(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183426
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】スタンドおよび機器
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20231221BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G09F9/00 351
H05K5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096929
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】石渡 八代
(72)【発明者】
【氏名】高田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】露久志 力
(72)【発明者】
【氏名】日吉 将之
【テーマコード(参考)】
4E360
5G435
【Fターム(参考)】
4E360AB05
4E360AC05
4E360AC17
4E360AC23
4E360EA14
4E360EA22
4E360EB03
4E360EC13
4E360EC14
4E360ED16
4E360ED23
4E360GA02
4E360GA03
4E360GA11
4E360GB01
5G435AA01
5G435EE13
5G435EE50
5G435LL19
(57)【要約】
【課題】 機器を壁から遠い位置に設置する場合の機器の転倒を抑制することができるスタンドおよび機器を提供する。
【解決手段】 スタンドは、ベースと、ベースから延びる柱部材と、柱部材に摺動可能に装着された杖部材と、柱部材および杖部材のそれぞれに回転可能に装着されたリンクと、を備え、杖部材およびリンクは、柱部材を支持する支持状態および柱部材に近づいた折畳状態に変化し得るものであり、杖部材の下端は、前記ベースの下面の延長線に沿って移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースから延びる柱部材と、
前記柱部材に摺動可能に装着された杖部材と、
前記柱部材および前記杖部材のそれぞれに回転可能に装着されたリンクと、を備え、
前記杖部材および前記リンクは、前記柱部材を支持する支持状態および前記柱部材に近づいた折畳状態に変化し得るものであり、
前記杖部材の下端は、前記ベースの下面の延長線に沿って移動する、
スタンド。
【請求項2】
前記杖部材の先端が、柱部材から最も離れた状態にするように、前記柱部材と前記杖部材とに力を生じさせる弾性体をさらに備えた、
請求項1に記載のスタンド。
【請求項3】
前記杖部材の先端が、前記柱部材から最も離れた状態にするように、前記柱部材と前記リンクとに力を生じさせる弾性体をさらに備えた、
請求項1に記載のスタンド。
【請求項4】
前記ベースに摺動可能に装着され、かつ、前記杖部材に回転可能に取り付けられたアームをさらに備えた、請求項1に記載のスタンド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のスタンドを備え、
前記柱部材の上端部に表示パネルが装着された、
機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スタンドおよび機器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に開示されているように、機器の一例として、スタンドを備えた表示装置の改良技術が検討されている。この表示装置においては、スタンドは、被設置面上に設置され得るベースと、ベースから立ち上がる支部材と、支部材の上端部に固定された表示パネルと、を含んでいる。ベースは、柱部材が固定されたベース本体と、ベース本体に移動可能に取り付けられ、表示装置の背面側へベース本体から引き出され得る引出部材と、を有している。
【0003】
表示装置を壁から遠い位置に設置する場合には、引出部材は、ベース本体に内蔵されたバネの伸長力により、常に、ベース本体から後方へ押し出されている。そのため、ベースは、前後方向に幅が広い状態になっている。一方、表示装置を壁の近い位置に設置する場合には、バネがその伸長力に逆らって縮められることにより、引出部材の一部がベース本体内に挿入される。それにより、ベースは、前後方向に幅が狭い状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のスタンドによれば、表示装置を壁から遠い位置に設置する場合に、引出部材の後端部を支点として、機器が背面方向に傾けられると、引出部材の一部がベース本体内へ挿入されるように、バネに圧縮力が生じる。そのため、ベースの前後方向の幅が狭くなる。その結果、機器が壁側へ転倒するおそれがある。
【0006】
本開示は、上述の問題に鑑みなされたものである。本開示の目的は、表示装置などの機器を壁に寄せて設置することも出来、かつ、壁から遠い位置に設置する場合にも機器の転倒を抑制することができるスタンドおよび機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のスタンドは、ベースと、前記ベースから延びる柱部材と、前記柱部材に摺動可能に装着された杖部材と、前記柱部材および前記杖部材のそれぞれに回転可能に装着されたリンクと、を備え、前記杖部材および前記リンクは、前記柱部材を支持する支持状態および前記柱部材に近づいた折畳状態に変化し得るものであり、前記杖部材の下端は、前記ベースの下面の延長線に沿って移動する。
【0008】
本開示の表示装置は、本開示のスタンドを備え、前記柱部材の上端部に表示パネルが装着されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1のスタンドを備えた機器の斜視図である。
【
図2】実施の形態1のスタンドを備えた機器のスタンドの支持状態を示す部分的切り欠き側断面図である。
【
図3】実施の形態1のスタンドを備えた機器のスタンドの折畳状態を示す部分的切り欠き側断面図である。
【
図4】実施の形態2のスタンドを備えた機器のスタンドの支持状態を示す部分的切り欠き側断面図である。
【
図5】実施の形態3のスタンドを備えた機器のスタンドの支持状態を示す部分的切り欠き側断面図である。
【
図6】実施の形態4のスタンドを備えた機器のスタンドの支持状態を示す部分的切り欠き側断面図である。
【
図7】実施の形態4のスタンドを備えた機器のスタンドの折畳状態を示す部分的切り欠き側断面図である。
【
図8】実施例1におけるスタンドを被設置面上に設置し、機器を傾けた状態を表す模式的断面図である。
【
図9】実施例1における角度θ1、角度θ2、および合力Dの関係を示す表である。
【
図10】実施例2におけるスタンドを被設置面上に設置し、機器を傾けた状態を表す模式的断面図である。
【
図11】実施例2における角度θ1、角度θ2、および合力Dの関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態のスタンドを備えた機器を、図面を参照しながら説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0011】
(実施の形態1)
図1~
図3を用いて、実施の形態1のスタンド100を備えた機器200を説明する。
【0012】
本実施の形態においては、機器200は、スタンド100を備えた表示装置である。具体的には、表示パネル6がスタンド100を構成する柱部材7の上端部に装着されている。なお、機器200は、スタンド100を備えていれば、ホワイトボード等の他のいかなる製品であってもよい。
【0013】
図1~
図3に示されるように、スタンド100は、ベース8、柱部材7、杖部材9、およびリンク10を備えている。
【0014】
ベース8は、プレート状をなしているが、被設置面F上に設置され得る形状であれば、いかなる形状を有していてもよい。被設置面Fとしては、床面、または机の作業面等が考えられる。実施の形態1では、ベース8は、表示パネル6の表示面に垂直かつ鉛直方向を含む断面視において、台形状をなしている。この断面視における台形は、被設置面Fに接触する底辺が直線をなし、その直線から立ち上がる2本の直線を有し、その2本の直線の上端同士を接続する斜辺を有している。ベース8の前側の厚みは、ベース8の後側の厚みよりも小さくなっている。
【0015】
柱部材7は、ベース8から延びる。具体的には、柱部材7は、ベース8が被設置面F上に置かれた場合に、鉛直上方に直線状に延びている。柱部材7の下端側の一部は、中空状をなしている。柱部材7の下端側の一部には、柱部材7の中空部分を露出するように開口7bが設けられている。詳細には、開口7bは、柱部材7の下端側のうち、背面側に設けられている。後述される杖部材9が開口7bから柱部材7の中空状をなす部分の内側の空間に挿入され得る。柱部材7は、柱部材7の中空状をなす部分の両側壁7dに、柱部材7が延びる方向に沿って延びる長孔7aを有している。ただし、本実施の形態の長孔7aは、機器200の側面視において、曲線に沿って延びている。長孔7aには、軸部材13が挿入されている。軸部材13は、後述する杖部材9に固定されている。
【0016】
杖部材9は、直線状に延びる。杖部材9は、その一方端側の位置に、機器200の側方に突出する2つの軸部材13を有している。2つの軸部材13は、それぞれ、中空の柱部材7の両側面を貫通する2つの長孔7aに沿って摺動する。杖部材9は、軸部材13の移動に伴って移動する。つまり、杖部材9は、前述のように、柱部材7に摺動可能に装着されている。杖部材9は、中空状をなしている。杖部材9の一方端側は、柱部材7の開口7bから柱部材7の中空部分に挿入されている。杖部材9の他方側の端部は、曲面をなし、被設置面Fに対して滑るように移動するように構成されている。
【0017】
リンク10は、直線状に延び、柱部材7および杖部材9のそれぞれに回転可能に装着されている。具体的には、リンク10の一方の端部は、円柱状のジョイント12を介して、柱部材7に回転可能に装着されている。リンク10の他方の端部は、円柱状のジョイント11を介して、杖部材9に回転可能に装着されている。
【0018】
図2に示すように、柱部材7を支持する支持状態では、杖部材9は、軸部材13の位置から斜め下方へ延びている。このとき、ベース8が被設置面F上に置かれている場合、杖部材9の下端(下方の先端)は、ベース8が接する被設置面Fに接している。具体的には、杖部材9の下端のうちの曲面の一部である設置部15が、被設置面Fに接する。このとき、杖部材9の下端は、柱部材7から最も離れた状態になる。それにより、杖部材9は、機器200が背面側へ倒れることを抑制するように、機器200に生じる転倒モーメントに抵抗する。つまり、スタンド100の支持状態では、杖部材9は、柱部材7を支持する。したがって、スタンド100の支持状態では、壁Wから離れた位置に機器200が設置されても、機器200が転倒するおそれを低減することができる。
【0019】
図2に示すスタンド100の支持状態から
図3に示すスタンド100の折畳状態へ機器200を変化させる場合、杖部材9の軸部材13を長孔7aに沿って上方に摺動させる。これにより、杖部材9の下端を構成する設置部15がベース8の下面の延長線(
図2および
図3においては、被設置面Fとほぼ同一)に沿って移動する。換言すれば、設置部15は、柱部材7へと近づくように移動する。よって、
図3に示すように、スタンド100の折畳状態では、杖部材9およびリンク10は、柱部材7に沿って延びる状態に近づく。このとき、杖部材9は、柱部材7の中空状をなす部分の内側の空間に部分的に収納される。また、リンク10も、杖部材9の中空状をなす部分の内側の空間に部分的に収納される。したがって、スタンド100の折畳状態では、壁Wに柱部材7を極力接近させることができる。また、スタンド100の折畳状態では、仮に、機器200に転倒する方向の力が作用したとしても、機器200は壁Wによって支えられるため、機器200の転倒は壁Wによって抑制されている。
【0020】
以上説明したように、本実施の形態においては、スタンド100を構成する杖部材9およびリンク10は、柱部材7を支持する支持状態および柱部材7に沿って延びる折畳状態に変化し得る。杖部材9の下端は、ベース8の下面の延長線に沿って移動する。そのため、
図2に示すように、機器200を壁Wから遠い位置に設置したい場合に、杖部材9およびリンク10を支持状態にすれば、機器200が背面側に傾けられても、機器200の転倒を抑制することができる。一方、機器200が壁Wから近い位置に設置したい場合、杖部材9およびリンク10を折畳状態にすれば、機器200を壁Wに容易に近づけることができる。
【0021】
(実施の形態2)
図4を用いて、実施の形態2について説明する。なお、下記において実施の形態1と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態は、以下の点で、実施の形態1と異なる。
【0022】
本実施の形態においては、スタンド100は、杖部材9の先端が柱部材7から最も離れる状態にするように、柱部材7と杖部材9とに力を生じさせる弾性体18をさらに備えている点において、前述の実施の形態と異なる。そのため、機器200が壁Wから遠い位置に設置される場合に、機器200の転倒をより確実に抑制することができる。
【0023】
図4に示すように、弾性体18は、柱部材7とリンク10とに付勢力を生じさせるように、柱部材7とリンク10とに接触している。それにより、ジョイント11が、ジョイント12の回転中心軸まわりに回転し、柱部材7から離れて、被設置面Fに近づく。具体的には、本実施の形態では、スタンド100が、弾性体18としてトーションばねを備える。トーションばねの螺旋状部18aは、リンク10のジョイント12に取り付けられている。トーションばねの螺旋状部18aから、交差する2本の直線に沿って延びるように、2本の先端部18b,18cが延びている。一方の先端部18bは、柱部材7の中空をなす部分の内壁に接触している。他方の先端部18cは、リンク10の内壁のうち、ベース8の下面(被設置面F)の延長線に近い側の側壁10aに接触している。
【0024】
トーションばね(弾性体18)は、その螺旋状部18aから、2本の先端部18b,18cのなす角が大きくなるように、柱部材7及びリンク10のそれぞれ力を加える。これにより、リンク10のジョイント11が柱部材7から遠ざかるように、リンク10が柱部材7に対して回転する。言い換えると、ジョイント11がジョイント12を回転中心として回転移動する。これにより、軸部材13が下方へ移動し、
図4に示されるように、リンク10と杖部材9とがλの文字を形成する。このとき、杖部材9の下端は、柱部材7から離れる方向に移動する。
【0025】
本実施の形態によれば、スタンド100が弾性体18を備えることにより、スタンド100の支持状態をより確実に維持することができる。よって、機器の転倒をより確実に抑制することができる。
【0026】
尚、本実施の形態では、スタンド100が、弾性体18として、トーションばねを備える例について説明したが、本開示はこの構成に限定されない。スタンド100の支持状態を維持するように、リンク10と柱部材7とに前述のような付勢力を生じさせるものであれば、弾性体18はいかなるものであってもよい。
【0027】
(実施の形態3)
図5を用いて、実施の形態3について説明する。なお、下記において実施の形態2と同様である点についての説明は繰り返さない。本実施の形態は、以下の点で、実施の形態2と異なる。
【0028】
本実施の形態においては、弾性体19が杖部材9と柱部材7とに設けられている点において、前述の実施の形態2と異なる。
【0029】
図5に示すように、本実施の形態では、スタンド100は、弾性体19として、引張コイルバネを備える。引張コイルバネは、コイル部19aと、リング状の一方端19bと、リング状の他方端19cと、を備えている。引張コイルバネの一方端19bは、杖部材9の軸部材13に引っかけられる。引張コイルバネの他方端19cは、柱部材7の内側面から内側に突出する突出部7cに引っかけられる。尚、
図5では、引張コイルバネの他方端19cは、ジョイント12に引っかけられてもよい。
【0030】
引張コイルバネの他方端19cが突出部7cに引っかけられたけた場合、引張コイルバネの収縮する力によって、軸部材13が長孔7aの下端に押し付けられる。これにより、杖部材9と柱部材7とがλの文字の状態になるように、リンク10と杖部材9とが回転移動する。このとき、杖部材9の下端は、柱部材7から最も離れた状態になる。その結果、スタンド100の支持状態をより確実に維持することができる。よって、機器の転倒をより確実に抑制することができる。
【0031】
以上説明したように、スタンド100が、弾性体19として引張コイルバネを備える場合であっても、機器200の転倒を効果的に抑制することができる。
【0032】
(実施の形態4)
図6、
図7を用いて、実施の形態4について説明する。なお、下記において実施の形態の1~3と同様である点についての説明は繰り返さない。
【0033】
本実施の形態では、スタンド100が、アーム20をさらに備える。また、本実施の形態においては、トーションバネからなる弾性体18が設けられている位置が実施の形態1とは異なる。本実施の形態においては、弾性体18は、杖部材9とリンク10とがλ状になるように、杖部材9とリンク10とに力を及ぼしている。
【0034】
アーム20は、ベース8に摺動可能に装着され、かつ、杖部材9に対してヒンジ22回りに回転可能に取り付けられている。詳細には、ベース8の内部に、中空のアーム収納部21が設けられている。アーム20は、スタンド100の支持状態とスタンド100の折畳状態との間で変化する際に、アーム収納部21内を摺動する。
【0035】
図6に示すように、支持状態では、アーム20はベース8のアーム収納部21から露出しており、傾斜した杖部材9の下方に位置する。このため、スタンド100の支持状態において、機器200の設置の安定性を向上させることができる。
【0036】
尚、
図7に示すように、スタンド100の折畳状態では、アーム20は、アーム収納部21内に収納される。したがって、スタンド100の折畳状態では、
図3に示される状態と同様に、壁Wに柱部材7を極力接近させることができる。
【0037】
(実施例1)
本開示におけるスタンド100を用いて、使用者が機器200を傾けた際のスタンド100の状態について検証した。
【0038】
図8に、検証に用いたスタンド100を示す。尚、本実施例では、弾性体17として、コイルバネを用いている。コイルバネは、リンク10の、杖部材9に固定されている側の端部に設けられており、杖部材9が延びる方向へ付勢力を生じさせている。
【0039】
以下、
図8に記載の参照符号の部分は、以下のように定義される。
中心点16は、杖部材9の設置面側の先端部の中心位置を示す。
距離Lは他方の端部の中心点16までの距離を示す。
距離L1は、杖部材9の一方の端部の中心(軸部材13の中心)から、ジョイント11の中心までの距離を示す。
距離L2は、ジョイント11の中心から、杖部材9の他方の端部の中心点16までの距離を示す。
角度θ1は、機器200を後方に傾けた角度を示す。
角度θ2は、軸部材13が開口7bの最下部に位置している時に、ベース8の下面の延長線と杖部材9の中心(中心点16とジョイント11の中心を結ぶ直線)とのなす角度を示す。
【0040】
尚、スタンド100の上側部分を背面方向に傾けた際、杖部材9には被設置面から機器200の全質量と同一の大きさの垂直抗力Aが生じている。この垂直抗力Aは、杖部材9が延びる方向における分力Axと、杖部材9が延びる方向に垂直な方向における分力Ayとに分解することができる。また、この分力Ax及び分力Ayは、それぞれ、軸部材13を中心として、力Bおよび力Cに置き換えることができる。
上記を前提として、てこの原理より、
Ay・L2=B・L1
が成り立つため、力Bの大きさは、下記式により表される。
【0041】
B=(L2/L1)・Ay
一方、力Cの大きさは、分力Axの大きさと同一であるため、
C=Ax
となる。また、この力B及び力Cは、それぞれ、柱部材7が延びる方向に対して垂直な力Bx及び力Cxと柱部材7が延びる方向に対して平行な力By及び力Cyとに分解することができる。また、力By-力Cyを合力Dとすると、
D=By-Cy
と表すことができる。
【0042】
機器200の上側端を押して、背面方向にθ1傾けた場合、垂直抗力Aを用いて力B,力Cを表すと
B=(L2/L1)・Ay=(L2/L1)・Acos(θ1+θ2)
C=Ax=Asin(θ1+θ2)
となる。ここで、By・Cyは、Aを用いて表すと
By=Bcosθ2=(L2/L1)・Acos(θ1+θ2)・cosθ2
Cy=C・sinθ2=Asin(θ1+θ2)・sinθ2
となり、合力Dは、
D=(L2/L1)・Acos(θ1+θ2)・cosθ2-Asin(θ1+θ2)・sinθ2
となる。
【0043】
図9に、上記の条件において、角度θ1及びθ2をそれぞれ変化させたときの合力Dの測定結果を示す。
【0044】
ここで、合力Dの値が0もしくは正の値であるときは、機器200の上側端を背面方向に傾けた場合でも、杖部材9は、矢印dの方向に沿って柱部材7に近づくように移動しない。例えば、長さL2を長さL1の1.25倍と設定し、角度θ2の値を30度と設定した場合における、合力Dの値が0となる値、すなわち、角度θ1=35度となるまで機器200を傾けても、杖部材9の下端は、矢印dの方向に移動しない(
図9の濃い灰色部)。
【0045】
以上の結果から、特許文献1のように、表示装置を傾けただけで底面部の形状が収縮する構成と比較して、本開示における機器200の転倒を抑制することができる。
【0046】
尚、表示装置の安全に関する公的規格によれば、製品質量が25kg以上である機器の場合、角度θ1が15度以内では、表示装置が転倒しないようにしなければならない(IEC62368-1 Ed.3)。
【0047】
また、
図9からわかるように、長さL2が長さL1の1.25倍(K=1.25)のとき、公的規格を満たすためには、角度θ2は40度以下に設定しなければならないことが分かる(
図9の薄い灰色部)。
【0048】
(実施例2)
図10及び
図11を用いて、実施例2について説明する。
【0049】
実施例2では、
L1=L2=L3
であると仮定し、合力Dの測定を行った。測定結果を
図11に示す。
【0050】
本実施例では、合力Dは、次の式により表すことができる。
【0051】
D=(L2/L1)・Acos(θ1+θ2)・cosθ2-Asin(θ1+θ2)・sinθ2
本実施例では、長さL1と長さL2とが同一であるため、下記の式が成り立つ。
【0052】
D=(L/L)・Acos(θ1+θ2)・cosθ2-Asin(θ1+θ2)・sinθ2
=Acos(θ1+θ2)・cosθ2-Asin(θ1+θ2)・sinθ2
=A(cos(θ1+θ2)cosθ2-sin(θ1+θ2)sinθ2)
=A((cosθ1cosθ2-sinθ1sinθ2)cosθ2-(sinθ1cosθ2+cosθ1sinθ2)sinθ2)
=A(cosθ1cos2θ2-sinθ1sinθ2cosθ2-sinθ1cosθ2sinθ2-cosθ1sin2θ2)
=A(cosθ1cos2θ2-cosθ1sin2θ2-sinθ1sinθ2cosθ2-sinθ1cosθ2sinθ2)
=A(cosθ1(cos2θ2-sin2θ2)-2sinθ1sinθ2cosθ2)
=A(cosθ1cos2θ2-sinθ1(2sinθ2cosθ2))
=A(cosθ1cos2θ2-sinθ1sin2θ2)
=A(cosθ1sin(90°-2θ2)-sinθ1cos(90°-2θ2))
=A(cosθ1sin2(45°-θ2)-sinθ1cos2(45°-θ2))
=A(sin2(45°-θ2)cosθ1-cos2(45°-θ2)sinθ1)
=Asin(2(45°-θ2)-θ1)
ここで、
0°≦2(45°-θ2)-θ1≦180°
である場合は、合力Dの値は正の値であることを意味する。
【0053】
また、
0°≦90°-2θ2-θ1≦180°
θ1≦90°-2θ2
である。したがって、スタンド100の下面と杖部材9が延びる方向との間の角度をθ2とした際、機器200の上側端を背面方向に傾けた際の角度θ1が、(90°-2θ2)以下であれば、機器200は転倒しない。
【0054】
上記説明したように、本実施例のように、L1=L2=L3と仮定した場合は、角度θ1と角度θ2の関係は簡単な式で表すことができる。
【0055】
また、本実施例では、長孔7aの形状を、ジョイント12から鉛直方向延びる直線状に形成することができる。このため、柱部材7の前後方向における占有幅を最も小さくすることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0057】
7 柱部材
8 ベース
9 杖部材
10 リンク
11,12 ジョイント
20 アーム
100 スタンド
200 機器