(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183350
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】ラコサミド固形製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/165 20060101AFI20231220BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231220BHJP
A61K 9/32 20060101ALI20231220BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20231220BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
A61K31/165
A61K47/32
A61K9/32
A61P25/08
A61K9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022107370
(22)【出願日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏宙
(72)【発明者】
【氏名】三上 達也
(72)【発明者】
【氏名】木村 優介
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA32
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD38
4C076DD38K
4C076EE13H
4C076EE32
4C076EE32H
4C076FF52
4C076FF65
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA02
4C206GA19
4C206GA28
4C206GA37
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA03
4C206NA09
4C206ZA06
(57)【要約】
【課題】苦味が抑制され、光安定性も備えたラコサミド固形製剤を提供することを課題とする。
【解決手段】ラコサミドとアミノアルキルメタクリレートコポリマーとを含有することを特徴とするラコサミド固形製剤により解決される。具体的には、前記ラコサミドを含有する核粒子に、前記アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒や、これを含む錠剤であることが好ましい。前記顆粒は、前記コーティング層の外側にオーバーコート層を有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラコサミドとアミノアルキルメタクリレートコポリマーとを含有することを特徴とするラコサミド固形製剤。
【請求項2】
前記ラコサミドを含有する核粒子に、前記アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒であることを特徴とする請求項1に記載のラコサミド固形製剤。
【請求項3】
前記ラコサミドを含有する核粒子に、前記アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒を含む錠剤であることを特徴とする請求項1に記載のラコサミド固形製剤。
【請求項4】
前記顆粒は、前記コーティング層の外側にオーバーコート層を有することを特徴とする請求項2または3に記載のラコサミド固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラコサミド固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラコサミド、すなわち、(2R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロパンアミドは抗てんかん薬であり、これを含む錠剤、ドライシロップ剤、注射剤が「ビムパッド(登録商標)」という名称で販売されている。
【0003】
ラコサミドは苦味を有することが知られている。苦味を有する有効成分を製剤化する場合には、患者の服薬アドヒアランスの観点から、苦味をマスキングすることが求められる。有効成分の不快な味をマスキングする方法としては、有効成分を含む顆粒や錠剤を水不溶性高分子でコーティングする方法があり、例えば特許文献1には、有効成分を含むコア粒子の表面に、水不溶性高分子であるエチルセルロースをコーティングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、有効成分としてラコサミドを有する固形製剤を製造するにあたり、ラコサミドを含む核粒子をエチルセルロースでコーティングすると、光安定性が低下するという新たな課題が生じることを本発明者は見出した。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、苦味が抑制され、光安定性も備えたラコサミド固形製剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、エチルセルロースに代えて、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを使用することにより、光安定性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕ラコサミドとアミノアルキルメタクリレートコポリマーとを含有することを特徴とするラコサミド固形製剤。
〔2〕前記ラコサミドを含有する核粒子に、前記アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒であることを特徴とする〔1〕のラコサミド固形製剤。
〔3〕前記ラコサミドを含有する核粒子に、前記アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒を含む錠剤であることを特徴とする〔1〕のラコサミド固形製剤。
〔4〕前記顆粒は、前記コーティング層の外側にオーバーコート層を有することを特徴とする〔2〕または〔3〕のラコサミド固形製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、苦味が抑制され、光安定性も備えたラコサミド固形製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のラコサミド固形製剤(以下、単に固形製剤という場合もある。)は、ラコサミドとアミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有する。
【0010】
ラコサミドとしては、特に制限はなく、市場より入手可能なものを使用でき、結晶形態でも、アモルファス形態でもよい。
アミノアルキルメタクリレートコポリマーとしては、市場より医薬品用途として入手可能なアミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプを使用できる。アミノアルキルメタクリレートコポリマーEタイプとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体である、市販のオイドラギット(登録商標)E100、オイドラギット(登録商標)EPO、コリコート(登録商標)スマートシール30D、コリコート(登録商標)スマートシール100P等を使用できる。
【0011】
本発明の固形製剤は、ラコサミドおよびアミノアルキルメタクリレートコポリマーの他に、医薬品分野で使用可能な賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤、香料等の添加剤をいずれも必要に応じて含有することができる。
【0012】
賦形剤としては、例えば、D-マンニトール、結晶セルロース、乳糖水和物、無水乳糖、精製白糖、バレイショデンプン、アルファー化デンプン等が挙げられ、これらのうちの1種以上を必要に応じて使用できるが、味や造粒等のしやすさの点でD-マンニトールを使用することが好ましい。
【0013】
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、デキストリン、水アメ等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できるが、ヒドロキシプロピルセルロースを使用すると、ラコサミド固形製剤の安定性が優れ、類縁物質の生成を抑制できる点で好ましい。
【0014】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0015】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0016】
甘味剤としては、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、スクラロース、ソーマチン、スクロース、サッカリン又はその塩、グリチルリチン酸又はその塩、ステビア又はその塩等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
香料としては、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、l-メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
【0017】
その他の添加剤としては、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム,タルク等)、フィルムコート用基材(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、カルナウバロウ等が挙げられ、これらのうち1種以上を使用できる。
【0018】
本発明の固形製剤の形態には特に制限はなく、顆粒状製剤(顆粒剤、ドライシロップ剤、細粒剤等)、錠剤(即放錠、口腔内崩壊錠等)等が挙げられる。
【0019】
<顆粒状製剤>
本発明の固形製剤が顆粒状製剤である場合には、ラコサミドを含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒であることが好ましい。コーティング層の外側には、目的に応じたオーバーコート層を設けてもよい。オーバーコート層を設けることにより、例えば顆粒同士の固着を防止する等、特定の機能を付与することができる。
核粒子の形態としては、ラコサミドと添加物を含む造粒物、添加物粒子の表面にラコサミドを含む原薬層が形成されたレイヤリング粒子等が挙げられ、ラコサミドを含有する粒子状物であればよい。
【0020】
本発明の固形製剤中のラコサミドの含有量は適宜設定できるが、固形製剤が顆粒状製剤である場合には、顆粒状製剤を100質量%とした場合、例えば1~30質量%とすることができ、好ましくは2~20質量%、より好ましくは5~15質量%である。
また、核粒子を100質量%とした場合、核粒子中のラコサミドの含有量は例えば5~35質量%とすることができ、好ましくは8~25質量%、10~20質量%である。
【0021】
核粒子は、ラコサミド以外に、先に例示したような添加物を必要に応じて含むことができ、D-マンニトールのような賦形剤と、ヒドロキシプロピルセルロースのような結合剤を少なくとも含むことが好ましい。
顆粒状製剤を100質量%とした場合、賦形剤の含有量は例えば40~70質量%とすることができ、好ましくは45~65質量%、より好ましくは50~60質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の賦形剤の含有量は例えば60~90質量%とすることができ、好ましくは70~90質量%、より好ましくは75~85質量%である。
顆粒状製剤を100質量%とした場合、結合剤の含有量は例えば1~15質量%とすることができ、好ましくは2~10質量%、より好ましくは3~8質量%である。
核粒子を100質量%とした場合、核粒子中の結合剤の含有量は例えば3~20質量%とすることができ、好ましくは4~15質量%、より好ましくは5~10質量%である。
【0022】
本発明の固形製剤中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は適宜設定できるが、固形製剤が顆粒状製剤である場合には、顆粒状製剤を100質量%とした場合、例えば1~30質量%とすることができ、好ましくは2~20質量%、より好ましくは5~15質量%である。
また、コーティング層を100質量%とした場合、コーティング層中のアミノアルキルメタクリレートコポリマーの含有量は少なくとも80質量%であることが好ましく、90質量%以上がより好ましく、さらに好ましくは100質量%である。
コーティング層には、アミノアルキルメタクリレートコポリマー以外に、必要に応じて先に例示したような添加物や、アミノアルキルメタクリレートコポリマー以外の水不溶性高分子を含んでもよい。
【0023】
コーティング層の外側にオーバーコート層を設ける場合、オーバーコート層を構成する成分は目的に応じて選択できるが、例えば顆粒同士の固着を防止する目的の場合には、D-マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等の糖アルコール等からなるオーバーコート層を設けることが好ましい。また、服用感を高める目的の場合には甘味剤、光安定性を付与する目的の場合には酸化チタン、着色剤等をオーバーコート層に用いることができる。オーバーコート層は、層を形成するための基材として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースや、ヒプロメロース等の水溶性高分子を含んでいてもよい。
【0024】
核粒子とコーティング層の質量割合は、核粒子を100質量部とした場合に、例えば1~50質量部であり、好ましくは5~30質量部、より好ましくは10~20質量部である。
オーバーコート層を設ける場合、オーバーコート層の質量割合はその目的に応じて適宜設定できるが、核粒子を100質量部とした場合に、例えば2~100質量部であり、好ましくは10~60質量部、より好ましくは20~40質量部である。
【0025】
顆粒状製剤は、上述したとおり、添加剤を適宜含有することができるが、核粒子、コーティング層、オーバーコート層の少なくともいずれかに甘味剤を含有することが好ましい。
【0026】
固形製剤が顆粒状製剤である場合には、次のような方法で製造できる。
まず、ラコサミドと賦形剤などの添加剤とを混合して造粒用組成物とし、結合剤を水等の溶媒に溶解した液を造粒用組成物に加え、流動層造粒、攪拌造粒等の公知方法で造粒する。ついで、得られた造粒物(核粒子)に対して、アミノアルキルメタクリレートコポリマーをエタノール等の溶媒に溶解した液を噴霧、乾燥し、造粒物の外側にコーティング層を形成する。ついで、必要に応じて、D-マンニトール等を水に溶解した液を噴霧、乾燥し、オーバーコート層を形成する。
また、D-マンニトール、乳糖水和物等の賦形剤からなる粒子を用意し、その表面にラコサミドを含む液を噴霧して原薬層を形成し、得られたレイヤリング粒子を核粒子として用いてもよい。
以上のような方法により、顆粒状製剤である本発明の固形製剤を製造することができる。
なお、オーバーコート層の外側に、目的に応じた層をさらに1層以上形成してもよい。
【0027】
<錠剤>
本発明の固形製剤が錠剤(即放錠、口腔内崩壊錠等)である場合には、ラコサミドを含有する核粒子に、アミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するコーティング層が設けられた顆粒を含む錠剤であることが好ましい。この場合もコーティング層の外側には、目的に応じたオーバーコート層を設けてもよいし、さらにその外側に目的に応じた層を1層以上形成してもよい。
このような錠剤は、顆粒に対して必要に応じて添加剤を加え、打錠することにより製造できる。
また、錠剤の他の形態としては、ラコサミドと必要に応じて添加剤を含有する素錠を得て、その外側にアミノアルキルメタクリレートコポリマーを含有するフィルムコーティング層が形成された形態も好ましく例示できる。
錠剤の形態は、錠剤が即放錠であるか口腔内崩壊錠であるか等に応じて、適宜決定できる。
【0028】
以上説明したように、本発明の固形製剤は、ラコサミドとアミノアルキルメタクリレートコポリマーとを含有するため、苦味が抑制され、光安定性も備える。
【実施例0029】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[例1、例2]
下記の表1の処方に従い、顆粒状製剤であるドライシロップ剤を製造した。
具体的には、まず、表1の造粒物の欄に記載の各成分のうち、ヒドロキシプロピルセルロース以外の成分を混合して造粒用組成物とし、ヒドロキシプロピルセルロースを水に溶解させた液を造粒用組成物に噴霧して流動層造粒し、造粒物(核粒子)を得た。ついで、得られた造粒物に対して、表1のコーティング層の欄に記載の成分をエタノールに溶解させた液を噴霧、乾燥してコーティング層を形成し、さらに表1のオーバーコート層の欄に記載の成分を水に溶解させた液を噴霧、乾燥してオーバーコート層を形成した。
その後、18メッシュのスクリーンを通過させて整粒し、表1に示す割合で各成分を含有する例1、例2のドライシロップ剤を得た。
得られた各ドライシロップ剤について、以下の方法により、純度試験(光安定性の評価)を行った。
結果を表2に示す。
【0030】
<純度試験(光安定性の評価)>
開放系において、各ドライシロップ剤に3000lxの光を連続照射し、照射開始から400時間(積算照射量120万lx・hr)経過した後の総類縁物質量と、照射前の総類縁物質量を測定することにより、純度試験を実施した。具体的には、水とメタノールとの9:1混液10mLにドライシロップ剤500mgを溶解し、得られた溶解液を3000rpmで5分間遠心して上澄み液を採取して試料溶液とし、これを高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法で分析した。
表2に記載の総類縁物質量の数値は、ラコサミド由来のピーク面積に対する、観測された複数の類縁物質によるピーク面積の総和の割合を百分率で示したものである。
【0031】
【0032】
【0033】
表2に示すように、コーティング層にアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを用いた例1のドライシロップ剤は、エチルセルロースを用いた例2のドライシロップ剤に比べて、光照射による総類縁物質量の増加が抑制されており、光安定性に優れていた。
また、例1および例2のドライシロップ剤は、50℃および60℃の開放系で1週間保存した後も固着が認められなかった。