(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183365
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法及びそのための混合還元剤
(51)【国際特許分類】
B22F 9/24 20060101AFI20231220BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231220BHJP
B22F 1/054 20220101ALI20231220BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20231220BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20231220BHJP
B82Y 15/00 20110101ALI20231220BHJP
【FI】
B22F9/24 E
B22F1/00 K
B22F1/054
B82Y40/00
B82Y30/00
B82Y15/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002394
(22)【出願日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0072897
(32)【優先日】2022-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年1月17日 https://doi.org/10.1186/s40580-021-00296-1にて公開 令和4年1月19日 Nano Convergence Conference(NCC)2022にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】512293921
【氏名又は名称】インダストリー-ユニバーシティー コーペレイション ファンデーション ハンヤン ユニバーシティー エリカ キャンパス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スンヒョン リ
(72)【発明者】
【氏名】ソンフン ユ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017BA02
4K017CA04
4K017CA08
4K017DA09
4K017EJ01
4K017FB07
4K017FB08
4K017FB11
4K018BA01
4K018BB02
4K018BB05
4K018KA70
(57)【要約】
【課題】混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法及びそのための混合還元剤を提供する。
【解決手段】混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法であって、金ナノ粒子の種粒子を含む種子溶液を準備する段階;準備された種子溶液にアスコルビン酸(AA)とヒドロキノン(HQ)とを含む成長溶液を添加して、金ナノ粒子の種子をナノロッドに成長させる段階;を含み、ここで、アスコルビン酸は、金ナノ粒子の種子を先に還元させて成長させることを特徴とする混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法であって、
金ナノ粒子の種粒子を含む種子溶液を準備する段階と、
前記準備された種子溶液にアスコルビン酸(AA)とヒドロキノン(HQ)とを含む成長溶液を添加して、前記金ナノ粒子の種子をナノロッドに成長させる段階と、を含み、ここで、前記アスコルビン酸は、前記金ナノ粒子の種子を先に還元させて成長させることを特徴とする、混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法。
【請求項2】
前記成長させる段階で、前記アスコルビン酸(AA)は、前記ヒドロキノン(HQ)よりも先に反応してなくなることを特徴とする、請求項1に記載の混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法。
【請求項3】
前記アスコルビン酸(AA)は、前記金ナノ粒子をいずれも還元させるのには不十分な量であることを特徴とする、請求項1に記載の混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法。
【請求項4】
前記ヒドロキノン(HQ)の容量が多くなるほど、前記金ナノロッドの縱横比は増加することを特徴とする、請求項1に記載の金ナノロッドの製造方法。
【請求項5】
前記種子溶液は、HAuCl4、CTAB及びNaBH4を添加して種子を形成させた溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の金ナノロッドの製造方法。
【請求項6】
前記金ナノロッドの縱横比は、アスコルビン酸またはヒドロキノンを単独使用して金ナノロッドを成長させたものよりも高い縱横比値であることを特徴とする、請求項4に記載の金ナノロッドの製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の方法によって製造された、金ナノロッド。
【請求項8】
前記金ナノロッドの縱横比は、7以上であることを特徴とする、請求項7に記載の金ナノロッド。
【請求項9】
金ナノロッドの製造のための還元剤として、
アスコルビン酸とヒドロキノンとを同時に含む、還元剤。
【請求項10】
前記還元剤は、請求項1から請求項6のうち何れか一項に記載の金ナノロッドの製造方法に使われる還元剤であることを特徴とする、請求項9に記載の還元剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法及びそのための混合還元剤に係り、より詳細には、互いに異なる還元力を有した還元剤を組み合わせて使用することにより、金ナノロッドの縱横比を制御することができる混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法及びそのための混合還元剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金ナノ粒子は、バイオセンサー及び光触媒、癌治療、薬物伝達及び抗菌活性を含んだ応用分野によって貴金属ナノ粒子について広範囲に研究される。
【0003】
また、金ナノ粒子は、表面強化ラマン散乱のような多様な分析方法に活用されているが、これは、金ナノ粒子が有する優れた生体適合性、抗酸化性、標的特異性が容易な表面改質の特性などに起因したものである。
【0004】
特に、金ナノ粒子が有する局在表面プラズモン共鳴(LSPR)効果が含む金ナノ粒子の光熱(photothermal)及び光音響(photoacoustic)の特性は、高温治療及び多様な医療映像応用分野に金ナノ粒子が適用可能であるということを示唆する。
【0005】
したがって、金ナノ粒子の形状とサイズとを調整することは、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を調節し、光熱及び光音響の特性を向上し、多様な波長、特に、近赤外線領域の光の活用に重要である。多様な形態のAuナノ粒子のうち、金ナノロッド(Au Nanorod)は、その長さと直径とに対応して縦及び横の共振がいずれも存在するために、注目を浴びている。また、LSPRスペクトル位置も、このような金ナノロッドの縱横比を調整して近赤外線(NIR)スペクトルで合わせることができる。
【0006】
したがって、このような金ナノロッドの縱横比(Aspect ratio)の調節研究が活発に進められているが、これは、縱横比の増加がSPR吸収最大値(△λmax)を増加させるためである。
【0007】
このような縱横比の調節のための方法の1つとして、種子媒介(Seed Meditated)基盤の金ナノロッドの合成は、Murphy et al(https://thevc.kr/ipsventures)などによって開示された。
【0008】
この合成方法では、2~3nmサイズのAu種粒子を合成した後、成長溶液で金ナノロッドに成長させた。水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)が還元剤として使われて種粒子の形成のための追加試薬が不要であった。結果として、種粒子は、成長溶液に種粒子が存在するために、比較的弱い還元剤を使用して金ナノロッドに成長することができる。金ナノロッドの縱横比の制御は、成長溶液に使われる還元剤によって変わり、成長段階でAuイオンが還元される速度は、還元剤の還元力によって変わる。
【0009】
しかし、それぞれの異なる還元力を有する還元剤の組み合わせによって縱横比を制御し、UV-VIs NIR吸収スペクトルなどを制御することができる方法が開示されていない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、還元剤の組み合わせによって縱横比を制御し、UV-VIs NIR吸収スペクトルなどを制御することができる製造方法と、そのための還元剤と、を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法であって、金ナノ粒子の種粒子を含む種子溶液を準備する段階;前記準備された種子溶液にアスコルビン酸(Ascorbic acid、AA)とヒドロキノン(hydroquinone、HQ)とを含む成長溶液を添加して、前記金ナノ粒子の種子をナノロッドに成長させる段階;を含み、ここで、前記アスコルビン酸は、前記金ナノ粒子の種子を先に還元させて成長させることを特徴とする混合還元剤を用いた金ナノロッドの製造方法を提供する。
【0012】
本発明の一実施例において、前記成長させる段階で、前記アスコルビン酸は、前記ヒドロキノンよりも先に反応してなくなる。
【0013】
本発明の一実施例において、前記アスコルビン酸は、前記金ナノ粒子をいずれも還元させるのには少量である。
【0014】
本発明の一実施例において、前記ヒドロキノンの容量が多くなるほど、前記金ナノロッドの縱横比は増加する。
【0015】
本発明の一実施例において、前記種子溶液は、HAuCl4、CTAB及びNaBH4を添加して種子を形成させた溶液である。
【0016】
本発明の一実施例において、前記金ナノロッドの縱横比は、アスコルビン酸またはヒドロキノンを単独使用して金ナノロッドを成長させたものよりも高い縱横比値である。
【0017】
本発明は、また、前述した方法によって製造された金ナノロッドを提供する。
【0018】
本発明の一実施例において、前記金ナノロッドの縱横比は、7以上である。
【0019】
本発明は、金ナノロッドの製造のための還元剤として、アスコルビン酸とヒドロキノンとを同時に含む還元剤を提供する。
【0020】
本発明の一実施例において、前記還元剤は、前述した金ナノロッドの製造方法に使われる還元剤である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、金ナノロッドの成長段階で互いに異なる還元力を有した還元剤を組み合わせて使用し、そのうち、アスコルビン酸(AA)は、ヒドロキノン(HQ)よりも還元力が相対的に強い。したがって、ヒドロキノン(HQ)を使用する時、金ナノロッドを成長させるのに十分な時間を提供することができるので、金ナノロッドの縱横比を容易に制御することができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例による合成方法の模式図である。
【
図2A】還元剤としてアスコルビン酸(AA)の容量を調節して合成された金ナノロッドの吸収スペクトルである。
【
図2B】還元剤としてヒドロキノン(HQ)の容量を調節して合成された金ナノロッドの吸収スペクトルである。
【
図2C】互いに異なる容量比率で混合されたヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との結合効果で準備された金ナノロッドの吸光度スペクトルである。
【
図3A】ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との各混合容量に対する金ナノロッドのUV-Vis-NIR吸収スペクトルのλ
Lmaxの変化を示す。
【
図3B】最大半値全幅(FWHM)の変化を示す結果である。
【
図4】互いに異なる容量のヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)とを混合して準備した金ナノロッドのTEMイメージであって、(a)HQ(300μL)+AA(0μL)、(b)HQ(240μL)+AA(14μL)、(c)HQ(180μL+AA(28μL)、(d)HQ(150μL)+AA(35μL)、(e)HQ(120μL)+AA(42μL)及び(f)HQ(60μL)+AA(56μL)のイメージである。
【
図5】あらゆるサイズを含んだ金ナノロッドの平均(a)長さ、(b)幅、(c)縱横比、及び標準サイズの金ナノロッドの平均(d)長さ、(e)幅、(f)縱横比である。
【
図6A】金ナノロッドの成長中、ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との容量がHQ(300μL)+AA(0μL)である時、UV-Vis-NIR吸光度スペクトルの変化を示すグラフである。
【
図6B】ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との容量がHQ(240μL)+AA(14μL)である時、UV-Vis-NIR吸光度スペクトルの変化を示すグラフである。
【
図6C】HQ(150μL)+AA(28μL)である時、UV-Vis-NIR吸光度スペクトルの変化を示すグラフである。
【
図6D】HQ(60μL)+AA(56μL)である時、UV-Vis-NIR吸光度スペクトルの変化を示すグラフである。
【
図6E】これに対応するλ
Lmax w.r.t反応時間グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施例について詳しく説明すれば、次の通りである。
【0024】
本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使われた用語や単語は、通常の、または辞書的な意味として無条件に限定して解釈されてはならず、本発明の発明者が、自分の発明を最も最善の方法で説明するために、各種の用語の概念を適切に定義して使用することができる。
【0025】
さらに、これらの用語や単語は、本発明の技術的思想に符合する意味と概念として解釈されなければならないことを知らなければならない。
【0026】
すなわち、本明細書で使われた用語は、本発明の望ましい実施例を説明するために使われるものであり、本発明の内容を具体的に限定しようとする意図として使われたものではない。
【0027】
これらの用語は、本発明のさまざまな可能性を考慮して定義された用語であることを知らなければならない。
【0028】
また、本明細書において、単数の表現は、文脈上、明確に他の意味として指示しない以上、複数の表現を含みうる。
【0029】
また、類似に複数で表現されているとしても、単数の意味を含みうるということを知らなければならない。
【0030】
本明細書の全体に亘って、ある構成要素が、他の構成要素を「含む」とすると記載する場合には、特に反対される記載のない限り、任意の他の構成要素を除くものではなく、任意の他の構成要素をさらに含むこともあることを意味する。
【0031】
本発明は、前述した問題を解決するために、このような還元剤のうち、アスコルビン酸(AA)とヒドロキノン(HQ)とを組み合わせた複合還元剤を使用して金ナノロッドを合成する。
【0032】
すなわち、本発明では、金ナノロッドの成長段階で互いに異なる還元力を有した還元剤を組み合わせて使用し、そのうち、アスコルビン酸(AA)は、ヒドロキノン(HQ)よりも還元力が相対的に強い。したがって、ヒドロキノン(HQ)を使用する時、金ナノロッドを成長させるのに十分な時間を提供することができるので、金ナノロッドの縱横比を容易に制御することができるという長所がある。
【0033】
一方、アスコルビン酸(AA)を使用した場合には、ヒドロキノン(HQ)よりも強い還元力による早い還元によって還元剤の容量を調節するとしても、縱横比を調節することが難しい。しかし、本発明は、異なる還元力を有する2つの還元剤を互いに異なる容量比で混合して金ナノロッドを合成するが、この際、合成された金ナノロッドは、アスコルビン酸(AA)またはヒドロキノン(HQ)のみを使用して製造されたものと比較して高い縱横比とさらに多くの赤色片とがλLmaxを示す特異な効果を有する。
【0034】
これは、Auイオンが初期にアスコルビン酸(AA)によって優先的に金ナノロッドに成長し、以後、成長段階で残りのAuイオンがヒドロキノン(HQ)によってナノロッドに成長されるためであり、以下、実施例及び実験例を通じて、それをより詳しく説明する。
【0035】
実施例
金種粒子(gold seed particle)の合成
0.5mLの0.01M HAuCl4を9.5mLの0.1M CTAB(セトリモニウムブロミド)に添加し、以後、0.01MのNaBH4溶液を前記種子溶液に徐々に注入した。以後、種子溶液の色が黄色から明るい褐色に変わった後、種子溶液を40℃に保持される水槽で最小30分間培養し、2~5時間以内に下記の工程に使用した。
金ナノロッドの合成
0.1M CTAB 9.5mL、0.01M HAuCl4 0.5mL、0.1M AgNO3 0.05mLで溶液を製造した。この溶液に還元剤をさらに添加すれば、Auイオンの還元によって溶液が無色になるが、もし、溶液が無色にならなければ、Auイオンが完全に還元されていないことを意味する。
Au3+をAu+に還元するのに必要な100mM HQ及び100mM AAの最小容量は、それぞれ300μL及び70μLであった。2つの還元剤を同じ濃度で混合すれば、アスコルビン酸(AA)がヒドロキノン(HQ)よりも相対的にさらに強い還元力を有するので、金ナノロッドは、アスコルビン酸(AA)によってのみ成長し、2つの還元剤の効果を確認することは難しいので、本実施例では、アスコルビン酸(AA)とヒドロキノン(HQ)との量を異なって使用した。
最後に、前記製造された種子溶液160μLを前記溶液に添加した後、40℃に保持される水槽に保管した。成長時間は、還元剤の混合容量によって変わり、金ナノロッドの成長が完了すれば、溶液は暗褐色になる。
【0036】
比較例
比較例としてアスコルビン酸(AA)またはヒドロキノン(HQ)のみで金ナノロッドを合成した。アスコルビン酸(AA)の場合、0.1M CTAB 4.75mL、0.01M HAuCl4 0.2mL、0.01M AgNO3 0.03mLを順次に添加した後、0.1M AA 0.03mLを添加して成長溶液を準備し、最後にAu種子溶液0.06mLを成長溶液に添加し、40℃に保持される水槽に1時間保管した。ヒドロキノン(HQ)も、実施例と同じ方法や、還元剤としてヒドロキノン(HQ)のみを使用した。
【0037】
実験例
還元剤の選択
図1は、本発明の実施例による合成方法の模式図である。
【0038】
図1を参照すれば、種粒子の合成段階で強力な還元剤であるNaBH
4を使用してAuイオンを還元して、2~3nmサイズの球状粒子を合成した。対照的に、金ナノロッド成長段階では、弱い還元剤を使用して事前合成された種粒子で金ナノロッドを成長させたが、この成長段階で所望の縱横比の金ナノロッドが合成されるためには、適切な還元剤を選択することが必須である。
【0039】
本発明による複合還元剤であるアスコルビン酸(AA)とヒドロキノン(HQ)は、この成長段階で還元剤として使われる。金ナノロッドがアスコルビン酸(AA)を使用して成長された時、Au3+がAu+に還元される速度がさらに速かった。結果として、金ナノロッドの成長速度は、ヒドロキノン(HQ)が還元剤として使われる時よりもさらに速かった。
【0040】
したがって、アスコルビン酸(AA)を使用する時、相対的に短い金ナノロッドが形成された。対照的に、Auイオン還元は、ヒドロキノン(HQ)を使用する時、徐々に起こり、したがって、金ナノロッドの成長速度は、遅くてさらに長い金ナノロッドの成長を誘導した。
【0041】
図2Aは、還元剤としてアスコルビン酸(AA)の容量を調節して合成された金ナノロッドの吸収スペクトルであり、
図2Bは、還元剤としてヒドロキノン(HQ)の容量を調節して合成された金ナノロッドの吸収スペクトルであり、
図2Cは、互いに異なる容量比率で混合されたヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との結合効果で準備された金ナノロッドの吸光度スペクトルである。
【0042】
異なる容量の還元剤アスコルビン酸(AA)及びヒドロキノン(HQ)から合成された金ナノロッドのUV-Vis-NIRスペクトルが、
図2A、
図2Bに示されている。
【0043】
図2Aで金ナノロッドのλ
Lmaxは、734nmから最大812nmに移動した。λ
Lmax=78nmは、アスコルビン酸(AA)の容量を90μLから30μLに変更する時のみ可能であった。
【0044】
一方、
図2Bは、ヒドロキノン(HQ)を使用する場合、ヒドロキノン(HQ)の容量を変更すれば、λ
Lmaxが850nmから1066nm(λ
Lmax=216)に大きく移動した。すなわち、ヒドロキノン(HQ)を使用する場合、アスコルビン酸(AA)に比べてλ
Lmaxが大きく変わることは、各場合に準備された金ナノロッドの縱横比の差のためである。
【0045】
それを確認するために、TEMを通じて金ナノロッドを分析した結果、アスコルビン酸(AA)のみで製造された金ナノロッドの長さと直径との変化も大きくなくて、低い縱横比(3.14)が表われたが、ヒドロキノン(HQ)の場合、長さと直径との変化が大きく変更されて高い縱横比(7.43)が表われた。すなわち、ヒドロキノン(HQ)を使用する場合、金ナノロッドの縱横比のこのような増加がアスコルビン酸(AA)を使用する金ナノロッドの縱横比に比べてλLmaxを増加させる。
【0046】
これは、還元剤の還元力の差による金ナノロッドの成長率の差に起因する。すなわち、ヒドロキノン(HQ)は、アスコルビン酸(AA)よりも弱い還元剤なので、ヒドロキノン(HQ)の容量が低いほど、Au3+をAu+に還元される速度が遅くなる。したがって、金ナノロッドの成長は徐々に起こって、さらに長い波長の光を吸収することができる高い縱横比の金ナノロッドが合成され、ヒドロキノン(HQ)の容量が増加するにつれてAu3+をAu+に急激に還元されるために、金ナノロッドが成長する十分な時間を提供せず、その結果、λLmaxがさらに短い波長に移動する。
【0047】
本発明の実験例によるこのような結果は、金ナノロッドの成長が還元剤の還元力を通じて制御されるということを示す。すなわち、アスコルビン酸(AA)使用時に、λLmax制御が容易ではなく、ヒドロキノン(HQ)使用時に、1066nm以後には、λLmaxを制御することが不可能であった。しかし、2つの還元剤をいずれも使用した場合、λLmaxは、最大1250nmまで制御することができた。
【0048】
図2Cでは、アスコルビン酸(AA)とヒドロキノン(HQ)との他の容量比率を混合して製造された金ナノロッドのUV-Vis-NIR吸収スペクトルが示される。
【0049】
図2Cを参照すれば、λ
Lmaxは、混合還元剤でアスコルビン酸(AA)の比率が増加するにつれて赤色移動が観察された。これは、
図3Aでも確認することができるが、
図3Aは、ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との各混合容量に対する金ナノロッドのUV-Vis-NIR吸収スペクトルのλ
Lmaxの変化を示す結果である。
図3Bは、ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との各混合容量に対する金ナノロッドのUV-Vis-NIR吸収スペクトルの最大半値全幅(FWHM)の変化を示す結果である。
【0050】
また、粒子の均一度を示すUV-Vis-NIR吸収スペクトルの最大半値全幅(FWHM)は、アスコルビン酸(AA)の比率が増加するにつれて増加した(
図3B)。これは、さらに速い反応速度とアスコルビン酸(AA)のさらに高い比率とによるさらに低い均一性のためである。
【0051】
図4は、互いに異なる容量のヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)とを混合して準備した金ナノロッドのTEMイメージであって、(a)HQ(300μL)+AA(0μL)、(b)HQ(240μL)+AA(14μL)、(c)HQ(180μL+AA(28μL)、(d)HQ(150μL)+AA(35μL)、(e)HQ(120μL)+AA(42μL)及び(f)HQ(60μL)+AA(56μL)のイメージである。
【0052】
ここで、ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との混合容量が、それぞれ0μL及び70μLである時、金ナノロッドの収率が著しく少ないために考慮しなかった。
【0053】
図4を参照すれば、アスコルビン酸(AA)の容量が0から56に増加するにつれて金ナノロッドの均一性が減少した。数百ナノメートルの高い縱横比を有する金ナノロッドは、
図4で(a)ないし(f)のように、TEM分析で観察された。このような結果から、金ナノロッドの縱横比が成長過程の間に、還元剤の還元力を制御することにより、向上するということを確認することができる。また、このような結果は、
図1と
図2Aないし
図2CとのUV-Vis NIR吸収スペクトルと一致する。しかし、このような結果は、アスコルビン酸(AA)の増加がAu
3+をAu
+に迅速に減少させて金ナノロッドが成長する十分な時間を提供しないという予想と異なるものである。
【0054】
図5は、あらゆるサイズを含んだ金ナノロッドの平均(a)長さ、(b)直径、(c)縱横比、及び標準サイズの金ナノロッドの平均(d)長さ、(e)直径、(f)縱横比である。
【0055】
図5の(a)ないし(c)に見れば、AAとHQとの量をHQ(300μL)+AA(0μL)、HQ(240μL)+AA(14μL)、HQ(150μL)+AA(28μL)、HQ(120μL)+AA(35μL)、HQ(60μL)+AA(56μL)のように互いに異なる容量で混合して準備されたあらゆるサイズの金ナノロッドの平均長さ、幅、そして、縱横比が示されている。この結果を参照すれば、アスコルビン酸(AA)の容量が増加するにつれて金ナノロッドの平均長さと縱横比とが増加した。しかし、誤差棒も、次第に増加したが、これは、成長速度が速くなり、均質性は減少するということを示唆する。
【0056】
他の容量のアスコルビン酸(AA)とヒドロキノン(HQ)とを混合して準備された例外的な長さの金ナノロッドを除いた標準サイズの金ナノロッドの平均長さ、幅及び縱横比は、
図5の(d)ないし(f)に示されている。
【0057】
この結果を参照すれば、アスコルビン酸(AA)の容量が減少し、ヒドロキノン(HQ)の容量が増加するにつれてあらゆる金ナノロッドの平均長さと直径とが減少した(
図5の(d)ないし(e))。すなわち、2つの還元剤がいずれも存在する時、相対的に還元力が強いアスコルビン酸(AA)は、ヒドロキノン(HQ)よりも迅速にAuイオンを還元させる。したがって、アスコルビン酸(AA)によって還元されたAuは、種粒子に優先的に成長し、アスコルビン酸(AA)が最も早く消費された。
【0058】
結果として、成長溶液でアスコルビン酸(AA)の容量は、あらゆるAuイオンを減少させるのに十分ではなかった。したがって、最初には少数の種粒子のみナノロッドに成長し、アスコルビン酸(AA)によって還元されていない残りのAuイオンは、ヒドロキノン(HQ)によって徐々に還元された。その後、残りの種粒子は、ナノロッドに成長した。したがって、金ナノロッド成長溶液に2つの還元剤がいずれも存在すれば、相対的に還元力が強いアスコルビン酸(AA)が一部のAuイオンを優先的に還元させ、結局、ヒドロキノン(HQ)は、残りのAuイオンを徐々に還元させて、相対的に長い金ナノロッドが成長する。
【0059】
その結果、アスコルビン酸(AA)の容量が増加するほど、Auイオンの還元速度が増加し、これにより、標準サイズの金ナノロッドの平均長さと直径とが減少し(
図5の(d)ないし(f))、残りの種粒子の数が相対的に減少する。この際、残っている種粒子の数が減少するほど、還元されたAuが、各種粒子に相対的にさらに多く付着されるために、金ナノロッドの長さが長くなり、全体平均長さが増加する。
【0060】
図6Aは、金ナノロッドの成長中、ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との容量がHQ(300μL)+AA(0μL)である時、UV-Vis-NIR吸光度スペクトルの変化を示し、
図6Bは、ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との容量がHQ(240μL)+AA(14μL)である時、
図6Cは、HQ(150μL)+AA(28μL)である時、
図6Dは、HQ(60μL)+AA(56μL)である時であり、
図6Eは、これに対応するλ
Lmax w.r.t反応時間グラフである。
【0061】
図6Aないし
図6Dを参照すれば、ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との容量が300μL及び0μLである時(
図6A)、240μL及び140μLである時(
図6B)、150μL及び28μLである時(
図6C)、そして、60μL及び56μLである時(
図6D)、反応時間は、それぞれ3、3.5、5.5、そして、7.5時間であった。
【0062】
図5の(a)及び
図5の(c)のように、金ナノロッドの平均長さと縱横比は、ヒドロキノン(HQ)の容量が減少することによって増加した。金ナノロッドは、さらに長くなるために、追加持続時間が必要であるために、反応時間は、ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との容量が、それぞれ60μL及び56μLである時、最も長かった(
図6D)。
【0063】
ヒドロキノン(HQ)とアスコルビン酸(AA)との標準還元電位は、それぞれ0.714V及び-0.081Vであるが、ヒドロキノン(HQ)は、アスコルビン酸(AA)よりも弱い還元剤である。アスコルビン酸(AA)のpKaは、4.12であり、ヒドロキノン(HQ)のpKaは、9.96であるが、アスコルビン酸(AA)のpKaが低いために、相対的にさらに強い酸なので、ヒドロキノン(HQ)よりもH+と電子とをさらによく出し、これは、アスコルビン酸(AA)がヒドロキノン(HQ)よりも還元力がさらに強いことを示す。
【0064】
金ナノロッドの成長メカニズムは、成長溶液で還元剤によって還元されたAu粒子が種粒子に等方性で付着されて金ナノロッドに成長するものであるが、還元力が相対的に弱いヒドロキノン(HQ)は、Auイオンを徐々に還元させ、該還元されたAu粒子は、種粒子上で徐々に成長して金ナノロッドの長さと直径とを増加させるのに十分な成長時間を提供する。したがって、ヒドロキノン(HQ)をAuイオンを還元させるのに不十分な量のアスコルビン酸(AA)と組み合わせて共に使用する場合、その還元剤の比率と容量比などを通じて縱横比などの金ナノロッドの寸法を調節することができる。