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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183432
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20231221BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01D5/245 110J
G01D5/347 110L
G01D5/347 110A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096938
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】磯村 翼
【テーマコード(参考)】
2F077
2F103
【Fターム(参考)】
2F077AA47
2F077CC02
2F077NN30
2F077PP19
2F103BA05
2F103CA02
2F103DA01
2F103DA13
2F103EA02
2F103EA12
2F103EB01
2F103EB11
2F103EB33
2F103FA01
(57)【要約】
【課題】回転ディスクの回転角度を算出する際に偏心角度誤差を解消する。
【解決手段】環状の符号パターン(110)が設けられた回転ディスク(100)の回転を、検出部(120)により検出し、回転ディスク(100)の回転角度をエンコーダ処理部(130)により算出するロータリエンコーダであって、符号パターン(110)は、同心円状の第1符号パターン(111)及び第2符号パターン(112)により構成され、第1符号パターン(111)は、半径方向に対して第1の傾きを有する複数の第1パターンにより構成され、第2符号パターン(112)は、半径方向に対して第1の傾きとは異なる方向の第2の傾きを有する複数の第2パターンにより構成され、エンコーダ処理部(130)は、第1符号パターン(111)の検出部(120)による検出結果と、第2符号パターン(112)の検出部(120)による検出結果とに基づいて、符号パターン(110)の偏心を求め、偏心により回転角度を補正する、ロータリエンコーダ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の符号パターン(110)が設けられた回転ディスク(100)の回転を、検出部(120)により検出し、前記回転ディスク(100)の回転角度をエンコーダ処理部(130)により算出するロータリエンコーダ(1)であって、
前記符号パターン(110)は、同心円状の第1符号パターン(111)及び第2符号パターン(112)により構成され、
前記第1符号パターン(111)は、半径方向に対して第1の傾きを有する複数の第1パターンにより構成され、
前記第2符号パターン(112)は、半径方向に対して前記第1の傾きとは異なる方向の第2の傾きを有する複数の第2パターンにより構成され、
前記エンコーダ処理部(130)は、前記第1符号パターン(111)の前記検出部(120)による検出結果と、前記第2符号パターン(112)の前記検出部(120)による検出結果とに基づいて、前記符号パターン(110)の偏心を求め、前記偏心により前記回転角度を補正する、
ロータリエンコーダ。
【請求項2】
前記第1の傾きと前記第2の傾きとは、+45度と-45度、または、-45度と+45度のいずれかである、
請求項1に記載のロータリエンコーダ。
【請求項3】
前記第1符号パターン(111)を構成する前記複数の第1パターンと、前記第2符号パターン(112)を構成する前記複数の第2パターンとは、スリットにより構成され、
前記検出部(120)は、
前記第1符号パターン(111)及び前記第2符号パターン(112)に光を照射する光源(121)と、
前記第1符号パターン(111)を透過した前記光源からの光と、前記第2符号パターン(112)を透過した前記光源からの光とのそれぞれを、一定の大きさの開口部により絞る固定スリット(122)と、
前記第1符号パターン(111)及び前記固定スリット(122)を透過した前記光源からの光を検出すると共に、前記第2符号パターン(112)及び前記固定スリット(122)を透過した前記光源からの光を検出する受光部(123)とを有する、
請求項1に記載のロータリエンコーダ。
【請求項4】
前記エンコーダ処理部(130)は、
前記第1符号パターン(111)の前記検出部(120)による検出結果と、前記第2符号パターン(112)の前記検出部(120)による検出結果とに基づいて、角度データを生成する角度データ変換部(131)と、
前記第1符号パターン(111)の前記検出部(120)による検出結果と、前記第2符号パターン(112)の前記検出部(120)による検出結果との位相の変化に基づいて、前記符号パターン(110)の偏心を示す偏心データを算出する偏心算出部(132)と、
前記偏心データに基づいて前記角度データを補正する補正部(133)と、
を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のロータリエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はロータリエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
スリットが設けられた回転ディスクと、受発光部を有する検出部と、検出部の検出結果から回転ディスクの回転角度を算出するエンコーダ処理部とを備える、光学式のロータリエンコーダが存在する。このロータリエンコーダの場合、回転ディスクの回転中心とスリットのパターン中心とを正確に一致させず偏心させた状態では、1回転に1周期の誤差(以下、「偏心角度誤差」と言う)を生じることが知られている。
【0003】
従来のロータリエンコーダにおいて、回転ディスクに設けられた符号パターンは図9のようになっている。図9において、回転ディスク100Aには、各スリットが半径方向に沿って形成された符号パターン110Aが形成されている。このような符号パターン110Aの場合、偏心を検出することはできない。
そこで、上記の偏心角度誤差を解消するため、回転ディスクの回転中心を挟んで対向する2カ所の位置にそれぞれ検出部を配置することで、180度位相の異なる2つの角度データを生成し、これら2つの角度データを平均する手法が、特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-146113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の手法は、180度位相の異なる2つの角度データを生成するため、2つの検出部を回転ディスクの回転中心を挟んで対向する位置に正確に配置する必要がある。このように検出部を2カ所に設けるため、ロータリエンコーダの大型化、部品点数の増加によるコスト上昇、2つの検出部の調整による設置作業性悪化、といった問題を生じていた。
【0006】
従って、回転ディスクの符号パターンを光学的に検出して回転角度を算出する際に、装置大型化とコスト上昇を招かず、面倒な調整を必要とせず、角度データに含まれる1回転に1周期の偏心角度誤差を精度よく解消できるロータリエンコーダが望まれている。
本発明は、装置を大型化することなく、回転ディスクの符号パターンを光学的に検出して回転角度を算出する際に、偏心角度誤差を解消可能なロータリエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るロータリエンコーダは、環状の符号パターンが設けられた回転ディスクの回転を、検出部により検出し、回転ディスクの回転角度をエンコーダ処理部により算出するロータリエンコーダであって、符号パターンは、同心円状の第1符号パターン及び第2符号パターンにより構成され、第1符号パターンは、半径方向に対して第1の傾きを有する複数の第1パターンにより構成され、第2符号パターンは、半径方向に対して第1の傾きとは異なる方向の第2の傾きを有する複数の第2パターンにより構成され、エンコーダ処理部は、第1符号パターンの検出部による検出結果と、第2符号パターンの検出部による検出結果とに基づいて、符号パターンの偏心を求め、求めた偏心により回転角度を補正する。
【0008】
この発明に係るロータリエンコーダにおいて、第1の傾きと第2の傾きとは、+45度と-45度、または、-45度と+45度のいずれかである。
【0009】
この発明に係るロータリエンコーダにおいて、第1符号パターンを構成する複数の第1パターンと、第2符号パターンを構成する複数の第2パターンとは、スリットにより構成され、検出部は、第1符号パターン及び第2符号パターンに光を照射する光源と、第1符号パターンを透過した光源からの光と、第2符号パターンを透過した光源からの光とのそれぞれを、一定の大きさの開口部により絞る固定スリットと、第1符号パターン及び固定スリットを透過した光源からの光を検出すると共に、第2符号パターン及び固定スリットを透過した光源からの光を検出する受光部とを有する。
【0010】
この発明に係るロータリエンコーダにおいて、エンコーダ処理部は、第1符号パターンの検出部による検出結果と、第2符号パターンの検出部による検出結果とに基づいて、角度データを生成する角度データ変換部と、第1符号パターンの検出部による検出結果と、第2符号パターンの検出部による検出結果との位相の変化に基づいて、符号パターンの偏心を示す偏心データを算出する偏心算出部と、偏心データに基づいて角度データを補正する補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、回転ディスクの符号パターンを光学的に検出して回転角度を算出する際に、第1符号パターンと第2符号パターンの検出部との検出結果に基づいて符号パターンの偏心を求め、求めた偏心により回転角度を補正することで、装置を大型化することなく、回転ディスクの符号パターンを光学的に検出して回転角度を算出する際に、偏心角度誤差を解消可能なロータリエンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1における回転ディスクに設けられた符号パターンを示す構成図である。
図2】実施の形態1におけるロータリエンコーダの構成を示す構成図である。
図3】実施の形態1において、回転ディスクの符号パターンと検出部の固定スリットとの偏心による位置関係の変化を示す説明図である。
図4】実施の形態1において、回転ディスクと符号パターンとの偏心による位置関係の変化を示す説明図である。
図5】実施の形態1において、偏心存在時の符号パターンの位相特性を示す説明図である。
図6】実施の形態1において、回転ディスクの符号パターンと検出部の固定スリットとの第1の配置例を示す説明図である。
図7】実施の形態1において、回転ディスクの符号パターンと検出部の固定スリットとの第2の配置例を示す説明図である。
図8】実施の形態1において、他の符号パターンを示す説明図である。
図9】従来のロータリエンコーダにおける回転ディスクに設けられた符号パターンを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のロータリエンコーダの実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
実施の形態1.
はじめに、本発明の実施の形態1におけるロータリエンコーダ1の基本的な構成について、図1図2を参照して説明する。
図1は、実施の形態1における回転ディスク100に設けられた符号パターン110を示す構成図である。図2は、実施の形態1におけるロータリエンコーダ1の構成を示す構成図である。
【0014】
[ロータリエンコーダ1の構成]
まず、図2を参照してロータリエンコーダ1の構成を説明する。
ロータリエンコーダ1は、回転体10の回転角度を算出するものであり、主に、回転ディスク100、回転軸101、検出部120、及びエンコーダ処理部130を備えている。このロータリエンコーダ1は、回転体10の回転角度を算出する際に、角度データに含まれる偏心角度誤差を解消するように補正を行う。
【0015】
回転ディスク100は、回転軸101により回転体10に接続されている。このため、回転ディスク100は、回転体10と同じ回転速度で回転する。回転ディスク100には、図1に示すように、スリットによる符号パターン110が形成されている。符号パターン110は、同心円状の、第1符号パターン111及び第2符号パターン112により構成されている。
第1符号パターン111は、半径方向に対して第1の傾きを有する複数の第1パターンにより構成されている。例えば、第1符号パターン111は、図1に示すように、半径方向に対して+45度の傾きを有する複数の第1パターンのスリットで構成されている。
第2符号パターン112は、半径方向に対して第1の傾きとは異なる方向の第2の傾きを有する複数の第2パターンにより構成されている。例えば、第2符号パターン112は、図1に示すように、半径方向に対して-45度の傾きを有する複数の第2パターンのスリットで構成されている。
また、第1パターンを-45度、第2パターンを+45度と逆の向きに傾けてもよい。なお、+45度と-45度とは偏心の検出に最も高い感度を有する効果的な値であるが、この角度に限定されるものではない。例えば、+30度~+60度の範囲の傾きと、-30度~-60度の範囲の傾きとの組み合わせであってもよい。
【0016】
検出部120には、回転ディスク100を挟むように、光源121と、固定スリット122及び受光部123とが設けられている。
検出部120は、光源121により回転ディスク100の符号パターン110を照射し、符号パターン110と固定スリット122とを透過した透過光を受光部123により受光する透過型センサであり、回転ディスク100の回転を光学的に検出する。なお、回転ディスク100に透過型の符号パターン110の代わりに反射型パターンを形成した場合は、検出部120として反射型センサを用いることができる。
【0017】
受光部123は、4個の受光素子の組からなる受光素子組を1ユニットとして、第1符号パターン111に対応した第1受光部123aと、第2符号パターン112に対応した第2受光部123bとの複数ユニットで構成されている。
同様に、固定スリット122は、第1符号パターン111及び第1受光部123aと第2符号パターン112及び第2受光部123bとに合わせて、第1固定スリット122a及び第2固定スリット122bにより構成されている。ここで、第1固定スリット122aは、第1符号パターン111を構成する第1パターンと同じ傾き、例えば、+45度のスリットで構成されている。第2固定スリット122bは、第2符号パターン112を構成する第2パターンと同じ傾き、例えば、-45度のスリットで構成されている。
第1受光部123aと第2受光部123bとにおいてそれぞれ受光素子組を構成する4個の受光素子は、a+,a-,b+,b-を割り当てられている。これらa+,a-,b+,b-の各受光素子からの信号を加減算することにより、互いに位相の異なる二相の角度データ算出用の受光信号を得ることができる。
【0018】
エンコーダ処理部130には、角度データ変換部131と、偏心算出部132と、補正部133とが設けられている。角度データ変換部131は、受光部123からの各二相の受光信号を演算処理し、第1符号パターン111に基づく第1角度データP1と、第2符号パターン112に基づく第2角度データP2とを算出する。
【0019】
偏心算出部132は、第1角度データP1と第2角度データP2との位相差と、後述する位相特性とから、偏心角度誤差を算出する。補正部133は、偏心角度誤差と、第1角度データP1及び第2角度データP2とから、偏心角度誤差を除去した回転ディスク100の回転角度θを算出し、出力する。補正部133は、回転角度θを外部機器に対して出力するために、通信機能を備えていてもよい。
【0020】
[偏心の具体例]
以下、図3及び図4を参照して、符号パターン110と固定スリット122との偏心に応じた位置関係を説明する。
図3は、実施の形態1において、回転ディスク100の符号パターン110と検出部120の固定スリット122との偏心による位置関係の変化を示す説明図である。図4は、実施の形態1において、回転ディスク100と符号パターン110との偏心による位置関係の変化を示す説明図である。
図3において、符号パターン110は、図1に示したように、回転ディスク100の内周側の第1符号パターン111と、外周側の第2符号パターン112とにより構成されている。
固定スリット122は、内周側の第1符号パターン111に対応した第1固定スリット122aと、外周側の第2符号パターン112に対応した第2固定スリット122bとにより構成されている。
図3において、回転ディスク100は反時計方向に回転すると仮定する。また、図3では、偏心による影響についての説明を容易にするため、第1符号パターン111、第1固定スリット122a、第2符号パターン112、及び第2固定スリット122bの位置を、偏心無しの状態で揃った状態になるタイミングを基準にして示している。
【0021】
図3の(a)は、回転ディスク100と符号パターン110との間に偏心が存在しない場合における、第1符号パターン111と第1固定スリット122a、及び、第2符号パターン112と第2固定スリット122b、の特定のタイミングにおける位置関係を示している。
この図3の(a)の場合、回転ディスク100が回転しても、第1符号パターン111と第1固定スリット122a、及び、第2符号パターン112と第2固定スリット122bは、同じ位相で重なり続ける。
図3の(b1)~(b8)は、XY平面のX軸の+方向を0度、Y軸の+方向を90度、回転ディスク100の回転中心に対して符号パターン110のずれ方向を偏心とした場合に、0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、及び315度の方向に偏心した状態における、第1符号パターン111と第1固定スリット122a、及び、第2符号パターン112と第2固定スリット122b、の位置関係を示している。図3の(b1)~(b8)における位相は、図3の(a)と同じ特定のタイミングでの状態を示している。図3の(b1)~(b8)において、白抜き矢印は、偏心の向きを示している。
図4の(b1)~(b8)は、XY平面のX軸の+方向を0度、Y軸の+方向を90度として、検出部120の位置を0度とした場合に、0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、及び315度の方向に偏心した状態を模式的に示している。
【0022】
以下、第1符号パターン111と第1固定スリット122a、及び、第2符号パターン112と第2固定スリット122bが、偏心により異なるタイミングで重なる様子を説明する。ここで、回転ディスク100の反時計方向の回転により、第1符号パターン111が、第1固定スリット122aより上に位置していれば位相進み、第1固定スリット122aより下に位置していれば位相遅れ、第1固定スリット122aと重なっていれば位相一致、を意味している。同様に、回転ディスク100の反時計方向の回転により、第2符号パターン112が、第2固定スリット122bより上に位置していれば位相進み、第2固定スリット122bより下に位置していれば位相遅れ、第2固定スリット122bと重なっていれば位相一致を意味している。
【0023】
図3の(b1)において、0度方向の偏心(図4の(b1)参照)により、第1符号パターン111は第1固定スリット122aに対して位相遅れの状態になり、第2符号パターン112は第2固定スリット122bに対して位相進みの状態になる。
【0024】
図3の(b2)において、45度方向の偏心(図4の(b2)参照)により、第1符号パターン111は第1固定スリット122aに一致し、第2符号パターン112は第2固定スリット122bに対して更に位相進みの状態になる。
【0025】
図3の(b3)において、90度方向の偏心(図4の(b3)参照)により、第1符号パターン111と第2符号パターン112とは、共に第1固定スリット122aと第2固定スリット122bとに対して位相進みの状態になる。
【0026】
図3の(b4)において、135度方向の偏心(図4の(b4)参照)により、第1符号パターン111は第1固定スリット122aに対して更に位相進みの状態になり、第2符号パターン112は第1固定スリット122aに一致する状態になる。
【0027】
図3の(b5)において、180度方向の偏心(図4の(b5)参照)により、第1符号パターン111は第1固定スリット122aに対して位相進みの状態になり、第2符号パターン112は第2固定スリット122bに対して位相遅れ、の状態になる。
【0028】
図3の(b6)において、225度方向の偏心(図4の(b6)参照)により、第1符号パターン111は第1固定スリット122aに一致し、第2符号パターン112は第2固定スリット122bに対して更に位相遅れ、の状態になる。
【0029】
図3の(b7)において、270度方向の偏心(図4の(b7)参照)により、第1符号パターン111と第2符号パターン112とは、共に第1固定スリット122aと第2固定スリット122bとに対して位相遅れ、の状態になる。
【0030】
図3の(b8)において、315度方向の偏心(図4の(b8)参照)により、第1符号パターン111は第1固定スリット122aに対して更に位相遅れの状態になり、第2符号パターン112は第2固定スリット122bに一致した状態になる。
【0031】
すなわち、図3の(b1)~(b8)に示したように、傾きを有する符号パターン110と偏心の向きとの間には、以下のような偏心存在時の符号パターンの位相特性を生じる。
+45度の傾きを有する第1符号パターン111は、傾きと平行な45度と225度の偏心において第1固定スリット122aとの位相が一致し、ずれを生じない(偏心検出感度なし)。+45度の傾きを有する第1符号パターン111は、傾きと直交する135度と315度の偏心において第1固定スリット122aとの位相が最も大きくずれた状態になり、偏心を最大感度で検出できる。
-45度の傾きを有する第2符号パターン112は、傾きと平行な135度と315度の偏心において第2固定スリット122bとの位相が一致し、ずれを生じない(偏心検出感度なし)。-45度の傾きを有する第2符号パターン112は、傾きと直交する45度と225度の偏心において第2固定スリット122bとの位相が最も大きくずれた状態になり、偏心を最大感度で検出できる。
よって、+45度の傾きを有する第1符号パターン111と、-45度の傾きを有する第2符号パターン112とを組み合わせることで、360度の各方向の偏心成分を検出可能になる。
【0032】
図3の(b1)~(b8)に示した偏心存在時の符号パターンの位相特性を、更に細かい角度で連続的に算出すると、図5のような位相特性を得ることができる。図5は、実施の形態1において、偏心存在時の符号パターンの位相特性を示す説明図である。ここで、第1符号パターン111による位相特性と、第2符号パターン112による位相特性とは、図3の(b1)~(b8)で説明したように、90度の位相差を有する状態で得られる。
【0033】
[エンコーダ処理部の処理]
以下、回転ディスク100の符号パターン110を光学的に検出して回転角度を算出する際に、検出された角度に含まれる偏心角度誤差を解消するエンコーダ処理部130の処理を説明する。
エンコーダ処理部130において、角度データ変換部131は、第1符号パターン111と第1固定スリット122aとを通過した光を第1受光部123aで受光して第1角度データP1を算出し、第2符号パターン112と第2固定スリット122bとを通過した光を第2受光部123bで受光して第2角度データP2を算出する。
【0034】
偏心算出部132は、角度データ変換部131により算出された第1角度データP1と第2角度データP2との位相差を求め、この位相差を図5に示す予め求めておいた位相特性と比較することで、偏心の角度と振幅とを求める。
【0035】
偏心算出部132は、偏心の角度と振幅とから、1回転の各角度における偏心角度誤差を算出し、補正部133に供給する。
補正部133は、角度データ変換部131からの第1角度データP1及び第2角度データP2と、偏心算出部132からの偏心角度誤差とを用いて、偏心角度誤差の影響を受けない回転角度のデータを出力する。
【0036】
実施の形態1のロータリエンコーダ1は、符号パターン110として同心円状の第1符号パターン111及び第2符号パターン112を用いており、単一の検出部120により第1符号パターン111及び第2符号パターン112を光学的に検出しているため、特許文献1に示した2つの検出部を用いるエンコーダと比較して、装置を小型化し、面倒な調整を必要とせずに容易に設置することが可能になる。
【0037】
[符号パターンと固定スリットの配置例(1)]
以下、図6を参照して、第1符号パターン111と第2符号パターン112、及び、第1固定スリット122aと第2固定スリット122bの配置の具体例を説明する。図6は、実施の形態1において、回転ディスク100の符号パターン110と、検出部120の固定スリット122との第1の配置例を示す説明図である。
【0038】
図6において、第1固定スリット122a及び第2固定スリット122bは、それぞれ4本のスリットで構成された具体例を示している。
第1固定スリット122aは、第1符号パターン111を構成する第1パターンに対応した角度及び間隔となるように設けられている。そして、第1固定スリット122aに合わせて第1受光部123aが設けられる。光源121からの光は、第1符号パターン111と第1固定スリット122aとを透過し、第1受光部123aで受光される。
第2固定スリット122bは、第2符号パターン112を構成する第2パターンに対応した角度及び間隔となるように設けられている。そして、第2固定スリット122bに合わせて、第2受光部123bが設けられる。第2符号パターン112と第2固定スリット122bとを透過した光源121からの光は、第2受光部123bで受光される。
【0039】
第1受光部123aと第2受光部123bとは、それぞれ、4個の受光素子の組により構成される。4個の受光素子は、a+,a-,b+,b-を割り当てられている。これらa+,a-,b+,b-の各受光素子からの信号を加減算することにより、互いに位相の異なる二相の角度データ算出用の受光信号を得ることができる。
なお、第1符号パターン111と第2符号パターン112との周方向位置の差、第1符号パターン111と第1固定スリット122aとの周方向位置の差、及び第2符号パターン112と第2固定スリット122bとの周方向位置の差については、エンコーダ処理部130での処理に合わせて任意に定めることが可能である。
【0040】
[符号パターンと固定スリットの配置例(2)]
以下、図7を参照して、第1符号パターン111と第2符号パターン112、及び、第1固定スリット122aと第2固定スリット122bの配置の第2の具体例を説明する。図7は、実施の形態1において、回転ディスク100の符号パターン110と、検出部120の固定スリット122との第2の配置例を示す説明図である。
【0041】
図7において、第1固定スリット122aは、4本のスリットで構成された第11固定スリット122a1と、4本のスリットで構成された第12固定スリット122a2とで構成されている。
第11固定スリット122a1と第12固定スリット122a2とは、同じ径方向位置であって、異なる周方向位置に構成されている。第11固定スリット122a1と第12固定スリット122a2とは、第1符号パターン111を構成する第1パターンに対応した角度及び間隔となるように設けられている。
そして、第11固定スリット122a1に合わせて第11受光部123a1が設けられ、第12固定スリット122a2に合わせて第12受光部123a2が設けられる。
光源121からの光は、第1符号パターン111と第11固定スリット122a1とを透過して第11受光部123a1で受光され、第1符号パターン111と第12固定スリット122a2とを透過して第12受光部123a2で受光される。
【0042】
図7において、第2固定スリット122bは、4本のスリットで構成された第21固定スリット122b1と、4本のスリットで構成された第22固定スリット122b2とで構成されている。
第21固定スリット122b1と第22固定スリット122b2とは、同じ径方向位置であって、異なる周方向位置に構成されている。第21固定スリット122b1と第22固定スリット122b2とは、第2符号パターン112を構成する第2パターンに対応した角度及び間隔となるように設けられている。
そして、第21固定スリット122b1に合わせて第21受光部123b1が設けられ、第22固定スリット122b2に合わせて第22受光部123b2が設けられる。
光源121からの光は、第2符号パターン112と第21固定スリット122b1とを透過して第21受光部123b1で受光され、第2符号パターン112と第22固定スリット122b2とを透過して第22受光部123b2で受光される。
【0043】
第11受光部123a1、第12受光部123a2、第21受光部123b1、及び第22受光部123b2は、それぞれ、4個の受光素子の組により構成される。4個の受光素子は、a+,a-,b+,b-を割り当てられている。これらa+,a-,b+,b-の各受光素子からの信号を加減算することにより、互いに位相の異なる二相の角度データ算出用の受光信号を得ることができる。
なお、第1符号パターン111と第11固定スリット122a1との周方向位置の差、第1符号パターン111と第12固定スリット122a2との周方向位置の差、第2符号パターン112と第21固定スリット122b1との周方向位置の差、及び第2符号パターン112と第22固定スリット122b2との周方向位置の差については、エンコーダ処理部130での処理に合わせて任意に定めることが可能である。
【0044】
[符号パターンの別例]
以下、図8を参照して、符号パターン110の別例として四重の符号パターン1100を説明する。図8は、実施の形態1において、他の符号パターン1100を示す説明図である。
符号パターン1100は、二重の符号パターン110を更に二重にして、回転ディスク100に構成されている。すなわち、符号パターン1100は、内周側符号パターン1101と、外周側符号パターン1102とにより構成される。内周側符号パターン1101には、内周側第1符号パターン11011と、内周側第2符号パターン11012とが設けられている。外周側符号パターン1102には、外周側第1符号パターン11021と、外周側第2符号パターン11022とが設けられている。
この場合、四重の符号パターン1100に合わせて、図6または図7に示すような固定スリットと受光部とをそれぞれ設ければよい。
【0045】
エンコーダ処理部130は、内周側符号パターン1101により求めた偏心と、外周側符号パターン1102により求めた偏心とを平均して得た偏心から、偏心角度誤差を補正してもよい。また、エンコーダ処理部130は、内周側符号パターン1101により求めた偏心から算出した偏心角度誤差と、外周側符号パターン1102により求めた偏心から算出した偏心角度誤差とを平均して、偏心角度誤差を補正してもよい。
【0046】
[実施の形態の効果]
(1)実施の形態1に係るロータリエンコーダ1は、環状の符号パターン110が設けられた回転ディスク100の回転を、検出部120により検出し、回転ディスク100の回転角度をエンコーダ処理部130により算出するロータリエンコーダ1であって、符号パターン110は、同心円状の第1符号パターン111及び第2符号パターン112により構成され、第1符号パターン111は、半径方向に対して第1の傾きを有する複数の第1パターンにより構成され、第2符号パターン112は、半径方向に対して第1の傾きとは異なる方向の第2の傾きを有する複数の第2パターンにより構成され、エンコーダ処理部130は、第1符号パターン111の検出部120による検出結果と、第2符号パターン112の検出部120による検出結果とに基づいて、符号パターン110の偏心を求め、求めた偏心により回転角度を補正する。
これにより、装置を大型化することなく、回転ディスク100の符号パターン110を光学的に検出して回転角度を算出する際に、偏心角度誤差を解消することができる。
【0047】
(2)実施の形態1に係る上記(1)のロータリエンコーダ1において、第1の傾きと第2の傾きとは、+45度と-45度、または、-45度と+45度のいずれかである。ここで、第1符号パターン111が+45度の傾きを有する場合、+45度に直交する135度方向及び315度方向の偏心に最大の感度を有すると共に、+45度に平行な45度方向及び225度方向の偏心に感度を有しない。第2符号パターン112が-45度の傾きを有する場合、-45度に直交する45度方向及び225度方向の偏心に最大の感度を有すると共に、-45度に平行な135度方向及び315度方向の偏心に感度を有しない。よって、+45度の傾きを有する第1符号パターン111と、-45度の傾きを有する第2符号パターン112とを組み合わせることで、360度の各方向の偏心成分を検出可能になる。
【0048】
(3)実施の形態1に係る上記(1)または(2)のロータリエンコーダ1において、第1符号パターン111を構成する複数の第1パターンと、第2符号パターン112を構成する複数の第2パターンとは、スリットにより構成される。検出部120は、第1符号パターン111及び第2符号パターン112に光を照射する光源121と、第1符号パターン111を透過した光源121からの光と、第2符号パターン112を透過した光源121からの光とのそれぞれを、一定の大きさの開口部により絞る固定スリット122と、第1符号パターン111及び固定スリット122を透過した光源121からの光を検出すると共に、第2符号パターン112及び固定スリット122を透過した光源121からの光を検出する受光部123とを有する。これにより、異なる傾きの第1符号パターン111及び第2符号パターン112と、固定スリット122との位置関係により、偏心を光学的に検出することができ、装置を大型化することなく、回転ディスク100の符号パターン110を光学的に検出して回転角度を算出する際に、偏心角度誤差を解消することができる。
【0049】
(4)実施の形態1に係る上記(1)~(3)のいずれかのロータリエンコーダ1において、エンコーダ処理部130は、第1符号パターン111の検出部120による検出結果と、第2符号パターン112の検出部120による検出結果とに基づいて、角度データを生成する角度データ変換部131と、第1符号パターン111の検出部120による検出結果と、第2符号パターン112の検出部120による検出結果との位相の変化に基づいて、符号パターン110の偏心を示す偏心データを算出する偏心算出部132と、偏心データに基づいて角度データを補正する補正部133と、を備える。これにより、第1符号パターン111の検出結果と、第2符号パターン112の検出結果とから、回転ディスク100の符号パターン110を光学的に検出して回転角度を算出する際に、偏心角度誤差を解消することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ロータリエンコーダ、10 回転体、100 回転ディスク、101 回転軸、110 符号パターン、111 第1符号パターン、112 第2符号パターン、120 検出部、121 光源、122 固定スリット、122a 第1固定スリット、122a1 第11固定スリット、122a2 第12固定スリット、122b 第2固定スリット、122b1 第21固定スリット、122b2 第22固定スリット、123 受光部、123a 第1受光部、123a1 第11受光部、123a2 第12受光部、123b 第2受光部、123b1 第21受光部、123b2 第22受光部、130 エンコーダ処理部、131 角度データ変換部、132 偏心算出部、133 補正部、1100 符号パターン、1101 内周側符号パターン、1102 外周側符号パターン、11011 内周側第1符号パターン、11012 内周側第2符号パターン、11021 外周側第1符号パターン、11022 外周側第2符号パターン、θ 回転角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9