(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001834
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物、繊維、およびフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20221226BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221226BHJP
D01F 6/92 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/36
D01F6/92 301M
D01F6/92 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122556
(22)【出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2021102552
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】廣部 育弥
(72)【発明者】
【氏名】福林 夢人
(72)【発明者】
【氏名】天満 悠太
【テーマコード(参考)】
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4J002CF061
4J002DJ016
4J002FA086
4J002FD016
4J002GK01
4L035AA05
4L035BB31
4L035JJ05
4L035JJ26
4L035KK01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリカ粒子が均一に分散されており、繊維やフィルム用途に好適に使用することができるポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分とエチレングリコールを含むグリコール成分とからなるポリエステル樹脂、およびシリカ粒子を含むポリエステル樹脂組成物である。シリカ粒子の含有量が、0.1~20質量%であり、レーザー回折法にて測定されたシリカ粒子の粒度分布において、平均粒径が3.0μm以下、最大粒径が10.0μm以下である。ポリエステル樹脂組成物を成形体としたときのヘーズが40%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分とエチレングリコールを含むグリコール成分とからなるポリエステル樹脂、およびシリカ粒子を含むポリエステル樹脂組成物であって、
シリカ粒子の含有量が、0.1~20質量%であり、
レーザー回折法にて測定されたシリカ粒子の粒度分布において、平均粒径が3.0μm以下、最大粒径が10.0μm以下であり、
成形体としたときのヘーズが40%以上である、ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
シリカ粒子の比表面積が50.0m2/g以下である、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
フィルムとしたときの、三次元表面粗さ(SRa)が0.02~0.06μmであり、高さ0.5μm以上の突起数が100個/m2以下である、請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
シリカ粒子が真球状シリカ粒子である、請求項1~3の何れか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
硫黄成分の含有量が5~150ppmである、請求項1~4の何れか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のポリエステル樹脂組成物を含有する、繊維。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1項に記載のポリエステル樹脂組成物を含有する、フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維やフィルム用途に好適に使用できるポリエステル樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステル樹脂は、機械的特性、化学的特性に優れており、広範な分野(例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用等のフィルムまたはシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等)において使用されている。
【0003】
フィルム用途においては、ポリエステル樹脂中に微粒子を含有させて、表面に適度の凹凸を付加し、耐ブロッキング性や離型性等の性能を付与することが知られている。また、繊維用途においては、ポリエステル樹脂中にシリカや酸化チタンなどの無機酸化物微粒子を含有させて、涼感性、透け防止性、保温性などを織編物に付与することが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、保温性に優れるポリエステル繊維を得るための、シリカ粒子を含有させたポリエステル樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、成形体としたときの艶消し性、隠蔽性および表面平滑性に優れ、繊維やフィルムに好適なポリエステル樹脂組成物が求められている。
本発明の課題は、艶消し性、隠蔽性および表面平滑性に優れ、繊維やフィルムに好適なポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、粒径が特定範囲であるシリカ粒子を特定範囲で含有するポリエステル樹脂組成物は、シリカ粒子が粗大粒子とならずに均一に分散されていることから、艶消し性、隠蔽性および表面平滑性に優れ、ポリエステル繊維やフィルムに好適に用いられることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は以下(1)~(7)の通りである。
(1)テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸成分とエチレングリコールを含むグリコール成分とからなるポリエステル樹脂、およびシリカ粒子を含むポリエステル樹脂組成物であって、シリカ粒子の含有量が、0.1~20質量%であり、レーザー回折法にて測定されたシリカ粒子の粒度分布において、平均粒径が3.0μm以下、最大粒径が10.0μm以下であり、成形体としたときのヘーズが40%以上である、ポリエステル樹脂組成物。
(2)シリカ粒子の比表面積が50.0m2/g以下である、(1)のポリエステル樹脂組成物。
(3)フィルムとしたときの、三次元表面粗さ(SRa)が0.02~0.06μmであり、高さ0.5μm以上の突起数が100個/m2以下である、(1)または(2)のポリエステル樹脂組成物。
(4)シリカ粒子が真球状シリカ粒子である、(1)~(3)の何れかのポリエステル樹脂組成物。
(5)硫黄成分の含有量が5~150ppmである、(1)~(4)の何れかのポリエステル樹脂組成物。
(6)(1)~(5)の何れかのポリエステル樹脂組成物を含有する、繊維。
(7)(1)~(5)の何れかのポリエステル樹脂組成物を含有する、フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、含有されるシリカ粒子の粒径や含有量が特定範囲であることから、シリカ粒子が粗大とならずに均一に分散されており、成形体としたときの艶消し性、隠蔽性および表面平滑性に優れ、繊維やフィルムに好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のポリエステル樹脂組成物を詳細に説明する。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂と、シリカ粒子とを含む。
ポリエステル樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含有するグリコール成分とからなる。樹脂組成物の特性を損なわない範囲において、他のジカルボン酸成分や、他のグリコール成分が共重合されていてもよい。
【0011】
酸成分中のテレフタル酸の割合は、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。テレフタル酸の割合が70モル%未満であると、樹脂組成物の結晶性が低下し、かつ融点が低くなり、溶融紡糸時やフィルム製膜時の操業性(以下、単に操業性という)等が低下する場合がある。
【0012】
ポリエステル樹脂における、テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸、更には無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
また、ポリエステル樹脂は、酸成分として、脂肪族ラクトンを含有してもよい。脂肪族ラクトンとしては、炭素数4~11のラクトン及びこれらの単独重合体又は2種以上の共重合体があり、特に好適な脂肪族ラクトンとして、ε―カプロラクトンやδ―バレルラクトンが挙げられる。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂は、グリコール成分として、エチレングリコールを含有するものである。グリコール成分中のエチレングリコールの割合は、結晶性、耐熱性にいっそう優れることから、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、75モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましい。
エチレングリコール以外のグリコール成分の具体例としてはジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体等を用いることができる。
【0014】
ポリエステル樹脂が、グリコール成分としてジエチレングリコールを含有する場合、その含有量は、全グリコール成分中、2モル%以上であることが好ましく、5モル%以上15モル%以下であることがより好ましい。ジエチレングリコールの含有量が上記範囲であると、操業性により優れるものとなる。
【0015】
ポリエステル樹脂が、グリコール成分としてトリエチレングリコールを含有する場合、その含有量は、操業性にいっそう優れることから、全グリコール成分中、0.4~6.0モル%であることが好ましい。
【0016】
ポリエステル樹脂が、グリコール成分としてテトラエチレングリコールを含有する場合、その含有量は、繊維やフィルム等としたときの特性にいっそう優れることから、2モル%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、シリカ粒子の含有量が0.1~20質量%であり、0.5~15質量%が好ましい。シリカ粒子の含有量が0.1質量%未満では、成形体、繊維やフィルム等としたときの、艶消し性および隠蔽性が不足する。一方、シリカ粒子の含有量が20質量%を超えると、シリカ粒子の凝集が生じて、粒子径が5μm以上の粗大なシリカ粒子が発生し、繊維においては切糸による操業性悪化や強度低下の原因となる場合がある。また、フィルムなどの成形品においては、粗大なシリカ粒子による外観等の悪化の原因となる場合がある。
【0018】
本発明のポリエステル樹脂組成物においては、シリカ粒子として、真球状であるシリカ粒子を用いることが好ましい。これにより、樹脂組成物中で凝集が起こりにくく、シリカ粒子が粗大とならずに均一に分散される。その結果、シリカ粒子の平均粒径や最大粒径、繊維やフィルムにしたときのヘーズ、三次元表面粗さや突起数を特定範囲としやすくなり、艶消し性、隠蔽性、表面平滑性、操業性、強度、ガイド摩擦性等にいっそう優れるものとなる。
本発明で用いられるシリカ粒子の真球度は、例えば、0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、0.95以上であることがさらに好ましい。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂組成物に含有されるシリカ粒子は、レーザー回折法にて測定された粒度分布において、平均粒径が3.0μm以下であり、0.1~3.0μmであることが好ましく、0.2~2.3μmであることがより好ましい。シリカ粒子の平均粒径が3.0μmを超えると、操業性や得られる製品の強度、ガイド摩擦性が悪化する。また、フィルター濾過時の昇圧が速くなる場合がある。シリカ粒子の平均粒径が0.1μm未満であると、繊維やフィルムにした際に、シリカ粒子を含有させる効果を付与できない場合や、隠蔽性が不足することがある。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂組成物に含有されるシリカ粒子は、レーザー回折法にて測定される粒度分布において、最大粒径が10μm以下であり、8μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。シリカ粒子の最大粒径が10μmを超えると、表面平滑性、操業性、強度、ガイド摩擦性が悪化する。またはフィルター濾過時の昇圧が速くなる場合がある。
【0021】
シリカ粒子は、比表面積が小さいことが好ましい。比表面積は50m2/g以下であることが好ましく、40m2/g以下であることがより好ましく、30m2/g以下であることがさらに好ましい。比表面積が50m2/gを超えると、樹脂組成物中で凝集が起こりやすい場合がある。その結果、シリカ粒子が粗大となり易く均一に分散され難いことから、シリカ粒子の平均粒径や最大粒径、繊維やフィルムにしたときの三次元表面粗さや突起数を特定範囲とし難くなり、表面平滑性、操業性、強度、ガイド摩擦性に劣ることがある。シリカ粒子の比表面積の下限値は、0.1m2/gであることが好ましい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂組成物を成形体としたきのヘーズは、40%以上であり、60%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましい。ヘーズが40%未満であると、艶消し性、隠蔽性に劣るものとなる。ヘーズの算出方法については、実施例において詳述する。
【0023】
本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルムとしたときの、フィルム表面の三次元表面粗さ(SRa)は0.02~0.06μmであることが好ましく、0.03~0.05μmであることがより好ましい。SRaが0.02μm未満である場合は、操業性が低下し、また繊維やフィルム等としたときの表面平滑性が不足する場合がある。SRaが0.06μmを超えると操業性が悪化する場合がある。また、フィルター濾過時の昇圧が速くなる場合がある。
【0024】
本発明のポリエステル樹脂組成物をフィルムとしたときの、高さ0.5μm以上の突起数は100個/m2以下であることが好ましく、60個/m2以下であることがより好ましく、20個/m2以下であることがさらに好ましい。突起数が100個/m2を超えると操業性が悪化する場合がある。または、フィルター濾過時の昇圧が速くなる場合がある。
フィルム表面の三次元表面粗さ(SRa)、突起数の算出方法については、実施例において詳述する。
【0025】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、極限粘度が0.45dl/g以上であることが好ましく、0.5dl/g以上であることがより好ましく、0.6~0.8dl/gであることがさらに好ましい。極限粘度が0.45dl/g未満であると、フィルムや繊維等としたときに、十分な強度や特性が得られない場合がある。
【0026】
なお、本発明における極限粘度とは、フェノール/四塩化エタンとの等重量混合液を溶媒として、温度20℃で測定した値である。
【0027】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の重合体、制電剤、消泡剤、染色性改良剤、染料、顔料、艶消剤、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、難燃剤、その他の添加剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、芳香族アミン系、フェノール系等の酸化防止剤が挙げられる。安定剤としては、リン酸またはリン酸エステル系等のリン系、硫黄系、アミン系等の安定剤が挙げられる。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、有機系、無機系または有機金属系のトナー、または蛍光増白剤等を含有してもよい。これにより、ポリエステル樹脂の黄み等の着色をさらに抑えることができる。または結晶性を向上させるため、ポリエチレンをはじめとする他の樹脂、タルク等の無機核剤を含有してもよい。
【0029】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、色調改善等の目的で、コバルト化合物を含有してもよい。コバルト化合物としては特に限定されないが、具体的には例えば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、それらの水和物等が挙げられる。中でも特に酢酸コバルト四水和物が好ましい。コバルト化合物の含有量は、コバルト原子として、ポリエステル樹脂に対して10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5ppm以下であり、さらに好ましくは3ppm以下である。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂組成物に、製造工程で発生した廃棄樹脂または市場から回収されたリサイクルポリエステル樹脂等(例えば、PETボトル等)を混合させてもよい。
【0031】
(ポリエステル樹脂組成物の製造方法)
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法は、例えば、エステル化反応、またはエステル交換反応を経た後、重縮合反応を行うものである。
【0032】
ポリエステル樹脂組成物のポリエステル原料としては、例えば、エチレングリコールを主たる成分として含むグリコール成分、ジカルボン酸成分、グリコール成分とジカルボン酸成分とからなる低次縮合物としてのエステル化物等が挙げられる。
【0033】
上記エステル化物を得る手法としては、例えば、ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレートを製造する場合は、テレフタル酸、エチレングリコ-ル、および必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去し、エステル化して、ポリエステル樹脂の原料としてのエステル化物を得る。または、テレフタル酸ジメチル、エチレングリコ-ル、および必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコ-ルを留去し、エステル交換させてエステル化物を得る。
【0034】
以下、エステル化物の調製方法について、説明する。
ジカルボン酸、またはそのエステル誘導体1モルに対して好ましくは1.02~2.5モル、より好ましくは1.03~1.8モルのエチレングリコ-ルが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応器に連続的に供給し、エステル化物を得る。
【0035】
エステル化反応は、エチレングリコ-ルが還流する条件下で、反応によって生成した水またはアルコ-ルを、精留塔で系外に除去しながら行う。エステル化反応は、複数のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用いて行うことができる。
【0036】
第1段階のエステル化反応の温度は、240~270℃であることが好ましく、245~265℃であることがより好ましい。圧力は、0.2~3kg/cm2Gであることが好ましく、0.5~2kg/cm2Gであることがより好ましい。
【0037】
最終段階のエステル化反応の温度は、250~290℃であることが好ましく、255~275℃であることがより好ましい。圧力は、0~1.5kg/cm2Gであることが好ましく、0~1.3kg/cm2Gであることがより好ましい。
【0038】
3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段階の反応条件と最終段階の反応条件の間の条件であることが好ましい。
多段階でのエステル化反応の反応率は、各段階で滑らかに上昇させることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上に達することが好ましく、93%以上に達することがより好ましい。これらのエステル化反応によりエステル化物を得ることができ、その好ましい分子量は500~5000程度である。
【0039】
エステル化反応においてテレフタル酸を用いると、テレフタル酸の酸としての触媒作用により反応が進行する。
【0040】
上記のようにして得られたエステル化物に対し、シリカ粒子と重縮合触媒を添加し、その後、重縮合反応を進行させて、本発明のポリエステル樹脂を得る。
【0041】
重合触媒として、金属化合物を用いてもよい。例えば、ゲルマニウム、アンチモン、チタンおよびコバルト化合物、それらの酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物などが挙げられる。
重合触媒として金属化合物を用いた場合、その添加量は、得られるポリエステル樹脂の全酸成分1モルに対し、0.1×10-5モル~10.0×10-4モルが好ましく、5×10-5モル~3.0×10-4モルがより好ましい。0.1×10-5よりも少ないと、目標の重合度が得られない場合がある。一方、10.0×10-4モルを超えると、副生物により経時安定性が悪くなり、長期保存後の極限粘度の低下や色調の悪化が起こる場合がある。
【0042】
本発明のポリエステル樹脂組成物中の、金属系触媒由来の金属成分の含有量が多い場合は、溶融加工時に異物が発生することがある。金属成分の含有量は、1ppm以下であることが好ましく、0.5ppm以下であることがより好ましく、0ppmであることがさらに好ましい。
【0043】
重合触媒として有機スルホン酸系化合物を用いてもよい。これにより、金属成分の含有量を低減させたポリエステル樹脂組成物を得ることができる。有機スルホン酸系化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、m-またはp-ベンゼンジスルホン酸、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸、o-、m-またはp-スルホ安息香酸、ベンズアルデヒド-o-スルホン酸、アセトフェノン-p-スルホン酸、アセトフェノン-3,5-ジスルホン酸、o-、m-またはp-アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、2-アミノトルエン-3-スルホン酸、フェニルヒドロキシルアミン-3-スルホン酸、フェニルヒドラジン-3-スルホン酸、1-ニトロナフタレン-3-スルホン酸、チオフェノール-4-スルホン酸、アニソール-o-スルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、o-、m-またはp-クロルベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-ブロモベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-ニトロベンゼンスルホン酸、ニトロベンゼン-2,4-ジスルホン酸、ニトロベンゼン-3,5-ジスルホン酸、ニトロベンゼン-2,5-ジスルホン酸、2-ニトロトルエン-5-スルホン酸、2-ニトロトルエン-4-スルホン酸、2-ニトロトルエン-6-スルホン酸、3-ニトロトルエン-5-スルホン酸、4-ニトロトルエン-2-スルホン酸、3-ニトロ-o-キシレン-4-スルホン酸、5-ニトロ-o-キシレン-4-スルホン酸、2-ニトロ-m-キシレン-4-スルホン酸、5-ニトロ-m-キシレン-4-スルホン酸、3-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、5-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、6-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、2,4-ジニトロベンゼンスルホン酸、3,5-ジニトロベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-フルオロベンゼンスルホン酸、4-クロロ-3-メチルベンゼンスルホン酸、2-クロロ-4-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、4-スルホフタル酸、2-スルホ安息香酸無水物、3,4-ジメチル-2-スルホ安息香酸無水物、4-メチル-2-スルホ安息香酸無水物、5-メトキシ-2-スルホ安息香酸無水物、1-スルホナフトエ酸無水物、8-スルホナフトエ酸無水物、3,6-ジスルホフタル酸無水物、4,6-ジスルホイソフタル酸無水物、2,5-ジスルホテレフタル酸無水物、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メチオン酸、シクロペンタンスルホン酸、1,1-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸無水物、3-プロパンジスルホン酸、β-スルホプロピオン酸、イセチオン酸、ニチオン酸、ニチオン酸無水物、3-オキシ-1-プロパンスルホン酸、2-クロルエタンスルホン酸、フェニルメタンスルホン酸、β-フェニルエタンスルホン酸、α-フェニルエタンスルホン酸、クロルスルホン酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸エチル、5-スルホサリチル酸ジメチル、4-スルホフタル酸トリメチル等、およびこれらの塩が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、2-スルホ安息香酸無水物、o-スルホ安息香酸、m-スルホ安息香酸、p-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、ベンゼンスルホン酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸メチル、5-スルホイソフタル酸、これらの塩などが挙げられる。
【0044】
有機スルホン酸系化合物は、例えば固体状、スラリー状または水、グリコール等に溶解させた溶液として添加することができる。
【0045】
有機スルホン酸系化合物の添加量は、その種類にもよるが、ポリエステル樹脂組成物を構成する酸成分1モルに対して0.5×10-4~40×10-4モルとすることが好ましく、1.0×10-4~20.0×10-4モルであることがより好ましい。
【0046】
有機スルホン酸系化合物の添加量を上記の範囲とすることで、得られるポリエステル樹脂組成物中の、硫黄成分の含有量を、好ましくは5~150ppm、より好ましくは6~100ppmとすることができる。硫黄成分の含有量が5ppm未満であると、重合度が上がりにくく、分子量が小さい樹脂組成物となり、成形体、フィルムや繊維等としたときの特性に劣る場合がある。一方、150ppmを超えると、ポリエステル樹脂組成物の着色の原因となる場合がある。
【0047】
エステル化反応の後に、重縮合反応を行って、本発明のポリエステル樹脂組成物を得ることができる。重縮合反応としては、例えば溶融重縮合反応が挙げられる。重縮合反応は1段階で行ってもよいし、多段階に分けて行ってもよい。
重縮合反応条件としては、特に限定されるものではないが、第1段階の重縮合反応の温度は250~290℃であることが好ましく、260~280℃であることがより好ましい。圧力は500~20hPaであることが好ましく、200~30hPaであることがより好ましい。
【0048】
多段階の場合、最終段階の重縮合反応の温度は265~300℃であることが好ましく、275~295℃であることが好ましい。圧力は10~0.1hPaが好ましく、5~0.5hPaであることがより好ましい。3段階以上で実施する場合には、中間段階の反応条件は、第1段階と最終段階の間の反応条件とすることが好ましい。これらの各段階において重合度を滑らかに上昇させることが好ましい。
【0049】
さらに、重縮合反応時には、必要に応じて、上記の重合触媒と併せて、ヒンダードフェノール系抗酸化剤、樹脂の熱分解を抑制することができるリン化合物を添加することもできる。
【0050】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0051】
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0052】
重縮合反応の前に、必要に応じて、解重合反応、エーテル化反応を行ってもよい。
解重合の反応条件としては、特に限定されるものではないが、温度は240~290℃であることが好ましく、250~280℃であることがより好ましい。圧力は、常圧または加圧下において進行させることが好ましく、その圧力は、0~3.0kg/cm2Gであることが好ましい。
【0053】
エーテル化反応は、重合触媒を添加し、加熱しながら、グリコールのエーテル化物(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール)の生成を促進させる反応である。エーテル化反応の温度は240℃以上であることが好ましく、240~300℃であることがより好ましい。エーテル化反応の時間は、5~120分間が好ましく、10~60分間であることがより好ましい。また、エーテル化反応は、常圧または加圧下において進行させることが好ましく、その圧力は、0~3.0kg/cm2Gであることが好ましい。
【0054】
(用途)
本発明のポリエステル樹脂組成物は様々な用途に適用できる。用途としては、例えば繊維、成形体、フィルム等が挙げられる。
【0055】
本発明のポリエステル樹脂組成物を用いて、本発明の繊維とすることができる。
本発明の繊維は、例えば本発明の樹脂組成物を含む原料を溶融し、紡糸することにより得られる。紡糸は、公知の条件に従って実施することができる。
【0056】
本発明の樹脂組成物を含有する本発明の繊維としては、例えばモノフィラメント、マルチフィラメント等のいずれであってもよく、また長繊維、短繊維等のいずれであってもよい。
本発明の繊維を構成する単繊維の形状は、特に限定するものではなく、丸断面のみならず、多角形状等の異形断面のものであってもよい。
本発明の繊維は、単繊維の全てが本発明の樹脂組成物で形成されている繊維のみならず、本発明の樹脂組成物と、本発明の樹脂組成物以外のポリエステル樹脂組成物(例えば、他の共重合成分を含有するポリエステル樹脂など)との複合繊維であってもよい。複合繊維の形態としては、芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型が挙げられる。
【0057】
本発明の繊維は、本発明の樹脂組成物の含有量が50質量%以上であることが好ましく、中でも80質量%以上、さらには100質量%であることが好ましい。
本発明の繊維は、本発明の樹脂組成物を含むことにより、艶消し性、隠蔽性および表面平滑性に優れた繊維となる。
より具体的には、艶消し性と隠蔽性に優れることを示す指標として、L値が40~70であることが好ましく、中でも50~60であることが好ましい。
【0058】
なお、本発明におけるL値は、得られた繊維を編機(小池機械製作所製、針本数:300本、釜径:3.5インチ)を用いて筒編地に編成し、黒板を背景にした状態で色彩色差計(CR-300;コニカミノルタ製)を用いて測定するものである。
【0059】
また、本発明の繊維は表面平滑性にも優れるものである。表面平滑性に優れることで、ガイドなどによる摩擦抵抗が小さくなり、操業性が向上する。すなわち、紡糸・延伸・加工工程などにおいて、ガイドなどの摩擦抵抗による毛羽の発生や切れ糸が抑制され、得られる繊維が毛羽の少ないものとなる。
【0060】
本発明の繊維がマルチフィラメントである場合、その特性値としては、例えば単糸繊度0.3~30デシテックス、単糸数2~300、総繊度5~350デシテックス、強度1~5cN/デシテックス、伸度10~400%の範囲を有するものが挙げられる。
本発明の繊維は、例えば単糸繊度が0.8デシテックス以下(好ましくは0.6~0.3デシテックス)の極細繊維であってもよい。
【0061】
本発明のポリエステル樹脂組成物を用いて、本発明のフィルムとすることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物からフィルムを製造する方法は、特に限定されないが、例えば本発明のポリエステル樹脂組成物を含む原料を溶融し、Tダイから溶融押出しする方法が挙げられる。
【0062】
溶融押出によりフィルムを得るには、例えば、Tダイから押出したシート状体を、静電印可キャスト法、エアーナイフ法等の公知の方法により、30℃以下に温度調節した冷却ドラム上に密着させ、ガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化させる。
【0063】
フィルムは未延伸でもよいし、一軸延伸または二軸延伸されたものであってもよい。
二軸延伸方法としては、テンター式同時二軸延伸方法、チューブラー式同時二軸延伸方法、逐次二軸延伸方法等の公知の方法を用いることができる。フィルムの厚みは特に限定されないが、5~500μmの範囲が好ましい。
【実施例0064】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、測定、評価は以下の方法により行った。
【0065】
(1)極限粘度
フェノール/四塩化エタンとの等重量混合液を溶媒として、温度20℃で測定した。
【0066】
(2)ポリエステル樹脂の組成
重水素化クロロホルム/重水素化トリフルオロ酢酸=9/1(質量比)の混合溶媒1mLに10mgの試料を溶解し、日本電子社製LA-400型NMRにて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピーク積分強度から、ジカルボン酸成分、トリエチレングリコール成分とテトラエチレングリコール成分の合計量、および、それ以外の各グリコール成分とのモル比を算出した。
次いで、下記のようにして、トリエチレングリコールとテトラエチレングルコールの定量を行った。
ポリエステル樹脂を濃度0.75規定の水酸化カリウム/メタノール溶液中で加水分解した後、テレフタル酸を添加して中和した。次に、濾過して得られた濾液について、ガスクロマトグラフ法による測定を行い、あらかじめ作製した検量線を用い、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールとのモル比を算出した。これらのモル比と前述の1H-NMRの測定結果(トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの合計の成分と、各グリコール成分とのモル比)とから、全グリコール成分中の、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの含有量を算出した。
【0067】
(3)シリカ粒子の含有量、硫黄成分の含有量
ポリエステル樹脂組成物を300℃で溶融成形して直径3cm×厚み1cmの円盤状の成形板とし、リガク社製の蛍光X線分析装置 ZSX Primusを用いて、検量線法により定量分析を行った。
【0068】
(4)シリカ粒子の平均粒径、最大粒径
シリカ粒子が含有されたポリエステル樹脂組成物を、フェノール/テトラクロロエタン=50/50質量%の混合溶媒に5質量%となるよう溶解させ、得られた溶液をレーザー回折式粒度分布測定装置である島津製作所製のSALD-7100にて回折/散乱光強度が40~60%の範囲内となるよう同溶媒にて希釈調整し、測定した。そして、4回の測定の平均値を測定値とした。
【0069】
(5)ヘーズ
各実施例及び比較例で得られた成形体を、試験片とし、ヘーズ(濁度)を日本電色工業社製の濁度計MODEL1001DPで測定した(空気:ヘーズ0%)。
【0070】
(6)フィルムの三次元表面粗さ(SRa)、フィルム表面の突起数
各実施例及び比較例で得られたフィルムについて、小坂研究所社製の触針式表面粗さ計(SURFCORDERET-30K)を用い、5回測定を行い、その平均値を求めた。測定条件は、触針先端半径2μm、加重20mg、縦倍率20000、横倍率200、カットオフ0.25mm、送りピッチ20μm、測定長1.3mm、測定面積0.1mm2、測定速度100μm/sec、ヒステリシス12.5nm、カウントモードはシンプルとした。
突起高さは、切断面による切り口の面積率が70%になる切断面を基準として高さを算出した。上記条件で測定した高さ0.5μm以上の突起数を1mm2当たりの数に換算し、フィルム表面の突起数とした。
【0071】
(7)繊維の強度、伸度
得られたマルチフィラメント糸の強度および伸度を、テンシロンRTC-1210(オリエンテック社製)を用いてJIS L 1013に従って測定した。
【0072】
(8)繊維のL値
得られたマルチフィラメント糸を編機(小池機械製作所製、針本数:300本、釜径:3.5インチ)を用いて筒編地に編成し、黒板を背景にした状態で色彩色差計(CR-300;コニカミノルタ製)を用いて測定した。
【0073】
(9)操業性
得られたマルチフィラメント糸を用いて整経機にて25000mあたりの毛羽数を測定した。25000mあたりの毛羽数が1個以下のものを合格(○)とし、2個以上のものを不合格(×)とした。
【0074】
実施例1
エステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコール(モル比1/1.6)のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化物(テレフタル酸:エチレングリコール=100:111(モル比))を得た。
加熱溶融したエステル化物を280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、次いで、アドマファインSO-C2(株式会社アドマテックス製、真球状シリカ粒子)(一次粒子の平均粒径;0.5μm、比表面積;6.0m2/g)をシリカ粒子の濃度が50質量%となるようにエチレングリコールへ投入し、特殊機化工業製ホモジェッターにより攪拌分散処理を行い、粗分散液を得た。得られた粗分散液をSONIC.CORP製ソノレータを用いて所定の時間分散処理を行った。このようにして作製したシリカ粒子とエチレングリコールの分散液を、ポリエステル樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量が1.5質量%となる様にエステル化反応物に添加した。その後、1時間の解重合反応を行った後、重縮合触媒として、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、280℃で10分間エーテル化反応を行った。次に、反応缶の温度を280℃に維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0075】
〔実施例1~10、比較例1~4における成形体の製造〕
得られたポリエステル樹脂組成物を乾燥した後、シリンダー各部およびノズル温度を230~280℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間10秒、冷却時間10秒、金型温度20℃に設定した小型射出成型機(日精樹脂工業社製、PS-20)を用いて、射出成形体(50×50×1mm平板)を作製した。
【0076】
〔実施例1~10、比較例1~4におけるフィルムの製造〕
得られたポリエステル樹脂組成物を、押出機を用いて275℃でシート状に溶融押出し、冷却ドラムに密着させて冷却し、厚さ250μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートに対してバッチ式延伸装置を用いて3×3.3倍の同時二軸延伸を行って、厚さ25μmのフィルムを得た。
【0077】
実施例2~3および5~8、比較例1~2
〔ポリエステル樹脂組成物〕
シリカ粒子の添加量、スルホサリチル酸二水和物の添加量を、表1に記載したように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂組成物を得た。さらに、実施例1と同様の操作を行って成形体、フィルムを作製した。
【0078】
【0079】
実施例4、比較例3~4
シリカ粒子として、実施例4は(株式会社アドマテックス)社製、商品名(アドマファインSO-C6)(一次粒子の平均粒径;2.0μm、比表面積;2.0m2/g、真球状シリカ粒子)を、比較例3は(AGCエスアイテック)社製、商品名(サンスフェア H31)を、比較例4は不定形状シリカを、それぞれ用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物を得た。さらに、実施例1と同様の操作を行って成形体、フィルムを作製した。
【0080】
実施例9
重合触媒として、スルホサリチル酸二水和物に代えて三酸化アンチモン(Sb)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物を得た。さらに、実施例1と同様の操作を行って成形体、フィルムを作製した。
【0081】
実施例10
ポリエステル樹脂の芳香族ジカルボン酸成分の組成がテレフタル酸95モル%、イソフタル酸5モル%となるように、重縮合反応缶に、エステル化物100質量部に次いで、イソフタル酸4.3質量部を添加した以外は実施例1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物を得た。さらに、実施例1と同様の操作を行って成形体、フィルムを作製した。
【0082】
実施例11
エステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコール(モル比1/1.6)のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化物(テレフタル酸:エチレングリコール=100:111(モル比))を得た。
加熱溶融したエステル化物100質量部、テレフタル酸4.4質量部、および1,4-ブチレングリコール2.4質量部を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、次いで、アドマファインSO-C2(株式会社アドマテックス製、真球状シリカ粒子)(一次粒子の平均粒径;0.5μm、比表面積;6.0m2/g)をシリカ粒子の濃度が50質量%となるようにエチレングリコールへ投入し、特殊機化工業製ホモジェッターにより攪拌分散処理を行い、粗分散液を得た。得られた粗分散液をSONIC.CORP製ソノレータを用いて所定の時間分散処理を行った。このようにして作製したシリカ粒子とエチレングリコールの分散液を、ポリエステル樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量が1.5質量%となる様に重縮合反応缶に添加した。その後、1時間の解重合反応を行った後、重縮合触媒として、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を6.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、260℃で10分間エーテル化反応を行った。次に、反応缶の温度を260℃に維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、ポリエステル樹脂組成物を得た。
【0083】
〔実施例11~21における成形体の製造〕
得られたポリエステル樹脂組成物を乾燥した後、シリンダー各部およびノズル温度を180~240℃、スクリュー回転数100rpm、射出時間10秒、冷却時間10秒、金型温度20℃に設定した小型射出成型機(日精樹脂工業社製、PS-20)を用いて、射出成形体(50×50×1mm平板)を作製した。
【0084】
〔実施例11~21におけるフィルムの製造〕
得られたポリエステル樹脂組成物を、押出機を用いて240℃でシート状に溶融押出し、冷却ドラムに密着させて冷却し、厚さ250μmの未延伸シートを得た。得られた未延伸シートに対してバッチ式延伸装置を用いて3×3.3倍の同時二軸延伸を行って、厚さ25μmのフィルムを得た。
【0085】
実施例12
テレフタル酸を27.9質量部、1,4-ブチレングリコールを15.1質量部、解重合時間を2時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0086】
実施例13
テレフタル酸を83.6質量部、1,4-ブチレングリコールを45.4質量部、解重合時間を4時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0087】
実施例14
テレフタル酸を133.8質量部、1,4-ブチレングリコールを72.6質量部に加えて、ε-カプロラクトン9.1質量部を添加し、解重合時間を5時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0088】
実施例15
テレフタル酸を98.4質量部、1,4-ブチレングリコールを53.4質量部に加えて、ε-カプロラクトン24.1質量部を添加し、解重合時間を5時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0089】
実施例16
テレフタル酸を167.2質量部、1,4-ブチレングリコールを90.7質量部に加えて、ε-カプロラクトン31.5質量部を添加し、解重合時間を6時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0090】
実施例17
テレフタル酸を27.9質量部、1,4-ブチレングリコールを15.1質量部に加えて、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)に代えてテトラ-n-ブチルチタネート(TBT)を4.0×10-4モル/酸成分モル添加し、解重合時間を2時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0091】
実施例18
テレフタル酸を83.6質量部、1,4-ブチレングリコールを45.4質量部に加えて、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)に代えてテトラ-n-ブチルチタネート(TBT)を4.0×10-4モル/酸成分モル添加し、解重合時間を4時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0092】
実施例19
テレフタル酸を133.8質量部、1,4-ブチレングリコールを72.6質量部に加えて、ε-カプロラクトン9.1質量部および5-スルホサリチル酸二水和物(SS)に代えてテトラ-n-ブチルチタネート(TBT)を4.0×10-4モル/酸成分モル添加し、解重合時間を5時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0093】
実施例20
テレフタル酸を98.4質量部、1,4-ブチレングリコールを53.4質量部に加えて、ε-カプロラクトン24.1質量部および5-スルホサリチル酸二水和物(SS)に代えてテトラ-n-ブチルチタネート(TBT)を4.0×10-4モル/酸成分モル添加し、解重合時間を5時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0094】
実施例21
テレフタル酸を167.2質量部、1,4-ブチレングリコールを90.7質量部に加えて、ε-カプロラクトン31.5質量部および5-スルホサリチル酸二水和物(SS)に代えてテトラ-n-ブチルチタネート(TBT)を4.0×10-4モル/酸成分モル添加し、解重合時間を5時間に変更する以外は実施例11と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムを得た。
【0095】
〔繊維の製造〕
実施例22
実施例1で得られたポリエステル樹脂組成物をエクストルーダー型溶融紡糸機によって、濾過粒度20μmのフィルターを備えた紡糸ノズル(孔径0.2mm、孔数150ホール)より紡糸温度303℃で紡出し、3200m/分の紡糸速度で巻き取り、部分配向糸を得た。これをローラ間で1.4倍に延伸を行い、60dtex/150fのマルチフィラメント糸(延伸糸)を得た。このとき、第1ローラの温度を90℃とし、第2ローラとの間にプレートヒータ(温度150℃)を設けて熱処理を行い、速度725m/分の条件で延伸し、巻き取った。
【0096】
実施例23
実施例2で得られたポリエステル樹脂組成物を用いた以外は実施例22と同様にして、繊度60dtex/150fのマルチフィラメント糸を得た。
実施例24
実施例3で得られたポリエステル樹脂組成物を用いた以外は実施例22と同様にして、繊度60dtex/150fのマルチフィラメント糸を得た。
実施例25
実施例9で得られたポリエステル樹脂組成物を用いた以外は実施例22と同様にして、繊度60dtex/150fのマルチフィラメント糸を得た。
実施例26
実施例10で得られたポリエステル樹脂組成物を用いた以外は実施例22と同様にして、繊度60dtex/150fのマルチフィラメント糸を得た。
実施例27
実施例13で得られたポリエステル樹脂組成物を用いた以外は実施例22と同様にして、繊度60dtex/150fのマルチフィラメント糸を得た。
【0097】
実施例、比較例にて得られたポリエステル樹脂組成物、成形体、フィルムおよびマルチフィラメント糸の特性値と評価結果を表1、表2、表3に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
表1および表2に示すように、実施例1~21で得られたポリエステル樹脂組成物は、シリカ粒子の含有量、平均粒径、最大粒径が本発明で規定する範囲内であったため、ヘーズが高く艶消し性、隠蔽性に優れ、フィルムにした場合の表面粗さや突起数が特定範囲となり、表面平滑性に優れるものであった。
また、表3に示すように、実施例22~27で得られたマルチフィラメント糸は、強度、伸度、隠蔽性および操業性に優れ、毛羽の少ないものであった。
【0101】
一方、比較例1では、シリカ粒子の含有量が少なかったため、ヘーズが低く、フィルムとしたときの表面粗さが小さくなった。
【0102】
比較例2では、シリカ粒子の含有量が多かったため、ヘーズは十分であったもののフィルムとしたときの表面粗さや突起数が大きくなった。
【0103】
比較例3では、使用したシリカ粒子の粒径が大きかったため、ヘーズは十分であったものの、フィルムとしたときの表面粗さや突起数が大きくなった。
【0104】
比較例4においては、用いたシリカ粒子は、粒径が本発明の範囲であったが、真球状シリカ粒子ではなく不定形のシリカ粒子であったため、ヘーズは十分であったものの、フィルムとしたときの表面粗さや突起数ともに大きくなった。