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特開2023-183436車両用内燃機関の発進時制御方法および装置
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  • 特開-車両用内燃機関の発進時制御方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183436
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用内燃機関の発進時制御方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
F02D29/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096944
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】太田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】前川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 繁
(72)【発明者】
【氏名】川村 弘明
【テーマコード(参考)】
3G093
【Fターム(参考)】
3G093AA01
3G093AB02
3G093BA02
3G093BA06
3G093CA09
3G093CB05
3G093DA01
3G093DA06
3G093DA09
3G093DB05
3G093DB10
3G093DB15
3G093EA02
3G093EA03
3G093EA13
(57)【要約】
【課題】発進アシスト制御中にクラッチが解放されたときに吹け上がり抑制のために点火時期遅角によるトルクダウンを行うが、トルクダウン終了の際の点火時期進角を徐々に行って再度の吹け上がりを防止する。
【解決手段】手動変速機を備えた車両において、車両発進時に時間t2~t3の間でクラッチが半クラッチとなるとエンジン回転速度を発進用目標エンジン回転速度b1に保つ発進アシスト制御を行う。発進アシスト制御中にクラッチが解放されると回転速度が吹け上がるので、点火時期遅角を行う(時間t3~t5)。トルクダウン終了時に点火時期を進角する際に、再度の吹け上がりを防止するために、その変化率が所定の上限変化率に制限される(時間t5~t6)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の出力がクラッチを介して変速機へ伝達され、発進の際のクラッチ締結時にエンジン回転速度をアイドル回転速度よりも高い発進用目標エンジン回転速度に保つように発進アシスト制御を行うとともに、この発進アシスト制御中のクラッチ解放に対して点火時期遅角によるトルクダウン制御を行う車両用内燃機関の発進時制御方法において、
上記トルクダウン制御の終了時における点火時期の進角を、所定の上限変化率で制限する、車両用内燃機関の発進時制御方法。
【請求項2】
トルクダウン制御の開始時における点火時期の遅角側への変化率よりも終了時における進角側への変化率が小さくなるように上記上限変化率が設定される、
請求項1に記載の車両用内燃機関の発進時制御方法。
【請求項3】
上記上限変化率は、吸入空気量に応じて、吸入空気量が大であるほど進角側への変化率が小さくなるように、設定される、
請求項1に記載の車両用内燃機関の発進時制御方法。
【請求項4】
発進アシスト制御に伴って増加した吸入空気量が発進アシスト制御の終了後にアイドル回転速度相当の吸入空気量に戻った後に、点火時期の進角が完了するように、上記上限変化率が設定される、請求項3に記載の車両用内燃機関の発進時制御方法。
【請求項5】
内燃機関はターボチャージャを備えている、
請求項1に記載の車両用内燃機関の発進時制御方法。
【請求項6】
内燃機関の出力がクラッチを介して変速機へ伝達され、発進の際のクラッチ締結時にエンジン回転速度をアイドル回転速度よりも高い発進用目標エンジン回転速度に保つように発進アシスト制御を行うとともに、この発進アシスト制御中のクラッチ解放に対して点火時期遅角によるトルクダウン制御を行う車両用内燃機関の発進時制御装置において、
上記トルクダウン制御の終了時における点火時期の進角を、所定の上限変化率で制限する、車両用内燃機関の発進時制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関と変速機との間にクラッチを備えた車両において、クラッチの締結動作を伴う車両発進時の発進アシスト制御に関し、特に、発進アシスト制御中にクラッチが解放されたときの内燃機関の吹け上がり(回転速度の急上昇)を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
手動変速機を備えた車両の発進時には、運転者がクラッチペダルを踏み込んでいずれかの変速段を選択した後、クラッチペダルを戻して、クラッチの滑りを伴う締結状態いわゆる半クラッチ状態とすることで、トルク伝達が開始される。このような車両発進時に、内燃機関の回転速度(エンジン回転速度)が過度に低下して内燃機関の停止を招来したりすることがないように、クラッチの締結動作中にエンジン回転速度をアイドル回転速度よりも高い目標エンジン回転速度に近付けるように内燃機関の出力を制御する技術(いわゆる発進アシスト制御)が知られている。
【0003】
このような発進アシスト制御においては、例えば運転者が半クラッチ状態から完全締結状態へと移行せずに、逆にクラッチペダルを踏み込んでクラッチを解放した場合に、仮にアクセルペダルを踏み込んでいない状態であっても、スロットル弁開度が大きくなっていることから、内燃機関の吹け上がりが生じる。
【0004】
このように発進アシスト制御中にクラッチが解放された場合の内燃機関の吹け上がりを抑制するために、特許文献1には、回転速度のオーバシュートを検出したときに点火時期の遅角によるトルクダウン制御を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-52584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、点火時期遅角によるトルクダウン制御は、回転速度のオーバシュート量が閾値以下となったときに終了し、遅角されていた点火時期が進角側へ変化する。つまり、そのときの運転条件に対応した本来の点火時期(例えば基本点火時期)へと進角する。
【0007】
しかしながら、このように点火時期が進角すると、内燃機関のトルクが直ちに上昇するため、内燃機関の再度の吹け上がりが生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、内燃機関の出力がクラッチを介して変速機へ伝達され、発進の際のクラッチ締結時にエンジン回転速度をアイドル回転速度よりも高い発進用目標エンジン回転速度に保つように発進アシスト制御を行うとともに、この発進アシスト制御中のクラッチ解放に対して点火時期遅角によるトルクダウン制御を行う車両用内燃機関の発進時制御方法において、
上記トルクダウン制御の終了時における点火時期の進角を、所定の上限変化率で制限する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、トルクダウン制御の終了時における点火時期の進角の変化率を制限することで、トルクが徐々に変化するようになり、再度の吹け上がりが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の一実施例のシステム構成を示す構成説明図。
図2】吹け上がり防止制御の処理の流れを示すフローチャート。
図3】車両発進時のパラメータの変化を示すタイムチャート。
図4】吹け上がり防止制御の機能ブロック図。
図5】第2の実施例を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施例のシステム構成の概略を示す構成説明図である。一実施例の車両は、内燃機関1に手動変速機2が接続されており、内燃機関1の出力軸と変速機2の入力軸との間にクラッチ3が介在している。変速機2の出力軸は、図示せぬ駆動輪に終減速機構等を介して接続されている。変速機2の変速段を選択するシフトレバー4ないし変速機2本体側には、ニュートラル位置が選択されているときに所定の信号(ニュートラル信号)を出力するニュートラルスイッチ5が設けられている。
【0013】
内燃機関1は、火花点火式機関いわゆるガソリン機関であり、電子制御型スロットル弁6の開度に応じた出力が得られる。また一例では、ターボチャージャを備えており、図外の排気タービンによって駆動されるコンプレッサ20がスロットル弁6の上流に配置されている。エンジン回転速度は、クランク角センサ8によって検出される。車両の速度つまり車速は、車速センサ7によって検出される。なお、車速センサ7としては、直接にもしくは間接に車速を検出するいかなる形式のものであってもよい。
【0014】
内燃機関1の出力は、エンジンコントロールユニット11によって、燃料噴射装置21および点火装置22を介して、制御される。車両のアクセルペダル12の踏込量つまりアクセル開度は、アクセル開度センサ13によって検出される。このアクセル開度センサ13は、検出開度がアイドル状態にあると判定することで、いわゆるアイドルスイッチの機能を兼ねている。ブレーキペダル14には、当該ブレーキペダル14の踏込つまりブレーキ操作を検出するブレーキスイッチ15が設けられている。クラッチ3を操作するためのクラッチペダル16には、クラッチペダル16が僅かでも踏み込まれたことを検出する第1クラッチスイッチ17と、クラッチ3がトルク伝達しない状態となるまでクラッチペダル16が十分に踏み込まれたことを検出する第2クラッチスイッチ18と、が設けられている。従って、手動変速機2の変速操作のために運転者がクラッチペダル16を十分に踏み込んだときには第1クラッチスイッチ17と第2クラッチスイッチ18の双方がオンとなり、クラッチペダル16を中間位置まで踏み込んだいわゆる半クラッチ状態のときには第1クラッチスイッチ17がオンで第2クラッチスイッチ18がオフとなる。
【0015】
上記のニュートラルスイッチ5、車速センサ7、クランク角センサ8、アクセルペダル開度センサ13、ブレーキスイッチ15、第1,第2クラッチスイッチ17,18等の検出信号はエンジンコントロールユニット11に入力される。車両の発進時には、これらの検出信号に基づき、エンジンコントロールユニット11がいわゆる発進アシスト制御としてスロットル弁6を介して内燃機関の出力を補正し、エンジン回転速度を発進用目標エンジン回転速度に近付ける。なお、エンジンコントロールユニット11には、内燃機関1の統合的な制御のために上記のもの以外にも多数のセンサ類の検出信号が入力されているが、これらは図示省略する。
【0016】
図3は、車両発進時における種々のパラメータの変化を示すタイムチャートである。図の上段から順に、(a)クラッチペダル16操作位置、(b)エンジン回転速度、(c)エンジントルク、(d)内燃機関1の吸入空気量、(e)点火時期、をそれぞれ示している。(b)エンジン回転速度の欄において、特性線b1は発進アシスト制御中の発進用目標エンジン回転速度、特性線b2は実エンジン回転速度、であり、さらに特性線b3はクラッチ3出力側の回転速度(つまり変速機2の入力軸回転速度)を示す。
【0017】
時間t1までは車両は停止しており、変速機2が発進に適した適当な変速段にあるとともにクラッチ3が解放状態にあり、かつ実エンジン回転速度b2は目標アイドル回転速度にある。(a)欄に示すように、時間t1において運転者がクラッチペダル16を戻していく操作が開始され、時間t2においていわゆる半クラッチ状態となる。時間t3まで半クラッチ状態が続く。
【0018】
時間t1におけるクラッチ3の操作に伴って発進アシスト制御が開始する。つまり、(b)欄に示すように、発進用目標エンジン回転速度b1が与えられ、この発進用目標エンジン回転速度b1に実エンジン回転速度b2が沿うようにスロットル弁6を介してエンジン回転速度がフィードバック制御される。発進用目標エンジン回転速度b1は、円滑な発進のために、目標アイドル回転速度よりも高く設定される。この発進アシスト制御によって例えば運転者によるアクセルペダル12の踏込がなくてもスロットル弁6の開度が増大し、内燃機関1のストールが回避される。時間t2~t3の間、半クラッチ状態を継続することで、クラッチ3出力側の回転速度b3は徐々に増加する。このクラッチ3出力側の回転速度b3は基本的に発進時の車速変化に対応する。
【0019】
通常は、クラッチ3の締結が完了した時間t3において、(a)欄に破線a1で示すように、運転者によってクラッチペダル16が戻され、クラッチ3が完全締結状態へと移行する。しかし、稀に、(a)欄に実線a2で示すように、発進アシスト制御がなされている時間t3においてクラッチ3が解放操作されることがある。
【0020】
このようにスロットル弁6の開度が相対的に大きくなっている発進アシスト制御中にクラッチ3が解放された場合、内燃機関1の回転速度が吹け上がろうとするが、エンジンコントロールユニット11は、吹け上がりの検出に基づき直ちに点火装置22の点火時期の遅角によるトルクダウン制御を行う。つまり、(e)欄に示すように、機関回転速度および負荷から定まる基本点火時期からステップ的に点火時期を遅角させ、トルクを抑制する。これにより、クラッチ3の解放に伴う内燃機関1の吹け上がりが抑制される。なお、点火時期の遅角は、点火時期の算出においてトルクダウンのための遅角量を付加することにより行われる。
【0021】
この吹け上がり抑制のためのトルクダウン制御は、後述するように回転速度の吹け上がり量(例えば実エンジン回転速度b2と目標アイドル回転速度との差分)が所定値以内となったことを条件として時間t5において終了する。このトルクダウン制御の終了に伴い、それまで強制的に遅角されていた点火時期が基本点火時期へと進角する。つまり、上述のトルクダウンのための遅角量が0に復帰する。このとき、上記実施例では、点火時期が急激に進角することのないように、点火時期進角の変化率が、所定の上限変化率で制限される。従って、(e)欄の時間t5~t6の間に示すように、点火時期が徐々に進角側に変化する。このときの進角側への変化率は、時間t3と時間t4との間における遅角側への変化率よりも小さい。つまり、吹け上がりを抑制するための点火時期遅角は速やかに行い、トルクダウン制御終了時の点火時期進角は徐々に行う。
【0022】
仮に(e)欄の破線e1に示すように点火時期進角を急激に行うと、特に吸入空気量が十分に低下していない段階では、点火時期進角に伴ってトルクが立ち上がり((c)欄の破線c1参照)、これにより、実エンジン回転速度b2が破線b21で示すように再び吹け上がってしまう。上記実施例では、点火時期進角の変化率を制限することで、再度の吹け上がりが防止される。
【0023】
図2は、エンジンコントロールユニット11において実行される上述した吹け上がり防止制御の処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、エンジンコントロールユニット11において繰り返し実行される。ステップ1では、発進アシスト制御実行中であるか否かを判定する。発進アシスト制御実行中でなければステップ2へ進み、発進アシスト制御終了から所定時間内であるか否かを判定する。既に所定時間が経過していたらステップ3へ進み、吹け上がり防止制御の作動を禁止、つまり、点火時期によるトルクダウン制御を禁止する。なお、発進アシスト制御は、図示せぬ他のルーチンによって上述したようにクラッチペダル16の操作等に基づいて実行される。
【0024】
ステップ1で発進アシスト制御実行中であれば、ステップ4へ進み、車速が所定車速以内であるか否かを判定する。車両が発進して既に所定車速を越えていれば、ステップ3へ進み、吹け上がり防止制御の作動を禁止する。
【0025】
ステップ4で所定車速以内であれば、ステップ5において、クラッチ3が解放状態となったか否かを判定し、YESであればステップ6へ進む。クラッチ3が締結状態となったり半クラッチ状態のままである場合は、ステップ3へ進み、吹け上がり防止制御の作動を禁止する。ステップ6では、回転速度の吹け上がり量(例えば実エンジン回転速度と目標アイドル回転速度との差分)が所定値以上であるか否かを判定し、YESであればステップ7へ進む。吹け上がり量が所定値よりも小さい場合は、ステップ3へ進み、吹け上がり防止制御の作動を禁止する。
【0026】
ステップ7では、吹け上がり量(例えば実エンジン回転速度b2と目標アイドル回転速度との差分)をパラメータとして値を割り付けたマップを参照して、吹け上がり抑制に必要なトルクダウン係数を算出する。そして、このトルクダウン係数に基づき、ステップ8では、点火時期遅角による吹け上がり防止制御つまりトルクダウン制御を実行する。上述したトルクダウンのための遅角量は、トルクダウン係数に基づいて決定される。
【0027】
次のステップ9では、トルクダウン制御つまり点火時期遅角によって回転速度の吹け上がり量が所定値以内となったか判定する。所定値以内となるまで点火時期の遅角状態が継続される。なお、ステップ6における「所定値」とステップ9における「所定値」とは、必ずしも同一の値ではなく、それぞれ適宜に設定される。
【0028】
ステップ9で吹け上がり量が所定値以内となったと判定した場合は、ステップ10へ進み、所定の上限変化率でもって変化率を制限しつつ点火時期を進角側へ変化させ、基本点火時期に戻す。つまり、トルクダウンのための遅角量を0とする。そして、ステップ11において、一連の吹け上がり防止制御を終了する。
【0029】
図4は、エンジンコントロールユニット11に含まれる吹け上がり防止制御部100の機能ブロック図である。なお、このブロック図で示す機能は、エンジンコントロールユニット11が実行するソフトウェアもしくはハードウェアによって実現される。
【0030】
吹け上がり防止制御部100は、図4に示すように、発進アシスト作動状態判定部101と、経過時間判定部102と、車速判定部103と、クラッチ解放状態判定部104と、吹け上がり量判定部105と、トルクダウン係数算出部106と、変化率制限指令部107と、を含んで構成される。
【0031】
発進アシスト作動状態判定部101は、発進アシスト制御中であるかどうかを判定する。経過時間判定部102は、発進アシスト制御終了から所定時間が経過したかどうかを判定する。車速判定部103は、車速が所定車速以内であるかどうかを判定する。クラッチ解放状態判定部104は、クラッチ3が解放状態となったかどうかを判定する。吹け上がり量判定部105は、回転速度の吹け上がり量の判定を行う。トルクダウン係数算出部106は吹け上がり抑制に必要なトルクダウン係数を算出する。変化率制限指令部107は、トルクダウンのために遅角した点火時期をトルクダウン終了時に進角させる際に、所定の上限変化率を出力し、点火時期進角の変化率を制限する。
【0032】
上記実施例では、上限変化率は予め定められた一定値であり、従って、制御が簡単となる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施例を説明する。第2の実施例では、トルクダウンのために遅角した点火時期をトルクダウン終了時に基本点火時期に戻す際の上限変化率を、トルクダウン終了時の吸入空気量に応じて、吸入空気量が大であるほど進角側への変化率が小さくなるように、設定する。つまり、目標アイドル回転速度相当の吸入空気量に比較して吸入空気量が大であるほど点火時期進角に伴う吹け上がりが生じやすく、逆に、吸入空気量が目標アイドル回転速度相当の吸入空気量に近付いていれば点火時期を進角しても吹け上がりは生じにくい。そのため、第2の実施例では、トルクダウン終了時の吸入空気量に応じて上限変化率を設定する。
【0034】
図5は、第2の実施例の吹け上がり防止制御部100の構成を示す機能ブロック図である。吹け上がり防止制御部100は、図4に示した第1の実施例と同様に、発進アシスト作動状態判定部101と、経過時間判定部102と、車速判定部103と、クラッチ解放状態判定部104と、吹け上がり量判定部105と、トルクダウン係数算出部106と、変化率制限指令部107と、を有する。そして、さらに、吸入空気量判定部108を含んでいる。吸入空気量判定部108は、遅角状態から進角することとなるトルクダウン終了時の吸入空気量を求め、この吸入空気量に応じて上限変化率を設定する。
【0035】
好ましくは、発進アシスト制御に伴って増加した吸入空気量((d)欄参照)が発進アシスト制御の終了後に目標アイドル回転速度相当の吸入空気量に戻った後に点火時期の進角が完了するように、上限変化率の大きさが設定される。
【0036】
このような第2の実施例によれば、進角時の再度の吹け上がりを確実に抑制しつつ比較的速やかに遅角量を0に戻すことができる。
【0037】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では、ターボチャージャを備えた過給機関に適用しているが、この発明は、自然給気機関にも適用が可能である。なお、ターボチャージャを備えた上記実施例では、発進アシスト制御終了後の吸入空気量の低下が遅れがちとなるため、トルクダウン終了時の点火時期進角に伴う再度の吹け上がりがより問題となり易い。
【符号の説明】
【0038】
1…内燃機関
2…変速機
3…クラッチ
6…スロットル弁
11…エンジンコントロールユニット11
16…クラッチペダル
図1
図2
図3
図4
図5