(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023183456
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】液冷式スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20231221BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F04C29/02 311L
F04C18/16 Q
F04C18/16 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096979
(22)【出願日】2022-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129BB06
3H129BB12
3H129CC17
3H129CC22
3H129CC42
3H129CC46
(57)【要約】
【課題】軸受の信頼性を向上するための軸受冷却構造を備える液冷式スクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】液冷式スクリュー圧縮機は、スクリューロータ(2、3)が収められた圧縮機ケーシング(4)と、圧縮機ケーシング(4)と接続した吐出ケーシング(5)と、圧縮機ケーシング(4)と吐出ケーシング(5)の内部に設けられ、スクリューロータ(2、3)を回転支持する軸受(8、9、10)と、を備えた液冷式スクリュー圧縮機(100)であって、軸受(8、9、10)の外輪の外側を潤滑油によって油浴冷却する冷却流路(19)が形成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューロータが収められた圧縮機ケーシングと、
前記圧縮機ケーシングと接続した吐出ケーシングと、
前記圧縮機ケーシングと前記吐出ケーシングの内部に設けられ、前記スクリューロータを回転支持する軸受と、
を備えた液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記軸受の外輪の外側を潤滑油によって油浴冷却する冷却流路が形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記冷却流路には、1つの前記軸受の外周面に沿って少なくとも1つ以上の円環形状の給油溝が形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記軸受は、前記吐出ケーシングに2つ設けられている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項3に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記冷却流路では、前記給油溝に前記潤滑油を流入させる流入流路と、前記給油溝から前記潤滑油を流出させる流出流路と、が複数の前記軸受に設けられた前記給油溝のそれぞれに対して並列に接続されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項3に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記冷却流路では、前記給油溝に前記潤滑油を流入させる流入流路と、前記給油溝から前記潤滑油を流出させる流出流路と、が複数の前記軸受に設けられた前記給油溝のそれぞれに繋がって直列に接続されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記冷却流路には、1つの前記軸受の外周面に沿って少なくとも1周以上の螺旋形状の給油溝が形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項4に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記軸受は、前記圧縮機ケーシングに1つ設けられている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項7に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記冷却流路は、3つの前記軸受の全部に対して形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項9】
請求項4に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記流入流路は、圧縮機本体の外部から前記圧縮機ケーシング内にて前記スクリューロータが配置された空間に前記潤滑油を供給する流路と分岐されて前記吐出ケーシング内での下側を通って前記潤滑油を前記給油溝に供給する
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項10】
請求項4に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記流出流路は、前記給油溝から前記吐出ケーシング内での上側を通って前記潤滑油を前記スクリューロータが配置された空間に供給する
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項11】
請求項7に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記流入流路は、圧縮機本体の外部から前記圧縮機ケーシング内にて前記スクリューロータが配置された吸込空間に前記潤滑油を供給する流路と分岐されて前記圧縮機ケーシング内での下側を通って前記潤滑油を前記給油溝に供給し、
前記流出流路は、前記給油溝から前記圧縮機ケーシング内での上側を通って前記潤滑油を前記スクリューロータが配置された吸込空間に供給する
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項12】
請求項8に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記給油溝の全部は、同じ流路断面積を有する
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項13】
請求項3に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記吐出ケーシングに2つ設けられた前記軸受は、前記スクリューロータが配置された空間に近い順に、円筒ころ軸受、玉軸受である
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項14】
請求項7に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記圧縮機ケーシングに1つ設けられた前記軸受は、円筒ころ軸受である
液冷式スクリュー圧縮機。
【請求項15】
請求項1に記載の液冷式スクリュー圧縮機であって、
前記スクリューロータは、雌雄一対設けられ、
雌雄一対の前記スクリューロータには、圧縮気体から受ける力によりお互いに離れる斜め上方向に荷重がかかり、
前記軸受には、雌雄一対の前記スクリューロータにかかる前記荷重から受け持つ荷重に対して反対方向に反力が働くことになり、前記反力の負荷圏が最も高温になり、
前記軸受の外周面側には、雌雄一対の前記スクリューロータの軸隙間から漏洩した前記潤滑油では冷却しきれない前記軸受の外周面の前記反力の負荷圏を前記潤滑油によって油浴冷却する給油溝が形成されている
液冷式スクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液冷式スクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機の中には、スクリューロータとケーシングとの間に生じる内部隙間の封止、圧縮気体の冷却、及び、摺動部品の潤滑などを目的として、圧縮行程の作動空間内に油を供給する給油式のものがある。
【0003】
給油式スクリュー圧縮機では、吐出される圧縮気体に潤滑油が混入する。そのため、分離器を用いて圧縮気体から潤滑油が分離されている。分離器により分離された潤滑油は、圧縮機自身が生み出す吐出圧力と圧縮機本体の作動空間内の圧力との圧力差を利用して自己循環給油される。潤滑油は、分離器によって圧縮気体と分離後、温調弁を介して熱交換器やフィルタを通過し、再び圧縮機本体に供給される。圧縮機本体に供給された潤滑油は、スクリューロータとハウジングとから構成される作動空間の他、スクリューロータを回転可能に支持する軸受に対しても供給される。
【0004】
一般に、スクリュー圧縮機などの気体圧縮機では、スクリューロータの軸部の外周面とハウジングの軸孔の内周面との間に形成された環状の隙間(軸隙間と称する)を介して、圧縮気体が漏洩する。圧縮気体の漏洩量が多いほど効率が低下するため、軸隙間を封止する必要がある。軸封の手段の1つとして、軸隙間に潤滑油などの液体を供給する方法がある。
【0005】
例えば、給油式スクリュー圧縮機では、分離器によって分離された潤滑油を軸隙間に供給して油膜(オイルフィルムと称する)を形成する。これにより、オイルフィルムによって軸隙間を介して作動空間から軸受室への圧縮気体の漏洩を抑制することが一般的に行われている。軸隙間に供給された潤滑油は、最終的に軸受室に配置されている軸受に供給され、軸受を冷却する。
【0006】
特許文献1に記載の給油式スクリュー圧縮機では、作動空間と吐出側軸受との間の軸隙間に給油することでオイルフィルムを形成している。これにより、圧縮気体の漏洩量が低減されるとともに、漏れ出た潤滑油によって軸受が冷却されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、特許文献1記載の技術では、軸隙間に給油してオイルフィルムを形成して圧縮気体の漏れを低減するための潤滑油の油量と、軸受を冷却するための潤滑油の油量と、が異なる。つまり、オイルフィルムを形成して圧縮気体の漏れを低減するための潤滑油の油量の方が圧倒的に多い。このため、軸受は、油浴冷却する構造となる。
【0009】
この場合には、軸受で発生する潤滑油の撹拌損失が大きくなり性能が低下する要因となる。これを解決するため、軸受室に隣接したバイパス経路を設け、軸受の油浴量を一定にすることにより、軸受による潤滑油の撹拌損失を低減する技術がある。
【0010】
ここで、スクリュー圧縮機は、容積型の圧縮機である。このため、一対のスクリューロータは、圧縮気体の反力を受けることになる。この反力は、一対のスクリューロータをそれぞれ回転支持する複数の軸受によって受けることになる。
【0011】
このとき、荷重が働く箇所は、圧縮機本体の吐出部に対して、スクリューロータ軸の軸中心を結ぶ直線上にあり、その荷重を受ける軸受の荷重を受けた箇所の反対側の反力を受ける負荷圏の発熱が高くなる。つまり、軸受を油浴冷却している箇所と実際に軸受が発熱している箇所とが異なり、軸受が発熱している箇所が冷却されていないことになる。
【0012】
本発明の目的は、軸受の信頼性を向上するための軸受冷却構造を備える液冷式スクリュー圧縮機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様による液冷式スクリュー圧縮機は、スクリューロータが収められた圧縮機ケーシングと、前記圧縮機ケーシングと接続した吐出ケーシングと、前記圧縮機ケーシングと前記吐出ケーシングの内部に設けられ、前記スクリューロータを回転支持する軸受と、を備えた液冷式スクリュー圧縮機であって、前記軸受の外輪の外側を潤滑油によって油浴冷却する冷却流路が形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸受の信頼性を向上するための軸受冷却構造を備える液冷式スクリュー圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機を示すロータ軸方向の水平断面図である。
【
図2】一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機の雄スクリューロータ側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
【
図3】一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機の雌スクリューロータ側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
【
図4】一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機を示す
図1、
図2及び
図3中のA-A線に沿った矢視縦断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機の雄スクリューロータ側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機を示す
図5中のB-B線に沿った玉軸受での矢視縦断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機の雄スクリューロータ側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機の雄スクリューロータ側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機を示す
図8中のC-C線に沿った玉軸受での矢視縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は、下記の実施形態に限定解釈されるものではなく、公知の他の構成要素を組み合わせて本発明の技術思想を実現してもよい。なお、各図において同一要素については同一の符号が記載され、重複する説明が省略される。また、各図においてU方向が上方向であり、D方向が下方向であり、F方向が正面方向であり、B方向が背面方向であり、R方向が右方向であり、L方向が左方向である。
【0017】
<第1実施形態>
<一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機200>
まず、一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機(給油式スクリュー圧縮機)200について説明する。
図1は、一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機200を示すロータ軸方向の水平断面図である。
図2は、一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機200の雄スクリューロータ2側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
図3は、一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機200の雌スクリューロータ3側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
【0018】
図1~
図3に示されるように、一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機200は、圧縮機本体1を備える。圧縮機本体1は、雄スクリューロータ2及び雌スクリューロータ3からなる一対のスクリューロータが収められた圧縮機ケーシング4と、圧縮機ケーシング4と接続した吐出ケーシング5と、圧縮機ケーシング4と吐出ケーシング5の内部に設けられて各スクリューロータ2、3を回転支持する吸込側の円筒ころ軸受8並びに吐出側の円筒ころ軸受9及び玉軸受10と、各軸受8、9、10を外部から遮断する吸込側カバー6及び吐出側カバー7と、を備える。
【0019】
円筒ころ軸受8は、圧縮機ケーシング4に1つ設けられている。円筒ころ軸受9及び玉軸受10は、吐出ケーシング5に2つ設けられ、各スクリューロータ2、3が配置された空間に近い順に、円筒ころ軸受9、玉軸受10の順である。
【0020】
圧縮機本体1は、雌雄どちらかのスクリューロータ2、3に接続された電動機(図示しない)により駆動され、電動機が回転することにより吸込空間11から空気を吸い込む。吸い込まれた空気は、雄スクリューロータ2及び雌スクリューロータ3と圧縮機ケーシング4と吐出ケーシング5とで形成される作動空間内に吸い込まれ、この作動空間内の容積が減少することにより圧縮され、吐出空間12に吐き出される。吐き出された吐出空間12にて圧力上昇した空気は、各用途に使用される。
【0021】
一方、潤滑油は、内部隙間の封止、圧縮過程における空気の冷却、及び、摺動部品の潤滑を目的として圧縮工程中に給油される。圧縮工程中に給油された潤滑油は、圧縮機自身が生み出す吐出圧力と圧縮機本体1の作動空間内の圧力との圧力差を利用して、分離器で圧縮空気と潤滑油に分離される。分離後の潤滑油は、温調弁を介して熱交換器やフィルタを通過し、圧縮機本体1へ給油される経路を自己循環する。
【0022】
圧縮機本体1に給油された潤滑油は、圧縮機本体1に設けられた主流入流路13を通り、作動空間内への給油の他に、各スクリューロータの軸部の外周面と圧縮機ケーシング4及び吐出ケーシング5の軸孔の内周面との間に形成された軸隙間に給油され、オイルフィルムを形成する。これにより、軸隙間を介して作動空間から軸受室に圧縮空気が漏洩することを抑制している。
【0023】
吸込側の軸隙間に供給された潤滑油は、各スクリューロータ2、3の回転と共に軸受空間16aへと流され、吸込側の円筒ころ軸受8を潤滑及び冷却した後に軸受空間16bへと流れる。軸受空間16bへと流れた潤滑油は、吸込側カバー6に設けられた流出流路14より圧縮機本体1の外部に流れて圧縮機本体1へ給油される経路に回収される。
【0024】
一方、吐出側の軸隙間に供給された潤滑油は、各スクリューロータ2、3の回転と共に圧縮空気が漏洩する代わりに軸受空間17aへと流され、吐出側の円筒ころ軸受9及び玉軸受10を潤滑並びに冷却した後に軸受空間17bへと流れる。軸受空間17bへと流れた潤滑油は、吐出側カバー7に設けられた流出流路15より圧縮機本体1の吸込空間11へ回収される。
【0025】
<一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機の問題>
図4は、一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機200を示す
図1、
図2及び
図3中のA-A線に沿った矢視縦断面図である。
図4に示されるように、雄スクリューロータ2及び雌スクリューロータ3が水平方向に並んで配置される事例で説明する。
【0026】
雄スクリューロータ2及び雌スクリューロータ3は、圧縮気体から受ける力によってお互いに離れる方向に荷重F1がかかる。その荷重F1の方向は、吐出ポート部と雄スクリューロータ2及び雌スクリューロータ3の中心軸を結ぶ方向となる。具体的には、荷重F1の方向は、
図4に示される雄スクリューロータ2及び雌スクリューロータ3から互いに離れる斜め上方向となる。
【0027】
軸受8、9、10には、雄スクリューロータ2及び雌スクリューロータ3の中心軸に対して荷重F1とは反対方向に作用する反力F2が働くことになる。圧縮機本体1は、その反力F2の負荷圏、すなわち吐出ポート部の反対側において最も温度が高くなる。
【0028】
ここで、軸受8、9、10の冷却は、先述した軸隙間から漏洩した潤滑油によって油浴冷却する。しかし、油浴量が少ない場合には、最も温度が高くなる負荷圏を効率良く冷却することができない。逆に、油浴量が多い場合には、最も温度が高い負荷圏を冷却することはできるが、潤滑油の撹拌損失が大きくなり、液冷式ツインスクリュー圧縮機200の効率が低下してしまう。
【0029】
そのため、最も温度が高い負荷圏の冷却と、液冷式ツインスクリュー圧縮機200の効率低下量の最小化と、を両立できないという問題があった。
【0030】
<本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の特徴>
ここでは、一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機200とは異なる本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の特徴を説明する。本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の特徴は、液冷式ツインスクリュー圧縮機100の雄スクリューロータ2側を例に挙げて説明する。しかし、本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の特徴は、液冷式ツインスクリュー圧縮機100の雌スクリューロータ3側も同構成を有する。
【0031】
図5は、本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の雄スクリューロータ2側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
図6は、本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100を示す
図5中のB-B線に沿った玉軸受10での矢視縦断面図である。
【0032】
図5、
図6に示されるように、各軸受8、9、10の外輪の外側を潤滑油によって油浴冷却する冷却流路18が形成されている。冷却流路18には、1つの軸受8、9、10の外周面に沿って少なくとも1つ以上の円環形状の給油溝19が形成されている。給油溝19の全部は、同じ流路断面積を有する。給油溝19には、詳しく述べると次の3つがある。すなわち、給油溝19には、各スクリューロータ2、3の吸込側に、第1給油溝191がある。給油溝19には、各スクリューロータ2、3の吐出側から近い順に、第2給油溝192、第3給油溝193がある。
【0033】
雌雄一対のスクリューロータ2、3には、圧縮気体から受ける力によりお互いに離れる斜め上方向に荷重F1がかかる。これに対し、各軸受8、9、10には、雌雄一対のスクリューロータ2、3にかかる荷重F1から受け持つ荷重に対して反対方向に反力F2が働くことになり、反力F2の負荷圏が最も高温になる。各軸受8、9、10の外周面には、雌雄一対のスクリューロータ2、3の軸隙間から漏洩した潤滑油では冷却しきれない各軸受8、9、10の外周面の反力F2の負荷圏を潤滑油によって油浴冷却する給油溝19が形成されている。
【0034】
冷却流路18では、給油溝19に潤滑油を流入させる流入流路181と、給油溝19から潤滑油を流出させる流出流路182と、が複数の軸受8、9、10に設けられた給油溝19のそれぞれに対して並列に接続されている。冷却流路18は、3つの軸受8、9、10の全部に対して形成されている。
【0035】
流入流路181は、圧縮機本体1の外部から圧縮機ケーシング4内にて各スクリューロータ2、3が配置された空間に潤滑油を供給する流入流路20と分岐されて圧縮機ケーシング4又は吐出ケーシング5内での下側を通って潤滑油を給油溝19に供給する。流入流路181は、圧縮機ケーシング4及び吐出ケーシング5の内部に潤滑油を流通させる貫通孔である。流入流路181は、給油溝19のそれぞれに連通している。
【0036】
流出流路182は、給油溝19から圧縮機ケーシング4又は吐出ケーシング5内での上側を通って潤滑油を各スクリューロータ2、3が配置された空間に供給する。流出流路182は、圧縮機ケーシング4及び吐出ケーシング5の内部に潤滑油を流通させる貫通孔である。流出流路182は、給油溝19のそれぞれに連通している。流出流路182は、給油溝19の潤滑油を回収する。
【0037】
<液冷式ツインスクリュー圧縮機100の動作>
圧縮機本体1に給油される潤滑油は、流入流路20を通って圧縮機本体1の作動空間や吐出側の軸隙間に給油される。圧縮機本体1の作動空間に給油された潤滑油は、内部隙間の封止、圧縮過程における空気の冷却、及び、摺動する一対のスクリューロータ2、3間の潤滑に使用される。軸隙間に給油された潤滑油は、オイルフィルムを形成することで、軸隙間を介して作動空間から軸受空間16a、17aに流通し、圧縮空気が漏洩することを抑制するのに使用される。
【0038】
吸込側の軸隙間に供給された潤滑油は、各スクリューロータ2、3の回転と共に圧縮空気が漏洩する代わりに軸受空間16aへと流され、吸込側の円筒ころ軸受8を潤滑及び冷却し、その後に軸受空間16bへと流れる。軸受空間16bへと流れた潤滑油は、吸込側カバー6に設けられた流出流路182から圧縮機本体1の吸込空間11へ回収される。
【0039】
吐出側の軸隙間に供給された潤滑油は、各スクリューロータ2、3の回転と共に圧縮空気が漏洩する代わりに軸受空間17aへと流され、吐出側の各軸受9、10を潤滑及び冷却し、その後に軸受空間17bへと流れる。軸受空間17bへと流れた潤滑油は、吐出側カバー7に設けられた流出流路182から圧縮機本体1の吸込空間11へ回収される。
【0040】
一方、主流入流路13から分岐した流入流路181を流れる潤滑油は、吸込側の円筒ころ軸受8の外輪の外側に設けられた第1給油溝191を通過することで、円筒ころ軸受8の最も温度の高い負荷圏を冷却し、流出流路182を通過して圧縮機本体1の作動空間に回収される。このように、円筒ころ軸受8の信頼性を向上した液冷式ツインスクリュー圧縮機100を提供することができる。
【0041】
また、主流入流路13から分岐した流入流路181を流れる潤滑油は、吐出側の各軸受9、10の外輪の外側に設けられた第2給油溝192及び第3給油溝193を通過することで、各軸受9、10の最も温度の高い負荷圏を冷却し、流出流路182を通過して圧縮機本体1の作動空間に回収される。このように、各軸受9、10の信頼性を向上した液冷式ツインスクリュー圧縮機100を提供することができる。
【0042】
<その他>
本実施形態では、主流入流路13から分岐した流入流路181が給油溝19に連通した構成としているが、主流入流路13と流入流路181は、それぞれ別経路で構成しても構わない。
【0043】
本実施形態では、給油溝19の潤滑油を回収する流出流路182を圧縮機本体1の吸込空間11に連通した構成としているが、流出流路182は、圧縮機本体1の作動空間に連通した構成でも構わない。また、流出流路182が軸受空間16b、17bに連通した構成でも構わない。
【0044】
本実施形態では、1つの吸込側及び吐出側の各軸受8、9、10に対して、1つの給油溝19を持つ構成としているが、複数の給油溝19を持つ構成でも構わない。
【0045】
本実施形態では、給油溝19として四角溝の構成としているが、その他の溝形状、例えば三角溝の構成でも構わない。
【0046】
本実施形態では、雌雄のスクリューロータ2、3を有するツインスクリュー圧縮機の構成としているが、シングルスクリュー圧縮機の構成でも構わない。
【0047】
<第2実施形態>
本実施形態では、上記実施形態と共通する部分については説明を省略し、その特徴部分を説明する。
【0048】
<本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の特徴>
図7は、本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の雄スクリューロータ2側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
図7に示されるように、冷却流路18では、給油溝19に潤滑油を流入させる流入流路181と、給油溝19から潤滑油を流出させる流出流路182と、が複数の軸受9、10に設けられた給油溝19のそれぞれに繋がって直列に接続されている。つまり、流入流路181が第2給油溝192に接続され、第2給油溝192と第3給油溝193とが連通路21によって接続され、第3給油溝193に接続された流出流路182が軸受空間17bに連通されている。
【0049】
<液冷式ツインスクリュー圧縮機100の吐出側の動作>
主流入流路13から分岐した流入流路181を流れる潤滑油は、温度が高くなる圧縮機本体1の作動空間に近い軸受側である吐出側の円筒ころ軸受9の外輪外側に設けられた第2給油溝192を通過する。これにより、円筒ころ軸受9の最も温度の高い負荷圏を冷却する。
【0050】
次に、第2給油溝192に供給された潤滑油は、第2給油溝192から連通路21を通って、圧縮機本体1の作動空間から遠い軸受側である吐出側の玉軸受10の外輪外側に設けられた第3給油溝193を通過する。これにより、玉軸受10の外輪を冷却する。
【0051】
玉軸受10の外輪を冷却した潤滑油は、軸受空間17bに連通された流出流路182を通過し、軸隙間から漏洩し各軸受9、10を冷却した潤滑油と合流する。合流した潤滑油は、吐出側カバー7に設けられた流出流路15によって圧縮機本体1の吸込空間11へ回収される。
【0052】
以上のことから、各軸受9、10の最も温度の高い負荷圏を冷却し、各軸受9、10の信頼性を向上した液冷式ツインスクリュー圧縮機100を提供することができる。
【0053】
なお、第1実施形態との違いは、液冷式ツインスクリュー圧縮機100の潤滑油は、自己差圧による循環を用いるため、各軸受9、10の外輪を冷却するための経路が長くでき、流量調整ができるところにある。
【0054】
<第3実施形態>
第3実施形態では、上記実施形態と共通する部分については説明を省略し、その特徴部分を説明する。
【0055】
<本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の特徴>
図8は、本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100の雄スクリューロータ2側を示すロータ軸方向の縦断面図である。
図9は、本実施形態に係る液冷式ツインスクリュー圧縮機100を示す
図8中のC-C線に沿った玉軸受10での矢視縦断面図である。
【0056】
図8、
図9に示されるように、冷却流路18には、1つの円筒ころ軸受9、玉軸受10の外周面に沿って少なくとも1周以上の螺旋形状の給油溝19が形成されている。つまり、給油溝19は、円筒ころ軸受9、玉軸受10の外輪の外側に沿って螺旋状に形成されている。円筒ころ軸受9、玉軸受10の給油溝19は、連続した螺旋状に形成されている。
【0057】
<液冷式ツインスクリュー圧縮機100の吐出側の動作>
主流入流路13から分岐した流入流路181を流れる潤滑油は、吐出側の円筒ころ軸受9、玉軸受10の外輪の外側に沿って設けられた螺旋状の給油溝19を通過する。これにより、各軸受9、10の最も温度の高い負荷圏を冷却する。給油溝19を通過した潤滑油は、流出流路182を通過して圧縮機本体1の作動空間に回収される。したがって、各軸受9、10の信頼性を向上した液冷式ツインスクリュー圧縮機100を提供することができる。
【0058】
<<一般的な液冷式ツインスクリュー圧縮機との相違点の効果>>
(A)
液冷式ツイン液冷式スクリュー圧縮機10スクリュー圧縮機100は、各スクリューロータ2、3が収められた圧縮機ケーシング4を備える。
【0059】
液冷式ツインスクリュー圧縮機10は、圧縮機ケーシング4と接続した吐出ケーシング5を備える。液冷式ツインスクリュー圧縮機10は、圧縮機ケーシング4と吐出ケーシング5の内部に設けられ、各スクリューロータ2、3を回転支持する各軸受8、9、10を備える。各軸受8、9、10の外輪の外側を潤滑油によって油浴冷却する冷却流路18が形成されている。
【0060】
この構成では、各軸受8、9、10の外輪の外側に給油された潤滑油が各軸受8、9、10の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を冷却することができる。したがって、各軸受8、9、10の信頼性を向上するための軸受冷却構造を備える液冷式ツインスクリュー圧縮機10を提供することができる。
【0061】
(B)
冷却流路18には、1つの軸受8、9、10の外周面に沿って少なくとも1つ以上の円環形状の給油溝19が形成されている。
【0062】
この構成では、各軸受8、9、10の外輪の外側の外周面に沿って給油された潤滑油が各軸受8、9、10の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を直接冷却することができる。
【0063】
(C)
軸受9、10は、吐出ケーシング5に2つ設けられている。
【0064】
この構成では、吐出ケーシング5に設けられた2つの軸受9、10外輪の外側の外周面に沿って給油された潤滑油が各軸受9、10の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を直接冷却することができる。
【0065】
(D)
冷却流路18では、給油溝19に潤滑油を流入させる流入流路181と、給油溝19から潤滑油を流出させる流出流路182と、が複数の各軸受8、9、10に設けられた給油溝19のそれぞれに対して並列に接続されている。
【0066】
この構成では、潤滑油の油圧が低く経路長が短くても、効率良く2つの軸受9、10の外輪の外側の外周面に沿って給油された潤滑油が軸受9、10の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を直接冷却することができる。
【0067】
(E)
冷却流路18では、給油溝19に潤滑油を流入させる流入流路181と、給油溝19から潤滑油を流出させる流出流路182と、が複数の軸受9、10に設けられた給油溝19のそれぞれに繋がって直列に接続されている。
【0068】
この構成では、潤滑油の油圧が高く経路長が長くても、効率良く2つの軸受9、10の外輪の外側の外周面に沿って給油された潤滑油が軸受9、10の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を直接冷却することができる。また、潤滑油の油圧が高い円筒ころ軸受9から潤滑油の油圧が低い玉軸受10に対して順に冷却効果を得ることができる。
【0069】
(F)
冷却流路18には、1つの軸受9、10の外周面に沿って少なくとも1周以上の螺旋形状の給油溝19が形成されている。
【0070】
この構成では、軸受9、10の外輪の外側の外周面に沿って給油された潤滑油が軸受9、10の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を直接冷却することができる。
【0071】
(G)
軸受8は、圧縮機ケーシング4に1つ設けられている。
【0072】
この構成では、圧縮機ケーシング4に設けられた1つの軸受8の外輪の外側の外周面に沿って給油された潤滑油が軸受8の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を直接冷却することができる。
【0073】
(H)
冷却流路18は、3つの軸受8、9、10の全部に対して形成されている。
【0074】
この構成では、軸受8、9、10の全部の外輪の外側外周面に沿って給油された潤滑油が軸受8、9、10の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を直接冷却することができる。
【0075】
(I)
流入流路181は、圧縮機本体1の外部から圧縮機ケーシング4内にて各スクリューロータ2、3が配置された空間に潤滑油を供給する流入流路20と分岐されて吐出ケーシング5内での下側を通って潤滑油を給油溝19に供給する。
【0076】
この構成では、各軸受9、10を油浴冷却する流路が各ケーシング4、5などの外部に配設されたバイパス経路によって設ける必要がない。このため、バイパス経路を構成する配管群等の余計な部品が必要なく、単純な構成かつ小型の液冷式ツインスクリュー圧縮機10を提供することができる。
【0077】
(J)
流出流路182は、給油溝19から吐出ケーシング5内での上側を通って潤滑油を各スクリューロータ2、3が配置された空間に供給する。
【0078】
この構成では、各軸受9、10を油浴冷却する流路が各ケーシング4、5などの外部に配設されたバイパス経路によって設ける必要がない。このため、バイパス経路を構成する配管群等の余計な部品が必要なく、単純な構成かつ小型化される液冷式ツインスクリュー圧縮機10を提供することができる。
【0079】
(K)
流入流路181は、圧縮機本体1の外部から圧縮機ケーシング4内にて各スクリューロータ2、3が配置された吸込空間11に潤滑油を供給する流入流路20と分岐されて圧縮機ケーシング4内での下側を通って潤滑油を給油溝19に供給する。流出流路182は、給油溝19から圧縮機ケーシング4内での上側を通って潤滑油を各スクリューロータ2、3が配置された吸込空間11に供給する。
【0080】
この構成では、軸受8を油浴冷却する流路が各ケーシング4、5などの外部に配設されたバイパス経路によって設ける必要がない。このため、バイパス経路を構成する配管群等の余計な部品が必要なく、単純な構成かつ小型の液冷式ツインスクリュー圧縮機10を提供することができる。
【0081】
(L)
給油溝19の全部は、同じ流路断面積を有する。
【0082】
この構成では、給油溝19の全部にて流速が一定になり、潤滑油が軸受8、9、10の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を安定して冷却することができる。
【0083】
(M)
吐出ケーシング5に2つ設けられた軸受9、10は、各スクリューロータ2、3が配置された空間に近い順に、円筒ころ軸受9、玉軸受10である。
【0084】
この構成では、潤滑油が円筒ころ軸受9の線接触の負荷圏及び玉軸受10の点接触の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を冷却することができる。
【0085】
(N)
圧縮機ケーシング4に1つ設けられた軸受8は、円筒ころ軸受8である。
【0086】
この構成では、潤滑油が円筒ころ軸受8の点接触の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を冷却することができる。
【0087】
(O)
スクリューロータ2、3は、雌雄一対設けられ、雌雄一対のスクリューロータ2、3には、圧縮気体から受ける力によりお互いに離れる斜め上方向に荷重がかかる。軸受8、9、10には、雌雄一対のスクリューロータ2、3にかかる荷重から受け持つ荷重に対して反対方向に反力が働くことになり、反力の負荷圏が最も高温になる。軸受8、9、10の外周面側には、雌雄一対のスクリューロータ2、3の軸隙間から漏洩した潤滑油では冷却しきれない軸受8、9、10の外周面の反力の負荷圏を潤滑油によって油浴冷却する給油溝19が形成されている。
【0088】
この構成では、軸受8、9、10の外輪の外側周面に給油された潤滑油が雌雄一対のスクリューロータ2、3の軸隙間から漏洩した潤滑油では冷却しきれない軸受8、9、10の外周面の反力の負荷圏つまり、最も発熱する箇所を冷却することができる。したがって、軸受8、9、10の信頼性を向上するための軸受冷却構造を備える液冷式ツインスクリュー圧縮機10を提供することができる。
【0089】
以上、実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0090】
1…圧縮機本体、2…雄スクリューロータ、3…雌スクリューロータ、4…圧縮機ケーシング、5…吐出ケーシング、6…吸込側カバー、7…吐出側カバー、8…円筒ころ軸受、9…円筒ころ軸受、10…玉軸受、11…吸込空間、12…吐出空間、13…主流入流路、14…流出流路、15…流出流路、16a…軸受空間(上流側)、16b…軸受空間(下流側)、17a…軸受空間(上流側)、17b…軸受空間(下流側)、18…冷却流路、19…給油溝、20…流入流路、21…連通路、100…液冷式ツインスクリュー圧縮機、181…流入流路、182…流出流路、191…第1給油溝、192…第2給油溝、193…第3給油溝、200…液冷式ツインスクリュー圧縮機。