】
また、制動部31によって制動されている対象ピニオン4aにおいては、対象歯41aがリングギヤ106に接触することによって、リングギヤ106から対象ピニオン4aに負荷が加わる。ここで、第1実施形態に係る接触ステップにおいては、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73によって測定される負荷の変化として検出する。
図5Aに示す例では、時刻t1より後の時刻に、対象歯41aのリングギヤ106への接触によって、負荷センサ73によって測定される負荷が時刻t0以後時刻t1以前よりも上昇している。この場合、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73によって測定される負荷の上昇として検出できる。換言すれば、時刻t1より後の時刻において、負荷センサ73によって測定される負荷が時刻t0以後時刻t1以前よりも上昇していれば、対象歯41aがリングギヤ106に接触していると判断できる。
【0062】
なお、対象ピニオン4a以外のピニオン4は、制動部31の制動から解放されているために、リングギヤ106の歯107と接触すると、リングギヤ106の歯107に押されて回転する。このため、
図5Bに示すように、対象ピニオン4a以外のピニオン4に加わる負荷は、外力によって第2部分6が第1部分5に対して回転しても、大きな変化を示さない。
【0063】
また、第1実施形態に係る負荷センサ73は、対象歯41aが回転方向D2のいずれの側においてリングギヤ106に接触しているかを検出する。接触ステップにおいては、負荷センサ73によって検出された、対象歯41aの、回転方向D2においてリングギヤ106に接触している側を、回転方向第1側D21と定めることができる。
【0064】
以上の接触ステップによって、
図4に示すように、対象ピニオン4aの対象歯41aを回転方向第1側D21においてリングギヤ106に接触させることができる。また、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73によって検出できる。
【0065】
接触ステップの後、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまで対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させて、対象ピニオン4aの回転量を算出する、回転量算出ステップを行う。第1実施形態に係る回転量算出ステップにおいて、対象ピニオン4aは、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から回転が入力されることによって、回転方向第2側D22に回転する。
【0066】
回転量算出ステップにおいては、まず、接触ステップにおける対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持した状態でリングギヤ106を第2部分6に対して制動する。第1実施形態においては、回転量算出ステップにおいて、回転ブレーキによって第2部分6のリングギヤ106に対する回転を制動することで、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する。
図5Aに示す例では、接触ステップにおける対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持した状態で、回転ブレーキがONにされている。これによって、回転ブレーキによって第2部分6のリングギヤ106に対する回転が制動されて、リングギヤ106が第2部分6に対して制動される。
【0067】
また、第1実施形態においては、回転量算出ステップにおいて、対象ピニオン4a以外のピニオン4の少なくとも一つを制動部31によって制動することで、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する。
図5Bに示す例では、接触ステップにおける対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持した状態で、対象駆動装置2a以外の全ての駆動装置2の制動部31がONにされている。これによって、対象ピニオン4a以外の全てのピニオン4が制動部31によって制動されて、リングギヤ106が第2部分6に対して制動される。
【0068】
図5A及び
図5Bに示す例では、時刻t1よりも後の時刻であって、対象歯41aのリングギヤ106への接触が検出された後の時刻である、時刻t2において、回転ブレーキ、及び対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31がONにされている。これにより、回転ブレーキによって第2部分6のリングギヤ106に対する回転が制動され、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4の全てが制動部31によって制動される。これによって、リングギヤ106が第2部分6に対して制動される。図示はしないが、回転量算出ステップにおいて、回転ブレーキによって第2部分6のリングギヤ106に対する回転が制動され、対象ピニオン4a以外のピニオン4は制動部31によって制動されなくてもよい。この場合でも、回転ブレーキによってリングギヤ106を第2部分6に対して制動できる。また、回転量算出ステップにおいて、回転ブレーキによってはリングギヤ106が第2部分6に対して制動されず、対象ピニオン4a以外のピニオン4の少なくとも一つを制動部31によって制動することで、リングギヤ106が第2部分6に対して制動されてもよい。
【0069】
また、回転量算出ステップにおいては、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまで対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させて、対象ピニオン4aの回転量を算出する。
図5Aに示す例では、時刻t2において、対象駆動装置2aの制動部31はON状態を維持している。対象駆動装置2aの制動部31がON状態であっても、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から、制動部31の制動力よりも強い力の回転を入力することによって、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させることができる。図示はしないが、時刻t2において、対象駆動装置2aの制動部31をOFFにした上で、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から回転を入力することによって、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させてもよい。対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させるときは、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する制動力よりも弱い駆動力で、対象ピニオン4aを回転させる。これによって、回転方向第2側D22に回転する対象ピニオン4aは、回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触すると回転を停止する。
図4に示す符号L1を付した破線は、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまで回転した対象ピニオン4aの位置を示す仮想の線である。
【0070】
図5Aに示す例では、リングギヤ106が第2部分6に対して制動される時刻t2に、対象駆動装置2aのアクチュエータ30が、対象ピニオン4aへの回転方向第2側D22への回転の入力を開始している。図示はしないが、リングギヤ106が第2部分6に対して制動された後の時刻に、対象駆動装置2aのアクチュエータ30が、対象ピニオン4aへの回転の入力を開始してもよい。
【0071】
第1実施形態において、対象駆動装置2aのアクチュエータ30と、対象駆動装置2a以外の駆動装置2のアクチュエータ30とは、個別に制御できる。第1実施形態に係るバックラッシの測定方法においては、
図5A及び
図5Bに示すように、対象駆動装置2a以外の駆動装置2のアクチュエータ30による回転の入力は停止しつつ、対象駆動装置2aのアクチュエータ30による回転の入力を行うことによって、対象ピニオン4aを回転させる。これよって、対象ピニオン4a以外のピニオン4を回転させずに、対象ピニオン4aを回転させる。
【0072】
一例として、回転量算出ステップにおいては、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させて、対象歯41aの回転方向第1側D21の歯面がリングギヤ106から離間してから、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまでの、対象ピニオン4aの回転量を算出する。ここで、第1実施形態に係る回転量算出ステップにおいては、対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出する。対象歯41aのリングギヤ106への接触は、例えば、負荷センサ73によって測定される負荷の変化として検出できる。特に、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触したことを、負荷センサ73によって測定される負荷の変化として検出できる。
【0073】
図5Aに示す例では、時刻t2より後の時刻に、負荷センサ73によって測定される負荷が低下している。このため、時刻t2において、対象歯41aの回転方向第1側D21の歯面がリングギヤ106からの離間を開始したとみなすことができる。
【0074】
図5Aに示す例では、時刻t2より後の時刻に、負荷センサ73によって測定される負荷が上昇している。特に、時刻t2より後の時刻t4に、負荷センサ73によって測定される負荷が上昇を開始している。この場合、時刻t4において、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触したとみなし得る。
【0075】
以上より、
図5Aに示す例では、対象歯41aの回転方向第1側D21の歯面がリングギヤ106から離間してから、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまでの、対象ピニオン4aの回転量として、時刻t2から時刻t4までの対象ピニオン4aの回転量を算出できる。
【0076】
第1実施形態においては、回転量算出ステップにおいて、アクチュエータ30から減速機32に伝達される入力回転量の測定値から、対象ピニオン4aの回転量を算出する。特に、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から対象駆動装置2aの減速機32に伝達される入力回転量の測定値から、対象ピニオン4aの回転量を算出する。
【0077】
図3に示す例において、駆動装置2には、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から対象駆動装置2aの減速機32に伝達される入力回転量を測定する、回転センサ34が設けられている。回転センサ34は、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から対象駆動装置2aの減速機32に伝達される入力回転量として、
図3に示す軸33の第2軸部33bの回転量を測定する。
図3に示す例において、回転センサ34は、軸33の第2軸部33bのうち、アクチュエータ30と制動部31との間に位置する部分の回転量を測定する。
【0078】
対象ピニオン4aの回転量は、例えば、時刻t2から時刻t4までにアクチュエータ30から減速機32に伝達された入力回転量の測定値と、減速機32の内部のバックラッシと、減速機32の減速比とから算出できる。
【0079】
回転センサ34は、上述したバックラッシの測定装置7の回転量算出部71に含まれるとみなせる。この場合、回転量算出部71は、回転センサ34によって、対象ピニオン4aの回転量を算出できる。
【0080】
なお、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法のその他の一例として、回転量算出ステップにおいて、対象ピニオン4aの回転量を直接測定するセンサを用いて、対象ピニオン4aの回転量を算出してもよい。この場合、対象ピニオン4aの回転量を直接測定するセンサは、上述したバックラッシの測定装置7の回転量算出部71に含まれるとみなせる。
【0081】
回転量算出ステップの後、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する測定ステップを行う。第1実施形態に係る測定ステップにおいては、回転量算出ステップにおいて算出された対象ピニオン4aの回転量に基づいてバックラッシを算出することで、バックラッシが測定される。第1実施形態に係る測定ステップにおいては、回転量算出ステップにおいて算出された対象ピニオン4aの回転量に基づいて、法線方向バックラッシ、すなわち
図4に示す幅w1を測定する。測定ステップにおけるバックラッシの測定は、測定装置7の測定部72によって実行できる。測定部72は、例えばプログラムを実行することによって、回転量算出ステップにおいて算出された対象ピニオン4aの回転量に基づいてバックラッシを算出する、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。
【0082】
第1実施形態に係るバックラッシの測定方法は、対象ピニオン4aの対象歯41aを、対象ピニオン4aの回転方向第1側D21においてリングギヤ106に接触させる接触ステップと,接触ステップにおける対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持した状態でリングギヤ106を第2部分6に対して制動し、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する制動力よりも弱い駆動力で、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまで、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させて、対象ピニオン4aの回転量を算出する回転量算出ステップと、回転量算出ステップにおいて算出された対象ピニオン4aの回転量に基づいて、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する測定ステップと、を備える。また、第1実施形態に係るバックラッシの測定装置7は、回転量算出部71と、測定部72と、を備える。このようなバックラッシの測定方法及び測定装置7によれば、リングギヤ106と、リングギヤ106に噛み合うピニオン4を有する駆動装置2と、を備えた風車10において、リングギヤ106とピニオン4との間のバックラッシを測定できる。特に、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法によれば、風車10の稼働を停止させて風車10を分解することなく、リングギヤ106とピニオン4との間のバックラッシを測定できる。このため、異なる複数の時刻におけるバックラッシのデータを容易に収集できる。
【0083】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法においては、駆動機構1がリングギヤ106に噛み合うピニオン4をそれぞれ有する複数の駆動装置2を有し、リングギヤ106と、複数の駆動装置2のピニオン4の一つである対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する。第1実施形態に係るバックラッシの測定方法によれば、このように、駆動機構1が複数の駆動装置2を有する場合においても、リングギヤ106と、複数の駆動装置2のピニオン4の一つである対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定できる。
【0084】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法の一例においては、回転量算出ステップにおいて、アクチュエータ30から減速機32に伝達される入力回転量の測定値から、対象ピニオン4aの回転量を算出する。これにより、減速機32によって減速される前の入力回転量を測定するため、入力回転量を測定する回転センサ34として分解能の低いセンサを用いたとしても、必要な精度を確保しつつ入力回転量を測定できる。特に、第1実施形態においては、回転センサ34が、入力回転量として、軸33の第2軸部33bの回転量を測定する。第2軸部33bは、減速機32よりもアクチュエータ30側に位置し、減速機32によって減速される前の回転速度で回転している。このため、第2軸部33bは、減速機32よりもピニオン4側に位置する第1軸部33aよりも、回転量が多い。回転センサ34が、入力回転量として第2軸部33bの回転量を測定することで、第1軸部33aの回転量を測定するよりも、回転センサ34として分解能の低いセンサを用いたとしても、必要な精度を確保しやすい。
【0085】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法においては、接触ステップ及び回転量算出ステップの少なくともいずれか一方において、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73によって測定される負荷の変化として検出する。また、第1実施形態に係るバックラッシの測定装置7は、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73をさらに備える。この特徴の効果について、以下に説明する。対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する方法としては、アクチュエータ30に流れる電流の増減を検出する方法も考えられる。しかしながら、アクチュエータ30に流れる電流の増減を検出する方法は、アクチュエータ30に電流を流している場合にしか、負荷の変化を検出できない。これに対して、バックラッシの測定装置7が負荷センサ73を備え、バックラッシの測定方法において、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73を用いることで、アクチュエータ30に電流を流していない場合においても、対象ピニオン4aの対象歯41aのリングギヤ106への接触を検知して、バックラッシの測定を行い得る。
【0086】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法においては、接触ステップにおいて、対象ピニオン4aを制動部31によって制動し、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4を制動部31の制動から解放した状態で、第2部分6を第1部分5に対して回転させる外力によって、対象歯41aをリングギヤ106に接触させる。この特徴の効果について、以下に説明する。接触ステップにおいて対象歯41aをリングギヤ106に接触させる方法としては、対象駆動装置2aのアクチュエータ30によって対象ピニオン4aを回転させることで、対象歯41aをリングギヤ106に接触させる方法も考えられる。この方法においては、対象ピニオン4a以外のピニオン4の回転は停止した状態で、対象ピニオン4aを回転させる必要がある。このため、対象駆動装置2a以外の駆動装置2のアクチュエータ30による回転の入力は停止しつつ、対象駆動装置2aのアクチュエータ30による回転の入力を行う必要が生じる。これによって、アクチュエータ30のシーケンス制御において、対象駆動装置2aのアクチュエータ30のみを個別に駆動することが可能なシーケンスを用意する必要が生じる。これに対して、上記の特徴によれば、風の力などの、風車10に加わる外力を利用して、ピニオン4の歯41をリングギヤ106に接触させ得る。この場合、対象駆動装置2aのアクチュエータ30のみを個別に駆動することが可能なシーケンスを用意せずとも、接触ステップを行える。
【0087】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法においては、回転量算出ステップにおいて、アクチュエータ30によって、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させる。これにより、回転量算出ステップにおいて、アクチュエータ30によってピニオン4を駆動することで、風などの風車10に加わる外力に依存することなく、安定的に対象歯41aをリングギヤ106に接触させ得る。
【0088】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法の一例においては、回転量算出ステップにおいて、回転ブレーキによって第2部分6のリングギヤ106に対する回転を制動することで、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する。これにより、例えばリングギヤ106を第2部分6に対して制動するために、対象ピニオン4a以外のピニオン4の少なくとも一つを制動部31によって制動することのみを行う場合と比較して、リングギヤ106を第2部分に対してより強固にぶれることなく制動し得る。
【0089】
また、第1実施形態に係るバックラッシの測定方法の一例においては、対象ピニオン4a以外のピニオン4の少なくとも一つを制動部31によって制動することで、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する。特に、対象ピニオン4a以外のピニオン4の全てを制動部31によって制動することで、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する。これにより、回転ブレーキを必要とすることなく、リングギヤ106を第2部分6に対して制動し得る。
【0090】
第1実施形態を具体例により説明してきたが、これらの具体例は第1実施形態を限定しない。上述した第1実施形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行える。
【0091】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0092】
(変形例1)
上述の第1実施形態においては、接触ステップにおいて、第2部分6を第1部分5に対して回転させる外力によって、対象歯41aをリングギヤ106に接触させるバックラッシの測定方法について説明した。しかしながら、接触ステップにおいて対象歯41aをリングギヤ106に接触させる方法は、これに限られない。
図6Aは、変形例1に係るバックラッシの測定方法における、対象駆動装置2aの制動部31及びアクチュエータ30、並びに回転ブレーキの動作制御方法を示す図である。
図6Aには、変形例1に係るバックラッシの測定方法を行う際の、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73が検出する負荷の一例を併せて示している。
図6Bは、変形例1に係るバックラッシの測定方法における、対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31及びアクチュエータ30の動作制御方法を示す図である。
図6Bには、変形例1に係るバックラッシの測定方法を行う際の、対象ピニオン4a以外のピニオン4にリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73が検出する負荷の一例を併せて示している。
【0093】
変形例1に係る接触ステップにおいては、リングギヤ106を第2部分6に対して制動した状態で、アクチュエータ30によって対象ピニオン4aを回転させることで、対象歯41aをリングギヤ106に接触させる。変形例1において、駆動装置2のアクチュエータ30のそれぞれは、個別に制御できる。このために、接触ステップにおいて、対象駆動装置2a以外の駆動装置2のアクチュエータ30による回転の入力は停止しつつ、対象駆動装置2aのアクチュエータ30による回転の入力を行うことができる。
図6A及び
図6Bに示す例では、時刻t1において、対象駆動装置2aの制動部31はON状態を維持している。対象駆動装置2aの制動部31がON状態であっても、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から、制動部31の制動力よりも強い力の回転を入力することによって、対象ピニオン4aを回転させることができる。図示はしないが、時刻t1において、対象駆動装置2aの制動部31をOFFにし、対象ピニオン4aを制動部31の制動から解放した上で、対象駆動装置2aのアクチュエータ30による回転の入力を行ってもよい。また、時刻t1において、回転ブレーキは、ON状態を維持している。また、時刻t1において、対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31は、ON状態を維持している。これによって、時刻t1において、リングギヤ106は第2部分6に対して制動されている。なお、変形例1に係る接触ステップにおいてリングギヤ106を第2部分6に対して制動する方法は、
図6A及び
図6Bに示す例に限られない。例えば、接触ステップにおいて、回転ブレーキによって第2部分6のリングギヤ106に対する回転が制動され、対象ピニオン4a以外のピニオン4は制動部31によって制動されなくてもよい。この場合でも、回転ブレーキによってリングギヤ106を第2部分6に対して制動できる。また、接触ステップにおいて、回転ブレーキによってはリングギヤ106が第2部分6に対して制動されず、対象ピニオン4a以外のピニオン4の少なくとも一つを制動部31によって制動することで、リングギヤ106が第2部分6に対して制動されてもよい。
【0094】
変形例1に係る接触ステップにおいては、上述した状態で、アクチュエータ30によって対象ピニオン4aを回転させる。アクチュエータ30によって対象ピニオン4aを回転方向第1側D21に回転させることによって、対象ピニオン4aの対象歯41aを、対象ピニオン4aの回転方向第1側D21においてリングギヤ106に接触させることができる。
【0095】
変形例1に係る接触ステップにおいても、第1実施形態に係る接触ステップと同様に、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73によって測定される負荷の上昇として検出する。変形例1に係る接触ステップにおいては、対象歯41aのリングギヤ106への接触が検出された後に、対象駆動装置2aのアクチュエータ30の、対象ピニオン4aへの回転方向第1側D21への回転の入力を停止させる。
図6Aに示す例では、時刻t1よりも後の時刻t5に、対象駆動装置2aのアクチュエータ30の対象ピニオン4aへの回転の入力を停止させている。変形例1に係るバックラッシの測定方法においては、時刻t5以後に、回転量算出ステップが開始される。
【0096】
変形例1に係る接触ステップにおいては、アクチュエータ30によって対象ピニオン4aを回転させることで、対象歯41aをリングギヤ106に接触させる。このため、アクチュエータ30によって対象ピニオン4aを駆動することで、風などの風車10に加わる外力に依存することなく、安定的に対象歯41aをリングギヤ106に接触させ得る。
【0097】
(変形例2)
上述の第1実施形態においては、負荷センサ73として、対象歯41aがリングギヤ106に接触している場合に、対象歯41aが回転方向D2のいずれの側においてリングギヤ106に接触しているかを検出できる負荷センサ73を用いる例について説明した。かしながら、負荷センサ73は、対象歯41aがリングギヤ106に接触している場合に、対象歯41aが回転方向D2のいずれの側においてリングギヤ106に接触しているかを検出できなくてもよい。変形例2に係るバックラッシの測定方法によれば、負荷センサ73として、対象歯41aが回転方向D2のいずれの側においてリングギヤ106に接触しているかを検出できないものを用いた場合であっても、接触ステップを行うことができる。
【0098】
図7Aは、変形例2に係るバックラッシの測定方法における、対象駆動装置2aの制動部31及びアクチュエータ30、並びに回転ブレーキの動作制御方法を示す図である。
図7Aには、変形例2に係るバックラッシの測定方法を行う際の、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73が検出する負荷の一例を併せて示している。
図7Bは、変形例2に係るバックラッシの測定方法における、対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31及びアクチュエータ30の動作制御方法を示す図である。
図7Bには、変形例2に係るバックラッシの測定方法を行う際の、対象ピニオン4a以外のピニオン4にリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73が検出する負荷の一例を併せて示している。
【0099】
変形例2に係る接触ステップは、検出ステップと、入力ステップと、特定ステップと、を有する。検出ステップにおいては、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73が測定する負荷の変化として検出する。入力ステップにおいては、検出ステップにおいて負荷センサ73が対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出した場合に、アクチュエータ30から対象ピニオン4aに、対象ピニオン4aの回転方向D1のいずれか一側への回転を入力する。特定ステップにおいては、入力ステップにおける回転の入力によって負荷センサ73が測定する負荷が上昇した場合に、入力ステップにおいて回転が入力された一側を、対象歯41aがリングギヤ106に接触する回転方向第1側D21として特定する。
【0100】
変形例2に係る接触ステップにおいても、第1実施形態に係る接触ステップと同様に、対象ピニオン4aを制動部31によって制動し、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4を制動部31の制動から解放した状態で、第2部分6を第1部分5に対して回転させる外力によって、対象歯41aをリングギヤ106に接触させる。
【0101】
変形例2に係る接触ステップにおいては、検出ステップにおいて、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73が測定する負荷の変化として検出する。変形例2に係る検出ステップにおいて対象歯41aのリングギヤ106への接触を負荷センサ73によって検出する方法は、第1実施形態に係る接触ステップにおいて負荷センサ73を用いて対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出する方法と同様である。すなわち、変形例2に係る接触ステップにおいても、第1実施形態に係る接触ステップと同様に、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73によって測定される負荷の上昇として検出できる。
【0102】
検出ステップにおいて負荷センサ73が対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出した場合に、アクチュエータ30から対象ピニオン4aに、対象ピニオン4aの回転方向D1のいずれか一側への回転を入力する、入力ステップを行う。
図7Aに示す例では、時刻t1よりも後の時刻t6において、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から対象ピニオン4aに、対象ピニオン4aの回転方向D1の一側への回転を入力している。
図7Aに示す例では、時刻t6において、対象駆動装置2aの制動部31はON状態を維持している。対象駆動装置2aの制動部31がON状態であっても、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から、制動部31の制動力よりも強い力の回転を入力することによって、対象ピニオン4aを回転させることができる。図示はしないが、時刻t6において、対象駆動装置2aの制動部31をOFFにした上で、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から回転を入力することによって、対象ピニオン4aを回転させてもよい。
【0103】
入力ステップにおいては、リングギヤ106を第2部分6に対して制動した状態で、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から対象ピニオン4aに回転を入力する。
図7Aに示す例では、時刻t6において、回転ブレーキ、及び対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31がONにされている。これにより、回転ブレーキによって第2部分6のリングギヤ106に対する回転が制動され、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4の全てが制動部31によって制動される。これによって、時刻t6において、リングギヤ106は第2部分6に対して制動される。
【0104】
特定ステップにおいては、入力ステップにおける回転の入力によって負荷センサ73が測定する負荷が上昇した場合に、入力ステップにおいて回転が入力された一側を、対象歯41aがリングギヤ106に接触する回転方向第1側D21として特定する。
図7Aに示す例では、時刻t6において、アクチュエータ30から対象ピニオン4aに、対象ピニオン4aの回転方向D1の一側への回転の入力を開始することによって、時刻t6以後に、対象ピニオン4aに加わる負荷が上昇している。この場合、対象歯41aが、入力ステップにおいて回転が入力された一側においてリングギヤ106に接触していたために、対象ピニオン4aに回転が入力されることで当該接触箇所において対象歯41aがリングギヤ106に押し付けられて、対象ピニオン4aに加わる負荷が上昇したと考えられる。このため、
図7Aに示すように対象ピニオン4aに加わる負荷が上昇した場合、入力ステップにおいて回転が入力された一側を、対象歯41aがリングギヤ106に接触する回転方向第1側D21として特定できる。
【0105】
変形例2に係るバックラッシの測定方法においては、特定ステップの後に、回転量算出ステップが開始される。回転量算出ステップにおいては、対象歯41aが、特定ステップにおいて特定された回転方向第1側D21とは反対側である回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまで、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させて、対象ピニオン4aの回転量を算出する。
図7Aに示す例では、時刻t6よりも後の時刻t7に、アクチュエータ30から対象ピニオン4aに入力される回転の回転方向を、回転方向第1側D21から回転方向第2側D22に切り替えている。これによって、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させて、対象ピニオン4aの回転量を算出できる。
【0106】
変形例2に係る接触ステップは、上述した検出ステップと、入力ステップと、特定ステップと、を有する。このため、負荷センサ73として、対象歯41aが、対象ピニオン4aの回転方向D2のいずれの側からリングギヤ106に接触しているのかまでは検出できないセンサを用いた場合であっても、対象ピニオン4aが回転方向D2のいずれの側からリングギヤ106に接触しているのかを特定できる。変形例2においては、負荷センサ73として、例えば対象ピニオン4aを有する対象駆動装置2aをナセル103に固定するボルト35の歪量を測定する、ボルトセンサを用いることができる。歪量とは、変形量である。ボルトセンサは、複数のボルト35の少なくとも一つに備えられる。対象ピニオン4aの対象歯41aがリングギヤ106に接触すると、リングギヤ106から対象ピニオン4aに負荷が加わることで、ボルト35には歪が生じる。このため、負荷センサ73としてボルトセンサを用いて、ボルト35の歪量を測定することで、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定できる。負荷センサ73としてボルトセンサを用いる場合、既に組み立てられている風車10に、後付けで負荷センサ73(ボルトセンサ)を取り付けることが容易となる。
【0107】
(変形例3)
上述の第1実施形態及び各変形例においては、回転量算出ステップにおいて、対象駆動装置2aのアクチュエータ30から回転を入力することによって、対象ピニオン4aを回転させる例について説明した。しかしながら、回転量算出ステップにおいて対象ピニオン4aを回転させる方法は、これに限られない。
図8Aは、変形例3に係るバックラッシの測定方法における、対象駆動装置2aの制動部31及びアクチュエータ30、並びに回転ブレーキの動作制御方法を示す図である。
図8Aには、変形例3に係るバックラッシの測定方法を行う際の、対象ピニオン4aにリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73が検出する負荷の一例を併せて示している。
図8Bは、変形例3に係るバックラッシの測定方法における、対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31及びアクチュエータ30の動作制御方法を示す図である。
図8Bには、変形例3に係るバックラッシの測定方法を行う際の、対象ピニオン4a以外のピニオン4にリングギヤ106から加わる負荷を測定する負荷センサ73が検出する負荷の一例を併せて示している。
【0108】
変形例3に係る接触ステップにおいては、対象ピニオン4aがリングギヤ106に押圧されるように対象歯41aをリングギヤ106に接触させ、対象ピニオン4aを制動部31によって制動することで対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持する。
【0109】
図8A及び
図8Bに示す例においても、第1実施形態と同様に、接触ステップにおいて、対象ピニオン4aを制動部31によって制動し、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4を制動部31の制動から解放した状態で、第2部分6を第1部分5に対して回転させる外力によって、対象歯41aを回転方向第1側D21においてリングギヤ106に接触させている。
【0110】
ここで、変形例3においては、対象歯41aがリングギヤ106に接触し且つ対象ピニオン4aがリングギヤ106に対して押圧されている状態で、対象ピニオン4aを制動部31によって制動する。また、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する。これによって、対象歯41aがリングギヤ106に接触し且つ対象ピニオン4aがリングギヤ106に対して押圧されている状態を維持できる。一例として、負荷センサ73が対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出している場合において、負荷センサ73によって測定される負荷が一定以上大きくなっているときに、対象歯41aがリングギヤ106に接触し且つ対象ピニオン4aがリングギヤ106に対して押圧されていると判断できる。なお、接触ステップにおいて、対象歯41aは回転方向第1側D21においてリングギヤ106に接触するため、対象ピニオン4aはリングギヤ106に対して回転方向第1側D21に向かって押圧される。
【0111】
図8A及び
図8Bは、対象歯41aのリングギヤ106への接触が検出された後の時刻である時刻t2に、対象歯41aがリングギヤ106に接触し且つ対象ピニオン4aがリングギヤ106に対して押圧されていると判断された場合を示している。
図8Aに示すように、時刻t2において、対象ピニオン4aは制動部31によって制動されている。そして、時刻t2において、回転ブレーキ、及び対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31がONにされる。これにより、回転ブレーキによって第2部分6のリングギヤ106に対する回転が制動され、且つ対象ピニオン4a以外のピニオン4の全てが制動部31によって制動される。これによって、時刻t2において、リングギヤ106は第2部分6に対して制動される。以上の方法によって、対象歯41aがリングギヤ106に接触し且つ対象ピニオン4aがリングギヤ106に対して押圧されている状態で、対象ピニオン4aを制動部31によって制動し、リングギヤ106を第2部分6に対して制動できる。
【0112】
変形例3に係る回転量算出ステップにおいては、対象ピニオン4aを制動部31の制動から解放し、対象ピニオン4aがリングギヤ106への押圧から解放されることで生じる復元力によって、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させる。変形例3においては、上述したように、接触ステップにおいて、対象歯41aがリングギヤ106に接触し且つ対象ピニオン4aがリングギヤ106に対して押圧されている状態で、対象ピニオン4aを制動部31によって制動し、リングギヤ106を第2部分6に対して制動する。その上で、回転量算出ステップにおいて、対象ピニオン4aを制動部31の制動から解放する。
図8Aにおいては、時刻t2よりも後の時刻t8において、対象駆動装置2aの制動部31がOFFにされている。これによって、時刻t8において、対象ピニオン4aを制動部31の制動から解放されている。
【0113】
対象ピニオン4aが制動部31の制動から解放されると、対象ピニオン4aがリングギヤ106への押圧から解放される。これにより、対象ピニオン4aがリングギヤ106への押圧から解放されることで生じる復元力によって、対象ピニオン4aを、回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触するまで、回転させることができる。対象ピニオン4aを制動部31の制動から解放する前の時点で、対象ピニオン4aはリングギヤ106に対して回転方向第1側D21に向かって押圧されている。このため、対象ピニオン4aを制動部31の制動から解放すると、対象ピニオン4aは回転方向第2側D22に回転する。対象ピニオン4aがリングギヤ106への押圧から解放されることで生じる復元力とは、例えば対象ピニオン4aが押圧されることでねじれていた対象駆動装置2aの軸33が、対象ピニオン4aが押圧から解放されるときにねじれを解消する力である。
【0114】
変形例3に係る回転量算出ステップにおいては、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触したことを検出する。変形例3に係る回転量算出ステップにおいて、対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出する方法は、第1実施形態に係る回転量算出ステップにおいて対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出する方法と同様であってもよい。すなわち、変形例3に係る回転量算出ステップにおいて、対象歯41aのリングギヤ106への接触、及び対象歯41aのリングギヤ106からの離間を、負荷センサ73によって測定される負荷の変化として検出してもよい。
【0115】
変形例3に係る回転量算出ステップにおいて、対象歯41aのリングギヤ106への接触は、対象ピニオン4aの回転の変化から検出してもよい。具体的には、対象歯41aがリングギヤ106に接触したことに応じた対象ピニオン4aの回転の変化を検出することによって、対象歯41aがリングギヤ106に接触したことを検出してもよい。対象歯41aがリングギヤ106に接触したことに応じた対象ピニオン4aの回転の変化としては、例えば回転速度の低下、停止ならびに回転方向の逆転が挙げられる。この場合、対象ピニオン4aの回転の変化を、回転量算出部71を用いて検出してもよい。回転量算出部71が、
図3に示すような回転センサ34を含む場合には、対象ピニオン4aの回転の変化を、回転センサ34を用いて検出してもよい。
【0116】
図8A及び
図8Bに示す例において、時刻t8よりも後の時刻t4において、対象歯41aが回転方向第2側D22においてリングギヤ106に接触したことが検出されたとする。この場合、回転量算出ステップにおいては、時刻t8から時刻t4までの対象ピニオン4aの回転量を算出する。
【0117】
変形例3に係る接触ステップにおいては、対象ピニオン4aがリングギヤ106に押圧されるように対象歯41aをリングギヤ106に接触させ、対象ピニオン4aを制動部31によって制動することで対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持する。そして、変形例3に係る回転量算出ステップにおいては、対象ピニオン4aを制動部31の制動から解放し、対象ピニオン4aがリングギヤ106への押圧から解放されることで生じる復元力によって、対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させる。この特徴によれば、以下の効果が得られる。回転量算出ステップにおいて対象ピニオン4aを回転方向第2側D22に回転させるために、上述した第1実施形態、変形例1及び変形例2のように、対象駆動装置2aのアクチュエータ30のみを個別に駆動する必要がない。このため、対象駆動装置2aのアクチュエータ30のみを個別に駆動することが可能なシーケンスを用意せずとも、回転量算出ステップを行える。特に、上記の特徴を有し、且つ接触ステップにおいて、第2部分6を第1部分5に対して回転させる外力によって、対象歯41aをリングギヤ106に接触させるバックラッシの測定方法によれば、以下の効果が得られる。接触ステップ及び回転量算出ステップのいずれにおいても、対象駆動装置2aのアクチュエータ30のみを個別に駆動する必要がない。このため、バックラッシの測定方法の全体を通して、対象駆動装置2aのアクチュエータ30のみを個別に駆動する必要がない。これによって、対象駆動装置2aのアクチュエータ30のみを個別に駆動することが可能なシーケンスを用意する必要なく、バックラッシの測定方法の全体を行い得る。換言すれば、バックラッシの測定方法の全体を、対象駆動装置2aのアクチュエータ30と対象駆動装置2a以外の駆動装置2のアクチュエータ30とが一括して制御され、対象駆動装置2aのアクチュエータ30のみを個別に駆動することができない駆動機構1を用いて行うことができる。
【0118】
(変形例4)
上述の第1実施形態及び各変形例においては、リングギヤ106を第2部分6に対して制動して対象ピニオン4aを回転させ、対象ピニオン4aの回転量に基づいてバックラッシを測定する、バックラッシの測定方法について説明した。また、上述の第1実施形態及び各変形例においては、対象ピニオン4aの回転量を算出する回転量算出部71を備えるバックラッシの測定装置7について説明した。しかしながら、バックラッシの測定方法及びバックラッシの測定装置7は、これに限られない。
【0119】
変形例4に係るバックラッシの測定方法は、接触ステップと、駆動機構回転量算出ステップと、測定ステップと、を備える。接触ステップにおいては、対象ピニオン4aの歯41の一つである対象歯41aを、リングギヤ106の周方向第1側D11においてリングギヤ106に接触させる。駆動機構回転量算出ステップにおいては、接触ステップにおける対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持した状態で対象ピニオン4aの回転を制動し、対象ピニオン4aを制動する制動力よりも弱い駆動力で、対象歯41aが周方向第1側D11とは反対側である周方向第2側D12においてリングギヤ106に接触するまで、駆動機構1を周方向第2側D12に回転させて、駆動機構1の回転量を算出する。測定ステップにおいては、駆動機構回転量算出ステップにおいて算出された駆動機構1の回転量に基づいて、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する。
【0120】
また、変形例4に係るバックラッシの測定装置7は、駆動機構回転量算出部74と、測定部72と、を備える。駆動機構回転量算出部74は、対象ピニオン4aの歯41の一つである対象歯41aが対象ピニオン4aの周方向第1側D11においてリングギヤ106に接触した状態から、対象歯41aが周方向第1側D11とは反対側である周方向第2側D12においてリングギヤ106に接触するまで周方向第2側D12に回転する、駆動機構1の回転量を算出する。測定部72は、駆動機構回転量算出部74が算出した駆動機構1の回転量に基づいて、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する。
【0121】
変形例4に係る接触ステップにおいては、対象ピニオン4aの歯41の一つである対象歯41aを、リングギヤ106の周方向第1側D11においてリングギヤ106に接触させる。
図9は、変形例4に係る接触ステップにおいて、対象ピニオン4aの歯41の一つである対象歯41aを、リングギヤ106の周方向第1側D11においてリングギヤ106に接触させた様子を示す図である。
【0122】
変形例4に係る接触ステップは、上述の第1実施形態及び各変形例において上述した接触ステップと同様の方法によって行うことができる。
図9に示す例においては、対象歯41aが回転方向第1側D21においてリングギヤ106に接触している。これによって、対象歯41aは、周方向第1側D11においてリングギヤ106に接触している。
【0123】
変形例4においては、接触ステップの後に駆動機構回転量算出ステップを行う。変形例4に係る駆動機構回転量算出ステップでは、まず、接触ステップにおける対象歯41aのリングギヤ106への接触を維持した状態で対象ピニオン4aの回転を制動する。対象ピニオン4aの回転は、対象駆動装置2aの制動部31をONにすることによって制動できる。
【0124】
変形例4に係る駆動機構回転量算出ステップでは、対象ピニオン4aの回転を制動した後に、対象ピニオン4aの回転を制動した状態で、対象ピニオン4aを制動する制動力よりも弱い駆動力で、駆動機構1をリングギヤ106に対して周方向第2側D12に回転させる。駆動機構1の周方向第2側D12への回転は、対象歯41aが周方向第2側D12においてリングギヤ106に接触するまで行う。
図10は、
図9に示す駆動機構1を周方向第2側D12に回転させて、対象歯41aを周方向第2側D12においてリングギヤ106に接触させた様子を示す図である。
【0125】
対象駆動装置2a以外の駆動装置2のアクチュエータ30からピニオン4に回転を入力して、対象ピニオン4a以外のピニオン4を回転方向第1側D21に回転させることによって、駆動機構1をリングギヤ106に対して周方向第2側D12に回転させることができる。変形例4において、駆動装置2のアクチュエータ30のそれぞれは、個別に制御できる。駆動機構回転量算出ステップにおいては、対象駆動装置2aの制動部31はONにし且つ対象駆動装置2a以外の駆動装置2の制動部31はOFFにして、対象駆動装置2aのアクチュエータ30からは回転を入力せずに、対象駆動装置2a以外の駆動装置2のアクチュエータ30からピニオン4に回転を入力する。これによって、
図9及び
図10に示すように、回転軸線C1を中心として対象ピニオン4aを回転させることなく、駆動機構1をリングギヤ106に対して回転させることができる。
【0126】
変形例4に係る駆動機構回転量算出ステップにおいては、対象歯41aの周方向第1側D11の歯面がリングギヤ106から離間してから、対象歯41aが周方向第2側D12においてリングギヤ106に接触するまでの、駆動機構1の回転量を算出する。ここで、変形例4に係る駆動機構回転量算出ステップにおいては、対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出する。対象歯41aのリングギヤ106への接触は、上述した第1実施形態及び各変形例の回転量算出ステップにおいて対象歯41aのリングギヤ106への接触を検出する方法と同様の方法によって、検出できる。例えば、変形例4に係る駆動機構回転量算出ステップにおいては、対象歯41aのリングギヤ106への接触を、負荷センサ73によって測定される負荷の変化として検出できる。この場合、変形例4に係る駆動機構回転量算出ステップにおいては、駆動機構1の周方向第2側D12への回転を開始してから、対象歯41aのリングギヤ106への接触が検出されるまでの、駆動機構1の回転量を算出する。
【0127】
図9及び
図10に示す例において、風車10には、駆動機構1のリングギヤ106に対する回転量を算出する、駆動機構回転センサ75が設けられている。一例として、駆動機構回転センサ75は、第1部分5(タワー102)に固定されて、駆動機構1又は駆動機構1とともにリングギヤ106に対して回転する第2部分6(ナセル103)の、リングギヤ106に対する回転量を測定する。この場合、変形例4に係る駆動機構回転量算出ステップでは、駆動機構回転センサ75を用いて駆動機構1の回転量を直接測定することで、駆動機構1の回転量を算出する。
【0128】
駆動機構回転センサ75は、変形例4に係るバックラッシの測定装置7の駆動機構回転量算出部74に含まれるとみなせる。この場合、駆動機構回転量算出部74は、駆動機構回転センサ75によって、駆動機構1の回転量を算出できる。
【0129】
駆動機構回転量算出ステップの後、リングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する測定ステップを行う。変形例4に係る測定ステップにおいては、駆動機構回転量算出ステップにおいて算出された駆動機構1の回転量に基づいてバックラッシを算出することで、バックラッシが測定される。変形例4に係る測定ステップにおいては、駆動機構回転量算出ステップにおいて算出された対象ピニオン4aの回転量に基づいて、法線方向バックラッシ、すなわち
図4に示す幅w1を測定する。測定ステップにおけるバックラッシの測定は、測定装置7の測定部72によって実行できる。変形例4に係る測定部72は、例えば上述した第1実施形態に係る測定装置7の測定部72と同様である。
【0130】
変形例4に係るバックラッシの測定方法は、上述した接触ステップと、駆動機構回転量算出ステップと、測定ステップと、を備える。また、変形例4に係るバックラッシの測定装置7は、上述した駆動機構回転量算出部74と、測定部72と、を備える。このようなバックラッシの測定方法及び測定装置7によっても、リングギヤ106と、リングギヤ106に噛み合うピニオン4を有する駆動装置2と、を備えた風車10において、リングギヤ106とピニオン4との間のバックラッシを測定できる。特に、変形例4に係るバックラッシの測定方法によれば、風車10の稼働を停止させて風車10を分解することなく、リングギヤ106とピニオン4との間のバックラッシを測定できる。このため、異なる複数の時刻におけるバックラッシのデータを容易に収集できる。
【0131】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る風車10の診断方法について説明する。本発明の第2実施形態は、風車10の第1部分5に固定されたリングギヤ106と、風車10の第2部分6に固定され、リングギヤ106に噛み合うピニオン4を有する駆動装置2を有し、リングギヤ106の周方向D1に沿って回転することで第1部分5に対して第2部分6を駆動する駆動機構1と、を備えた風車10の診断方法である。第2実施形態に係る風車10の診断方法は、第1の時刻において、リングギヤ106と、駆動装置2のピニオン4である第1の対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する第1測定ステップと、第1の時刻より後の第2の時刻において、リングギヤ106と、駆動装置2のピニオン4である第2の対象ピニオン4aとの間のバックラッシを測定する第2測定ステップと、第1の時刻におけるバックラッシと第2の時刻におけるバックラッシとに基づいて風車10の状態を診断する診断ステップと、を備える。
【0132】
第1測定ステップ及び第2測定ステップにおけるリングギヤ106と対象ピニオン4aとの間のバックラッシの測定は、それぞれ、第1実施形態及び各変形例において上述したバックラッシの測定方法によって行う。換言すれば、第2実施形態に係る風車10の診断方法は、第1実施形態及び各変形例において上述したバックラッシの測定方法を、第1の時刻において実行して、第1の時刻におけるバックラッシを測定する第1測定ステップと、当該バックラッシの測定方法を、第1の時刻より後の第2の時刻において実行して、第2の時刻におけるバックラッシを測定する第2測定ステップと、第1の時刻におけるバックラッシと第2の時刻におけるバックラッシとに基づいて風車10の状態を診断する診断ステップと、を備える。
【0133】
図4に示すように駆動機構1が複数の駆動装置2を有する場合に、第1測定ステップにおいてバックラッシを測定する第1の対象ピニオン4aと、第2測定ステップにおいてバックラッシを測定する第2の対象ピニオン4aとは、同じピニオン4であってもよいし、異なるピニオン4であってもよい。また、第1の対象ピニオン4aと第2の対象ピニオン4aとを同じピニオン4とする場合に、第1測定ステップにおける対象歯41aと、第2測定ステップにおける対象歯41aとは、同じ歯41であってもよいし、異なる歯41であってもよい。第1の対象ピニオン4aと第2の対象ピニオン4aとを同じピニオン4とするか否か、及び第1測定ステップにおける対象歯41aと第2測定ステップにおける対象歯41aとを同じ歯41とするか否かは、後述する診断ステップにおける診断の目的に応じて適宜定めることができる。
【0134】
診断ステップにおいては、第1の時刻におけるバックラッシと第2の時刻におけるバックラッシとに基づいて風車10の状態を診断する。一例として、診断ステップにおいては、第1の時刻におけるバックラッシから第2の時刻におけるバックラッシを引いた差を、第1の時刻から第2の時刻までにリングギヤ106及び対象ピニオン4aが摩耗した摩耗幅の合計値として算出する。そして、算出された摩耗幅の合計値に基づいて風車10の状態を診断する。
【0135】
一例として、診断ステップにおいては、摩耗幅の合計値の許容可能な上限を設定しておき、算出された摩耗幅の合計値が当該上限を超えるかを判定することによって、風車10の状態を診断してもよい。この場合、算出された摩耗幅の合計値が当該上限を超えていれば、リングギヤ106又はピニオン4を交換又は修理する必要があると診断してもよい。算出された摩耗幅の合計値が当該上限以下であれば、リングギヤ106又はピニオン4を交換又は修理する必要がないと診断してもよい。摩耗幅の合計値の上限は、駆動機構1及び第2部分6の動きのがたつきの大きさを許容可能な範囲に収める観点から設定されてもよい。また、摩耗幅の合計値の上限は、リングギヤ106及びピニオン4の疲労破壊の生じ易さを許容可能な範囲に収める観点から設定されてもよい。また、摩耗幅の合計値の上限は、リングギヤ106及びピニオン4の表面が硬化層で形成されている場合に、硬化層が摩耗し尽くしていないと判断できる範囲に摩耗幅を収める観点から設定されてもよい。
【0136】
第2実施形態に係る風車10の診断方法は、第1測定ステップと、第2測定ステップと、診断ステップと、を備える。このような風車10の診断方法によれば、異なる時刻におけるバックラッシの比較により、風車10のリングギヤ106やピニオン4の状態を診断できる。特に、第1の時刻におけるバックラッシを初期値として、初期値からのバックラッシの増加量を、リングギヤ106又はピニオン4の疲労破壊が生じる危険度や、リングギヤ106又はピニオン4の表面の硬化層の厚みなどと対応付けて検討することができる。これによって、リングギヤ106やピニオン4の健全性を評価できる。
【0137】
また、第2実施形態に係る風車10の診断方法においては、診断ステップにおいて、第1の時刻におけるバックラッシから第2の時刻におけるバックラッシを引いた差を、第1の時刻から第2の時刻までにリングギヤ106及び対象ピニオン4aが摩耗した摩耗幅の合計値として算出し、摩耗幅の合計値に基づいて風車10の状態を診断する。このような風車10の診断方法によれば、第1の時刻から第2の時刻までにリングギヤ106及び対象ピニオン4aが摩耗した摩耗幅の合計値に基づいて、風車10の状態を診断できる。
【0138】
(変形例5)
上述の第2実施形態においては、第1の時刻におけるバックラッシを測定する第1測定ステップ及び第2の時刻におけるバックラッシを測定する第2測定ステップを備える風車10の診断方法について説明した。しかしながら、風車10の診断方法においてバックラッシを測定する時刻は、これに限られない。
【0139】
変形例5に係るバックラッシの測定方法は、リングギヤ106と、駆動装置2のピニオン4である対象ピニオン4aとの間のバックラッシの測定を、異なる複数の時刻において実行して、バックラッシの時系列データを収集する収集ステップと、収集ステップにおいて収集されたバックラッシの時系列データに基づいて風車10の状態を診断する診断ステップと、を備える。
【0140】
変形例5に係る収集ステップにおいて、異なる複数の時刻におけるバックラッシの測定は、それぞれ、第1実施形態及び各変形例において上述したバックラッシの測定方法によって行う。換言すれば、収集ステップにおいては、第1実施形態及び各変形例において上述したバックラッシの測定方法を異なる複数の時刻において実行して、バックラッシの時系列データを収集する。上述の第2実施形態の第1測定ステップ及び第2測定ステップにおけるバックラッシの測定方法に関する説明は、矛盾しない限り、変形例5に係る収集ステップにおいて、異なる複数の時刻においてバックラッシを測定するときのバックラッシの測定方法に関しても適用される。
【0141】
変形例5に係る診断ステップにおいては、収集ステップにおいて収集されたバックラッシの時系列データに基づいて風車10の状態を診断する。
図11は、収集ステップにおいて収集されたバックラッシの時系列データを表示するグラフの一例である。診断ステップにおいては、一例として、
図11に示すように、収集ステップにおいて収集されたバックラッシの時系列データを、グラフとして表示する。
図11に示すグラフの縦軸は、収集ステップにおいて測定されたバックラッシの大きさを表している。
図11に示すグラフの横軸は、収集ステップにおいてバックラッシが測定された時刻の、基準時刻からの時間経過を表している。
【0142】
一例として、変形例5に係る診断ステップにおいては、バックラッシの許容可能な上限を設定する。
図11に示す符号L3を付した破線は、バックラッシの許容可能な上限の一例を示している。バックラッシの上限は、駆動機構1及び第2部分6の動きのがたつきの大きさを許容可能な範囲に収める観点から設定されてもよい。また、バックラッシの上限は、リングギヤ106及びピニオン4の疲労破壊の生じ易さを許容可能な範囲に収める観点から設定されてもよい。また、バックラッシの上限は、リングギヤ106及びピニオン4の表面が硬化層で形成されている場合に、リングギヤ106及びピニオン4の摩耗幅を、硬化層が摩耗し尽くしていないと判断できる範囲に収める観点から設定されてもよい。
【0143】
バックラッシの許容可能な上限を設定する場合、変形例5に係る診断ステップでは、収集ステップにおいてバックラッシが測定されたある時刻に、バックラッシが当該上限を超えているかを判定することによって、バックラッシが測定された当該時刻における風車10の状態を診断してもよい。この場合、バックラッシが当該上限を超えていれば、リングギヤ106又はピニオン4を交換又は修理する必要があると診断してもよい。バックラッシが当該上限以下であれば、リングギヤ106又はピニオン4を交換又は修理する必要がないと診断してもよい。
【0144】
バックラッシの許容可能な上限を設定する場合、変形例5に係る診断ステップでは、収集ステップにおいて収集されたバックラッシの時系列データから、バックラッシが当該上限を超えると予想される時刻を診断してもよい。バックラッシが当該上限を超えると予想される時刻を診断するために、バックラッシの時系列データに基づいて、基準時刻からの時間経過とバックラッシの大きさとの関係を表す近似式を算出してもよい。
図11に示す符号L2を付した実線は、基準時刻からの時間経過とバックラッシの大きさとの関係を表す近似式の一例を示している。
図11に示す例においては、バックラッシの許容可能な上限を示す破線L3と、基準時刻からの時間経過とバックラッシの大きさとの関係を表す近似式を示す実線L2とが、時刻t3において交差している。この場合、時刻t3において測定されるバックラッシはバックラッシの許容可能な上限と等しくなり、時刻t3よりも後の時刻に測定されるバックラッシは当該上限を超えると予測できる。
【0145】
変形例5に係る風車10の診断方法は、収集ステップと、診断ステップと、を備える。このような風車10の診断方法によれば、異なる時刻におけるバックラッシの比較により、風車10のリングギヤ106やピニオン4の状態を診断できる。特に、収集ステップを開始した時刻からのバックラッシの増加量を、リングギヤ106又はピニオン4の疲労破壊が生じる危険度や、リングギヤ106又はピニオン4の表面の硬化層の厚みなどと対応付けて検討することができる。これによって、リングギヤ106やピニオン4の健全性を評価できる。また、バックラッシが許容可能な上限を超える時刻などを予想することで、今後の兆候を予測してメンテナンス計画に役立てることができる。
【0146】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0147】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0148】
1 駆動機構
2 駆動装置
2a 対象駆動装置
3 駆動部
30 アクチュエータ
31 制動部
32 減速機
33 軸
4 ピニオン
4a 対象ピニオン
41 歯
41a 対象歯
5 第1部分
6 第2部分
7 測定装置
71 回転量算出部
72 測定部
73 負荷センサ
74 駆動機構回転量算出部
10 風車
101 風車本体
102 タワー
103 ナセル
106 リングギヤ