(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183358
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231220BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 201C
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179735
(22)【出願日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】10-2022-0072706
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲チョ▼ 義鉉
(72)【発明者】
【氏名】朴 珍受
(72)【発明者】
【氏名】李 哲承
(72)【発明者】
【氏名】全 炳俊
(72)【発明者】
【氏名】崔 亨綜
(72)【発明者】
【氏名】具 賢熙
(72)【発明者】
【氏名】成 佑慶
(72)【発明者】
【氏名】朴 明俊
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AC09
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】内部電極と外部電極とが接する領域に水素拡散係数の低いSn拡散部を配置して内部電極の絶縁抵抗の劣化を防止し、外部電極がSn拡散部を含まないことで信頼性が向上した積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層及び導電性物質を含む内部電極を含む本体、及び上記本体上に配置されて上記内部電極に連結される外部電極を含み、上記内部電極は上記外部電極に連結される領域にSnを含むSn拡散部を含み、上記Sn拡散部に含まれた上記内部電極の上記導電性物質の平均原子数に対する上記Snの平均原子数は3at%以上50atであることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層及び導電性物質を含む内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置されて前記内部電極に連結される外部電極と、
を含み、
前記内部電極は、前記外部電極に連結される領域にSnを含むSn拡散部を含み、
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の平均原子数に対する前記Snの平均原子数は、3at%以上50at%以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記Sn拡散部の前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向への大きさは、1μm以上30μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向に1μmの地点で、
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の前記平均原子数に対する前記Snの前記平均原子数は、30at%以上50at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向に5μmの点で、
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の前記平均原子数に対する前記Snの前記平均原子数は、15at%以上30at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向に10μm以上30μm以下の領域において、
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の前記平均原子数に対する前記Snの前記平均原子数は、3at%以上10at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の前記平均原子数に対する前記Snの前記平均原子数は、前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向に徐々に減少する、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記Sn拡散部は、前記内部電極の前記導電性物質及びSnを含む合金を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記外部電極は前記Sn拡散部を含まない、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記内部電極の前記導電性物質は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
複数の誘電体層及び導電性物質を含む内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置されて前記内部電極に連結される外部電極と、
を含み、
前記内部電極は、前記外部電極に連結される領域にSnを含むSn拡散部を含み、
前記外部電極は前記Sn拡散部を含まない、積層型電子部品。
【請求項11】
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の平均原子数に対する前記Snの平均原子数は、3at%以上50at%以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記Sn拡散部の前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向への大きさは、1μm以上30μm以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向に1μmの地点で、
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の平均原子数に対する前記Snの平均原子数は30at%以上50at%以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記内部電極と外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向に5μmの地点で、
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の平均原子数に対する前記Snの平均原子数は、15at%以上30at%以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向に10μm以上30μm以下の領域において、
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の平均原子数に対する前記Snの平均原子数は、3at%以上10at%以下である、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記Sn拡散部に含まれた前記内部電極の前記導電性物質の平均原子数に対する前記Snの平均原子数は、前記内部電極と前記外部電極とが接する地点から前記本体の内部方向に徐々に減少する、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記Sn拡散部は、前記内部電極の前記導電性物質及びSnを含む合金を含む、請求項10に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記内部電極の前記導電性物質は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項10に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器などの各種電子機器が小型化、高出力化され、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
一方、実装の容易性などのために積層セラミックキャパシタの外部電極にめっき層を形成しているが、めっき工程中に発生する水素は積層セラミックキャパシタのように単一金属外部電極が実現された製品に浸透しやすい。外部電極を介して入った水素は本体の内部電極に浸透し、電圧印加時に水素原子が酸化して電子を放出し、本体内部に電子が蓄積して絶縁抵抗の劣化を発生させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本公開特許公報第2016-171310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、内部電極と外部電極とが接する領域に水素拡散係数の低いSn拡散部を配置して内部電極の絶縁抵抗の劣化を防止し、信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、外部電極がSn拡散部を含まないことで信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0008】
但し、本発明は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層及び導電性物質を含む内部電極を含む本体と、上記本体上に配置されて上記内部電極に連結される外部電極と、を含み、上記内部電極は、上記外部電極に連結される領域にSnを含むSn拡散部を含み、上記Sn拡散部に含まれた上記内部電極の上記導電性物質の平均原子数に対する上記Snの平均原子数は3at%以上50at%以下であることができる。
【0010】
本発明の他の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層及び導電性物質を含む内部電極を含む本体と、上記本体上に配置されて上記内部電極に連結される外部電極と、を含み、上記内部電極は、上記外部電極に連結される領域にSnを含むSn拡散部を含むが、上記外部電極は上記Sn拡散部を含まないことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の様々な効果の一つは、内部電極と外部電極とが接する領域に水素拡散係数の低いSn拡散部が配置されることで、内部電極の絶縁抵抗の劣化を防止して積層型電子部品の信頼性を向上させることができることである。
【0012】
本発明の様々な効果の一つは、外部電極がSn拡散部を含まないことで積層型電子部品の信頼性を向上させることができることである。
【0013】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態である積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の内部電極の積層構造を概略的に示した分離斜視図である。
【
図3】
図1のI-I’線に沿って概略的に示した断面図である。
【
図4】
図1のII-II’線に沿って概略的に示した断面図である。
【
図5】
図3のP領域を拡大して概略的に示した図面である。
【
図6】本発明の一実施形態の内部電極と外部電極とが接する領域のSEMイメージである。
【
図7】本発明の一実施形態のSn拡散部をHAADFモードで撮影したイメージである。
【
図8】(a)はSn拡散部が形成されていない比較例のSEMイメージであり、(b)及び(c)はSn拡散部が形成された比較例のSEMイメージである。
【
図9】(a)は
図8(a)と同一の比較例のHALTグラフであり、(b)は
図8(b)と同一の実施例のHALTグラフであり、(c)は
図8(c)と同一の実施例のHALTグラフである。
【
図10】(a)は
図8(a)と同一の比較例の耐湿信頼性グラフであり、(b)は
図8(b)と同一の実施例の耐湿信頼性グラフであり、(c)は
図8(c)と同一の実施例の耐湿信頼性グラフである。
【
図11】(a)はSn拡散部が過度に深く形成されたSEMイメージであり、(b)はSnが過度に含まれたSn拡散部のSEMイメージである。
【
図12】
図11(b)と同一の比較例の耐湿信頼性グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0016】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成のサイズ及び厚さは説明の便宜のために任意で示したため、本発明が必ずしも図示によって限定されるものではない。また、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0017】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0018】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態である積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1の内部電極の積層構造を概略的に示した分離斜視図であり、
図3は、
図1のI-I’線に沿って概略的に示した断面図であり、
図4は、
図1のII-II’線に沿って概略的に示した断面図であり、
図5は、
図3のP領域を拡大して概略的に示した図面である。
【0019】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。
【0020】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、複数の誘電体層111及び導電性物質を含む内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置されて上記内部電極121、122に連結される外部電極131、132と、を含み、上記内部電極121、122は、上記外部電極131、132に連結される領域にSnを含むSn拡散部121a、122aを含み、上記Sn拡散部121a、122aに含まれた上記内部電極の導電性物質の平均原子数に対する上記Snの平均原子数は、3at%以上50at%以下であることができる。
【0021】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0022】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体状またはこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮によって、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0023】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2に連結され、第2方向に互いに向かい合う第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4に連結され、第3方向に互いに向かい合う第5及び第6面5、6を有することができる。
【0024】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0025】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに向かい合うように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される活性部Acと、活性部の第1方向の両端面に形成された上部及び下部カバー部112、113を含むことができ、活性部Acの第3方向の両端面上には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0026】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り制限されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO3)系材料を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0027】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0028】
一方、誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。
【0029】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さtdは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0030】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0031】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができる。
【0032】
誘電体層111の平均厚さtdは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて1つの誘電体層111を長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定した平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、活性部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さtdをさらに一般化することができる。ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0033】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されることができる。
【0034】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに向かい合うように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0035】
より具体的には、第1内部電極121は第4面4から離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3から離隔して第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121に連結され、本体110の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122に連結されることができる。
【0036】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131に連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132に連結されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0037】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成されることができる。
【0038】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気導電性に優れた材料である導電性物質を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0039】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0040】
一方、後述するめっき層を形成するためのめっき工程中に水素が発生することがあり、上記水素が内部電極に浸透することができる。このような場合、電圧を印加する際、内部電極に浸透した水素が酸化して隣接する誘電体層に電子を放出することで、誘電体層が徐々に還元され、最終的に絶縁抵抗を劣化させるなどの問題点が生じるおそれがある。
【0041】
一般的に内部電極の導電性物質として用いられているNiの場合、水素透過度が10-11m2/sと知られている。このとき、内部電極と外部電極とが接する領域にNiより水素拡散係数の低いSn(水素透過度:10-14m2/s)を拡散させる場合、内部電極への水素浸透を防止して絶縁抵抗の劣化を抑えることができる。すなわち、絶縁抵抗の劣化を引き起こすことがある水素が外部電極を介して内部電極の端に浸透しても内部電極と外部電極とが接する領域にSn拡散部が存在することで、本体の内部への水素拡散を減少させ、水素イオン化による積層型電子部品の信頼性不良を改善することができる。
【0042】
以下では、Sn拡散部121a、122aについてより詳細に説明する。
【0043】
Sn拡散部121a、122aは、本体110上に外部電極用ペーストを塗布する前に、内部電極121、122が露出した本体110の面、例えば、本体110の第3及び第4面3、4にSnペーストを塗布した後、熱処理して形成されることができる。
【0044】
上記Snペーストの熱処理温度は600℃以上、好ましくは700℃以上であることができ、特にこれに制限されるものではなく、本体110の外部から内部電極121、122へのSn拡散が容易であるが、本体110が信頼性を低下させることができる温度を超えないように熱処理を行うことができる温度が好ましい。
【0045】
上記Snペーストの熱処理により、Sn拡散部121a、122aは、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点から本体110の内部方向、すなわち第2方向(長さ方向)に拡散して形成されることができる。
【0046】
一方、Sn拡散部121a、122aは、内部電極に含まれた導電性物質及びSnが反応して合金を形成することができるが、特にこれに制限されるものではなく、合金を形成しなくてもSnが内部電極121、122の内部に浸透すると、水素浸透の抑制効果が実現できる。
【0047】
ここで、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点は、任意の内部電極121、122の隣接する誘電体層111において、誘電体層111の誘電物質と外部電極131、132のガラスとが接する地点または界面の延長線上のうち、内部電極層の領域の線を意味することができる。
【0048】
より具体的には、
図7を参照すると、異なる明暗を有して繰り返し離隔して配置される複数層のうち、Snが検出される領域が内部電極層に該当し、Snが検出されない領域が誘電体層に該当する。すなわち、Snが検出される内部電極層とSnが検出されない誘電体層とは互いに交互に積層される形状を有している。一方、誘電体層と当接する領域のうち、内部電極層ではなく界面にガラスが分布していることができる。このとき、上記誘電体層とガラスとが当接する地点または界面の延長線上のうち、内部電極層の領域を通る線を内部電極と外部電極とが接する地点または界面と定義することができる。
【0049】
内部電極と外部電極とが接する地点または界面を定義する別の方法としては、任意の一誘電体層とガラスとが当接する界面の中央と、上記任意の一誘電体層に隣接する誘電体層とガラスとが当接する界面の中央を結ぶ線を延びた延長線のうち、上記任意の一誘電体層と隣接する誘電体層との間に配置される内部電極層の領域を通る線を内部電極と外部電極とが接する地点または界面と定義することができる。一方、上記誘電体層間に連結した延長線に関して、ガラスを含まない場合には、任意の一誘電体層と隣接する誘電体層のそれぞれの第2方向の端の中央地点を結ぶ線を延長した延長線と定義することができる。
【0050】
より具体的には、
図3及び
図5を参照すると、Sn拡散部121a、122は、第1内部電極121に含まれる第1Sn拡散部121a及び第2内部電極122に含まれる第2Sn拡散部122aを含むことができる。すなわち、第1Sn拡散部121aは、第1内部電極121と第1外部電極131とが接する本体110の第3面3に隣接する領域で第1内部電極121の内部に配置されることができ、第2Sn拡散部122aは、第2内部電極122と第2外部電極132とが接する本体110の第4面4に隣接する領域で第2内部電極122の内部に配置されることができる。本明細書で特に限定しない限り、Sn拡散部121a、122aは、第1Sn拡散部121a及び第2Sn拡散部122aを含んで説明する。
【0051】
このとき、Sn拡散部121a、122aに含まれたSn元素の平均原子数は、内部電極121、122に含まれた導電性物質の平均原子数に対して3at%以上50at%以下であることができる。
【0052】
ここで、内部電極121、122に含まれた導電性物質は、内部電極121、122の導電性物質のうち主成分を意味することができ、より具体的にはSn拡散部121a、122aが含んでいるSnを除いた導電性物質のうち、最も多いモル比率を占める導電性物質を意味することができる。
【0053】
一方、Snは拡散により本体110の内部、すなわち内部電極121、122に形成されることができるため、Snの元素含有量または原子数は、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点から本体110の内部方向に向かうほど、徐々に減少することができるが、特にこれに制限されるものではなく、本体110に塗布したSnの塗布量、熱処理温度などを制御し、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点でのSnの元素含有量と本体110の内部に拡散したSn元素の含有量が実質的に同一であるように形成することができる。
【0054】
ここで、Snの平均元素含有量または原子数は、内部電極121、122またはSn拡散部121a、122aのうち、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点から一定の深さで数回測定した平均値を意味することができる。より具体的には、内部電極121、122またはSn拡散部121a、122aと外部電極131、132とが接する地点(または界面)の中央で特定深さにおけるSn元素含有量または原子百分率(Si/Ni at%)を測定し、同一のSn拡散部の深さ地点で0.1μm離隔した地点でのSn元素含有量または原子百分率(Si/Ni at%)を測定した値の平均を意味することができる。このような方法で、より多い地点で測定することが好ましい。
【0055】
また、本体110の内部方向に拡散するSnを、複数の内部電極121、122の浸透深さを均一に形成するか、任意の一内部電極121、122に深くSnが拡散すると水素浸透の抑制効果が実現できるが、特にこれに制限されるものではなく、内部電極121、122にSn拡散部121a、122aが形成されると水素浸透の抑制効果が実現できる。
【0056】
Sn拡散部121a、122aに含まれたSn元素の平均原子数が内部電極121、122に含まれた導電性物質の平均原子数に対して3at%未満の場合、内部電極121、122へのSn拡散が十分でないため、水素浸透の抑制効果が劣化することがあり、50at%超過である場合、隣接する内部電極121、122間にSnが連結されることで信頼性が低下するおそれがある。
【0057】
一方、
図6は、Sn拡散部121a、122aが内部電極121、122に形成されたSEMイメージである。
図6を参照して説明すると、本発明の一実施形態は、Sn拡散部121a、122aの上記内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点から本体110の内部方向(第2方向)への大きさは、1μm以上30μm以下であることができる。すなわち、Sn拡散部121a、122aの長さは、1μm以上30μm以下であることができる。
【0058】
Sn拡散部121a、122aの長さが1μm未満の場合、水素浸透の抑制効果が劣化することがあり、長さが30μm超過である場合、気孔(pore)が発生して信頼性が低下するおそれがある。
図11(a)を参照すると、Snが内部電極に過度に深く拡散して気孔(pore)が発生したことを確認することができ、気孔(pore)が発生した場合、水素浸透効果が劣化することがある。同一の比較例の耐湿信頼性を評価した
図12を参照すると、絶縁抵抗の破壊が比較的速い時間(約30分)内に複数個のサンプルチップで発生したことが確認できる。実施例とのより具体的な比較は後述する。
【0059】
一方、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点から本体110の内部方向に1μm地点で、Sn拡散部121a、122aに含まれた内部電極の導電性物質の平均原子数に対するSnの平均原子数は、30at%以上50at%以下であることができる。
【0060】
また、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点から本体110の内部方向に5μm地点で、Sn拡散部121a、122aに含まれた内部電極の導電性物質の平均原子数に対してSnの平均原子数は、15at%以上30at%以下であることができる。
【0061】
また、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する地点から本体110の内部方向に10μm以上30μm以下の領域で、Sn拡散部121a、122aに含まれた内部電極の導電性物質の平均原子数に対してSnの平均原子数は、3at%以上10at%以下であることができる。
【0062】
上記地点または領域でSn拡散部121a、122aに含まれた内部電極の導電性物質の平均原子数に対してSnの平均原子数が下限値未満である場合、水素浸透の抑制効果が劣化することがあり、上限値を超過する場合、信頼性が低下するおそれがある。
【0063】
より具体的には、
図11(b)は、Snを過度に含んでいるSn拡散部のTEMイメージである。気孔(pore)が発生したことはもちろん、隣接内部電極間に連結されていることが確認でき、このような場合に、内部電極間ショート(short)不良が発生するなど信頼性が劣る可能性がある。
【0064】
Sn拡散部121a、122aに含まれた内部電極の導電性物質の平均原子数またはSnの平均原子数は、Sn拡散部121a、122aが形成された同一の地点(深さ)、例えば1μm、5μmまたは10μm以上30μmで各元素をEDS分析により測定することができ、このような測定値を5つのSn拡散部121a、122aに拡張して平均した値であることができ、より多い地点での測定値を平均することが好ましい。
【0065】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0066】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために内部電極121、122の厚さteは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0067】
一方、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0068】
内部電極121、122の平均厚さteは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて1つの内部電極121、122を長さ方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30個の地点は、活性部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。ここで、内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0069】
カバー部112、113は、活性部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び活性部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0070】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層111または2つ以上の誘電体層111を活性部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0071】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同一材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0072】
カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましくは20μm以下であることができる。
【0073】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができる。
【0074】
カバー部112、113の平均厚さtcは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて1つのカバー部112、113を長さ方向に等間隔の10個の地点でその厚さを測定した平均値であることができる。上記等間隔の10個の地点は、上部カバー部112で指定されることができる。また、このような平均値の測定を下部カバー部113に拡張して平均値を測定すると、カバー部112、113の平均厚さtcをさらに一般化することができる。ここで、カバー部112、113の平均厚さtcは、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0075】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114及び第6面6に配置された第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、本体110の第3方向の両端面に配置されることができる。
【0076】
マージン部114、115は、図示のように、本体110の厚さ及び幅方向(W-T方向)の断面(cross-section)を基準に、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端面と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0077】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0078】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部114、115が形成されるところを除いて導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成することで形成されたものであることができる。上述したように、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層111または2つ以上の誘電体層111を活性部Acの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0079】
第1及び第2マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1及び第2マージン部114、115の幅は30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましくは20μm以下であることができる。
【0080】
ここで、マージン部114、115の幅は、マージン部114、115の平均幅を意味することができる。
【0081】
マージン部114、115の平均幅は、本体110の厚さ及び幅方向(W-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて1つのマージン部114、115を厚さ方向に等間隔の10個の地点でその幅を測定した平均値であることができる。上記等間隔の10個の地点は、第1マージン部114で指定されることができる。また、このような平均値の測定を第2マージン部115に拡張して平均値を測定すると、マージン部114、115の平均幅をさらに一般化することができる。ここで、マージン部114、115の平均幅は、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0082】
本発明の一実施形態において、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変わることができる。
【0083】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122に連結されることができる。
【0084】
より具体的には、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122にそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0085】
一方、外部電極131、132は、金属などの電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0086】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に配置されるめっき層131b、132bを含むことができる。
【0087】
電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含んだ樹脂系電極であることができる。
【0088】
また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含んだシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含んだシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0089】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として電気導電性に優れた材料を用いることができ、例えば、導電性金属はニッケル(Ni)、銅(Cu)及びこれらの合金のうち1つ以上であることができるが、特にこれに限定されない。
【0090】
本発明の一実施形態において、外部電極131、132はSn拡散部121a、122aを含まないことができる。
【0091】
より具体的には、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する領域である電極層131a、132aにSn拡散部121a、122aが配置されないことが好ましい。
【0092】
Sn拡散部121a、122aが本体の外部に残留する場合、外部電極用ペーストを均一に塗布し難く、気孔(pore)を形成するか、クラック(crack)がより容易に発生することがあり、外部の水分浸透やめっき液の浸透が容易になり、積層型電子部品の信頼性を低下させることがあり、本体110と外部電極131、132との間の接着性を低下させることがある。
【0093】
Snペーストを本体に塗布した後、熱処理して内部電極に拡散させた後、残留Snをサンドブラスト法により除去することが好ましい。上記残留Snを除去することで外部電極用ペーストを均一に塗布することができ、これにより外部電極と本体との間の接合力を低下させることなく、気孔(pore)などの形成を防止することができ、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。残留Snを除去する方法としては、サンドブラスト法を用いることができるが、特にこれに制限されるものではなく、積層型電子部品に過度の衝撃を加えず、信頼性を低下させない方法であれば、どの方法でも用いられることができる。
【0094】
本発明の一実施形態に対するTEMイメージである
図7を参照すると、内部電極121、122は、内部電極121、122と外部電極131、132とが接する領域においてSn拡散部121a、122bを含んでいることが確認できるが、外部電極131、132にはSn拡散部121a、122bがほとんど残留していないことが確認でき、外部電極131、132に気泡(pore)が発生しなかったことが分かる。
【0095】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たし、導電性金属または焼成電極を含む電極層131a、132a上に配置されることができる。
【0096】
めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む単一層のめっき層131b、132bであることができ、複数層で形成されることができる。
【0097】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bはNiめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0098】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0099】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があるため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において本発明による信頼性、単位体積当たり容量の向上及び水素浸透抑制による絶縁抵抗の改善効果がより顕著になることができる。
【0100】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これは本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例に限定されるものではない。
【0101】
より具体的には、
図8~
図12を参照して本発明の一実施例及び比較例について詳細に説明する。
【0102】
(実施例)
下記表1は、Sn拡散部の深さ別のSn原子数を測定したデータに該当する。Sn拡散部のうちSnを測定した測定深さ(測定point)は、内部電極と外部電極とが接する地点から本体の内部方向に1μm、5μm及び10μm以上の任意の地点で測定した。at%は内部電極に含まれたNi元素のモル数に対するSn元素のモル数の百分率(at%)を意味する(Sn/Ni at%)。
【0103】
【0104】
上記表1を参照すると、Sn拡散部が形成された領域において、内部電極と外部電極とが接する地点から本体の内部方向に1μmの地点でのSn原子百分率が30at%以上50at%以下であることを確認することができ、平均Sn原子百分率は39.7at%に該当する。5μm地点でのSn原子百分率は15at%以上30at%以下であることが確認でき、平均Sn原子百分率は19.2at%に該当する。10μm以上の任意の地点でSn原子百分率は3at%以上10at%以下であることが確認でき、平均原子百分率は5.2at%に該当する。
【0105】
以下では、[表1]のように本発明の数値範囲を満たす実施例、すなわち、測定深さ1μm地点でのSnの平均原子百分率は30at%以上50at%以下、測定深さ5μm地点でのSnの平均原子百分率は15at%以上30at%以下、または測定深さ10μm以上の地点でSnの平均原子百分率は3at%以上10at%以下の範囲を満たすSn拡散部を含む積層型電子部品の耐湿信頼性評価について詳細に説明する。
【0106】
比較例1(
図8(a)、
図9(a)、
図10(a))は、Sn拡散部が形成されていない従来のNi内部電極及びCu外部電極を適用した積層型電子部品に該当する。
【0107】
比較例2は(
図11(a))、Sn拡散部が形成されたが、内部電極に過度に深く拡散した積層型電子部品に該当する。残りの構成は比較例1と同様である。
【0108】
比較例3(
図11(b)、
図12)は、Sn拡散部が形成されたが、拡散されたSnが過度であって内部電極間に連結が発生した積層型電子部品に該当する。残りの構成は比較例1と同一である。
【0109】
実施例1(
図8(b)、
図9(b)、
図10(b))は、内部電極が露出した本体面にSnペーストを塗布した後、660℃で熱処理した後、サンドブラスト法で残留Snを除去し、Cu外部電極を形成した。残りの構成は比較例1と同一である。
【0110】
実施例2(
図8(c)、
図9(c)、
図10(c))は、内部電極が露出した本体面にSnペーストを塗布した後、730℃で熱処理した後、サンドブラスト法で残留Snを除去し、Cu外部電極を形成した。残りの構成は比較例1と同一である。
【0111】
比較例及び実施例について、過酷水素チャージング(hydrogen charging)を行い、過酷水素チャージを行ったサンプルについて超加速寿命試験(HALT)及び耐湿信頼性の実験を行った。
【0112】
過酷水素チャージ(hydrogen charging)は、0.01MのNaOHを含む水槽で評価を行うサンプルを還元電極に配置させ、白金を酸化電極に配置させる。この後、電圧条件3.5V~4.0V、電流条件0.03Aで60分間行って還元電極で水素を発生させる。
【0113】
この後、過酷水素チャージを行った比較例及び実施例のサンプルに対してHALT及び耐湿信頼性の評価を行う。
【0114】
HALT信頼性評価は、温度条件85℃、電圧条件1.2Vrで2時間行い、これに対する結果は
図9のグラフで確認することができる。初期絶縁抵抗に対する絶縁抵抗値が低下しない場合(1.00E+09、グラフの中で最も高い値)を理想的な目標値に設定し、初期絶縁抵抗に対する絶縁抵抗値が1/10以下、すなわち絶縁抵抗の値が1.00E+08以上の場合を優れると評価し、1.00E+08未満に低下する場合を不良と評価した。
【0115】
耐湿信頼性評価は、温度条件85℃、相対湿度85%、電圧条件1.0Vrで2時間行い、これに対する結果は
図10及び
図12のグラフで確認することができる。初期絶縁抵抗に対する絶縁抵抗値が低下しない場合(1.00E+09、グラフの中で最も高い値)を理想的な目標値に設定し、初期絶縁抵抗に対する絶縁抵抗値が1/100以下、すなわち絶縁抵抗の値が1.00E+06以上の場合を優れると評価し、1.00E+06未満に低下する場合を不良と評価した。
【0116】
まず、Sn拡散部が形成されていない比較例1は、加速水素チャージ後のHALT評価(
図9(a))において、1.00E+08未満に低下したサンプルの個数が実施例に比べて多いことが確認でき、同様に耐湿信頼性の評価(
図10(a))において、1.00E+06未満に低下したサンプルの個数が実施例に比べて多いことが確認できる。
【0117】
Snが過度に含有された比較例2は、加速水素チャージ後の耐湿信頼性の評価(
図12)において、1.00E+06未満に低下したサンプルの個数が実施例に比べて多いことが確認でき、絶縁抵抗の破壊が発生したサンプルも確認できる。
【0118】
一方、実施例1は加速水素チャージ後のHALT評価(
図9(b))において、1.00E+08未満に低下したサンプルの個数がほとんどないことが確認でき、実施例2は加速水素チャージ後のHALT評価(
図9(c))において、1.00E+08未満に低下したサンプルがないことが確認できる。また、実施例1は、耐湿信頼性の評価(
図10(b))において、1.00E+06未満に低下したサンプルの個数がほとんどないことが確認でき、概ね1.00E+06以上の絶縁抵抗値を有することが確認できる。実施例2は、耐湿信頼性の評価(
図10(c))において、1.00E+06未満に低下したサンプルの個数がほとんどないことが分かり、概ね1.00E+06以上の絶縁抵抗値を有することが確認できる。
【0119】
これにより、Sn拡散部が存在する場合、Sn拡散部が存在しない場合に比べて水素浸透の抑制効果に優れることが確認でき、Sn元素の平均原子数が内部電極の導電性物質の平均原子数に対して3at%以上50at%以下を満たす場合、水素浸透の抑制効果に優れることが分かる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0121】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
121a、122a Sn拡散部
131、132 外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層