(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183420
(43)【公開日】2023-12-27
(54)【発明の名称】成形物品およびナノ構造成形物品
(51)【国際特許分類】
H10K 50/115 20230101AFI20231220BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20231220BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20231220BHJP
C09K 11/88 20060101ALI20231220BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20231220BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20231220BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20231220BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231220BHJP
C09K 11/70 20060101ALI20231220BHJP
【FI】
H10K50/115
H05B33/14 Z ZNM
C09K11/08 G
C09K11/88
C09K11/56
G02B5/20
H10K50/844
H10K59/10
C09K11/70
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023169773
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2020522708の分割
【原出願日】2018-10-24
(31)【優先権主張番号】15/793,735
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000186762
【氏名又は名称】昭栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】イッペン,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン-ラ プラント,イラン
(72)【発明者】
【氏名】カン,シハイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チュンミン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ウェンツァオ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,イーワ アニー
(72)【発明者】
【氏名】ドーナー,エマ ローズ
(57)【要約】
【課題】カドミウムフリー量子ドットの製造に適用可能な厚いシェルのコーティング方法の提供。
【解決手段】InP/ZnSe/ZnSコア/シェルのナノ構造を含む成形物品であって、前記ナノ構造の2つのシェルの厚さがいずれも0.7nm~3.5nmであり、前記ナノ構造が60~99%のフォトルミネッセンス量子収率を示し、前記ナノ構造が35nm~45nmの半値全幅を示し、前記ナノ構造の450nmにおける正規化光学濃度が1.0~3.0である、成形物品。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
InP/ZnSe/ZnSコア/シェルのナノ構造を含む成形物品であって、前記ナノ構造の2つのシェルの厚さがいずれも0.7nm~3.5nmであり、前記ナノ構造が60~99%のフォトルミネッセンス量子収率を示し、前記ナノ構造が35nm~45nmの半値全幅を示し、前記ナノ構造の450nmにおける正規化光学濃度が1.0~3.0である、
成形物品。
【請求項2】
InP/ZnSe/ZnSコア/シェルのナノ構造を含む成形物品であって、前記ナノ構造の少なくとも1つのシェルの厚さが0.7nm~3.5nmであり、前記ナノ構造が60~99%のフォトルミネッセンス量子収率を示し、前記ナノ構造が35nm~45nmの半値全幅を示し、前記ナノ構造の450nmにおける正規化光学濃度が1.0~3.0である、
成形物品。
【請求項3】
InP/ZnSe/ZnSコア/シェルのナノ構造を含む成形物品であって、前記ナノ構造の2つのシェルの厚さがいずれも0.7nm~3.5nmであり、前記ナノ構造が60~99%のフォトルミネッセンス量子収率を示し、前記ナノ構造が35nm~45nmの半値全幅を示し、前記ナノ構造の450nmにおける正規化光学濃度が1.0~2.0である、
成形物品。
【請求項4】
前記成形物品が発光ダイオードである、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項5】
前記成形物品が6%~20%の間の外部量子効率(EQE)を示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項6】
前記成形物品が7ボルトにおいて3000cd/m2~6000cd/m2の間の輝度を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項7】
前記成形物品が10%~50%の固体量子収率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形物品。
【請求項8】
ナノ構造成形物品であって:
(a)第1の障壁層と;
(b)第2の障壁層と;
(c)前記第1の障壁層と前記第2の障壁層との間のナノ構造層とを含み、前記ナノ構造層がInP/ZnSe/ZnSコア/シェルのナノ構造を含み、前記ナノ構造の少なくとも1つのシェルが2~10個の単層のシェル材料を含み、前記ナノ構造の450nmにおける正規化光学濃度が1.0~3.0であり、前記ナノ構造が60%~99%のフォトルミネッセンス量子収率を示し、前記ナノ構造が35nm~45nmの半値全幅を示す、ナノ構造成形物品。
【請求項9】
前記ナノ構造の少なくとも1つのシェルの厚さが0.7nm~3.5nmである請求項8に記載のナノ構造成形物品。
【請求項10】
正孔注入材料をさらに含む、請求項8または9に記載のナノ構造成形物品。
【請求項11】
正孔輸送材料をさらに含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のナノ構造成形物品。
【請求項12】
電子輸送材料をさらに含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のナノ構造成形物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] ナノ結晶コアと、ZnSe及びZnSの厚いシェルとを含む高発光性ナノ構造、特に高発光性量子ドットが提供される。これらのナノ構造は、ZnSe及びZnSのシェルの間に勾配がある1つ以上のZnSexS1-x単層を有することができ、ここでxの値は、ナノ構造の内部から外部まで徐々に減少する。高温合成方法を含むナノ構造の製造方法も提供される。本発明の厚いシェルのナノ構造は、高い安定性を示し、長期間にわたって高レベルのフォトルミネッセンス強度を維持することができる。青色光の吸収が増加したナノ構造も提供される。
【背景技術】
【0002】
[0002] 半導体ナノ構造は、種々の電子デバイス及び光学デバイスに組み込むことができる。このようなナノ構造の電気的性質及び光学的性質は、例えばそれらの組成、形状、及びサイズによって変動する。例えば、半導体ナノ粒子のサイズ調節可能な性質は、発光ダイオード(LED)、レーザー、及び生物医学的標識などの用途で高い関心が持たれている。このような用途には高発光性ナノ構造が特に望ましい。
【0003】
[0003] LED及びディスプレイなどの用途においてナノ構造の可能性を最大限に利用するため、ナノ構造は:狭く対称の発光スペクトルと、高いフォトルミネッセンス(PL)量子収率(QY)と、高い光学安定性と、環境に優しい材料と、低コストの大量生産方法との5つの基準を同時に満たす必要がある。高発光性で色の調整が可能な量子ドットに関するほとんどの従来の研究は、カドミウム、水銀、又は鉛を含む材料に集中している。Wang, A., et al., Nanoscale 7:2951-2959 (2015)。しかし、カドミウム、水銀、又は鉛などの毒性材料は人間の健康及び環境に対する深刻な脅威となるなことがますます懸念されており、欧州連合(European Union)の有害物質使用制限に関する規則(Restriction of Hazardous Substances rules)によって、これらの材料を微量を超えて含有する家庭用エレクトロニクスは禁止されている。したがって、LED及びディスプレイを製造するための、カドミウム、水銀、及び鉛を含まない材料の製造が必要である。
【0004】
[0004] リン化インジウムをベースとするカドミウムフリーの量子ドットは、プロトタイプのセレン化カドミウム量子ドットよりも本来安定性が低い。価電子帯及び伝導帯のエネルギー準位がより高いことで、InP量子ドットは、励起した量子ドットから酸素への電子移動による光酸化がより起こりやすくなり、励起した量子ドットの正孔状態を再び満たすことが可能なアミン又はチオールなどの電子供与剤によるフォトルミネッセンス消光がより起こりやすくなり、したがって励起子の放射再結合が抑制される。例えば、Chibli, H., et al.,“Cytotoxicity of InP/ZnS quantum dots related to reactive oxygen species generation,”Nanoscale 3:2552-2559 (2011);Blackburn, J.L., et al.,“Electron and Hole Transfer from Indium Phosphide Quantum Dots,”J. Phys. Chem. B 109:2625-2631 (2005);及びSelmarten, D., et al.,“Quenching of Semiconductor Quantum Dot Photoluminescence by a π-Conjugated Polymer,”J. Phys. Chem. B 109:15927-15933 (2005)を参照されたい。
【0005】
[0005] 量子ドット上の無機シェルコーティングは、それらの電子構造を調整するための一般的な方法の1つである。さらに、無機シェルを堆積することで、表面欠陥の不動態化によってより堅牢な粒子を形成することができる。Ziegler, J., et al., Adv. Mater. 20:4068-4073 (2008)。例えば、ZnSなどのより広いバンドギャップの半導体材料のシェルを、CdSe又はInPなどのより狭いバンドギャップを有するコア上に堆積することで、励起子がコアの中に閉じ込められる構造を得ることができる。この方法によって、放射再結合の確率が増加し、量子収率が1に近く、薄いシェルコーティングを有する非常に効率的な量子ドットの合成が可能となる。
【0006】
[0006] より狭いバンドギャップを有するコアの上に堆積されたより広いバンドギャップの半導体材料のシェルを有するコアシェル量子ドットは、1ナノメートル未満の薄いシェルでは環境要因への電荷の移動が十分に抑制されないので、依然として分解機構が生じやすい。数ナノメートルの厚いシェルコーティングでは、トンネル効果又は励起子移動の確率が低下し、したがって、厚いシェルコーティングは安定性を改善されると考えられ、これはCdSe/CdS系で既に実証されている知見である。
【0007】
[0007] 量子ドットの組成とは無関係に、ほとんどの量子ドットは、励起フォトンに連続的に曝露した後には、それらの本来の高い量子収率を維持しない。複数のシェル及び厚いシェルの形成などの精密なシェル設計(これによってコア内のキャリア波動関数が量子ドットの表面から離れ始める)は、光誘導性の量子ドットの劣化の軽減に有効となっている。さらに、量子ドットの光劣化は、それらを酸化物で包むこと(量子ドット表面のそれらの環境からの物理的隔離)によって遅らせることが可能なことがわかっている。Jo, J.-H., et al., J. Alloys Compd. 647:6-13 (2015)。
【0008】
[0008] CdSe/CdSの巨大シェルの量子ドット上の厚いコーティングは、発光コアを表面から数ナノメートル分離させることによって、環境要因及び表面電荷に対するそれらの安定性を改善することが分かっている。厚いシェルの量子ドットで見られる安定性の改善を示しながら、高量子収率、狭い発光ピーク幅、調整可能な発光波長、及びコロイド安定性などの薄いシェルの量子ドットの有益な性質も有する材料の製造が必要とされている。
【0009】
[0009] (1)質量の増加、表面積対体積比の減少、及び全表面積の増加によるドットの沈殿;(2)シェル材料が架橋するドットとの不可逆的な凝集;(3)シェル材料の二次核形成;(4)格子ひずみの緩和によって生じる界面欠陥;(5)好ましいファセット上での異方性シェル成長;(6)非晶質シェル又は非エピタキシャル界面;並びに(7)サイズ分布を広げることによって得られる広い発光ピークなどの多数の破壊及び分解の可能性が原因で、厚いシェルを製造した場合に、薄いシェルの量子ドットの有益な性質を維持することは困難である。
【0010】
[0010] これらの不均一なナノ構造の界面は欠陥がないことが必要であるが、その理由は、欠陥は電荷キャリアの捕捉部位として機能し、その結果としてルミネッセンス効率及び安定性の両方が低下するからである。これらの半導体材料の格子間隔は本来異なるため、界面における結晶格子にはひずみが生じる。このひずみのエネルギー負荷は、薄い層の好都合なエピタキシャル配置によって補償されるが、より厚い層の場合、シェル材料はその本来の格子まで緩和し、界面において不整合及び欠陥が形成される。より多くのシェル材料の添加と、材料の品質の維持との間で固有のトレードオフが存在する。したがって、これらの問題を克服する適切なシェル組成物を見いだすことが必要である。
【0011】
[0011] 最近の進歩によって、高発光性の単純なコアナノ結晶を得ることが可能となっている。しかし、これらの単純なコアナノ結晶の合成では、安定性及び加工性の問題が示されており、おそらくはこれらの問題は平坦なコアナノ結晶に固有のものであろう。したがって、生物医学的用途の場合などナノ結晶の複雑な化学的処理を行う必要がある場合、又はLED及びレーザーのようにナノ結晶が一定の励起を必要とする場合は、コア/シェルナノ結晶が好ましい。Li, J.J., et al., J. Am. Chem. Soc. 125:12567-12575 (2003)を参照されたい。
【0012】
[0012] シェル材料の成長中にサイズ分布を制御するために考慮する必要がある2つの重要な課題が存在する:(1)シェル材料の均一な核形成の解消;及び(2)各コアナノ結晶の周囲に同じ厚さのシェル層を形成するための、溶液中のすべてのコアナノ結晶へのシェル前駆体の均一な単層の成長である。連続イオン層吸着及び反応(SILAR)は、溶液浴から固体基板上に薄膜を堆積するために最初は開発され、化合物半導体の高品質コア/シェルナノ結晶の成長のための技術として導入されている。
【0013】
[0013] CdSe/CdSコア/シェルナノ結晶は、SILAR法を用いて20~40%のフォトルミネッセンス量子収率で製造されている。Li, J.J., et al., J. Am. Chem. Soc. 125:12567-12575 (2003)。SILARプロセスでは、各半反応に使用される前駆体の量は、すべてのコアが1の単層被覆率となるように計算され、これは反応混合物中に存在するすべてのコアの表面積に関する正確な情報を必要とする技術である。さらに、SILARプロセスは、両方の半反応の定量的反応収率を仮定しており、したがって各サイクル後に測定の不正確さが蓄積し、制御不足が生じる。
【0014】
[0014] コロイド状ナノ構造を合成するためのコロイド状原子層堆積(c-ALD)プロセスがIthurria, S., et al., J. Am. Chem. Soc. 134:18585-18590 (2012)で提案されている。c-ALDプロセスでは、未反応の前駆体及び副生成物が反応混合物中で蓄積するのを防止するために、ナノ粒子又は分子前駆体のいずれかを極性相と非極性相との間で順次移動させる。c-ALDプロセスは、コロイド状CdSeナノ結晶、CdSeナノプレートレット、及びCdSナノロッドの上にCdS層を成長させるために使用されている。しかし、c-ALDプロセスでは、ホルムアミド、N-メチル-ホルムアミド、又はヒドラジンなどの有害となりうる高極性溶媒への曝露が採用される相間移動プロトコルを使用する必要性が問題となる。
【0015】
[0015] 厚いシェルの破壊及び分解の可能性を回避する厚いシェルの合成方法を見出すことが必要である。本発明は、カドミウムフリー量子ドットの製造に適用可能な厚いシェルのコーティング方法を提供する。
【発明の概要】
【0016】
[0016] 本発明は、コアと少なくとも2つのシェルとを含む多層ナノ構造であって、少なくとも2つのシェルが異なるシェル材料を含み、少なくとも1つのシェルの厚さが0.7nm~3.5nmの間である多層ナノ構造を提供する。
【0017】
[0017] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造のコアはInPを含む。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造少なくとも1つのシェルはZnSを含む。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の少なくとも1つのシェルはZnSeを含む。
【0018】
[0018] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の少なくとも1つのシェルの厚さは0.9nm~3.5nmの間である。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の少なくとも2つのシェルの厚さは0.7nm~3.5nmの間である。
【0019】
[0019] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の少なくとも1つのシェルはZnSを含み、少なくとも1つのシェルはZnSeを含み、少なくとも2つのシェルの厚さは0.7nm~3.5nmの間である。
【0020】
[0020] 本発明は、多層ナノ構造の製造方法であって:
(a)ナノ結晶コアを少なくとも2つのシェル前駆体に接触させることと;
(b)(a)を約200℃~約310℃の間の温度に加熱することとによって;
少なくとも1つのシェルを含むナノ構造を得ることを含み、少なくとも1つのシェルが2.5~10個の間の単層を含む、製造方法を提供する。
【0021】
[0021] 幾つかの実施形態では、接触させるナノ結晶コアはInPを含む。
【0022】
[0022] 幾つかの実施形態では、ナノ結晶コアに接触させる少なくとも2つのシェル前駆体は亜鉛源を含む。幾つかの実施形態では、亜鉛源は、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、亜鉛源はステアリン酸亜鉛又はオレイン酸亜鉛である。
【0023】
[0023] 幾つかの実施形態では、ナノ結晶コアに接触させる少なくとも2つのシェル前駆体はセレン源を含む。幾つかの実施形態では、セレン源は、トリオクチルホスフィンセレニド、トリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(sec-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(tert-ブチル)ホスフィンセレニド、トリメチルホスフィンセレニド、トリフェニルホスフィンセレニド、ジフェニルホスフィンセレニド、フェニルホスフィンセレニド、トリシクロヘキシルホスフィンセレニド、シクロヘキシルホスフィンセレニド、1-オクタンセレノール、1-ドデカンセレノール、セレノフェノール、元素セレン、ビス(トリメチルシリル)セレニド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、セレン源はトリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド又はトリオクチルホスフィンセレニドである。
【0024】
[0024] 幾つかの実施形態では、コアとセレン源とのモル比は1:2~1:1000の間である。幾つかの実施形態では、コアとセレン源とのモル比は1:10~1:1000の間である。
【0025】
[0025] 幾つかの実施形態では、ナノ結晶コアに接触させる少なくとも2つのシェル前駆体は硫黄源を含む。幾つかの実施形態では、硫黄源は、元素硫黄、オクタンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、トリブチルホスフィンスルフィド、シクロヘキシルイソチオシアネート、α-トルエンチオール、エチレントリチオカーボネート、アリルメルカプタン、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、硫黄源はオクタンチオールである。
【0026】
[0026] 幾つかの実施形態では、コアと硫黄源とのモル比は1:2~1:1000の間である。幾つかの実施形態では、コアと硫黄源とのモル比は1:10~1:1000の間である。
【0027】
[0027] 幾つかの実施形態では、ナノ結晶コア及び少なくとも1つのシェル材料は約250℃~約310℃の間の温度で加熱される。幾つかの実施形態では、ナノ結晶コア及び少なくとも1つのシェル材料は約280℃の温度で加熱される。
【0028】
[0028] 幾つかの実施形態では、ナノ結晶コア及び少なくとも1つのシェル材料の加熱は2分~240分の間維持される。幾つかの実施形態では、ナノ結晶コア及び少なくとも2つのシェル前駆体の加熱は30分~120分の間維持される。
【0029】
[0029] 幾つかの実施形態では、ナノ結晶コアを少なくとも2つのシェルprecursorsfurtherに接触させることは溶媒を含む。幾つかの実施形態では、溶媒は、1-オクタデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、エイコサン、オクタデカン、ヘキサデカン、テトラデカン、スクアレン、スクアラン、トリオクチルホスフィンオキシド、及びジオクチルエーテルからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、溶媒は1-オクタデセンである。
【0030】
[0030] 幾つかの実施形態では、ナノ結晶コアはInPナノ結晶であり、少なくとも1つのシェルはZnSを含み、少なくとも1つのシェルはZnSeを含み、ナノ結晶コア及び少なくとも2つのシェル前駆体の加熱は約250℃~約310℃の間の温度で行われる。
【0031】
[0031] 本発明は、多層ナノ構造の製造方法であって:
(a)ナノ結晶コアを少なくとも2つのシェル前駆体に接触させることと;
(b)(a)を約200℃~約310℃の間の温度に加熱することと;
(c)(b)を少なくとも1つのシェル前駆体に接触させることであって、少なくとも1つのシェル前駆体が(a)のシェル前駆体とは異なることと;
(d)(c)を約200℃~約310℃の間の温度に加熱することとによって;
少なくとも2つのシェルを含むナノ構造を得ることを含み、少なくとも1つのシェルが2.5~10個の間の単層を含む、製造方法を提供する。
【0032】
[0032] 幾つかの実施形態では、接触させる少なくとも2つのシェル前駆体は亜鉛源を含む。幾つかの実施形態では、亜鉛源は、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、亜鉛源はステアリン酸亜鉛又はオレイン酸亜鉛である。
【0033】
[0033] 幾つかの実施形態では、接触させる少なくとも2つのシェル前駆体はセレン源を含む。幾つかの実施形態では、セレン源は、トリオクチルホスフィンセレニド、トリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(sec-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(tert-ブチル)ホスフィンセレニド、トリメチルホスフィンセレニド、トリフェニルホスフィンセレニド、ジフェニルホスフィンセレニド、フェニルホスフィンセレニド、トリシクロヘキシルホスフィンセレニド、シクロヘキシルホスフィンセレニド、1-オクタンセレノール、1-ドデカンセレノール、セレノフェノール、元素セレン、ビス(トリメチルシリル)セレニド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、セレン源はトリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド又はトリオクチルホスフィンセレニドである。
【0034】
[0034] 幾つかの実施形態では、接触させる少なくとも2つのシェル前駆体は硫黄源を含む。幾つかの実施形態では、硫黄源は、元素硫黄、オクタンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、トリブチルホスフィンスルフィド、シクロヘキシルイソチオシアネート、α-トルエンチオール、エチレントリチオカーボネート、アリルメルカプタン、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、硫黄源はオクタンチオールである。
【0035】
[0035] 本発明は、コアと少なくとも2つのシェルとを含む多層ナノ構造であって、少なくとも2つのシェルが異なるシェル材料を含み、少なくとも1つのシェルが約2~約10個の間の単層のシェル材料を含み、ナノ構造が約1.0~約8.0の間の正規化光学濃度を有する、多層ナノ構造も提供する。
【0036】
[0036] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は、ZnO、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdO、CdSe、CdS、CdTe、HgO、HgS、HgTe、BN、BP、BAs、BSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaSb、InN、InP、InAs、及びInSbからなる群から選択されるコアを含む。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は、ZnS、ZnSe、CdSe、CdS、及びInPからなる群から選択されるコアを含む。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造コアはInPを含む。
【0037】
[0037] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルはZnSを含む。
【0038】
[0038] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルはZnSeを含む。
【0039】
[0039] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルは約3~約8個の間の単層のシェル材料を含む。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルは約3~約5個の間の単層のシェル材料を含む。
【0040】
[0040] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は約1.5~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は約1.8~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。
【0041】
[0041] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルはZnSeを含み、少なくとも1つのシェルは約3~約5個の間の単層のシェル材料を含み、ナノ構造は約1.3~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。
【0042】
[0042] 本発明は、コアと少なくとも2つのシェルとを含む多層ナノ構造であって、少なくとも2つのシェルが異なるシェル材料を含み、少なくとも1つのシェルが約2~約10個の間の単層のシェル材料を含み、少なくとも1つのシェルが合金を含み、ナノ構造が約1.0~約8.0の間の正規化光学濃度を有する、多層ナノ構造も提供する。
【0043】
[0043] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造コアは、ZnO、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdO、CdSe、CdS、CdTe、HgO、HgS、HgTe、BN、BP、BAs、BSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaSb、InN、InP、InAs、及びInSbからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造コアは、ZnS、ZnSe、CdSe、CdS、及びInPからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造コアはInPを含む。
【0044】
[0044] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルはZnSを含む。
【0045】
[0045] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルはZnSeを含む。
【0046】
[0046] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルは約3~約8個の間の単層のシェル材料を含む。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルは約3~約5個の間の単層のシェル材料を含む。
【0047】
[0047] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルは、ZnS、GaN、ZnSe、AlP、CdS、GaP、ZnTe、AlAs、CdSe、AlSb、CdTe、GaAs、Sn、Ge、又はInP含む合金を含む。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルはZnTeを含む合金を含む。
【0048】
[0048] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は約1.5~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は約1.8~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。
【0049】
[0049] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造は少なくとも2つのシェルを含み、少なくとも1つのシェルはZnSeを含み、少なくとも1つのシェルは約3~約5個の間の単層のシェル材料を含み、少なくとも1つのシェルはZnTeの合金を含み、ナノ構造は約1.8~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。
【0050】
[0050] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、約1.0~約8.0の間の正規化光学濃度を有するナノ構造が得られる。
【0051】
[0051] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、少なくとも1つのシェルを含むナノ構造であって、少なくとも1つのシェルが約3~約10個の間の単層を含むナノ構造が得られる。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、少なくとも1つのシェルを含むナノ構造であって、少なくとも1つのシェルが約3~約8個の間の単層を含むナノ構造が得られる。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、少なくとも1つのシェルを含むナノ構造であって、少なくとも1つのシェルが約3~約5個の間の単層を含むナノ構造が得られる。
【0052】
[0052] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、約1.5~約8.0の間の正規化光学濃度を有するナノ構造が得られる。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、約1.8~約8.0の間の正規化光学濃度を有するナノ構造が得られる。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、約1.0~8.0の間の正規化光学濃度を有するナノ構造が得られる。
【0053】
[0053] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、少なくとも1つのシェルを有するナノ構造であって、少なくとも1つのシェルが約3~約10個の間の単層を含むナノ構造が得られる。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、少なくとも1つのシェルを有するナノ構造であって、少なくとも1つのシェルが約3~約8個の間の単層を含むナノ構造が得られる。幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、少なくとも1つのシェルを有するナノ構造であって、少なくとも1つのシェルが約3~約5個の間の単層を含むナノ構造が得られる。
【0054】
[0054] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つの追加成分に接触させることをさらに含む多層ナノ構造の製造方法。
【0055】
[0055] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つの追加成分は、ZnS、GaN、ZnSe、AlP、CdS、GaP、ZnTe、AlAs、CdSe、AlSb、CdTe、GaAs、Sn、Ge、及びInPからなる群から選択される。
【0056】
[0056] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つの追加成分はZnTeである。
【0057】
[0057] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、約1.5~約8.0の間の正規化光学濃度を有するナノ構造が得られる。
【0058】
[0058] 幾つかの実施形態では、多層ナノ構造の製造方法によって、約1.8~約8.0の間の正規化光学濃度を有するナノ構造が得られる。
【0059】
[0059] 本開示は、本明細書に記載の多層ナノ構造を含む成形物品も提供する。
【0060】
[0060] 幾つかの実施形態では、成形物品は発光ダイオードである。
【0061】
[0061] 幾つかの実施形態では、成形物品は、約6%~約20%の間の外部量子効率(EQE)を示す。
【0062】
[0062] 幾つかの実施形態では、成形物品は約8%~約20%の間のEQEを示す。
【0063】
[0063] 幾つかの実施形態では、成形物品は7ボルトにおいて約3000cd/m2~約6000cd/m2の間の輝度を有する。
【0064】
[0064] 幾つかの実施形態では、成形物品は7ボルトにおいて約3500cd/m2~約4500cd/m2の間の輝度を有する。
【0065】
[0065] 幾つかの実施形態では、成形物品は約10%~約50%の間の固体量子収率を有する。
【0066】
[0066] 幾つかの実施形態では、成形物品は約30%~約45%の間の固体量子収率を有する。
【0067】
[0067] 本開示は、ナノ構造成形物品であって:
(a)第1の障壁層と;
(b)第2の障壁層と;
(c)第1の障壁層と第2の障壁層との間のナノ構造層とを含み、ナノ構造が、コアと少なくとも2つのシェルとを含む多層ナノ構造であり、少なくとも1つのシェルが約2~約10個の間の単層のシェル材料を含み、ナノ構造が約1.0~約3.0の間の正規化光学濃度を有する、ナノ構造成形物品も提供する。
【0068】
[0068] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は正孔注入材料をさらに含む。
【0069】
[0069] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)を含む正孔注入材料をさらに含む。
【0070】
[0070] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は正孔輸送材料をさらに含む。
【0071】
[0071] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))]を含む正孔輸送材料をさらに含む。
【0072】
[0072] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は電子輸送材料をさらに含む。
【0073】
[0073] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は、ZnMgOを含む電子輸送材料をさらに含む。
【0074】
[0074] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は約6%~約20%の間のEQEを示す。
【0075】
[0075] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は約8%~約20%の間のEQEを示す。
【0076】
[0076] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は7ボルトにおいて約3000cd/m2~約6000cd/m2の間の輝度を有する。
【0077】
[0077] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品は7ボルトにおいて約3500cd/m2~約4500cd/m2の間の輝度を有する。
【0078】
[0078] 幾つかの実施形態では、ナノ構造成形物品はInPを含むコアを含み、1つのシェルはZnSeを含み、ZnSeシェルは約4.5個の単層のシェル材料を含み、1つのシェルはZnSを含み、ZnSシェルは約3個の単層のシェル材料を含む。
【0079】
[0079] 本開示は、ナノ構造成形物品であって:
(a)第1の障壁層と;
(b)第2の障壁層と;
(c)第1の障壁層と第2の障壁層との間のナノ構造層とを含み、ナノ構造がコアと少なくとも2つのシェルとを含む多層ナノ構造であり、少なくとも1つのシェルの厚さが0.7nm~3.5nmの間である、ナノ構造成形物品も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1】[0080]低温合成を用いて作製した1.3個の単層のZnSe及び4.5個の単層のZnSの目標シェル厚さを有する薄いシェルのInP量子ドットの透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。この薄いシェルのInP/ZnSe/ZnS量子ドットは3.2±0.4nmの平均粒径を有する。
【
図2】[0081]本発明の高温方法を用いて作製した3.5個の単層のZnSe及び4.5個の単層ZnSの目標シェル厚さを有する厚いシェルのInP量子ドットのTEM画像である。この厚いシェルのInP/ZnSe/ZnS量子ドットは5.85±0.99nm(計算では6.93nm)の平均粒径及び3.5nm~7.8nmの粒径範囲を有する。
【
図3】[0082]本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の単層のZnSe及び7.5個の単層のZnSの目標シェル厚さを有する厚いシェルのInP量子ドットのTEM画像である。この厚いシェルのInP/ZnSe/ZnS量子ドットは6.3±0.8nm(計算では7.5nm)の平均粒径を有する。
【
図4】[0083]低温合成を用いて作製した1.3個の層のZnSe及び4.5個の単層のZnSを有する薄いシェルInP量子ドットと、本発明の高温方法を用いて作製した3.5個の単層のZnSe及び4.5個の単層のZnSを有する厚いシェルのInP量子ドットとの吸光度スペクトルである。薄いシェルのInP/ZnSe/ZnS量子ドットと比較すると、厚いシェルの場合に低波長領域における吸収が大幅に増加している。
【
図5】[0084]低温合成を用いて作製した1.3個の単層のZnSe及び4.5個の単層のZnSを有する薄いシェルのInP量子ドットと、本発明の高温方法を用いて作製した3.5個の単層のZnSe及び4.5個の単層のZnSを有する厚いシェルのInP量子ドットとの経時による高流量青色光曝露下での加速寿命試験の結果を示すグラフである。グラフ中に示されるように、薄いシェルのInP量子ドットは、数百時間の予想寿命内に急激な低下を示し、次に減少が続く。逆に、厚いシェルの量子ドットは、それらの初期の明るさを数千時間維持し、劣化の開始は遅れている。
【
図6】[0085]トリオクチルホスフィンセレニド(TOPSe)がセレン源として使用される、本発明の高温方法を用いたInP/ZnSe/ZnSナノ粒子の合成方法を示す概略図である。
【
図7】[0086]トリ-n-ブチルホスフィンセレニド(TBPSe)がセレン源として使用される、本発明の高温方法を用いたInP/ZnSe/ZnSナノ粒子の合成方法を示す概略図である。
【
図8】[0087]300nm~650nmの波長における以下の量子ドットの吸収スペクトルである:(A)InPコア量子ドット;(B)低温方法を用いて作製した1.3個の単層のZnSe及び4.5個の単層のZnSを有するInPコア;(C)TOPSeをセレン源として使用し本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の単層のZnSeを有するInPコア;(D)TOPSeをセレン源として使用し本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の単層のZnSe及び2.5個の単層のZnSを有するInPコア;(E)TOPSeをセレン源として使用し本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の層のZnSe及び4.5個の単層のZnSを有するInPコア;(F)TOPSeをセレン源として使用し本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の単層のZnSe及び7.5個の単層のZnSを有するInPコア。これらのスペクトルに示されるように、低温方法を用いて作製した薄いシェルと比較すると、本発明の高温方法を用いて作製した厚いシェルを有するInPコア量子ドットは360nm未満の波長で吸光度が増加している。
【
図9】[0088]400nm~575nmの波長における以下の量子ドットの吸収スペクトルである:(A)InPコア量子ドット;(B)低温方法を用いて作製した1.3個の層のZnSe及び4.5個の層のZnSを有するInPコア;(C)TOPSeをセレン源として使用し本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の層のZnSeを有するInPコア;(D)TOPSeをセレン源として使用し本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の層のZnSe及び2.5個の層のZnSを有するInPコア;(E)TOPSeをセレン源として使用し本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の層のZnSe及び4.5個の層のZnSを有するInPコア;(F)TOPSeをセレン源として使用し本発明の高温方法を用いて作製した1.5個の層のZnSe及び7.5個の層のZnSを有するInPコア。これらのスペクトルに示されるように、ZnSeの層が増加するとレッドシフトが生じ、ZnSの層が増加するとブルーシフトが生じる。
【
図10】[0089](A)2.5個の単層のZnSe及び2.0個の単層のZnS;(B)3.5個の単層のZnSe及び2.5個の単層のZnS;(C)4.0個の単層のZnSe及び2.5個の単層のZnS;並びに(D)4.5個の単層のZnSe及び2.0個の単層のZnSを有する、400nm~575nmの波長における緑色InPコアを含む量子ドットの吸収スペクトルである。比較のために青色LEDのスペクトルが示されている。
【
図11】[0090](A)3.5個の単層のZnSe
0.975Te
0.025及び2.5個の単層のZnS;並びに(B)3.5個の単層又はZnSe及び2.5個の単層のZnSの目標シェル厚さを有する、400nm~575nmの波長における緑色InPコアを含む量子ドットの吸収スペクトルである。比較のために青色LEDのスペクトルが示されている。
【
図12】[0091]量子ドット発光デバイス中に使用したInP量子ドット上のZnS及びZnSeのシェルの単層の数の関数としての最大外部量子効率(EQE)を示すグラフである。QD-1は、2.5個の単層のZnSeシェル及び4.5個の単層のZnSシェルを含むInP量子ドットシェルを使用して作製した量子ドット発光デバイスである。QD-2は、ZnSeシェルの4.5個の単層及び3個の単層のZnSシェルを含むInP量子ドットを使用して作製した量子ドット発光デバイスである。
【
図13】[0092]量子ドット発光デバイス中に使用したInP量子ドット上のZnS及びZnSeのシェルの単層の数の関数としての膜の量子収率を示すグラフである。QD-1は、2.5個の単層のZnSeシェル及び4.5個の単層のZnSシェルを含むInP量子ドットシェルを使用して作製した量子ドット発光デバイスである。QD-2は、4.5個の単層のZnSeシェル及び3個の単層のZnSシェルを含むInP量子ドットを使用して作製した量子ドット発光デバイスである。
【発明を実施するための形態】
【0081】
定義
[0093] 他に定義されなければ、本明細書において使用されるすべての技術用語及び化学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。以下の定義は、当技術分野における定義を補うものであり、本出願を対象としており、あらゆる関連する場合又は関連しない場合、例えばあらゆる共同所有される特許又は出願に帰属するものではない。本明細書に記載のものと類似又は同等のあらゆる方法及び材料を本発明の試験の実施に使用できるが、好ましい材料及び方法は本明細書に記載される。したがって、本明細書において使用される用語は、特定の実施形態のみを説明することを目的としており、限定を意図したものではない。
【0082】
[0094] 本明細書及び添付の請求項において使用される場合、文脈が明確に他のことを示すのでなければ、単数形の“a”、“an”、及び“the”は、複数の指示対象を含んでいる。したがって、例えば、「1つのナノ構造」(a nanostructure)への言及は、複数のそのようなナノ構造を含む、などとなる。
【0083】
[0095] 本明細書において使用される場合、「約」という用語は、特定の量の値が、その値の±10%、又は任意選択的にその値の±5%、又は幾つかの実施形態では、そのように記載される値の±1%だけ変動することを示している。例えば、「約100nm」は、両端の値を含めて90nm~110nmのサイズの範囲を含む。
【0084】
[0096] 「ナノ構造」は、500nm未満の寸法の少なくとも1つの領域又は特徴的寸法を有する構造である。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。典型的には、この領域又は特徴的寸法は、構造の最短軸に沿って存在する。このような構造の例としては、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ構造、ナノテトラポッド、トリポッド、バイポッド、ナノ結晶、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子などが挙げられる。ナノ構造は、例えば、実質的に結晶性、実質的に単結晶性、多結晶性、非晶質、又はそれらの組み合わせであってよい。幾つかの実施形態では、ナノ構造の3つの寸法のそれぞれは、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。
【0085】
[0097] ナノ構造に関して使用される場合、「ヘテロ構造」という用語は、少なくとも2つの異なる及び/又は区別可能な材料の種類を特徴とするナノ構造を意味する。典型的には、ナノ構造の1つの領域が第1の材料の種類を含み、一方、ナノ構造の第2の領域が第2の材料の種類を含む。ある実施形態では、ナノ構造は、第1の材料のコアと、第2(又は第3など)の材料の少なくとも1つのシェルとを含み、異なる材料の種類が、例えばナノワイヤの長軸、分岐ナノワイヤのアームの長軸、又はナノ結晶の中央の周囲に半径方向に分布する。シェルは、隣接する材料を完全である必要はないが覆うことができることでシェルと見なすことができ、又はナノ構造に関してはヘテロ構造と見なすことができ;例えば、ある材料のコアが第2の材料の小さな島で覆われることを特徴とするナノ結晶はヘテロ構造である。別の実施形態では、異なる材料の種類は、ナノ構造中の異なる領域に分布し;例えば、ナノワイヤの主(長)軸に沿って、又は分岐ナノワイヤのアームの長軸に沿って分布する。ヘテロ構造中の異なる領域は、完全に異なる材料を含むことができ、又は異なる領域は、異なるドーパント若しくは異なる濃度の同じドーパントを有するベース材料(例えばシリコン)を含むことができる。
【0086】
[0098] 本明細書において使用される場合、ナノ構造の「直径」は、ナノ構造の第1の軸に対して垂直の断面の直径を意味し、ここで第1の軸は、第2及第3の軸(第2及び第3の軸は、長さが互いにほぼ同じの2つの軸である)に対して長さの差が最大となる。第1の軸は必ずしもナノ構造の最長軸ではなく;例えば、ディスク型のナノ構造の場合、断面は、ディスクの短い長手方向軸に対して垂直の実質的に円形の断面である。断面が円形ではない場合、直径はその断面の主軸と短軸との平均である。ナノワイヤなどの細長い、すなわち高アスペクト比のナノ構造の場合、直径は、ナノワイヤの最長軸に対して垂直の断面にわたって測定される。球形のナノ構造の場合、直径は、球の中心を通って一方の側から他方の側まで測定される。
【0087】
[0099] ナノ構造に関して使用される場合、「結晶性」又は「実質的に結晶性」という用語は、ナノ構造が、典型的にはその構造の1つ以上の寸法にわたって長距離秩序を示すことを意味する。単結晶の秩序は結晶の境界を超えて延在することができないので、「長距離秩序」という用語は、特定のナノ構造の絶対サイズによって決定されることを当業者は理解されよう。この場合、「長距離秩序」は、ナノ構造の寸法の少なくとも大部分にわたる実質的な秩序を意味する。幾つかの場合では、ナノ構造は、酸化物若しくはその他のコーティングを有することができ、又はコア及び少なくとも1つのシェルから構成されることができる。このような場合では、酸化物、シェル、又はその他のコーティングは、このような秩序を示してもよいが、このような秩序を示す必要はない(例えば非晶質、多結晶、又はその他であってよい)ことは理解されよう。このような場合では、「結晶性」、「実質的に結晶性」、「実質的に単結晶性」、又は「単結晶性」という語句は、ナノ構造の中心コアを意味する(コーティング層又はシェルは除外される)。構造が実質的な長距離秩序(例えば、ナノ構造又はそのコアの少なくとも1つの軸の長さの少なくとも約80%にわたる秩序)を示すのであれば、本明細書において使用される場合、「結晶性」又は「実質的に結晶性」という用語は、種々の欠陥、積層欠陥、原子置換などを含む構造も含むことが意図される。さらに、コアとナノ構造の外部との間、又はコアと隣接シェルとの間、又はシェルと第2の隣接シェルとの間の界面は、非結晶領域を含むことができ、さらには非晶質であってもよいことを理解されよう。このことは、ナノ構造が本明細書における定義の結晶性又は実質的に結晶性であることを妨げるものではない。
【0088】
[0100] ナノ構造に関して使用される場合、「単結晶性」という用語は、ナノ構造が実質的に結晶性であり、実質的に単結晶を含むことを示す。コアと1つ以上のシェルとを含むナノ構造ヘテロ構造に関して使用される場合、「単結晶性」は、コアが実質的に結晶性であり、実質的に単結晶を含むことを示す。
【0089】
[0101] 「ナノ結晶」は、実質的に単結晶性のナノ構造である。したがって、ナノ結晶は、約500nm未満の寸法の少なくとも1つの領域又は特性寸法を有する。幾つかの実施形態では、ナノ結晶は、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。「ナノ結晶」という用語は、種々の欠陥、積層欠陥、原子置換などを含む実質的に単結晶性のナノ構造、並びにそのような欠陥、積層欠陥、及び原子置換を有さない実質的に単結晶性のナノ構造を含むことが意図される。コアと1つ以上のシェルとを含むナノ結晶ヘテロ構造の場合、ナノ結晶のコアは典型的には実質的に単結晶性であるが、シェルは単結晶性である必要はない。幾つかの実施形態では、ナノ結晶の3つの寸法のそれぞれは、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。
【0090】
[0102] 「量子ドット」(又は「ドット」)という用語は、量子閉じ込め又は励起子閉じ込めを示すナノ結晶を意味する。量子ドットは材料特性が実質的に均一であってよいし、又はある実施形態では、不均一であってよく、例えばコア及び少なくとも1つのシェルを含むことができる。量子ドットの光学的性質は、それらの粒度、化学組成、及び/又は表面組成の影響を受けることがあり、当技術分野において利用可能な適切な光学的試験によって調べることができる。ナノ結晶のサイズを、例えば約1nm~約15nmの間の範囲内に調節できると、全光学スペクトルの光電子放出範囲が可能となり、演色の自由度を高めることができる。
【0091】
[0103] 「配位子」は、例えばナノ構造の表面との共有結合性相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用、又はその他の分子相互作用によって、ナノ構造の1つ以上の面と(弱く又は強くのいずれかで)相互作用可能な分子である。
【0092】
[0104] 「フォトルミネッセンス量子収率」は、例えばナノ構造又はナノ構造の集団による、放出されるフォトンの吸収されるフォトンに対する比である。当技術分野において周知のように、量子収率は、典型的には、量子収率値が既知の十分に特性決定された標準試料を用いる比較方法によって求められる。
【0093】
[0105] 本明細書において使用される場合、「単層」という用語は、関連の格子面間の最短距離として、シェル材料のバルク結晶構造から誘導されるシェル厚さの測定単位である。例として、立方格子構造の場合、1つの単層の厚さは、[111]方向の隣接格子面間の距離として求められる。例として、立方晶ZnSeの1つの単層は0.328nmに相当し、立方晶ZnSの1つの単層は0.31nmの厚さに相当する。合金材料の単層の厚さは、ベガードの法則によって合金組成から求めることができる。
【0094】
[0106] 本明細書において使用される場合、「シェル」という用語は、コアの上、又は以前に堆積された同じ若しくは異なる組成のシェルの上に堆積される材料であって、シェル材料の1回の堆積行為によって得られる材料を意味する。厳密なシェル厚さは、材料並びに前駆体投入量及び変換率によって左右され、ナノメートル又は単層数の単位で報告することができる。本明細書において使用される場合、「目標シェル厚さ」は、必要な前駆体量の計算のために使用が意図されるシェル厚さを意味する。本明細書において使用される場合、「実際のシェル厚さ」は、合成後にシェル材料の実際に堆積された量を意味し、当技術分野において周知の方法によって測定することができる。例として、実際のシェル厚さは、シェル合成の前後のナノ結晶のTEM画像から求められる粒径を比較することによって測定することができる。
【0095】
[0107] 本明細書において使用される場合、「半値全幅」(FWHM)という用語は、量子ドットのサイズ分布の尺度の1つである。量子ドットの発光スペクトルは一般にガウス曲線の形状を有する。ガウス曲線の幅は、FWHMとして定義され、これによって粒子のサイズ分布の見解が得られる。より小さなFWHMは、より狭い量子ドットナノ結晶サ
イズ分布に対応する。FWHMは発光波長極大にも依存する。
【0096】
[0108] 本明細書において使用される場合、「外部量子効率」(EQE)という用語は、発光ダイオード(LED)から放出されるフォトン数の、デバイスを通過する電子数に対する比である。EQEによって、いかに効率的に発光ダイオードが電子をフォトンに変換し、それらを放出できるかが評価される。EQEは式:
EQE=[注入効率]×[内部量子収率]×[抽出効率]
を用いて測定することができ、
式中:
注入効率=デバイスを通過して活性領域中に注入される電子の比率であり;
内部量子収率=放射性であり、したがってフォトンを生成する、活性領域中の全電子-正孔再結合の比率であり;
抽出効率=活性領域中で生成されデバイスから放出されるフォトンの比率である。
【0097】
[0109] 本明細書において使用される場合、「アルキル」は、指定の炭素原子数を有する直鎖又は分岐の飽和脂肪族基を意味する。幾つかの実施形態では、アルキルは、C1-2アルキル、C1-3アルキル、C1-4アルキル、C1-5アルキル、C1-6アルキル、C1-7アルキル、C1-8アルキル、C1-9アルキル、C1-10アルキル、C1-12アルキル、C1-14アルキル、C1-16アルキル、C1-18アルキル、C1-20アルキル、C8-20アルキル、C12-20アルキル、C14-20アルキル、C16-20アルキル、又はC18-20アルキルである。例えば、C1-6アルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態では、アルキルは、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、又はイコサニルである。
【0098】
[0110] 別に明記されるのでなければ、列挙される範囲は両端の値を含む。
【0099】
[0111] 種々のさらなる用語が、本明細書において定義されるか、又は別の方法で特徴付けられる。
【0100】
コアの製造
[0112] 種々のナノ構造のコロイド合成方法が当技術分野において周知である。このような方法としては、例えば結果として得られるナノ構造のサイズ及び/又は形状の分布を制御するためのナノ構造の成長を制御する技術が挙げられる。
【0101】
[0113] 典型的なコロイド合成では、半導体ナノ構造は、熱分解させる前駆体を熱溶液(例えば、高温の溶媒及び/又は界面活性剤)中に迅速に注入することによって形成される。複数の前駆体を同時に、又は逐次的に注入することができる。これらの前駆体は急速に反応して核を形成する。典型的には注入/核形成温度よりも低い成長温度において核にモノマーを添加することによって、ナノ構造の成長が起こる。
【0102】
[0114] 配位子は、ナノ構造の表面と相互作用する。成長温度において、ナノ構造表面による配位子の急速な吸着及び脱着が起こることで、ナノ構造の原子の添加及び/又は除去を行うことができ、同時に、成長するナノ構造の凝集が抑制される。一般に、ナノ構造表面に弱く配位する配位子によって、ナノ構造の迅速な成長が可能となり、一方、ナノ構造表面により強く結合する配位子では、ナノ構造の成長がより遅くなる。配位子は、1つ(又はそれを超える)前駆体と相互作用して、ナノ構造の成長を減速させることもある。
【0103】
[0115] 1つの配位子の存在下でのナノ構造の成長では、典型的には球形のナノ構造が得られる。しかし、2つ以上の配位子の混合物を使用すると、例えば2つの(又はそれを超える)配位子が、成長するナノ構造の別々の結晶面に別々に吸着する場合に、非球形のナノ構造を形成できるように、成長を制御することができる。
【0104】
[0116] このように多数の要因が、ナノ構造の成長に影響を与えることが知られており、これらを独立して、又は組み合わせて操作することによって、結果として得られるナノ構造のサイズ及び/又は形状の分布を制御することができる。このようなものとしては、例えば、温度(核形成及び/又は成長)、前駆体の組成、時間に依存する前駆体濃度、互いの前駆体の比率、界面活性剤の組成、界面活性剤の数、並びに互いの界面活性剤の比率及び/又は界面活性剤と前駆体との比率が挙げられる。
【0105】
[0117] II-VI族ナノ構造の合成は、米国特許第6,225,198号、米国特許第6,322,901号、米国特許第6,207,229号、米国特許第6,607,829号、米国特許第7,060,243号、米国特許第7,374,824号、米国特許第6,861,155号、米国特許第7,125,605号、米国特許第7,566,476号、米国特許第8,158,193、及び米国特許第8,101,234号、並びに米国特許出願公開第2011/0262752号、及び米国特許出願公開第2011/0263062号に記載されている。幾つかの実施形態では、コアは、ZnO、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdO、CdSe、CdS、CdTe、HgO、HgSe、HgS、及びHgTeからなる群から選択されるII-VI族ナノ結晶である。幾つかの実施形態では、コアは、ZnSe、ZnS、CdSe、及びCdSからなる群から選択されるナノ結晶である。
【0106】
[0118] CdSe及びCdSの量子ドットなどのII-VI族ナノ構造は望ましいルミネッセンス挙動を示すことができるが、カドミウムの毒性などの問題のために、そのようなナノ構造を使用できる用途は限定される。したがって、好都合なルミネッセンス特性を示す毒性のより低い代替物が非常に望ましい。一般に、III-V族ナノ構造、特にInP系ナノ構造は、それらの発光範囲が適合しているために、カドミウム系材料の最もよく知られた代替品である。
【0107】
[0119] 幾つかの実施形態では、ナノ構造はカドミウムフリーである。本明細書において使用される場合、「カドミウムフリー」という用語は、ナノ構造が100重量ppm未満のカドミウムを含むことが意図される。有害物質使用制限(Restriction of Hazardous Substances)(RoHS)遵守の規定では、均一な前駆体原材料中のカドミウムが0.01重量%(100重量ppm)以下となるべきことが要求される。本発明のCdフリーナノ構造中のカドミウムレベルは、前駆体材料中の微量金属濃度によって制限される。Cdフリーナノ構造の前駆体材料中の微量金属(カドミウムを含む)濃度は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)の分析によって測定することができ、十億分率(ppb)レベルで存在する。幾つかの実施形態では、「カドミウムフリー」であるナノ構造は、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、又は約1ppm未満のカドミウムを含む。
【0108】
[0120] 幾つかの実施形態では、コアはIII-V族ナノ構造である。幾つかの実施形態では、コアは、BN、BP、BAs、BSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、及びInSbからなる群から選択されるIII-V族ナノ結晶である。幾つかの実施形態では、コアはInPナノ結晶である。
【0109】
[0121] III-V族ナノ構造の合成は、米国特許第5,505,928号、米国特許第6,306,736号、米国特許第6,576,291号、米国特許第6,788,453号、米国特許第6,821,337号、米国特許第7,138,098号、米国特許第7,557,028号、米国特許第8,062,967号、米国特許第7,645,397号、及び米国特許第8,282,412号、並びに米国特許出願公開第2015/236195号に記載されている。III-V族ナノ構造の合成は、Wells, R.L., et al.,“The use of tris(trimethylsilyl)arsine to prepare gallium arsenide and indium arsenide,”Chem. Mater. 1:4-6 (1989)、及びGuzelian, A.A., et al.,“Colloidal chemical synthesis and characterization of InAs nanocrystal quantum dots,”Appl. Phys. Lett. 69: 1432-1434 (1996)にも記載されている。
【0110】
[0122] InP系ナノ構造の合成は、例えば、Xie, R., et al.,“Colloidal InP nanocrystals as efficient emitters covering blue to near-infrared,”J. Am. Chem. Soc. 129:15432-15433 (2007);Micic, O.I., et al.,“Core-shell quantum dots of lattice-matched ZnCdSe2 shells on InP cores: Experiment and theory,”J. Phys. Chem. B 104:12149-12156 (2000);Liu, Z., et al.,“Coreduction colloidal synthesis of III-V nanocrystals: The case of InP,”Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 47:3540-3542 (2008);Li, L. et al.,“Economic synthesis of high quality InP nanocrystals using calcium phosphide as the phosphorus precursor,”Chem. Mater. 20:2621-2623 (2008);D. Battaglia and X. Peng,“Formation of high quality InP and InAs nanocrystals in a noncoordinating solvent,”Nano Letters 2:1027-1030 (2002);Kim, S., et al.,“Highly luminescent InP/GaP/ZnS nanocrystals and their application to white light-emitting diodes,”J. Am. Chem. Soc. 134:3804-3809 (2012);Nann, T., et al.,“Water splitting by visible light: A nanophotocathode for hydrogen production,”Angew. Chem. Int. Ed. 49:1574-1577 (2010);Borchert, H., et al.,“Investigation of ZnS passivated InP nanocrystals by XPS,”Nano Letters 2:151-154 (2002);L. Li and P. Reiss,“One-pot synthesis of highly luminescent InP/ZnS nanocrystals without precursor injection,”J. Am. Chem. Soc. 130:11588-11589 (2008);Hussain, S., et al.“One-pot fabrication of high-quality InP/ZnS (core/shell) quantum dots and their application to cellular imaging,”Chemphyschem. 10:1466-1470 (2009);Xu, S., et al.,“Rapid synthesis of high-quality InP nanocrystals,”J. Am. Chem. Soc. 128:1054-1055 (2006);Micic, O.I., et al.,“Size-dependent spectroscopy of InP quantum dots,”J. Phys. Chem. B 101:4904-4912 (1997);Haubold, S., et al.,“Strongly luminescent InP/ZnS core-shell nanoparticles,”Chemphyschem. 5:331-334 (2001);CrosGagneux, A., et al.,“Surface chemistry of InP quantum dots: A comprehensive study,”J. Am. Chem. Soc. 132:18147-18157 (2010);Micic, O.I., et al.,“Synthesis and characterization of InP, GaP, and GalnP2 quantum dots,”J. Phys. Chem. 99:7754-7759 (1995);Guzelian, A.A., et al.,“Synthesis of size-selected, surface-passivated InP nanocrystals,”J. Phys. Chem. 100:7212-7219 (1996);Lucey, D.W., et al.,“Monodispersed InP quantum dots prepared by colloidal chemistry in a non-coordinating solvent,”Chem. Mater. 17:3754-3762 (2005);Lim, J., et al.,“InP@ZnSeS, core@composition gradient shell quantum dots with enhanced stability,”Chem. Mater. 23:4459-4463 (2011);and Zan, F., et al.,“Experimental studies on blinking behavior of single InP/ZnS quantum dots: Effects of synthetic conditions and UV irradiation,”J. Phys. Chem. C 116:394-3950 (2012)に記載されている。しかし、このような努力による高い量子収率のInPナノ構造の製造における成功はごく限定的であった。
【0111】
[0123] 幾つかの実施形態では、コアはドープされる。幾つかの実施形態では、ナノ結晶コアのドーパントは、1つ以上の遷移金属などの金属を含む。幾つかの実施形態では、ドーパントは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遷移金属である。幾つかの実施形態では、ドーパントは非金属を含む。幾つかの実施形態では、ドーパントは、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdS、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、CuInS2、CuInSe2、AlN、AlP、AlAs、GaN、GaP、又はGaAsである。
【0112】
[0124] 幾つかの実施形態では、コアは、シェルを堆積する前に精製される。幾つかの実施形態では、コア溶液から沈殿物を除去するために、コアの濾過が行われる。
【0113】
[0125] 幾つかの実施形態では、シェルを堆積する前に、コアの酸エッチングステップが行われる。
【0114】
[0126] 幾つかの実施形態では、コアの直径は、量子閉じ込めを用いて決定される。量子ドットなどのゼロ次元のナノ微結晶における量子閉じ込めは、微結晶境界内の電子の空間的閉じ込めによって生じる。材料の直径が波動関数のドブロイ波長と同じ大きさになると、量子閉じ込めを観察することができる。ナノ粒子の電子的及び光学的性質は、バルク材料のそれらの性質から実質的に逸脱している。閉じ込め寸法が粒子の波長よりも大きい場合は、粒子は自由であるかのように振る舞う。この状態の間、バンドギャップは、連続エネルギー状態のため、元のエネルギーのままとなる。しかし、閉じ込め寸法が短くなり、ある限度、典型的にはナノスケールに到達すると、エネルギースペクトルが離散的になる。結果として、バンドギャップはサイズ依存性になる。
【0115】
シェルの作製
[0127] 幾つかの実施形態では、本発明のナノ構造は、コア及び少なくとも1つのシェルを含む。幾つかの実施形態では、本発明のナノ構造は、コア及び少なくとも2つのシェルを含む。シェルは、例えば、ナノ構造の量子収率及び/又は安定性を高めることができる。幾つかの実施形態では、コアとシェルとは異なる材料を含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、異なるシェル材料の複数のシェルを含む。
【0116】
[0128] 幾つかの実施形態では、II族及びVI族の元素の混合物を含むシェルは、コア又はコア/シェル構造の上に堆積される。幾つかの実施形態では、シェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源からの少なくとも2つの混合物によって堆積される。幾つかの実施形態では、シェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源からの2つの混合物によって堆積される。幾つかの実施形態では、シェルは、亜鉛源、セレン源、硫黄源、テルル源、及びカドミウム源からの3つの混合物によって堆積される。幾つかの実施形態では、シェルは、亜鉛及び硫黄;亜鉛及びセレン;亜鉛、硫黄、及びセレン;亜鉛及びテルル;亜鉛、テルル、及び硫黄;亜鉛、テルル、及びセレン;亜鉛、カドミウム、及び硫黄;亜鉛、カドミウム、及びセレン;カドミウム及び硫黄;カドミウム及びセレン;カドミウム、セレン、及び硫黄;カドミウム、亜鉛、及び硫黄;カドミウム、亜鉛、及びセレン;又はカドミウム、亜鉛、硫黄、及びセレンから構成される。
【0117】
[0129] 幾つかの実施形態では、シェルは、1つを超える単層のシェル材料を含む。この単層の数は、すべてのナノ構造の平均であり;したがって、シェル中の単層の数は分数になりうる。幾つかの実施形態では、シェル中の単層の数は、0.25~10の間、0.25~8の間、0.25~7の間、0.25~6の間、0.25~5の間、0.25~4の間、0.25~3の間、0.25~2の間、2~10の間、2~8の間、2~7の間、2~6の間、2~5の間、2~4の間、2~3の間、3~10の間、3~8の間、3~7の間、3~6の間、3~5の間、3~4の間、4~10の間、4~8の間、4~7の間、4~6の間、4~5の間、5~10の間、5~8の間、5~7の間、5~6の間、6~10の間、6~8の間、6~7の間、7~10の間、7~8の間、又は8~10の間である。幾つかの実施形態では、シェルは3~5個の間の単層を含む。
【0118】
[0130] 幾つかの実施形態では、シェル中の単層の数は0.25~12の間である。幾つかの実施形態では、シェル中の単層の数は、0.25~12の間、0.25~10の間、0.25~8の間、0.25~7の間、0.25~6の間、0.25~5の間、0.25~4の間、0.25~3の間、又は0.25~2の間である。
【0119】
[0131] シェルの厚さは、供給する前駆体の量を変化させることによって制御できる。特定のシェル厚さの場合、成長反応が実質的に完了したときに、あらかじめ決定された厚さのシェルが得られる量で、任意選択的に少なくとも1つの前駆体が供給される。2つ以上の異なる前駆体が供給される場合、それぞれの前駆体の量を制限することができ、又は1つの前駆体を制限された量で供給することができ、他の前駆体は過剰に供給される。
【0120】
[0132] 各シェルの厚さは、当業者に周知の技術を用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、各シェルの厚さは、各シェルを加える前後のナノ構造の平均直径を比較することによって求められる。幾つかの実施形態では、各シェルを加える前後のナノ構造の平均直径はTEMによって求められる。幾つかの実施形態では、各シェルは、0.05nm~3.5nmの間、0.05nm~2nmの間、0.05nm~0.9nmの間、0.05nm~0.7nmの間、0.05nm~0.5nmの間、0.05nm~0.3nmの間、0.05nm~0.1nmの間、0.1nm~3.5nmの間、0.1nm~2nmの間、0.1nm~0.9nmの間、0.1nm~0.7nmの間、0.1nm~0.5nmの間、0.1nm~0.3nmの間、0.3nm~3.5nmの間、0.3nm~2nmの間、0.3nm~0.9nmの間、0.3nm~0.7nmの間、0.3nm~0.5nmの間、0.5nm~3.5nmの間、0.5nm~2nmの間、0.5nm~0.9nmの間、0.5nm~0.7nmの間、0.7nm~3.5nmの間、0.7nm~2nmの間、0.7nm~0.9nmの間、0.9nm~3.5nmの間、0.9nm~2nmの間、又は2nm~3.5nmの間の厚さを有する。
【0121】
[0133] 幾つかの実施形態では、各シェルは、0.05nm~4.5nmの間、0.1nm~4.5nmの間、0.3nm~4.5nmの間、0.5nm~4.5nmの間、0.7nm~4.5nmの間、0.9nm~4.5nmの間、2nm~4.5nmの間、又は3.5nm~4.5nmの間の厚さを有する。
【0122】
[0134] 幾つかの実施形態では、各シェルは、少なくとも1つのナノ構造配位子の存在下で合成される。配位子によって、例えば、溶媒又はポリマーに対するナノ構造の混和性を向上させることができ(それによってナノ構造が互いに凝集しないように組成物全体にナノ構造が分散することができ)、ナノ構造の量子収率を増加させることができ、及び/又はナノ構造のルミネッセンスを維持することができる(例えば、ナノ構造がマトリックス中に組み込まれたとき)。幾つかの実施形態では、コアの合成のための配位子と、シェルの合成のための配位子とは同じである。幾つかの実施形態では、コアの合成のための配位子とシェルの合成のための配位子とは異なる。合成後、ナノ構造の表面上の任意の配位子は、他の望ましい性質を有する別の配位子と交換することができる。配位子の例は、米国特許第7,572,395号、米国特許第8,143,703号、米国特許第8,425,803号、米国特許第8,563,133号、米国特許第8,916,064号、米国特許第9,005,480号、米国特許第9,139,770号、及び米国特許第9,169,435号、並びに米国特許出願公開第2008/0118755号に記載されている。
【0123】
[0135] シェルの合成に適切な配位子は当業者には周知である。幾つかの実施形態では、配位子は、ラウリン酸、カプロン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸からなる群から選択される脂肪酸である。幾つかの実施形態では、配位子は、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリオクチルホスフィン(TOP)、ジフェニルホスフィン(DPP)、トリフェニルホスフィンオキシド、及びトリブチルホスフィンオキシドから選択される有機ホスフィン又は有機ホスフィンオキシドである。幾つかの実施形態では、配位子は、ドデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクチルアミン、及びオクタデシルアミンからなる群から選択されるアミンである。幾つかの実施形態では、配位子は、トリブチルホスフィン、オレイン酸、又はオレイン酸亜鉛である。
【0124】
[0136] 幾つかの実施形態では、各シェルは、配位子の混合物の存在下で形成される。幾つかの実施形態では、各シェルは、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの異なる配位子を含む混合物の存在下で形成される。幾つかの実施形態では、各シェルは、3つの異なる配位子を含む混合物の存在下で形成される。幾つかの実施形態では、配位子の混合物は、トリブチルホスフィン、オレイン酸、及びオレイン酸亜鉛を含む。
【0125】
[0137] 幾つかの実施形態では、各シェルは、溶媒の存在下で形成される。幾つかの実施形態では、溶媒は、1-オクタデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、エイコサン、オクタデカン、ヘキサデカン、テトラデカン、スクアレン、スクアラン、トリオクチルホスフィンオキシド、及びジオクチルエーテルからなる群から選択される。幾つかの実施形態では、溶媒は1-オクタデセンである。
【0126】
[0138] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを、20℃~310℃の間、20℃~280℃の間、20℃~250℃の間、20℃~200℃の間、20℃~150℃の間、20℃~100℃の間、20℃~50℃の間、50℃~310℃の間、50℃~280℃の間、50℃~250℃の間、50℃~200℃の間、50℃~150℃の間、50℃~100℃の間、100℃~310℃の間、100℃~280℃の間、100℃~250℃の間、100℃~200℃の間、100℃~150℃の間、150℃~310℃の間、150℃~280℃の間、150℃~250℃の間、150℃~200℃の間、200℃~310℃の間、200℃~280℃の間、200℃~250℃の間、250℃~310℃の間、250℃~280℃の間、又は280℃~310℃の間の添加温度で接触させる。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを20℃~100℃の間の添加温度で接触させる。
【0127】
[0139] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、その反応混合物の温度は、200℃~310℃の間、200℃~280℃の間、200℃~250℃の間、200℃~220℃の間、220℃~310℃の間、220℃~280℃の間、220℃~250℃の間、250℃~310℃の間、250℃~280℃の間、又は280℃~310℃の間の高温に上昇する。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、その反応混合物の温度は250℃~310℃の間に上昇する。
【0128】
[0140] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、その温度が上記高温に到達する時間は、2~240分の間、2~200分の間、2~100分の間、2~60分の間、2~40分の間、5~240分の間、5~200分の間、5~100分の間、5~60分の間、5~40分の間、10~240分の間、10~200分の間、10~100分の間、10~60分の間、10~40分の間、40~240分の間、40~200分の間、40~100分の間、40~60分の間、60~240分の間、60~200分の間、60~100分の間、100~240分の間、100~200分の間、又は200~240分の間である。
【0129】
[0141] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、反応混合物の温度は、2~240分の間、2~200分の間、2~100分の間、2~60分の間、2~40分の間、5~240分の間、5~200分の間、5~100分の間、5~60分の間、5~40分の間、10~240分の間、10~200分の間、10~100分の間、10~60分の間、10~40分の間、40~240分の間、40~200分の間、40~100分の間、40~60分の間、60~240分の間、60~200分の間、60~100分の間、100~240分の間、100~200分の間、又は200~240分の間高温に維持される。幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルとシェル前駆体とを接触させた後、反応混合物の温度は30~120分の間高温に維持される。
【0130】
[0142] 幾つかの実施形態では、反応混合物に加えられ、続いて高温で維持される、シェル材料前駆体のさらなる添加によって、さらなるシェルが形成される。典型的には、前のシェルの反応が実質的に完了した後(例えば、前の前駆体の少なくとも1つが、なくなったとき、若しくは反応から除去されたとき、又はさらなる成長が検出できないとき)に、さらなるシェル前駆体が供給される。前駆体のさらなる添加によって、さらなるシェルが形成される。
【0131】
[0143] 幾つかの実施形態では、さらなるシェルを得るためのさらなるシェル材料前駆体を加える前に、ナノ構造が冷却される。幾つかの実施形態では、さらなるシェルを得るためのシェル材料前駆体を加える前に、ナノ構造が高温で維持される。
【0132】
[0144] シェルの十分な層が加えられてナノ構造が所望の厚さ及び直径に到達した後、ナノ構造を冷却することができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は室温まで冷却される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造を含む反応混合物を希釈するために有機溶媒が加えられる。
【0133】
[0145] 幾つかの実施形態では、反応混合物を希釈するために使用される有機溶媒は、エタノール、ヘキサン、ペンタン、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、又はN-メチルピロリジノンである。幾つかの実施形態では、有機溶媒はトルエンである。
【0134】
[0146] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は単離される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、有機溶媒を用いる沈殿によって単離される。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、エタノールで凝集させることによって単離される。
【0135】
[0147] 単層の数によって、コア/シェルナノ構造のサイズが決定される。コア/シェルナノ構造のサイズは、当業者に周知の技術を用いて求めることができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のサイズはTEMを用いて求められる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、1nm~15nmの間、1nm~10nmの間、1nm~9nmの間、1nm~8nmの間、1nm~7nmの間、1nm~6nmの間、1nm~5nmの間、5nm~15nmの間、5nm~10nmの間、5nm~9nmの間、5nm~8nmの間、5nm~7nmの間、5nm~6nmの間、6nm~15nmの間、6nm~10nmの間、6nm~9nmの間、6nm~8nmの間、6nm~7nmの間、7nm~15nmの間、7nm~10nmの間、7nm~9nmの間、7nm~8nmの間、8nm~15nmの間、8nm~10nmの間、8nm~9nmの間、9nm~15nmの間、9nm~10nmの間、又は10nm~15nmの間の平均直径を有する
。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は6nm~7nmの間の平均直径を有する。
【0136】
[0148] 幾つかの実施形態では、さらなるシェルを堆積する前に、コア/シェルナノ構造の酸エッチングステップが行われる。
【0137】
ZnSeシェルの作製
[0149] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルナノ構造の上に堆積されるシェルはZnSeシェルである。
【0138】
[0150] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェルを形成するためにコア又はコア/シェルナノ構造に接触させるシェル前駆体は亜鉛源及びセレン源を含む。
【0139】
[0151] 幾つかの実施形態では、亜鉛源はジアルキル亜鉛化合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源はカルボン酸亜鉛である。幾つかの実施形態では、亜鉛源は、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源は、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源はオレイン酸亜鉛である。
【0140】
[0152] 幾つかの実施形態では、セレン源はアルキル置換セレノ尿素である。幾つかの実施形態では、セレン源はホスフィンセレニドである。幾つかの実施形態では、セレン源は、トリオクチルホスフィンセレニド、トリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(sec-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(tert-ブチル)ホスフィンセレニド、トリメチルホスフィンセレニド、トリフェニルホスフィンセレニド、ジフェニルホスフィンセレニド、フェニルホスフィンセレニド、トリシクロヘキシルホスフィンセレニド、シクロヘキシルホスフィンセレニド、1-オクタンセレノール、1-ドデカンセレノール、セレノフェノール、元素セレン、セレン化水素、ビス(トリメチルシリル)セレニド、セレノ尿素、及びそれらの混合物から選択される。幾つかの実施形態では、セレン源は、トリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(sec-ブチル)ホスフィンセレニド、又はトリ(tert-ブチル)ホスフィンセレニドである。幾つかの実施形態では、セレン源はトリオクチルホスフィンセレニドである。
【0141】
[0153] 幾つかの実施形態では、コアとZnSeシェルを形成するための亜鉛源とのモル比は、1:2~1:1000の間、1:2~1:100の間、1:2~1:50の間、1:2~1:25の間、1:2~1:15の間、1:2~1:10の間、1:2~1:5の間、1:5~1:1000の間、1:5~1:100の間、1:5~1:50の間、1:5~1:25の間、1:5~1:15の間、1:5~1:10の間、1:10~1:1000の間、1:10~1:100の間、1:10~1:50の間、1:10~1:25の間、1:10~1:15の間、1:15~1:1000の間、1:15~1:100の間、1:15~1:50の間、1:15~1:25の間、1:25~1:1000の間、1:25~1:100の間、1:25~1:50の間、又は1:50~1:1000の間、1:50~1:100の間、1:100~1:1000の間である。
【0142】
[0154] 幾つかの実施形態では、コアとZnSeシェルを形成するためのセレン源とのモル比は、1:2~1:1000の間、1:2~1:100の間、1:2~1:50の間、1:2~1:25の間、1:2~1:15の間、1:2~1:10の間、1:2~1:5の間、1:5~1:1000の間、1:5~1:100の間、1:5~1:50の間、1:5~1:25の間、1:5~1:15の間、1:5~1:10の間、1:10~1:1000の間、1:10~1:100の間、1:10~1:50の間、1:10~1:25の間、1:10~1:15の間、1:15~1:1000の間、1:15~1:100の間、1:15~1:50の間、1:15~1:25の間、1:25~1:1000の間、1:25~1:100の間、1:25~1:50の間、又は1:50~1:1000の間、1:50~1:100の間、1:100~1:1000の間である。
【0143】
[0155] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェル中の単層の数は、0.25~10の間、0.25~8の間、0.25~7の間、0.25~6の間、0.25~5の間、0.25~4の間、0.25~3の間、0.25~2の間、2~10の間、2~8の間、2~7の間、2~6の間、2~5の間、2~4の間、2~3の間、3~10の間、3~8の間、3~7の間、3~6の間、3~5の間、3~4の間、4~10の間、4~8の間、4~7の間、4~6の間、4~5の間、5~10の間、5~8の間、5~7の間、5~6の間、6~10の間、6~8の間、6~7の間、7~10の間、7~8の間、又は8~10の間である。幾つかの実施形態では、ZnSeシェルは2~6個の間の単層を含む。幾つかの実施形態では、ZnSeシェルは3~4個の間の単層を含む。
【0144】
[0156] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェル中の単層の数は0.25~12の間である。幾つかの実施形態では、ZnSeシェル中の単層の数は、0.25~12の間、0.25~10の間、0.25~8の間、0.25~7の間、0.25~6の間、0.25~5の間、0.25~4の間、0.25~3の間、又は0.25~2の間である。
【0145】
[0157] 幾つかの実施形態では、ZnSe単層は約0.328nmの厚さを有する。
【0146】
[0158] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェルは、0.08nm~3.5nmの間、0.08nm~2nmの間、0.08nm~0.9nmの間、0.08nm及び0.7nm、0.08nm~0.5nmの間、0.08nm~0.2nmの間、0.2nm~3.5nmの間、0.2nm~2nmの間、0.2nm~0.9nmの間、0.2nm~0.7nmの間、0.2nm~0.5nmの間、0.5nm~3.5nmの間、0.5nm~2nmの間、0.5nm~0.9nmの間、0.5nm~0.7nmの間、0.7nm~3.5nmの間、0.7nm~2nmの間、0.7nm~0.9nmの間、0.9nm~3.5nmの間、0.9nm~2nmの間、又は2nm~3.5nmの間の厚さを有する。
【0147】
[0159] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェルは、0.08nm~3.9nmの間、0.2nm~3.9nmの間、0.5nm~3.9nmの間、0.7nm~3.9nmの間、0.9nm及び3.9nm、2nm~3.9nmの間、又は3.5nm~3.9nmの厚さを有する。
【0148】
ZnSexS1-xシェルの作製
[0160] 幾つかの実施形態では、高発光性ナノ構造は、内部シェルと外部シェルとの間にシェル層を含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造はZnSexS1-xシェルを含み、式中0<x<1である。
【0149】
[0161] 幾つかの実施形態では、ナノ構造はZnSexS1-xシェルを含み、式中のxは0~1の間である。幾つかの実施形態では、xは0.01~0.99の間である。幾つかの実施形態では、xは、0.25~1の間、0.25~0.75の間、0.25~0.5の間、0.5~1の間、0.5~0.75の間、又は0.75~1の間である。幾つかの実施形態では、xは0.5である。
【0150】
[0162] 幾つかの実施形態では、ZnSexS1-xシェルは、ZnSeシェルとZnSシェルとの間の格子ひずみを緩和する。
【0151】
[0163] 幾つかの実施形態では、ZnSexS1-xシェルのxは、結果として得られるナノ構造の内部から外部で徐々に減少する。
【0152】
[0164] 幾つかの実施形態では、ZnSexS1-xシェルの層を形成するためにコア又はコア/シェルに接触させるシェル前駆体は、亜鉛源、セレン源、及び硫黄源を含む。
【0153】
[0165] 幾つかの実施形態では、亜鉛源はジアルキル亜鉛化合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源はカルボン酸亜鉛である。幾つかの実施形態では、亜鉛源は、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源は、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源はオレイン酸亜鉛である。
【0154】
[0166] 幾つかの実施形態では、セレン源はアルキル置換セレノ尿素である。幾つかの実施形態では、セレン源はホスフィンセレニドである。幾つかの実施形態では、セレン源は、トリオクチルホスフィンセレニド、トリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(sec-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(tert-ブチル)ホスフィンセレニド、トリメチルホスフィンセレニド、トリフェニルホスフィンセレニド、ジフェニルホスフィンセレニド、フェニルホスフィンセレニド、トリシクロヘキシルホスフィンセレニド、シクロヘキシルホスフィンセレニド、1-オクタンセレノール、1-ドデカンセレノール、セレノフェノール、元素セレン、セレン化水素、ビス(トリメチルシリル)セレニド、セレノ尿素、及びそれらの混合物から選択される。幾つかの実施形態では、セレン源は、トリ(n-ブチル)ホスフィンセレニド、トリ(sec-ブチル)ホスフィンセレニド、又はトリ(tert-ブチル)ホスフィンセレニドである。幾つかの実施形態では、セレン源はトリオクチルホスフィンセレニドである。
【0155】
[0167] 幾つかの実施形態では、硫黄源は、元素硫黄、オクタンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、トリブチルホスフィンスルフィド、シクロヘキシルイソチオシアネート、α-トルエンチオール、エチレントリチオカーボネート、アリルメルカプタン、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、及びそれらの混合物から選択される。幾つかの実施形態では、硫黄源は、アルキル置換亜鉛ジチオカルバメートである。幾つかの実施形態では、硫黄源はオクタンチオールである。
【0156】
ZnSシェルの作製
[0168] 幾つかの実施形態では、コア又はコア/シェルナノ構造の上に堆積されるシェルはZnSシェルである。
【0157】
[0169] 幾つかの実施形態では、ZnSシェルを形成するためにコア又はコア/シェルナノ構造に接触させるシェル前駆体は、亜鉛源及び硫黄源を含む。
【0158】
[0170] 幾つかの実施形態では、ZnSシェルは、粒子表面における欠陥を不動態化し、それによって、LED及びレーザーなどのデバイス中に使用される場合に量子収率が向上し、より高い効率が得られる。さらに、欠陥状態によって生じるスペクトル不純物は、不動態化によってなくすことができ、それによって彩度が向上する。
【0159】
[0171] 幾つかの実施形態では、亜鉛源はジアルキル亜鉛化合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源はカルボン酸亜鉛である。幾つかの実施形態では、亜鉛源は、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、炭酸亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、酸化亜鉛、過酸化亜鉛、過塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源は、オレイン酸亜鉛、ヘキサン酸亜鉛、オクタン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、又はそれらの混合物である。幾つかの実施形態では、亜鉛源はオレイン酸亜鉛である。
【0160】
[0172] 幾つかの実施形態では、亜鉛源は、亜鉛塩をカルボン酸と反応させることによって生成される。幾つかの実施形態では、カルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ブタ-2-エン酸、ブタ-3-エン酸、ペンタ-2-エン酸、ペンタ-4-エン酸、ヘキサ-2-エン酸、ヘキサ-3-エン酸、ヘキサ-4-エン酸、ヘキサ-5-エン酸、ヘプタ-6-エン酸、オクタ-2-エン酸、デカ-2-エン酸、ウンデカ-10-エン酸、ドデカ-5-エン酸、オレイン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、リノール酸、α-リノレン酸、カレンジン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、アラキドン酸、ステアリドン酸、安息香酸、パラトルイル酸、オルトトルイル酸、メタトルイル酸、ヒドロ桂皮酸、ナフテン酸、桂皮酸、パラトルエンスルホン酸、及びそれらの混合物から選択される。
【0161】
[0173] 幾つかの実施形態では、硫黄源は、元素硫黄、オクタンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、トリブチルホスフィンスルフィド、シクロヘキシルイソチオシアネート、α-トルエンチオール、エチレントリチオカーボネート、アリルメルカプタン、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、及びそれらの混合物から選択される。幾つかの実施形態では、硫黄源はアルキル置換亜鉛ジチオカルバメートである。幾つかの実施形態では、硫黄源はオクタンチオールである。幾つかの実施形態では、硫黄源はドデカンチオールである。
【0162】
[0174] 幾つかの実施形態では、コアとZnSシェルを形成するための亜鉛源とのモル比は、1:2~1:1000の間、1:2~1:100の間、1:2~1:50の間、1:2~1:25の間、1:2~1:15の間、1:2~1:10の間、1:2~1:5の間、1:5~1:1000の間、1:5~1:100の間、1:5~1:50の間、1:5~1:25の間、1:5~1:15の間、1:5~1:10の間、1:10~1:1000の間、1:10~1:100の間、1:10~1:50の間、1:10~1:25の間、1:10~1:15の間、1:15~1:1000の間、1:15~1:100の間、1:15~1:50の間、1:15~1:25の間、1:25~1:1000の間、1:25~1:100の間、1:25~1:50の間、又は1:50~1:1000の間、1:50~1:100の間、1:100~1:1000の間である。
【0163】
[0175] 幾つかの実施形態では、コアとZnSシェルを形成するための硫黄源とのモル比は、1:2~1:1000の間、1:2~1:100の間、1:2~1:50の間、1:2~1:25の間、1:2~1:15の間、1:2~1:10の間、1:2~1:5の間、1:5~1:1000の間、1:5~1:100の間、1:5~1:50の間、1:5~1:25の間、1:5~1:15の間、1:5~1:10の間、1:10~1:1000の間、1:10~1:100の間、1:10~1:50の間、1:10~1:25の間、1:10~1:15の間、1:15~1:1000の間、1:15~1:100の間、1:15~1:50の間、1:15~1:25の間、1:25~1:1000の間、1:25~1:100の間、1:25~1:50の間、又は1:50~1:1000の間、1:50~1:100の間、1:100~1:1000の間である。
【0164】
[0176] 幾つかの実施形態では、ZnSシェル中の単層の数は、0.25~10の間、0.25~8の間、0.25~7の間、0.25~6の間、0.25~5の間、0.25~4の間、0.25~3の間、0.25~2の間、2~10の間、2~8の間、2~7の間、2~6の間、2~5の間、2~4の間、2~3の間、3~10の間、3~8の間、3~7の間、3~6の間、3~5の間、3~4の間、4~10の間、4~8の間、4~7の間、4~6の間、4~5の間、5~10の間、5~8の間、5~7の間、5~6の間、6~10の間、6~8の間、6~7の間、7~10の間、7~8の間、又は8~10の間である。幾つかの実施形態では、ZnSシェルは2~12個の間の単層を含む。幾つかの実施形態では、ZnSシェルは4~6個の間の単層を含む。
【0165】
[0177] 幾つかの実施形態では、ZnSシェル中の単層の数は0.25~12の間である。幾つかの実施形態では、ZnSシェル中の単層の数は、0.25~12の間、0.25~10の間、0.25~8の間、0.25~7の間、0.25~6の間、0.25~5の間、0.25~4の間、0.25~3の間、又は0.25~2の間である。
【0166】
[0178] 幾つかの実施形態では、ZnS単層は約0.31nmの厚さを有する。
【0167】
[0179] 幾つかの実施形態では、ZnSシェルは、0.08nm~3.5nmの間、0.08nm~2nmの間、0.08nm~0.9nmの間、0.08nm及び0.7nm、0.08nm~0.5nmの間、0.08nm~0.2nmの間、0.2nm~3.5nmの間、0.2nm~2nmの間、0.2nm~0.9nmの間、0.2nm~0.7nmの間、0.2nm~0.5nmの間、0.5nm~3.5nmの間、0.5nm~2nmの間、0.5nm~0.9nmの間、0.5nm~0.7nmの間、0.7nm~3.5nmの間、0.7nm~2nmの間、0.7nm~0.9nmの間、0.9nm~3.5nmの間、0.9nm~2nmの間、又は2nm~3.5nmの間の厚さを有する。
【0168】
[0180] 幾つかの実施形態では、ZnSシェルは、0.08nm~3.7nmの間、0.2nm~3.7nmの間、0.5nm~3.7nmの間、0.7nm~3.7nmの間、0.9nm及び3.7nm、2nm~3.7nmの間、又は3.5nm~3.7nmの間の厚さを有する。
【0169】
コア/シェルナノ構造
[0181] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、コア/ZnSe/ZnSナノ構造又はコア/ZnSe/ZnSexS1-x/ZnSナノ構造である。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、InP/ZnSe/ZnSナノ構造又はInP/ZnSe/ZnSexS1-x/ZnSナノ構造である。
【0170】
[0182] 幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、高いフォトルミネッセンス量子収率を示す。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、60%~99%の間、60%~95%の間、60%~90%の間、60%~85%の間、60%~80%の間、60%~70%の間、70%~99%の間、70%~95%の間、70%~90%の間、70%~85%の間、70%~80%の間、80%~99%の間、80%~95%の間、80%~90%、80%~85%の間、85%~99%の間、85%~95%の間、80%~85%の間、85%~99%の間、85%~90%の間、90%~99%の間、90%~95%の間、又は95%~99%の間のフォトルミネッセンス量子収率を示す。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、85%~96%の間のフォトルミネッセンス量子収率を示す。
【0171】
[0183] コア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、スペクトルの実質的にあらゆる所望の部分に及ぶことができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、300nm~750nmの間、300nm~650nmの間、300nm~550nmの間、300nm~450nmの間、450nm~750nmの間、450nm~650nmの間、450nm~550nmの間、450nm~750nmの間、450nm~650nmの間、450nm~550nmの間、550nm~750nmの間、550nm~650nmの間、又は650nm~750nmの間の発光極大を有する。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、500nm~550nmの間の発光極大を有する。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、600nm~650nmの間の発光極大を有する。
【0172】
[0184] コア/シェルナノ構造のサイズ分布は比較的狭くなることができる。幾つかの実施形態では、集団又はコア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、10nm~60nmの間、10nm~40nmの間、10nm~30nmの間、10nm~20nmの間、20nm~60nmの間、20nm~40nmの間、20nm~30nmの間、30nm~60nmの間、30nm~40nmの間、又は40nm~60nmの間の半値全幅を有することができる。幾つかの実施形態では、集団又はコア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、35nm~45nmの間の半値全幅を有することができる。
【0173】
[0185] 幾つかの実施形態では、本発明のコア/シェルナノ構造は、連続青色光曝露下で高レベルのフォトルミネッセンス強度を長時間維持することができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、(出発強度レベルと比較して)90%の強度を少なくとも2,000時間、少なくとも4,000時間、少なくとも6,000時間、少なくとも8,000時間、又は少なくとも10,000時間維持することができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、(出発強度レベルと比較して)80%の強度を少なくとも2,000時間、少なくとも4,000時間、少なくとも6,000時間、少なくとも8,000時間、又は少なくとも10,000時間維持することができる。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は、(出発強度レベルと比較して)70%の強度を少なくとも2,000時間、少なくとも4,000時間、少なくとも6,000時間、少なくとも8,000時間、又は少なくとも10,000時間維持することができる。
【0174】
[0186] 結果として得られるコア/シェルナノ構造は、任意選択的に、マトリックス(例えば、有機ポリマー、ケイ素含有ポリマー、無機、ガラス状、及び/又はその他のマトリックス)の中に埋め込まれ、ナノ構造発光体の製造に使用され、及び/又はデバイス、例えば、LED、バックライト、ダウンライト、又はその他のディスプレイ若しくは照明ユニット、又は光学フィルターの中に組み込まれる。代表的な発光体及び照明ユニットは、例えば、所望の波長若しくはその付近の発光極大を有するナノ構造の集団を組み込むことによって特定の色の光を発生させることができ、又は異なる発光極大を有するナノ構造の2つ以上の異なる集団を組み込むことによって広い色域を発生させることができる。種々の適切なマトリックスが当技術分野において知られている。例えば、米国特許第7,068,898号、並びに米国特許出願公開第2010/0276638号、米国特許出願公開第2007/0034833号、及び米国特許出願公開第2012/0113672号を参照されたい。ナノ構造発光体フィルム、LED、バックライトユニットなどの例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0276638号、米国特許出願公開第2012/0113672号、米国特許出願公開第2008/0237540号、米国特許出願公開第2010/0110728号、及び米国特許出願公開第2010/0155749号、並びに米国特許第7,374,807号、米国特許第7,645,397号、米国特許第6,501,091号、及び米国特許第6,803,719号に記載されている。
【0175】
[0187] InP、ZnSe、及びZnSの相対モル比は、所望の球状シェルの体積、質量、そしてモル量を測定することによって、特定の直径の球状InPコアに基づいて計算される。例えば、3個の単層のZnSe及び4個の単層のZnSがコーティングされた直径1.8nmの緑色InPコアは、コア中に結合したInPのモル量を基準として9.2モル当量のZnSe及び42.8モル当量のZnSを必要とする。このシェル構造によって、6.23nmの全体の粒径が得られる。
図2は、測定平均粒径が5.9nmの粒度が得られる、3個の単層のZnSe及び4個の単層のZnSがコーティングされた直径1.8nmの緑色InPコアの合成試料のTEM画像を示している。
図1中に示されるような、同じ種類のコアを用いた平均粒度3.5nmの以前の研究の薄いシェル材料と比較すると、本発明の方法を用いるとシェル厚さが2倍を超えることが示される。さらに、
図4中の緑色InPコアの吸収スペクトルは、ZnSe及びZnSeのシェル材料が吸収性となる低波長領域において実質的な吸光度の増加を示している。さらに、コア/シェルナノ構造のフォトルミネッセンス励起ペクトルは同じ形状に従い、このさらなる吸光度が、二次粒子集団ではなくシェル材料によるものであることを示している。
【0176】
[0188] 結果として得られるコア/シェルナノ構造は、イメージング又は標識、例えば、生物学的イメージング又は標識に使用することができる。したがって、結果として得られるコア/シェルナノ構造は、任意選択的に、限定するものではないが、ペプチド又はタンパク質(例えば、抗体又は抗体ドメイン、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、又はその他の結合分子若しくは認識分子)、配位子(例えば、ビオチン)、ポリヌクレオチド(例えば、短いオリゴヌクレオチド又はより長い核酸)、炭水化物、又は脂質(例えば、リン脂質又はその他のミセル)などの生体分子に共有結合的又は非共有結合的に結合する。1つ以上のコア/シェルナノ構造は、特定の用途で希望通りに、それぞれの生体分子に結合することができる。このようなコア/シェルナノ構造で標識された生体分子は、例えば、インビトロ、インビボ、及びインセルロ、例えば、結合又は化学反応の研究、並びに細胞内、細胞、及び生物の標識における用途が見出される。
【0177】
[0189] 上記方法から得られるコア/シェルナノ構造も、本発明の特徴の1つである。したがって、ある種類の実施形態は、コア/シェルナノ構造の集団を提供する。幾つかの実施形態では、コア/シェルナノ構造は量子ドットである。
【0178】
酸化物材料によるナノ構造のコーティング
[0190] 組成とは無関係に、ほとんどの量子ドットでは、励起フォトンへの連続曝露の後に、それらの本来の高い量子収率が維持されない。厚いシェルの使用は、光で誘導された量子収率低下の影響の緩和に有効であることが分かっているが、量子ドットの光劣化は、それらを酸化物で覆うことによってさらに遅らせることができる。酸化物で量子ドットをコーティングすることによって、それらの表面がそれらの環境から物理的に隔離されるようになる。
【0179】
[0191] 酸化物材料による量子ドットのコーティングは、それらの光安定性を高めることが示されている。Jo, J.-H., et al., J. Alloys & Compounds 647:6-13 (2015)において、InP/ZnS赤色発光量子ドットをIn2O3の酸化物相でオーバーコートすると、比較による光安定性結果によって示されるように、量子ドットの光劣化が実質的に軽減されることが分かった。
【0180】
[0192] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、安定性を高めるために酸化物材料でコーティングされる。幾つかの実施形態では、酸化物材料は、In2O3、SiO2、Al2O3、又はTiO2である。
【0181】
青色光の吸収が増加した量子ドット
[0193] 量子ドットのフォトルミネッセンス用途では、発光は、より高エネルギーの光源による励起によって刺激される。典型的には、これは440nm~460nmの範囲内の発光ピークを有する青色LEDである。一部の量子ドットは、この範囲内で比較的低い吸光度を示すが、このことは、特に、青色フォトンから量子ドットが放出するフォトンへのほぼ定量的な変換が望ましい用途では、性能が妨害される。このような用途の一例は、青色光の漏れによって色域範囲が減少するディスプレイ中のカラーフィルターである。
【0182】
[0194] 緑色InP量子ドットは、青色光の吸収が少ないが、その理由はこの波長範囲で吸収の谷も同時に生じるからである。この谷は量子閉じ込めによって生じる。量子閉じ込め効果は、材料のサイズが電子波動関数のドブロイ波長と同じ大きさとなる場合に観察される。材料がこの小ささである場合、それらの電子的性質及び光学的性質は、バルク材料の性質から実質的に逸脱する。量子閉じ込めによって、バルク材料の連続エネルギー帯は破壊されて、離散的で、原子のようなエネルギー準位が得られる。離散エネルギー状態によって、離散的な吸収スペクトルが得られ、これはバルク半導体の連続吸収スペクトルとは対照的である。Koole, R.,“Size Effects on Semiconductor Nanoparticles.”Nanoparticles. Ed. C. de Mello Donega. Heidelberg, Berlin: Springer-Verlag, 2014. Pages 13-50。
【0183】
[0195] 典型的には量子ドットコア上のシェルは、不動態化及び安定化のために使用され、光学的に活性の構成要素としては考えられない。しかし、InP量子ドットコア上のシェルは、フォトン変換プロセスにも関与しうる。例えば、金属ドーピングは、CdSe/CdxPb1-xSコア/シェル量子ドットにおける光吸収の向上が示されており、吸収の増加はPbドーピングに起因している。Zhao, H., et al., Small 12:5354-5365 (2016)。
【0184】
[0196] CdSe/CdSコア/シェル量子ドットは、初期のCdSeコアと比較すると、厚いシェル(約14個の単層のCdS)を有する量子ドットは45分の1までの再吸収の減少を示すことが分かっている。I. Coropceanu and M.G. Bawendi, Nano Lett. 14:4097-4101 (2014)。
【0185】
[0197] コアの発光において測定したフォトルミネッセンス励起スペクトルは、吸収スペクトルと類似の形状に従うことが分かり、これより、フォトンがシェルによって高エネルギーで吸収され、次に生成した励起子は、ほとんど又は全く減少することなくコアへ移動して発光が生じうることが分かる。2.7eV(460nm)のZnSeのバルクバンドギャップを考慮すると、ZnSeバッファ層は、440~460nmの所望の範囲における吸収に寄与することができる。この洞察を利用するために、より厚いZnSeバッファを有する量子ドットを合成すると、
図10中に示されるように440~460nmの波長範囲内でさらにより強い吸光度を有することが分かった。
【0186】
[0198] 幾つかの実施形態では、ナノ構造の吸収スペクトルは、UV-Vis分光光度計を用いて測定することができる。
【0187】
[0199] ナノ構造が約440nm~約495nmの間の波長の光を吸収する場合、それは青色光を吸収する。幾つかの実施形態では、ナノ構造の青色光の吸収は、約440nm~約495nmの間、約440nm~約480nmの間、約440nm~約460nmの間、約440nm~約450nmの間、約450nm~約495nmの間、約450nm~約480nmの間、約450nm~約460nmの間、約460nm~約495nmの間、約460nm~約480nmの間、又は約480nm~約495nmの間の波長で測定される。幾つかの実施形態では、ナノ構造の青色光の吸収は、440nm、450nm、460nm、480nm、又は495nmの波長で測定される。
【0188】
[0200] UV-Vis分光法又はUV-Vis分光光度法は、可視及び近接する(近紫外及び近赤外)範囲の光を測定する。電磁スペクトルのこの領域では、分子の電子遷移が起こる。UV-Vis分光法は吸光度に基づいている。分光法では、吸光度Aは:
Aλ=log10(I0/I)
と定義され、ここで、Iは、試料を透過した指定の波長λにおける光の強度(透過光強度)であり、I0は、試料に入る前の光、すなわち入射光の光の強度である。吸収という用語は、光を吸収する物理的過程を意味し、一方、吸光度は、数学的な量を意味する。吸光度は真の単位を有さないが、「吸光度単位」(absorbance unit)、すなわちAUで報告されることが多い。
【0189】
[0201] 光学濃度(OD)は、単位長さ当たりの吸光度、すなわち、吸光度を試料の厚さで割ったものである。波長λにおける光学濃度は:
ODλ=Aλ/ι=-(1/ι)log10(I0/I)
として定義され、式中:
ι=cmの単位での、試料を通過して移動する光の距離(試料厚さ);
Aλ=波長λにおける吸光度;
I0=入射光ビームの強度;及び
I=透過光ビームの強度
である。光学濃度は、AU/cmに等しいODUの単位で測定される。試料厚さが1cmの場合、ODλ=Aλである。
【0190】
[0202] UV-visスペクトルの測定値を比較するためには、吸光度測定値を正規化する必要がある。吸収スペクトルは、それぞれの吸光度曲線を、特定の波長におけるそれらのそれぞれの吸光度で割ることによって正規化される。一般に、第1の励起子ピーク吸収波長における吸光度が正規化点として選択される。
【0191】
[0203] 所望の波長における光学濃度を正規化するため、式:
正規化ODλ=ODλ/ピーク比=Aλ/(ピーク比*ι)
を用いて、所望の波長における光学濃度の比を、第1の励起子ピーク吸収波長における光学濃度と比較することができ、式中:
ODλ=ある波長で測定した試料の光学濃度;
ピーク比=第1の励起子ピーク吸収波長における光学濃度;
Aλ=ある波長で測定した試料の吸光度;及び
ι=cmの単位での、試料を通過して移動する光の距離(試料厚さ)
である。例えば、450nmにおける正規化光学濃度は式:
正規化OD450=OD450/ピーク比=A450/(ピーク比*ι)
を用いて計算することができ、式中:
OD450=450nmにおいて測定した試料の光学濃度;
A450=450nmにおいて測定した試料の吸光度;
ピーク比=第1の励起子ピーク吸収波長における光学濃度;及び
ι=cmの単位での、試料を通過して移動する光の距離(試料厚さ)
である。
【0192】
[0204] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は、約440nm~約495nmの間の波長において、約1.0~約8.0の間、約1.0~約6.0の間、約1.0~3.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.8の間、約1.0~約1.5の間、約1.5~約8.0の間、約1.5~約6.0の間、約1.5~約3.0の間、約1.5~約2.0の間、約1.5~約1.8の間、約1.8~約8.0の間、約1.8~約6.0の間、約1.8~約3.0の間、約1.8~約2.0の間、約2.0~約8.0の間、約2.0~約6.0の間、約2.0~約3.0の間、約3.0~約8.0の間、約3.0~約6.0の間、又は約6.0~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。幾つかの実施形態では、本発明のナノ構造は、約440nm~約460nmの間の波長において、約1.0~約8.0の間、約1.0~約6.0の間、約1.0~3.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.8の間、約1.0~約1.5の間、約1.5~約8.0の間、約1.5~約6.0の間、約1.5~約3.0の間、約1.5~約2.0の間、約1.5~約1.8の間、約1.8~約8.0の間、約1.8~約6.0の間、約1.8~約3.0の間、約1.8~約2.0の間、約2.0~約8.0の間、約2.0~約6.0の間、約2.0~約3.0の間、約3.0~約8.0の間、約3.0~約6.0の間、又は約6.0~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、約450nmの波長において、約1.0~約8.0の間、約1.0~約6.0の間、約1.0~3.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.8の間、約1.0~約1.5の間、約1.5~約8.0の間、約1.5~約6.0の間、約1.5~約3.0の間、約1.5~約2.0の間、約1.5~約1.8の間、約1.8~約8.0の間、約1.8~約6.0の間、約1.8~約3.0の間、約1.8~約2.0の間、約2.0~約8.0の間、約2.0~約6.0の間、約2.0~約3.0の間、約3.0~約8.0の間、約3.0~約6.0の間、又は約6.0~約8.0の間の正規化光学濃度を有する。幾つかの実施形態では、ナノ構造の集団の青色光正規化吸光度を増加させる方法が提供される。幾つかの実施形態では、本発明は、ナノ構造の集団の青色光正規化光学濃度を増加させる方法を提供する。
【0193】
[0205] 幾つかの実施形態では、青色光正規化光学濃度は、シェル単層の数を増加させることによって増加する。幾つかの実施形態では、約2個の単層を含むシェルは、約0.25~約1個の間の単層を含むシェルと比較して、青色光正規化光学濃度が増加することを示す。幾つかの実施形態では、3個の単層を含むシェルは、約0.25~約2個の間の単層、約0.25~約1個の間の単層、又は約1~約2個の間の単層を含むシェルと比較して、青色光正規化光学濃度が増加することを示す。幾つかの実施形態では、4個の単層を含むシェルは、約0.25~約3個の間の単層、約0.25~約2個の間の単層、約0.25~約1個の間の単層、約1~約3個の間の単層、又は約1~約2個の間の単層を含むシェルと比較して、青色光正規化光学濃度が増加することを示す。幾つかの実施形態では、5個の単層を含むシェルは、約0.25~約4個の間の単層、約0.25~約3個の間の単層、約0.25~約2個の間の単層、約0.25~約1個の間の単層、約1~約4個の間の単層、約1~約3個の間の単層、約1~約2個の間の単層、約2~約4個の間の単層、約2~約3個の間の単層、又は約3~約4個の間の単層を含むシェルと比較して、青色光正規化光学濃度が増加することを示す。幾つかの実施形態では、6個の単層を含むシェルは、約0.25~約5個の間の単層、約0.25~約4個の間の単層、約0.25~約3個の間の単層、約0.25~約2個の間の単層、約0.25~約1個の間の単層、約1~約5個の間の単層、約1~約4個の間の単層、約1~約3個の間の単層、約1~約2個の間の単層、約2~約5個の間の単層、約2~約4個の間の単層、約2~約3個の間の単層、約3~約5個の間の単層、約3~約4個の間の単層、又は約4~約5個の間の単層を含むシェルと比較して、青色光正規化光学濃度が増加することを示す。幾つかの実施形態では、7個の単層を含むシェルは、約0.25~約6個の間の単層、約0.25~約5個の間の単層、約0.25~約4個の間の単層、約0.25~約3個の間の単層、約0.25~約2個の間の単層、約0.25~約1個の間の単層、約1~約6個の間の単層、
約1~約5個の間の単層、約1~約4個の間の単層、約1~約3個の間の単層、約1~約2個の間の単層、約2~約6個の間の単層、約2~約5個の間の単層、約2~約4個の間の単層、約2~約3個の間の単層、約3~約6個の間の単層、約3~約5個の間の単層、約3~約4個の間の単層、約4~約6個の間の単層、約4~約5個の間の単層、又は約5~約6個の間の単層を含むシェルと比較して、青色光正規化光学濃度が増加することを示す。幾つかの実施形態では、8個の単層を含むシェルは、約0.25~約7個の間の単層、約0.25~約6個の間の単層、約0.25~約5個の間の単層、約0.25~約4個の間の単層、約0.25~約3個の間の単層、約0.25~約2個の間の単層、約0.25~約1個の間の単層、約1~約7個の間の単層、約1~約6個の間の単層、約1~約5個の間の単層、約1~約4個の間の単層、約1~約3個の間の単層、約1~約2個の間の単層、約2~約7個の間の単層、約2~約6個の間の単層、約2~約5個の間の単層、約2~約4個の間の単層、約2~約3個の間の単層、約3~約7個の間の単層、約3~約6個の間の単層、約3~約5個の間の単層、約3~約4個の間の単層、約4~約7個の間の単層、約4~約6個の間の単層、約4~約5個の間の単層、約5~約7個の間の単層、約5~約6個の間の単層、又は約6~約7個の間の単層を含むシェルと比較して、青色光正規化光学濃度が増加することを示す。
【0194】
[0206] 幾つかの実施形態では、シェル単層の数が増加すると、正規化光学濃度が約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。幾つかの実施形態では、シェル単層の数が増加すると、約440nm~約460nmの間の波長における光学濃度が、約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。幾つかの実施形態では、シェル単層の数が増加すると、約450nmの波長における光学濃度が、約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。
【0195】
[0207] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェルの単層の数が増加すると、青色光正規化光学濃度が増加する。幾つかの実施形態では、ZnSeシェルの単層の数が増加すると、約440nm~約460nmの間の波長における正規化光学濃度が増加する。幾つかの実施形態では、ZnSeシェルの単層の数が増加すると、約450nmの波長における正規化光学濃度が増加する。
【0196】
[0208] 幾つかの実施形態では、ZnSeシェルの単層の数が増加すると、青色光正規化光学濃度が、約約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。幾つかの実施形態では、ZnSeシェルの単層の数が増加すると、約440nm~約460nmの間の波長における光学濃度が、約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。幾つかの実施形態では、ZnSeシェルの単層の数が増加すると、約450nmの波長における光学濃度が、約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。
【0197】
[0209] バンドギャップは、固体中で電子状態が存在できない範囲である。合金の組成を制御することによって、又は交互の組成を有する層状ナノ構造を構成することによって、ナノ構造のバンドギャップ及び結果として得られる波長を制御したり変化させたりすることができる。
【0198】
[0210] ナノ結晶の波長は、以下の式:
波長(単位nm)=1240.8/エネルギー(単位eV)
によってバルクバンドギャップから求めることができる。
【0199】
[0211] したがって、2.7eVのバルクバンドギャップを有するZnSeナノ結晶は約460nmの波長に相当する。3.6eVのバルクバンドギャップを有するZnSナノ結晶は約345nmの波長に相当する。そして、2.25eVのバルクバンドギャップを有するZnTeナノ結晶は約551nmの波長に相当する。
【0200】
[0212] 450nmにおける光学濃度を増加させるために、ZnSeと、ZnS又はGaNなどのより大きいバンドギャップを有する少なくとも1つの成分との合金を形成することができる。そして、480nmにおける光学濃度を増加させるために、ZnSeと、AlP、CdS、GaP、ZnTe、AlAs、CdSe、AlSb、CdTe、GaAs、又はInPなどのより小さいバンドギャップを有する少なくとも1つの成分との合金を形成することができる。
【0201】
[0213] 450nmにおける光学濃度を増加させるために、ZnSと、ZnSe、AlP、CdS、GaP、ZnTe、AlAs、CdSe、AlSb、CdTe、GaAs、又はInPなどのより小さいバンドギャップを有する少なくとも1つの成分との合金を形成することができる。そして450nmにおける光学濃度を増加させるために、ZnTeと、ZnS又はGaNなどのより大きいバンドギャップを有する少なくとも1つの成分との合金を形成することができる。
【0202】
[0214] 幾つかの実施形態では、合金を形成するために加えられる成分は、ZnS、GaN、ZnSe、AlP、CdS、GaP、ZnTe、AlAs、CdSe、AlSb、CdTe、GaAs、Sn、Ge、及びInPからなる群から選択される。
【0203】
[0215] 幾つかの実施形態では、ナノ構造のバンドギャップ及び結果として得られる波長は、少なくとも1つのシェル単層に成分を加えて合金を形成することによって制御される。幾つかの実施形態では、合金を形成するために、成分が約0.25~約8個の間の単層、約0.25~約6個の間の単層、約0.25~約4個の間の単層、約0.25~約2個の間の単層、約0.25~約1個の間の単層、約1~約8個の間の単層、約1~約6個の間の単層、約1~約4個の間の単層、約1~約2個の間の単層、約2~約8個の間の単層、約2~約6個の間の単層、約2~約4個の間の単層、約4~約8個の間の単層、約4~約6個の間の単層、又は約6~約8個の間の単層に加えられる。
【0204】
[0216] 幾つかの実施形態では、形成される合金によって、特定の波長におけるナノ構造の正規化光学濃度が増加する。幾つかの実施形態では、形成される合金によって、ナノ構造の青色光正規化光学濃度が増加する。幾つかの実施形態では、形成される合金によって、約440nm~約460nmの間のナノ構造の正規化光学濃度が増加する。幾つかの実施形態では、形成される合金によって、約450nmにおけるナノ構造の正規化光学濃度が増加する。
【0205】
[0217] 幾つかの実施形態では、合金を形成するために少なくとも1つの成分を加えることによって、青色光正規化光学濃度が、約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。幾つかの実施形態では、合金を形成するために少なくとも1つの成分を加えることによって、約440nm~約460nmの間の波長における光学濃度が、約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。幾つかの実施形態では、合金を形成するために少なくとも1つの成分を加えることによって、約450nmの波長における光学濃度が、約0.1~約2.0の間、約0.1~約1.5の間、約0.1~約1.0の間、約0.1~約0.5の間、約0.1~約0.3の間、約0.3~約2.0の間、約0.3~約1.5の間、約0.3~約1.0の間、約0.3~約0.5の間、約0.5~約2.0の間、約0.5~約1.5の間、約0.5~約1.0の間、約1.0~約2.0の間、約1.0~約1.5の間、又は約1.5~約2.0の間で増加する。
【0206】
ナノ構造組成物
[0218] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含むナノ構造組成物であって、ナノ構造が、コア及び少なくとも2つのシェルを含む多層ナノ構造であり、少なくとも2つのシェルが異なるシェル材料を含む、ナノ構造組成物を提供する。
【0207】
[0219] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルの厚さは0.7nm~3.5nmの間である。
【0208】
[0220] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は溶媒をさらに含む。
【0209】
[0221] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。
【0210】
ナノ構造層
[0222] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含むナノ構造層であって、ナノ構造が、コア及び少なくとも2つのシェルを含む多層ナノ構造であり、少なくとも2つのシェルが異なるシェル材料を含む、ナノ構造層を提供する。
【0211】
[0223] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルの厚さは0.7nm~3.5nmの間である。
【0212】
[0224] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。
【0213】
ナノ構造成形物品
[0225] 幾つかの実施形態では、本開示は、ナノ構造の少なくとも1つの集団を含むナノ構造成形物品であって、ナノ構造が、コア及び少なくとも2つのシェルを含む多層ナノ構造であり、少なくとも2つのシェルが異なるシェル材料を含む、成形物品を提供する。
【0214】
[0226] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルの厚さは0.7nm~3.5nmの間である。
【0215】
[0227] 幾つかの実施形態では、成形物品は、フィルム、ディスプレイ用の基板、又は発光ダイオードである。
【0216】
[0228] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。
【0217】
[0229] 幾つかの実施形態では、本開示は:
(a)第1の障壁層と;
(b)第2の障壁層と;
(c)第1の障壁層と第2の障壁層との間のナノ構造層とを含む成形物品であって、ナノ構造が、コア及び少なくとも2つのシェルを含む多層ナノ構造であり、少なくとも2つのシェルが異なるシェル材料を含む、成形物品を提供する。
【0218】
[0230] 幾つかの実施形態では、少なくとも1つのシェルの厚さは0.7nm~3.5nmの間である。
【0219】
[0231] 幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。
【0220】
ナノ構造層の製造
[0232] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層は、中に埋め込むことができる。本明細書において使用される場合、「埋め込まれる」という用語は、ナノ構造集団が、マトリックスの成分の大部分を構成するポリマーで囲い込まれる又は包み込まれることを示すために使用される。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのナノ構造集団は、マトリックス全体にわたって適宜均一に分布する。幾つかの実施形態では、少なくとも1つのナノ構造集団は、用途に特有の分布に従って分布する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は、ポリマー中に混合され、基板の表面に塗布される。
【0221】
[0233] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は堆積されてナノ構造層を形成する。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、限定するものではないが、塗装、スプレーコーティング、溶媒噴霧、湿式コーティング、接着剤コーティング、スピンコーティング、テープコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、インクジェット蒸気噴射、ドロップキャスティング、ブレードコーティング、ミスト堆積、又はそれらの組合せなどの当技術分野において周知のあらゆる適切な方法によって堆積することができる。ナノ構造組成物は、基板の所望の層の上に直接コーティングすることができる。或いは、ナノ構造組成物から固体層を独立した要素として形成し、続いて基板に取り付けることができる。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、1つ以上の障壁層の上に堆積することができる。
【0222】
[0234] 幾つかの実施形態では、堆積後にナノ構造層を硬化させる。適切な硬化方法としては、UV硬化などの光硬化、及び熱硬化が挙げられる。従来の積層膜加工方法、テープコーティング方法、及び/又はロールツーロール製造方法をナノ構造層の形成に使用することができる。
【0223】
スピンコーティング
[0235] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、スピンコーティングを用いて基板上に堆積される。スピンコーティングでは、真空によって固定が行われる、スピナーと呼ばれる機械の上に搭載された基板の中央の上に、少量の材料が典型的には配置される。スピナーによって基板に高速回転が生じ、それによって向心力が生じて、材料が基板の中央から端部まで広がる。材料の大部分は振り落とされるが、ある量は基板に残り、回転を続けると、表面上に材料の薄膜が形成される。膜の最終厚さは、回転速度、加速、及び回転時間などのスピンプロセスで選択されるパラメーターに加えて、堆積される材料及び基板の性質によって決定される。幾つかの実施形態では、約1500rpm~約6000rpmの回転速度が約10~60秒の回転時間とともに使用される。
【0224】
ミスト堆積
[0236] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、ミスト堆積を用いて基板上に堆積される。ミスト堆積は、室温及び大気圧で行われ、プロセス条件を変化させることによって膜厚を正確に制御することができる。ミスト堆積中、窒素ガスによって、液体原料物質は非常に微細なミストにされて堆積チャンバーまで送られる。次にこのミストは、フィールドスクリーンとウエハホルダーとの間の高電圧電位によってウエハ表面に引き寄せられる。液滴がウエハ表面上で凝集した後、ウエハをチャンバーから取り出し、熱硬化させることで、溶媒を蒸発させることができる。液体前駆体は、溶媒と堆積される材料との混合物である。これが加圧窒素ガスによって噴霧器に送られる。Price, S.C., et al.,“Formation of Ultra-Thin Quantum Dot Films by Mist Deposition,”ESC Transactions 11:89-94(2007)。
【0225】
スプレーコーティング
[0237] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物は、スプレーコーティングを用いて基板上に堆積される。スプレーコーティングの典型的な設備は、スプレーノズル、噴霧器、前駆体溶液、及びキャリアガスを含む。スプレー堆積プロセスでは、前駆体溶液は、キャリアガスによって、又は霧化(例えば、超音波、エアブラスト、又は静電気による)によってマイクロサイズの液滴に微細化される。噴霧器から出た液滴は、希望通りに制御され調節されるキャリアガスを用いてノズルを介して基板表面付近で加速される。スプレーノズルと基板との間の相対運動は、基板上を完全に覆うための設計によって規定される。
【0226】
[0238] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物の塗布は、溶媒をさらに含む。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物を塗布するための溶媒は、水、有機溶媒、無機溶媒、ハロゲン化有機溶媒、又はそれらの混合物である。実例となる溶媒としては、水、D2O、アセトン、エタノール、ジオキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロパノール、アニソール、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロルジノン(N-methylpyrroldinone)、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、トルエン、ジメチルスルホキシド、シクロペンタノン、テトラメチレンスルホキシド、キシレン、ε-カプロラクトン、テトラヒドロフラン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0227】
[0239] 幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物を熱硬化させてナノ構造層が形成される。幾つかの実施形態では、組成物は、UV光を用いて硬化される。幾つかの実施形態では、ナノ構造組成物がナノ構造膜の障壁層の上に直接コーティングされ、続いて追加の障壁層がナノ構造層の上に堆積されて、ナノ構造膜が形成される。強度、安定性、及びコーティング均一性を付与するため、並びに材料の不整合性、気泡形成、及び障壁層材料若しくは他の材料のしわ若しくは折れ曲がりを防止するために、障壁膜の下に支持基板を使用することができる。さらに、上部及び底部の障壁層の間に材料を封入するために、好ましくは1つ以上の障壁層がナノ構造層の上に堆積される。適切には、障壁層は、積層膜として積層して、任意選択的に封止又はさらなる処理を行うことができ、続いてそのナノ構造膜を個別の発光デバイス中に組み込むことができる。ナノ構造組成物の堆積方法は、当業者によって理解されるように、さらなる成分又は種々の成分を含むことができる。このような実施形態は、明るさ及び色などのナノ構造発光特性(例えば、量子ドット膜の白色点を調節するため)、並びにナノ構造の膜厚、及びその他の特性のインラインプロセス調整が可能である。さらに、これらの実施形態によって、製造中のナノ構造膜特性の定期的検査、及び正確なナノ構造膜特性を実現するためのあらゆる必要なトグリングが可能となる。コンピュータープログラムを使用して、ナノ構造膜の形成に使用される混合物のそれぞれの量を電子的に変更できるので、このような試験及び調整は、加工ラインの機械的構成を変更せずに実現することもできる。
【0228】
障壁層
[0240] 幾つかの実施形態では、成形物品は、ナノ構造層の一方又は両方の側の上に配置される1つ以上の障壁層を含む。適切な障壁層によって、ナノ構造層及び成形物品が高温、酸素、及び水分などの環境条件から保護される。適切な障壁材料としては、疎水性であり、成形物品と化学的及び機械的に適合性であり、光安定性及び化学安定性を示し、高温に耐えることができる非黄変透明光学材料が挙げられる。幾つかの実施形態では、1つ以上の障壁層は成形物品と屈折率整合される。幾つかの実施形態では、成形物品のマトリックス材料と1つ以上の隣接障壁層とは、ほぼ同等の屈折率を有するように屈折率整合され、それによって障壁層を透過して成形物品に向かう光の大部分が、障壁層からナノ構造層中まで透過する。この屈折率整合によって、障壁とマトリックス材料との間の界面における光学的損失が低減される。
【0229】
[0241] 障壁層は、適切には固体材料であり、硬化した液体、ゲル、又はポリマーであってよい。障壁層は、個別の用途により、可撓性又は非可撓性の材料を含むことができる。障壁層は、好ましくは平面層であり、個別の発光用途により、あらゆる適切な形状及び表面積形態を含むことができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の障壁層は、積層膜加工技術に適合可能であり、それによってナノ構造層が少なくとも1つの第1の障壁層の上に配置され、少なくとも1つの第2の障壁層がナノ構造層の反対側のナノ構造層の上に配置されて、一実施形態による成形物品が形成される。適切な障壁材料としては、当技術分野において周知のあらゆる適切な障壁材料が挙げられる。幾つかの実施形態では、適切な障壁材料としては、ガラス、ポリマー、及び酸化物が挙げられる。適切な障壁層材料としては、ポリマー、例えばポリエチレンテレフタレート(PET);酸化物、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、又は酸化アルミニウム(例えば、SiO2、Si2O3、TiO2、又はAl2O3);並びに適切なそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、成形物品の各障壁層は、異なる材料又は組成物を含む少なくとも2つの層を含み、その多層障壁によって障壁層中のピンホール欠陥配列が解消又は低減され、ナノ構造層中に透過する酸素及び水分に対する有効な障壁が得られる。ナノ構造層は、あらゆる適切な材料又は材料の組合せを含むことができ、ナノ構造層のいずれか又は両方の側にあらゆる適切な数の障壁層を含むことができる。障壁層の材料、厚さ、及び数は、個別の用途によって決定され、ナノ構造層の障壁保護及び明るさが最大化され、同時に成形物品の厚さが最小限となるように適宜選択される。好ましい実施形態では、各障壁層は積層膜、好ましくは二重積層膜を含み、各障壁層の厚さは、ロールツーロール又は積層体製造プロセスにおけるしわを最小限にするのに十分な厚さである。障壁の数又は厚さは、ナノ構造が重金属又はその他の毒性材料を含む実施形態においては法的な毒性指針によってさらに左右されることがあり、この指針によって、より多い又はより厚い障壁層が必要となりうる。障壁に関するさらなる考慮事項としては、コスト、利用可能性、及び機械的強度が挙げられる。
【0230】
[0242] 幾つかの実施形態では、ナノ構造膜は、ナノ構造層のそれぞれの側に隣接して2つ以上の障壁層を含み、例えば、ナノ構造層のそれぞれの側に2つ若しくは3つの層、又はそれぞれの側の上に2つの障壁層を含む。幾つかの実施形態では、各障壁層は、薄いガラス板、例えば、約100μm、100μm以下、又は50μm以下の厚さを有するガラス板を含む。
【0231】
[0243] ナノ構造成形物品のそれぞれの障壁層は、あらゆる適切な厚さを有することができ、これは、当業者によって理解されるように、発光デバイス及び用途、並びに障壁層及びナノ構造層などの個別の膜構成要素の個別の要求及び特性によって決定される。幾つかの実施形態では、各障壁層は、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、又は15μm以下の厚さを有することができる。ある実施形態では、障壁層は、酸化ケイ素、酸化チタン、及び酸化アルミニウム(例えば、SiO2、Si2O3、TiO2、又はAl2O3)などの材料を含むことができる酸化物コーティングを含む。酸化物コーティングは、約10μm以下、5μm以下、1μm以下、又は100nm以下の厚さを有することができる。ある実施形態では、障壁は、約100nm以下、10nm以下、5nm以下、又は3nm以下の厚さを有する薄い酸化物コーティングを含む。上部及び/又は底部の障壁は、薄い酸化物コーティングからなることができ、又は薄い酸化物コーティングと1つ以上の追加の材料層とを含むことができる。
【0232】
ナノ構造層の特徴及び実施形態
[0244] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層はディスプレイデバイスの形成に使用される。本明細書において使用される場合、ディスプレイデバイスは、発光型ディスプレイを有するあらゆるシステムを意味する。このようなデバイスとしては、液晶ディスプレイを含むデバイス、テレビ、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末(PDA)、ゲーム用デバイス、電子書籍リーダー、デジタルカメラなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0233】
外部量子効率(EQE)が増加した成形物品
[0245] CdSe系赤色量子ドットを用いて作製された発光ダイオード(LED)は、20%を超えるEQEを有すると報告されており、これは量子ドットLEDを用いた効率の理論的限界に近い。対照的に、InP系量子ドットを用いて作製されたLEDでは、赤色量子ドットで2.3%、緑色量子ドットで3.5%のEQEを示すことが報告されるのみである。この差異は、部分的には、密集した膜に堆積される場合にInP量子ドットが示す消光のためであると考えられる。
【0234】
[0246] 同様に、InP赤色量子ドットは、CdSe量子ドットで示される最大量子収率と同様の約90%の高さの溶液状態量子収率を示しているが、スピンコーティングで膜にしたInP赤色量子ドットで示される固体量子収率は20%となっている。比較として、類似の技術を用いて形成されるCdSe膜は60~70%の固体量子収率を示している。
【0235】
[0247] 幾つかの実施形態では、本明細書に記載のナノ構造を使用して作製した成形物品は、約6%~約20%の間、約6%~約15%の間、約6%~約12%の間、約6%~約10%の間、約6%~約8%の間、約6%~約7%の間、約7%~約20%の間、約7%~約15%の間、約7%~約12%の間、約7%~約10%の間、約7%~約8%の間、約8%~約20%の間、約8%~約15%の間、約8%~約12%の間、約8%~約10%の間、約10%~約20%の間、約10%~約15%の間、約10%~約12%の間、約12%~約20%の間、約12%~約15%の間、又は約15%~約20%の間のEQEを示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。幾つかの実施形態では、成形物品は発光ダイオードである。
【0236】
[0248] 幾つかの実施形態では、ナノ構造層中のZnSeシェル単層の数を増加させて作製した成形物品は、EQEが増加する。幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェルの単層の数を1個の単層だけ増加させると、成形物品のEQEが約0.5%~約3%の間、約0.5%~約2%の間、約0.5%~約1%の間、約1%~約3%の間、約1%~約2%の間、又は約2%~約3%の間で増加する。幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェルの単層の数を2個の単層だけ増加させると、EQEが約0.5%~約4%の間、約0.5%~約3%の間、約0.5%~約2%の間、約0.5%~約1%の間、約1%~約4%の間、約1%~約3%の間、約1%~約2%の間、又は約2%~約3%の間で増加する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。幾つかの実施形態では、成形物品は発光ダイオードである。
【0237】
[0249] 幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェル単層の数を増加させて作製した成形物品は、電圧7Vにおける輝度が増加する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載のナノ構造の集団を使用して作製した成形物品は、約3000cd/m2~約6000cd/m2の間、約3000cd/m2~約5000cd/m2の間、約3000cd/m2~約4000cd/m2の間、約3000cd/m2~約3500cd/m2の間、約3500cd/m2~約6000cd/m2の間、約3500cd/m2~約5000cd/m2の間、約3500cd/m2~約4000cd/m2の間、約4000cd/m2~約6000cd/m2の間、約4000cd/m2~約5000cd/m2の間、又は約5000cd/m2~約6000cd/m2の間の輝度を7Vにおいて有する。
【0238】
[0250] 幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェル単層の数を増加させて作製した成形物品は、7Vの電圧における輝度が増加する。幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェルの単層の数を1個の単層だけ増加させると、7Vにおける輝度が、約5%~約35%の間、約5%~約25%の間、約5%~約20%の間、約5%~約15%の間、約5%~約10%の間、約10%~約35%の間、約10%~約30%の間、約10%~約25%の間、約10%~約20%の間、約10%~約15%の間、約15%~約35%の間、約15%~約30%の間、約15%~約25%の間、約15%~約20%の間、約20%~約35%の間、約20%~約30%の間、約20%~約25%の間、約25%~約35%の間、約25%~約30%の間、又は約30%~約35%の間で増加する。幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェルの単層の数を2個の単層だけ増加させると、7Vにおける輝度が、約15%~約50%の間、約15%~約45%の間、約15%~約40%の間、約15%~約35%の間、約15%~約30%の間、約20%~約50%の間、約20%~約45%の間、約20%~約40%の間、約20%~約35%の間、約20%~約30%の間、約20%~約25%の間、約20%~約30%の間、約25%~約50%の間、約25%~約45%の間、約20%~約40%の間、約30%~約50%の間、約30%~約45%の間、約35%~約50%の間、約35%~約45%の間、約35%~約40%の間、約40%~約50%の間、約40%~約45%の間、又は約45%~約50%の間で増加する。幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。幾つかの実施形態では、成形物品は発光ダイオードである。
【0239】
[0251] 幾つかの実施形態では、本明細書に記載のナノ構造を使用して作製した成形物品は、約10%~約50%の間、約10%~約45%の間、約10%~約40%の間、約10%~約35%の間、約10%~約30%の間、約10%~約20%の間、約20%~約50%の間、約20%~約45%の間、約20%~約40%の間、約20%~約35%の間、約20%~約30%の間、約30%~約50%の間、約30%~約45%の間、約30%~約40%の間、約30%~約35%の間、約35%~約50%の間、約35%~約45%の間、約35%~約40%の間、約40%~約50%の間、約40%~約45%の間、又は約45%~約50%の間の固体量子収率を示す。幾つかの実施形態では、ナノ構造は量子ドットである。幾つかの実施形態では、成形物品は発光ダイオードである。
【0240】
[0252] 幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェル単層の数を増加させて作製した膜は、膜量子収率が増加する。幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェルの単層の数を1個の単層だけ増加させると、膜量子収率が、約3%及び約10%、約3%及び約8%、約3%及び約6%、約3%及び約5%、約3%及び約4%、約4%及び約10%、約4%及び約8%、約4%及び約6%、約4%及び約5%、約5%及び約10%、約5%及び約8%、約5%及び約6%、約6%及び約10%、約6%及び約8%、又は約8%及び約10%で増加する。幾つかの実施形態では、ナノ構造中のZnSeシェルの単層の数を2個の単層だけ増加させると、膜量子収率が、約6%及び約20%、約6%及び約15%、約6%及び約12%、約6%及び約10%、約6%及び約8%、約6%及び約7%、約7%及び約20%、約7%及び約15%、約7%及び約12%、約7%及び約10%、約7%及び約8%、約8%及び約20%、約8%及び約15%、約8%及び約12%、約8%及び約10%、約10%及び約20%、約10%及び約15%、約10%及び約12%、約12%及び約20%、約12%及び約15%、又は約15%及び約20%で増加する。
【実施例0241】
[0253] 以下の実施例は、本明細書に記載の製造物及び方法の説明的で非限定的なものである。当分野において通常直面し、本開示を考慮すれば当業者には明らかである、種々の条件、配合、及びその他のパラメーターの適切な修正及び適合は、本発明の意図及び範囲の中にある。
【0242】
[0254] 以下は、高発光性ナノ構造の成長を示す一連の例を示している。
【0243】
実施例1
[0255] 280℃を超える温度におけるオレイン酸亜鉛、トリ-n-ブチルホスフィンセレニド、及びオクタンチオールを前駆体として使用する緑色InPコア上の厚いZnSe/ZnS多層シェルの堆積を記載する。緑色InPコアの合成は、米国特許出願公開第2014/0001405号に開示されている。
【0244】
[0256] 470nmにおける吸収ピーク、ヘキサン中66.32mg/mLの濃度、並びに3.5個の単層のZnSe及び4.5個の単層のZnSのシェル厚さを有するInPコアの化学量論を計算した。オレイン酸亜鉛は、酢酸亜鉛及びオレイン酸から固体として調製した。TBPSeは、セレンペレット及びトリ(n-ブチル)ホスフィンから調製した。
【0245】
[0257] 250mLの3口丸底フラスコに、3.48g(5.54mmol、13.38当量)のオレイン酸亜鉛及び33.54mLの1-オクタデセンを空気中室温において加えた。このフラスコに撹拌子、ゴム隔壁、シュレンクアダプター、及び熱電対を取り付けた。このフラスコをゴムホースでシュレンクラインに接続した。少なくとも3サイクルの真空(<50mtorr)及び窒素フラッシングによって不活性条件を確立した。混合物を窒素流下で80℃まで加熱して、透明溶液を得た。この温度を維持し、フラスコを再び真空下に置き、さらなる気体発生(<50mtorr)が観察されなくなるまでポンプを使用した。加熱マントルを取り外し、窒素流下でフラスコを冷却した。
【0246】
[0258] 温度が約50℃のときに、0.91mLのヘキサン中の0.060g(0.41mmol、1.00当量)のInP(コアの直径=17.79オングストローム)を加えた。フラスコを注意深く真空下に置き、混合物にポンプを使用して<50mtorrにしてヘキサンを除去した。続いて、反応混合物を窒素流下で80℃まで加熱して、透明溶液を得た。2.52mL(5.04mmol、12.16当量)のトリ-n-ブチルホスフィンセレニド(TBPSe)を約100℃において加えた。温度を280℃に設定し、タイマーを開始した。約16分後に280℃の反応温度に到達し、次にタイマーのカウントが40分になるまで維持した。加熱マントルを取り外し、フラスコを自然冷却した。
【0247】
[0259] 温度が100℃未満のときに、窒素流を15標準立方フィート/時まで増加させ、隔膜を取り外し、16.57g(26.38mmol、63.72当量)のオレイン酸亜鉛及び0.45g(2.25mmol、5.48当量)のラウリン酸を粉末漏斗から加えた。隔膜を再挿入した後、さらなる気体発生(<50mtorr)が観察されなくなるまでフラスコを注意深く真空下に置いた。バッファ層のエッチングのため、反応混合物を窒素流下で280℃に加熱し、15分間維持した(昇温時間を含み、ヒーターを開始したときに時間測定を開始した)。続いて、反応フラスコを自然冷却した。4.16mL(23.98mmol、57.93当量)のオクタンチオールを約130~150℃においてシリンジで加えた。温度を300℃に設定し、再びタイマーを開始した。約14分後に反応温度に到達し、50分間維持した。加熱マントルを取り外し、フラスコを自然冷却した。
【0248】
[0260] 反応混合物の温度が100℃未満になってから、窒素流下で熱電対をガラスストッパーと交換した。フラスコを注意深くわずかな真空下に置き、2つのPTFEボトルとともにグローブボックス中に入れた。混合物を1つのPTFEボトル中に注ぎ、フラスコを4mLのヘキサンで2回すすぎ、その洗浄液をPTFEボトル中に加えた。ボトル中の混合物を室温まで冷却した後、4000rpmで5分間遠心分離して、不溶性材料を分離した。透明であるが色彩豊かな上澄みを第2のPTFEボトル中にデカンテーションし、16mLのヘキサンを第1のPTFEボトルに加えて、不溶性副生成物からさらに量子ドット材料を抽出した。第1のボトルを振盪しボルテックスして十分な混合を徹底し、次に4000rpmで5分間の遠心分離を行った。この上澄みを第2のPTFEボトル中の第1の上澄みと合わせ、この時点で第1のボトル中のより軽質の不溶性ワックスを廃棄した。1つにまとめた上澄みをエタノール(2倍の体積、約120mL)で沈殿させ、4000rpmで5分間遠心分離した。この時点でほぼ無色の上澄みを廃棄し、遠心分離物を合計4mLのトルエン中に再分散させた(最初に2mL、次に1mLで2回すすいだ)。
【0249】
[0261] 反応中、約50μLのアリコートを分光分析用に約15分ごとに採取した。これらのアリコートを直ちに1mLのヘキサン中でクエンチし、次に約100μLのこの試料をキュベット中の4mLヘキサンに加えることでさらに希釈した。このキュベットに対して、吸光、蛍光、及び蛍光励起(ピーク発光波長における)分光法を行った。
【0250】
[0262] 各ステップ(ZnSeシェル及びZnSシェル)の終了時に、TEM分析用に約200μLのアリコートを採取した。続いてこれらをグローブボックス中、ヘキサン:エタノールの1:3溶液で3回洗浄した。OD350=0.4のヘキサン溶液をTEM分析用に提出する。
【0251】
[0263] 量子収率(QY)測定のために、ワークアップ中(又は冷却中の最後の反応ステップ後)に1つにまとめた上澄みから0.5mLのアリコートを採取し、量子収率分析用に提出した。
【0252】
実施例2
[0264] 280℃を超える温度におけるオレイン酸亜鉛、トリ-n-ブチルホスフィンセレニド、及びオクタンチオールを前駆体として使用する緑色InPコア上の厚いZnSe/ZnS多層シェルの体積を記載する。結果として得られたナノ構造は、1.5個の単層のZnSe及び2.5個の単層のZnSの目標シェル厚さを有した。
【0253】
[0265] 100mLの4口丸底フラスコに、0.409g(0.651mmol、3.1当量)のオレイン酸亜鉛及び2mLの1-オクタデセンを空気中室温において加えた。このフラスコにガラスストッパー、ゴム隔壁、シュレンクアダプター、及び熱電対を取り付けた。このフラスコをゴムホースでシュレンクラインに接続した。少なくとも3サイクルの真空(<50mtorr)及び窒素フラッシングによって不活性条件を確立した。混合物を窒素流下で80℃まで加熱して、透明溶液を得た。この温度を維持し、フラスコを再び真空下に置き、さらなる気体発生(<50mtorr)が観察されなくなるまでポンプを使用した。加熱マントルを取り外し、窒素流下でフラスコを冷却した。
【0254】
[0266] 温度が約50℃のときに、0.46mLのヘキサン中0.030g(0.21mmol、1.00当量)のInP(コアの直径=18.43オングストローム)を加えた。フラスコを真空下に置き、ポンプを使用して<50mtorrにしてヘキサンを除去した。続いて、反応混合物を窒素流下で80℃まで加熱して、透明溶液を得た。0.308mL(0.616mmol、2.93当量)のトリ-n-ブチルホスフィンセレニド(TBPSe)を約100℃において加えた。温度を280℃に設定し、タイマーを開始した。約16分後に280℃の反応温度に到達し、次にタイマーのカウントが40分になるまで維持した。加熱マントルを取り外し、フラスコを自然冷却した。
【0255】
[0267] 温度が100℃未満のときに、窒素流を15標準立方フィート/時まで増加させ、隔膜を取り外し、1.77g(2.82mmol、13.41当量)のオレイン酸亜鉛を粉末漏斗から加えた。隔膜を再挿入した後、さらなる気体発生(<50mtorr)が観察されなくなるまでフラスコを注意深く真空下に置いた。反応混合物を窒素流下で280℃に加熱し、15分間維持した(昇温時間を含み、ヒーターを開始したときに時間測定を開始した)。続いて、反応フラスコを自然冷却した。0.45mL(2.59mmol、12.35当量)のオクタンチオールを約130~150℃においてシリンジで加えた。温度を300℃に設定し、再びタイマーを開始した。約14分後に反応温度に到達し、50分間維持した。加熱マントルを取り外し、フラスコを自然冷却した。
【0256】
[0268] 反応混合物の温度が100℃未満になってから、窒素流下で熱電対をガラスストッパーと交換した。フラスコを注意深くわずかな真空下に置き、2つのPTFEボトルとともにグローブボックス中に入れた。混合物を1つのPTFEボトル中に注ぎ、フラスコを4mLのヘキサンで2回すすぎ、その洗浄液をPTFEボトル中に加えた。ボトル中の混合物を室温まで冷却した後、4000rpmで5分間遠心分離して、不溶性材料を分離した。透明であるが色彩豊かな上澄みを第2のPTFEボトル中にデカンテーションし、16mLのヘキサンを第1のPTFEボトルに加えて、不溶性副生成物からさらに量子ドット材料を抽出した。第1のボトルを振盪しボルテックスして十分な混合を徹底し、次に4000rpmで5分間の遠心分離を行った。この上澄みを第2のPTFEボトル中の第1の上澄みと合わせ、この時点で第1のボトル中のより軽質の不溶性ワックスを廃棄した。1つにまとめた上澄みをエタノール(2倍の体積、約120mL)で沈殿させ、4000rpmで5分間遠心分離した。この時点でほぼ無色の上澄みを廃棄し、遠心分離物を合計4mLのトルエン中に再分散させた(最初に2mL、次に1mLで2回すすいだ)。
【0257】
[0269] 反応中、約50μLのアリコートを分光分析用に約15分ごとに採取した。これらのアリコートを直ちに1mLのヘキサン中でクエンチし、次に約100μLのこの試料をキュベット中の4mLヘキサンに加えることでさらに希釈した。このキュベットに対
して、吸光、蛍光、及び蛍光励起(ピーク発光波長における)分光法を行った。
【0258】
[0270] 各ステップ(ZnSeシェル及びZnSシェル)の終了時に、TEM分析用に約200μLのアリコートを採取し、続いてグローブボックス中、ヘキサン:エタノールの1:3溶液で3回洗浄した。OD350=0.4のヘキサン溶液をTEM分析用に提出する。
【0259】
[0271] 量子収率(QY)測定のために、ワークアップ中(又は冷却中の最後の反応ステップ後)に1つにまとめた上澄みから0.5mLのアリコートを採取し、量子収率分析用に提出した。
【0260】
実施例3
[0272] 実施例2の合成方法を用いて、反応混合物に加えるオレイン酸亜鉛及びオクタンチオールの量を変更して、1.5個の単層のZnSeと、(A)4.5個の単層のZnS、及び(B)7.5個の単層のZnSとの目標シェル厚さを有し緑色InPコアを有するナノ構造を作製した。ZnSシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛及びオクタンチオール前駆体を使用した、
(A)4.5個の単層のZnSの場合:
4.47gのオレイン酸亜鉛;及び
1.13mLのオクタンチオール.
(B)7.5個の単層のZnSの場合:
11.44gのオレイン酸亜鉛;及び
2.88mLのオクタンチオール。
【0261】
実施例4
[0273] 実施例2の合成方法を用いて、反応混合物に加えるオレイン酸亜鉛、TOPSe、及びオクタンチオールの量を変更して、2.5個の単層のZnSeと、(A)2.5個の単層のZnS、(B)4.5個の単層のZnS、及び(C)7.5個の単層のZnSとの目標シェル厚さを有し緑色InPコアを有するナノ構造を作製した。3つすべてのナノ構造のZnSeシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛及びTOPSe前駆体を使用した。
0.90gのオレイン酸亜鉛;及び
0.68mL(1.92MのTOPSe)。
ZnSシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛及びオクタンチオール前駆体を使用した。
(A)2.5個の単層のZnSの場合(ナノ構造の場合で約50.33オングストローム):
2.47gのオレイン酸亜鉛;
0.62mLのオクタンチオール。
(B)4.5個の単層のZnSの場合(ナノ構造の場合で約62.73オングストローム):
6.91gのオレイン酸亜鉛;及び
1.49mLのオクタンチオール。
(C)7.5個の単層のZnSの場合(ナノ構造の場合で約81.33オングストローム):
15.34gのオレイン酸亜鉛;及び
3.61mLのオクタンチオール。
【0262】
実施例5
[0274] 実施例2の合成方法を用いて、反応混合物に加えるオレイン酸亜鉛、TBPSe、及びオクタンチオールの量を変更して、3.5個の単層のZnSeと、(A)4.5個の単層のZnS、及び(B)7.5個の単層のZnSとの目標シェル厚さを有し緑色InPコアを有するナノ構造を作製した。3つすべてのナノ構造のZnSeシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛及びTBPSe前駆体を使用した。
0.97gのオレイン酸亜鉛;及び
0.70mL(2MのTBPSe)。
ZnSシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛及びオクタンチオール前駆体を使用した。
(A)4.5個の単層のZnSの場合(ナノ構造の場合で約69.29オングストローム):
4.55gのオレイン酸亜鉛;及び
1.14mLのオクタンチオール.
(B)7.5個の単層のZnSの場合(ナノ構造の場合で約87.89オングストローム):
10.56gのオレイン酸亜鉛;及び
2.65mLのオクタンチオール。
【0263】
実施例6
[0275] 実施例2の合成方法を用いて、反応混合物に加えるオレイン酸亜鉛、TBPSe、及びオクタンチオールの量を変更して、3.5個の単層のZnSeと4.5個の単層のZnSとを有する赤色InPコア(コアの直径=27.24オングストローム、0.0581gのInP)を使用するナノ構造を作製した。ZnSeシェルを形成するために以下の量のオレイン酸亜鉛及びTBPSe前駆体を使用した。
1.60のオレイン酸亜鉛;及び
1.16mL(2MのTBPSe)。
ZnSシェル(ナノ構造の場合で約78.10オングストローム)を形成するためにオレイン酸亜鉛及びオクタンチオール前駆体を使用した。
6.08gのオレイン酸亜鉛;及び
1.53mLのオクタンチオール。
【0264】
実施例7
[0276] この手順には、280℃を超える温度においてオレイン酸亜鉛、トリ-n-ブチルホスフィンセレニド(TBPSe)、及びオクタンチオールを前駆体として使用する緑色InPコア上の厚いZnSexS1-x/ZnSシェルの堆積が記載される。
【0265】
[0277] 479nmにおける吸収ピーク、ヘキサン中59.96mg/mLの濃度、並びに3.5個の単層のZnSexS1-x(x=0.5)及び4.5個の単層のZnSのシェル厚さを有するInPコアの化学量論を計算した。オレイン酸亜鉛は、酢酸亜鉛及びオレイン酸から固体として調製される。TBPSeは、セレンペレット及びトリ(n-ブチル)ホスフィンから2M溶液として調製される。
【0266】
[0278] 250mLの3口丸底フラスコに、17.8g(28.34mmol、69.12当量)のオレイン酸亜鉛、5.68g(28.34mmol)のラウリン酸、及び33mLの1-オクタデセンを空気中室温において加えた。このフラスコに撹拌子、ゴム隔壁、シュレンクアダプター、及び熱電対を取り付けた。このフラスコをゴムホースでシュレンクラインに接続した。少なくとも3サイクルの真空(<80mtorr)及び窒素フラッシングによって不活性条件を確立した。混合物を窒素流下で80℃まで加熱して、透明溶液を得た。加熱マントルを取り外し、窒素流下でフラスコを冷却した。
【0267】
[0279] 温度が約100℃のときに、0.41mLのヘキサン中の0.060g(0.41mmol、1.00当量)のInPを加えた。フラスコを真空下に置き、混合物にポンプを使用して<80mtorrにして、10分間ヘキサンを除去した。窒素流下で温度を280℃に設定した。温度が約100℃のときに、1.26mL(2.53mmol、6.17当量)のトリ-n-ブチルホスフィンセレニド(TBPSe)及び0.44mL(2.53mmol、6.17当量)のオクタンチオールを加えた。タイマーを開始した。約16分後に280℃の反応温度に到達し、次にタイマーのカウントが80分になるまで維持した。次に温度を310℃に設定した。シリンジポンプにより20分間かけて4.04mL(23.29mmol、56.80当量)のオクタンチオールを滴下した。すべてのオクタンチオールを添加した後、温度を310℃で60分間維持した。加熱マントルを取り外し、フラスコを自然冷却した。
【0268】
[0280] 反応混合物の温度が120℃未満になってから、窒素流下で熱電対をガラスストッパーと交換した。フラスコを注意深くわずかな真空下に置き、1つのPTFEボトルとともにグローブボックス中に入れた。混合物をPTFEボトル中に注ぎ、フラスコを4mLのヘキサンで2回すすぎ、その洗浄液をPTFEボトル中に加えた。ボトル中の混合物を室温まで冷却した後、4000rpmで5分間遠心分離して、不溶性材料を分離した。混合物を終夜静置した。透明であるが色彩豊かな上澄みを第2のPTFEボトル中にデカンテーションし、16~20mLのヘキサンを第1のPTFEボトルに加えて、不溶性副生成物からさらに量子ドット材料を抽出した。第1のボトルを振盪しボルテックスして十分な混合を徹底し、次に4000rpmで5分間の遠心分離を行った。この上澄みを第2のPTFEボトル中の第1の上澄みと合わせ、この時点で第1のボトル中のより軽質の不溶性ワックスを廃棄した。1つにまとめた上澄みをエタノール(2.5倍の体積)で沈殿させ、4000rpmで5分間遠心分離した。この時点でほぼ無色の上澄みを廃棄し、遠心分離物を合計20mLのヘキサン中に再分散させた。ボトルを約15分間静置して、さらに固体を沈殿させた。固体が沈殿した場合、ボトルを4000rpmで5分間遠心分離した。透明溶液を別のボトルに移した。この溶液を2.5倍の堆積のエタノール(50mL)で洗浄して、量子ドットを沈殿させた。わずかに乳白色の上澄みをデカンテーションした。3~4mLのトルエンを加えて量子ドットを再分散させた。ボトルを2×1mLのトルエンですすいだ。
【0269】
[0281] 反応中、約50μLのアリコートを分光分析用に約15分ごとに採取した。これらのアリコートを直ちに1mLのヘキサン中でクエンチし、次に約100μLのこの試料をキュベット中の4mLヘキサンに加えることでさらに希釈した。このキュベットに対して、吸光、蛍光、及び蛍光励起(ピーク発光波長における)分光法を行った。
【0270】
[0282] 各ステップ(ZnSeシェル及びZnSシェル)の終了時に、TEM分析用に約200μLのアリコートを採取した。続いてこれらをグローブボックス中、ヘキサン:エタノールの1:3溶液で3回洗浄した。OD350=0.4のヘキサン溶液をTEM分析用に提出する。
【0271】
[0283] 量子収率(QY)測定のために、ワークアップ中(又は冷却中の最後の反応ステップ後)に1つにまとめた上澄みから0.5mLのアリコートを採取し、量子収率分析用に提出した。
【0272】
実施例8
【0273】
【0274】
[0284] 表1中に示されるように、セレン源としてTOPSeの代わりにTBPSeを使用すると、レッドシフトが増加し、量子収率が増加した。さらに、表1中に示されるように、InPコアを濃縮すると、レッドシフトが増加し、量子収率が増加した。
【0275】
実施例9
[0285] 実施例2の合成方法を用いて、反応混合物に加えるオレイン酸亜鉛、TBPSe、及びオクタンチオールの量を変更して、2.0個の単層又は2.5個の単層のZnSと、(A)2.5個の単層、(B)3.5個の単層、(C)4.0個の単層、及び(D)4.0個の単層のZnSeとの種々の目標シェル厚さを有し緑色InPコア(457nmの吸収ピーク、58mgのInP)を有するナノ構造を作製した。
【0276】
[0286] 2.5個の単層のZnSe及び2.0個の単層のZnSを有するZnSe/ZnSシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛、TBPSe、及びオクタンチオール前駆体を使用した。
10.3gのオレイン酸亜鉛;
0.73mLのTBPSe(4M);及び
1.06mLのオクタンチオール。
【0277】
[0287] 3.5個の単層のZnSe及び2.5個の単層のZnSを有するZnSe/ZnSシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛、TBPSe、及びオクタンチオール前駆体を使用した。
10.3gのオレイン酸亜鉛;
1.32mLのTBPSe(4M);及び
1.93mLのオクタンチオール。
【0278】
[0288] 4.0個の単層のZnSe及び2.5個の単層のZnSを有するZnSe/ZnSシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛、TBPSe、及びオクタンチオール前駆体を使用した。
12.3gのオレイン酸亜鉛;
1.71mLのTBPSe(4M);及び
2.20mLのオクタンチオール。
【0279】
[0289] 4.5個の単層のZnSe及び2.0個の単層のZnSを有するZnSe/ZnSシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛、TBPSe、及びオクタンチオール前駆体を使用した。
12.2gのオレイン酸亜鉛;
2.15mLのTBPSe(4M);及び
1.88mLのオクタンチオール。
【0280】
実施例10
[0290] 表2中に示されるように、実施例9で作製したナノ構造の光学的性質を分析した。
【0281】
【0282】
[0291] 450nmにおける光学濃度と第1の励起子ピーク吸収波長における光学濃度との比として、増加した青色光正規化吸収が測定される。励起子ピークは、InPコアによる吸収のみに起因し、460nm未満の波長におけるより高エネルギーの吸収は、ZnSeシェル中のフォトン吸収から得られ、シェル体積とともに増加する。これは、例えば2.5個の単層(ML)から4.5個のMLのZnSeシェルとなる場合に、粒子当たりの光学濃度が82%だけ増加することも意味する。シェル中の吸収によって。高エネルギーシェル励起子はコアに迅速に移動し、コアの励起状態によって発光が起こる。この移動は、より厚いシェル材料の低い量子収率によって示されるように、定量的ではないが、吸収の増加は、量子収率の低下よりも比較的大きく、そのためこれらのより厚いシェル材料によって、より多くの青色フォトンが緑色フォトンに変換される。
【0283】
[0292]
図10は、ZnSeシェル厚さが増加する試料の吸収スペクトルを示している。これらのスペクトルは励起子ピークによって正規化される。したがって、増加したシェルの吸収は、450nmにおける吸収強度からはっきり見ることができる。
【0284】
実施例11
[0293] 増加する吸光度を増加させるための別の方法は、シェルバンドギャップを小さくすることである。緑色InPコア(457nmの吸収ピーク、58mgのInP)を有し、3.5個の単層のZnSe0.975Te0.025及び2.5個の単層のZnSを有する目標シェル厚さを有するナノ構造の作製を、実施例2の合成方法を用いて、反応混合物に加える以下の量のオレイン酸亜鉛、TBPSe、テルル化トリオクチルホスフィン(トリオクチルホスフィン中に元素テルルを溶解させて調製)、及びオクタンチオール前駆体を使用して行った。
10.3gのオレイン酸亜鉛;
1.32mLのTBPSe(4M);
0.66mLのTOPTe(0.2M);及び
1.93mLのオクタンチオール。
【0285】
[0294]
図11は、同じピーク波長においてTeフリー試料と比較した、ZnSeシェル中で合金を形成した2.5mol%のテルルを有する実施例を示している。
図11において、OD
450/ピーク比は明確にさらに増加している。
【0286】
実施例12
[0295] 実施例2に記載のようにして、InP/ZnSe/ZnS赤色量子ドットを作製した。シェル厚さを制御するために、オレイン酸亜鉛、トリオクチルホスフィンセレニド(TOPSe)及びドデカンチオール(DDT)の相対前駆体量を変更した。例えばZnSe層厚さを2.5個から4.5個の単層に増加させるために、TOPSeの量を1.7倍に増加させた。結果として得られる種々のシェル厚さの一連の量子ドットを作製した後、次に量子ドットLEDを製造することができる。
【0287】
実施例13
[0296] スピンコーティングと熱蒸着との組み合わせによって、デバイスを作製した。最初に、正孔注入材料ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)(50nm)をUV-オゾン処理したインジウムスズ酸化物(ITO)基板の上にスピンコーティングし、200℃で15分間ベークした。デバイスを不活性雰囲気に移動させ、正孔輸送材料のポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-コ-(4,4’-(N-(4-sec-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))](TFB)(18nm)をスピンコーティングによって堆積し、135℃で15分間ベークした。実施例12の方法によって調製したQD-1(2.5個の
単層のZnSe及び4.5個の単層のZnSを有するInP量子ドット)又はQD-2(4.5個の単層のZnSe及び3個の単層のZnSを有するInP量子ドット)のいずれかの溶液をスピンコーティングによって堆積し、次に電子輸送材料のZnMgO(60nm)をスピンコーティングした。次にAlカソード(150nm)を熱蒸着によって堆積し、続いて、キャップガラス、ゲッター、及びエポキシ樹脂を用いてデバイスを封入した。
【0288】
[0297]
図12中に示される、QD-2で構成される発光層を有するデバイスは、QD-1で構成される発光層を有するデバイスよりも高い最大外部量子効率(EQE)を示した(それぞれ8.0%対6.0%のEQE)。QD-2の発光層を有するデバイスは、QD-2で構成される発光層を有するデバイスよりも、7Vにおいて高い輝度も示した(それぞれ4000cd/m
2対2800cd/m
2)。両方のデバイスは、ある範囲の電圧にわたって類似の電流密度を示し、このことは、QD-2のより厚いシェルが、チェンジャー(changer)注入又は輸送をあまり妨害しないことを示している。
【0289】
[0298] 以下の構成の試料の試験も行った:デバイス-1(ガラス/TFB(20nm)/QD-1(20nm)/ZnMgO(60nm))及びデバイス-2(ガラス/TFB(20nm)/QD-2(20nm)/ZnMgO(60nm))。
図13中に示されるように、QD-1及びQD-2は類似の溶液状態量子収率(それぞれ86%対89%)を示したが、QD-2を含む部分デバイスは、QD-1よりもかなり固体量子収率を示した(それぞれ27%対36%)。これは、電子及び正孔の閉じ込めを増加させるシェル厚さの増加の結果であると考えられる。コアの間の間隔が増加することによって、より厚いシェルが、量子ドット間のエネルギー移動に関連する無放射経路の確率も減少させる。
【0290】
[0299] 格子不整合による電荷注入又はひずみとのトレードオフに到達するまで、ZnSe/ZnS厚さが増加することで、デバイスのEQEが改善され続けるであろうと考えられる。シェル厚さ及び配位子長さと組成との両方が、電荷注入及び閉じ込めに影響を与えるので、最適化された新しいシェル厚さにおける配位子組成を変更することで、EQEがさらに改善される。シェル厚さの制御に用いられる合成技術は、シェルのZnSe/ZnS組成の変更に用いることもできる。結果として得られるZnSe/ZnSの勾配は、固体量子収率の改善に使用することもでき、より高いデバイスEQEを得ることができる。
【0291】
実施例14
[0300] 実施例2の合成方法を用いて、反応混合物に加えるオレイン酸亜鉛、TBPSe、及びオクタンチオールの量を変更して、10.5個の単層のZnSe及び3個の単層のZnSを有しInPコア(コアの直径=27.24オングストローム、0.0581gのInP)を使用するナノ構造を作製した。ZnSeシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛及びTBPSeを使用した。
13.01gのオレイン酸亜鉛;及び
9.41mLの2MのTBPSe。
ZnSシェルを形成するために、以下の量のオレイン酸亜鉛及びオクタンチオール前駆体を使用した。
10.76gのオレイン酸亜鉛;及び
2.70mLのオクタンチオール。
【0292】
[0301] このように本発明を十分に説明してきたが、本発明の範囲又はそのいずれかの実施形態に影響を与えることなく、幅広い同等の範囲の条件、配合物、及びその他のパラメーターの範囲内で同じことを行えることは、当業者には理解されよう。本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、及び刊行物は、それらの全体が参照により完全に本明細書に援用される。