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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183349
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】固形外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20231220BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231220BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/92
A61K8/31
A61K8/34
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096927
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 利佳子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD512
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD631
4C083AD632
4C083AD641
4C083AD642
4C083AD662
4C083BB12
4C083CC02
4C083DD11
4C083DD21
4C083DD30
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】固形外用組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(A)融点が40℃以上である固形ワックス、(B)水溶性ビタミン、及び(C)多価アルコールを含有し、水の含有量が2質量%以下である、固形外用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)融点が40℃以上である固形ワックス、(B)水溶性ビタミン、及び(C)多価アルコールを含有し、水の含有量が2質量%以下である、固形外用組成物。
【請求項2】
(D)グリセリン脂肪酸エステルを含有する、請求項1に記載の固形外用組成物。
【請求項3】
(E)テルペノイドを含有する、請求項1又は2に記載の固形外用組成物。
【請求項4】
(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が0.001~5質量部である、請求項1又は2に記載の固形外用組成物。
【請求項5】
25℃における硬度が5g以上である、請求項1又は2に記載の固形外用組成物。
【請求項6】
前記(A)がパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバロウ及びキャンデリラからなる群より選択される1種以上、並びに、前記(B)がニコチン酸アミド、チアミン塩酸塩、チアミンリン酸塩、リボフラビン、葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)、ピリドキシン塩酸塩、シアノコバラミン、ビオチン、パントテン酸、アスコルビン酸、アスコルビルグルコシド、アスコルビルリン酸塩、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸エチル、パルミチン酸アスコルビルリン酸塩、イソステアリルアスコルビルリン酸塩及びカプリリル2-グリセリルアスコルビン酸からなる群より選択される1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の固形外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ビタミンが配合された外用組成物は、皮膚の疾患や症状、状態を治療、予防及び/又は改善する目的で有益である。固形外用組成物に水溶性ビタミンを配合することが試みられてきたが、固形状に成形し、使用感に優れた固形外用組成物の実現には多くの課題があった。
【0003】
ニコチン酸アミド、液状油、油性増粘剤、シリカを含有する油性皮膚外用剤又は油性化粧料において、ニコチン酸アミドを均一に分散し、経時的安定を達成する試みがなされているが(特許文献1)、固体粒子であるシリカを含有する組成物を皮膚に塗布すると、組成物による皮膚の保湿が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-131538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、成形性が良好で、使用感の良い固形外用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、(A)融点が40℃以上である固形ワックス、(B)水溶性ビタミン、及び(C)多価アルコールを組み合わせて配合し、水の含有量が2質量%以下となる外用組成物とすることにより、該外用組成物を、固形状に成形することができ、皮膚に適用した場合の使用感が高められることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1](A)融点が40℃以上である固形ワックス、(B)水溶性ビタミン、及び(C)多価アルコールを含有し、水の含有量が2質量%以下である、固形外用組成物;
[2](D)グリセリン脂肪酸エステルを含有する、[1]に記載の固形外用組成物;
[3](E)テルペノイドを含有する、[1]又は[2]に記載の固形外用組成物;
[4](F)液状油を含有する、[1]から[3]に記載の固形外用組成物;
[5](G)ペースト油を含有する、[1]から[4]に記載の固形外用組成物;
[6]前記(A)がパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナウバロウ及びキャンデリラからなる群より選択される1種以上、並びに、前記(B)がニコチン酸アミド、チアミン塩酸塩、チアミンリン酸塩、リボフラビン、葉酸(プテロイルモノグルタミン酸)、ピリドキシン塩酸塩、シアノコバラミン、ビオチン、パントテン酸、アスコルビン酸、アスコルビルグルコシド、アスコルビルリン酸塩、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸エチル、パルミチン酸アスコルビルリン酸塩、イソステアリルアスコルビルリン酸塩及びカプリリル2-グリセリルアスコルビン酸からなる群より選択される1種以上を含有する、[1]から[5]に記載の固形外用組成物;
[7]前記(D)がジイソステアリン酸ポリグリセリルである、[2]に記載の固形外用組成物;
[8]前記(E)が環式テルペンである、[3]に記載の固形外用組成物;
[9]前記(E)がメントール、グリチルレチン酸、パルミチン酸レチノール及びシメン-5-オールからなる群より選択される1種以上である、[8]に記載の固形外用組成物;
[10](A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が0.001~5質量部である、[1]から[9]に記載の固形外用組成物;
[11](A)成分の総含有量1質量部に対して、(C)成分の総含有量が0.005~2質量部である、[1]から[10]に記載の固形外用組成物;
[12](B)成分の総含有量1質量部に対して、(C)成分の総含有量が0.05~10質量部である、[1]から[11]に記載の固形外用組成物;
[13]25℃における硬度が5g以上である、[1]から[12]に記載の固形外用組成物;
[14]口唇用である、[1]から[13]に記載の固形外用組成物; 等を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固形外用組成物は、(A)融点が40℃以上である固形ワックス、(B)水溶性ビタミン、及び(C)多価アルコールを含有し、水の含有量が2質量%以下であるため、成形性、使用感に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
〔1.固形外用組成物〕
本実施形態に係る固形外用組成物は、(A)融点が40℃以上である固形ワックスと、(B)水溶性ビタミンと、(C)多価アルコールを含有し、水の含有量が2質量%以下である。
【0011】
<(A)成分>
本発明に用いられる融点が40℃以上である固形ワックス(以下、単に(A)成分ともいう)とは、ろう状の物理的性質(具体的には、耐水性、可塑性、光沢性及び/又は不透明性等)を示し、融点が40℃以上であって、常温では固形のものをいい、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本発明に用いる固形ワックスの融点は、40℃以上であれば、本発明の効果を奏し得る限り特に限定されないが、通常40~150℃程度、好ましくは40~130℃程度、より好ましくは40~100℃程度である。具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油由来のワックス;ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、硬化ヒマシ油、ポリプロピレンワックス等の合成ワックス;(ステアロキシメチコン/ジメチコン)コポリマー、セテアリルメチコン、アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー等のシリコーンワックス;カルナウバロウ、キャンデリラワックス、木ロウ、米糠ロウ、ハゼロウ、ウルシロウ、サトウキビロウ、パームロウ、オレンジ果皮ロウ、オレンジ花ロウ、オオバナソケイ花ロウ、クチベニスイセン花ロウ、シロヤマモモ果実ロウ、スイートアカシア花ロウ、チューベロース花ロウ等の植物由来のワックス;蜜蝋、サラシミツロウ、鯨蝋、セラック蝋、ラノリン等の動物由来のワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシンワックス等の鉱物由来のワックス;セチルアルコール(セタノール、パルミチルアルコール等ともいう)、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の固形状の高級アルコール;等が挙げられるが、これらに限定されない。(A)成分の中でも本発明による効果をより一層顕著に奏する観点から、石油由来のワックス、植物由来のワックス、高級アルコールが好ましく、石油由来のワックス、植物由来のワックスがより好ましく、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスが更に好ましい。本発明の固形外用組成物では、上記(A)成分のうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、(A)成分を2種類以上組み合わせて用いることで、より一層高い本発明の効果が期待できる 。(A)成分は市販されているものを用いることができる。
【0012】
本実施形態に係る固形外用組成物における(A)成分の含有量は特に限定されず、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、固形外用組成物の総量を基準として、(A)成分の総含有量が、0.1~60質量%であってもよく、0.5~50質量%であることが好ましく、1~46量%であることが更に好ましく、2~41量%であることがより好ましく、4~36質量%であることが更により好ましく、6~30質量%であることが特に好ましい。
【0013】
<(B)成分>
本発明に用いられる水溶性ビタミン(以下、単に(B)成分ともいう)とは、水への溶解度が25℃において、3[g/100g水]以上のものをいい、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本発明に用いる水溶性ビタミンの水への溶解度は、3[g/100g水]以上であれば、本発明の効果を奏し得る限り特に限定されないが、通常5~100[g/100g水]程度、好ましくは10~95[g/100g水]程度、より好ましくは20~90[g/100g水]程度である。具体的には、水溶性ビタミンB、水溶性ビタミンC等が挙げられる。水溶性ビタミンBは、チアミン塩酸塩、チアミンリン酸塩などのビタミンB1;リボフラビンなどのビタミンB2;ピリドキシン塩酸塩などのビタミンB6;シアノコバラミンなどのビタミンB12;ニコチン酸アミドなどのナイアシン;葉酸(プテロイルモノグルタミン酸);パントテン酸;ビオチン等が挙げられるが、これらに限定されない。水溶性ビタミンCは、アスコルビン酸、アスコルビルグルコシド、アスコルビルリン酸塩、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビン酸エチル、パルミチン酸アスコルビルリン酸塩、イソステアリルアスコルビルリン酸塩及びカプリリル2-グリセリルアスコルビン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。(B)成分の中でも本発明による効果をより一層顕著に奏する観点から、ナイアシン、水溶性ビタミンCが好ましく、ニコチン酸アミドがより好ましい。本発明の固形外用組成物では、上記(B)成分のうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、(B)成分を2種類以上組み合わせて用いることで、より一層高い本発明の効果が期待できる 。(B)成分は市販されているものを用いることができる。
【0014】
本実施形態に係る固形外用組成物における(B)成分の含有量は特に限定されず、(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(B)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、固形外用組成物の総量を基準として、(B)成分の総含有量が、0.01~20質量%であることが好ましく、0.05~18質量%であることがより好ましく、0.1~16質量%であることが更に好ましく、0.15~14質量%であることが更により好ましく、0.2~12質量%であることが特に好ましい。
【0015】
<(C)成分>
本発明に用いられる多価アルコール(以下、単に(C)成分ともいう)とは、2価以上の多価アルコールのものをいい、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。本発明に用いる多価アルコールは、本発明の効果を奏し得る限り特に限定されないが、グリコール類、グリセリン類等が挙げられる。具体的には、グリコール類は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ペンチレングリコール、等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコール;トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールが挙げられる。グリセリン類は、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。(C)成分の中でも本発明による効果をより一層顕著に奏する観点から、グリセリンが好ましい。本発明の固形外用組成物では、上記(C)成分のうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、(C)成分を2種類以上組み合わせて用いることで、より一層高い本発明の効果が期待できる 。(C)成分は市販されているものを用いることができる。
【0016】
本実施形態に係る固形外用組成物における(C)成分の含有量は特に限定されず、(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(C)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、固形外用組成物の総量を基準として、(C)成分の総含有量が、0.001~10質量%であることが好ましく、0.005~8質量%であることがより好ましく、0.01~7質量%であることが更に好ましく、0.05~6質量%であることが更により好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。
【0017】
<(D)成分>
本実施形態に係る固形外用組成物は、更に(D)グリセリン脂肪酸エステル(単に「(D)成分」とも表記する。)を含有してもよい。本発明に用いるグリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれも含み、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。具体的には、モノグリセリン脂肪酸エステルは、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリル等が挙げられる。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4~10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2~10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6~10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルが挙げられる。(D)成分の中でも本発明による効果をより一層顕著に奏する観点から、ジイソステアリン酸ジグリセリルが好ましい。固形外用組成物が(D)成分を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。本発明の固形外用組成物では、上記(D)成分のうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、(D)成分を2種類以上組み合わせて用いることで、より一層高い本発明の効果が期待できる 。(D)成分は市販されているものを用いることができる。
【0018】
本実施形態に係る固形外用組成物における(D)成分の含有量は特に限定されず、(D)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(D)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、固形外用組成物の総量を基準として、(D)成分の総含有量が、0.01~15質量%であることが好ましく、0.05~12質量%であることがより好ましく、0.05~9質量%であることが更に好ましく、0.05~7質量%であることが更により好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。
【0019】
<(E)成分>
本実施形態に係る固形外用組成物は、更に(E)テルペノイド(単に「(E)成分」とも表記する。)を含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。本発明に用いるテルペノイドは、分子内に少なくとも1つの環構造を有するテルペノイドである環式テルペンと、分子内に環構造を有しないテルペノイドである非環式テルペンのいずれも含み、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。具体的には、メントール、メントン、カンフル、カルボン、ボルネオール、シネオール、アネトール、オイゲノール、テルピネオール、カルバクロール、リモネン、ピネン、シンナミルアルデヒド、チモール、シメン-5-オール、グリチルレチン酸、レチノール、グリチルリチン酸、及びこれらの誘導体等の環式テルペン;ゲラニオール、シトロネロール、リナロール、酢酸リナリル、ネロール、シトラール及びこれらの誘導体等の非環式テルペン等が挙げられるが、これらに限定されない。(E)成分の中でも本発明による効果をより一層顕著に奏する観点から、環式テルペンが好ましく、メントール、シメン-5-オール、グリチルレチン酸、レチノール、及びこれらの誘導体がより好ましい。
【0020】
テルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれでもよく、l-メントール、d-メントール、dl-メントールが例示される。ただし、ゲラニオール等のようにテルペノイドによっては光学異性体が存在しない場合もある。(E)成分は市販されているものを用いることができる。(E)成分は1種を単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。、何れの部位を用いてもよいが
【0021】
本実施形態に係る固形外用組成物における(E)成分の含有量は特に限定されず、(E)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(E)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、固形外用組成物の総量を基準として、(E)成分の総含有量が、0.001~5質量%であることが好ましく、0.005~4質量%であることがより好ましく、0.01~3質量%であることが更に好ましく、0.05~2質量%であることが更により好ましく、0.1~1質量%であることが特に好ましい。
【0022】
<(F)成分>
本実施形態に係る固形外用組成物は、更に(F)液状油(単に「(F)成分」とも表記する。)を含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。本発明に用いる液状油は、室温で流動性のあるものを示し、油溶性紫外線吸収剤、トコフェロール、のいずれも含み、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。具体的には、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジメチコジエチルベンザルマロネート、オクトクリレン及びサリチル酸オクチルからなる群より選択される1種以上の油溶性紫外線吸収剤;パラフィン、イソパラフィン、スクワランなどの炭化水素油;ホホバ油、オリーブ油、マカデミアナッツ油、アボカド油、ヤシ油、コーン油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油などの植物油;ラノリンなどの動物油;オクチルドデカノール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール類;マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、エチルヘキサン酸セチル、水添ロジン酸ペンタエリスチル等のエステル油等が挙げられる。(F)成分の中でも本発明による効果をより一層顕著に奏する観点から、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、パラフィン、スクワラン、オリーブ油、リンゴ酸ジイソステアリルが好ましい。固形外用組成物が(F)成分を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。本発明の固形外用組成物では、上記(F)成分のうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、(F)成分を2種類以上組み合わせて用いることで、より一層高い本発明の効果が期待できる 。(F)成分は市販されているものを用いることができる。
【0023】
本実施形態に係る固形外用組成物における(F)成分の含有量は特に限定されず、(F)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(F)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、固形外用組成物の総量を基準として、(F)成分の総含有量が、1~60質量%であることが好ましく、3~60質量%であることがより好ましく、5~60質量%であることが更に好ましく、5~50質量%であることが更により好ましく、7~45質量%であることが特に好ましい。
【0024】
<(G)成分>
本実施形態に係る固形外用組成物は、更に(G)ペースト油(単に「(G)成分」とも表記する。)を含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。本発明に用いるペースト油は、室温で流動性がないものを示し、石油由来、鉱物由来、植物由来、動物由来等、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。具体的には、ワセリン、イソパラフィンなどの炭化水素類、シアバター、ココアバター、アボカドバター、アロエバター等の植物由来、ラノリン、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・オクチルドデシル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル、脂肪酸(C10―30)(コレステロール/ラノステロール)エステルズ等のエステル類等が挙げられる。(G)成分の中でも本発明による効果をより一層顕著に奏する観点から、ワセリン、イソパラフィン、シアバター、ラノリンが好ましい。固形外用組成物が(G)成分を更に含有することで、本発明による効果がより顕著に奏される。本発明の固形外用組成物では、上記(G)成分のうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、(G)成分を2種類以上組み合わせて用いることで、より一層高い本発明の効果が期待できる 。(G)成分は市販されているものを用いることができる。
【0025】
本実施形態に係る固形外用組成物における(G)成分の含有量は特に限定されず、(G)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(G)成分の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、固形外用組成物の総量を基準として、(G)成分の総含有量が、5~70質量%であることが好ましく、8~65質量%であることがより好ましく、10~60質量%であることが更に好ましく、12~55質量%であることが更により好ましく、20~50質量%であることが特に好ましい。
【0026】
本実施形態に係る固形外用組成物の25℃における硬度は、成形性の観点から、5g以上が好ましく、7g以上がより好ましく、10g以上が更に好ましく、12g以上が更により好ましく、17g以上がより一層好ましく、20g以上が特に好ましい。固形外用組成物の25℃における硬度は、使用感の観点から、60g以下が好ましく、50g以下がより好ましく、45g以下が更に好ましく、38g以下が更により好ましく、35g以下がより一層好ましく、33g以下が特に好ましい。、固形外用組成物の25℃における硬度は、90℃以上にて加熱溶融した化粧料本体をリップスティック用容器(直径約12mm、高さ約40mm)に充填した後、4℃で2時間冷却固化し、25℃で一晩静置し冷、25℃で4時間以上静置した後、上端から約10mmを切り取り、でレオテック社製レオメーターを用いて、直径φ1mmの冶具にてtable speedが2mm/sの速さで冶具を深さ10mmまで針入させたときの最大値を読み取ることによって測定できる。
【0027】
本実施形態に係る固形外用組成物に用いられる水はイオン交換水や蒸留水等を用いることができる。水の含有量としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、固形外用組成物の総量を基準として、水の総含有量が、2質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1.2質量%以下であることが更に好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.8質量%以下であることが更により好ましく、0.6質量%以下であることが特に好ましく、0.4質量%以下であることが特に好ましく、0.2質量%以下であることが特に好ましく、実質的に0質量%であることが最も好ましい。2質量%を超えると、成形性が好ましくない場合がある。
【0028】
本実施形態に係る固形外用組成物における、(A)成分に対する(B)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(B)成分の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る水中油型化粧料に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が、0.001~5質量部であることが好ましく、0.001~3質量部であることがより好ましく、0.005~2質量部であることが更に好ましく、0.005~1質量部であることが特に好ましい。(A)成分に対する(B)成分の含有比率が小さいと使用感が悪くなり、(A)成分に対する(B)成分の含有比率が大きいと成形性が悪くなる。
【0029】
本実施形態に係る固形外用組成物における、(A)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(A)成分及び(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(C)成分の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る水中油型化粧料に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対して、(C)成分の総含有量が、0.005~2質量部であることが好ましく、0.01~1質量部であることがより好ましく、0.02~0.8質量部であることが更に好ましく、0.025~0.6質量部であることが更により好ましく、0.05~0.5質量部であることが特に好ましい。(A)成分に対する(C)成分の含有比率が小さいと使用感が悪くなり、(A)成分に対する(C)成分の含有比率が大きいと成形性が悪くなる。
【0030】
本実施形態に係る固形外用組成物における、(B)成分に対する(C)成分の含有比率は特に限定されず、(B)成分及び(C)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、固形外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定される。(B)成分に対する(C)成分の含有比率としては、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、例えば、本実施形態に係る水中油型化粧料に含まれる(B)成分の総含有量1質量部に対して、(C)成分の総含有量が、0.05~10質量部であることが好ましく、0.1~8質量部であることがより好ましく、0.2~7質量部であることが更に好ましく、0.3~6質量部であることが更により好ましく、1~5質量部であることが特に好ましい。(B)成分に対する(C)成分の含有比率が小さいと(C)成分の溶解や分散が不十分になり、(B)成分に対する(C)成分の含有比率が大きいと使用感が悪くなる。
【0031】
本実施形態に係る固形外用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、化粧品や医薬部外品や医薬品に使用される公知の成分を含むことができる。上記(A)~(G)成分の他に、例えば、抗酸化剤、美白成分、保湿剤、抗炎症成分、抗菌剤、ビタミン類、アミノ酸類、生物由来抽出物、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよい(但し前記(A)~(G)成分を除く)。また、添加剤、たとえば、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、キレート剤、安定化剤、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、香料、ミネラルなどから1種を単独で、または2種以上を組み合わせて添加することができる(但し前記(A)~(G)成分を除く)。また、基剤または担体を1種単独で、または2種以上を含むことができる。これらは公知のものを適宜選択して使用でき、常法を用いて製造することができる。市販されているものを用いることもできる。
【0032】
本実施形態に係る固形外用組成物は、適用部位に塗布することが可能な形状であれば特に限定されず、円柱状、楕円柱状、三角柱状、四角柱状、多角柱状、変形柱状(花びら型、動物型など)、ドーム型状などの容器に充填されてなる形状を有する。
【0033】
本実施形態に係る固形外用組成物を充填する容器の内径(直径)は、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、3~60mmであることが好ましく、4~55mmであることがより好ましく、5~50mmであることが更に好ましく、6~45mmであることが特に好ましい。内径は、容器に充填した固形外用組成物を容器収容部外へ出した場合に、塗布部と接触する部分の平面の形状において、重心を通る最も短い直線の長さである。容器に充填した固形外用組成物が円柱状の場合は円の直径であり、正四角柱の場合は正方形の一辺の長さである。
【0034】
本実施形態に係る固形外用組成物を充填する容器における、内径(直径)に対する収容部の深さは、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、0.3~20であることが好ましく、0.8~12であることがより好ましく、1.2~9であることが更に好ましく、1.4~6であることがより更に好ましく、1.6~3であることが特に好ましい。収容部の深さは、収容部の底面が平面状ではなく傾斜等を有する場合は、深さ方向に最も長い距離のことをいう。
【0035】
本実施形態に係る固形外用組成物は、皮膚に適用することができる。皮膚とは体(例えば、顔、頭、耳、首、胸、脇、腹、腰、背中、尻、腕、脚、手、指、デリケートゾーン(陰部)等)の表面だけでなく、粘膜も包含する概念である。
【0036】
本実施形態に係る固形外用組成物は、薬剤の形態は特に限定されず、化粧品や医薬部外品や医薬品の形態として公知の形態を採ることができる。このような公知の形態の中でも、たとえば、クリーム剤、ゲル剤、リニメント剤、軟膏剤、パップ剤、リップスティックのようなスティック剤などをあげることができる。また、乳液、クリーム、ボディローション、ボディークリーム、日焼け止めのような基礎化粧品の形態や、ファンデーション、口紅、ほお紅、アイメイク、おしろい、マニキュア、ペディキュア等のメークアップ化粧料の形態でも用いられ得る。好ましくは口唇用リップスティック、スティック状制汗剤、スティック状日焼け止めである。 本実施形態に係る固形外用組成物は、各成分を常法に従って、たとえば、混合撹拌することにより調製できる。
【実施例0037】
以下、試験例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は質量%を示す。
【0038】
[試験例1]
下記の表1、2に示す組成を有する固形外用組成物を常法に従って調製し、繰り出し式リップスティック容器(ポリプロピレン製)に充填した。容器内で固形外用組成物は直径12mm、長さ40mmの円柱形状である。保形性、はがれ現象、発汗、使用感を以下の評価基準で評価し、結果を表1、2に示した。
【0039】
(保形性の評価基準)
固形外用組成物の長さが30mmとなるようにリップスティック容器の外に繰り出し、水平方向に45度傾けて5秒間静止した後の固形外用組成物の保形性を観察した。
〇:固形外用組成物は水平方向に45度傾いた形状のまま保持される
△:固形外用組成物は水平方向に45度より少し傾き、形状はわずかに曲がる
×:固形外用組成物は水平方向に45度より大きく傾き、形状は曲がる
【0040】
(はがれ現象の評価基準)
リップスティック容器に充填した固形外用組成物8個について、容器の外に長さが30mmとなるように繰り出し、固形外用組成物の側面を目視で観察し、はがれ現象の有無を評価した。固形外用組成物の側面の表面において、薄い剥がれ又は欠けを観察した場合に、はがれ現象があると評価した。
◎:8個全て、はがれ現象が無い
〇:8個中1~2個にはがれ現象がある
△:8個中3~5固個にはがれ現象がある
×:8個中6~8個にはがれ現象がある
【0041】
(発汗の評価基準)
固形外用組成物の長さが30mmとなるようにリップスティック容器の外に繰り出し、固形外用組成物の側面を目視で観察し、液状の滴の有無を評価した。
〇:液状の滴は無い
×:液状の滴がある
【0042】
(使用感の評価基準)
5名の被験者がリップスティック容器に充填した固形外用組成物を2日間、唇に塗布して使用し、唇の皮むけ状態の改善程度により0点から5点の間で評価点を付けた。皮むけの状態に変化はない場合に0点とし、皮むけの状態が改善して皮むけが無くなった場合に5点とした。5名の被験者の評価点の平均点を算出し、下記の基準で評価した。被験者は、口と鼻を覆う不織布マスクを日常的に着用することにより、唇の荒れや皮むけが起こりやすくなったと感じる人を選定した。
◎:3.5点以上
〇:2.0点以上、3.5点未満
△:0点以上、2.0点未満
【0043】
[試験例2]
試験例1で使用した固形外用組成物について、25℃における硬度を測定した。90℃以上で加熱溶融した固形外用組成物をリップスティック容器(直径12mm、高さ40mm)に天面まで充填した後、4℃で2時間冷却固化させ、25℃で一晩静置した後、25℃に4時間以上放置したのちに、天面から11mmを切り取った。レオテック社製レオメーターを用いて、直径φ1mmの冶具をtable speedが2mm/sの速度で深さ10mmまで針入させたときの硬度の最大値を読み取った。各組成物について3回測定を行い、平均値を表1、2に示した。
【0044】
【表1】
なお、表1中のジイソステアリン酸ジグリセリルの原料は、EMALEX DISG―2(日本エマルジョン株式会社)である。
【0045】
【表2】
なお、表2中のジイソステアリン酸ジグリセリルの原料は、EMALEX DISG―2(日本エマルジョン株式会社)である。
【0046】
表1に示すとおり、融点が40℃以上である固形ワックス、水溶性ビタミン、多価アルコールを含有する固形外用組成物は、保形性が良く、はがれ現象および発汗が生じず、成形性が良好であった(実施例1)。融点が40℃以上である固形ワックス、水溶性ビタミンを含有し、多価アルコールを含有しない固形外用組成物は、保形性はあるが、わずかに曲がった部分にひび状の割れを観察し、はがれ現象が生じ、成形性は不良だった(比較例1)。さらに、使用感では唇に塗布する時にザラザラとした刺激があり、皮むけの状態に好ましくないと被験者は評価した(比較例1)。融点が40℃以上である固形ワックス、水溶性ビタミン、多価アルコールを含有し、水を2.1質量%含有する固形外用組成物は、保形性が非常に悪く成形性が不良のため、硬度、はがれ、発汗、使用感は評価できなかった(比較例2)。比較例1及び比較例2は製剤における不均一性によるものである可能性が考えられた。
融点が40℃以上である固形ワックス、水溶性ビタミン、多価アルコールを含有し、更にグリセリン脂肪酸エステルを含有する固形外用組成物は、保形性が良く、はがれ現象および発汗が生じず、成形性が良好であった(実施例2)。さらに使用感も非常によく、被験者からは皮がむけて浮き上がった部分に固形外用組成物が密着して膜のように唇を覆う実効感が持続し、硬くなっていた唇の皮が柔らかくなったという意見を得た。固形外用組成物が皮むけの外面や浮き上がった隙間に入りワックスの密着性で上皮全体を乾燥から保護し、水溶性ビタミンの薬効や多価アルコールの保水性により乾燥して硬くなった上皮に浸透し、うるおいを与え、グリセリン脂肪酸エステルにより油性成分と水性成分の均一性の高い組成物であるため、ワックス、水溶性ビタミン、多価アルコールの機能が適用部位で素早く発揮され、皮むけの改善効果が高いと考えられた。さらに皮むけが生じて凹凸のある唇に対して非常に滑らかに塗る事ができるので、塗布の操作をより短時間で素早く行う事が出来るという意見も得た。
【0047】
[試験例3]
下記の表3に示す固形外用組成物を常法に従って調製し、繰り出し式リップスティック容器(ポリプロピレン製)に充填した。容器内で固形外用組成物は直径12mm、長さ40mmの円柱形状である。実施例7~12は保形性、はがれ、発汗の評価は良く、成形性は良好な固形外用組成物である。使用感を以下の評価基準で評価し、結果を表3に示した。
【0048】
(使用感の評価基準)
5名の被験者がリップスティック容器に充填した固形外用組成物を唇に塗布し、3時間後の保湿感について、下記の基準で評価点を付けた。5名の被験者の評価点の平均点を表3に示した。
◎:保湿感を感じる。
〇:保湿感を少し感じる。
×:保湿感を感じない。乾燥していると感じる。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すとおり、実施例7~12の固形外用組成物は保湿感が良好であった。