(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183417
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】抗体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20231220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231220BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20231220BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20231220BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
C12N5/10
C07K16/00
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159322
(22)【出願日】2023-09-25
(62)【分割の表示】P 2021577247の分割
【原出願日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】19183171.8
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ゴエプフェルト ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】クロスターマン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ キャサリーナ
(72)【発明者】
【氏名】セーベル ステファン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗体をコードする(及び抗体を発現する)1つ以上の(外因性)核酸を含む/それでトランスフェクトされたCHO細胞を培養することによってIgG1抗体を産生するための方法を提供する。
【解決手段】抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含む1つ以上の発現カセットでトランスフェクトされたCHO細胞を培養することによって、ヒトIgG1サブクラスの抗体を産生するための方法であって、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸が、ヒト細胞のコドン使用及び/又はCHO細胞のコドン使用で最適化されたコドン使用であり、重鎖可変ドメインをコードする核酸の部分において、少なくとも1つの非対合ドナースプライス部位が除去され、重鎖定常領域をコードする核酸においてこれらが除去されていない、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含む1つ以上の発現カセットでトランスフェクトされたCHO細胞を培養することによって、ヒトIgG1サブクラスの抗体を産生するための方法であって、
前記抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸が、ヒト細胞のコドン使用及び/又はCHO細胞のコドン使用で最適化されたコドン使用であり、
重鎖可変ドメインをコードする前記核酸の部分において、少なくとも1つの非対合ドナースプライス部位が除去されている、方法。
【請求項2】
重鎖定常領域をコードする前記核酸の部分において、非対合ドナースプライス部位が除去されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体軽鎖をコードする核酸において、非対合スプライス部位が除去されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記トランスフェクションが一過性トランスフェクションである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体をコードする核酸がcDNAである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体の軽鎖又は/及び重鎖をコードする核酸が、ゲノム編成されたDNAである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非対合スプライス部位の除去が、
前記非対合ドナースプライス部位核酸配列にアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化を導入することによる、非対合ドナースプライス部位の除去
による、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非対合スプライス部位の除去が、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非対合スプライス部位の除去が、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、以下:
a)前記CHO細胞を培養する工程、及び
b)前記CHO細胞又は前記培養培地から前記抗体を回収する工程
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
抗体の重鎖及び軽鎖をコードする1つ以上の核酸を含むCHO細胞を培養することによって、ヒトIgG1サブクラスの抗体を産生するための方法であって、
重鎖可変ドメインをコードする核酸において、非対合ドナースプライス部位コンセンサス配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化を導入することによって非対合ドナースプライス部位を除去し、
重鎖定常領域をコードする核酸において、配列番号01の配列による非対合ドナースプライス部位が除去されていない、方法。
【請求項12】
前記抗体の重鎖及び軽鎖をコードする前記1つ以上の核酸が、ゲノム編成されたDNAである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体の重鎖及び軽鎖をコードする前記1つ以上の核酸が、ヒト細胞のコドン使用及び/又はCHO細胞のコドン使用で最適化されたコドン使用である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体軽鎖をコードする核酸において、前記非対合ドナースプライス部位コンセンサス配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化を導入することによって、非対合スプライス部位を除去する、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ヒト又はハムスターのコドン使用で最適化された、抗体をコードする核酸配列の部分における、非対合ドナースプライス部位の除去の使用であって、
それにより、前記部分が重鎖可変ドメインをコードする部分であり、
前記核酸がCHO細胞において抗体を産生するために使用される場合に、ミススプライシングを減少させるため、又は/及び抗体発現収率を増加させるための、使用。
【請求項16】
重鎖定常領域をコードする核酸の部分において、非対合スプライス部位が除去されていない、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
軽鎖をコードする核酸の部分において、非対合スプライス部位が除去されている、請求項15又は16に記載の使用。
【請求項18】
前記非対合スプライス部位の除去が、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである、請求項15~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記非対合スプライス部位の除去が、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである、請求項15~18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記非対合スプライス部位が人工非対合スプライス部位である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【請求項21】
前記非対合ドナースプライス部位が人工ドナースプライス部位であり、コドン最適化中に生成されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、コード核酸が、可変ドメインをコードする部分においてのみドナースプライス部位に関して最適化されている、抗体の産生のための方法が報告される。
【背景技術】
【0002】
Cannarozzi,G.,et al.は、翻訳動態におけるコドン順序の役割を報告している(Cell 141(2010)355-367(非特許文献1))。コドンバイアスの原因及び結果は、Plotkin,J.B.and Kudla,G.(Nat.Rev.Gen.12(2011)32-42(非特許文献2))によって報告されている。Weygand-Durasevic,I.及びIbba,M.は、コドン使用についての新たな役割を報告している(Science 329(2010)1473-1474(非特許文献3))。タンパク質コード配列内の重複コードは、Itzkovitz,S.,et al.(Gen.Res.20(2010)1582-1589(非特許文献4))によって報告されている。
【0003】
国際公開第97/11086号(特許文献1)では、タンパク質の高レベル発現が報告されている。植物ポリペプチド産生は、国際公開第03/70957号(特許文献2)に報告されている。国際公開第03/85114号(特許文献3)には、宿主細胞における最適なタンパク質発現のための合成核酸配列を設計する方法が記載されている。コドン対の最適化は、米国特許第5,082,767号(特許文献4)に報告されている。国際公開第2008/000632号(特許文献5)パンフレットには、改善されたポリペプチド発現を達成する方法が報告されている。コドン最適化法は、国際公開第2007/142954号(特許文献6)及び米国特許第8,128,938号(特許文献7)に報告されている。
【0004】
Watkins,N.E.,et al.は、DNA二重鎖におけるデオキシイノシン対の最近傍熱力学を報告している(Nucl.Acids Res.33(2005)6258-6267(非特許文献5))。
【0005】
国際公開第2013/156443号(特許文献8)では、修飾核酸を使用してポリペプチドを発現させる方法が報告されている。
【0006】
Zhang,M.Q.は、ヒトエクソン及びそれらの隣接領域の統計的特徴を報告した(Hum.Mol.Genet.7(1998)919-932(非特許文献6))。
【0007】
mRNAのスプライシングは、それぞれイントロンの5’末端及び3’末端に位置するアクセプタースプライス部位と組み合わせたドナースプライス部位の発生によって調節される。Watson et al.(Watson et al.(Eds),Recombinant DNA:Short course,Scientific American Books,distributed by W.H.Freeman and Company,New York,New York,USA(1983)(非特許文献7))によれば、5’ドナースプライス部位ag|gtragt(エクソン|イントロン)及び3’アクセプタースプライス部位(y)nNcag|g(イントロン|エクソン)のコンセンサス配列である(r=プリン塩基;y=ピリミジン塩基;n=整数;N=任意の天然塩基)。
【0008】
1980年に、免疫グロブリンの分泌型形態及び膜結合型形態の起源を扱う最初の論文が発表された。分泌(sIg)及び膜結合(mIg)アイソフォームの形成は、重鎖プレ-mRNAの選択的スプライシングから生じる。mIgアイソフォームでは、分泌型(すなわち、それぞれCH3又はCH4ドメイン)のC-末端ドメインをコードするエクソン中のドナースプライス部位、及びその下流の距離に位置するアクセプタースプライス部位が、定常領域を膜貫通ドメインをコードする下流エクソンと連結するために使用される。
【0009】
特定の宿主細胞で発現された場合に不適切又は意図しない転写特性が低下した合成核酸分子を調製する方法は、国際公開第2002/016944号(特許文献9)に報告されている。国際公開第2006/042158号(特許文献10)は、組換えタンパク質発現を増強し、及び/又は生成物によって読み取られるミススプライシングされた及び/もしくはイントロンを低減もしくは排除するように改変された核酸分子が報告されている。Magistrelli,G.,et al.は、コドン脱最適化によるネイティブ二重特異性抗体のアセンブリ及び産生の最適化を報告した(MABS 9(2016)231-239(非特許文献8))。
【0010】
国際公開第2015/128509号(特許文献11)は、ポリペプチドを発現する宿主細胞を選択するための発現コンストラクト及び方法を報告した。
【0011】
国際公開第2009/003623号(特許文献12)は、免疫グロブリン産生の改善をもたらす重鎖変異体を報告した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第97/11086号
【特許文献2】国際公開第03/70957号
【特許文献3】国際公開第03/85114号
【特許文献4】米国特許第5,082,767号
【特許文献5】国際公開第2008/000632号
【特許文献6】国際公開第2007/142954号
【特許文献7】米国特許第8,128,938号
【特許文献8】国際公開第2013/156443号
【特許文献9】国際公開第2002/016944号
【特許文献10】国際公開第2006/042158号
【特許文献11】国際公開第2015/128509号
【特許文献12】国際公開第2009/003623号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Cell 141(2010)355-367
【非特許文献2】Nat.Rev.Gen.12(2011)32-42
【非特許文献3】Science 329(2010)1473-1474
【非特許文献4】Gen.Res.20(2010)1582-1589
【非特許文献5】Nucl.Acids Res.33(2005)6258-6267
【非特許文献6】Hum.Mol.Genet.7(1998)919-932
【非特許文献7】Watson et al.(Eds),Recombinant DNA:Short course,Scientific American Books,distributed by W.H.Freeman and Company,New York,New York,USA(1983)
【非特許文献8】MABS 9(2016)231-239
【発明の概要】
【0014】
治療用又は診断用抗体の産生のために、高い発現収率を目的とする。良好な発現率を達成するための1つの一般的な選択肢は、最初に、外因性核酸を発現することを意図した細胞のコドン使用に調節することによって、コード核酸のコドン使用を最適化することである。そのようなコドン適合又は最適化は、種々の確立されたプロトコルに基づいて行うことができる。
【0015】
しかしながら、そのようなコドン適合及び最適化プロセスの間に、例えば、非対合スプライス部位、特に非対合ドナースプライス部位を意図せずに新たに生成することができる。すなわち、例えば、コドン最適化中に、ドナースプライス部位コンセンサス配列に続くコドン最適化された核酸内に配列モチーフを不注意に生成することによって、コドン使用最適化核酸内に新たなドナースプライス部位配列が生成される。そのような事象は、コドン使用最適化核酸の編成とは無関係に起こり得て、すなわち、cDNA並びにゲノム編成された核酸の両方について可能である。実際、これはコドン使用最適化プロセスの意図しない副次的結果である。そのような新たなドナースプライス部位は、追加の人工ドナースプライス部位であり、関連する標的アクセプタースプライス部位を有さない。したがって、そのような非対合ドナースプライス部位は、転写されたmRNAのどこかに存在するランダムな、すなわち定義されていないアクセプタースプライス部位を伴うスプライシング事象を生じさせることができる。これにより、副生成物の形成は発現収率を低下させる。
【0016】
本発明は、少なくとも部分的には、核酸をコードするコドン使用が最適化された抗体重鎖における非対合ドナースプライス部位の除去が、重鎖の可変ドメインをコードする核酸の部分でのみ行われる必要があり、定常領域をコードする部分では行われない、すなわち定常領域の場合には、例えば生殖細胞系又は野生型ヒト核酸配列を使用することができるという予想外の発見に基づく。これにより、正しい長さを有する抗体重鎖の発現収率を増加させることができるか、又は全く可能になる。
【0017】
本発明は、少なくとも部分的には、抗体重鎖の可変ドメインをコードするコドン最適化核酸においてのみ、非対合ドナースプライス部位コンセンサス配列NGGTA(G)AG(配列番号01)におけるアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化(変異)の導入が、発現収率を改善するのに十分であるという知見に基づく。
【0018】
本発明の一態様は、抗体重鎖及び抗体軽鎖をコードする(及び抗体を発現する)1つ以上の(外因性)核酸を含む/それでトランスフェクトした哺乳動物細胞を培養することによって抗体を産生するための方法であり、
1つ以上の(外因性)核酸が、ヒト細胞のコドン使用及び/又は哺乳動物細胞のコドン使用に最適化されたコドン使用であり、
重鎖可変ドメインをコードする核酸において、少なくとも1つの(人工)非対合ドナースプライス部位が除去されており、任意に、(ヒト野生型又はヒトもしくはハムスターのコドン使用が最適化された)重鎖定常領域をコードする核酸配列において、(人工)非対合ドナースプライス部位が除去されていない。
【0019】
一実施形態では、抗体はヒトIgG1サブクラスの抗体である。一実施形態では、抗体はヒトIgG1サブクラスのヒト化抗体である。一実施形態では、抗体の定常領域は、ヘテロ二量体化を誘導するか、又はFc受容体結合を改変するのに適した変異を含む。
【0020】
一実施形態では、哺乳動物細胞はCHO細胞である。
【0021】
一実施形態では、トランスフェクションは一過性トランスフェクションである。
【0022】
一実施形態では、抗体をコードする1つ以上の(外因性)核酸は全てcDNAである。
【0023】
一実施形態では、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をコードする1つ以上の(外因性)核酸は、ゲノム編成されたDNAであり、すなわちイントロン-エクソン編成を有する。
【0024】
一実施形態では、非対合ドナースプライス部位の除去は、アミノ酸配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にアミノ酸サイレント変化(突然変異)を導入することによるものである。一実施形態では、アミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化は、配列番号01のコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)に導入される。
【0025】
一実施形態では、コドン使用の最適化は、ヒトコドン使用に基づいて、又はチャイニーズハムスターのコドン使用に基づいて行われる。
【0026】
一実施形態では、抗体軽鎖をコードする核酸はコドン使用が最適化されている、すなわち可変ドメイン及び定常領域はコドン使用が最適化されている。
【0027】
一実施形態では、完全軽鎖をコードする核酸において、非対合ドナースプライス部位が除去されている。
【0028】
一実施形態では、トランスフェクションは安定なトランスフェクションである。
【0029】
一実施形態では、方法は:
a)哺乳動物細胞を培養する工程と、
b)細胞又は前記培養培地から前記抗体を回収する工程と、を含む。
【0030】
本発明の一態様は、CHO細胞において抗体を産生するために核酸が使用される場合に、ミススプライシングを減少させるための、又は/及び抗体発現収率を増加させるための、抗体をコードするヒト又はハムスターのコドン使用最適化核酸配列の部分のみにおける、非対合ドナースプライス部位の除去の使用であり、その部分は、重鎖可変ドメインをコードする部分である。
【0031】
一実施形態では、非対合ドナースプライス部位は、重鎖定常領域をコードする核酸の部分において除去されていない。
【0032】
一実施形態では、さらに、軽鎖をコードする核酸の部分において、非対合ドナースプライス部位が除去されている。
【0033】
一実施形態では、非対合スプライス部位の除去は、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである。
【0034】
一実施形態では、非対合スプライス部位の除去は、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである。
【0035】
全ての態様及び実施形態の一実施形態において、非対合(ドナー)スプライス部位は、人工の非対合(ドナー)スプライス部位である。
【0036】
全ての態様及び実施形態の一実施形態において、非対合(ドナー)スプライス部位は、人工の非対合(ドナー)スプライス部位であり、コドン最適化の間に生成されている。
[本発明1001]
抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含む1つ以上の発現カセットでトランスフェクトされたCHO細胞を培養することによって、ヒトIgG1サブクラスの抗体を産生するための方法であって、
前記抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸が、ヒト細胞のコドン使用及び/又はCHO細胞のコドン使用で最適化されたコドン使用であり、
重鎖可変ドメインをコードする前記核酸の部分において、少なくとも1つの非対合ドナースプライス部位が除去されている、方法。
[本発明1002]
重鎖定常領域をコードする前記核酸の部分において、非対合ドナースプライス部位が除去されていない、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記抗体軽鎖をコードする核酸において、非対合スプライス部位が除去されている、本発明1001又は1002の方法。
[本発明1004]
前記トランスフェクションが一過性トランスフェクションである、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
前記抗体をコードする核酸がcDNAである、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記抗体の軽鎖又は/及び重鎖をコードする核酸が、ゲノム編成されたDNAである、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記非対合スプライス部位の除去が、
前記非対合ドナースプライス部位核酸配列にアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化を導入することによる、非対合ドナースプライス部位の除去
による、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記非対合スプライス部位の除去が、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
前記非対合スプライス部位の除去が、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記方法が、以下:
a)前記CHO細胞を培養する工程、及び
b)前記CHO細胞又は前記培養培地から前記抗体を回収する工程
を含む、本発明1001~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
抗体の重鎖及び軽鎖をコードする1つ以上の核酸を含むCHO細胞を培養することによって、ヒトIgG1サブクラスの抗体を産生するための方法であって、
重鎖可変ドメインをコードする核酸において、非対合ドナースプライス部位コンセンサス配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化を導入することによって非対合ドナースプライス部位を除去し、
重鎖定常領域をコードする核酸において、配列番号01の配列による非対合ドナースプライス部位が除去されていない、方法。
[本発明1012]
前記抗体の重鎖及び軽鎖をコードする前記1つ以上の核酸が、ゲノム編成されたDNAである、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記抗体の重鎖及び軽鎖をコードする前記1つ以上の核酸が、ヒト細胞のコドン使用及び/又はCHO細胞のコドン使用で最適化されたコドン使用である、本発明1011又は1012の方法。
[本発明1014]
前記抗体軽鎖をコードする核酸において、前記非対合ドナースプライス部位コンセンサス配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化を導入することによって、非対合スプライス部位を除去する、本発明1011~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
ヒト又はハムスターのコドン使用で最適化された、抗体をコードする核酸配列の部分における、非対合ドナースプライス部位の除去の使用であって、
それにより、前記部分が重鎖可変ドメインをコードする部分であり、
前記核酸がCHO細胞において抗体を産生するために使用される場合に、ミススプライシングを減少させるため、又は/及び抗体発現収率を増加させるための、使用。
[本発明1016]
重鎖定常領域をコードする核酸の部分において、非対合スプライス部位が除去されていない、本発明1015の使用。
[本発明1017]
軽鎖をコードする核酸の部分において、非対合スプライス部位が除去されている、本発明1015又は1016の使用。
[本発明1018]
前記非対合スプライス部位の除去が、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである、本発明1015~1017のいずれかの使用。
[本発明1019]
前記非対合スプライス部位の除去が、ヌクレオチド配列NGGTA(G)AG(配列番号01)にコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)においてアミノ酸サイレント変異を導入することによるものである、本発明1015~1018のいずれかの使用。
[本発明1020]
前記非対合スプライス部位が人工非対合スプライス部位である、本発明1001~1019のいずれかの方法又は使用。
[本発明1021]
前記非対合ドナースプライス部位が人工ドナースプライス部位であり、コドン最適化中に生成されている、本発明1001~1019のいずれかの方法又は使用。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態の詳細な説明
治療用又は診断用抗体の産生のために、高い発現収率を目的とする。良好な発現率を達成するための1つの選択肢は、最初にコード核酸のコドン使用を最適化し、それを外因性核酸を発現することを意図した細胞のコドン使用に調整することである。このコドン適合又は最適化は、種々の確立されたプロトコルに基づいて行うことができる。
【0038】
しかしながら、そのようなコドン適合及び最適化プロセスの間に、例えば、非対合スプライス部位をde novoで生成することができる。すなわち、コドン最適化中に、コドン使用最適化核酸において新たなドナースプライス部位配列が生成される。これは、コドン使用最適化核酸の編成とは無関係であり、すなわち、cDNA又はゲノム編成された核酸の両方について可能である。実際、これはコドン使用最適化プロセスの意図しない副次的結果である。そのような新たなドナースプライス部位は、追加の人工ドナースプライス部位であり、関連する標的アクセプタースプライス部位を有さない。したがって、そのような非対合ドナースプライス部位は、転写されたmRNAのどこかに存在するランダムな、すなわち定義されていないアクセプタースプライス部位を伴うスプライシング事象を生じさせることができる。これにより、発現収率が低下する。
【0039】
本発明は、少なくとも部分的には、コドン使用最適化抗体の重鎖をコードする核酸における非対合ドナースプライス部位の除去が、重鎖の可変領域をコードする核酸の部分でのみ行われる必要があり、定常領域をコードする部分では行われない、すなわち定常領域の場合には、例えば生殖細胞系又は野生型ヒト核酸配列を使用することができるという予想外の知見に基づく。
【0040】
本発明は、少なくとも部分的には、抗体重鎖の可変ドメインをコードするコドン最適化核酸においてのみ、非対合ドナースプライス部位コンセンサス配列NGGTA(G)AG(配列番号01)におけるアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化(変異)の導入が、発現収率を改善するのに十分であるという知見に基づく。
【0041】
定義
本発明を実施するのに有用な方法及び技術は当業者に公知であり、例えば、Ausubel,F.M.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Volumes I to III(1997)、及びSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)に記載されている。当業者に知られているように、組換えDNA技術の使用、核酸及び/又はポリペプチドの多数の誘導体の産生が可能である。このような誘導体は、例えば、置換、変更、交換、欠失又は挿入によって、1つの個別の又はいくつかの位置で修飾することができる。該修飾又は誘導体化は、例えば、部位特異的突然変異誘発によって行うことができる。このような修飾は、当業者によって容易に行うことができる(例えば、Sambrook,J.,et al.,Molecular Cloning:A laboratory manual(1999)Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,USAを参照されたい。組換え技術の使用は、当業者が様々な宿主細胞を異種核酸(複数可)で形質転換することを可能にする。異なる細胞の転写及び翻訳、すなわち発現、機構は同じエレメントを使用するが、異なる種に属する細胞は、とりわけ異なるいわゆるコドン使用を有し得る。それにより、(アミノ酸配列に関して)同一のポリペプチドが、異なる核酸によってコードされ得る。また、遺伝暗号の縮重のために、異なる核酸が同じポリペプチドをコードする場合がある。
【0042】
「約」という用語は、その後の値が正確な値ではなく、値の+/-10%、又は値の+/-5%、又は値の+/-2%、又は値の+/-1%である範囲の中心点であることを示す。値がパーセンテージで与えられる相対値である場合、「約」という用語はまた、その後の値が正確な値ではなく、値の+/-10%、又は値の+/-5%、又は値の+/-2%、又は値の+/-1%である範囲の中心点であり、それによって範囲の上限が100%の値を超えることができないことを示す。
【0043】
本出願内で使用される「アミノ酸」という用語は、直接的に又は前駆物質の形態で核酸によってコードされ得るカルボキシαアミノ酸の群を示す。個々のアミノ酸は、3つのヌクレオチドからなる核酸、いわゆるコドン又は塩基トリプレットによってコードされる。各アミノ酸は、少なくとも1つのコドンによってコードされる。異なるコドンによる同じアミノ酸のコード化は、「遺伝暗号の変性」として知られている。本出願内で使用される「アミノ酸」という用語は、天然に存在するカルボキシα-アミノ酸を示し、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む、天然に存在するカルボキシα-アミノ酸の群を示す。
【0044】
本明細書における「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、並びに定常ドメイン又は領域の少なくとも一部を含む多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)又はその断片を含むがこれらに限定されない様々な免疫グロブリン構造を包含する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」という用語とは、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質のことを指す。この定義には、変異型、すなわち1つ以上のアミノ酸の置換、欠失及び挿入を有する型、N末端切断型、融合型、キメラ型、並びにヒト化型等の変異体が含まれる。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、例えば、ヒトを含む霊長類及びげっ歯類からの種々の定常領域遺伝子並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。モノクローナル免疫グロブリンが好ましい。免疫グロブリンの重及び軽ポリペプチド鎖の各々は、定常領域(一般にカルボキシル末端部分)を含み得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル免疫グロブリン」という用語は、実質的に均一な免疫グロブリンの集団から得られる免疫グロブリンを指し、すなわち、集団を含む個々の免疫グロブリンは、少量存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル免疫グロブリンは高度に特異的であり、単一の抗原部位に向けられる。さらに、異なる抗原部位(決定基又はエピトープ)に対する異なる免疫グロブリンを含むポリクローナル免疫グロブリン調製物とは対照的に、各モノクローナル免疫グロブリンは、抗原上の単一の抗原部位に対するものである。特異性に加えて、モノクローナル免疫グロブリンは、他の免疫グロブリンによって汚染されずに合成され得るという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、免疫グロブリンの実質的に均一な集団から得られるという免疫グロブリンの特徴を示し、任意の特定の方法による免疫グロブリンの産生を必要とすると解釈されるべきではない。
【0047】
「コドン」という用語は、規定のアミノ酸をコードしている3個のヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドを表す。遺伝暗号の縮重のために、ほとんどのアミノ酸は2つ以上のコドンによってコードされる。同じアミノ酸をコードするこれらの異なるコドンは、個々の宿主細胞において異なる相対使用頻度を有する。したがって、特定のアミノ酸は、正確に1つのコドン又は異なるコドン群のいずれかによってコードされる。同様に、ポリペプチドのアミノ酸配列は、異なる核酸によってコードされ得る。したがって、ポリペプチド中の特定のアミノ酸(残基)は、異なるコドンの群によってコードされ得、それにより、これらのコドンの各々は、所与の宿主細胞内での使用頻度を有する。
【0048】
多数の遺伝子配列が多数の頻繁に使用される宿主細胞に利用可能であることから、コドン使用の相対頻度を計算することができる。計算されたコドン使用表は、例えば「コドン使用データベース」(www.kazusa.or.jp/codon/),Nakamura,Y.,et al.,Nucl.Acids Res.28(2000)292から利用可能である。
【0049】
ホモサピエンス及びハムスターのコドン使用表は、’’EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite’’(Rice,P.,et al.,Trends Gen.16(2000)276-277,Release 6.0.1,15.07.2009)から再現されており、以下の表に示す。大腸菌、酵母、ヒト細胞及びCHO細胞の20個の天然アミノ酸の異なるコドン使用頻度を、64個全てのコドンではなく各アミノ酸について計算した。
【0050】
(表)ホモサピエンスの全体的なコドン使用頻度
(コードアミノ酸|コドン|使用頻度[%])
【0051】
(表)ハムスターの全体的なコドン使用頻度
(コードアミノ酸|コドン|使用頻度[%])
【0052】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、細胞内で起こる転写及び/又は翻訳プロセスを指す。細胞内の目的の核酸配列の転写レベルは、細胞内に存在する対応するmRNAの量に基づいて決定することができる。例えば、目的の配列から転写されたmRNAは、RT-PCR(qRT-PCR)又はノーザンハイブリダイゼーション(前出のSambrook,J.,et al.,1989を参照されたい。)によって定量することができる。目的の核酸によってコードされるポリペプチドは、様々な方法によって、例えば、ELISAによって、ポリペプチドの生物学的活性についてアッセイすることによって、又はそのような活性とは独立したアッセイ、例えばポリペプチドを認識して結合する免疫グロブリンを使用する、ウェスタンブロッティングもしくはラジオイムノアッセイを使用することによって、(前出のSambrook,J.,et al.,1989を参照されたい)定量することができる。
【0053】
「発現カセット」は、細胞内に少なくとも含まれる核酸を発現させるために必要な調節エレメント、例えばプロモーター及びポリアデニル化部位を含むコンストラクトを指す。
【0054】
遺伝子の発現は、一過性発現又は永続的発現のいずれかとして行われる。目的のポリペプチド(複数可)は、一般に分泌ポリペプチドであり、したがって、細胞膜を介した細胞外培地へのポリペプチドの輸送/分泌に必要なN末端伸長(シグナル配列としても知られる)を含有する。一般に、シグナル配列は、分泌ポリペプチドをコードする任意の遺伝子に由来し得る。異種シグナル配列が使用される場合、それは好ましくは、宿主細胞によって認識され、処理される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。酵母における分泌のため、例えば、発現される異種遺伝子の天然のシグナル配列は、酵母インベルターゼシグナル配列、アルファ-因子リーダー(サッカロマイセス(Saccharomyces)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、及びハンゼヌラ(Hansenula)α-因子リーダー(米国特許第5,010,182号に記載されている2つ目のもの)を含む)、酸性ホスファターゼシグナル配列、又はC.アルビカンスグルコアミラーゼシグナル配列(欧州特許第0 362 179号)等の分泌遺伝子に由来する相同酵母シグナル配列によって置換され得る。哺乳動物細胞発現において、目的のタンパク質の天然のシグナル配列は満足のいくものであるが、他の哺乳動物シグナル配列、例えば同種又は関連種の分泌ポリペプチドからのシグナル配列、例えばヒト又はマウス起源の免疫グロブリン、並びにウイルス分泌シグナル配列、例えば単純ヘルペス糖タンパク質Dシグナル配列が好適であり得る。そのようなプレセグメントをコードするDNA断片は、目的のポリペプチドをコードするDNA断片にインフレームで連結される、すなわち作動可能に連結される。
【0055】
「細胞」又は「宿主細胞」という用語は、例えば異種ポリペプチドをコードする核酸がトランスフェクトされ得る又はトランスフェクトされる細胞を指す。「細胞」という用語は、核酸の発現及びプラスミドの増殖を含むコードされたポリペプチドの産生に使用される原核細胞と、核酸の発現及びコードされたポリペプチドの産生に使用される真核細胞の両方を含む。一実施形態では、真核細胞は哺乳動物細胞である。一実施形態では、哺乳動物細胞はCHO細胞であり、任意にCHO K1細胞(ATCC CCL-61又はDSM ACC 110)、又はCHO DG44細胞(CHO-DHFR[-]としても知られている、DSM ACC 126)、又はCHO XL99細胞、CHO-T細胞(例えば、Morgan,D.,et al.,Biochemistry 26(1987)2959-2963を参照)、又はCHO-S細胞、又はSuper-CHO細胞(Pak,S.C.O.,et al.Cytotechnology 22(1996)139-146)である。これらの細胞が無血清培地中又は懸濁液中での増殖に適合されていない場合、本方法での使用前に適合を行うべきである。本明細書で使用される場合、発現「細胞」には、対象細胞及びその子孫が含まれる。そのため、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語は、移入又は継代の回数にかかわらず初代対象細胞及びそれ由来の培養物を含む。全ての子孫は、意図的な、又は想定外の変異に起因して、DNA含量において厳密に同一でない場合があることも理解される。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を有する変異型の子孫が含まれる。
【0056】
「コドン最適化核酸」という用語は、核酸をコードする親ポリペプチド中の1つ、少なくとも1つ、又は2つ以上のコドンを、同じアミノ酸残基をコードするコドン、例えば細胞での使用の相対的頻度が異なるコドンで置き換えることによって、細胞、例えば哺乳動物細胞での発現を改善するように適合されているポリペプチドをコードする核酸を表す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「非対合ドナースプライス部位」という用語は、一方では、例えば核酸配列のコドン最適化によって、核酸配列内に人工的に生成されたドナースプライス部位を示し、他方では、核酸配列へのその人工的導入により、核酸配列の下流に連結されたアクセプタースプライス部位がないドナースプライス部位を示す。ドナースプライス部位コンセンサス配列と一致しているが、(生物学的)スプライシング原理、すなわちプロセッシング中の核酸の望ましくない部分の切除に従わない。
【0058】
「遺伝子」は、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の発現に影響を及ぼし得る、例えば染色体上又はプラスミド上のセグメントである核酸を意味する。コード領域、すなわち構造遺伝子の他に、遺伝子は、他の機能的要素、例えばシグナル配列、プロモーター(複数可)、イントロン及び/又はターミネーターを含む。
【0059】
「コドンの群」という用語及びその意味上の等価物は、1つ(すなわち、同じ)のアミノ酸残基をコードする規定の数の異なるコドンを示す。1つの群の個々のコドンは、細胞のゲノムにおけるそれらの全体的な使用頻度が異なる。コドンの群内の各コドンは、群内のコドンの数に依存する、群内での固有の使用頻度を有する。群内のこの固有の使用頻度は、細胞のゲノムにおける全体的な使用頻度とは異なり得るが、全体的な使用頻度に依存する(関連する)。コドンの群は、1つのコドンのみを含み得るが、6つまでのコドンも含み得る。
【0060】
「細胞のゲノムにおける全体的な使用頻度」という用語は、細胞のゲノム全体における特定のコドンの出現頻度を表す。
【0061】
コドンの群におけるコドンの「固有の使用頻度」という用語は、本明細書に報告される方法で得られたポリペプチドをコードする核酸において、1つの群の全てのコドンに関してコドンの群の単一の(すなわち、特定の)コドンを見出すことができる頻度を表す。固有の使用頻度の値は、細胞のゲノムにおける特定のコドンの全体的な使用頻度及びその群におけるコドンの数に依存する。したがって、コドンの群は、1つの特定のアミノ酸残基をコードする全ての可能なコドンを必ずしも含むわけではないので、コドンの群におけるコドンの固有の使用頻度は、細胞のゲノムにおけるその全体的な使用頻度と少なくとも同じであり、最大100%であり、すなわち、使用頻度が低い特定のコドンがその群から除外される場合、少なくとも同じであるが、細胞のゲノムにおける全体的な使用頻度よりも高くなり得る。コドンの群の全メンバーの特定のコドン使用頻度の和は常に約100%である。
【0062】
「アミノ酸コドンモチーフ」という用語は、全てが同じコドンの群のメンバーであり、したがって同じアミノ酸残基をコードするコドンの配列を示す。アミノ酸コドンモチーフ中の異なるコドンの数は、コドンの群中の異なるコドンの数と同じであるが、各コドンは、アミノ酸コドンモチーフ中に2回以上存在し得る。さらに、各コドンは、アミノ酸のコドンモチーフ内にその固有の使用頻度で存在する。したがって、アミノ酸コドンモチーフは、同じアミノ酸残基をコードする異なるコドンの配列を表し、異なるコドンの各々はその固有の使用頻度で存在し、配列は最も高い固有の使用頻度を有するコドンで始まり、コドンは定義された配列に配置される。例えば、アミノ酸残基アラニンをコードするコドンの群は、固有の使用頻度がそれぞれ32%、28%、24%及び16%である4つのコドンGCG、GCT、GCA及びGCCを含む(4:3:3:2の比に対応する)。アミノ酸残基アラニンのアミノ酸コドンモチーフは、4つのコドンGCG、GCT、GCA、及びGCCを4:3:3:2の比で含むことで定義され、第1のコドンはGCGである。アラニンの例示的なアミノ酸コドンモチーフの1つは、gcg gct gca gcc gcg gct gca gcc gcg gct gca gcg(配列番号06)である。このモチーフは、12個の連続したコドンからなる(4+3+3+2=12)。ポリペプチドのアミノ酸配列にアミノ酸残基アラニンが最初に出現すると、アミノ酸コドンモチーフの第1のコドンが対応するコード核酸で使用される。アラニンの2回目の出現時には、アミノ酸コドンモチーフの第2のコドンが使用され、以下同様である。ポリペプチドのアミノ酸配列にアラニンが13番目に出現すると、アミノ酸コドンモチーフの13番目の(すなわち最後の)コドンが対応するコード核酸で使用される。ポリペプチドのアミノ酸配列にアミノ酸アラニンが13番目に出現すると、アミノ酸コドンモチーフ第1のコドンが使用され、以下同様である。
【0063】
本出願において互換的に使用される「核酸」又は「核酸配列」は、個々のヌクレオチド(塩基とも呼ばれる)a、c、g、及びt(又はRNA中のu)からなるポリマー分子、例えばDNA、RNA、又はそれらの修飾及び混合物を指す。このポリヌクレオチド分子は、天然に存在するポリヌクレオチド分子もしくは合成ポリヌクレオチド分子、又は1つ以上の天然に存在するポリヌクレオチド分子と1つ以上の合成ポリヌクレオチド分子との組合せであり得る。1つ以上のヌクレオチドが変化(例えば突然変異誘発によって)、欠失又は付加されている天然に存在するポリヌクレオチド分子も、この定義に包含される。核酸は、単離され得るか、又は別の核酸、例えば発現カセット、プラスミドもしくは宿主細胞の染色体に統合され得る。核酸は、個々のヌクレオチドからなるその核酸配列を特徴とする。
【0064】
当業者にとって、例えばポリペプチドのアミノ酸配列を、このアミノ酸配列をコードする対応する核酸配列に変換する手順及び方法は周知である。それゆえ、核酸は、個々のヌクレオチドからなるその核酸配列によって、同様に、該核酸配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列によって特徴付けられる。
【0065】
「構造遺伝子」は、シグナル配列のない遺伝子の領域、すなわちコード領域を示す。
【0066】
「トランスフェクションベクター」は、宿主細胞中のコード核酸/構造遺伝子(複数可)を含むトランスフェクションベクター中の発現に必要な全ての要素を提供する核酸(核酸分子とも呼ばれる)である。トランスフェクションベクターは、原核生物複製起点と、原核生物選択物質に対する耐性を付与する核酸とを順に含む、例えば大腸菌用の原核生物プラスミド増殖ユニットを含み、真核生物選択物質に対する耐性を付与する1つ以上の核酸(複数可)と、目的のポリペプチドをコードする1つ以上の核酸とをさらに含む。好ましくは、選択物質に対する耐性を付与する核酸及び目的のポリペプチドをコードする核酸がそれぞれ発現カセット内に配置され、各発現カセットは、プロモーター、コード核酸、及びポリアデニル化シグナルを含む転写ターミネーターを含む。遺伝子発現は通常、プロモーターの制御下に置かれ、そのような構造遺伝子はプロモーターに「作動可能に連結された」と言われる。同様に、調節エレメントがコアプロモータの活性を調節する場合、調節エレメントとコアプロモータは作動可能に連結される。
【0067】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、連結している別の核酸を増殖可能な核酸分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター並びに、ベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターも含む。ある種のベクターは、動作可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターを、本明細書では「発現ベクター」と呼ぶ。
【0068】
「完全長抗体」という用語は、天然抗体の構造と実質的に同様の構造を有する抗体を表す。完全長抗体は、それぞれがN末端からC末端に向かって軽鎖可変領域及び軽鎖定常ドメインを含む2つの完全長抗体軽鎖、並びにそれぞれがN末端からC末端に向かって重鎖可変領域、第1重鎖定常ドメイン、ヒンジ領域、第2重鎖定常ドメイン及び第3重鎖定常ドメインを含む2つの完全長抗体重鎖を含む。天然抗体とは対照的に、完全長抗体は、さらなる免疫グロブリンドメイン、例えば1つ以上のさらなるscFv、又は重鎖もしくは軽鎖Fab断片、又は完全長抗体の異なる鎖の末端の1つ以上にコンジュゲートされたscFabを含み得るが、各末端には単一の断片のみである。これらのコンジュゲートもまた、全長抗体という用語により包含される。
【0069】
抗体の「クラス」は、定常ドメイン又は定常領域、好ましくは重鎖が持つFc領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラスがあり、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分ける場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0070】
「重鎖定常領域」という用語は、定常ドメイン、すなわち、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む免疫グロブリン重鎖の領域を表す。一実施形態では、ヒトIgG定常領域は、重鎖のAla118からカルボキシル末端に及ぶ(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。しかしながら、定常領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していてもよく、又は存在していなくてもよい(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。「重鎖定常領域」という用語は、鎖間ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域システイン残基を介して互いに共有結合することができる2つの重鎖定常領域を含む二量体を示す。
【0071】
「軽鎖定常領域」という用語は、定常ドメイン、すなわちCLドメインを含む免疫グロブリン軽鎖の領域を表す。
【0072】
「定常領域」という用語は、「重鎖定常領域」と「軽鎖定常領域」の両方を包含する。
【0073】
「重鎖Fc領域」という用語は、ヒンジ領域(中間及び下部ヒンジ領域)、CH2ドメイン及びCH3ドメインの少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を示す。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Asp221又はCys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端に及ぶ(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。このため、Fc領域は、一定の領域よりも小さいが、同じC末端部にある。しかしながら、重鎖Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても存在しなくてもよい(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。「Fc領域」という用語は、鎖間ジスルフィド結合を形成するヒンジ領域システイン残基を介して互いに共有結合することができる2つの重鎖Fc領域を含む二量体を示す。
【0074】
抗体の定常領域、より正確にはFc領域(及び同様に定常領域)は、補体活性化、C1q結合、C3活性化及びFc受容体結合に直接関与する。補体系に対する抗体の影響は、特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc領域における規定の結合部位によって引き起こされる。このような結合部位は、先行技術で公知であり、例えば、Lukas,T.J.,et al.,J.Immunol.127(1981)2555-2560;Brunhouse,R.,and Cebra,J.J.,Mol.Immunol.16(1979)907-917;Burton,D.R.,et al.,Nature 288(1980)338-344;Thommesen,J.E.,et al.,Mol.Immunol.37(2000)995-1004;Idusogie,E.E.,et al.,J.Immunol.164(2000)4178-4184;Hezareh,M.,et al.,J.Virol.75(2001)12161-12168;Morgan,A.,et al.,Immunology 86(1995)319-324、及び欧州特許第0307434号において記載されている。このような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331及びP329(KabatのEUインデックスに従った付番)である。サブクラスIgG1、IgG2、及びIgG3の抗体は通常、補体活性化、C1q結合、及びC3活性化を示すのに対し、IgG4は、補体系を活性化せず、C1qと結合せず、C3を活性化しない。「抗体のFc領域」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて規定される。
【0075】
スプライシング
異なるヒト免疫グロブリンの定常領域アミノ酸配列は、対応するDNA配列によってコードされる。ゲノムにおいて、これらのDNA配列は、コード(エクソン)配列及び非コード(イントロン)配列を含む。DNAのpre-mRNAへの転写後、pre-mRNAはまた、これらのイントロン及びエクソン配列を含有する。翻訳前に、非コードイントロン配列は、mRNAプロセッシング中に、それらを一次mRNA転写産物からスプライシングして成熟mRNAを生成することによって除去されている。一次mRNAのスプライシングは、適切に離間したアクセプタースプライス部位と組み合わせてドナースプライス部位によって制御される。ドナースプライス部位は5’末端に位置し、アクセプタースプライス部位はイントロン配列の3’末端に位置する。
【0076】
「適切に離間した」という用語は、核酸中のドナースプライス部位及びアクセプタースプライス部位が、スプライシングプロセスに必要な全ての要素が利用可能であり、スプライシングプロセスが起こることを可能にする適切な位置にあるように配置されることを意味する。
【0077】
ドナースプライス部位(5’スプライス部位)は、イントロンの5’末端を表す核酸配列モチーフである。
【0078】
アクセプタースプライス部位(3’スプライス部位)は、イントロンの3’末端を表す核酸配列モチーフである。
【0079】
コドン最適化:
組換え抗体の作製は、少なくとも、天然に存在する野生型又は生殖系列の配列上の定常領域に基づく。RNA不安定性、非効率的な核外輸送、二次構造又は不十分な翻訳速度等のこれらのDNA鋳型の生物学的制限を防ぐために、バイオインフォマティクス技術を用いた遺伝子最適化及びその後のタンパク質配列に基づく遺伝子のde novo合成が行われる[10]。したがって、複雑で時間のかかるクローニング工程を回避することができ、近年示されているように、生産システムに対するコドン使用のそのような調整によって翻訳速度を高めることができる[10]。コドン最適化のため、高いGC含有量、スプライス部位の回避及びコドン使用の産生生物への適合が中心的な役割を果たす。特定のコドンの使用及び頻度を調べるいくつかの方法が既に確立されている。同じアミノ酸をコードするtRNA同士は競合することが知られている。一方では、複数のコドンを認識する多価tRNAがより一般的に利用可能であり、他方では、異なるtRNA種が様々な頻度で発現される。結果として、より豊富なtRNAによってコードされるコドンもまた、コード配列においてより頻繁に生じる[11]。表1に、コドン使用適合/最適化を適用するための3つの可能な方法を示す。
【0080】
【0081】
1つの方法のコドン使用は、tRNAプール全体を翻訳に利用可能にすること、すなわち方法2を目的とする。アミノ酸への翻訳に最も豊富なコドンのみを使用する「高」方法とは対照的に、利用可能な全てのコドンが使用される。方法2はまた、方法1と比較して各生物のコドン使用で使用されるコドンの分布を考慮に入れ、配列内にコドンを分布させる[11]。
【0082】
スプライス部位:
真核生物のタンパク質をコードするほとんど全ての遺伝子は、エクソンとイントロンに分けられる。現在、エクソンの12個の変異体が知られている[12]。スプライシングは、転写中のプレ-mRNAからのイントロンの切除である。正しいスプライシングは、イントロン及びいわゆる分岐部位のそれぞれ5’及び3’末端の保存されたコンセンサス配列に基づく。分岐部位は、イントロンの3’末端のおよそ20~50ヌクレオチド上流である[12]。イントロンの5’末端には、特徴的なジヌクレオチドGTを有するドナースプライス部位がある。3’末端には、塩基AGと共に位置するアクセプタースプライス部位がある[13]。このパターンは、スプライス部位のカノニカルパターンと呼ばれる。それにもかかわらず、注釈付きスプライス部位の3.7%は、このパターンに従わない[14]。イントロン内にGC-AG、GG-AG、GT-TG、GT-CG又はCT-AGジヌクレオチドを有するスプライス部位も観察された[14]。これらの非カノニカルスプライス部位のいくつかは、免疫グロブリンの発現に関与し得る[15]。Burset et al.によれば、ジヌクレオチドGC-AGは、スプライス部位の最も一般的な非標準パターンである。さらに、コンセンサス配列はGC含有量に強く依存する[12]。GC含有量が高い場合、5’末端のドナーコンセンサス配列は、GC含有量が低い場合の、AG/GTAAGT(配列番号03)としてではなくAG/GTRAGT(配列番号02)として記載される[12]。
【0083】
イントロンは、スプライソソームを切断する。標準的なGT-AG対に隣接するそれらのイントロンは、サブユニットU1、U2、U4/U6、及びU5を有するスプライソソームによってプレmRNAから放出される[16]。さらに、真核生物ゲノムは、適切なスプライシングに悪影響を及ぼす様々な隠れたスプライス部位を有することが知られている。これらは、スプライス部位のコンセンサスモチーフとは異なる。通常、これらの部位は不活性であるか、又は細胞機構によってほとんど使用されない[17]、[18]。隠れたスプライス部位は、イントロン及びエクソンの両方に存在する。生物情報学的プログラムの目的は、これらの潜在的スプライス部位の位置を認識することである。これらのプログラムの多くは有益であるが、多くの可能性のためにヌクレオチド情報の複雑さほど有益ではない[22]。
【0084】
本発明による方法の具体的な実施形態
治療用又は診断用抗体の産生のために、高い発現収率を目的とする。良好な発現率を達成するための1つの選択肢は、最初にコード核酸のコドン使用を最適化し、それを外因性核酸を発現することを意図した細胞のコドン使用に調整することである。このコドン適合又は最適化は、種々の確立されたプロトコルに基づいて行うことができる。
【0085】
しかしながら、そのようなコドン適合及び最適化プロセスの間に、例えば、非対合スプライス部位をde novoで生成することができる。すなわち、コドン最適化中に、コドン使用最適化核酸において新たなドナースプライス部位配列が生成される。これは、コドン使用最適化核酸の編成とは無関係であり、すなわち、cDNA又はゲノム編成された核酸の両方について可能である。実際、これはコドン使用最適化プロセスの意図しない副次的結果である。そのような新たなドナースプライス部位は、追加の人工ドナースプライス部位であり、関連する標的アクセプタースプライス部位を有さない。したがって、そのような非対合ドナースプライス部位は、転写されたmRNAのどこかに存在するランダムな、すなわち定義されていないアクセプタースプライス部位を伴うスプライシング事象を生じさせることができる。これにより、発現収率が低下する。
【0086】
本発明は、少なくとも部分的には、コドン使用最適化抗体の重鎖をコードする核酸における非対合ドナースプライス部位の除去が、重鎖の可変領域をコードする核酸の部分でのみ行われる必要があり、定常領域をコードする部分では行われない、すなわち定常領域の場合には、例えば生殖細胞系又は野生型ヒト核酸配列を使用することができるという予想外の知見に基づく。
【0087】
本発明は、少なくとも部分的には、抗体重鎖の可変ドメインをコードするコドン最適化核酸においてのみ、非対合ドナースプライス部位コンセンサス配列NGGTA(G)AG(配列番号01)におけるアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化(変異)の導入が、発現収率を改善する又は当該抗体を発現させるのに全く十分であるという知見に基づく。
【0088】
本発明は、少なくとも部分的には、非対合ドナースプライス部位の除去が、重鎖の可変ドメインをコードする核酸においてのみ行われる必要があり、定常領域においては行われないという知見に基づいており、すなわち、定常領域については、野生型配列、生殖細胞系列配列、又は国際公開第2013/15644号に報告されているような標準的な方法で最適化された配列のいずれかを使用することができる。
【0089】
本発明は、軽鎖を用いる本発明による方法を使用することによって発現収率を増加させることができるという知見に少なくとも部分的に基づく。
【0090】
本発明は、配列番号01:NGGTA(G)AGのドナーコンセンサス配列の使用に基づく。この配列は、Zhang et al.1998によって既に同定されているが、コドン最適化プロトコルへの進入は見出されなかった。
【0091】
ジヌクレオチドGTは、イントロン及びそれによるスプライス部位の開始を示す。その後に続く塩基は、アデニン又はグアニンであり得る。
【0092】
考慮され得る別のパラメータは、方法の感受性及びストリンジェンシーを調整するために、この配列で許容されるミスマッチの数である。
【0093】
コンセンサスアクセプタースプライス配列は、配列番号04:[CT]n N[CT]AGの配列を有し、N=任意の塩基、n=CTジヌクレオチドの数である。この配列はまた、Zhang 1998によって既に特定されている。
【0094】
本発明による方法は、特異的抗体を用いて以下に例示される。これらの実施例は、本発明の限定として理解されるべきではない。これらは、本発明による一般的に適用可能な方法の単なる例示として提示されている。
【0095】
以下の表2に、異なる処理がなされた抗体重鎖及び/又は軽鎖コード核酸の発現収率を要約する。結果を、2プラスミド系を使用したHEK293細胞における一過性発現によって得た。
【0096】
コンストラクト「00」は出発核酸である。
【0097】
コンストラクト00’~06’及び16’は、国際公開第2013/156443号から当技術分野で公知の方法(=参照先行技術方法)を用いてコドン最適化されている。
【0098】
コンストラクト07’~11’及び17’は、本発明、すなわち配列番号01のコンセンサスモチーフに基づくドナースプライス部位の除去を補足した国際公開第2013/156443号の参照先行技術方法に従って処理されている。
【0099】
コンストラクト、12’~15’は、第2の参照先行技術方法として国際公開第2013/156443号とは異なるアプローチを使用して、商業的プロバイダであるGeneartによってコドン最適化されている。
【0100】
「hu」という用語は、ヒトコドン使用が使用されたことを意味し、「CHO」という用語は、チャイニーズハムスターコドン使用が使用されたことを意味する。
【0101】
【0102】
データから、以下のことがわかる:
軽鎖の場合:
-ゲノム編成を使用する場合、本発明によるプロセッシングは、同等の発現収率をもたらした。
【0103】
-cDNAの使用は、一般に、発現収率の増加をもたらす。
【0104】
-cDNAを使用する場合、本発明によるプロセッシングは、ほとんどの場合、発現収率の増加をもたらし、他の場合、発現収率は同等である。
【0105】
重鎖の場合:
-ゲノム編成を使用する場合、本発明によるプロセッシングは、少なくとも重鎖可変ドメインが最適化されている場合、発現収率の増加又は発現の増加をもたらす。
【0106】
-cDNAの使用は、一般に、発現収率の増加をもたらす。
【0107】
-cDNAを使用する場合、重鎖の定常領域に対する本発明によるプロセッシングはまた、発現収率をさらに増加させないようである。
【0108】
-cDNAを使用する場合、本発明によるプロセッシングは、発現収率のさらなる増加をもたらす。
【0109】
したがって、本明細書中に記載の1つの態様は、免疫グロブリンを産生するための方法であって:
- ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖をコードするイントロン-エクソン構造を有する核酸を含む哺乳動物細胞、好ましくはCHO細胞を培養して、免疫グロブリンが発現されるようにする工程、
- 細胞又は培養培地から免疫グロブリンを回収し、それによって免疫グロブリンを産生する工程を含み、
免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸の部分において、配列番号01による非対合ドナースプライス部位が、非対合ドナースプライス部位コンセンサス配列NGGTA(G)AG(配列番号01)におけるアミノ酸配列サイレントヌクレオチド変化をコドンNGG又はコドンGGT又はコドンGTA(G)に導入することによって除去されている、方法である。
【0110】
参照コドン最適化方法
免疫グロブリンをコードする核酸は、例えば、国際公開第2013/156443号に報告されている方法に従って一般的なコドン使用を適合させることによって最適化することができる。
【0111】
上記参照方法は、細胞におけるポリペプチドの発現のため、各アミノ酸が或るコドンの群によってコードされ、それにより、コドンの群における各コドンが、細胞のゲノムにおけるこのコドンの全体的な使用頻度に関連する群内の固有の使用頻度によって定義され、またそれにより、核酸をコードする(全)ポリペプチドにおけるコドンの使用頻度は、それぞれの群内の使用頻度とほぼ同じであるという特徴のポリペプチドをコードする核酸の使用という知見に基づくものである。
【0112】
参照方法は、ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を培養し、哺乳動物細胞又は培養培地からポリペプチドを回収する工程を含む、哺乳動物細胞においてポリペプチドを組換え生産するための方法であって、
ポリペプチドのアミノ酸残基の各々は、1つ以上の(少なくとも1つの)コドン(複数可)によってコードされており、それにより、同じアミノ酸残基をコードする(異なる)コドンが1つの群に組み合わされ、群内の各コドンが、群内の固有の使用頻度によって定義され、これは、1つの群の全てのコドンに関して、或るコドンの群の単一のコドンがポリペプチドをコードする核酸において見られ得る頻度であり、それにより、1つの群内の全てのコドンの固有の使用頻度の合計は100%であり、
ポリペプチドをコードする核酸中の各コドンの全体的な使用頻度が、その群内でのその固有の使用頻度とほぼ同じである、方法である。
【0113】
一実施形態では、アミノ酸残基G、A、V、L、I、P、F、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D及びEはそれぞれコドンの群によってコードされ、アミノ酸残基M及びWは単一のコドンによってコードされる。
【0114】
一実施形態では、アミノ酸残基G、A、V、L、I、P、F、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D及びEはそれぞれ、少なくとも2つのコドンを含むコドンの群によってコードされ、アミノ酸残基M及びWは単一のコドンによってコードされる。
【0115】
一実施形態では、アミノ酸残基が正確に1つのコドンによってコードされている場合、コドンの固有の使用頻度は100%である。
【0116】
一実施形態では、アミノ酸残基Gは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Aは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Vは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Lは、最大6つ個コドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Iは、最大3個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Mは正確に1個のコドンによってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Pは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Fは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Wは正確に1個のコドンによってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Sは、最大6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Tは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Nは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Qは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Yは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Cは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Kは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Rは、最大6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Hは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Dは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Eは、最大2個のコドンの群によってコードされる。
【0117】
一実施形態では、アミノ酸残基Gは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Aは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Vは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Lは、1~6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Iは、1~3個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Mは、1個のコドンの群、すなわち正確に1個のコドンによってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Pは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Fは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Wは、1個のコドンの群、すなわち正確に1つのコドンによってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Sは、1~6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Tは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Nは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Qは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Yは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Cは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Kは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Rは、1~6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Hは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Dは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Eは、1~2個のコドンの群によってコードされる。
【0118】
一実施形態では、各基は、5%以上の細胞のゲノム内の全体的な使用頻度を有するコドンのみを含む。一実施形態では、各基は、8%以上の細胞のゲノム内の全体的な使用頻度を有するコドンのみを含む。一実施形態では、各基は、10%以上の細胞のゲノム内の全体的な使用頻度を有するコドンのみを含む。一実施形態では、各基は、15%以上の細胞のゲノム内の全体的な使用頻度を有するコドンのみを含む。
【0119】
一実施形態では、5’から3’方向の特定のアミノ酸残基に対するポリペプチドをコードする核酸中のコドンの配列は、それぞれのアミノ酸コドンモチーフ中のコドンの配列である、それにすなわち対応する。
【0120】
一実施形態では、ポリペプチドのN末端から始まるポリペプチド中の特定のアミノ酸の連続した各出現について、コード核酸は、それぞれの特定のアミノ酸のアミノ酸コドンモチーフ中の対応する連続した位置にあるコドンと同じであるコドンを含み、ポリペプチドのアミノ酸配列にアミノ酸残基が最初に出現すると、アミノ酸コドンモチーフの第1のコドンが対応するコード核酸に使用され、アミノ酸残基が2番目に出現すると、アミノ酸コドンモチーフの第2のコドンが使用され、以下同様である。
【0121】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中のコドンの使用頻度は、その群内のその固有の使用頻度とほぼ同じである。
【0122】
一実施形態では、ポリペプチド中の特定のアミノ酸の次の出現時にアミノ酸コドンモチーフの最終コドンに到達した後、コード核酸は、アミノ酸コドンモチーフの最初の位置にあるコドンを含む。
【0123】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中のコドンは、アミノ酸コドンモチーフ全体にわたってランダムに分布している。
【0124】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフは、その中のコドンを並び変えることによって得られる可能な全てのアミノ酸コドンモチーフを含むアミノ酸コドンモチーフの群から選択され、全てのモチーフは同じ数のコドンを有し、各モチーフ中のコドンは同じ固有の使用頻度を有する。
【0125】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中のコドンは、固有の使用頻度が減少するように配置され、それによって1つの使用頻度の全てのコドンが互いに直接連続する。一実施形態では、1つのコドン使用頻度のコドンを一緒にグループ化する。
【0126】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中の(異なる)コドンは、アミノ酸コドンモチーフ全体にわたって均一に分布している。
【0127】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中のコドンは、固有の使用頻度が減少するように配置され、それにより、固有の使用頻度が最も低いコドン又は固有の使用頻度が2番目に低いコドンの後に、固有の使用頻度が最も高いコドンが存在する(使用される)。
【0128】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中のコドンは、固有の使用頻度が減少するように配置され、比使用頻度が最も低いコドンの後に、比使用頻度が最も高いコドンが存在する(使用される)。
【0129】
したがって、ポリペプチドをコードする核酸は、ポリペプチドの各アミノ酸残基が1つ以上の(少なくとも1つの)コドンによってコードされていることを特徴とし、
それにより、同じアミノ酸残基をコードする異なるコドンが1つの群に組み合わされ、群内の各コドンが、群内の固有の使用頻度によって定義され、これは、1つの群の全てのコドンに関して、或るコドンの群の単一のコドンがポリペプチドをコードする核酸において見られ得る頻度であり、それにより、1つの群内の全てのコドンの固有の使用頻度の合計は100%であり、
ポリペプチドをコードする核酸中のコドンの使用頻度が、その群内でのその固有の使用頻度とほぼ同じである。
【0130】
一実施形態では、アミノ酸残基G、A、V、L、I、P、F、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D及びEはそれぞれコドンの群によってコードされ、アミノ酸残基M及びWは単一のコドンによってコードされる。
【0131】
一実施形態では、アミノ酸残基G、A、V、L、I、P、F、S、T、N、Q、Y、C、K、R、H、D及びEはそれぞれ、少なくとも2つのコドンを含むコドンの群によってコードされ、アミノ酸残基M及びWは単一のコドンによってコードされる。
【0132】
一実施形態では、アミノ酸残基が正確に1つのコドンによってコードされている場合、コドンの固有の使用頻度は100%である。
【0133】
一実施形態では、アミノ酸残基Gは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Aは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Vは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Lは、最大6つ個コドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Iは、最大3個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Mは正確に1個のコドンによってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Pは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Fは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Wは正確に1個のコドンによってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Sは、最大6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Tは、最大4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Nは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Qは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Yは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Cは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Kは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Rは、最大6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Hは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Dは、最大2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Eは、最大2個のコドンの群によってコードされる。
【0134】
一実施形態では、アミノ酸残基Gは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Aは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Vは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Lは、1~6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Iは、1~3個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Mは1個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Pは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Fは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Wは、1個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Sは、1~6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Tは、1~4個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Nは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Qは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Yは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Cは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Kは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Rは、1~6個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Hは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Dは、1~2個のコドンの群によってコードされる。一実施形態では、アミノ酸残基Eは、1~2個のコドンの群によってコードされる。
【0135】
一実施形態では、各基は、5%以上の細胞のゲノム内の全体的な使用頻度を有するコドンのみを含む。一実施形態では、各基は、8%以上の細胞のゲノム内の全体的な使用頻度を有するコドンのみを含む。一実施形態では、各基は、10%以上の細胞のゲノム内の全体的な使用頻度を有するコドンのみを含む。一実施形態では、各基は、15%以上の細胞のゲノム内の全体的な使用頻度を有するコドンのみを含む。
【0136】
一実施形態では、5’から3’方向の特定のアミノ酸残基に対するポリペプチドをコードする核酸中のコドンの配列は、それぞれのアミノ酸コドンモチーフ中のコドンの配列である、それにすなわち対応する。
【0137】
一実施形態では、ポリペプチドのN末端から始まるポリペプチド中の特定のアミノ酸の連続した各出現について、コード核酸は、それぞれの特定のアミノ酸のアミノ酸コドンモチーフ中の対応する連続した位置にあるコドンと同じであるコドンを含み、ポリペプチドのアミノ酸配列にアミノ酸残基が最初に出現すると、アミノ酸コドンモチーフの第1のコドンが対応するコード核酸に使用され、アミノ酸残基が2番目に出現すると、アミノ酸コドンモチーフの第2のコドンが使用され、以下同様である。
【0138】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中のコドンの使用頻度は、その群内のその固有の使用頻度とほぼ同じである。
【0139】
一実施形態では、ポリペプチド中の特定のアミノ酸の次の出現時にアミノ酸コドンモチーフの最終コドンに到達した後、コード核酸は、アミノ酸コドンモチーフの最初の位置にあるコドンを含む。
【0140】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中の各コドンは、アミノ酸コドンモチーフ全体にわたってランダムに分布している。
【0141】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中の各コドンは、アミノ酸コドンモチーフ全体にわたって均一に分布している。
【0142】
一実施形態において、アミノ酸コドンモチーフ中のコドンは、固有の使用頻度が減少するように配置され、それにより、固有の使用頻度が最も低いコドン又は固有の使用頻度が2番目に低いコドンの後に、固有の使用頻度が最も高いコドンが使用される。
【0143】
一実施形態では、アミノ酸コドンモチーフ中のコドンは、固有の使用頻度が減少するように配置され、比使用頻度が最も低いコドンの後に、比使用頻度が最も高いコドンが使用される。
【0144】
したがって、本発明による方法は、真核細胞におけるポリペプチドの発現を増加させる方法であって、
-ポリペプチドをコードする核酸を提供する工程、を含み
ポリペプチドの各アミノ酸残基が少なくとも1つのコドンによってコードされており、それによって同じアミノ酸残基をコードする異なるコドンが1つの群に組み合わされ、群の各コドンが群内の固有の使用頻度によって定義され、それによって1つの群の全てのコドンの固有の使用頻度の合計が100%であり、
ポリペプチドをコードする核酸中のコドンの使用頻度が、その群内でのその固有の使用頻度とほぼ同じであり、
配列番号01のコンセンサス配列によるドナースプライス部位が、重鎖可変ドメインをコードする核酸から除去されている、方法である。
【0145】
組換え方法
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して産生することができる。抗体コード核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/又は抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードし得る。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域含有ポリペプチドを発現する細胞は、そのような核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)でトランスフェクトされている。一実施形態では、本明細書に記載の方法で修飾されたそのような核酸を含む細胞が提供される。一実施形態では、細胞は以下を含む(例えば、以下を用いて形質転換されている):(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸と、抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、又は(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクターと、抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターとを含むベクター。一実施形態では、細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp2/0細胞)である。一実施形態において、抗体の作製方法が提供され、本方法は、本明細書で提供される抗体をコードする核酸を含む細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を細胞(又は細胞培養培地)から回収することとを含む。
【0146】
抗体の組み換え産生のために、例えば、本明細書で報告される抗体をコードする核酸が生成され、1つ以上のベクター内に挿入されて、細胞内で更にクローニング及び/又は発現される。そのような核酸は、従来の手順(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)を使用して容易に単離され、配列決定され得る。
【0147】
抗体コード化ベクターのクローニング又は発現のための好適な細胞には、本明細書に記載される真核細胞が含まれる。
【0148】
さらに、糸状菌又は酵母等の真核微生物は、抗体をコードするベクターに好適なクローニング又は発現宿主であり、そのグリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的又は完全なヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌株及び酵母株を含む(Gerngross,T.U.,Nat.Biotech.22(2004)1409-1414;and Li,H.,et al.,Nat.Biotech.24(2006)210-215を参照されたい)。
【0149】
また、グリコシル化抗体を発現させるのに適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに関連して使用され得る多数のバキュロウイルス系統が同定されている。
【0150】
植物細胞培養物を宿主として利用することもできる(例えば、米国特許第5,959,177号、米国特許第6,040,498号、米国特許第6,420,548号、米国特許第7,125,978号及び米国特許第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載する)を参照されたい)。
【0151】
脊椎動物細胞も、宿主として使用することができる。例えば、懸濁物中で成長するように適合した哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えばGraham,F.L.et al.,J.Gen Virol.36(1977)59-74に記載されるようなHEK293細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,J.P.,Biol.Reprod.23(1980)243-252に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト頸部癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、TRI細胞、例えば、Mather,J.P.et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383(1982)44-68に記載されるようなMRC5細胞及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物細胞株としては、DHFR-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub,G.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)4216-4220)、及び、骨髄腫細胞株、例えば、Y0、NS0及びSp2/0が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki,P.and Wu,A.M.,Methods in Molecular Biology,Vol.248,Lo,B.K.C.(ed.),Humana Press,Totowa,NJ(2004)pp.255-268を参照されたい。
【0152】
精製
タンパク質の回収及び精製には、微生物タンパク質を用いた親和性クロマトグラフィ(例えば、プロテインA又はプロテインG親和性クロマトグラフィ)、イオン交換クロマトグラフィ(例えば、陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)及び混合モード交換)、チオフェン吸着(例えば、β-メルカプトエタノール及び他のSHリガンドを用いる)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィ(例えば、フェニル-セファロース、アザ-芳香族樹脂、又はm-アミノフェニルボロン酸を用いる)、金属キレート親和性クロマトグラフィ(例えば、Ni(II)親和性材料及びCu(II)親和性材料を用いる)、サイズ排除クロマトグラフィ、及び電気泳動法(例えば、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動)等の様々な方法が十分に確立され、広く使用されている(Vijayalakshmi,M.A.,Appl.Biochem.Biotech.75(1998)93-102)。
【0153】
コドン使用
コドン使用表(例については上記の表を参照されたい)は、例えば、http://www.kazusa.or.jp/codon/で入手可能な「コドン使用データベース」で容易に入手可能であり、これらの表は、いくつかの方法で適合させることができる(Nakamura,Y.,et al.,Nucl.Acids Res.28(2000)292)。
【0154】
組換えポリペプチドの高収率発現のため、コード核酸は重要な役割を果たす。天然に存在する及び天然から単離されたコード核酸は、特に異種宿主細胞で発現される場合、一般に高収率発現のために最適化されない。遺伝暗号の変性により、1つのアミノ酸残基は、アミノ酸トリプトファン及びメチオニンを除いて、2つ以上のヌクレオチドトリプレット(コドン)によってコードされ得る。したがって、1つのアミノ酸配列に対して、異なるコードコドン(=対応するコード核酸配列)が可能である。
【0155】
1つのアミノ酸残基をコードする異なるコドンは、異なる相対頻度(コドン使用)で異なる生物によって使用される。一般に、1つの特定のコドンは、他の可能性のあるコドンよりも高い頻度で使用される。
【0156】
国際公開第2001/088141号では、高発現哺乳動物遺伝子に見られるコドン使用によるリーディングフレーム最適化が報告されている。その目的のため、以下の表に示すように、高発現哺乳動物遺伝子において最も頻繁に使用されるコドン、及びあまり好ましくないが2番目に頻繁に使用されるコドンをほぼ排他的に考慮してマトリックスを生成した。高度に発現したヒト遺伝子由来のこれらのコドンを使用して、天然には存在しない完全に合成された読み枠が作製されたが、これは元の野生型遺伝子コンストラクトと全く同じ産物をコードする。
【0157】
米国特許第8,128,938号では、均一最適化、完全最適化及び最小最適化等、個々のコドンの使用頻度を使用するコドン最適化の様々な方法が報告されている。
【0158】
以下の表に、高発現哺乳動物遺伝子に見られる最も頻繁に使用されるコドン(コドン1)及び2番目に頻繁に使用されるコドン(コドン2)を示す。
【0159】
(表.)
(Ausubel,F.M.,et al.,Current Protocols in Molecular Biology 2(1994),A1.8-A1.9).
【0160】
合成遺伝子産物の連続的なPCR増幅及び配列決定を可能にするために、(i)固有の制限部位の導入又は除去に対応するため、(ii)7塩基対を超えて延びるG又はC伸長を切断するための、最も頻繁に見出されるコドンの使用の厳守から逸脱することはほとんどない。
【0161】
以下の実施例は、本発明の理解を助けるために提供されており、その真の範囲は、特許請求の範囲に明記されている。本発明の思想から逸脱することなく、定められた手順に変更を加えることができると理解される。
【0162】
文献
[10] M.Graf,L.Deml,and R.Wagner,’’Codon-optimized genes that enable increased heterologous expression in mammalian cells and elicit efficient immune responses in mice after vaccination of naked DNA.,’’ Methods Mol.Med.,vol.94,pp.197-210,2004.
[11] 国際公開第2013/156443号
[12] M.Q.Zhang,’’Statistical features of human exons and their flanking regions,’’ vol.7,no.5,pp.919-932,1998.
[13] R.Breathnach,C.Benoist,K.O’Hare,F.Gannon,and P.Chambon,’’Ovalbumin gene:evidence for a leader sequence in mRNA and DNA sequences at the exon-intron boundaries.,’’ Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,vol.75,no.10,pp.4853-4857,1978.
[14] M.Burset,I.A.Seledtsov,and V.V Solovyev,’’Analysis of canonical and non-canonical splice sites in mammalian genomes.,’’ Nucleic Acids Res.,vol.28,no.21,pp.4364-4375,2000.
[15] M.B.Shapiro and P.Senapathy,’’RNA splice junctions of different classes of eukaryotes:Sequence statistics and functional implications in gene expression,’’ Nucleic Acids Res.,vol.15,no.17,pp.7155-7174,1987.
[16] T.W.Nilsen,’’Twenty years of RNA:then and now,’’ pp.471-473,2015.
[17] R.A.Padgetr,P.J.Grabowski,M.M.Konarska,S.Seiler,and P.A.Sharp,’’Splicing of messenger RNA precursors,’’ 1986.
[18] M.R.Green,’’Pre-mRNA splicing,’’ Annu.Rev.Genet.,vol.20,pp.671-708,1986.
[22] Y.Kapustin,E.Chan,R.Sarkar,F.Wong,I.Vorechovsky,R.M.Winston,T.Tatusova,and N.J.Dibb,’’Cryptic splice sites and split genes,’’ Nucleic Acids Res.,vol.39,no.14,pp.5837-5844,2011.
【実施例0163】
タンパク質決定:
タンパク質濃度を、アミノ酸配列に基づいて算出したモル吸光係数を用いて、280nmにおける光学濃度(OD)を決定することにより求めた。
【0164】
組換えDNA技術
標準的な方法を使用し、Sambrook,J.,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989)において記載されるように、DNAを操作した。分子生物学的試薬は、製造元の説明書によって使用した。
【0165】
実施例1
異なるコドン最適化核酸からの抗体の発現及び精製
異なる非最適化可変ドメイン又はコドン最適化可変ドメインを、野生型ヒト定常領域をコードする核酸又はヒト定常領域をコードするCHOコドン使用最適化核酸と組み合わせた。
【0166】
発現プラスミド
発現プラスミドはそれぞれ、重鎖又は軽鎖の発現のための1つの発現カセットを含む。これらを哺乳動物細胞発現ベクターで別々に組み立てた。
【0167】
コドン使用を推定することができるヒトの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は以下に示される:Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991),NIH Publication No 91-3242。
【0168】
軽鎖又は重鎖発現カセットに加えて、これらのプラスミドは、以下を含む
- ハイグロマイシン耐性遺伝子、
- エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)の複製起点oriP、
- 大腸菌におけるこのプラスミドの複製を可能にするベクターpUC18からの複製起点、及び
- 大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子。
【0169】
組換えDNA技術:
クローニングは、Sambrook,J.,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている標準的なクローニング技術を用いて行った。全ての分子生物学的試薬は市販されており(特に明記しない限り)、製造業者の指示に従って使用した。
【0170】
DNA及びタンパク質の配列解析、並びに配列データ管理:
Vector NTI Advance suiteバージョン9.0を、配列の作成、マッピング、分析、注釈及び例示のために使用した。
【0171】
抗体の発現:
抗体の発現には、ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK)293Fを用いた。HEK293細胞は主に一過性遺伝子発現に使用される。所望のタンパク質を、数日後に回収することができる。HEK293Fを、ペニシリン及びストレプトマイシン(PenStrep)を補充した血清及びタンパク質を含まないFreeStyle(商標)293発現培地(Gibco、Invitrogen(商標)、Life Technologies)中、振盪フラスコにおいて、7%CO2、湿度85%及び37℃で培養した。細胞を3~4日ごとに継代し、細胞密集度に従って分割した。細胞数は常に3×105個/mLとした。細胞数及び活力(vitality)を、50μlの培養物を10mlのCasytonに懸濁させたCASEY Cell Counter(Roche)で測定し、適切なプログラムで測定した。
【0172】
一過性トランスフェクションのため、細胞数を同日に2×10
6細胞/mLに調整した。一過性トランスフェクションの数は、継代4を下回ってはならず、継代22を上回ってはならない。トランスフェクションのため、トランスフェクション試薬PEIproを使用し、Fed Batchプロセスで7日間実行した。トランスフェクションのため、以下の容量及びDNA量をトランスフェクション混合物(培養容量20mL)に使用した:
【0173】
トランスフェクションのため、適切な量のF17、DNA及びトランスフェクション試薬をそれぞれの順序で組み合わせ、混合し、10分間インキュベートした。続いて、トランスフェクションミックスを細胞に添加した。約3~5時間後、VPAの対応する予備希釈液を加えた。16時間後、培養物に0.6%グルコース及び12%供給物を補充し、更にインキュベートした。
【0174】
1週間後、上清を回収することができた。この目的のため、混合物を1200rpmで20分間遠心分離し、上清を0.22μmフィルタで滅菌して濾別した。
【0175】
発現収率の決定:
上清から発現した抗体の定量化を、プロテインAを充填したHPLCカラムを用いて行った。プロテインAは、IgG抗体の定常領域に特異的に結合するスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来の細胞壁関連タンパク質である。プロテインAは、ポリマー担体上に固定化され、次いで標的分子に結合する。pH及び温度等の様々なパラメータを変更することにより、抗体を溶出及び検出することができる。
【0176】
トランスフェクションの7日後、HEK293細胞上清を回収した。そこに含まれる組換え抗体を、プロテインA-セファロース(商標)アフィニティークロマトグラフィー(GE Healthcare、スウェーデン)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって上清から精製した。簡潔には、抗体を含有する清澄化培養上清を、PBS緩衝液(10mM Na2HPO4、1mM KH2PO4、137mM NaCl及び2.7mM KCl、pH7.4)で平衡化したMabSelectSuReプロテインA(5~50ml)カラムに適用した。未結合タンパク質を平衡化緩衝液で洗い流した。抗体(又は誘導体)を50mMクエン酸緩衝液(pH3.2)で溶出した。タンパク質含有画分を0.1mlの2M Tris緩衝液(pH 9.0)で中和した。
【0177】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> F. Hoffmann-La Roche AG
<120> Method for the production of an antibody
<150> EP19183171.8
<151> 2019-06-28
<160> 6
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 6
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> splice donor consensus sequence
<400> 1
ggtrag 6
<210> 2
<211> 8
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> high GC content donor consensus sequence
<400> 2
aggtragt 8
<210> 3
<211> 8
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> low GC content donor consensus sequence
<400> 3
aggtaagt 8
<210> 4
<211> 7
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> splice acceptor sequence
<220>
<221> misc_feature
<222> (3)..(3)
<223> n is a, c, g, or t
<400> 4
ctnctag 7
<210> 5
<211> 39
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> codon motif
<400> 5
gcggcggcgg cggctgctgc tgctgcagca gcagccgcc 39
<210> 6
<211> 36
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> codon motif
<400> 6
gcggctgcag ccgcggctgc agccgcggct gcagcg 36
抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸を含む1つ以上の発現カセットでトランスフェクトされたCHO細胞を培養することによって、ヒトIgG1サブクラスの抗体を産生するための方法であって、
前記抗体の重鎖及び軽鎖をコードする核酸が、ヒト細胞のコドン使用及び/又はCHO細胞のコドン使用で最適化されたコドン使用であり、
重鎖可変ドメインをコードする前記核酸の部分において、少なくとも1つの非対合ドナースプライス部位が除去されている、方法。