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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183429
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】切削加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20231221BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B23Q17/00 E
G05B19/418 Z
B23Q17/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096933
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福岡 信彦
(72)【発明者】
【氏名】西川 顕二
【テーマコード(参考)】
3C029
3C100
【Fターム(参考)】
3C029EE01
3C029FF06
3C100AA22
3C100AA27
3C100AA38
3C100BB13
3C100BB19
3C100BB33
(57)【要約】
【課題】加工装置における切削加工情報を適切に設定して消費電力量を低減し、結果的にCO2排出量を削減することができる切削加工システムを提供する。
【解決手段】加工装置の切削加工情報を設定する切削加工システムにおいて、消費電力量、被削材情報、工具情報、及び加工条件情報を連携するように紐付けてデータベースを構築した後、入力された少なくとも、被削材情報、工具情報、及び加工条件情報に基づいてデータベースから消費電力量を抽出し、また、被削材の材質情報に基づいて、データべースに登録されている工具情報、及び加工条件情報と消費電力量を抽出し、且つ被削材の加工形状情報を用いて候補消費電力量を算出し、データベースから抽出された消費電力量、算出された候補消費電力量、及びこれらに紐付けられた工具情報、及び加工条件情報を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被削材の切削加工を行う加工装置における切削加工情報を設定する切削加工システムであって、
前記加工装置と前記加工装置の付帯設備の電力を測定する電力測定部と、
前記電力測定部により測定した電力データに基づいて消費電力量を算出する測定データ処理部と、
前記消費電力量を測定した前記加工装置における、前記被削材の被削材情報と、切削工具の工具情報と、加工条件情報と、前記消費電力量とを紐付けて登録するデータベースと、
評価する前記切削工具(以下、評価切削工具と表記する)の前記工具情報と、前記加工条件情報と、前記被削材情報とを入力する入力部と、
入力された前記評価切削工具の前記工具情報と、前記加工条件情報と、前記被削材情報とに一致する条件の前記消費電力量を前記データベースから抽出する評価工具消費電力量抽出部と、
前記評価切削工具で切削される前記被削材の前記被削材情報に基づいて、前記データベースに登録されている前記被削材情報と一致する候補を抽出し、且つ抽出された前記候補に対応する単位体積当たりの消費電力量と抽出された前記候補の前記被削材情報とから候補消費電力量を算出すると共に、前記評価工具消費電力量抽出部で抽出された前記消費電力量より少ない前記候補消費電力量の順に、複数の前記候補消費電力量を選択する候補消費電力量算出部と、
前記評価工具消費電力量抽出部で抽出した前記消費電力量、及びこれに紐付けられた前記工具情報、前記加工条件情報と、前記候補消費電力量算出部で選択された複数の前記候補消費電力量、及びこれに紐付けられた前記工具情報、前記加工条件情報とを表示する表示装置を備えた
ことを特徴とする切削加工システム。
【請求項2】
請求項1に記載の切削加工システムであって、
前記候補消費電力量算出部における前記候補消費電力量は、
前記評価切削工具で切削される前記被削材から切削によって除去される除去体積と、前記データベースから抽出された前記候補の前記単位体積当たりの消費電力量を乗算して求められる
ことを特徴とする切削加工システム。
【請求項3】
請求項1に記載の切削加工システムであって、
前記データベースには、対象とする前記加工装置で使用する前記切削工具に加えて、これ以外の種類の異なる前記切削工具を用いて前記消費電力量を測定し、前記工具情報、前記加工条件情報、前記被削材情報、及び前記消費電力量とを紐付けして登録されている
ことを特徴とする切削加工システム。
【請求項4】
請求項1に記載の切削加工システムであって、
前記工具情報は、工具材質、工具種類、工具直径、刃数を含む
ことを特徴とする切削加工システム。
【請求項5】
請求項1に記載の切削加工システムであって、
前記加工条件情報は、回転数、送り速度、径切込み量、軸切込み量、切削油使用の有無を含む
ことを特徴とする切削加工システム。
【請求項6】
請求項1に記載の切削加工システムであって、
前記被削材情報は、前記被削材の材質、加工形状、切削により除去される除去体積を含む
ことを特徴とする切削加工システム。
【請求項7】
請求項1に記載の切削加工システムであって、
前記表示装置の表示画面には少なくとも、
前記被削材情報、前記工具情報、及び前記加工条件情報の情報入力部と、
前記消費電力量の測定の開始、及び測定の停止を指示する測定入力部と、
前記消費電力量を算出する処理を実行させる算出指示部と、
算出された前記消費電力量を表示する電力表示部と、
入力された前記被削材情報、前記工具情報、及び前記加工条件情報と、算出された前記消費電力量を前記データベースに登録する登録指示部と、
前記評価工具消費電力量抽出部、及び前記候補消費電力量算出部の処理の実行を指示する評価/改善処理指示部とが設けられている
ことを特徴とするする切削加工システム。
【請求項8】
請求項1に記載の切削加工システムであって、
前記表示装置の表示画面には少なくとも、
前記評価工具消費電力量抽出部で抽出した前記消費電力量、及びこれに紐付けられた前記工具情報、前記加工条件情報と、前記候補消費電力量算出部で算出した複数の前記候補消費電力量、及びこれに紐付けられた前記工具情報、前記加工条件情報とが表形式で表示される
ことを特徴とするする切削加工システム。
【請求項9】
請求項8に記載の切削加工システムであって、
前記表示装置の表示画面には、前記消費電力量と前記切削工具の材質のリサイクル性に関する評価値と、これに前記消費電力量を乗算した評価指標の項目が追加されて表示される
ことを特徴とする切削加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の切削加工を行う加工装置の切削加工情報を設定する切削加工システムに係り、特に消費電力量を低減できる切削加工情報を提示する切削加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料の切削加工に用いられる加工装置、例えばNC加工装置(マシニングセンタ、ターニングセンタ等に代表される工作機械)には、一般的に、主軸の温度調整装置や、切削油供給装置、及びエアー供給装置が、付帯設備として設けられている。
【0003】
そして、加工精度の確保や加工装置の安定稼働のために、付帯設備は常時稼働しておく必要がある。ところで、待機中の消費電力量は、常時稼働する付帯設備や加工装置の制御装置等(サーボアンプ等)の稼働によるものが主となる。一方、金属材料(以下、被削材と表記する)を加工する加工装置の切削加工作業における単位時間当たりの消費電力量は、待機中の消費電力量に比べて更に大きくなる。
【0004】
このように、消費電力量が大きくなると、結果的に発電所におけるCO排出量の増大を招くことになる。このため、消費電力量を低減できる加工装置が求めれており、例えば、特開2019-82894号公報(特許文献1)には、以下の構成の加工条件調整装置が提案されている。
【0005】
特許文献1においては、製造機械の加工に用いられる工具毎の加工条件、サイクルタイム等の状態データに基づいて消費電力量、及びサイクルタイムを考慮した学習モデルを構築する機械学習装置を導入し、加工条件調整装置では、機械学習装置の学習結果である学習モデルを用いて、製造機械から得られる状態データに基づいた加工条件の調整を行い、調整した加工条件に基づく加工運転を実行した結果の消費電力量、及びサイクルタイムを判定データとして加工条件の調整内容を評価することができる構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-82894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、サイクルタイムの長い製造機械に合わせて、消費電力量の小さい加工条件を設定して、複数の製造機械の全体で消費電力量を低減することは有効である。しかしながら、特許文献1における手法は、現時点の稼動状態の適正化技術であるため、更に消費電力量を少なくしてCO排出量を削減することまで配慮されていない。このような背景から、この種の加工装置の消費電力量をできるだけ少なくしてCO2排出量を削減することが求められている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、加工装置における切削加工情報を適切に設定して消費電力量を低減し、結果的にCO2排出量を削減することができる切削加工システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、
被削材の切削加工を行う加工装置における切削加工情報を設定する切削加工システムであって、
加工装置と加工装置の付帯設備の電力を測定する電力測定部と、
電力測定部により測定した電力データに基づいて消費電力量を算出する測定データ処理部と、
消費電力量を測定した加工装置における、被削材の被削材情報と、切削工具の工具情報と、加工条件情報と、消費電力量とを紐付けて登録するデータベースと、
評価する切削工具(以下、評価切削工具と表記する)の工具情報と、加工条件情報と、被削材情報とを入力する入力部と、
入力された評価切削工具の工具情報と、加工条件情報と、被削材情報とに一致する条件の消費電力量をデータベースから抽出する評価工具消費電力量抽出部と、
評価切削工具で切削される被削材の被削材情報に基づいて、データベースに登録されている被削材の材質情報と一致する候補を抽出し、且つ抽出された候補に対応する単位体積当たりの消費電力量と抽出された候補の被削材の加工形状情報とから候補消費電力量を算出すると共に、評価工具消費電力量抽出部で抽出された消費電力量より少ない候補消費電力量の順に、複数の候補消費電力量を選択する候補消費電力量算出部と、
評価工具消費電力量抽出部で抽出した消費電力量、及びこれに紐付けられた工具情報、加工条件情報と、候補消費電力量算出部で選択された候補消費電力量、及びこれに紐付けられた工具情報、加工条件情報とを表示する表示装置を備えた
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、現時点で使用している切削工具に対して消費電力量が少ない推奨される切削加工情報が提示され、提示された推奨される切削加工情報を参考にして切削加工情報を変更することにより、加工装置の消費電力量を可及的に低減することができ、結果的にCO2排出量の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】切削加工システムの構成を説明するための構成図である。
図2】切削加工システムの詳細な構成を説明するための構成図である。
図3】データベースを構築する処理フローを説明するフローチャート図である。
図4】データベースに登録された被削材と切削工具に関する登録情報の例を説明する説明図である。
図5】データベースに登録された加工条件と消費電力量に関する登録情報の例を説明する説明図である。
図6】評価する切削工具に関する消費電力量の算出と、データべースを用いた消費電力量を算出する制御フローを説明するフローチャート図である。
図7】表示装置における切削加工情報の入力ボタン、及び操作ボタンを説明するの表示画面の例を示す図である。
図8】評価した切削工具の消費電力量とデータベースに登録された切削加工情報における消費電力量の第1の算出結果を説明する説明図である。
図9】選択された切削加工情報に基づく消費電力量の測定結果を説明する説明図である。
図10】評価した切削工具の消費電力量とデータベースに登録された切削加工情報における消費電力量の第2の算出結果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本実施形態では、被削材の切削加工を行う加工装置を対象にして、以下、添付の図面を参照して説明する。尚、実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一の符号を付するようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【0013】
ただし、本発明は以下に示す実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更しえることは当業者であれば容易に理解される。
【0014】
本実施形態では、加工装置の切削加工情報を設定する切削加工システムにおいて、消費電力量、被削材情報、工具情報、及び加工条件情報とを連携するように紐付けてデータベースを構築した後、入力された被削材情報、工具情報、及び加工条件情報と一致する消費電力量をデータベースから抽出し、また、被削材情報に基づいて、データべースに登録されている被削材情報に一致する候補を抽出し、且つ抽出された候補の単位体積当たりの消費電力量と抽出された候補の被削材情報とを用いて、抽出された候補の候補消費電力量を算出し、データベースから抽出された消費電力量と、この消費電力量より少ない推奨される複数の候補消費電力量、及びこれらに紐付けられた工具情報、加工条件情報を表示する、ことを特徴としている。
【0015】
これによって、推奨される切削加工情報を参考にして切削加工情報を変更することにより、加工装置の消費電力量を可及的に低減することができ、結果的にCO2排出量の削減を図ることができる。尚、データベースから抽出された消費電力量、及びこれらに紐付けられた工具情報、加工条件情報を併せて表示することで、候補消費電力量との比較を容易に行うことができる。
【0016】
[加工装置を含む切削加工システムの概略の説明]
図1は、本実施形態になる切削加工システムの構成を、模式的かつ例示的に示した図である。図1では、加工装置1に切削加工システム20が組み合わされた例を示し、図1の切削加工システムは、ブロック状の被削材4を切削工具2で切削加工する例を示している。ここで、加工装置1は、NC(Numerical Control)プログラムで制御が可能なNCフライス盤やマシニングセンタ等である。
【0017】
加工装置1では、切削工具2を主軸3に固定し、主軸モータ6で主軸3を回転させ、且つ被削材4をテーブル5に固定して、切削工具2と被削材4を相対的に移動して被削材4を所望の形状に加工する。
【0018】
このとき、NCプログラムが記憶されたNC装置9からの指令により、サーボアンプ8が主軸モータ6に入力する電流値を制御する。これにより指令通りの回転数にて主軸モータ6を回転させる。また、同様にNC装置9からの指令により、サーボアンプ8が送り軸モータ7に入力する電流値を制御する。これにより指令通りの送り速度となるように送り軸モータ7を回転させる。切削工具2は、一体型(ソリッド)や刃先交換式のエンドミルなどである。
【0019】
加工装置1には、切削油供給装置10、温度調整装置11、及びエアー供給装置12が付帯設備として備えられている。切削油供給装置10と温度調整装置11は、加工装置1を介して電力が給電され、エアー供給装置12は配電盤13から電力が給電される。
【0020】
切削油供給装置10は、切削加工時に切削工具2と被削材4の切削加工領域に切削油を吐出し(図示せず)、切削工具2の冷却や切りくずの除去等を行うための装置である。温度調整装置11は、主軸3の温度を調整(主として冷却)するための装置である。また、エアー供給装置12は、主軸3に対する切削工具2の脱着や、切りくずを除去するためのエアーブロー等を行うための装置である。
【0021】
切削加工システム20は、測定部21と、切削加工システム本体22と、表示装置23と、データベース24を備えている。測定部21は電力計などで構成され、電源供給ケーブルにクランプ電流センサ14を設置し、また、配電盤に電圧測定ケーブル(図示せず)を接続して電力を測定する。
【0022】
クランプ電流センサ14aは、加工装置1、切削油供給装置10、及び温度調整装置11の合算した消費電力量を測定し、クランプ電流センサ14bでは、エアー供給装置12の消費電力量を測定する。尚、クランプ電流センサ14aでは、加工装置1、切削油供給装置10、及び温度調整装置11の合算された消費電力量が測定されるが、加工装置1と切削油供給装置10と温度調整11の稼働状態と測定データを照合することで、各装置毎に測定データとの紐付けが可能である。
【0023】
切削加工システム本体22は、測定部21で測定した消費電力量を、この時の被削材情報、工具情報、加工条件情報(回転数、送り速度等であり、具体的には図5に示している通りである)と紐付けしてデータベース24に登録する。これの繰り返しによってデータベース24を構築、拡張することができる。これらの登録される被削材情報、工具情報、加工条件情報は「切削加工情報」として取り扱われる。
【0024】
そして、このデータベース24を利用して消費電力量を算出することができる。先ず、少なくとも、被削材の材質と加工形状を含む被削材情報、工具情報、加工条件情報を入力することで、データベース24に登録されたデータから入力された各情報(切削加工情報)と一致する消費電力量を抽出する。
【0025】
次に、入力した被削材情報を基に、データベースに登録された入力した被削材の材質情報と一致する候補を抽出し、且つ抽出された候補の単位体積当たりの消費電力量と、入力した被削材の加工形状情報とを用いて、抽出された候補の候補消費電力量を求め、候補消費電力量の小さい順に複数の候補消費電力量とこれに紐付けられた切削加工情報(推奨される切削加工情報)を選択する。
【0026】
そして、上述した候補消費電力量とこれに紐付けられた切削加工情報を表示部23に画面情報として提示する。この提示された切削加工情報から、消費電力量を低減できる適切な切削加工情報を選択して設定することで、加工装置はこれに沿った切削プロセスを実行する。これによって、消費電力量を少なくして結果的にCO2排出量の削減を図ることができる。
【0027】
[切削加工システムの詳細な説明]
図2は、図1に示す切削加工システムの詳細な構成を、模式的かつ例示的に示した図である。
【0028】
切削加工システム本体22は、汎用の計算機上に構成することができる。そのハードウェア構成は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)などにより構成される演算部31、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどを用いたSSD(Solid State Drive)などにより構成される記憶部32、キーボードやマウス等の入力デバイスより構成される情報入力部48、NIC(Network Interface Card)、入出力インターフェース機器などにより構成される通信部33等を備えている。
【0029】
通信部33は、有線ネットワーク、若しくは無線ネットワーク、又は個別の専用ケーブルやUSB(Universal Serial Bus)ケーブル等を介して、測定部21と、データベース24、及び表示装置23と接続されている。データベース24はHDDなどの記憶媒体で構成され、表示装置23には、LCD(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ等の表示装置を用いている。
【0030】
演算部31は、測定データ処理部44と、データ連携処理部45と、評価工具消費電力抽出部46と、消費電力算出部47とを有している。演算部31では、記憶部32に記憶されている電力測定プログラム39と、消費電力量算出プログラム40と、被削材・切削工具・加工条件・消費電力量連携プログラム41と、評価工具の消費電力量抽出プログラム42と、改善加工条件の消費電力量算出プログラム43とを、RAMへロードしてCPUで実行することにより各機能部を実現する。
【0031】
測定データ処理部44は、電力測定プログラム39を実行することで機能し、データ連携処理部45は、被削材・切削工具・加工条件・消費電力量連携プログラム41を実行することで機能し、評価工具消費電力抽出部46は、評価工具の消費電力量抽出プログラム42を実行することで機能し、消費電力算出部47は、消費電力量算出プログラム40と改善加工条件の消費電力量算出プログラム43を実行することで機能する。
【0032】
記憶部32は、被削材情報記憶領域34、工具情報記憶領域35、加工条件情報記憶領域36、測定信号記憶領域37、算出消費電力量記憶領域38を備えている。更に、電力測定プログラム39、消費電力量算出プログラム40、被削材・切削工具・加工条件・消費電力量連携プログラム41、評価工具の消費電力量抽出プログラム42、改善加工条件の消費電力量算出プログラム43の各プログラムを記憶する記憶領域を備えている。
【0033】
[データベースの説明]
次に、被削材情報と工具情報と加工条件情報、及び消費電力量とが紐付けられたデータベース24の構築について、図3のフローチャートに沿って説明する。尚、必要に応じて、図1図2も参照する。
【0034】
このデータベース24の構築は、図7に示す表示装置23の画面の操作エリア104に表示された操作ボタン141、142、143、145を操作手順に従って操作することで実行される。
【0035】
≪ステップS01≫
ステップS01では、加工装置1において、データベース24に登録する切削工具2を用いて、被削材4を加工し、切削加工中における電力を測定する。消費電力量は測定部21で測定し、電力測定プログラム39を実行する測定データ処理部44にて、被削材4の加工開始から終了までの測定データを、通信部33を介して測定信号記憶領域37に格納する。尚、測定される消費電力量は、加工装置1と付帯設備10~12を含む測定データである。
【0036】
≪ステップS02≫
ステップS02では、データベース24に登録する切削工具2を使用したときにおける消費電力量を算出する。消費電力量は、消費電力量算出プログラム40を実行する消費電力算出部47で、被削材の加工開始から加工終了までに測定した電力データの平均値と、切削加工に要した時間の積にて算出し、また、切削によって除去された被削材の体積から、単位体積当たりの消費電力量(図5参照)を算出し、加工時間と併せて算出消費電力量記憶領域38に格納する。
【0037】
尚、単位体積当たりの消費電力量は、消費電力量が算出されるときの工具情報、加工条件情報を反映しており、工具情報、加工条件情報が異なれば、単位体積当たりの消費電力量も異なることになる。したがって、後述する候補消費電力量を求める際に、この単位体積当たりの消費電力量を用いれば、工具情報、加工条件情報を間接的に反映した候補消費電力量を算出することができる。
【0038】
尚、消費電力量は加工開始から加工終了までの電力データを時間で積分したものであり、電力データの合計値とサンプリング周期の積によって算出した消費電力量も用いることがきる。
【0039】
≪ステップS03≫
ステップS03では、ステップS02で消費電力量を測定した時の被削材の情報を入力する。これは情報入力部48にて、被削材情報として少なくとも、被削材の材質、加工形状、除去体積(図4参照)を入力し、これらを被削材情報記憶領域34に格納する。尚、除去体積は、加工形状(W、D、H)から求められる。尚、「W」は幅、「D」は奥行、「H」は高さである。尚、除去体積は直接入力してもよいし、加工形状から算出してもよい。
【0040】
≪ステップS04≫
ステップS04では、電力を測定した時の切削工具の工具情報を入力する。これは情報入力部48にて、工具情報として少なくとも、工具種類、工具材質、構造、チップ、工具直径、刃数(図4参照)を入力して、工具情報記憶領域35に格納する。
【0041】
≪ステップS05≫
ステップS05では、電力を測定した時の加工条件情報を入力する。情報入力部48にて、加工条件情報として少なくとも、回転数、送り速度、切削速度、1刃送り量、切込み量(径方向、軸方向)、切削油の使用の有無(図5参照)を入力して加工条件記憶領域36に格納する。
【0042】
≪ステップS06≫
ステップS06では、被削材・工具・加工条件・消費電力量連携プログラム41によりデータ連携処理部45で、算出した消費電力量、及び加工時間と、入力した被削材情報、工具情報、及び加工条件情報を紐付けてデータベース24に登録する。
【0043】
尚、データベース24には、対象の加工装置で加工する被削材と使用する切削工具、及び加工条件以外に、工具種類の異なる切削工具や加工条件についても消費電力量を測定して登録することができる。
【0044】
異なる切削工具の種類として、例えば刃先交換式でインサートチップ形状が異なる四角形チップの切削工具や、丸形チップの切削工具、或いはチップ材質が異なる超硬やセラミックスで作られた切削工具があり、これらはデータベース24に登録される。また、加工条件として、切削油の使用有無など、様々な加工条件があり、これらもデータベース24に登録される。
【0045】
したがって、データベースには、種々の被削材、切削工具、加工条件、消費電力量等を登録することが可能となる。これらの登録された情報を利用しながら、消費電力量が少ない適切な切削工具や加工条件を提示することが可能となる。
【0046】
図4、及び図5は、データベースの登録情報の参考例を示しており、図4図5で2つに分割して示している。
【0047】
データベース160は、被削材情報161、工具情報162、加工条件情報163、加工時間164、消費電力量165、単位体積当たりの消費電力量(消費電力量/単位体積)166で構成される。
【0048】
被削材情報161の体積167は、データベース24への登録時に、形状情報から算出された、切削によって除去される被削材の材料の体積である。また、加工条件163の切削速度168と1刃送り量169は、データベース24への登録時に、工具直径と刃数、及び回転数と送り速度から算出されたものである。
【0049】
また、加工時間164は、消費電力量165の測定時の加工時間である。消費電力量/単位体積166は、消費電力量165を被削材161から除去された体積167で除算した単位体積当たりの消費電力量である。この、単位体積当たりの消費電力量は、図4図5の登録番号#2~#4から判るように、同じ除去体積であっても工具や加工条件によって異なるものである。
【0050】
[切削加工情報を提示する具体的な処理の説明]
次に、切削加工に使用するために評価する切削工具(以後、評価工具と上記する)で切削加工プロセスを実行し、推奨する切削加工条件を提示する処理について、図6に示すフローチャートに沿って説明する。尚、必要に応じて、図1図2も参照する。この切削加工情報を提示する具体的な処理は、図7に示す表示装置23の画面の操作エリア104に表示された評価/改善ボタン146を操作することで実行される。
【0051】
≪ステップS11≫ ~ ≪ステップS13≫
ステップS11では、評価工具によって切削される被削材の被削材情報を入力し、ステップS12では、評価工具の工具情報を入力し、ステップS13では、評価工具の加工条件情報を入力する。入力する各種情報は、図3に示すステップS03、ステップS04、及びステップS05と同じ種類の情報である。
【0052】
≪ステップS14≫
ステップS14では、ステップS11~ステップS13で入力した評価工具の工具情報と、評価工具の加工条件情報と、被削材情報とを利用して、これらの切削加工情報と一致する切削加工情報(既に登録されている)をデータベース24で探索し、探索された該当の切削加工情報(切削加工情報は、工具情報と、加工条件情報と、被削材情報とである)、及びこれに紐付けられた消費電力量を抽出する。
【0053】
尚、評価工具は、実際の製品の切削プロセスで使用されている切削工具であり、既にデータベース24に登録されているため、評価工具に対応した切削加工情報と消費電力量を抽出することができる。
【0054】
≪ステップS15≫
ステップS15では、ステップ11で入力した被削材情報の材質(ここでは、図7に示す材質(SUS304))を基に、データベース24に登録された候補を抽出する。ここで抽出される候補は、被削材の材質情報が一致するものであり、複数の候補が抽出される。そして、抽出された候補の消費電力量である候補消費電力量をそれぞれ算出する。
【0055】
候補消費電力量とは、消費電力量を低減するための推奨される消費電力量である。もちろん、すべての候補が推奨される消費電力量をではなく、ステップS14で求めた消費電力量より多い候補も存在する。
【0056】
候補消費電力量は、抽出された候補におけるデータベース24に登録されている単位体積当たりの消費電力量(消費電力量/単位体積)と、入力された被削材の切削で除去される除去体積とを乗算することで得られる。尚、除去体積は、加工形状を基に算出してもよいし、直接入力してもよい。
【0057】
そして、抽出された全ての候補に対して、抽出された候補における単位体積当たりの消費電力量(消費電力量/単位体積)を用いて、総当たりで候補消費電力量を算出する。上述したように、単位体積当たりの消費電力量は、データベースに登録する消費電力量が算出されるときの工具情報、加工条件情報を反映している。したがって、候補消費電力量を求める場合は、工具情報、加工条情報が紐付けられた単位体積当たりの消費電力量を用いれば、工具情報、加工条件情報を間接的に反映した候補消費電力量を算出することができる。
【0058】
また、候補消費電力量を求める別の方法として、データベース24に登録されている加工条件の軸切込み量と径切込み量、及び送り速度と被削材の加工形状から加工時間を算出し、登録されている消費電力量の加工時間と、算出した加工時間の比率を基に候補消費電力量を算出することも可能である。
【0059】
≪ステップS16≫
ステップS16では、ステップS15で算出された、複数の同一材質の被削材における候補消費電力量の中で、ステップS14で求められた消費電力量より少ない消費電力量から順に、同一の被削材に対応する複数の候補を選択して抽出する。尚、抽出する候補の数は任意であり、必要な候補数の設定が可能である。本実施形態では、3個の候補(図8の#1~#3)を抽出している。
【0060】
≪ステップS17≫
ステップS17では、ステップS14で抽出した評価工具の消費電力量、及び切削加工情報と、ステップS16で抽出した複数の候補の候補消費電力量、及びこれに紐付けられた切削加工情報とを表示装置23に提示(表示)する。
【0061】
そして、提示された推奨される切削加工情報を参考にして切削加工情報を変更することにより、加工装置の消費電力量を可及的に低減することができ、結果的にCO2排出量の削減を図ることができる。尚、ステップS14で抽出された消費電力量より少ない候補消費電力量が存在しない場合は、ステップS14で抽出した工具情報、加工条件情報が推奨されることになる。
この表示装置23に表示される情報については、図8、及び図10で説明する。尚、図8、及び図10では、切削加工情報のうち、工具情報と加工条件情報を表示する例を示す。
【0062】
[操作画面の説明]
次に、切削加工システム20の表示装置23に表示する操作画面について説明する。尚、この操作画面は一例であり、これ以外の操作画面とすることもできる。
【0063】
図7は、図1に示す切削加工システム20において、表示装置23の操作画面(GUI/Graphical User Interface)を示している。この画面は、被削材情報、工具情報、及び加工条件情報の入力と、切削加工システム20の操作を行うための操作画面である。
【0064】
操作画面101は、被削材情報入力エリア102と、工具情報・加工条件情報入力エリア103と、操作エリア104で構成される。
【0065】
被削材情報入力エリア102では、被削材情報を材質入力部111と加工形状入力部112a~112cに入力する。
【0066】
工具仕様・加工条件入力エリア103では、工具情報を工具種類入力部121、工具材質入力部122、工具構造入力部123、チップ入力部124、工具直径入力部125、工具刃数入力部126に入力する。ここでは、工具種類入力部121と、工具材質入力部122と、工具構造入力部123と、チップ入力部124は、プルダウンによって選択する構成とされている。
【0067】
また、工具情報・加工条件入力エリア103では、加工条件を回転数入力部127、送り速度入力部128、径切込み量入力部129、軸切込み量入力部130、切削油有無入力部131に入力する。尚、切削油の使用の有無は、プルダウンによって選択する構成とされている。
【0068】
操作エリア104では、測定開始ボタン141を押すことで、電力測定プログラム39が実行されて電力測定が開始され、測定停止ボタン142を押すことで電力測定が停止され、測定した電力データは測定信号記憶領域37に格納される。
【0069】
また、消費電力量算出ボタン143を押すことで、消費電力量算出プログラム40が実行されて消費電力量が算出され、消費電力量表示部144に表示される。また、データベース登録ボタン145を押すことで、被削材・切削工具・加工条件・消費電力連携プログラム41が実行され、入力した被削材情報、工具情報、加工条件情報、及び算出した消費電力量がデータベース24に登録される。
【0070】
評価/改善ボタン146を押すことで、評価工具の消費電力量抽出プログラム41と改善加工条件の消費電力算出プログラム42が実行される。入力した被削材情報、工具情報、加工条件情報に該当する評価工具の消費電力量が抽出される。更に、入力した被削材の材質情報を基に、データベースに登録されている工具情報、加工条件情報を抽出し、且つ被削材の除去体積と単位体積当たりの消費電力量から候補消費電力量が算出され、最後に複数の候補消費電力量と、これに対応する工具情報、加工条件情報が表示される。
【0071】
図8は、評価工具の消費電力量と、候補消費電力量と、これらに紐付けられたデータベース24の切削加工情報とを表示する表示画面150の一例である。この表示画面150は、図7に示す操作画面から画面が切り替えられたものである、表示画面150には、少なくとも消費電力算出結果151が表示される。
【0072】
消費電力算出結果151は、入力した被削材の材質、加工形状を基に、データベースに登録されている工具情報、加工条件情報を抽出し、且つ被削材の除去体積と単位体積当たりの消費電力量から候補消費電力量を算出し、更に候補消費電力量が少ない順に小さいものから3個抽出した結果である。また、比較を容易にするために、評価工具を使用した時の工具情報と加工条件情報、及び消費電力量を合わせて表示している。
【0073】
これらの情報は図8にあるように、横方向に向けて(1)工具情報、(2)加工条件情報、(3)消費電力量、(4)評価工具との比率の項目が設定され、縦方向に向けて(1)評価工具の切削加工情報、(2)複数の抽出された推奨される切削加工情報の項目が設定され、表形式で表示されている。
【0074】
図8において、「#0」が、評価工具に関する工具情報、加工条件情報、消費電力量152、及び評価工具との比率153を示し、「#1」~「#3」が、消費電力量を低減するために抽出された工具情報、加工条件情報、候補消費電力量152、及び評価工具153との比率を示している。評価工具との比率153は、評価工具の消費電力量152を基準に比率を算出したものである。
【0075】
図8に示す例(「#1」~「#3」)では、いずれも評価工具(「#0」)に比べて消費電力量が少ない候補消費電力量と、これに対応する工具情報、加工条件情報が提示されている。そして、ここに表示された工具情報、加工条件情報を参考にして、現状の切削加工プロセスの工具情報、及び加工条件情報を変更することで、消費電力量の少ない切削加工プロセスを実施でき、CO排出量の低減が可能となる。
【0076】
尚、図8において、候補消費電力量は「#1」のセラミックス工具が小さいが、セラミックス工具はリサイクルが難しい。一方、これ以外の「#2」、及び「#3」の例では、切削工具は超硬工具である。超硬工具はリサイクル環境が整備されているため、資源循環の観点では、セラミックス工具に比べて超硬工具の方が環境負荷は小さい。
【0077】
このような情報を表示するため、画面150には消費電力量、工具情報、加工条件情報以外に、環境負荷を判断する情報として、工具材質のリサイクル(資源循環)の情報154を表示することができる。尚、今後、リサイクル技術が進化した場合には、工具材質のリサイクル(資源循環)の情報154の内容を変更することが可能である。
【0078】
図9は、被削材から切削によって同じ体積を除去する場合に異なる工具で加工した場合の消費電力量の測定結果の例を示している。
【0079】
図9は、図4、及び図5に示したデータベース24の4種類の切削工具(#1、#2、#3、#4における「工具情報」を参照)を使用して、除去体積20cmを切削加工した結果である。図9の#1、#2、#3、#4は、図4、及び図5のデータベース24の切削工具に対応する。尚、#1、#2、#3、#4は、以降は「#1工具」、「#2工具」、「#3工具」、「#4工具」と表記する。
【0080】
図9では、切削加工に直接関わる主軸モータと送り軸モータの消費電力量と、それ以外の付帯設備と加工装置の制御装置等による消費電力量(以後、付帯設備の消費電力量と表記する)を分けて示している。
【0081】
図9では、#1工具の消費電力量が大きい。これは、#1工具は、工具直径が小さく径方向の切込み量が小さいことで、他の工具に比べて加工時間が長くなり、それに伴って付帯設備の消費電力量も増加したことが要因である。また、#2工具に比べて#3工具の消費電力量が小さいのは、#2工具に比べて#3工具の方が、工具径が大きく径方向の切込み量が大きいことで加工時間が短くなり、それに伴って付帯設備の消費電力量が減少したことが要因である。
【0082】
更に、#3工具に比べて#4工具の消費電力量が小さいのは、#3工具の材質が超硬に対して、#4工具の材質がセラミックスで切削油を使用していないドライ加工のため、付帯設備のクーラントポンプを稼働させていないことが要因である。
【0083】
尚、主軸・送り軸モータの消費電力量を比較すると、#4工具は、#2工具、及び#3工具に比べて大きい。これは、#2工具および#3工具に比べて#4工具の回転数が10倍程度大きく、主軸モータの消費電力量が大きくなったことが要因である。
【0084】
ただし、#4工具は、主軸・送り軸モータの消費電力量増加に対して、加工時間が短いことと、ドライ加工でクーラントポンプを稼働しないことによる消費電力量の低減効果が大きく、他の工具に比べて消費電力量が小さくなっている。
【0085】
故に、評価工具に対して消費電力量を低減するには、加工時間を短くすること、切削油を使用せずにクーラントポンプを稼働させないことが消費電力量の低減に有効である。尚、ここではクーラントの使用有無の例を示したが、工具毎に必要なクーラントの吐出量(吐出圧)を調整して供給(例えば、吐出量:多、中、少)するようにクーラントポンプの稼働を制御することも消費電力量の低減に有効である。
【0086】
このようにして、本実施形態になる切削加工システムは、使用中の工具に対して消費電力量の少ない工具情報や加工条件情報を提示できる。そして、切削工具毎に消費電力量が少ない加工条件情報が提示されるため、その加工条件情報を参考にして設定することで、消費電力量が少ない切削加工プロセスを実行することができる。
【0087】
更に、消費電力量の少ない加工条件は加工時間が短くなるため、切削加工プロセス全体に適用することで、総加工時間が短い切削加工プロセスが実現される。このため、同数量の生産に対して、短い時間(短期間)での生産が可能となり、生産計画と連携して加工装置の停止時間を増加させることができるため、更に消費電力量を低減して、CO排出量の削減を図ることが可能となる。
【0088】
図10は、評価工具の消費電力量と、データベースに登録された切削加工情報と候補消費電力量の抽出結果を表示する他の表示画面160の一例である。
【0089】
標示画面160は、消費電力算出結果161で構成される。図10に示す例は、図8に示した例に加えて、リサイクル性評価値163と評価指標164を追加したものである。
【0090】
リサイクル性評価値163は、工具材質のリサイクル性を示し、リサイクル性が良い超硬は評価値が小さく、リサイクルが困難なセラミックスは評価値を大きくしている。また、評価指標164は、消費電力量162とリサイクル性163の積であり、消費電力量とリサイクル性を総合した指標となる。
【0091】
消費電力算出結果161では、評価指標164が小さい順に#1から表示している。評価工具との比率165は、評価工具の評価指標を基準にしたものである。#3工具は、消費電力量162は一番小さいが、工具材質がセラミックスでリサイクルが困難ためリサイクル性評価値が大きく、#1工具と#2工具に比べて評価指標164が大きい。尚、リサイクル性評価値は、今後、リサイクル技術が進化した場合には、評価値を変更することが可能である。
【0092】
また、リサイクル性評価値163は、データベース24に登録する際に工具の材料を基に登録し、改善加工条件の消費電力量算出プログラム43を実行して消費電力量を算出する際に、リサイクル性評価値163を用いて評価指標164を算出する。
【0093】
このようにして、切削加工システムは、使用中の工具に対して消費電力量と切削工具のリサイクル性を考慮した環境負荷を評価指標にした加工条件が提示できる。切削工具毎に環境負荷の小さい加工条件が提示されるため、その条件を参考にすることで、消費電力量が少なく、且つ資源循環性を考慮した切削加工プロセスを実行することが可能となる。
【0094】
尚、評価工具の工具情報と被削材情報及び加工条件情報を入力して、それに一致した条件をデータベース24から探索して消費電力量を抽出したが、データベース24に登録した番号で評価工具を指定しても良い。
【0095】
また、対象の加工装置で、登録する切削工具を用いて実際に加工を行い、消費電力量を測定して加工した工具情報と被削材情報と加工条件と消費電力量を連携してデータベースに登録する例を示した。
【0096】
これに対して、対象の加工装置1とは別の加工装置を用いて同じ工具と加工条件で同じ被削材を加工した消費電力測定データから、対象の加工装置の消費電力量を推定(換算)できる場合には、別の加工装置で測定した消費電力測定データをデータベースに登録して、データベースを構築してもよい。
【0097】
また、対象の加工装置の消費電力量をシミュレーションにて推定できる場合には、シミュレーションで得た消費電力量をデータベースに登録することも可能である。
【0098】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…加工装置、2…切削工具、3…主軸、4…被削材、5…テーブル、6…主軸モータ、7…送り軸モータ、8…サーボアンプ、9…NC装置、10…切削油供給装置、11…温度調整装置、12…エアー供給装置、13…配電盤、14…クランプ電流センサ、20…切削加工システム、21…測定部、22…切削加工システム本体、23…表示部、24…データベース、31…演算部、32…記憶部、33…通信部、34…被削材情報記憶領域、35…工具情報記憶領域、36…加工条件情報記憶領域、37…測定信号記憶領域、38…算出消費電力量記憶領域、39…電力測定プログラム、40…消費電力量算出プログラム、41…被削材・加工条件・消費電力連携プログラム、42…評価工具の消費電力量抽出プログラム、43…改善加工条件の消費電力算出プログラム、44…想定データ処理部、45…データ連携処理部、46…評価工具消費電力量抽出部、47…消費電力量算出部、48…入力部、101…操作画面、102…被削材情報入力エリア、103…工具情報・加工条件入力エリア、104…操作エリア、150…消費電力量算出結果を表示する表示画面、160…消費電力量算出結果を表示する別の表示画面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10