(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183428
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電磁ノイズ解析装置および電磁ノイズ解析方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20231221BHJP
G06F 111/08 20200101ALN20231221BHJP
G06F 119/10 20200101ALN20231221BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F111:08
G06F119:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096932
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松島 清人
(72)【発明者】
【氏名】大前 彩
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DJ04
5B146DJ14
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】高周波帯における電磁ノイズに対しても伝播経路を短時間で解析し、かつ、その解析結果に一定の信頼性を担保し得る電磁ノイズ解析装置を提供する。
【解決手段】本発明の電磁ノイズ解析装置は、筐体構造および電線経路の情報に基づき、筐体内部の電磁界特性を統計的に概算して伝播特性確率分布データを出力する伝播特性概算部と、ノイズ源が発するノイズの周波数特性と前記伝播特性確率分布データに基づき、前記ノイズ源から被害装置へのノイズ伝播量を統計的に概算して被害装置上ノイズ確率分布データを出力する伝播量計算部と、前記被害装置上ノイズ確率分布データに基づき、前記被害装置の誤動作リスクを判定する誤動作リスク判定部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体構造および電線経路の情報に基づき、筐体内部の電磁界特性を統計的に概算して伝播特性確率分布データを出力する伝播特性概算部と、
ノイズ源が発するノイズの周波数特性と前記伝播特性確率分布データに基づき、前記ノイズ源から被害装置へのノイズ伝播量を統計的に概算して被害装置上ノイズ確率分布データを出力する伝播量計算部と、
前記被害装置上ノイズ確率分布データに基づき、前記被害装置の誤動作リスクを判定する誤動作リスク判定部と、
を備えた電磁ノイズ解析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記伝播量計算部は、前記ノイズ源の動作状態ごとの複数の周波数特性を用いて、前記ノイズ伝播量を概算する電磁ノイズ解析装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記伝播量計算部は、ノイズの周波数特性だけでなく、ノイズの発生確率も用いて、前記ノイズ伝播量を概算する電磁ノイズ解析装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記誤動作リスク判定部は、前記被害装置の脆弱性に関するデータも用いて、前記被害装置の誤動作リスクを判定する電磁ノイズ解析装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記誤動作リスク判定部は、前記被害装置の脆弱性に関するデータと前記被害装置上ノイズ確率分布データとを用いた演算の結果に基づいて、前記被害装置の誤動作発生確率を出力する電磁ノイズ解析装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記被害装置の脆弱性に関するデータには、ノイズ電圧の大きさに関する電圧閾値と、ノイズの発生確率に関する確率閾値と、が含まれ、
前記誤動作リスク判定部は、前記被害装置上ノイズ確率分布データを、前記電圧閾値および前記確率閾値と比較することで、リスクの大小を出力する電磁ノイズ解析装置。
【請求項7】
請求項1において、
ノイズの周波数特性をディファレンシャルモードからコモンモードに変換して前記伝播量計算部に出力するノイズ特性抽出部を、さらに備える電磁ノイズ解析装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記伝播量計算部は、前記ノイズ伝播量をコモンモードからディファレンシャルモードに変換し、前記被害装置上ノイズ確率分布データとして前記誤動作リスク判定部に出力する電磁ノイズ解析装置。
【請求項9】
伝播特性概算部が、筐体構造および電線経路の情報に基づき、筐体内部の電磁界特性を統計的に概算して伝播特性確率分布データを出力するステップと、
伝播量計算部が、ノイズ源が発生するノイズの周波数特性と前記伝播特性確率分布データに基づき、前記ノイズ源から被害装置へのノイズ伝播量を統計的に概算して被害装置上ノイズ確率分布データを出力するステップと、
誤動作リスク判定部が、前記被害装置上ノイズ確率分布データに基づき、前記被害装置の誤動作リスクを判定するステップと、
を備えた電磁ノイズ解析方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記伝播量計算部は、前記ノイズ源の動作状態ごとの複数の周波数特性を用いて、前記ノイズ伝播量を概算する電磁ノイズ解析方法。
【請求項11】
請求項9において、
前記伝播量計算部は、ノイズの周波数特性だけでなく、ノイズの発生確率も用いて、前記ノイズ伝播量を概算する電磁ノイズ解析方法。
【請求項12】
請求項9において、
前記誤動作リスク判定部は、前記被害装置の脆弱性に関するデータも用いて、前記被害装置の誤動作リスクを判定する電磁ノイズ解析方法。
【請求項13】
請求項9において、
ノイズ特性抽出部が、ノイズの周波数特性をディファレンシャルモードからコモンモードに変換するステップを、さらに備える電磁ノイズ解析方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記伝播量計算部は、前記被害装置上ノイズ確率分布データをコモンモードからディファレンシャルモードに変換して出力する電磁ノイズ解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ノイズ解析装置および電磁ノイズ解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電気装置を組み合わせたシステムにおいては、ある電気装置から発生した電磁ノイズの影響を受けて他の電気装置が誤動作する可能性があるため、EMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁両立性)設計が行われている。また、EMC設計の項目の1つとして、車体などの筐体内における配線についても、電磁ノイズに対する耐性を考慮した経路設計が必要となる。電磁ノイズの解析技術に関しては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の配線経路設計では、例えば特許文献1のように、通常の電磁界解析、すなわち、車体などを構成する筐体の3次元モデルをメッシュ状に分割し、ノイズ源から伝播する電流値をメッシュ毎に計算してゆく解析が主に行われる。しかし、使用される信号の周波数が高い場合(波長が短い場合)、メッシュの量も増やす必要があるので、解析時間が長くなってしまう。特に、近年では使用周波数がGHz領域まで高周波化しているので、解析時間がさらに長くなる傾向にある。また、一般の電磁界解析では、筐体をモデル化した3次元形状と、実際の形状にズレがあると、解析結果の信頼性が低下する可能性もあった。
【0005】
本発明の目的は、高周波帯における電磁ノイズに対しても伝播経路を短時間で解析し、かつ、その解析結果に一定の信頼性を担保し得る電磁ノイズ解析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明の電磁ノイズ解析装置は、筐体構造および電線経路の情報に基づき、筐体内部の電磁界特性を統計的に概算して伝播特性確率分布データを出力する伝播特性概算部と、ノイズ源が発するノイズの周波数特性と前記伝播特性確率分布データに基づき、前記ノイズ源から被害装置へのノイズ伝播量を統計的に概算して被害装置上ノイズ確率分布データを出力する伝播量計算部と、前記被害装置上ノイズ確率分布データに基づき、前記被害装置の誤動作リスクを判定する誤動作リスク判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高周波帯における電磁ノイズに対しても伝播経路を短時間で解析し、かつ、その解析結果に一定の信頼性を担保し得る電磁ノイズ解析装置を提供できる。
【0008】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の計算機システムの全体構成を示す図。
【
図2】実施例1における電磁ノイズ解析の全体フローを示す図。
【
図3】
図2の破線部分における具体的な計算フローを示す図。
【
図4】ノイズ源-被害装置間の伝播特性確率分布のデータ例を示す図。
【
図6】実施例2における電磁ノイズ解析の全体イメージを示す図。
【
図7】実施例2に係る誤動作リスク判定部による処理を示すフローチャート。
【
図8】誤動作リスク判定部による判定結果の一例を示す図。
【
図9】実施例3における電磁ノイズ解析の全体イメージを示す図。
【
図10】実施例4における電磁ノイズ解析の全体イメージを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0011】
実施形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、計算機は、プロセッサ(例えばCPU,GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、プロセッサとしても良い。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであっても良い。プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいても良い。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit),CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0012】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされても良い。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであっても良い。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布しても良い。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されても良いし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されても良い。
【0013】
本発明の実施形態に係る電磁ノイズ解析方法および装置について、以下、
図1から
図10を用いて説明する。本実施形態では、特に、電気自動車などの車両に這い回されるハーネス(配線)のEMCリスクを評価し、配線経路の設計に反映させる場合を例に挙げて説明する。
【0014】
電気自動車では、タイヤをモータで駆動するために、電池から出力される直流電流を交流に変換するインバータが用いられる。インバータには、電池が接続されるとともに、配線(モータケーブル)を用いてモータにも接続されている。電気自動車が加速したり減速したりする場合、制御信号がECU(Engine Control Unit)から配線(制御ケーブル)を介してインバータに伝達され、その信号に従ってインバータがパルス変調によるトルク制御を行う。このインバータのパルス変調時にノイズが生じ、これが部分的に外部に漏れると、ノイズ信号として車内の配線に乗ってしまう可能性がある。そして、配線に乗ったノイズ信号が、車内の電気装置、例えば、ECU、GPS(Global Positioning System)などのアンテナ、を制御する信号に重なると、これらの装置を誤動作されてしまう恐れもある。このため、ノイズに対する耐性を考慮した配線経路設計が必要となる。
【0015】
そこで、本実施形態では、統計的な評価を電磁界解析に組み込むことで、解析時間を短くしつつ、解析結果に一定の信頼性を担保し得る配線経路設計を実現する。具体的には、RCM(Random Coupling Model)理論を適用することにより、筐体の形状などに起因した特性変動の影響を低減する。
【0016】
RCM理論とは、複雑な形状の筐体内を伝搬する高周波の電磁波は、その波長が筐体に対して十分小さい(例えば、10分の1以下)場合、多重反射し、一定時間が経過すると、ランダム状態と見做すことができ、電磁界を統計的な強度分布としてモデル化できる、という理論である。なお、車体についても、単純な形状ではないため、電磁ノイズの波長に対して十分大きいので、RCM理論が適用できる。
【実施例0017】
実施例1に係る電磁ノイズ解析方法は、計算機システムによって実現される。
図1は、実施例1の計算機システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、計算機システムは、プロセッサ1と、記憶部2と、入力部3と、出力部4と、これらを接続する接続線5と、を備える。プロセッサ1は、前述のとおり例えばCPUである。記憶部2は、メモリやHDD(Hard Disk Drive)などである。入力部3は、キーボード、マウス、タッチパネルなどである。出力部4は、例えばディスプレイである。接続線5は、回路基板上の配線、接続コード、ネットワークなどである。これらの構成は、同一の場所にある必要はなく、遠隔地に設置してネットワークなどを介して接続されても良い。
【0018】
プロセッサ1は、記憶部2などに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、各機能を実行する。
図1では、プロセッサ1が実行する各機能を、概念的に、筐体構造・電線経路抽出部101、伝播特性概算部102、ノイズ特性抽出部103、伝播量計算部104、誤動作リスク判定部105として示している。各部の詳細については、後述する。
【0019】
記憶部2は、解析・計測データベース201および設計データベース202を有する。解析・計測データベース201は、被害装置データ(D16)およびノイズ源データ(D13)を格納する。被害装置としては、ECUや各種アンテナなどが想定され、ノイズ源としては、インバータや各種センサなどが想定される。被害装置データ(D16)は、例えば、装置の試験を通じて得られる脆弱性に関するデータ、装置の重要度に関するデータが該当する。脆弱性に関するデータは、被害装置において所定の周波数でどれだけの強度のノイズがあると誤動作が発生するかに関するデータであり、受信感度周波数特性や、複数の閾値(後述の電圧閾値や確率閾値)が含まれる。装置の重要度に関するデータは、筐体内の装置ごとのリスクの影響度合いを示すデータであり、車両の場合、例えば、車両の動作を制御する装置の重要度が、カーオーディオ関連の装置の重要度よりも高く設定される。ノイズ源データ(D13)は、ノイズ源が発するノイズに関するデータであり、解析や実測によって予め取得される。なお、取得されるデータに含まれるノイズは、放射ノイズであっても、伝導ノイズであっても良い。
【0020】
次に、本実施例における電磁ノイズ解析のフローについて、
図2から
図5を用いて説明する。
図2は、実施例1における電磁ノイズ解析の全体フローを示す図であり、
図3は、
図2の破線部分における具体的な計算フローを示す図である。
【0021】
まず、伝播特性概算部102で行うRCM理論を適用した処理に対する前処理として、筐体構造・電線経路抽出部101が、設計データベース202から、筐体構造データおよび電線経路データ(D10)を取得し、筐体特性と、各ポートの間の伝播特性(電線経路の結合特性)と、を計算する。筐体特性は、筐体構造・電線経路抽出部101が、設計データベース202から取得した筐体構造データに基づいて計算することで得られる特性であり、筐体(車体)の体積やQ値などが含まれる。一方、各ポート間の伝播特性は、筐体構造・電線経路抽出部101が、設計データベース202から取得した電線経路データに基づき、あるポートと他のポートとの関係(例えばあるポートであるノイズ源が他のポートである被害装置に与える影響)を個別に計算していくことで得られる特性である。この計算では、各ポートの放射特性に影響のある近傍領域のみをモデル化すれば良いので、計算コストが削減できる。
【0022】
次に、伝播特性概算部102は、RCM理論を適用した処理を実行する。すなわち、伝播特性概算部102は、
図3に示すように、筐体構造・電線経路抽出部101が計算した筐体特性に基づいて、複数の分布パターンをランダム行列計算により生成し、筐体(車体)内の電磁界の状態を、最頻値を中心とした確率分布の特性モデルとして表現する。さらに、伝播特性概算部102は、この筐体特性に基づく特性モデル(遠方特性モデル)と、筐体構造・電線経路抽出部101が計算した、各ポートの放射特性およびポート間伝播特性に基づく特性モデル(近傍特性モデル)と、を用いて、伝播特性確率分布を概算する。この伝播特性確率分布は、精緻な3D解析を行わなくても、概算値として得ることができるので、解析時間の短縮につながる。
【0023】
図4は、ノイズ源-被害装置間の伝播特性確率分布のデータ例を示す図であり、x軸が周波数、y軸が伝播特性、z軸が確率分布、をそれぞれ表している。
図5は、
図4をz軸の方向から見たときのグラフであり、x軸が周波数、y軸が伝播特性を示している。
【0024】
図4および
図5によれば、周波数ごとに、伝播特性、すなわち、ノイズ源から被害装置へのノイズの伝わり易さが異なり、その確率分布も異なることが分かる。また、
図4において、一定の確率以上で生じる特性の範囲は無視できないので、その特性範囲に対応する形で伝播特性の上限と下限を定めると、
図5に示すような、上限ラインおよび下限ラインが描ける。さらに、
図4において、確率分布のピークを周波数ごとに結べば、
図5に最頻値のラインを描くこともできる。
【0025】
一方、ノイズ特性抽出部103は、解析・計測データベース201からノイズ源データ(D13)を取得し、ノイズ源が発するノイズの周波数特性を抽出する。
【0026】
伝播量計算部104は、伝播特性概算部102が出力する伝播特性確率分布データ(D12)と、ノイズ特性抽出部103が出力するノイズ周波数特性データ(D14)と、に基づき、ノイズ源から被害装置へのノイズ伝播量を統計的に概算する。
【0027】
誤動作リスク判定部105は、伝播量計算部104が出力する被害装置上ノイズ確率分布データ(D15)と、解析・計測データベース201が出力する被害装置データ(D16)と、に基づいて、被害装置が誤動作するリスクを判定する。例えば、誤動作リスク判定部105は、被害装置データ(D16)に含まれる受信感度周波数特性(どの周波数帯でどの程度のノイズが被害装置に加わると誤動作が発生するかの関係を示す情報)と、被害装置上ノイズ確率分布データ(D15)と、を用いた乗算などの演算の結果に基づいて、被害装置における誤動作の発生確率を算出する。さらに、誤動作リスク判定部105は、誤動作の発生確率と、被害装置データ(D16)に含まれる所定の閾値とを比較し、閾値以上の場合にリスク大、閾値未満の場合リスク小、と判定しても良い。
【0028】
誤動作リスク判定部105による判定結果は、誤動作リスクデータ(D17)として、設計データベース202に出力される。誤動作リスクデータ(D17)は、設計データベース202に記憶されるとともに、必要に応じて故障率としてSIL(Safety Integrity Level)設計にフィードバックされ、設計データの更新に活用される。また、誤動作リスクデータ(D17)は、出力部4を介して「〇〇操作時、××の確率でエラー発生」などと表示される。このように、リスクが被害装置の誤動作発生確率として定量的に示されると、EMC設計する上で有用となる。
2つ目の相違点は、本実施例の誤動作リスク判定部105が、誤動作の発生確率自体は計算せず、過大なノイズ(誘起電圧)が発生するか、その発生確率がどの程度かを、電圧閾値や確率閾値と比較することで、リスクの大小を判定する点である。
ステップS202において、誘起電圧の確率分布が電圧閾値を超える場合、誤動作リスク判定部105は、そのような誘起電圧のノイズを発生させる確率が所定の確率閾値より大きいか否かを判定する(ステップS203)。ノイズの発生確率が確率閾値より大きい場合、誤動作リスク判定部105は、高リスクであると判定するとともに、設計データベース202に出力し(ステップS204)、判定処理を終了する。
一方、ステップS202において、誘起電圧の確率分布が電圧閾値以下の場合、または、ステップS203において、ノイズの発生確率が確率閾値以下の場合、誤動作リスク判定部105は、設計データベース202に出力することなく、判定処理を終了する。このように、本実施例の誤動作リスク判定部105は、強いノイズが発生する(電圧閾値を超える)可能性があっても、その発生確率が十分に低い(確率閾値を超えない)場合には、被害装置が誤動作するリスクとしては小さいと判定する。すなわち、本実施例では、ノイズの強度だけでなく、その発生確率も勘案してリスクを判定しているので、精度の高い判定ができ、過剰なEMC設計を回避できる。
なお、ノイズ電圧の大きさに関する電圧閾値と、ノイズの発生確率に関する確率閾値と、は、被害装置の特性に応じて決まる閾値であり、解析・計測データベース201から出力される被害装置データ(D16)に含まれる。また、確率閾値は、SILで定められた故障率の基準値に対応させるのが望ましい。