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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183337
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/54 20060101AFI20231220BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
B29D30/54
B60C11/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096887
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 修
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
【Fターム(参考)】
3D131EB94Z
3D131EC26U
3D131ED06U
3D131LA28
4F215AH20
4F215VA17
4F215VD05
4F215VL27
(57)【要約】
【課題】サイプ幅が変化し難いタイヤを得るための、タイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のタイヤの製造方法は、タイヤ本体部11とトレッドゴム部12とを備えるタイヤ10を得るための、タイヤの製造方法であって、使用済みタイヤのタイヤ本体部であってタイヤ本体部11となる台タイヤ1を準備する、台タイヤ準備工程S101と、準備された台タイヤ1の外周側にトレッドゴム部12となるトレッドゴム2を取り付けることにより、成形タイヤ4を組み立てる、成形タイヤ組立工程S102と、組み立てられた成形タイヤ4を加硫する、成形タイヤ加硫工程S103と、加硫された成形タイヤ4のトレッド表面5にサイプ16を形成する、サイプ形成工程S104と、を有することを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ本体部とトレッドゴム部とを備えるタイヤを得るための、タイヤの製造方法であって、
使用済みタイヤのタイヤ本体部であって前記タイヤ本体部となる台タイヤを準備する、台タイヤ準備工程と、
準備された前記台タイヤの外周側に前記トレッドゴム部となるトレッドゴムを取り付けることにより、成形タイヤを組み立てる、成形タイヤ組立工程と、
組み立てられた前記成形タイヤを加硫する、成形タイヤ加硫工程と、
加硫された前記成形タイヤのトレッド表面にサイプを形成する、サイプ形成工程と、
を有することを特徴とする、タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記成形タイヤ組立工程では、前記台タイヤの外周面に、未加硫のクッションゴムを介して、加硫済みの前記トレッドゴムを巻回して取り付ける、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記成形タイヤ組立工程では、前記台タイヤの外周面に、未加硫の前記トレッドゴムを巻回して取り付ける、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記サイプ形成工程では、前記サイプは、前記成形タイヤの前記トレッドゴムのタイヤ周方向におけるジョイント部を避けて形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記サイプ形成工程では、前記サイプは、前記成形タイヤのタイヤ周方向に対して傾斜する方向に直線状に形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記サイプ形成工程では、前記サイプは、当該サイプの深さが前記成形タイヤのタイヤ幅方向の中央に近づくにつれて深くなるように形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記サイプ形成工程では、前記サイプは、前記成形タイヤのタイヤ周方向に互いに間隔をあけて複数形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加硫済みタイヤのトレッド表面にナイフ等でサイプ(薄い切込み)を形成することが、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-240507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、新品タイヤにサイプを形成した場合、走行に伴うタイヤの径成長によってサイプ幅が広くなることで、耐摩耗性能向上等のサイプによる効果が十分発揮できなくなったり、サイプ底にクラックが発生し易くなる場合があることが判明した。
【0005】
そこで、本発明は、サイプ幅が変化し難いタイヤを得るための、タイヤの製造方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。
【0007】
(1)本発明のタイヤの製造方法は、
タイヤ本体部とトレッドゴム部とを備えるタイヤを得るための、タイヤの製造方法であって、
使用済みタイヤのタイヤ本体部であって前記タイヤ本体部となる台タイヤを準備する、台タイヤ準備工程と、
準備された前記台タイヤの外周側に前記トレッドゴム部となるトレッドゴムを取り付けることにより、成形タイヤを組み立てる、成形タイヤ組立工程と、
組み立てられた前記成形タイヤを加硫する、成形タイヤ加硫工程と、
加硫された前記成形タイヤのトレッド表面にサイプを形成する、サイプ形成工程と、
を有することを特徴とする。
本発明に係るタイヤの製造方法によれば、サイプ幅が変化し難いタイヤを得ることができる。
【0008】
(2)上記(1)の、タイヤの製造方法において、
前記成形タイヤ組立工程では、前記台タイヤの外周面に、未加硫のクッションゴムを介して、加硫済みの前記トレッドゴムを巻回して取り付けてもよい。
この場合、コンパクトなラインでのタイヤの製造が可能になる。
【0009】
(3)上記(1)の、タイヤの製造方法において、
前記成形タイヤ組立工程では、前記台タイヤの外周面に、未加硫の前記トレッドゴムを巻回して取り付けてもよい。
この場合、製造されたタイヤの外観がより良好になり易い。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの、タイヤの製造方法において、
前記サイプ形成工程では、前記サイプは、前記成形タイヤの前記トレッドゴムのタイヤ周方向におけるジョイント部を避けて形成されると、好適である。
この場合、サイプに起因した故障が発生しにくい。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの、タイヤの製造方法において、
前記サイプ形成工程では、前記サイプは、前記成形タイヤのタイヤ周方向に対して傾斜する方向に直線状に形成されると、好適である。
この場合、サイプの形成がより簡単になる。
【0012】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの、タイヤの製造方法において、
前記サイプ形成工程では、前記サイプは、当該サイプの深さが前記成形タイヤのタイヤ幅方向の中央に近づくにつれて深くなるように形成されると、好適である。
この場合、サイプの形成がより簡単になる。
【0013】
(7)上記(1)~(6)のいずれかの、タイヤの製造方法において、
前記サイプ形成工程では、前記サイプは、前記成形タイヤのタイヤ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されると、好適である。
この場合、サイプによる効果がより効果的に発揮される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サイプ幅が変化し難いタイヤを得るための、タイヤの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の任意の実施形態に係るタイヤの製造方法によって得ることのできるタイヤの、トレッドパターンの一例を示す、トレッド踏面の展開図である。
図2】本発明の任意の実施形態に係るタイヤの製造方法によって得ることのできるタイヤの、トレッドパターンの他の例を示す、トレッド踏面の展開図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法を説明するための、フローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法を説明するための図面であり、(a)は、台タイヤ準備工程で準備された台タイヤを示す図、(b)は、成形タイヤ組立工程で組み立てられた成形タイヤを示す図、(c)は、成形タイヤ加硫工程の様子を示す図、(d)は、サイプ形成工程の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るタイヤの製造方法は、任意の種類の空気入りタイヤの製造方法として好適に利用でき、例えば、TBタイヤ(トラック・バス用タイヤ)、LTタイヤ(バン・小型トラック用タイヤ、小型トラック・バス用タイヤ)、ORタイヤ(建設・鉱山車両用タイヤ)等、特に好ましくはTBタイヤ又はLTタイヤの製造方法として、好適に利用できる。
【0017】
以下、本発明に係るタイヤの製造方法の実施形態について、図面を参照しつつ例示説明する。
各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
本明細書において、「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸を中心にタイヤが回転する方向をいい、「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいい、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。一部の図面では、タイヤ周方向を符号「CD」で示し、タイヤ径方向を符号「RD」で示し、タイヤ幅方向を符号「WD」で示している。
また、本明細書において、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
さらに、本明細書において、「タイヤ周方向に延びる」とは、少なくともタイヤ周方向成分を有して延びることをいう。即ち、「タイヤ周方向に延びる」とは、タイヤ周方向に沿う向きに(即ち、タイヤ周方向に対して0°の角度で、タイヤ周方向に対して傾斜せずに)延びていてもよく、タイヤ周方向に対して90°以外の角度で傾斜して(即ち、タイヤ周方向に対して0°超90°以外の傾斜角度で、タイヤ周方向に対して傾斜して)延びていてもよいことを、意味する。
さらにまた、本明細書において、「タイヤ幅方向に延びる」とは、少なくともタイヤ幅方向成分を有して延びることをいう。即ち、「タイヤ幅方向に延びる」とは、タイヤ幅方向に沿う向きに(即ち、タイヤ幅方向に対して0°の角度で、タイヤ幅方向に対して傾斜せずに)延びていてもよく、タイヤ幅方向に対して90°以外の角度で傾斜して(即ち、タイヤ幅方向に対して0°超90°以外の傾斜角度で、タイヤ幅方向に対して傾斜して)延びていてもよいことを、意味する。
【0018】
以下、特に断りのない限り、各要素の位置関係や寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で測定されるものとする。また、タイヤを適用リムに装着し、タイヤに規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接触することになる、タイヤの全周にわたる外周面を「トレッド踏面」といい、トレッド踏面のタイヤ幅方向の端を、「トレッド端」という。さらに、本明細書において、「トレッド踏面の展開視」とは、トレッド踏面を平面上に展開した状態でトレッド表面を平面視することを指す。
【0019】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に記載されるサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0020】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0021】
<タイヤ>
まず、図1図2を参照しつつ、本発明の任意の実施形態に係るタイヤの製造方法によって得ることのできるタイヤの、トレッドパターンの例について、説明する。
図1及び図2は、本発明の任意の実施形態に係るタイヤの製造方法によって得ることのできるタイヤの、トレッドパターンの例を示す、トレッド踏面の展開図である。
【0022】
図1は、本発明の任意の実施形態に係るタイヤの製造方法によって得ることのできるタイヤの、トレッドパターンの一例を、示している。
図1に示す例では、タイヤ10は、トレッド踏面15にリブパターンを有している。即ち、本例のタイヤ10は、トレッド踏面15に、タイヤ周方向に延びる複数本(図の例では、5本)の主溝13によってタイヤ幅方向に区画された、複数(図の例では、6つ)の陸部14を有しており、各陸部14は、タイヤ周方向に連続して延在する、リブ状陸部である。
図1に示すように、本例のタイヤ10は、陸部14に、耐摩耗性能、ウェット性能、氷上性能等の向上を目的として、サイプ16が設けられている。より具体的に、図1の例では、各陸部14は、タイヤ周方向に互いに間隔をあけて設けられた、複数のサイプ16を有している。本例において、サイプ16、より具体的に、複数のサイプ16はそれぞれ、後述するトレッドゴム2(図4(b)~(d)参照)のジョイント部2a(目視しにくい場合もあるので、図1では点線で示している)を避けて(即ち、トレッド踏面の展開視において、ジョイント部2aと重ならないように)、設けられている。また、本例において、図1に示すように、サイプ16、より具体的に、複数のサイプ16はそれぞれ、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に(即ち、トレッド踏面の展開視において、タイヤ周方向に対して0°超の角度で)(より具体的に、本例では、タイヤ幅方向に対しても傾斜する方向に)直線状に設けられている。さらに、本例において、サイプ16、より具体的に、複数のサイプ16はそれぞれ、少なくとも一方又は両方のトレッド端TEからタイヤ赤道面CLに向かうにつれて、当該サイプ16の深さが深くなるように設けられていてよい(図示せず)。
また、本例において、図1に示すように、各サイプ16は、各陸部14を横断するように(即ち、各陸部14のタイヤ幅方向一方の端から他方の端まで連続して)設けられている。さらに、本例において、図1に示すように、各サイプ16は、一方のトレッド端TEから他方のトレッド端TEまで、各陸部14の間で、各主溝13を跨いで(即ち、各主溝13で断続されるが)一直線上に延在するように設けられている。
【0023】
但し、本発明の任意の実施形態に係るタイヤの製造方法によって得ることのできるタイヤの、トレッドパターンは、上述のようなリブパターンに限定されない。当該トレッドパターンは、サイプ16を有する限り、図2を参照して後述するようなブロックパターンであってもよいし、他の任意のトレッドパターンであってもよい。
【0024】
ここで、本明細書において、「サイプ」とは、トレッド踏面に設けられた薄い切込みを指し、より具体的には、前述の基準状態において、サイプ深さの50%以上の領域にわたって、サイプ幅が1.0mm以下となるものをいう。ここで、「サイプ(の)深さ」は、上記基準状態において、トレッド踏面に垂直な方向に測るものとし、「サイプ(の)幅」は、上記基準状態において、トレッド踏面におけるサイプの延在方向に垂直な断面において、トレッド踏面と平行な方向に測るものとする。サイプ幅は、トレッド踏面に垂直な方向に一定でもよいし変化してもよい。
【0025】
なお、本発明の任意の実施形態に係るタイヤの製造方法によって得ることのできるタイヤ10は、後述する台タイヤ1(図4参照)によって(換言すれば、台タイヤ1を素材として)形成される、タイヤ本体部11(図4(d)参照)と、後述するトレッドゴム2(図4参照)によって(換言すれば、トレッドゴム2を素材として)形成される、トレッドゴム部12(図1図2図4(d)参照)と、を備えている。
タイヤ本体部11は、例えば、トレッドゴム以外の一般的なタイヤの構成部材である、左右両ビード部、これらの間に跨る1枚以上のカーカスプライからなるカーカス、カーカスのタイヤ径方向外側に配置される1層以上のベルト層からなるベルト、サイドウォールゴム、等を、含んでいてよい。
トレッドゴム部12は、上記タイヤ本体部以外のタイヤの構成部材である、トレッドゴムを、少なくとも含んでいる。
【0026】
図2は、本発明の任意の実施形態に係るタイヤの製造方法によって得ることのできるタイヤの、トレッドパターンの他の例を、示している。
図2に示す例では、タイヤ10は、トレッド踏面15にブロックパターンを有している。即ち、本例のタイヤ10は、トレッド踏面15に、タイヤ周方向に延びる複数本(図の例では、3本)の主溝13によってタイヤ幅方向に区画された、複数(図の例では、4つ)の陸部14を有しているとともに、各陸部14は、タイヤ幅方向に延びる横溝14aによってタイヤ周方向に区画された複数のブロック14bを有する、ブロック状陸部である。
図2に示すように、本例のタイヤ10も、陸部14に、耐摩耗性能、ウェット性能、氷上性能等の向上を目的として、サイプ16が設けられている。より具体的に、図2の例でも、各陸部14は、タイヤ周方向に互いに間隔をあけて設けられた、複数のサイプ16を有している。本例においても、サイプ16、より具体的に、複数のサイプ16はそれぞれ、後述するトレッドゴム2(図4(b)~(d)参照)のジョイント部2a(目視しにくい場合もあるので、図2では点線で示している)を避けて(即ち、トレッド踏面の展開視において、ジョイント部2aと重ならないように)、設けられている。また、本例においても、図2に示すように、サイプ16、より具体的に、複数のサイプ16はそれぞれ、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に(即ち、トレッド踏面の展開視において、タイヤ周方向に対して0°超の角度で)(より具体的に、本例では、タイヤ幅方向に沿って、即ち、タイヤ周方向に対して90°、タイヤ幅方向に対して0°の角度で)直線状に設けられている。さらに、本例においても、サイプ16、より具体的に、複数のサイプ16はそれぞれ、少なくとも一方又は両方のトレッド端TEからタイヤ赤道面CLに向かうにつれて、当該サイプ16の深さが深くなるように設けられていてよい(図示せず)。
また、本例においては、図2に示すように、各サイプ16は、タイヤ赤道面CLに近いタイヤ幅方向内側の2つの陸部14においては、当該各陸部14を横断するように(即ち、当該各陸部14のタイヤ幅方向一方の端から他方の端まで連続して)設けられている一方、トレッド端TEに近いタイヤ幅方向両外側の2つの陸部14においては、各サイプ16は、主溝13に開口する一方でトレッド端TEには達せず当該各陸部14内で終端するように設けられている。さらに、本例において、図2に示すように、各サイプ16は、各陸部14の間で、各主溝13を跨いで(即ち、各主溝13で断続されるが)一直線上に延在するように設けられている。
【0027】
<タイヤの製造方法>
以下、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法について、図3図4を参照しつつ説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法を説明するための、フローチャートである。図4は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法を説明するための図面であり、(a)は、台タイヤ準備工程で準備された台タイヤを示す図、(b)は、成形タイヤ組立工程で組み立てられた成形タイヤを示す図、(c)は、成形タイヤ加硫工程の様子を示す図、(d)は、サイプ形成工程の様子を示す図である。図4(a)~(d)は、タイヤ幅方向断面視における概略図として示されている。
【0028】
本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法は、いわゆるリトレッドタイヤの製造方法であり、ひいては、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法によって得られるタイヤは、リトレッドタイヤである。
リトレッドタイヤの製造方法として、一般に、COLD方式(プレキュア方式、等とも呼ばれる。)と、HOT方式(リ・モールド方式、等とも呼ばれる。)と、があるが、本発明に係るタイヤの製造方法は、COLD方式及びHOT方式のいずれの製造方法にも、採用可能である。ここで、COLD方式は、台タイヤのクラウン部に未加硫のクッションゴムを介して加硫済みのプレキュアトレッドを巻回して配設し、成形済みタイヤを形成した後、加硫缶などで比較的低温で加硫処理を施すことによってプレキュアトレッドを台タイヤに加硫接着する方式である。一方、HOT方式は、台タイヤのクラウン部に未加硫のトレッドゴムを巻回して配設し、比較的高温でモールドによって加硫処理を施すことによってトレッドゴムを台タイヤに加硫接着する方式である。なお、図4に示す例は、COLD方式の製造方法の例である。
【0029】
本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法は、タイヤ本体部11(図4(d)参照)とトレッドゴム部12(図1図2図4(d)参照)とを備えるタイヤを得るためのものである。
図3に示すように、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法は、台タイヤ準備工程(ステップS101)と、成形タイヤ組立工程(ステップS102)と、成形タイヤ加硫工程(ステップS103)と、サイプ形成工程(ステップS104)と、を、この順に有している。
【0030】
(台タイヤ準備工程)
まず、台タイヤ準備工程では、使用済みタイヤのタイヤ本体部であってタイヤ本体部11となる台タイヤ1を準備する(ステップS101)。
図4(a)に示すように、台タイヤ1は、使用済みタイヤ(図示せず)から摩耗したトレッドゴム部が除去された、使用済みタイヤのタイヤ本体部であった部分であって、本実施形態のタイヤの製造方法によって得られるタイヤのタイヤ本体部11(図4(d)参照)となる部材である。
台タイヤ準備工程は、市場等から受け入れた使用済みタイヤのトレッドゴム部を除くタイヤ本体部が再度使用可能かを検査する、受入検査工程、当該使用済みタイヤからトレッドゴム部を除去する、トレッドゴム部除去工程、等を、含んでいてよい。
【0031】
(成形タイヤ組立工程)
台タイヤ準備工程の後、成形タイヤ組立工程では、台タイヤ準備工程で準備された台タイヤ1の外周側にトレッドゴム部12となるトレッドゴム2を取り付けることにより、成形タイヤ4を組み立てる(ステップS102)。
トレッドゴム2は、本実施形態のタイヤの製造方法によって得られるタイヤのトレッドゴム部12(図1図2図4(d)参照)となる部材である。トレッドゴム2は、タイヤ1周分の長さを有していてよい。
【0032】
前述のとおり、図4に示す例は、リトレッドタイヤの一般的な製造方法のうち、COLD方式による例を示したものである。即ち、図4の例において、成形タイヤ組立工程では、台タイヤ1の外表面に、未加硫のクッションゴム3を介して、加硫済みのトレッドゴム2(一般に、プレキュアトレッドとも呼ばれる。)を巻回して取り付ける(図4(b)参照)。換言すれば、図4の例において、成形タイヤ組立工程で組み立てられた成形タイヤ4は、台タイヤ1の外表面に、未加硫のクッションゴム3を介して、加硫済みのトレッドゴム2が巻回されて取り付けられた(より具体的に、貼り付けられた)ものである。未加硫のクッションゴム3は、タイヤ1周分の長さを有していてよい。
本例において、成形タイヤ組立工程で用いられる加硫済みのトレッドゴム2は、台タイヤ1に取り付けられる前は平板状であり、また、当該加硫済みのトレッドゴム2の表面には、予め、少なくともサイプ16以外のトレッドパターン(例えば、サイプ16を除く、図1及び図2に例示したようなトレッドパターン)が形成されている。また、本例において、成形タイヤ組立工程では、未加硫のクッションゴム3を台タイヤ1の外表面に巻回して取り付けた(より具体的に、貼り付けた)後に、当該未加硫のクッションゴム3の外表面にさらに加硫済みのトレッドゴム2を巻回して取り付けても(より具体的に、貼り付けても)よいし、未加硫のクッションゴム3と加硫済みのトレッドゴム2とを予め貼り合わせておき、その複合体を台タイヤ1の外表面に巻回して取り付けても(より具体的に、貼り付けても)よい。
なお、本例において、成形タイヤ組立工程では、台タイヤ1、未加硫のクッションゴム3及び加硫済みのトレッドゴム2の少なくともいずれかの間に、さらに接着剤を介在させてもよい。
上述の例のように、成形タイヤ組立工程で、台タイヤ1の外表面に、未加硫のクッションゴム3を介して、加硫済みのトレッドゴム2を巻回して取り付ける場合、特に後の成形タイヤ加硫工程等において、通常の加硫モールドのような大型の設備を必要としないので、コンパクトなラインでのタイヤの製造が可能になる。
【0033】
但し、本実施形態に係るタイヤの製造方法は、図4に示す例に限らず、リトレッドタイヤの一般的な製造方法のうち、HOT方式によるものであってもよい。即ち、図示はしないが、成形タイヤ組立工程では、台タイヤ1の外表面に、上記未加硫のクッションゴム3等を介さずに、未加硫のトレッドゴム2を巻回して取り付けてもよい。換言すれば、成形タイヤ組立工程で組み立てられた成形タイヤ4は、台タイヤ1の外表面に、未加硫のクッションゴム3等を介さずに、未加硫のトレッドゴム2が巻回されて取り付けられた(より具体的に、貼り付けられた)ものであってもよい。その場合、成形タイヤ組立工程で用いられる未加硫のトレッドゴム2の表面には、予めトレッドパターンが形成されていなくてよい。また、その場合、成形タイヤ組立工程では、台タイヤ1と未加硫のトレッドゴム2との間に、接着剤を介在させてもよい。
上述の例のように、成形タイヤ組立工程で、台タイヤ1の外表面に、未加硫のトレッドゴム2を巻回して取り付ける場合、後の成形タイヤ加硫工程において、後述するように、成形タイヤ4を通常のトレッドパターン付き加硫モールド内に封入して加硫することとなるので、台タイヤ1の外周面にトレッドゴム2を巻回して取り付ける際のトレッドゴム2のタイヤ周方向におけるジョイント部2a等が目立ちにくくなり、製造されたタイヤの外観がより良好になり易い。
【0034】
(成形タイヤ加硫工程)
成形タイヤ組立工程の後、成形タイヤ加硫工程では、図4(c)に示すように、成形タイヤ組立工程で組み立てられた成形タイヤを加硫する(ステップS103)(図4(c)参照)。当該加硫は、所定の加硫装置6によって行われてよい。
【0035】
図4に示す例(即ち、成形タイヤ組立工程で、台タイヤ1の外表面に、未加硫のクッションゴム3を介して、加硫済みのトレッドゴム2を巻回して取り付ける、前述のCOLD方式の場合)では、成形タイヤ組立工程で用いる加硫済みのトレッドゴム2の表面には、既に少なくともサイプ16を除くトレッドパターンが形成されているので、成形タイヤ加硫工程における加硫は、通常のトレッドパターン付き加硫モールドで行う必要はなく、加硫装置6として例えば図4(c)に模式的に示すような小型の加硫缶CG等を用い、成形タイヤ4を当該加硫缶CG内に封入し、比較的低温で加熱・加圧処理をすることにより、未加硫のクッションゴム3が加硫され、ひいては、加硫済みのトレッドゴム2(プレキュアトレッド)を台タイヤ1に加硫接着することができる。
【0036】
一方、成形タイヤ組立工程で、台タイヤ1の外表面に、未加硫のトレッドゴム2を巻回して取り付ける、前述のHOT方式の場合、成形タイヤ加硫工程における加硫は、加硫装置6として例えば少なくともサイプ16を除くトレッドパターン(例えば、サイプ16を除く、図1及び図2に例示したようなトレッドパターンであって、その凹凸を逆転させたもの)が刻印されたトレッドパターン付き加硫モールド(図示せず)を用い、成形タイヤ4を当該加硫モールド内に封入し、比較的高温で加熱・加圧処理をすることにより、未加硫のトレッドゴム2を台タイヤ1に加硫接着することができる。
【0037】
但し、成形タイヤ加硫工程における加硫方法及び成形タイヤ加硫工程で用いられる加硫装置等は、上述のものに特に限定されず、当該成形タイヤ加硫工程で加硫された成形タイヤ4のトレッド表面5(図4(d)参照)に、少なくともサイプ16以外の必要なトレッドパターンが形成される限り、任意であってよい。なお、成形タイヤ加硫工程で加硫された成形タイヤ4のトレッド表面5に、必要に応じ、後述するサイプ形成工程で形成されるサイプ16以外の、1以上のサイプ16が形成されていてもよい。
【0038】
(サイプ形成工程)
成形タイヤ加硫工程の後、サイプ形成工程では、成形タイヤ加硫工程で加硫された成形タイヤ4のトレッド表面5にサイプ16を形成する(ステップS104)(図4(d)参照)。当該サイプ16の形成は、所定のサイプ形成装置7によって行われてよい。
サイプ形成工程により、成形タイヤ加硫工程を経た加硫後の成形タイヤ4のトレッド表面5(ひいては、タイヤ10のトレッド踏面15)に、例えば、図1及び図2に例示したようなトレッドパターンのうちの、サイプ16の部分を形成することができる。なお、図4において、トレッドゴム2の表面(トレッド表面5)に形成されている主溝等は説明の便宜のために記載したものであり、図1図2のトレッドパターンにおける主溝13等の構成(本数等)と、厳密に対応しているものではない。
【0039】
サイプ形成工程では、サイプ形成装置7として例えばカッター(ホットナイフ)やレーザー等を使用して、サイプ16を形成することができる。
図4に示す例では、サイプ形成工程において、サイプ形成装置7として図4(d)に模式的に示すギロチンカッターGCを用いて、サイプ16が形成される。ここで、「ギロチンカッター」とは、タイヤを、リムにフィットする程度の低い内圧(50kPa程度)を充填してリムに装着した状態で、その回転軸周りに回転可能に固定し、タイヤ径方向に移動可能なブレード(薄い刃)を用いて、タイヤを少しずつ回転させながらサイプを形成する装置を指す。図4(d)において、下向きの白抜き矢印は、加硫後の成形タイヤ4のトレッド表面5に向けてギロチンカッターGC(より具体的には、当該ギロチンカッターGCのブレード)がタイヤ径方向内側に移動し、サイプを形成しようとする様子を表している。
上記ギロチンカッターGCは、例えば、陸部14(図1図2参照)がタイヤ周方向に連続して延在するリブパターン等を有するトレッド表面5に、複数のサイプを形成するのに適している。また、上記レーザーは、例えば、陸部14がタイヤ周方向に断続するブロックパターン等を有するトレッド表面5に、複数のサイプを形成するのに適している。
但し、サイプ形成工程におけるサイプ形成方法及びサイプ形成工程で用いられるサイプ形成装置等は、上述のものに特に限定されず、任意であってよい。
サイプ形成工程における好ましいサイプ形成方法等については、追ってさらに詳述する。
【0040】
次に、上述した、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法による作用効果について、説明する。
まず、本実施形態では、台タイヤ1を準備する、台タイヤ準備工程と、台タイヤ1の外周側にトレッドゴム2を取り付けることにより、成形タイヤ4を組み立てる、成形タイヤ組立工程と、成形タイヤ4を加硫する、成形タイヤ加硫工程と、を有するので、通常通り、タイヤ(特には、リトレッドタイヤ)を得ることができる。
また、本実施形態によれば、成形タイヤ組立工程では、準備された台タイヤ1の外周側にトレッドゴム2を取り付け、サイプ形成工程では、加硫された成形タイヤ4のトレッド表面5にサイプ16を形成する。即ち、本実施形態によれば、タイヤ本体部11としては使用済みタイヤのタイヤ本体部であった台タイヤ1を用い、かつ、加硫後の成形タイヤ4にサイプ16を形成する。
ここで、リトレッドタイヤでない(換言すれば、台タイヤを用いない)、通常の製造方法により得られた新品タイヤについては、使用開始後の暫くの期間、走行に伴い当該タイヤが径成長することが知られており、新品タイヤがサイプを有するものであった場合、当該タイヤの径成長に伴い、サイプ幅が広くなるおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、成形タイヤ組立工程において既に径成長が終了した台タイヤ1を用い、ひいては、製造されたタイヤのタイヤ本体部11は既に径成長が終了した当該台タイヤ1であるので、台タイヤ1を用いずに製造された通常の新品タイヤと比較して、当初形成されたサイプのサイプ幅が変化し難いタイヤを得ることができる。
また、例えば、上述のCOLD方式の製造方法において、加硫済みのトレッドゴム(プレキュアトレッド)を平板上に載置した状態でカッター等でサイプを形成することにより予めサイプが形成された、当該加硫済みのトレッドゴムを用いて、成形タイヤ組立工程を行うことも考えられるが、その場合、成形タイヤ組立工程において台タイヤ1の外周面に当該加硫済みのトレッドゴム2を巻回して取り付ける際に、やはりサイプ幅が広くなるおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、サイプ形成工程において成形タイヤ4の加硫後にサイプ16を形成するので、成形タイヤ組立工程において予めサイプが形成された加硫済みのトレッドゴムを用いて成形タイヤを組み立てる場合と比較して、当初形成されたサイプ幅が変化し難いタイヤを得ることができる。
以上のとおり、本実施形態に係るタイヤの製造方法によれば、サイプ幅が変化し難いタイヤを得ることができ、ひいては、サイプ幅の拡大により、耐摩耗性能向上等のサイプによる効果が十分発揮できなくなったり、サイプ底にクラックが発生し易くなることを、抑制することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、サイプ形成用のブレードを備えた加硫モールドにより加硫時にサイプを形成する(例えば、上述のHOT方式の製造方法において、成形タイヤ加硫工程において加硫モールドにより加硫時にサイプを形成すること等も考えられる)のではなく、サイプ形成工程において加硫後の成形タイヤ4に例えばカッターやレーザー等によりサイプ16を形成するので、顧客の要求等に応じてタイヤ毎の性能カスタマイズを容易にすることができる。
【0042】
次に、上述のサイプ形成工程における、好ましいサイプ形成方法等についてさらに説明する。
なお、サイプ形成工程において加硫済みの成形タイヤ4に形成されるサイプの配置・構成等は、当該製造方法によって得られたタイヤ10におけるサイプの配置・構成等と実質的に同じである。そこで、以下では、説明の便宜のため、適宜当該タイヤ10の例について説明した図1及び図2を参照しつつ、説明をする。
【0043】
まず、サイプ形成工程では、サイプ16は、図1及び図2に示すように、成形タイヤ組立工程において台タイヤ1の外周側にトレッドゴム2を取り付けた際に生じる、成形タイヤ4のトレッドゴム2のタイヤ周方向におけるジョイント部2aを避けて(トレッド踏面の展開視において、ジョイント部2aと重ならないように)、形成されると、好適である。
この場合、サイプ16に起因した故障が発生しにくく、ひいては、タイヤの耐久性の低下を抑制することができる。
【0044】
また、サイプ形成工程では、サイプ16は、図1及び図2に示すように、成形タイヤ4のタイヤ周方向に対して傾斜する方向に直線状に形成されると、好適である。
この場合、サイプ16の形成を、例えば、単純な直線状のブレードを備えるギロチンカッターGCにより容易に行うことができるので、サイプ16の形成がより簡単になる。
【0045】
さらに、図示はしないが、サイプ形成工程では、サイプ16は、当該サイプ16の深さ(サイプ深さ)が成形タイヤ4のタイヤ幅方向の中央(即ち、タイヤ赤道面CL)に近づくにつれて深くなるように形成されると、好適である。
成形タイヤ加硫工程を経た加硫済みの成形タイヤ4は、通常、タイヤ幅方向断面視においてトレッドゴム2の表面(トレッド表面5、ひいてはトレッド踏面15)がタイヤ径方向外側に向けて凸のRがついたわずかな円弧状に形成されている。このため、上記の場合、サイプ16の形成を、例えば、側面視刃先が直線状のブレードを備えるギロチンカッターGCにより容易に行うことができるので、サイプ16の形成がより簡単になる。
【0046】
また、サイプ形成工程では、サイプ16は、図1及び図2に示すように、成形タイヤ4のタイヤ周方向に互いに間隔をあけて複数形成されると、好適である。
この場合、耐摩耗性能向上等のサイプ16による効果がより効果的に発揮される。
【0047】
サイプ形成工程で形成されるサイプ16の幅(サイプ幅)は、サイプ深さの50%以上の領域にわたって、0.7mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.4mm以下であることがさらに好ましい。また、当該サイプ幅は、サイプ深さの50%以上の領域にわたって、0.2mm以上であることが好ましい。さらに、当該サイプ幅は、サイプ深さの50%以上の領域にわたって、0.2~0.5mmであることが好ましく、0.2~0.4mmであることがより好ましい。
サイプ幅が、上記0.7mm以下でより薄くなるほど、耐摩耗性能向上等のサイプ16による効果をより発揮させ易くなり、上記0.2mm以上とすることで、カッター等によるサイプの形成をより容易に実現することができる。
【0048】
タイヤの耐摩耗性能の向上のためには、サイプ形成工程では、サイプ16を、図1及び図2に示すように、成形タイヤ4のタイヤ周方向に対して傾斜する方向に直線状に形成するとともに、成形タイヤ4のタイヤ周方向に互いに間隔をあけて複数形成すること、換言すれば、トレッド踏面の展開視において、タイヤ幅方向に延びる直線状のサイプ16をタイヤ周方向に間隔をあけて複数形成することが、好ましい。
その場合、タイヤ周方向に隣接するサイプ16どうしのタイヤ周方向における間隔(以下、単に「(複数の)サイプ16のタイヤ周方向間隔」等ともいう。)は、5~40mmであることが好ましい。当該間隔が、5mm以上であれば、陸部14の剛性が過度に低下しすぎることなく(即ち、柔軟になりすぎることなく)、また、40mm以下であれば、陸部14の剛性が適度に低下し(即ち、適度に柔軟になり)タイヤ回転時の接地面との間の滑り量が少なくなるので、いずれの場合でも、耐摩耗性能をより向上させ易い。同様の観点から、上記の場合、サイプ16のタイヤ周方向間隔は、10~30mmであることがより好ましい。さらに、同様の観点から、上記の場合、サイプ16のサイプ深さは、主溝13の深さの40~100%であることが好ましい。
また、上記のように、タイヤ幅方向に延びる直線状のサイプ16をタイヤ周方向に間隔をあけて複数形成する場合、サイプ16のタイヤ周方向間隔は、タイヤ周方向の全周にわたって均等であること、換言すれば、当該複数のサイプ16がタイヤ周方向の全周にわたって等間隔に形成されることが、好ましい。この場合、サイプ16によって発揮される耐摩耗性能等の性能を、タイヤ周方向の全周にわたって均等にすることができる。
【0049】
成形タイヤ組立工程において用いられる加硫済みのトレッドゴム2(プレキュアトレッド)の表面に、複数のリブ(例えば図1に示すように、製造されたタイヤ10ではリブ状の陸部14となる)及び/又は複数のブロック(例えば図2に示すように、製造されたタイヤ10ではブロック14bとなる)が区画形成されており(上述のCOLD方式の製造方法の場合)、又は、成形タイヤ加硫工程において、トレッドゴム2の表面に、複数のリブ(例えば図1に示すように、製造されたタイヤ10ではリブ状の陸部14となる)及び/又は複数のブロック(例えば図2に示すように、製造されたタイヤ10ではブロック14bとなる)が区画形成される(上述のHOT方式による製造方法の場合)、とともに、サイプ形成工程において、当該複数のリブ及び/又は複数のブロックの一部又は全部のそれぞれに、複数のサイプ16を、当該複数のリブ及び/又は複数のブロックごとにタイヤ周方向間隔、深さ及び/又はタイヤ周方向に対する角度を異ならせるように、形成してもよい。
その場合、サイプ形成工程において、例えば、ギロチンカッターGCを用いて、タイヤ周方向の一部又は全周にわたってタイヤ周方向に間隔をあけて第1形態のサイプを形成した後に、タイヤ周方向の一部又は全周にわたってタイヤ周方向に間隔をあけて第1形態とは異なる第2形態のサイプを形成してもよく、さらには、当該サイプの形成を繰り返し、それまでに形成したサイプの形態とは異なる第3形態以上の形態のサイプを形成していってもよい。
【0050】
さらに、サイプ形成工程において、サイプ16は、成形タイヤ4(ひいては、タイヤ10)のタイヤ幅方向の全幅にわたって形成されてもよいし(例えば、図1の例を参照)、タイヤ幅方向の一部のみに形成されてもよい(例えば、図2の例を参照)。
また、サイプ形成工程において、サイプ16は、成形タイヤ4(ひいては、タイヤ10)における、タイヤ周方向に延在する主溝13によってタイヤ幅方向に区画された各陸部14においてタイヤ幅方向の全幅にわたって形成されてもよいし(例えば、図1の例を参照)、少なくとも一部の陸部14においてタイヤ幅方向の一部のみに形成されてもよい(例えば、図2の例を参照)。
【0051】
以上、サイプ形成工程における、好ましいサイプ形成方法等について説明したが、サイプ形成工程におけるサイプの形成方法は、上述の態様には特に制限されず、成形タイヤ加硫工程で加硫された成形タイヤ4のトレッド表面5にサイプ16を形成する限り、任意であってよい。
【0052】
以上説明した、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法によれば、例えば、タイヤ本体部11として使用済みタイヤのタイヤ本体部であった台タイヤ1を使用しており、かつ、図1及び図2を参照しつつ例示説明したようなトレッドパターンを有するタイヤ10を、サイプ形成工程において、サイプ16を、当該タイヤ10における配置・構成となるように加硫済みの成形タイヤ4に形成することにより、得ることができる。
【0053】
また、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法によれば、例えば、サイプ形成工程において、形成するサイプ16の深さ方向にブレードの厚みが一定である通常のギロチンカッター等を用いることにより、例えば、タイヤ本体部11とトレッドゴム部12とを備えるタイヤであって、前記タイヤ本体部11は、使用済みタイヤのタイヤ本体部であった台タイヤ1から構成されており、前記トレッドゴム部12の表面には複数のサイプ16が形成されており、前記複数のサイプ16は、それぞれ、当該サイプ16の幅が深さ方向に実質上一定であるタイヤ10を、得ることができる。このタイヤ10は、サイプ16の幅が変化し難い。
【0054】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
例えば、本発明において、成形タイヤ組立工程において、台タイヤ1の外周面に、未加硫のクッションゴム3を介して、加硫済みのトレッドゴム2を巻回して取り付ける場合(即ち、上述のCOLD製法の場合)、当該成形タイヤ組立工程と成形タイヤ加硫工程との間に、成形タイヤ4をゴム製の袋体で包む、エンベロープ工程を、さらに有していてもよい。また、例えば、本発明において、成形タイヤ加硫工程及び/又はサイプ形成工程の後に、加硫後の成形タイヤ4及び/又はサイプ形成後のタイヤ10に異常がないかを検査する、検査工程等を、さらに有していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るタイヤの製造方法は、任意の種類の空気入りタイヤの製造方法として好適に利用でき、例えば、TBタイヤ(トラック・バス用タイヤ)、LTタイヤ(バン・小型トラック用タイヤ、小型トラック・バス用タイヤ)、ORタイヤ(建設・鉱山車両用タイヤ)等、特に好ましくはTBタイヤ又はLTタイヤの製造方法として、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1:台タイヤ、 2:トレッドゴム、 2a:ジョイント部、 3:クッションゴム、
4:成形タイヤ、 5:トレッド表面、 6:加硫装置、 7:サイプ形成装置、
10:タイヤ、 11:タイヤ本体部、 12:トレッドゴム部、 13:主溝、
14:陸部、 14a:横溝、 14b:ブロック、 15:トレッド踏面、
16:サイプ、
CC:加硫缶、 CD:タイヤ周方向、 CL:タイヤ赤道面、
GC:ギロチンカッター、 RD:タイヤ径方向、 WD:タイヤ幅方向
図1
図2
図3
図4