(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183356
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】配線回路基板、および、配線回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20231220BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20231220BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20231220BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20231220BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/09 B
H05K1/11 H
H05K3/40 E
H05K3/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168719
(22)【出願日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022096919
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】池田 敬裕
(72)【発明者】
【氏名】山田 恭太郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 岳人
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼山 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄希
【テーマコード(参考)】
4E351
5E317
5E338
5E343
【Fターム(参考)】
4E351AA03
4E351AA04
4E351BB33
4E351BB46
4E351BB49
4E351CC03
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4E351GG09
5E317AA24
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5E343DD43
5E343EE17
5E343FF16
5E343GG13
(57)【要約】
【課題】第1金属薄膜の下の金属層を保護しつつ、導体パターンと、第1金属薄膜の下の金属層との間の電気抵抗の低減を図ることができる配線回路基板、および、その配線回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】
配線回路基板1は、金属支持層11と、第1金属薄膜12と、貫通穴131を有する絶縁層13と、貫通穴131内において第1金属薄膜12の上に配置される第2金属薄膜14と、貫通穴131内において第1金属薄膜12および第2金属薄膜14を介して金属支持層11と導通する導体パターン15とを備える。第1金属薄膜12は、少なくとも絶縁層13との接触面S1において酸化被膜121を有する。貫通穴131の中央部において、酸化被膜121の厚みT1を、0にするか、または、接触面S1の酸化被膜121の厚みT2よりも薄くする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持層と、
前記金属支持層の上に配置される第1金属薄膜と、
前記第1金属薄膜の上に配置され、貫通穴を有する絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置されるとともに、前記貫通穴内において前記第1金属薄膜の上に配置される第2金属薄膜と、
前記第2金属薄膜の上に配置され、前記貫通穴内において前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜を介して前記金属支持層と導通する導体パターンと
を備え、
前記第1金属薄膜は、少なくとも前記絶縁層との接触面において酸化被膜を有し、
前記貫通穴の中央部において、前記酸化被膜の厚みは、0であるか、または、前記接触面の前記酸化被膜の厚みよりも薄い、配線回路基板。
【請求項2】
金属支持層と、
前記金属支持層の上に配置される第1金属薄膜と、
前記第1金属薄膜の上に配置され、貫通穴を有する絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置されるとともに、前記貫通穴内において前記第1金属薄膜の上に配置される第2金属薄膜と、
前記第2金属薄膜の上に配置され、前記貫通穴内において前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜を介して前記金属支持層と導通する導体パターンと
を備え、
前記貫通穴の中央部において、前記第1金属薄膜の厚みは、前記金属支持層と前記絶縁層との間の前記第1金属薄膜の厚みよりも薄い、配線回路基板。
【請求項3】
金属支持層と、
前記金属支持層の上に配置される第1金属薄膜と、
前記第1金属薄膜の上に配置され、貫通穴を有する絶縁層と、
前記絶縁層の上に配置される第2金属薄膜と、
前記貫通穴内において前記金属支持層の上に配置される第3金属薄膜と、
前記第2金属薄膜の上に配置されるとともに、前記貫通穴内において前記第3金属薄膜の上に配置され、前記第3金属薄膜を介して前記金属支持層と導通する導体パターンとを備え、
前記貫通穴の中央部において、前記第3金属薄膜の厚みは、前記金属支持層と前記絶縁層との間の前記第1金属薄膜の厚みと、前記絶縁層と前記導体パターンとの間の前記第2金属薄膜の厚みとの合計よりも薄く、かつ、前記金属支持層と前記絶縁層との間の前記第1金属薄膜の厚み、または、前記絶縁層と前記導体パターンとの間の前記第2金属薄膜の厚みよりも厚い、配線回路基板。
【請求項4】
前記金属支持層と前記第1金属薄膜との間に配置され、前記金属支持層よりも高い導電率を有する中間金属層を、さらに有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記第1金属薄膜は、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステンおよびモリブデンの少なくとも1つを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記第1金属薄膜は、クロムからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板の製造方法であって、
前記金属支持層を準備する第1工程と、
前記第1工程の後、前記第1金属薄膜を形成する第2工程と、
前記第2工程の後、前記絶縁層を形成する第3工程と、
前記第3工程の後、前記貫通穴内の前記第1金属薄膜の表面をエッチングする第4工程と、
前記第4工程の後、前記第2金属薄膜を形成する第5工程と、
前記第5工程の後、前記導体パターンを形成する第6工程と
を含む、配線回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記第4工程において、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選択される少なくとも1種を用いたプラズマエッチングにより、前記貫通穴内の前記第1金属薄膜の表面をエッチングする、請求項7に記載の配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板、および、配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属支持基板と、金属支持基板の上に配置される第1金属層と、第1金属層の上に配置される絶縁層と、絶縁層の上に配置される第2金属層と、第2金属層の上に配置される導体層とを備え、導体層と金属支持基板とがビアを介して導通している配線回路基板が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載される配線回路基板では、導体層と金属支持基板との間で低抵抗の電気的接続を実現するために、ビアが形成される部分の第1金属層を、エッチングにより除去し、第2金属層と導体層とからなるビアを金属支持基板に直接接触させている。
【0005】
そのため、第1金属層だけでなく、第1金属層の下の金属層(金属支持基板)までエッチングされてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、第1金属薄膜の下の金属層を保護しつつ、導体パターンと、第1金属薄膜の下の金属層との間の電気抵抗の低減を図ることができる配線回路基板、および、その配線回路基板の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、金属支持層と、前記金属支持層の上に配置される第1金属薄膜と、前記第1金属薄膜の上に配置され、貫通穴を有する絶縁層と、前記絶縁層の上に配置されるとともに、前記貫通穴内において前記第1金属薄膜の上に配置される第2金属薄膜と、前記第2金属薄膜の上に配置され、前記貫通穴内において前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜を介して前記金属支持層と導通する導体パターンとを備え、前記第1金属薄膜が、少なくとも前記絶縁層との接触面において酸化被膜を有し、前記貫通穴の中央部において、前記酸化被膜の厚みが、前記接触面の前記酸化被膜の厚みよりも薄いか、または、0である、配線回路基板を含む。
【0008】
このような構成によれば、貫通穴内において、第1金属薄膜の酸化被膜の少なくとも一部だけを除去し、第1金属薄膜を残した状態で、導体パターンと金属支持層とを導通させることができる。
【0009】
そのため、第1金属薄膜によって金属支持層(第1金属薄膜の下の金属層)を保護しつつ、酸化被膜を除去することによって、導体パターンと金属支持層との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0010】
本発明[2]は、金属支持層と、前記金属支持層の上に配置される第1金属薄膜と、前記第1金属薄膜の上に配置され、貫通穴を有する絶縁層と、前記絶縁層の上に配置されるとともに、前記貫通穴内において前記第1金属薄膜の上に配置される第2金属薄膜と、前記第2金属薄膜の上に配置され、前記貫通穴内において前記第1金属薄膜および前記第2金属薄膜を介して前記金属支持層と導通する導体パターンとを備え、前記貫通穴の中央部において、前記第1金属薄膜の厚みが、前記金属支持層と前記絶縁層との間の前記第1金属薄膜の厚みよりも薄い、配線回路基板を含む。
【0011】
このような構成によれば、貫通穴内において、第1金属薄膜の一部を除去し、第1金属薄膜を残した状態で、導体パターンと金属支持層とを導通させることができる。
【0012】
そのため、第1金属薄膜によって金属支持層(第1金属薄膜の下の金属層)を保護しつつ、第1金属薄膜を薄くすることによって、導体パターンと金属支持層との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0013】
本発明[3]は、金属支持層と、前記金属支持層の上に配置される第1金属薄膜と、前記第1金属薄膜の上に配置され、貫通穴を有する絶縁層と、前記絶縁層の上に配置される第2金属薄膜と、前記貫通穴内において前記金属支持層の上に配置される第3金属薄膜と、前記第2金属薄膜の上に配置されるとともに、前記貫通穴内において前記第3金属薄膜の上に配置され、前記第3金属薄膜を介して前記金属支持層と導通する導体パターンとを備え、前記貫通穴の中央部において、前記第3金属薄膜の厚みが、前記金属支持層と前記絶縁層との間の前記第1金属薄膜の厚みと、前記絶縁層と前記導体パターンとの間の前記第2金属薄膜の厚みとの合計よりも薄く、かつ、前記金属支持層と前記絶縁層との間の前記第1金属薄膜の厚み、または、前記絶縁層と前記導体パターンとの間の前記第2金属薄膜の厚みよりも厚い、配線回路基板を含む。
【0014】
このような構成によれば、貫通穴内において、第1金属薄膜の一部を除去し、第1金属薄膜を残した状態で第1金属薄膜の上に第2金属薄膜を形成すれば、第1金属薄膜を残した状態で、第1金属薄膜と第2金属薄膜とからなる第3金属薄膜を介して、導体パターンと金属支持層とを導通させることができる。
【0015】
そのため、第1金属薄膜によって金属支持層(第1金属薄膜の下の金属層)を保護しつつ、第1金属薄膜を薄くすることによって、導体パターンと金属支持層との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0016】
本発明[4]は、前記金属支持層と前記第1金属薄膜との間に配置され、前記金属支持層よりも高い導電率を有する中間金属層を、さらに有する、上記[1]~[3]のいずれか1つの配線回路基板を含む。
【0017】
このような構成によれば、金属支持層と第1金属薄膜との間に中間金属層が有る場合でも、第1金属薄膜によって中間金属層(第1金属薄膜の下の金属層)を保護しつつ、導体パターンと中間金属層との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0018】
本発明[5]は、前記第1金属薄膜が、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステンおよびモリブデンの少なくとも1つを含有する、上記[1]~[4]のいずれか1つの配線回路基板を含む。
【0019】
本発明[6]は、前記第1金属薄膜が、クロムからなる、上記[1]~[4]のいずれか1つの配線回路基板を含む。
【0020】
本発明[7]は、上記[1]~[6]のいずれか1つの配線回路基板の製造方法であって、前記金属支持層を準備する第1工程と、前記第1工程の後、前記第1金属薄膜を形成する第2工程と、前記第2工程の後、前記絶縁層を形成する第3工程と、前記第3工程の後、前記貫通穴内の前記第1金属薄膜の表面をエッチングする第4工程と、前記第4工程の後、前記第2金属薄膜を形成する第5工程と、前記第5工程の後、前記導体パターンを形成する第6工程とを含む、配線回路基板の製造方法を含む。
【0021】
本発明[8]は、前記第4工程において、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選択される少なくとも1種を用いたプラズマエッチングにより、前記貫通穴内の前記第1金属薄膜の表面をエッチングする、上記[7]の配線回路基板の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の配線回路基板によれば、第1金属薄膜の下の金属層(金属支持層または中間金属層)を保護しつつ、導体パターンと、第1金属薄膜の下の金属層との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0023】
本発明の配線回路基板の製造方法によれば、上記した配線回路基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図2は、
図1に示す配線回路基板のA-A断面図を示す。
【
図3】
図3Aから
図3Cは、
図1に示す配線回路基板の製造方法を説明するための説明図であって、
図3Aは、金属支持層を準備する工程(第1工程)を示し、
図3Bは、第1金属薄膜を形成する工程(第2工程)を示し、
図3Cは、絶縁層を形成する工程(第3工程)を示す。
【
図4】
図4Aから
図4Cは、
図3Cに続いて、
図1に示す配線回路基板の製造方法を説明するための説明図であって、
図4Aは、貫通穴内の第1金属薄膜の表面をエッチングする工程(第4工程)を示し、
図4Bは、第2金属薄膜を形成する工程(第5工程)を示し、
図4Cは、導体パターンを形成する工程(第6工程)を示す。
【
図5】
図5は、変形例(1)を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、変形例(2)を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.配線回路基板
まず、配線回路基板1について説明する。
【0026】
図1に示すように、配線回路基板1は、第1方向および第2方向に延びる。本実施形態では、配線回路基板1は、略矩形状を有する。なお、配線回路基板1の形状は、限定されない。
【0027】
図2に示すように、配線回路基板1は、金属支持層11と、第1金属薄膜12と、絶縁層13と、第2金属薄膜14と、導体パターン15と、カバー層16とを備える。
【0028】
(1)金属支持層
金属支持層11は、第1金属薄膜12と、絶縁層13と、第2金属薄膜14と、導体パターン15と、カバー層16とを支持する。本実施形態では、金属支持層11の材料として、例えば、ステンレス、および、銅合金が挙げられる。
【0029】
(2)第1金属薄膜
第1金属薄膜12は、配線回路基板1の厚み方向において、金属支持層11の上に配置される。厚み方向は、第1方向および第2方向と直交する。第1金属薄膜12は、金属支持層11と絶縁層13との間に配置される。第1金属薄膜12は、金属支持層11を保護する。第1金属薄膜12の材料として、例えば、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステン、モリブデン、および、それらの合金が挙げられる。つまり、第1金属薄膜12は、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステンおよびモリブデンの少なくとも1つを含有する。好ましくは、第1金属薄膜12は、クロムからなる。
【0030】
第1金属薄膜12は、絶縁層13との接触面S1、および、第2金属薄膜14との接触面S2において、酸化被膜121を有する。第2金属薄膜14との接触面S2は、絶縁層13の貫通穴131の内側に配置される。貫通穴131については、後で説明する。
【0031】
接触面S2の酸化被膜121の厚みは、接触面S1の酸化被膜121の厚みよりも薄い。詳しくは、少なくとも貫通穴131の中央部において、接触面S2の酸化被膜121の厚みT1は、接触面S1の酸化被膜121の厚みT2よりも薄い。これにより、第1金属薄膜12と第2金属薄膜14との間の電気抵抗の低減を図ることができる。これにより、第1金属薄膜12によって金属支持層11を保護しつつ、導体パターン15と金属支持層11との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0032】
接触面S2の酸化被膜121の厚みT1は、例えば、5nm以下、好ましくは、3nm以下である。
【0033】
接触面S1の酸化被膜121の厚みT2は、例えば、1nm以上であり、例えば、10nm以下である。
【0034】
接触面S1の酸化被膜121の厚みT2を100%として場合、接触面S2の酸化被膜121の厚みT1は、例えば、85%以下、好ましくは、70%以下である。
【0035】
また、接触面S2の酸化被膜121が薄いだけでなく、少なくとも貫通穴131の中央部において、第1金属薄膜12の厚みT3が、金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12の厚みT4よりも薄い。そのため、第1金属薄膜12によって金属支持層11を保護しつつ、導体パターン15と金属支持層11との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0036】
貫通穴131の中央部の第1金属薄膜12の厚みT3は、例えば、100nm以下、好ましくは、75nm以下であり、例えば、5nm以上である。
【0037】
金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12の厚みT4は、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下であり、例えば、5nm以上である。
【0038】
金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12の厚みT4を100%とした場合、貫通穴131の中央部の第1金属薄膜12の厚みT3は、例えば、96%以下、好ましくは、92%以下であり、例えば、50%以上である。
【0039】
(3)絶縁層
絶縁層13は、厚み方向において、第1金属薄膜12の上に配置される。言い換えると、絶縁層13は、厚み方向において、第1金属薄膜12を介して、金属支持層11の上に配置される。絶縁層13は、金属支持層11と導体パターン15との間に配置される。絶縁層13は、金属支持層11と導体パターン15とを絶縁する。絶縁層13は、樹脂からなる。樹脂として、例えば、ポリイミド、マレイミド、エポキシ樹脂、ポリベンゾオキサゾール、および、ポリエステルが挙げられる。絶縁層13は、貫通穴131を有する。貫通穴131は、ビアホールである。
【0040】
(4)第2金属薄膜
第2金属薄膜14は、厚み方向において、絶縁層13の上に配置される。第2金属薄膜14は、絶縁層13と導体パターン15との間に配置される。第2金属薄膜14は、導体パターン15を保護する。第2金属薄膜14の材料として、例えば、クロム、ニッケル、銅、チタン、タングステン、モリブデン、および、それらの合金が挙げられる。好ましくは、第2金属薄膜14は、クロムからなる。第2金属薄膜14は、貫通穴131内において、第1金属薄膜12の上に配置される。これにより、貫通穴131内において、第1金属薄膜12と第2金属薄膜14とからなる第3金属薄膜17が形成されている。つまり、配線回路基板1は、貫通穴131内において、第3金属薄膜17を備える。第3金属薄膜17は、厚み方向において、金属支持層11の上に配置される。第3金属薄膜17は、厚み方向において、金属支持層11と導体パターン15との間に配置される。
【0041】
少なくとも貫通穴131の中央部において、第3金属薄膜17の厚みT5は、金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12の厚みT4と、絶縁層13と導体パターン15との間の第2金属薄膜14の厚みT6との合計よりも薄い。また、少なくとも貫通穴131の中央部において、第3金属薄膜17の厚みT5は、金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12の厚みT4、または、絶縁層13と導体パターン15との間の第2金属薄膜の厚みT6よりも厚い。そのため、第1金属薄膜12によって金属支持層11を保護しつつ、導体パターン15と金属支持層11との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0042】
貫通穴131の中央部の第3金属薄膜17の厚みT5は、例えば、200nm以下、好ましくは、150nm以下であり、例えば、10nm以上である。
【0043】
絶縁層13と導体パターン15との間の第2金属薄膜14の厚みT6は、例えば、200nm以下、好ましくは、100nm以下であり、例えば、10nm以上である。
【0044】
(5)導体パターン
導体パターン15は、厚み方向において、第2金属薄膜14の上に配置される。言い換えると、導体パターン15は、厚み方向において、第2金属薄膜14を介して、絶縁層13の上に配置される。導体パターン15は、厚み方向において、絶縁層13に対して、金属支持層11の反対側に配置される。導体パターン15は、金属からなる。金属として、例えば、銅、銀、金、鉄、アルミニウム、クロム、および、それらの合金が挙げられる。良好な電気特性を得る観点から、好ましくは、銅が挙げられる。導体パターン15の形状は、限定されない。
【0045】
本実施形態では、
図1に示すように、導体パターン15は、複数の配線パターン15A,15B,15Cと、グランドパターン15Dとを有する。複数の配線パターン15A,15B,15C、および、グランドパターン15Dは、互いに間隔を隔てて、第2方向に並ぶ。
【0046】
(5-1)配線パターン
配線パターン15Aは、端子151Aと、端子152Aと、配線153Aとを有する。配線パターン15Aは、端子151Aに接続される電子部品と、端子152Aに接続される電子部品とを電気的に接続する。
【0047】
端子151Aは、第1方向における配線回路基板1の一端部に配置される。端子151Aは、角ランド形状を有する。
【0048】
端子152Aは、第1方向における配線回路基板1の他端部に配置される。端子152Aは、角ランド形状を有する。
【0049】
配線153Aの一端は、端子151Aに接続される。配線153Aの他端は、端子152Aに接続される。配線153Aは、端子151Aと端子152Aとを電気的に接続する。
【0050】
配線パターン15B,15Cのそれぞれは、配線パターン15Aと同様に説明される。そのため、配線パターン15B,15Cのそれぞれについての説明は、省略される。
【0051】
(5-2)グランドパターン
グランドパターン15Dは、グランド端子151Dと、グランド配線152Dとを有する。グランドパターン15Dは、グランド端子151Dに接続される電子部品を、金属支持層11を介してグランドに接続する。
【0052】
グランド端子151Dは、第1方向における配線回路基板1の一端部に配置される。グランド端子151Dは、角ランド形状を有する。端子151A,151B,151C,151D、および、グランド端子151Dは、互いに間隔を隔てて、第2方向に並ぶ。
【0053】
グランド配線152Dの一端は、グランド端子151Dに接続される。グランド配線152Dの他端は、絶縁層13の貫通穴131を通して金属支持層11(
図2参照)に接続される。
【0054】
詳しくは、
図2に示すように、貫通穴131内において、グランド配線152Dの他端は、第2金属薄膜14の上に配置される。言い換えると、導体パターン15は、貫通穴131内において、第3金属薄膜17の上に配置される。グランド配線152Dの他端は、第2金属薄膜14と接触する。これにより、グランド配線152Dは、第1金属薄膜12および第2金属薄膜14を介して、金属支持層11と導通する。言い換えると、導体パターン15は、貫通穴131内において、第1金属薄膜12および第2金属薄膜14(すなわち、第3金属薄膜17)を介して、金属支持層11と導通する。
【0055】
(6)カバー層
図1に示すように、カバー層16は、全ての配線153A,153B,153C、および、グランド配線152Dを覆う。言い換えると、カバー層16は、導体パターン15を覆う。カバー層16は、厚み方向において、絶縁層13の上に配置される。なお、カバー層16は、端子151A,151B,151C、グランド端子151D、および、端子152A,152B,152Cを覆わない。カバー層16は、絶縁性の樹脂からなる。樹脂としては、例えば、ポリイミド、マレイミド、エポキシ樹脂、ポリベンゾオキサゾール、および、ポリエステルが挙げられる。
【0056】
2.配線回路基板の製造方法
次に、配線回路基板1の製造方法について説明する。
【0057】
本実施形態では、配線回路基板1は、アディティブ法により製造される。
【0058】
配線回路基板1を製造するには、第1工程(
図3A参照)、第2工程(
図3B参照)、第3工程(
図3C参照)、第4工程(
図4A参照)、第5工程(
図4B参照)、および、第6工程(
図4C参照)を、順に実行する。つまり、配線回路基板1の製造方法は、第1工程(
図3A参照)と、第2工程(
図3B参照)と、第3工程(
図3C参照)と、第4工程(
図4A参照)と、第5工程(
図4B参照)と、第6工程(
図4C参照)とを含む。
【0059】
(1)第1工程
図3Aに示すように、第1工程では、金属支持層11を準備する。本実施形態では、金属支持層11は、金属箔のロールから引き出された金属箔である。
【0060】
(2)第2工程
次に、
図3Bに示すように、第2工程では、第1工程の後、金属支持層11の上に、第1金属薄膜12を形成する。第1金属薄膜12は、例えば、スパッタリングにより形成される。
【0061】
第2工程の後、第1金属薄膜12の表面は、次の工程への搬送途中などのタイミングで、空気と接触することにより酸化する。これにより、第1金属薄膜12の表面に、酸化被膜121が形成される。
【0062】
(3)第3工程
次に、
図3Cに示すように、第3工程では、第2工程の後、第1金属薄膜12の上に、絶縁層13を形成する。
【0063】
絶縁層13を形成するには、まず、第1金属薄膜12の上に感光性樹脂の溶液(ワニス)を塗布して乾燥し、感光性樹脂の塗膜を形成する。次に、感光性樹脂の塗膜を露光および現像する。これにより、絶縁層13が、第1金属薄膜12の上に形成される。なお、第1金属薄膜12の一部は、絶縁層13の貫通穴131を介して露出する。
【0064】
(4)第4工程
次に、
図4Aに示すように、第4工程では、第3工程の後、貫通穴131内の第1金属薄膜12の表面をエッチングする。これにより、貫通穴131内において、第1金属薄膜12の酸化被膜121の一部が除去される。これにより、少なくとも貫通穴131の中央部において、接触面S2の酸化被膜121の厚みT1は、接触面S1の酸化被膜121の厚みT2よりも薄くなる。
【0065】
第1金属薄膜12の表面をエッチングする方法として、例えば、プラズマエッチング、ウェットエッチングが挙げられる。
プラズマエッチングの放電方式として、例えば、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、電子サイクロトロン共鳴プラズマ、磁気中性線放電プラズマ、DCプラズマが挙げられる。プラズマエッチングの装置構成として、例えば、平行平板型、バレル型、リモートプラズマ型、イオンビーム型が挙げられる。
また、プラズマ電極面は、第1金属薄膜12の表面に対して傾斜していてもよい。プラズマ電極に垂直な方向と第1金属薄膜12の表面に垂直な方向とによって形成される傾斜角度は、例えば、10°以上、65°以下である。傾斜角度が上記範囲内であると、エッチング効率の向上を図ることができる。
【0066】
好ましくは、第4工程において、希ガス、反応性ガスおよびその他のガスから選択される少なくとも1種を用いたプラズマエッチングにより、貫通穴131内の第1金属薄膜12の表面をエッチングする。希ガスとして、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンが挙げられる。反応性ガスとして、例えば、ハロゲンガスが挙げられる。ハロゲンガスとして、例えば、四フッ化メタン(CF4)、三フッ化メタン(CHF3)、塩素が挙げられる。その他のガスとして、例えば、酸素、窒素、水素が挙げられる。
【0067】
貫通穴131内の第1金属薄膜12全部をエッチングしようとすると、貫通穴131内の第1金属薄膜12だけでなく、第1金属薄膜12の下の金属支持層11までエッチングされてしまう可能性がある。特に、第1金属薄膜12をエッチングする方法としてウェットエッチングを採用した場合、エッチング液により、第1金属薄膜12の下の金属支持層11、さらには、金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12までエッチングされてしまう可能性がある。
【0068】
この点、貫通穴131内の第1金属薄膜12の表面をエッチングすることにより、貫通穴131内に第1金属薄膜12が残る。そのため、第1金属薄膜12の下の金属支持層11、さらには、金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12がエッチングされてしまうことを抑制できる。
【0069】
特に、プラズマエッチングによって第1金属薄膜12の表面をエッチングすることにより、金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12をエッチングすることなく、貫通穴131内の第1金属薄膜の表面をエッチングできる。
【0070】
(5)第5工程
次に、
図4Bに示すように、第5工程では、第4工程の後、絶縁層13の上に、第2金属薄膜14を形成する。第2金属薄膜14は、例えば、スパッタリングにより形成される。第2金属薄膜14は、貫通穴131内において、第1金属薄膜12の上に形成される。これにより、貫通穴131内において、第1金属薄膜12と第2金属薄膜14とからなる第3金属薄膜17が、金属支持層11の上に形成される。
【0071】
(6)第6工程
次に、
図4Cに示すように、第6工程では、第5工程の後、第2金属薄膜14の上に、導体パターン15を形成する。
【0072】
詳しくは、第2金属薄膜14の上に、メッキレジストを貼り合わせて、導体パターン15が形成される部分を遮光した状態で、メッキレジストを露光する。
【0073】
次に、露光されたメッキレジストを現像する。すると、遮光された部分のメッキレジストが除去され、導体パターン15が形成される部分に第2金属薄膜14が露出する。なお、露光された部分、すなわち、導体パターン15が形成されない部分のメッキレジストは、残る。
【0074】
次に、露出した第2金属薄膜14の上に、電解メッキにより、導体パターン15を形成する。すると、貫通穴131内において、グランド配線152Dの他端は、第2金属薄膜14の上に形成される。これにより、グランド配線152Dは、第1金属薄膜12および第2金属薄膜14(すなわち、第3金属薄膜17)を介して、金属支持層11と導通する。
【0075】
電解メッキが終了した後、メッキレジストは、剥離される。その後、メッキレジストによって覆われていた第2金属薄膜14を、エッチングにより除去する。
【0076】
その後、絶縁層13の形成と同様にして、絶縁層13および導体パターン15の上にカバー層16(
図1および
図2参照)を形成する。
【0077】
3.作用効果
(1)配線回路基板1によれば、
図2に示すように、貫通穴131内において、第1金属薄膜12の酸化被膜121の少なくとも一部だけを除去し、第1金属薄膜12を残した状態で、導体パターン15と金属支持層11とを導通させることができる。
【0078】
少なくとも貫通穴131の中央部において、接触面S2の酸化被膜121の厚みT1は、接触面S1の酸化被膜121の厚みT2よりも薄い。
【0079】
そのため、第1金属薄膜12によって金属支持層11(第1金属薄膜12の下の金属層)を保護しつつ、酸化被膜121を除去することによって、導体パターン15と金属支持層11との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0080】
(2)配線回路基板1によれば、
図2に示すように、貫通穴131内において、第1金属薄膜12の一部を除去し、第1金属薄膜12を残した状態で、導体パターン15と金属支持層11とを導通させることができる。
【0081】
少なくとも貫通穴131の中央部において、第1金属薄膜12の厚みT3が、金属支持層11と絶縁層13との間の第1金属薄膜12の厚みT4よりも薄い。
【0082】
そのため、第1金属薄膜12によって金属支持層11(第1金属薄膜12の下の金属層)を保護しつつ、第1金属薄膜12を薄くすることによって、導体パターン15と金属支持層11との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0083】
(3)配線回路基板1によれば、
図3Cおよび
図4Aに示すように、貫通穴131内において、第1金属薄膜12の一部を除去し、
図4Bに示すように、第1金属薄膜12を残した状態で第1金属薄膜12の上に第2金属薄膜14を形成している。
【0084】
そのため、
図2に示すように、第1金属薄膜12を残した状態で、第1金属薄膜12と第2金属薄膜14とからなる第3金属薄膜17を介して、導体パターン15と金属支持層11とを導通させることができる。
【0085】
そのため、第1金属薄膜12によって金属支持層11(第1金属薄膜12の下の金属層)を保護しつつ、第1金属薄膜12を薄くすることによって、導体パターン15と金属支持層11との間の電気抵抗の低減を図ることができる。
【0086】
4.変形例
次に、変形例について説明する。変形例において、上記した実施形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0087】
(1)
図5に示すように、貫通穴131の中央部において、酸化被膜121は、完全に除去されてもよい。言い換えると、貫通穴131の中央部において、酸化被膜121の厚みは、0であってもよい。なお、第1金属薄膜12うち、酸化被膜121以外の部分は、残る。酸化被膜121の厚みが0であると、導体パターン15と金属支持層11との間の電気抵抗の低減を、より図ることができる。
【0088】
(2)
図6に示すように、配線回路基板1は、中間金属層100をさらに有してもよい。中間金属層100は、金属支持層11と第1金属薄膜12との間に配置される。
【0089】
中間金属層100は、金属支持層11よりも高い導電率を有する。中間金属層100は、例えば、金、銀および銅からなる群より選択される少なくとも一種を含む。中間金属層100は、好ましくは、金、銀および銅からなる群より選択される少なくとも一種からなる。金属支持層11が銅合金である場合、中間金属層100は、好ましくは、銅からなる。
【0090】
中間金属層100は、例えば、スパッタリング、メッキ、または、真空蒸着によって、金属支持層11の上に形成される。
【0091】
(3)変形例(1)または(2)においても、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 配線回路基板
11 金属支持層
12 第1金属薄膜
13 絶縁層
14 第2金属薄膜
15 導体パターン
17 第3金属薄膜
100 中間金属層
121 酸化被膜
131 貫通穴
S1 接触面